JP6442101B1 - 塗膜除去工法および被覆部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 既存塗膜を飛散および拡散させることなく、作業者の健康安全性を確保しつつ、作業工程を簡略化して、効率よく確実に既存塗膜を除去する。
【解決手段】 塗膜剥離剤4を用いて既存塗膜3を除去する塗膜除去工法であって、既存塗膜3を塗膜剥離剤4で被覆する塗布工程と、既存塗膜3の外側に複数の被覆部材5を添え付ける設置工程と、被覆部材5を取り外し、軟化した既存塗膜3を剥がし取る除去工程とを備える。被覆部材5は磁性を有する突状部材52を備え、前記設置工程においては被覆部材5を磁性吸着させることによって取り付ける。
【選択図】 図5

Description

本発明は、塗膜除去工法およびこの工法に用いられる被覆部材に関する。
橋梁等の各種鋼構造物では、複数の目的の異なる塗料を数層に重ねることで防食性能を得る塗装がなされており、風雨や紫外線等の様々な環境要因により表面の塗膜に経年劣化が起こることから、定期的に再塗装が行われてきた。かかる再塗装は、既存塗膜の上から新たな塗料を塗り重ねることによって行われることが多かったが、近年では何重にも積層された塗膜をすべて除去し、鋼構造物の表面を露出させた後、新たに防蝕塗装をしなおすことで、鋼構造物の長寿命化と安全性能の向上を図ることが好ましいとされている。
従来、既存塗膜を全て除去するには、ブラスト工法や電動工具処理等の機械的な破壊力によるのが一般的であった。ところが、このような手法では、塗膜ダスト(粉じん)の飛散や騒音等の問題があり、特に、既存塗膜に鉛化合物、六価クロム化合物、またはPCB(ポリ塩化ビフェニル)等の有害物質が含まれていると、塗膜ダストによる環境汚染や作業者の健康への影響が懸念された。
近時は、塗膜剥離剤を用いた湿式による塗膜除去工法が推奨されており、作業者の健康安全性を確保するとともに周辺環境に配慮することが要求されている。例えば特許文献1、2等には、浸透剤と有機溶剤とを主剤とする塗膜剥離剤によって、塗膜を膨潤および軟化させ、既存塗膜の付着力を低下させたうえで除去することが開示されている。
特開2012−166143号公報 特開2016−159602号公報
前記従来の塗膜除去工法では、積層された塗膜の厚さや使用された塗料の種類、また施工時の気温等によっては、塗膜剥離剤の有効成分が既存塗膜の最下層まで到達せず、特に冬場など低温時には塗膜剥離剤の反応性が低下した。そのような場合、上層の塗膜しか除去することができず、一度に全ての塗膜を除去しきれないことが多々あった。
そのため、塗膜剥離剤の塗布作業と、軟化塗膜の除去作業とを、複数回にわたって繰り返して実施し、軟化しない既存塗膜に対しては電動工具等を用いて切削除去しなければならないという実情があった。かかる作業を複数回にわたり繰り返し実施することは、工期が長期化するだけでなく、塗膜ダストの発生、塗膜剥離剤の使用量の増加、および毎回更新が必要となる作業者の防塵服の問題等、種々の問題点を含んでおり、コストの大幅な増大を招いていた。
また、図16に示すように、鋼構造物10の表面の既存塗膜30は、塗膜剥離剤40によって湿潤すると、徐々に膨れる現象を生じ、自重により垂れ下がり、塗膜剥離剤40が最下層まで浸透しないうちに表層部だけが剥がれてしまうおそれがあった。すなわち、既存塗膜30の厚み方向に、塗膜剥離剤40の有効成分が十分に浸透しにくいという問題点も有していた。
特許文献2には、塗装体の表面をポリエチレンフィルムで覆った後、ポリエチレンフィルムの端縁からその内側に塗膜剥離剤を注入して既存塗膜を剥離するという方法が開示されている。しかし、この方法では、ポリエチレンフィルムに塗膜剥離剤が付着し、均一に塗布できないことに加え、図16に示したような既存塗膜が膨れる現象の発生を抑えることはできない。したがって、塗膜剥離剤を十分に浸透させることは困難であると考えられる。また、ポリエチレンフィルムの四周を塗装体に粘着テープで固定する作業工程が煩雑となり、粘着テープが存在する箇所には塗膜剥離剤が塗布されないので当該箇所には個別に塗膜剥離剤を塗布して処理せねばならず、大型の鋼構造物を対象とすれば作業期間が長期化することは避けられないと考えられる。
