JP6442956B2 - ポリカーボネートジオールの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の原料を用いたポリカーボネートジオールの製造方法に関する。
ポリカーボネートジオールは、ポリウレタンや熱可塑性エラストマーのソフトセグメント部の原料や塗料、接着剤等に使用されており、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールの欠点とされる耐熱性や耐候性、耐加水分解性等に優れる高耐久性を付与する原料として広く用いられている。
現在広く市販されているポリカーボネートジオールは、主に1,6−ヘキサンジオールから合成されるポリカーボネートジオールであるが、このものは結晶性が高く、融点も高いため、加工時のハンドリング性の悪さやポリウレタンに求められる柔軟性の低さ等が問題点となっている。また、近年では、ポリウレタンの要求特性として、人の整髪料等に含まれるアルコールに対する耐久性や人体から分泌される皮脂の主成分であるオレイン酸に対する耐久性が求められているが、1,6−ヘキサンジオールを主とするポリカーボネートジオールではこの要求特性に対しては不十分である。
これらの問題を解決するために、1,4−ブタンジオールを構成単位として含むポリカーボネートジオール共重合体が提案されている。例えば、1,4−ブタンジオールと1,5−ペンタンジオールを原料として共重合したポリカーボネートジオール(特許文献1)、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールを原料として共重合したポリカーボネートジオール(特許文献2)、1,4−ブタンジオールと2−メチル−1,3−プロパンジオールを原料として共重合したポリカーボネートジオール(特許文献3)等が提案されている。
一方、1,4−ブタンジオールを原料としてポリカーボネートジオールを合成する際に、1,4−ブタンジオールの脱水環化およびポリカーボネートジオールの1,4−ブタンジオール末端部位の環化によりテトラヒドロフランを副生するため、ポリカーボネートジオールの分子量が上がりにくいことや反応圧力が下がりにくいこと等が、生産面で問題となっている。
従来、ポリカーボネートジオール合成時のテトラヒドロフランの副生を抑制するために、酸性化合物を添加してポリテトラメチレンポリカーボネートジオールを製造する方法(特許文献4)や3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル骨格を有する化合物の存在下で1,4−ブタンジオールと脂肪族ジオール、カーボネート化合物を反応させて共重合ポリカーボネートジオールを製造する方法(特許文献5)、炭酸ジアルキル化合物と1,4−ブタンジオールを含む脂肪族ジオールとを特定の温度範囲で反応させる方法(特許文献6)が提案されている。
しかしながら、特許文献4において燐酸、亜燐酸、燐酸エステル、亜燐酸エステル等の燐系の酸性化合物を添加してポリテトラメチレンポリカーボネートジオールを製造した場合、使用する触媒によっては燐系の酸性化合物が触媒の失活剤として作用することがあり、生産性を低下させることがある。また、特許文献5においては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル骨格を有する化合物がポリカーボネートジオール中に残存することで、そのポリカーボネートジオールを用いたポリウレタンが処方によっては黄変等の悪影響を及ぼす可能性がある。更に、特許文献6においては、反応温度範囲を低下させることでテトラヒドロフランの副生を抑制できるが、重合反応速度の低下とブチレンカーボネートの副生が起こるため、生産性は向上しない。
特許第2885872号公報 国際公開第2009/063767号公報 国際公開第2006/088152号公報 特許第3859241号公報 特許第4605491号公報 特開2010−126591号公報
本発明は、ポリウレタンや塗料、接着剤等の原料となるポリカーボネートジオールの製造方法において、テトラヒドロフラン等の副生物を低減した上で重合反応速度を向上させる工業的生産性に優れた製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び下記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールを製造する際に、原料として用いる下記式(B)で表される化合物の酸価が所定の範囲であると、テトラヒドロフラン等の副生物を低減することができ、かつ重合反応速度を向上させることができることを見出した。また、下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位を特定量以上含むポリカーボネートジオールを製造する際に、原料として用いる下記式(A)で表される化合物の酸価が所定の範囲であると、テトラヒドロフラン等の副生物を低減することができ、且つ重合反応速度を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下である。
[1] 下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び下記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールの製造方法において、原料として用いる下記式(A)で表される化合物の酸価が8.00mgKOH/g以下であり、下記式(B)で表される化合物が、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、及び1,20−エイコサンジオールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であって、かつその酸価が0.01〜8.00mgKOH/gであり、該ポリカーボネートジオールに含まれる該式(A)で表される化合物に由来する構造単位と該式(B)で表される化合物に由来する構造単位との割合がモル比率で10:90〜90:10であり、該ポリカーボネートジオールのジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対する該式(A)で表される化合物に由来する構造単位と該式(B)で表される化合物に由来する構造単位の合計の割合が90モル%以上であることを特徴とするポリカーボネートジオールの製造方法。
HO−(CH−OH …(A)
HO−R−OH …(B)
] 前記式(B)で表される化合物が、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−ドデカンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする[1]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
] ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸誘導体を還元して、前記式(B)で表される化合物を製造する工程を更に有することを特徴とする[1]又は2]に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
] 前記式(B)で表される化合物が植物由来であることを特徴とする[1]乃至[]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
[5] 下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールの製造方法において、該ポリカーボネートジオール中の下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位の割合が、該ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物に由来する全ての構造単位に対して、100モル%であって、且つ原料として用いる下記式(A)で表される化合物の酸価が0.03〜8.00mgKOH/gであることを特徴とするポリカーボネートジオールの製造方法。
HO−(CH−OH …(A)
] 前記式(A)で表される化合物が植物由来であることを特徴とする[1]乃至[]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法は、テトラヒドロフラン等の副生物を低減した上で重合反応速度を向上させる工業的生産性に優れた製造方法であり、産業上極めて有用である。
