JP6443112B2 - 軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金及び非晶質合金薄帯 - Google Patents
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一方、特許文献3では、Fe、Coからの少なくとも1種で70〜90%、B、C、Pからの少なくとも1種で10〜30%、さらに、Fe、Coの含有量を、Niでその3/4まで、V、Cr、Mn、Mo、Nb、Ta、Wでその1/4まで代替でき、又、B、C、Pの含有量を、Siでその3/5まで、Alでその1/3まで代替できる合金成分が提案されている。
つまり、本発明者は特許文献4で、例えば、原子%で、Feを78%以上86%以下、Pを6%以上18%以下、Cを2%以上10%以下含有し、さらに、Si、Alの少なくとも一方を0.1%以上5%以下含有し、残部不可避的不純物からなる合金成分を提案した。
(1)本発明は、原子%で、Feを80%以上88%以下、Pを4%以上12%以下、Bを2%以上8%以下、Alを0.1%以上3%以下含有し、さらに、Moを0.1%以上5%以下含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金に関する。
(2)本発明は、Ni、Cr、Coのうち少なくとも1種以上で、(1)に記載の合金のFeを10原子%以下の範囲で、代替することを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金に関する。
(3)本発明において、磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損(鉄損W13/50)が0.10W/kg未満、かつ、飽和磁束密度が1.6T以上であることが好ましい。
(4)本発明は、(1)〜(3)のいずれかに記載のFe系非晶質合金からなることを特徴とするFe系非晶質合金薄帯に関する。
また、本発明により、低鉄損を維持したまま飽和磁束密度が1.6Tを超える非晶質合金薄帯の提供が可能となった。
本実施形態のFe系非晶質合金の特徴は、Fe、P、B、Alからなる合金に、更にMoを添加し、構成元素の含有量を最適化したことにより、軟磁気特性、特に低鉄損を維持したまま飽和磁束密度を製造ロット内で安定して一層高くすることを実現したことにある。また、本実施形態のFe系非晶質合金は、ベースであるFeの一部をNi、Cr、Coで代替することで更なる軟磁気特性の改善を実現したことにある。低鉄損とは、単板測定による鉄損W13/50(磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損)で、安定して0.10W/kg以下を示すことであり、この特性を備えたまま1.6T以上の高い飽和磁束密度を示すFe系非晶質合金を実現できる。
PおよびBは、本実施形態のFe系非晶質合金において、非晶質相形成及び非晶質相の熱的安定性を向上させるために添加する。さらに、これら元素の含有量を最適化することで、軟磁気特性を一層改善できることが可能で、例えば、飽和磁束密度を安定して1.6T超を実現することができる。Pが4原子%未満、Bが2原子%未満ではFe系非晶質合金において、非晶質合金が安定して得られないことから、飽和磁束密度を安定して1.6T超とすることが困難となる。一方、Pを12原子%超、Bを8原子%超としても、鉄損を安定して0.10W/kg以下を維持したまま、飽和磁束密度を安定して1.6T超とすることは困難となる。従って、Pを4原子%以上12原子%以下、Cを2原子%以上8原子%以下の範囲に限定した。
また、本実施形態のFe系非晶質合金において、0.09W/kg以下の低鉄損を得るためのFeのより好ましい範囲は80〜84%とすることができる。
単ロ−ル装置には、ドラムの内壁を使う遠心急冷装置、エンドレスタイプのベルトを使う装置、およびこれらの改良型である補助ロ−ルやロ−ル表面温度制御装置を付属させたもの、減圧下あるいは真空中、または不活性ガス中での鋳造装置も含まれる。
本実施形態では、薄帯の板厚、板幅などの寸法は特に限定しないが、薄帯の板厚は、例えば、10μm以上100μm以下が好ましい。また、板幅は10mm以上が好ましい。
以上説明の如く得られたFe系非晶質合金薄帯は、電力トランスや高周波トランスの鉄心等の用途として用いることができる。
上述の方法により、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金粉末を得ることができる。
上述のように得られたFe系軟磁性合金粉末は、金型等により圧密して目的の形状に成形し、必要に応じ焼結して一体化することで、電力トランスや高周波トランス、コイルの鉄心等の用途として適用することができる。
