JP6442175B2 - 構造物の溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、構造物の溶接方法に関する。
複数の金属部材を用いてなる構造物は、各部材を溶接により接合して製造される場合がある。このような構造物として、例えば、鉄道車両用の台車枠が知られている。
図7を用いて、従来の鉄道車両用の台車枠における側梁とばね箱とを溶接により接合する方法を例示する。図7では、説明上、側梁21の側壁部21aを断面構造で示している。図7(a)に示すように、まず、側梁21とばね箱31とを、側梁21の長手方向の端部21bが、ばね箱31の側面31aと接するように配置し、側梁21の端部21b付近において、表面が斜方に傾斜するように板厚方向に形成された端面21cを、ばね箱31の側面31aに突き合わせた状態とする。次に、図7(b)に示すように、側梁21の端面21cと、ばね箱31の側面31aとの間に形成された開先81に、アーク溶接法により、溶接ビード21dを1層溶接または多層盛り溶接して溶接部21eを形成することで、継手溶接を行う。次に、図7(c)に示すように、溶接部21eの上に、アーク溶接法により肉盛部21fを形成することで、肉盛溶接(余盛溶接)を行う。このとき、目的形状の接合部のサイズよりも大きい余盛が形成されるように、肉盛部21fを形成する。次に、図7(d)の点線に示すように、溶接部21eと肉盛部21fとにおける不要な余盛を除去加工することにより、接合部w8を目的形状に整形して仕上げる。余盛の除去加工の方法としては、例えば、ビットまたは砥石を用いて余盛を除去する方法や、ガウジングにより、アーク熱を利用して余盛を部分的に溶融し、溶融金属を圧縮空気で飛ばして除去する方法等が挙げられる。以上の各ステップを経ることにより、側梁21の側壁部21aの側面21a1とばね箱31の側面31aとにわたって接合部w8が形成され、この接合部w8によって、側梁21及びばね箱31が接合される。
ここで、特許文献1には、上記した側梁とばね箱との溶接法と同様の方法に基づいて、鉄道車両用の台車枠における各側梁と各横梁とを溶接により接合する方法が開示されている。
特開2013−133023号公報
鉄道車両用の台車枠のような構造物を製造する場合において、肉盛溶接後に、目的形状に合わせて接合部を整形する作業を軽減できれば、構造物の製造効率の向上を図れるので有利である。
そこで、本発明は、肉盛溶接後における接合部の整形作業を従来に比べて軽減可能な構造物の溶接方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る構造物の溶接方法は、金属からなる第一被溶接部材及び第二被溶接部材を第一溶接法により溶接することで溶接部を形成する第一溶接ステップと、前記第一溶接ステップの実施後、前記第一溶接法とは異なる第二溶接法により、前記第一被溶接部材と第二被溶接部材との前記溶接部にニアネットシェイプ肉盛溶接を行う第二溶接ステップとを有する。
上記本発明の一態様に係る構造物の溶接方法によれば、第一溶接ステップにおいて、金属からなる第一被溶接部材及び第二被溶接部材を、第一溶接法により溶接し、第二溶接ステップにおいて、第一溶接法とは異なる第二溶接法により、第一被溶接部材と第二被溶接部材との溶接部分にニアネットシェイプ(near net shape)肉盛溶接を行う。
このように、異なる溶接法を二段階で使い分けることで、第一溶接法により、溶接部を効率よく形成するとともに、第二溶接法により、溶接部に対してニアネットシェイプ肉盛溶接を行うことで、目的形状に近い接合部を形成することができる。従って、第二溶接ステップの実施後には、接合部の目的形状を意識した余盛の除去加工を軽減できるので、第一被溶接部材及び第二被溶接部材の溶接による接合を好適に実現しつつ、目的形状の接合部を形成するための作業軽減を図ることが可能である。
結果として、肉盛溶接後における接合部の整形作業を従来に比べて軽減可能な構造物の溶接方法を提供できる。