本発明により製造されるポリカーボネートジオールは、ポリウレタンや熱可塑性エラストマーのソフトセグメント部の原料や塗料、接着剤等に有用であり、特に、耐薬品性、低温特性、耐熱性に優れたポリウレタンの原料となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[1.ポリカーボネートジオールの製造方法]
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法は、下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位及び下記式(B)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールの製造する場合、原料として用いる下記式(B)で表される化合物の酸価が0.01〜8.00mgKOH/gであることを特徴とし、また、下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位を含み、その構造単位のポリカーボネートジオール中の存在割合が、ジヒドロキシ化合物に由来する全ての構造単位に対して、90モル%以上であるポリカーボネートジオールを製造する場合、原料として用いる下記式(A)で表される化合物の酸価が0.03〜8.00mgKOH/gであることを特徴とする。
即ち、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法では、予め酸価を制御した原料化合物を用いることにより、テトラヒドロフランの生成を抑制することができる。また、ポリカーボネートジオールの重合反応速度を高めることができる。その作用機構の詳細は明らかではないが、ポリカーボネートジオールの原料化合物であるジヒドロキシ化合物を得るための原料、例えば、カルボン酸やカルボン酸誘導体に由来する酸成分が触媒の活性向上や反応系の適度なpH制御等に作用していると考えられる。
HO−(CH−OH …(A)
HO−R−OH …(B)
(上記式(B)中、Rは炭素原子数が3〜20である二価の炭化水素基を示す(但し、テトラメチレン基は除く)。)
なお、以下において、上記式(A)で表される化合物を「化合物(A)」と称し、上記式(B)で表される化合物を「化合物(B)」と称す場合がある。また、化合物(A)に由来する構造単位を「構造単位(A)」と称し、化合物(B)に由来する構造単位を「構造単位(B)」と称す場合がある。
また、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法により製造されるポリカーボネートジオールを「本発明のポリカーボネートジオール」と称す場合がある。
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法は、具体的には、化合物(A)及び化合物(B)を含むジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを、必要に応じて用いられるエステル交換触媒の存在下で重縮合反応させることにより実施され、反応により構造単位(A)と構造単位(B)とを含むポリカーボネートジオールが製造される。また、化合物(A)を含むジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを、必要に応じて用いられるエステル交換触媒の存在下で重縮合反応させることにより実施され、反応により構造単位(A)を含むポリカーボネートジオールが製造される。
<1−1.ジヒドロキシ化合物>
(化合物(A))
本発明のポリカーボネートジオールの原料となるジヒドロキシ化合物である化合物(A)は1,4−ブタンジオールである。
化合物(A)の1,4−ブタンジオールの酸価を制御することによって、本発明の効果が得られる。化合物(A)の1,4−ブタンジオールは、ジカルボン酸及び/又はジカルボン酸誘導体を還元して製造されることが、酸価を本発明で規定される範囲に制御し易い点において好ましく、また、植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。
例えば1,4−ブタンジオールは、発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン及びγ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造することができる。また、発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造することもでき、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造することもできる。この中でも発酵法で直接1,4−ブタンジオールを製造する方法とコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましいが、特にコハク酸を還元して製造することが酸価を制御する本発明の効果が有効に発揮される点において好ましい。
(化合物(B))
本発明のポリカーボネートジオールの原料となるジヒドロキシ化合物である化合物(B)は、炭素原子数が3〜20のジヒドロキシ化合物であり、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等の分岐鎖を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等の分岐鎖を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジシクロヘキシルジメチルメタンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,4−ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキサノール及び4,4’−イソプロピリデンビス(2,2’−ヒドロキシエトキシシクロヘキサン)等の環状基が分子内にあるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。中でもポリウレタンとしたときの耐薬品性、低温特性のバランスが優れることより、前記式(B)におけるRが炭素原子7〜20の二価の炭化水素基であるものが好ましい。特に、前記式(B)におけるRが無置換のアルキル基、特に直鎖アルキル基であると、得られたポリカーボネートジオールを用いて製造されるポリウレタンの耐薬品性、低温特性、耐熱性がいずれも良好となる点において好ましく、このようなものとして、例えば1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールがより好ましく、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが更に好ましく、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが特に好ましく、1,10−デカンジオールが最も好ましい。
なお、化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの化合物(B)は、アルデヒドやケトン、カルボン酸、カルボン酸誘導体等のカルボニル化合物の還元やアルケニル化合物の水和反応等を含む、単もしくは複数の反応を経て製造されるが、中でもカルボン酸やカルボン酸誘導体の還元反応を含む、単もしくは複数の反応を経て製造されるジヒドロキシ化合物であることが、酸価を本発明で規定される範囲に制御し易く、また、酸価を制御する本発明の効果が有効に発揮される点において好ましい。上記カルボン酸誘導体としては、エステル化合物、アミド化合物、酸無水物、酸ハロゲン化物、ニトリル化合物等が挙げられる。
また、化合物(B)は植物由来であることが、環境負荷低減の観点から好ましい。植物由来として適用可能な化合物(B)としては、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。
本発明の、構造単位(A)と構造単位(B)を含むポリカーボネートジオールの原料となる化合物(B)の酸価は、上限が8.00mgKOH/gであり、好ましくは5.00mgKOH/g以下、更に好ましくは4.00mgKOH/g以下、特に好ましくは3.00mgKOH/g以下である。一方、下限は0.01mgKOH/gであり、好ましくは0.02mgKOH/g以上、更に好ましくは0.03mgKOH/g以上である。