本発明は、前記のような実情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、既存塗膜を飛散および拡散させるおそれがなく、作業者の健康安全性を確保しつつ作業工程を簡略化して、効率よく確実に既存塗膜を除去することのできる新たな塗膜除去工法およびこの工法に用いる被覆部材を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、鋼構造物に施されている既存塗膜を、塗膜剥離剤を用いて除去する塗膜除去工法を前提とする。この塗膜除去工法として、既存塗膜を塗膜剥離剤で被覆する工程と、既存塗膜の外側に複数の被覆部材を添え付ける設置工程と、前記被覆部材を取り外し、軟化した既存塗膜を剥がし取る除去工程とを具備させる。また、前記被覆部材には、塗膜剥離剤に対して非透過性を有するとともに鋼構造物に吸着し得る磁性を備えさせ、前記設置工程で、前記被覆部材をその磁性によって鋼構造物に磁性吸着させて設置することを特徴としている。
この特定事項により、既存塗膜は、塗膜剥離剤の上から前記被覆部材で覆われた状態で軟化していくので、塗膜剥離剤が浸透する際の既存塗膜の膨れを抑制することができる。そのため、既存塗膜の最下層まで塗膜剥離剤を浸透させることが可能となり、既存塗膜を確実に軟化させられ、塗膜剥離剤の塗布や既存塗膜の除去等の作業工程を何度も繰り返さずとも、既存塗膜を除去することが可能となる。また、前記被覆部材は磁性を備えて構成されるので、その設置作業も取り外し作業も簡単かつ迅速に行うことができる。
前記塗膜除去工法に用いられる前記被覆部材も本発明の技術的思想の範疇である。すなわち、前記被覆部材として、鋼構造物に適用される塗膜剥離剤の非透過性を有する板状のシート本体と、鋼構造物の既存塗膜に対面する前記シート本体の一面に突設された突状部材とを備えさせ、前記シート本体または前記突状部材の少なくとも一方に磁性を有するように構成している。
また、塗膜剥離剤を用いた塗膜除去工法に用いられる被覆部材として、自立性を有する合成樹脂製板状体のシート本体と、前記シート本体の一面に突設される磁性を有する突状部材と、塗膜剥離剤の流通性を有する多孔質シート材とを備えさせ、前記シート本体の一面に多孔質シート材を配設した構成であってもよい。
この特定事項により、前記被覆部材は、塗膜剥離剤が塗布された既存塗膜と、前記被覆部材のシート本体との間に、突状部材による間隙を設けて塗膜剥離剤を保持させた状態で使用されるものとなる。また、前記被覆部材は磁性を有するので鋼構造物に対して磁性吸着させることができ、設置および取り外しを容易に行うことが可能なものとなる。自立性を有する合成樹脂製板状体のシート本体は、塗膜剥離剤を外側から物理的に押さえるものとなり得て、塗膜剥離剤が浮き上がったり垂れたりするのを抑制する作用をなすうえ、繰り返しの使用にも耐え得るものとなる。
前記塗膜除去工法に用いられる被覆部材として、ボルト頭部と該ボルト頭部に装着されたナットとを覆う凹部を有するキャップ本体と、前記キャップ本体の外縁部に設けられた突状部材とを備えさせ、前記突状部材に永久磁石または強磁性体を備えさせた構成としてもよい。
この特定事項により、ボルトおよびナットが装着されて複雑形状を有する箇所の既存塗膜であっても、前記被覆部材を適用して、当該箇所の既存塗膜を塗膜剥離剤で被覆するとともに軟化させることが可能となる。また、前記被覆部材の突状部材は磁性を有するので、ボルトおよびナットを有する箇所に磁性吸着させて用いることができ、設置および取り外しを容易に行うことが可能なものとなる。