実施形態1に係る鉄道車両用の台車枠の構成例を示す斜視図である。 実施形態1に係る鉄道車両用の台車枠における側梁の断面図である。 実施形態1に係る鉄道車両用の台車枠における側梁とばね箱との接合部周辺の構造を示す部分外観図である。 実施形態1に係る鉄道車両用の台車枠の製造ステップを示す図である。 実施形態1に係る鉄道車両用の台車枠の溶接継手施工の様子を接合部断面で示した図である。(a)は、配置ステップ、(b)は、第一溶接ステップ、(c)は、第二溶接ステップ、(d)は、表面処理ステップをそれぞれ示す図である。 実施形態2に係る鉄道車両用の台車枠の溶接継手施工の様子を接合部断面で示した図である。(a)は、配置ステップ、(b)は、第一溶接ステップ、(c)は、第二溶接ステップ、(d)は、表面処理ステップをそれぞれ示す図である。 従来の鉄道車両用の台車枠の溶接継手施工の様子を継手断面で示した図である。(a)は、配置ステップ、(b)は、継手溶接ステップ、(c)は、肉盛溶接ステップ、(d)は、除去加工ステップをそれぞれ示す図である。
以下、本発明の実施形態を各図を参照して説明する。
<実施形態1>
図1に、実施形態1に係る鉄道車両用の台車枠1の構成例を示す。図2に、台車枠1における側梁2の断面図を示す。図3に、台車枠1における側梁2とばね箱3との接合部w2周辺の構造を示す。
台車枠1は、互いに間隔をおいて並設された一対の側梁2と、一対の側梁2の長手方向の各端部に接合されたばね箱3と、一対の側梁2の間において、各側梁2に接合された一対の横梁4と、一対の横梁4の間において、各横梁4を接合するように設けられた一対の繋梁5と、各横梁4の側面4aに対し、片持ちで接合するように設けられた歯車箱吊受6及び主電動機受7とを有する。台車枠1は、全体的には、金属部材を用いて構成される。
側梁2は、鋼材を用いて構成された長尺の角形パイプ状の部材からなる。図1及び2に示すように、側梁2は、下方に開放されたU字断面状を有し且つ車両の長手方向に延びる本体部2aと、本体部2aの開放側(図2では、紙面下方側)に配された板状部2bとを有して構成される。本体部2a及び板状部2bは、接合部w1にて接合される。図3の点線に示すように、本体部2a及び板状部2bは、長手方向の端部2c付近において、表面が斜方に傾斜するように、板厚方向に形成された端面2dを有する。この端面2dは、側梁2の端部2cの周方向に形成されている。側梁2は、端部2cがばね箱3の側面3aと接触した状態で、端面2d付近に形成された接合部w2によって、ばね箱3と接合される。一対の側梁2には、端部2c付近の下方において、不図示の車軸が軸箱等を介して回転自在に軸支される。
ばね箱(ばね帽)3は、不図示の軸箱に接続されるコイルばね(軸ばね)を収容するケースであり、金属板を用いて構成されるか、もしくは鋳造品に加工を加えて構成される。ばね箱3は、車両の幅方向に延びる側面3aを有し、側面3a付近に形成された接合部w2により、側梁2と接合される。横梁4は、鋼材を用いて構成された長尺の丸形パイプ状の部材からなり、その長手方向の各端部付近において、側面4aの周方向に形成された接合部w3により、一対の側梁2と接合される。繋梁5は、鋼材を用いて構成された略角筒状の筒体からなり、その長手方向の各端部付近に形成された接合部w4により、一対の横梁4と接合される。
歯車箱吊受6と主電動機受7とは、いずれも金属板もしくは金属成型品を用いて構成される。歯車箱吊受6には、不図示の歯車装置が連結される。主電動機受7には、不図示の鉄道車両用の主電動機が連結される。歯車箱吊受6は、横梁4の側面4aにおいて、横梁4の長手方向に延びて形成された接合部w5により、横梁4と接合される。主電動機受7は、横梁4の側面4aにおいて、横梁4の長手方向に延びて形成された接合部w6により、横梁4と接合される。接合部w1〜w6は、溶接時に溶接ビード止端等において発生しうる応力集中を回避または軽減する目的や、外観改善を図る目的のために、平滑な円弧状の曲面の表面を有するように形成されている。