化合物(B)の酸価が上記上限超過では、重合反応速度が高くなりすぎ、反応の制御が困難になり反応が暴走する傾向にある。一方で、上記下限未満では、副生するテトラヒドロフランの量が増加する傾向と共に重合反応速度が低下する傾向にある。また、本発明の製造方法より製造されたポリカーボネートジオールを原料としてポリウレタンを製造した場合に、化合物(B)の酸価が上記上限超過では、ウレタン化反応を阻害する恐れがある。また、化合物(B)の酸価が上記下限未満では、化合物(B)の精製工程のコストが嵩み、経済的に不利になる。
本発明の、構造単位(A)と構造単位(B)を含むポリカーボネートジオールの原料となる化合物(A)の酸価は、上限が好ましくは8.00mgKOH/gであり、より好ましくは5.00mgKOH/g以下、更に好ましくは4.00mgKOH/g以下、特に好ましくは3.00mgKOH/g以下である。一方、下限は好ましくは0.01mgKOH/gであり、より好ましくは0.02mgKOH/g以上、更に好ましくは0.03mgKOH/g以上である。
化合物(A)の酸価が上記上限超過では、重合反応速度が高くなりすぎ、反応の制御が困難になり反応が暴走する傾向にある。一方で、上記下限未満では、副生するテトラヒドロフランの量が増加する傾向と共に重合反応速度が低下する傾向にある。また、本発明の製造方法より製造されたポリカーボネートジオールを原料としてポリウレタンを製造した場合に、化合物(A)の酸価が上記上限超過では、ウレタン化反応を阻害する恐れがある。また、化合物(A)の酸価が上記下限未満では、化合物(A)の精製工程のコストが嵩み、経済的に不利になる。
また、本発明の、ジヒドロキシ化合物に由来する全ての構造単位に対して90モル%以上の構造単位(A)を含むポリカーボネートジオールの原料となる化合物(A)の酸価は、上限が8.00mgKOH/gであり、好ましくは5.00mgKOH/g以下、更に好ましくは4.00mgKOH/g以下、特に好ましくは3.00mgKOH/g以下である。一方、下限は0.03mgKOH/gであり、好ましくは0.04mgKOH/g以上、更に好ましくは0.05mgKOH/g以上である。化合物(A)の酸価が上記上限超過では、重合反応速度が高くなりすぎ、反応の制御が困難になり反応が暴走する傾向にある。一方で、上記下限未満では、副生するテトラヒドロフランの量が増加する傾向と共に重合反応速度が低下する傾向にある。また、本発明の製造方法より製造されたポリカーボネートジオールを原料としてポリウレタンを製造した場合に、化合物(A)の酸価が上記上限超過では、ウレタン化反応を阻害する恐れがある。また、化合物(A)の酸価が上記下限未満では、化合物(A)の精製工程のコストが嵩み、経済的に不利になる。
なお、本発明において、化合物(A)及び化合物(B)の酸価は、JIS K1557−5(2007)に準拠した測定法により求められる。
化合物(B)、或いは化合物(A)の酸価を上記範囲とするには、化合物(A)又は化合物(B)を得る際の原料となる、例えばカルボン酸やカルボン酸誘導体の還元反応における化合物(B)、或いは化合物(A)への転化率を下げる、もしくは、上記反応によって得られる化合物(B)、或いは化合物(A)の精製度を低くすればよい。また、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法の原料として供する前に、化合物(A)、又は化合物(B)それぞれに重合反応を阻害しない酸性化合物を添加して、酸価を上記範囲に調整してもよい。
(化合物(A)及び化合物(B)中の全水酸基に対するエステル基の含有率)
本発明のポリカーボネートジオールの原料となる化合物(A)及び化合物(B)には、その原料や製造法によっては不純物としてエステル含有物が含まれる場合がある。
本発明のポリカーボネートジオールの原料となる化合物(A)及び化合物(B)中の全水酸基に対するエステル基の含有率(mol%)は、上限が好ましくは2.0mol%であり、より好ましくは1.5mol%以下、更に好ましくは1.0mol%以下である。一方、下限は好ましくは0.01mol%であり、より好ましくは0.02mol%以上、更に好ましくは、0.03mol%以上である。
化合物(A)及び化合物(B)中の全水酸基に対するエステル基の含有率が上記上限超過では、ポリカーボネートジオール製造時およびポリウレタン製造時に着色することでポリウレタン製品にした際の意匠性が低下し、上記下限未満では、化合物(A)及び化合物(B)の精製に時間を要するため、生産性が悪化する。
なお、化合物(A)及び化合物(B)中の全水酸基に対するエステル基の含有率は、JIS K0070(1992)に準拠した測定法により求められるエステル価より算出される。
(化合物(A)と化合物(B)の使用割合)
本発明の構造単位(A)と構造単位(B)を含むポリカーボネートジオールの製造する場合、原料に用いる化合物(A)と化合物(B)の割合は、モル比率で、化合物(A):化合物(B)=10:90〜99:1であることが好ましく、50:50〜99:1であることがより好ましく、60:40〜97:3であることが更に好ましく、70:30〜95:5であることが特に好ましく、80:20〜90:10であることが最も好ましい。化合物(A)の使用割合が多くなりすぎると、得られたポリカーボネートジオールをポリウレタンとしたときの低温特性が十分でなくなる場合がある。一方、化合物(A)の使用割合が少なくなりすぎると、得られたポリカーボネートジオールをポリウレタンとしたときの耐薬品性が十分ではない可能性がある。
(他のジヒドロキシ化合物)
本発明の構造単位(A)と構造単位(B)を含むポリカーボネートジオールの製造には、本発明の効果を損なわない限り、化合物(A)及び化合物(B)以外のジヒドロキシ化合物(以下、「他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)を用いてもよい。具体的には、直鎖状のジヒドロキシ化合物類、エーテル基を有するジヒドロキシ化合物類、分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類、脂環構造を含むジヒドロキシ化合物類等、芳香族ジヒドロキシ化合物類等である。これらの他のジヒドロキシ化合物も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。但し、他のジヒドロキシ化合物を用いる場合、ポリカーボネートジオールの全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して、他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下が更に好ましく、10モル%以下が特に好ましく、5モル%以下が最も好ましい。他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が多いと、耐薬品性、低温特性のバランスを損なう可能性がある。
また、本発明の構造単位(A)を所定割合以上含むポリカーボネートジオールの製造には、本発明の効果を損なわない限り、化合物(A)以外の他のジヒドロキシ化合物を用いてもよい。具体的には、直鎖状のジヒドロキシ化合物類、エーテル基を有するジヒドロキシ化合物類、分岐鎖を有するジヒドロキシ化合物類、脂環構造を含むジヒドロキシ化合物類等、芳香族ジヒドロキシ化合物類等である。これらの他のジヒドロキシ化合物も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。但し、他のジヒドロキシ化合物を用いる場合、ポリカーボネートジオールの全ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位に対して、他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合は10モル%以下であり、5モル%以下がより好ましく、2モル%以下が更に好ましく、他のジヒドロキシ化合物は用いないことが最も好ましい。他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合が多いと、高い耐薬品性が得られない可能性がある。
<1−2.カーボネート化合物>