本発明では、磁性吸着させることで設置可能な前記被覆部材によって、塗膜剥離剤で被覆した既存塗膜を容易に覆うことができ、塗膜剥離剤を既存塗膜に十分に浸透させることが可能となる。そのため、既存塗膜を飛散および拡散させることなく、作業工程を簡略化し得て、既存塗膜の除去工程を効率よく円滑に行うことが可能となる。
実施形態1に係る塗膜除去工法の作業手順を示す工程図である。 前記塗膜除去工法で対象とする既存塗膜の構成例を示す説明図である。 実施形態1に係る被覆部材を示す平面図である。 前記被覆部材を用いて行う設置工程を説明する部分断面図である。 前記設置工程の完了状態を断面とともに示す斜視図である。 図5の次工程の除去工程を断面とともに示す斜視図である。 前記除去工程に用いられる除去工具を示す斜視図である。 実施形態1に係る被覆部材の他の例を示す平面図である。 実施形態2に係る被覆部材を示し、図9(a)は被覆部材の斜視図、図9(b)はこの被覆部材を用いた塗膜除去工法の一工程を示す説明図である。 実施形態2に係る被覆部材の他の例を示し、図10(a)は底面図、図10(b)は断面図である。 実施形態3に係る塗膜除去工法および被覆部材を示し、図11(a)は塗膜除去工法の一工程を示す断面図、図11(b)は被覆部材を示す斜視図である。 実施形態4に係る被覆部材の一部を拡大して示す分解斜視図である。 実施形態4に係る塗膜除去工法の一工程であって前記被覆部材を示す部分断面図である。 前記塗膜除去工法の一工程であって前記被覆部材を示す部分断面図である。 図15(a)〜図15(d)は前記被覆部材の構成例を示す平面図である。 従来の塗膜除去工法による一工程を断面とともに示す斜視図である。
以下、本発明の実施の形態に係る塗膜除去工法について、図面を参照しつつ説明する。
本発明に係る塗膜除去工法は、例えば橋梁その他の土木構造物、一般建築物、または機械構造物等の鋼構造物の表面に施された高耐久性塗料等による塗膜を更新する塗り替え塗装の一工程として実施することができる。
塗り替え塗装の実施に際しては、施工対象の鋼構造物の周囲に足場を仮設し、防護工を設置する。その後、鋼構造物の表面の素地調整として、塗り替え対象箇所である既存塗膜の表面を必要に応じて水洗いし、既存塗膜を除去する作業を行う。次いで、既存塗膜を除去した鋼構造物の表面に、後工程の塗装のための下地ごしらえをする。
本実施形態に係る塗膜除去工法は、この素地調整の一工程の塗膜除去工程として位置づけられるものであって、以下に詳述する。下地ごしらえでは、鋼構造物の表面に残る錆や黒皮等を除去するとともに粗面化処理を施す。素地調整を行った後、下塗り、中塗り、上塗りと、順に新たな塗料を塗り重ね、形成した新設塗膜の仕上がりを検査する。良好な検査結果が得られたならば、防護工を撤去し、鋼構造物の周囲から足場を撤去する。これにより、塗り替え塗装が完了する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る塗膜除去工法の手順を示す工程図である。塗膜剥離剤を用いた塗膜除去工法にあっては、既存塗膜の剥離性能が既存塗膜の厚みや気温などの環境条件に左右される。そのため、塗膜剥離剤を塗布するのに先立ち、施工対象箇所の既存塗膜の状態や塗膜厚を確認する(S101)。
図2に示すように、既存塗膜3は、鋼構造物を構成する鋼板11の表面に何層にも塗り重ねられて形成されている。例えば、鋼板11の表面には、当該鋼構造物が建設された時に塗装され、熱間圧延された黒皮、鉛系錆止め塗料等の初期塗膜層31が設けられている。既存塗膜3の中には年月を経て劣化の度合いが著しく、積層されている塗料の種類を判別できない場合もある。
度重なる塗り替えの後、最終の塗り替え塗装により形成された表面塗膜層33は、例えば、下層から順に、鉛系錆止め塗料、フェノール樹脂系MIO塗料、塩素ゴム系塗料の中塗り、塩素ゴム系塗料の上塗りによる塗膜が積層されて形成されている。既存塗膜3は、初期塗膜層31から表面塗膜層33まで、全体として塗膜厚tを有する。この塗膜厚tは、例えば鋼構造物が道路橋である場合に、概ね300〜800μmとされている。
(塗布工程)