図4及び5を用いながら、台車枠1における側梁2及びばね箱3の接合方法について述べる。図4は、実施形態1に係る台車枠1の製造ステップを示す図である。図5は、台車枠1の溶接継手施工の様子を接合部断面で示した図である。図5において、(a)は、配置ステップS1、(b)は、第一溶接ステップS2、(c)は、第二溶接ステップS3、(d)は、表面処理ステップS4をそれぞれ示す。図5では、説明上、側梁2の側壁部2hを断面構造で示している。
まず、配置ステップS1として、図5(a)に示すように、第一被溶接部材としての側梁2と、第二被溶接部材としてのばね箱3とを、側梁2の長手方向の端部2cと、ばね箱3の側面3aとが接触するように配置し、側梁2の端部2c付近において、斜方に傾斜した表面を有する端面2dを、ばね箱3の側面3aに斜方に突き合わせた状態とする。これにより、端面2d及び側面3aの間に、開先8を形成する。
次に、第一溶接ステップS2として、第一溶接法を用い、端面2dと側面3aとの間において、側梁2とばね箱3とを開先溶接により継手溶接する。具体的には、図5(b)に示すように、開先8に溶接ビード2eを多層盛りして溶接部2fを形成することより、側梁2とばね箱3とを継手溶接する。この第一溶接ステップS2において、開先8に配設する溶接ビード2eの量を、接合部w2の目的形状におけるサイズを超えない量とすることで、使用する溶接金属量を制限する。ここで、第一溶接法としては、特に限定されず、例えば、MAG溶接等、公知のアーク溶接法のいずれかを用いることができる。第一溶接法としては、例えば、溶接部2fを比較的効率よく形成できる溶接法が、台車枠1の製造効率等の観点から望ましい。
次に、第二溶接ステップS3として、第一溶接法とは異なる第二溶接法により、溶接部2fに対してニアネットシェイプ肉盛溶接を行う。具体的には、第二溶接法としてレーザ溶接法を用い、図5(c)に示すように、ニアネットシェイプ肉盛溶接により、溶接部2fを覆うように肉盛部2gを形成する。このときに形成する肉盛部2gは、接合部w2の目的形状に近い形状であって、例えば、側梁2の側壁部2hの側面2h1と、この側壁部2hの側面2h1に連なるばね箱3の側面3aとの間で、滑らかな円弧状表面を有し、且つ、側梁2の長手方向中央側から、ばね箱3に近接する側梁2の端面2d側に向かって、裾広がりとなる形状とする。ここで、ニアネットシェイプ肉盛溶接は、レーザ発振器と粉体供給装置とを備える公知のレーザ粉体肉盛装置(一例として、トルンプ株式会社製のLMD(Laser Metal Deposition)システム)を用いて実施することができる。当該装置の各設定範囲及び使用する肉盛材の粉末粒度は、例えば以下の通りに例示できるが、当該装置の設定範囲及び使用する肉盛材の粉末粒度は、溶接対象とする鋼構造物の形状や特性、及び要求される溶接強度等に合わせて適宜調節することが可能である。この設定のうち、肉盛速度及びレーザ出力については、肉盛部2gが良好な密度で形成されるように設定することが望ましい。
肉盛材:鋼粉体(粉末粒度45〜90μm)
キャリーガス:アルゴンガス
シールドガス:アルゴンガス
肉盛速度:5〜220cm/h
肉盛厚さ:一層あたり0.1〜1.8mm
溶接部幅:0.3〜5mm
レーザ出力:1000〜2000W
当該装置を用いる場合には、レーザ発振器よりレーザを溶接部3cに照射しつつ、レーザ照射領域に対し、肉盛材である鋼粉体をキャリーガス(アルゴンガス)により噴射して供給する。そして、レーザ照射領域の雰囲気をシールドガス(アルゴンガス)により外気と遮断しながら、鋼粉体をレーザで溶解させることにより、ニアネットシェイプ肉盛溶接を実施する。このとき、溶接部幅を幅狭に設定しながら鋼粉体の供給量を制御することによって、溶接部2fにおける溶接ビード2eの上に少量ずつ肉盛溶接がなされるので、溶接部2fに余分な入熱が及びにくく、溶接部2fにおける熱歪及び熱影響部の発生を低減できる。また、溶接部2fにおける母材希釈を低減しつつ、肉盛量を精度よく制御できる。これにより、応力集中を回避し、且つ、良好な外観を有する肉盛部2gを形成できる。ここで、ニアネットシェイプ肉盛溶接をレーザ粉体肉盛溶接により実施すれば、肉盛厚さを精度よく制御できるので、無駄な余盛の少ない所定厚みの肉盛部2gを形成し易い。肉盛部2gは、1層分の肉盛り厚さを有するように形成してもよいし、必要に応じて複数層分の肉盛り厚さを有するように形成してもよい。