本発明のポリカーボネートジオールの製造に使用されるカーボネート化合物(以下、「炭酸ジエステル」と称す場合がある。)としては、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はアルキレンカーボネートが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。このうち反応性の観点からジアリールカーボネートが好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールの製造に用いることができるカーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、ジフェニルカーボネートが好ましい。
<1−3.原料の使用割合>
本発明のポリカーボネートジオールの製造において、カーボネート化合物の使用量は、特に限定されないが、通常ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対するモル比率で、下限が好ましくは0.35、より好ましくは0.50、更に好ましくは0.60であり、上限は好ましくは1.00、より好ましくは0.98、更に好ましくは0.97である。カーボネート化合物の使用量が上記上限超過では得られるポリカーボネートジオールの末端基が水酸基でないものの割合が増加したり、分子量が所定の範囲とならない場合があり、上記下限未満では所定の分子量まで重合が進行しない場合がある。
<1−4.エステル交換触媒>
本発明のポリカーボネートジオールを製造する際には、重縮合を促進するために必要に応じてエステル交換触媒(以下、「触媒」と称す場合がある。)を用いることができる。
エステル交換触媒としては、一般にエステル交換能があるとされている化合物であれば制限なく用いることができる。
エステル交換触媒の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の周期表第1族金属の化合物;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表第2族金属の化合物;チタン、ジルコニウム等の周期表第4族金属の化合物;ハフニウム等の周期表第5族金属の化合物;コバルト等の周期表第9族金属の化合物;亜鉛等の周期表第12族金属の化合物;アルミニウム等の周期表第13族金属の化合物;ゲルマニウム、スズ、鉛等の周期表第14族金属の化合物;アンチモン、ビスマス等の周期表第15族金属の化合物;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウム等ランタナイド系金属の化合物等が挙げられる。これらのうち、エステル交換反応速度を高めるという観点から、周期表第1族金属の化合物、周期表第2族金属の化合物、周期表第4族金属の化合物、周期表第5族金属の化合物、周期表第9族金属の化合物、周期表第12族金属の化合物、周期表第13族金属の化合物、周期表第14族金属の化合物が好ましく、周期表第1族金属の化合物、周期表第2族金属の化合物がより好ましく、周期表第2族金属の化合物が更に好ましい。周期表第1族金属の化合物の中でも、リチウム、カリウム、ナトリウムの化合物が好ましく、リチウム、ナトリウムの化合物がより好ましく、ナトリウムの化合物が更に好ましい。周期表第2族金属の化合物の中でも、マグネシウム、カルシウム、バリウムの化合物が好ましく、カルシウム、マグネシウムの化合物がより好ましく、マグネシウムの化合物が更に好ましい。これらの金属化合物は主として水酸化物や塩等として使用される。塩として使用される場合の塩の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩;酢酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等のカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩等の燐含有の塩;アセチルアセトナート塩;等が挙げられる。触媒金属は、更にメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドとして用いることもできる。
これらのうち、好ましくは、周期表第2族金属から選ばれた少なくとも1種の金属の酢酸塩や硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アルコキシドが用いられ、より好ましくは周期表第2族金属の酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、更に好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩や炭酸塩、水酸化物が用いられ、特に好ましくはマグネシウム、カルシウムの酢酸塩が用いられ、最も好ましくは酢酸マグネシウムが用いられる。
これらのエステル交換触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
エステル交換触媒の使用量は、得られるポリカーボネートジオール中に残存しても性能に影響の生じない量であることが好ましい。
エステル交換触媒の使用量は、原料ジヒドロキシ化合物の重量に対する金属の重量比としての上限を、500ppmとすることが好ましく、100ppmとすることがより好ましく、50ppmとすることが更に好ましい。一方、下限は十分な重合活性が得られる量、すなわち、0.01ppmとすることが好ましく、0.1ppmとすることがより好ましく、1ppmとすることが更に好ましい。
<1−5.重縮合反応>
(反応温度)
重縮合反応の際の反応温度の下限は70℃であることが好ましく、100℃であることがより好ましく、130℃であることが更に好ましい。
反応温度の上限(最高温度)は、190℃未満であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、170℃以下であることが更に好ましい。最高温度を前記の値とすることにより、得られるポリカーボネートジオールの着色、エーテル構造の生成、原料であるジヒドロキシ化合物や副生する環状カーボネート類等の軽沸成分の濃度上昇、等の品質上の問題が生じるのを防ぐことができる。また軽沸成分の濃度を一定量以下に保つことにより、後述する精製工程にて、精製工程における留出物がコンデンサーで固化、閉塞することを防止することができる。
(反応中のフェノール量)
ポリカーボネートジオールは通常重縮合反応中の溶液に含まれるフェノールの含有量(以下、「重合反応成分に含有されるフェノール濃度」と称す場合がある。)を45重量%以下にすることが好ましく、30重量%以下にすることがより好ましく、20重量%以下にすることが更に好ましい。
特に、エステル交換反応の全工程を通じて重合反応成分に含有されるフェノール濃度を上記上限以下に維持することが好ましい。重合反応成分に含有されるフェノール濃度を上記上限以下にすることにより、重縮合反応時の高温条件下においてフェノールの量を制限することができ、着色しにくくなる。
なお、フェノール類の含有量を上記上限値以下とする方法としては、例えば、反応初期から減圧下で反応を行い、生成したフェノールを留去すること等が挙げられる。
また、重合反応成分に含有されるフェノール濃度は、例えば、反応器から反応溶液の一部を一定時間おきに抜き取り、それを核磁気共鳴装置(NMR)、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)及び液体クロマトグラフィー(LC)で定量することにより測定することができる。
(反応圧力)
反応は常圧で行なうこともできるが、エステル交換反応は平衡反応であり、生成する軽沸成分を系外に留去することで反応を生成系に偏らせることができる。従って、通常、反応後半には、減圧条件を採用して軽沸成分を留去しながら反応することが好ましい。
又は、反応の途中から徐々に圧力を下げて生成する軽沸成分を留去しながら反応させていくことも可能である。特に反応の終期において減圧度を高めて反応を行うと、副生したモノアルコール、フェノール及び環状カーボネート等を留去することができるので好ましい。