(実施例1)
以下の表1に示す各種成分の合金をアルゴン雰囲気中で溶解し、単ロ−ル法で薄帯に鋳造した。鋳造雰囲気は大気中であった。そして、得られた薄帯について軟磁気特性を調査した。使用した単ロ−ル薄帯製造装置は、直径300mmの銅合金製冷却ロ−ル、試料溶解用の高周波電源、先端にスロットノズルが付いている石英ルツボ等から構成される。
この実験では、長さ20mm、幅0.6mmのスロットノズルを使用した。冷却ロ−ルの周速は24m/秒とした。結果として、得られた薄帯の板厚は約25μmであり、板幅はスロットノズルの長さに依存するので20mmであり、長さはおよそ50mであった。
飽和磁束密度及び鉄損の測定結果は6個所でのデ−タの平均値を、表1に示した。
一方、試料No.26、29、31〜35では薄帯が得られても飽和磁束密度が1.6T超及び鉄損が0.10W/kg未満の両者を満足する特性が得られなかった。
試料No.26はFe含有量が望ましい範囲の下限80原子%を下回った例であり飽和磁束密度が低下した例、試料No.29はP含有量が望ましい範囲の上限12原子%を上回り鉄損が増加した例、試料No.31はAl含有量が望ましい範囲の下限0.1原子%を下回り鉄損が増加した例である。試料No.32はAl含有量が望ましい範囲の上限3原子%を上回り鉄損が増加した例、試料No.33はMo含有量が望ましい範囲の下限0.1原子%を下回り鉄損が増加した例である。試料No.34はMo含有量が望ましい範囲の上限6原子%を上回った例であり鉄損が増加した例、No.35はB含有量が望ましい範囲の上限である8原子%を上回り鉄損が増加した例である。
これらの対比から、本発明により、Fe系非晶質合金において磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損が0.10W/kg未満という優れた鉄損を維持しながら、更なる飽和磁束密度の改善を実現できることがわかった。
また、No.2〜5、7、8、11、13、15、16、18〜20、24の試料において特に低い0.09以下の鉄損となったので、このような低鉄損とするためにFeのより好ましい範囲は80〜83.6%、Pのより好ましい範囲は5.8〜12%、Bのより好ましい範囲は3.1〜7.9%、Moのより好ましい範囲は0.1〜5.1であることがわかる。
表1のNo.1に示す合金について、Feの一部をNi、Cr、Coの少なくとも1種で代替した各種成分の合金を用いて、実施例1と同様の装置、条件により薄帯を鋳造した。なお、用いた合金の具体的な成分については、Ni、Cr、Coについてのみを表2に示した。結果として、得られた薄帯の板厚、板幅、長さはそれぞれ、約25μm、20mm、およそ50mであった。得られた薄帯の飽和磁束密度及び鉄損について評価した。これらの特性評価に用いた試料の採取方法及び測定条件は、実施例1と同じであった。その測定結果を表2に示す。なお、表2での表示要領は、表1の場合同様である。
表1のNo.15に示す合金について、Feの一部をNi、Cr,Coの少なくとも1種で代替した各種成分の合金を用いて、実施例1と同様の装置、条件により薄帯を鋳造した。なお、用いた合金の具体的な成分については、Ni、Cr、Coについてのみを表3に示した。結果として、得られた薄帯の板厚、板幅、長さはそれぞれ、約25μm、20mm、およそ50mであった。得られた薄帯の飽和磁束密度及び鉄損について評価した。これらの特性評価に用いた試料の採取方法及び測定条件は、実施例1と同じであった。その測定結果を、表3に示す。なお、表3での表示要領は、表1の場合同様である。
Claims (4)
- 原子%で、Feを80%以上88%以下、Pを4%以上12%以下、Bを2%以上8%以下、Alを0.1%以上3%以下含有し、さらに、Moを0.1%以上6%以下含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
- Ni、Cr、Coのうち少なくとも1種以上で、請求項1に記載のFe系非晶質合金のFeを10原子%以下の範囲で、代替したことを特徴とする、軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
- 磁束密度1.3T、周波数50Hzにおける鉄損(鉄損W13/50)が0.10W/kg未満、かつ、飽和磁束密度が1.6T以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軟磁気特性に優れたFe系非晶質合金。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のFe系非晶質合金からなることを特徴とするFe系非晶質合金薄帯。
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