ここで、従来の側梁の組立や、側梁とばね箱との接合方法においては、図7を用いて述べたように、例えば、接合部w8の目的形状のサイズよりも大きい余盛を形成するように溶接ビード21dを肉盛りすることで溶接部21eを形成し、その後、溶接部21eと肉盛部21fとにおける余盛の不要部分を除去加工する(図7の(b)〜(d)参照)。このため、肉盛溶接後の作業量が比較的多く、作業者の負担が大きい。図7(d)に示す例では、側梁21とばね箱31との接合部として、滑らかな円弧状表面を有し、且つ、側梁21の長手方向中央側から、ばね箱31に近接する端面21c側に向かって裾広がりとなる形状を有する接合部w8を形成する必要があるが、典型的な形状の溶接ビード21d及び肉盛部21fは、外方に膨出した凸状の表面を有しているので、上記したような目的形状の接合部w8を形成するためには、余盛を多く除去する必要がある。従って、肉盛溶接後における余盛の除去加工の作業量が相当に多くなることが考えられる。
これに対して、本実施形態1では、第一溶接ステップS2において、少ない溶接金属で溶接ビード2eを配設して溶接部2fを形成することにより、側梁2とばね箱3とを接合し、第二溶接ステップS3において、ニアネットシェイプ肉盛溶接を行って肉盛部2gを形成することで、ほぼ目的の形状を有する接合部w2を形成する。従って、第二溶接ステップS3の実施後には、従来のように、接合部の目的形状を意識した余盛の除去加工を行う作業が少ない。よって、本実施形態1では、目的形状の接合部w2を得るまでに要する作業量を、従来に比べて大幅に低減することができる。
また、第二溶接ステップS3において、レーザ粉体肉盛装置を用いることにより、台車枠1を製造するための溶接工程の自動化が拡大可能な他、当該装置を用いてニアネットシェイプ肉盛溶接を自動で行うことによって、接合部の形状の安定化を期待することも可能である。
また、第一溶接ステップS2において、溶接ビード2eの配設量を制限し、且つ、第二溶接ステップS3において肉盛部2gの配設量を精度よく制御することで、接合部w2を形成するために必要な溶接材及び肉盛材の使用量を節約でき、台車枠1の生産コストの低減を図ることもできる。
第二溶接ステップS3の実施後は、肉盛部2gの表面処理を行う表面処理ステップS4を実施する。この表面処理ステップS4では、従来のように、溶接部と肉盛部とにおける多くの余盛を除去加工して肉盛部2gの表面を目的形状に整形する必要はなく、肉盛部2gの表面状態を整えることを目的として実施すればよい。具体的には、図5(d)の点線に示すように、例えば、肉盛部2gの表面L1を軽く研磨する程度(例えば、表面の微細な凹凸を削り取る程度)で実施する。この表面処理ステップS4の実施方法としては、グラインダを使用して研磨する方法を例示することができる。
以上の各ステップS1〜S4を実施することにより、側梁2とばね箱3との突き合わせ部分に接合部w2が形成され、この接合部w2により、側梁2とばね箱3とが接合される。台車枠1においては、その他、側梁2の本体部2aと板状部2bとの突き合わせ部分と、横梁4と側梁2との突き合わせ部分と、横梁4と繋梁5との突き合わせ部分と、横梁4と主電動機受7との突き合わせ部分と、横梁4と歯車箱吊受6との突き合わせ部分とにおいて、上記した各ステップS1〜S4と同様の各ステップをそれぞれ実施することにより、接合部w1及びw3〜w6が形成されている。接合部w1〜w6を形成する際には、いずれも、第二溶接ステップS3においてニアネットシェイプ肉盛溶接を実施することにより、ほぼ目的形状の肉盛部2gが形成される。従って、肉盛溶接後に必要な作業量を低減し、作業者の負担を抑制でき、結果として、台車枠1を効率よく製造できる。このように、本実施形態1によれば、従来に比べて、肉盛溶接後における接合部の整形作業を軽減することが可能な構造物の溶接方法を提供できる。