この際の反応終了時の反応圧力は、上限が通常1.33kPa未満であり、1.07kPa未満であることが好ましく、0.93kPa以下であることがより好ましく、0.70kPa以下であることが更に好ましい。即ち、重縮合反応における最低圧力は通常1.33kPa未満であり、1.07kPa未満であることが好ましく、特に0.93kPa以下であることが好ましく、とりわけ0.70〜0.013kPaであることが好ましい。この圧力が上記上限超過であると、反応性が低下して反応時間が長くなり、得られるポリカーボネートジオールの色調が低下する恐れがある。ただし、この圧力が低過ぎると副生フェノールの留去速度が速いため、重合速度が速くなり、分子量制御が困難になる恐れがあるので、通常0.013kPa以上とする。
これら軽沸成分の留出を効果的に行うために、反応系へ、窒素、アルゴン及びヘリウム等の不活性ガスを流通しながら該反応を行うこともできる。
重縮合反応の際に低沸のジヒドロキシ化合物を使用する場合は、反応初期はジヒドロキシ化合物の沸点近辺で反応を行い、反応が進行するにつれて、徐々に温度を上げて、更に反応を進行させる、という方法も採用可能である。この場合、反応初期に未反応のジフェニルカーボネートの留去を防ぐことができるので好ましい。
更にこれら原料の留去を防ぐ意味で、反応器に還流管をつけて、ジフェニルカーボネートとジヒドロキシ化合物を還流させながら反応を行うことも可能であり、この場合、仕込んだ原料が失われず試剤の量比を正確に合わせることが出来るので好ましい。
(反応方式)
重縮合反応は、バッチ式又は連続式に行うことができるが、本発明では製品の安定性等から連続式で行うことが好ましい。使用する装置は、槽型、管型及び塔型のいずれの形式であってもよく、各種の攪拌翼を具備した公知の重合槽等を使用することができる。装置昇温中の雰囲気は特に制限はないが、製品の品質の観点から、窒素ガス等の不活性ガス中、常圧又は減圧下で行われるのが好ましい。
(反応時間)
重縮合反応は、生成するポリカーボネートジオールの分子量を測定しながら、目的の分子量となったところで終了する。重縮合反応に必要な反応時間は、使用するジヒドロキシ化合物及びエステル交換触媒の種類により大きく異なるので、一概に規定することは出来ないが、通常50時間以下であることが好ましく、20時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることが更に好ましい。
(触媒の失活)
重縮合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオールには触媒が残存し、残存する触媒により、ポリウレタン化反応の制御が出来なくなる場合がある。この残存する触媒の影響を抑制するために、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルの例えばリン系化合物等の触媒失活剤をポリカーボネートジオールに添加し、エステル交換触媒を不活性化することが好ましい。更には添加後、後述のように加熱処理等により、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
エステル交換触媒の不活性化に使用されるリン系化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸等の無機リン酸や、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸トリフェニル等の有機リン酸エステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記リン系化合物の使用量は、特に限定はされないが、前述したように、使用されたエステル交換触媒とほぼ等モルであればよく、具体的には、使用されたエステル交換触媒1モルに対して上限が好ましくは5モル、より好ましくは2モルであり、下限が好ましくは0.8モル、より好ましくは1.0モルである。これより少ない量のリン系化合物を使用した場合は、反応生成物中のエステル交換触媒の不活性化が十分でなく、得られたポリカーボネートジオールを例えばポリウレタン製造用原料として使用する時、該ポリカーボネートジオールのイソシアネート基に対する反応性を十分に低下させることができない場合がある。また、この範囲を超えるリン系化合物を使用すると得られたポリカーボネートジオールが着色してしまう可能性がある。
リン系化合物を添加することによるエステル交換触媒の不活性化は、室温でも行う事ができるが、加熱処理するとより効率的である。この加熱処理の温度は、特に限定はされないが、上限が好ましくは150℃、より好ましくは120℃、更に好ましくは100℃であり、下限は、好ましくは50℃、より好ましくは60℃、更に好ましくは70℃である。これより低い温度の場合は、エステル交換触媒の不活性化に時間がかかり効率的でなく、また不活性化の程度も不十分な場合がある。一方、150℃を超える温度では、得られたポリカーボネートジオールが着色することがある。
リン系化合物と反応させる時間は特に限定するものではないが、通常1〜5時間である。
(精製)
重縮合反応により得られたポリカーボネートジオール生成物は、該生成物中のポリマー末端に水酸基を有さない不純物、フェノール、原料ジヒドロキシ化合物、ジフェニルカーボネート、副生する軽沸の環状カーボネート及び添加した触媒等を除去する目的で精製することができる。
その際の精製は、軽沸化合物については、蒸留で留去する方法が採用できる。蒸留の具体的な方法としては、減圧蒸留、水蒸気蒸留、薄膜蒸留等特にその形態に制限はなく、任意の方法を採用することが可能であるが、中でも薄膜蒸留が効果的である。
薄膜蒸留条件としては特に制限はないが、薄膜蒸留時の温度は、上限が250℃であることが好ましく、200℃であることが好ましい。また、下限が120℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留時の温度の下限を前記の値とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分となる。また、上限を250℃とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
薄膜蒸留時の圧力は、上限が500Paであることが好ましく、150Paであることがより好ましく、50Paであることが更に好ましい。薄膜蒸留時の圧力を上記上限値以下とすることにより、軽沸成分の除去効果が十分に得られる。
また、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度は、上限が250℃であることが好ましく、150℃であることがより好ましい。また、下限が80℃であることが好ましく、120℃であることがより好ましい。
薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの保温の温度を上記下限以上とすることにより、薄膜蒸留直前のポリカーボネートジオールの流動性が低下するのを防ぐことができる。一方、上記上限以下とすることにより、薄膜蒸留後に得られるポリカーボネートジオールが着色するのを防ぐことができる。
また、水溶性の不純物を除くために、水、アルカリ性水、酸性水、キレート剤溶解溶液等で洗浄してもよい。その場合、水に溶解させる化合物は任意に選択できる。
[2.ポリカーボネートジオール]
本発明のポリカーボネートジオールは、構造単位(A)と構造単位(B)とを含むもの、又は構造単位(A)を所定割合以上含むものである。これらのポリカーボネートジオールを用いて、ポリウレタンにしたときに、良好な耐薬品性、低温特性、耐熱性を得ることができる。
<2−1.構造上の特徴>
本発明のポリカーボネートジオール中の構造単位(A)は、例えば、下記式(C)で表される。また、構造単位(B)は、例えば、下記式(D)で表される。
Figure 0006442956
(上記式(D)中、Rは式(B)におけると同義である。)
本発明の構造単位(A)と構造単位(B)を含むポリカーボネートジオールは、Rが異なる構造単位(B)が含まれていてもよい。即ち、上記式(D)中、Rは1種類であっても複数種であってもよい。
上記式(D)中、Rが無置換の炭化水素基であると、本発明のポリカーボネートジオールを用いて製造されるポリウレタン等の耐薬品性、低温特性、耐熱性がいずれも良好となる点において好ましい。
本発明の構造単位(A)と構造単位(B)とを含むポリカーボネートジオールは、構造単位(A)と構造単位(B)との割合(以下「(A):(B)」と称す場合がある。)は、モル比率で、(A):(B)=10:90〜99:1であることが好ましく、50:50〜99:1であることがより好ましく、60:40〜97:3であることが更に好ましく、70:30〜95:5であることが特に好ましく、80:20〜90:10であることが最も好ましい。構造単位(A)の含有割合が多くなりすぎると、ポリウレタンとしたときの低温特性が十分でなくなる場合がある。一方、構造単位(A)の含有割合が少なくなりすぎると、ポリウレタンとしたときの耐薬品性が十分ではない可能性がある。
本発明の構造単位(A)と構造単位(B)とを含むポリカーボネートジオールは、構造単位(A)及び構造単位(B)以外の他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよいが、ポリカーボネートジオールのジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対する、構造単位(A)と構造単位(B)の合計の割合は、耐薬品性、低温特性の物性のバランス上、50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上が更に好ましく、90モル%以上が特に好ましく、95モル%以上が最も好ましい。
また、本発明の構造単位(A)を所定割合以上含むポリカーボネートジオールは、ポリカーボネートジオールのジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対する、構造単位(A)の割合が90モル%以上であれば、構造単位(A)以外の他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよいが、構造単位(A)の割合は、耐薬品性、低温特性の物性のバランス上、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
本発明のポリカーボネートジオールのジヒドロキシ化合物に由来する全構造単位に対する各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の割合はポリカーボネートジオールをアルカリで加水分解して得られる各ジヒドロキシ化合物をガスクロマトグラフィーで分析して求めることができる。
本発明の構造単位(A)及び構造単位(B)を含むポリカーボネートジオールは、構造単位(A)及び構造単位(B)を含んでいれば、それらが共重合体であっても、異種のポリカーボネートジオールの混合物であってもよいが、低温特性、柔軟性が良好となることより、好ましくは共重合体である。また共重合体の場合はブロック共重合体でもランダム共重合体でもよいが、ランダム共重合体のポリカーボネートジオールが低温特性、柔軟性が良好となることより好ましい。
<2−2.分子鎖末端>
本発明のポリカーボネートジオールの分子鎖末端は主に水酸基である。しかしながら、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物との反応で得られるポリカーボネートジオールの場合には、不純物として一部分子鎖末端が水酸基ではないものが存在する可能性がある。その具体例としては、分子鎖末端がアルキルオキシ基又はアリールオキシ基のものであり、多くはカーボネート化合物由来の構造である。
例えば、カーボネート化合物としてジフェニルカーボネートを使用した場合はアリールオキシ基としてフェノキシ基(PhO−)、ジメチルカーボネートを使用した場合はアルキルオキシ基としてメトキシ基(MeO−)、ジエチルカーボネートを使用した場合はエトキシ基(EtO−)、エチレンカーボネートを使用した場合はヒドロキシエトキシ基(HOCHCHO−)が分子鎖末端として残存する場合がある(ここで、Phはフェニル基を表し、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す)。
本発明の構造単位(A)と構造単位(B)とを含むポリカーボネートジオールの分子鎖末端は、全末端数に対して、化合物(A)に由来する末端数と化合物(B)に由来する末端数の合計の割合が、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97モル%以上、最も好ましくは99モル%以上である。また、ポリカーボネートジオールの分子鎖末端がカーボネート化合物に由来する末端基の数の割合は、全末端数に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
また、本発明の構造単位(A)を所定割合以上含むポリカーボネートジオールの分子鎖末端は、全末端数に対して、化合物(A)に由来する末端数の割合が、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97モル%以上、最も好ましくは99モル%以上である。また、ポリカーボネートジオールの分子鎖末端がカーボネート化合物に由来する末端基の数の割合は、全末端数に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
上記範囲にすることにより、ポリウレタンとしたときに所望の分子量とすることが容易となり、耐薬品性、低温特性のバランスに優れたポリウレタンの原料となることが可能となる。
<2−3.分子量・分子量分布>
本発明のポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)の下限は好ましくは250であり、より好ましくは300、更に好ましくは400である。一方、上限は好ましくは5,000であり、より好ましくは4,000、更に好ましくは3,000である。ポリカーボネートジオールのMnが上記下限未満では、ウレタンとした際に柔軟性が十分に得られない場合がある。一方、上記上限超過では粘度が上がり、ポリウレタン化の際のハンドリングを損なう可能性がある。
本発明のポリカーボネートジオールの分子量分布である重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は特に限定されないが、下限は好ましくは1.5であり、より好ましくは1.8である。上限は好ましくは3.5であり、より好ましくは3.0である。分子量分布が上記範囲を超える場合、このポリカーボネートジオールを用いて製造したポリウレタンの物性が、低温で硬くなる、伸びが低下する等の傾向があり、分子量分布が上記範囲未満のポリカーボネートジオールを製造しようとすると、オリゴマーを除く等の高度な精製操作が必要になる場合がある。
ポリカーボネートジオールの重量平均分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量はポリスチレン換算の数平均分子量であり、通常ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定により求めることができる。
<2−4.水酸基価>
本発明のポリカーボネートジオールは、前述のようにカーボネート化合物に由来する末端基の割合が全末端数に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下で、分子鎖の両末端基は基本的には水酸基であり、ポリウレタン化反応の際はこの水酸基がイソシアネートと反応できる構造となっている。
本発明のポリカーボネートジオールの水酸基価は、特に限定されないが下限は通常10mgKOH/gであり、20mgKOH/gであることが好ましく、35mgKOH/gであることがより好ましい。また、上限は通常450mgKOH/g以下であり、380mgKOH/gであることが好ましく、230mgKOH/gであることがより好ましく、160mgKOH/gであることが更に好ましく、120mgKOH/gであることが特に好ましい。水酸基価が上記下限未満では、粘度が高くなりすぎポリウレタン化の際のハンドリングが困難となる場合があり、上記上限超過ではポリウレタンとした時に強度や硬度が不足する場合がある。
水酸基価は、通常知られる方法により測定すればよいが、例えばJIS K1557−1(2007)に記載のアセチル化法により測定、算出することができる。
<2−5.残存モノマー類等>
(フェノール類)
原料として例えばジフェニルカーボネート等の芳香族炭酸ジエステルを使用した場合、ポリカーボネートジオール製造中にフェノール類が副生する。フェノール類は一官能性化合物なので、ポリウレタンを製造する際の阻害因子となる可能性がある上、フェノール類によって形成されたウレタン結合は、その結合力が弱いために、その後の工程等で熱によって解離してしまい、イソシアネートやフェノール類が再生し、不具合を起こす可能性がある。また、フェノール類は刺激性物質でもあるため、ポリカーボネートジオール中のフェノール類の残存量は、より少ない方が好ましい。具体的にはポリカーボネートジオールに対する重量割合として好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは300ppm以下、100ppm以下であることが特に好ましい。