以下、別の実施形態について、実施形態1との差異を中心に述べる。
<実施形態2>
図6は、実施形態2に係る鉄道車両用の台車枠の溶接継手施工の様子を継手断面として示した図である。図6では、説明上、側梁20の側壁部20fを断面構造で示している。図6において、(a)は、配置ステップS1、(b)は、第一溶接ステップS2、(c)は、第二溶接ステップS3、(d)は、表面処理ステップS4をそれぞれ示す。図6を用いながら、実施形態2に係る台車枠1における側梁2及びばね箱3の接合方法について説明する。
まず、本体部20aの長手方向の端部20b付近において、表面が斜方に傾斜し且つ比較的小さい面積を有する端面20cが、板厚方向に形成された側梁20を用意する。本体部20aの径方向に対する端面20cの表面の傾斜角度は、適宜調節が可能であり、例えば、数°程度以下まで非常に小さい角度に設定してもよい。次に、配置ステップS1として、図6(a)に示すように、側梁20とばね箱3とを、側梁20の端部20bとばね箱3の側面3aとが接触するように配置し、側梁20の端面20cを、ばね箱3の所定位置の側面3aに斜方に突き合わせた状態とする。これにより、端面20cと、側面3aとの間に、狭開先80を形成する。
次に、第一溶接ステップS2として、図6(b)に示すように、狭開先80に、レーザ溶接法により、レーザ照射して、溶接部20dを配設する。このレーザ照射によって形成される溶接部20dの幅は、アーク溶接等の他の溶接法による溶接部の幅に比べて狭くできるため、狭開先80に幅狭の溶接部20dを良好に形成できる。これにより、第一溶接ステップS2を短時間で実施することが可能である。尚、この第一溶接ステップS2では、側梁20とばね箱3とをレーザ照射により直接溶接してもよいし、狭開先80に供給したフィラーを用い、このフィラーをレーザ照射して溶解させることにより、側梁20とばね箱3とを溶接してもよい。
次に、第二溶接ステップS3として、図6(c)に示すように、溶接部20dを覆うようにニアネットシェイプ肉盛溶接を実施することにより、肉盛部20eを形成する。第二溶接ステップS3の実施方法は、実施形態1と同様であり、これによって肉盛部2gと同様の形状を有するように肉盛部20eを形成する。このとき、ニアネットシェイプ肉盛溶接によって、目的形状に近い形状を有する肉盛部20eを形成することができる。
第二溶接ステップS3を実施した後、表面処理ステップS4を実施し、図6(d)の点線に示すように、肉盛部20eの表面L2を軽く研磨することで接合部w7を形成する。このように、実施形態2においても、実施形態1と同様に、第二溶接ステップの実施後において、接合部w7の目的形状を意識した余盛の除去加工を軽減できるので、従来に比べて、肉盛溶接後における接合部の整形作業を軽減することが可能な構造物の溶接方法を提供できる。
<その他の事項>
尚、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前記各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を、他の実施形態に適用してもよい。
上記実施形態1において、ばね箱3の断面形状は、矩形に限定されず、多角形状、円形及び楕円状のいずれかでもよい。また、横梁4の断面形状も、円形に限定されず、矩形状、多角形状及び楕円状のいずれかでもよい。
上記各実施形態では、台車枠1に形成される接合部w1〜w7の全てを各ステップS1〜S4を実施することで形成する必要はない。接合部に発生しうる応力集中を回避する必要や、接合部の外観改善を図る必要がある場合等に、各ステップS1〜S4を実施することで接合部を形成すればよい。従って、接合部w1〜w7のうち、いずれかの接合部のみ(例えば、接合部w1及びw2のみ)の全線または一部分を各ステップS1〜S4を実施することで形成してもよい。
上記各実施形態において、表面処理ステップS4は、必須ではない。従って、表面処理ステップS4は、省略してもよい。