ポリカーボネートジオール中のフェノール類を低減するためには、前述のようにポリカーボネートジオールの重縮合反応時の圧力を絶対圧力として1.33kPa未満の高真空としたり、ポリカーボネートジオールの重縮合後に薄膜蒸留等を行ったりすることが有効である。
(炭酸ジエステル)
ポリカーボネートジオール中には、製造時の原料として使用した炭酸ジエステルが残存することがある。ポリカーボネートジオール中の炭酸ジエステルの残存量は限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として上限が好ましくは5重量%、より好ましくは3重量%、更に好ましくは1重量%である。
ポリカーボネートジオールの炭酸ジエステル含有量が多すぎるとポリウレタン化の際の反応を阻害する場合がある。一方、その下限は特に制限はないが、好ましくは0.1重量%、より好ましくは0.01重量%、更に好ましくは0重量%である。
(ジヒドロキシ化合物)
ポリカーボネートジオールには、製造時に使用したジヒドロキシ化合物が残存する場合がある。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量は、限定されるものではないが、少ないほうが好ましく、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として1重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以下であり、更に好ましくは0.05重量%以下である。ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物の残存量が多いと、ポリウレタンとした際のソフトセグメント部位の分子長が不足し、所望の物性が得られない場合がある。
(環状オリゴマー)
ポリカーボネートジオール中には、製造の際に副生した環状のカーボネート(環状オリゴマー)を含有する場合がある。例えば他のジヒドロキシ化合物として1,3−プロパンジオールを用いた場合、1,3−ジオキサン−2−オンもしくは更にこれらが2分子ないしそれ以上で環状カーボネートとなったもの等が生成してポリカーボネートジオール中に含まれる場合がある。これらの化合物は、ポリウレタン化反応においては副反応をもたらす可能性があり、また濁りの原因となるため、ポリカーボネートジオールの重縮合反応時の圧力を絶対圧力として1.33kPa未満の高真空にしたり、ポリカーボネートジオールの合成後に薄膜蒸留等を行ったりしてできる限り除去しておくことが好ましい。ポリカーボネートジオール中に含まれるこれら環状カーボネートの含有量は、限定されないが、ポリカーボネートジオールに対する重量割合として好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。
(触媒)
本発明のポリカーボネートジオールの製造に前述のエステル交換触媒を用いた場合、製造されたポリカーボネートジオール中にエステル交換触媒が残存することとなるが、得られたポリカーボネートジオール中に、過度に多くの触媒が残存すると、該ポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する際に反応を阻害したり、反応を過度に促進したりする場合がある。
このため、ポリカーボネートジオール中に残存する触媒量は、特に限定されないが、触媒金属換算の含有量として100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
<2−6.APHA値>
本発明のポリカーボネートジオールの色は、得られるポリウレタンの色目に影響を与えない範囲が好ましく、着色の程度をハーゼン色数(JIS K0071−1(1998)に準拠)で表した場合の値(以下「APHA値」と表記する。)は特に限定されないが、100以下が好ましく、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
<2−7.用途>
本発明の製造方法により得られるポリカーボネートジオールを使用したポリウレタンは、耐薬品性、低温特性、耐熱性等に優れるため、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン、エラストマー、接着剤、弾性繊維、医療用材料、床材、塗料、コーティング剤、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物等の原料等の、通常ポリオールが使用される用途全般において好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、各成分の物性等の分析、評価方法は以下の通りである。
[評価方法:ジヒドロキシ化合物]
<酸価>
JIS K1557−5(2007)に準拠して、ジヒドロキシ化合物の酸価を測定した。
[評価方法:ポリカーボネートジオール]
<数平均分子量(Mn)の算出、フェノキシ基量及びフェノール含有量の定量>
ポリカーボネートジオールをCDClに溶解し、400MHz H−NMR(日本電子株式会社製AL−400)を測定し、各成分のシグナル位置より、ポリカーボネートジオール由来の官能基、フェノキシ基、フェノールを同定し、積分値より数平均分子量(Mn)及び各々の含有量を算出した。フェノキシ基の割合は、フェノキシ基の1プロトン分の積分値と末端全体の1プロトン分の積分値の比から求めており、フェノキシ基の検出限界は末端全体に対して0.05%である。また、フェノール含有量の検出限界はサンプル全体の重量に対するフェノールの重量として100ppmである。
<テトラヒドロフラン副生量、ジヒドロキシ化合物含有量の測定>
テトラヒドロフランの副生量は、ポリカーボネートジオールのガスnグラフィー(GC)による定量分析にて以下の条件で測定した。また、テトラヒドロフランの副生率(%)は、テトラヒドロフラン(THF)の副生量(モル)を原料に使用した1,4−ブタンジオールの仕込み量(モル)で除した百分率としてTHF副生率を算出した。
(分析条件)
装置:Agilent 6850(アジレントテクノロジー製)
カラム:Agilent J&W GCカラム DB−1
内径=0.25mm,長さ=30m,膜厚=0.25μm
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
昇温プログラム:70℃(5分間)、
70℃→310℃(40℃/分、6分間)、
310℃(5分間)
<APHA値の測定>
JIS K0071−1(1998)に準拠して、溶融させたポリカーボネートジオールを比色管に入れた標準液と比較してAPHA値を測定した。試薬は色度標準液1000度(1mgPt/mL)(キシダ化学)を使用した。
<加水分解後のジヒドロキシ化合物のモル比率>
ポリカーボネートジオール約0.5gを精秤し、100mL三角フラスコへ入れ、テトラヒドロフラン5mLを添加して溶解した。次にメタノール45mL、25重量%水酸化ナトリウム水溶液5mLを添加した。100mL三角フラスコにコンデンサーをセットし、75〜80℃の水浴で30分間加熱し、加水分解を行った。室温にて放冷した後、6N塩酸5mLを添加して水酸化ナトリウムを中和した。100mLメスフラスコに全量を移し、三角フラスコ内を適量のメタノールで2回洗浄し、洗浄液も100mLメスフラスコに移した。適量のメタノールを添加して100mLとした後、メスフラスコ内で液を混合した。上澄み液を採取してフィルターにてろ過後、ガスクロマトグラフィー(GC)にて分析を行った。各ジヒドロキシ化合物の濃度は、予め標準物質として既知の各ジヒドロキシ化合物により検量線を作成し、ガスクロマトグラフィー(GC)にて得られた面積比から重量%を算出した。
(分析条件)
装置:Agilent 6850(アジレントテクノロジー製)
カラム:Agilent J&W GCカラム DB−WAX
内径=0.25mm、長さ=60m、膜厚=0.25μm
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
昇温プログラム:150℃(2分間)、
150℃→240℃(10℃/分、9分間)、