上記各実施形態において、溶接対象とする構造物は、台車枠に限定されない。鋼構造物は、台車枠以外の鉄道車両の構成要素でもよい。また、構造物は、例えば、鉄道車両以外の各種車両、船舶、建機、鉄骨、橋梁等のいずれかでもよい。
また、構造物は、鋼構造物である必要はなく、鋼以外の金属、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタンのいずれかを含む金属を用いてなる構造物でもよい。
上記各実施形態の第二溶接ステップS3において実施するニアネットシェイプ肉盛溶接法は、レーザ粉体肉盛溶接法に限定されず、この他、例えば、プラズマ粉体肉盛溶接法であってもよい。
上記各実施形態において、継手溶接の形式は、例示した側梁と端梁との継手溶接のような、いわゆるT字継手に限定されない。例えば、突き合わせ継手、角継手、当て金継手、重ね継手、へり継手等、公知の形式の継手溶接のいずれかの形式であってもよい。また、溶接の形式は、開先溶接であることは必須ではなく、すみ肉溶接であってもよい。
以上のように、本発明の各態様に係る構造物の溶接方法は、従来に比べて、肉盛溶接後における溶接部の整形作業を軽減可能な構造物の溶接方法を提供できる優れた効果を有する。従って、この効果の意義を発揮できる構造物の溶接方法として広く適用すると、有益である。
S1 配置ステップ
S2 第一溶接ステップ
S3 第二溶接ステップ
S4 表面処理ステップ
1 鉄道車両用の台車枠(鋼構造物)
2、20 側梁(第一被溶接部材)
3 ばね箱(第二被溶接部材)
3a 側面
2d、20c 端面
2f、20d 溶接部
2g、20e 肉盛部

Claims (7)

  1. 金属からなる第一被溶接部材及び第二被溶接部材を第一溶接法により開先溶接することで、前記第一被溶接部材と第二被溶接部材との間の開先から突出する程度に溶接部を形成する第一溶接ステップと、
    前記第一溶接ステップの実施後、前記第一溶接法とは異なる第二溶接法により、前記開先から突出した前記溶接部の表面にニアネットシェイプ肉盛溶接を行う第二溶接ステップとを有し、
    前記第二溶接法が、粉体肉盛溶接法である、構造物の溶接方法。
  2. 前記ニアネットシェイプ肉盛溶接は、粒度が45〜90μmの粉体の肉盛材を用いて行う、請求項1に記載の構造物の溶接方法。
  3. 前記ニアネットシェイプ肉盛溶接により前記溶接部に形成された肉盛部の表面処理を行う表面処理ステップを有する、請求項1または2に記載の構造物の溶接方法。
  4. 前記第一溶接法は、アーク溶接法またはレーザ溶接法である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造物の溶接方法。
  5. 前記第二溶接法は、レーザ粉体肉盛溶接法である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造物の溶接方法。
  6. 前記第一溶接ステップの実施前において、前記第一被溶接部材の端面を前記第二被溶接部材の側面に突き合わせるように、前記第一被溶接部材及び前記第二被溶接部材を配置する配置ステップを有し、
    前記第一溶接ステップでは、前記第一被溶接部材及び前記第二被溶接部材を、前記第一被溶接部材の端面と、前記第二被溶接部材の側面とにおいて溶接することで、前記溶接部を形成し、
    前記第二溶接ステップでは、前記ニアネットシェイプ肉盛溶接により、前記第一被溶接部材の中央側から、前記第一被溶接部材の端面側に向かって裾広がりの形状を有する肉盛部を、前記溶接部を覆うように形成する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の構造物の溶接方法。
  7. 前記第一被溶接部材及び前記第二被溶接部材は、鉄道車両用部材である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の構造物の溶接方法
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