240℃(10分間)
上記、ガスクロマトグラフィーにて得られた重量%と各ジヒドロキシ化合物の分子量から、ジヒドロキシ化合物のモル比率を算出した。
実施例、比較例、参考例で用いる各原料(1,4−ブタンジオール、1,10−デカンジオール、ジフェニルカーボネート、酢酸マグネシウム4水和物)は市販品の物を用いた。また、実施例1・2・3、比較例2の1,10−デカンジオールは酸価を調整するため、セバシン酸を添加した。また、実施例4の1,4−ブタンジオールは酸価を調整するため、セバシン酸を添加した。
[ポリカーボネートジオールの製造と評価]
<実施例1>
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、酸価が0.01mgKOH/gの1,4−ブタンジオール(以下、1,4BDと略記することがある。三菱化学株式会社製):732.4g、酸価が5.55mgKOH/gの市販の1,10−デカンジオール(以下、1,10DDと略記することがある。):310.9g、ジフェニルカーボネート:1956.4g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:5.1mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:43mg)を入れ、窒素ガス置換した。攪拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、更に0.7kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた後に、170℃まで温度を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら90分間反応させて、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<比較例1>
実施例1において、1,10−デカンジオールとして酸価が0.00mgKOH/gの市販の1,10−デカンジオール(1,10DD)を用いたこと以外は、全て同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<比較例2>
実施例1において、1,10−デカンジオールとして酸価が8.50mgKOH/gの市販の1,10−デカンジオール(1,10DD)を用いたこと以外は、全て同様の方法で反応を実施した。その際、160℃・24kPaでの反応途中に内温が180℃程度まで急激に上昇したため、一時反応を中断して内温を160℃まで冷却させた後、反応を再開してポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、1,10−デカンジオールとして酸価が2.00mgKOH/gの市販の1,10−デカンジオール(1,10DD)を用い、且つその1,10DDを432.9g入れたこと、及び1,4−ブタンジオールを772.8g入れたこと、ジフェニルカーボネートを1794.2g入れたこと、酢酸マグネシウム4水和物水溶液を4.7mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:40mg)入れたこと以外は、全て同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<比較例3>
実施例2において、1,10−デカンジオールとして酸価が0.00mgKOH/gの市販の1,10−デカンジオール(1,10DD)を用いた以外は全て同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、1,10−デカンジオールとして酸価が0.10mgKOH/gの市販の1,10−デカンジオール(1,10DD)を用い、且つその1,10DDを1176.1g入れたこと、及び1,4−ブタンジオールを171.5g入れたこと、ジフェニルカーボネートを1652.4g入れたこと、酢酸マグネシウム4水和物水溶液を5.1mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:43mg)入れたこと以外は、全て同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<比較例4>
実施例3において、1,10−デカンジオールとして酸価が0.00mgKOH/gである市販の1,10−デカンジオール(1,10DD)を用いた以外は全て同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表1に示す。
<参考例>
実施例1において、市販の1,10−デカンジオールにリン酸を加えて、酸価を0.04mgKOH/gとした1,10−デカンジオール(1,10DD)を用いたこと以外は、全て同様の方法で反応を実施した。その結果、反応は全く進行しなかった。
Figure 0006442956
表1より酸価が本発明で規定される範囲内である1,10−デカンジオールを用いた実施例1では、比較例1に比べてフェノールの留出開始時間が速く、即ち、重合反応速度が速く、また、THF副生率が少なく、高品質のポリカーボネートジオールを効率的に製造することができることが分かる。実施例2と比較例3、実施例3と比較例4との対比においても同様の結果となっている。また、1,10−デカンジオールの酸価が大き過ぎる比較例2では、重合反応速度が速すぎるため反応熱による内温の急上昇が確認されており、反応の制御が困難であることが分かる。
<実施例4>
攪拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、酸価が0.40mgKOH/gの1,4−ブタンジオール(1,4BD):933.9g、ジフェニルカーボネート:2066.1g、酢酸マグネシウム4水和物水溶液:5.3mL(濃度:8.4g/L、酢酸マグネシウム4水和物:45mg)を入れ、窒素ガス置換した。攪拌下、内温を160℃まで昇温して、内容物を加熱溶解した。その後、2分間かけて圧力を24kPaまで下げた後、フェノールを系外へ除去しながら90分間反応させた。次いで、圧力を9.3kPaまで90分間かけて下げ、更に0.7kPaまで30分間かけて下げて反応を続けた後に、170℃まで温度を上げてフェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を系外へ除きながら90分間反応させて、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表2に示す。
<比較例5>
実施例4において、1,4−ブタンジオールとして酸価が0.01mgKOH/gである1,4−ブタンジオール(1,4BD)を用いたこと以外は、全て同様の方法で反応を実施し、ポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの性状及び物性の評価結果を表2に示す。
Figure 0006442956
表2より酸価が本発明で規定される範囲内である1,4−ブタンジオールを用いた実施例4では、比較例5に比べてフェノールの留出開始時間が速く、即ち、重合反応速度が速く、また、THF副生率が少なく、高品質のポリカーボネートジオールを効率的に製造することができることが分かる。この結果は表1の結果と同じ傾向であり、酸価の高すぎる1,4−ブタンジオールを用いれば、比較例2の結果同様、反応の制御が困難になると考えられる。

Claims (2)

  1. 下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネートジオールの製造方法において、該ポリカーボネートジオール中の下記式(A)で表される化合物に由来する構造単位の割合が、該ポリカーボネートジオール中のジヒドロキシ化合物に由来する全ての構造単位に対して、100モル%であって、且つ原料として用いる下記式(A)で表される化合物の酸価が0.03〜8.00mgKOH/gであり、
    カーボネート化合物としてジフェニルカーボネートを用いることを特徴とするポリカーボネートジオールの製造方法。
    HO−(CH−OH …(A)
  2. 前記式(A)で表される化合物が植物由来であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネートジオールの製造方法。
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