例示の形態では、かかる既存塗膜3に対して塗膜剥離剤を塗布する(図1、S102)。これにより、既存塗膜3を塗膜剥離剤で被覆する。塗膜剥離剤は、塗膜表面に塗り付けることにより、既存塗膜3を溶解したり、塗膜内部に浸透して既存塗膜3を膨潤および軟化させたりし、既存塗膜3と鋼構造物1との結合力(接着力)を弱め、既存塗膜3を剥離させやすくする作用を有する。塗膜剥離剤としては、例えば高級アルコールを主成分とするものや、有機溶剤を主成分とするもののほか、既存塗膜3の構成に合わせた任意のものを用いることができる。
塗膜剥離剤の塗布方法は特に限定されないが、塗布面積が大きい場合にはエアレススプレー塗装機などにより塗布し、塗布面積が小さい場合や表面形状が複雑な場合には刷毛やローラ等を用いて塗布することが好ましい。また、塗膜剥離剤の塗布後、ウェット膜厚計などにより、予め設定した塗布量の塗膜剥離剤を塗布することができているかを確認する。
次いで、塗膜剥離剤を塗布した既存塗膜3の上に複数の被覆部材を設置して、塗膜剥離剤を覆い、養生する。
(被覆部材)
ここで、既存塗膜3に対して取り付ける被覆部材5について説明する。図3は、被覆部材5の一例を示す平面図であり、図4は被覆部材5を用いた設置工程を説明する部分断面図である。
被覆部材5は、矩形板状のシート本体51と、シート本体51の一面に突設されて磁性を有する突状部材52とを備えている。シート本体51は、鋼構造物に適用される塗膜剥離剤の非透過性を有する合成樹脂系材料により形成されている。
シート本体51には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂などを主材料として形成された板状部材を好適に用いることができる。シート本体51は、例えば、一辺が300mm〜500mmの大きさで形成されるが、これ以上大きくてもまた小さくてもよく、施工対象物に合わせて複数種類の大きさのシート本体51を組み合わせて用いてもよい。シート本体51の厚みは、1mm〜5mmとされて適当な剛性および自立性を有することが好ましい。1mmに満たない厚みであると自立性、耐久性および繰り返し利用性が低下し、5mmを超える厚みであると重量が増加し取り扱い性に劣る。より好ましくは、シート本体51の厚みは2mm程度で形成されることである。シート本体51はかかる厚みの板状体であるので、施工現場にて必要な大きさに切断加工することも可能である。
また、シート本体51は、透明体または半透明体とされることが好ましい。これにより、既存塗膜3の状態や塗膜剥離剤4の浸透具合を、シート本体51を介して目視により確認することが可能となる。
突状部材52は、シート本体51の一面に複数個が均等に配設されている。このシート本体51の一面は、既存塗膜3に対向する面となされる。突状部材52は、永久磁石または強磁性体を備えて、鋼構造物に対して磁性吸着し得る外径10mm〜20mmの突状体とされている。突状部材52そのものが永久磁石または強磁性体からなるものであっても、また、突状部材52の一部に永久磁石または強磁性体が備えられたものであってもよい。突状部材52として電磁石を用いることも可能であり、電磁石であれば磁気吸引力の調整も容易に行うことができる。
図3に示す例では、矩形のシート本体51の四隅近傍に突状部材52が配設されており、それぞれ永久磁石からなる。図4に示すように、突状部材52は、シート本体51の一面から突出して備えられ、その突出量は0.5〜3mmであることが好ましく、より好ましくは1mmとされることである。
(設置工程)
図4に示すように、何層にも積層された既存塗膜3に塗膜剥離剤4を塗布し、その外側から被覆部材5を設置する。被覆部材5は、複数の突状部材52が鋼構造物1に対して磁性吸着するので、シート本体51を塗膜剥離剤4の上にあてがうだけで、被覆部材5を短時間で容易に設置することができる。
既存塗膜3の表面と、被覆部材5のシート本体51との間は、突状部材52によって離間され、これらの間に塗膜剥離剤4が存在することとなる。仮に、突状部材52がシート本体51から突出していないと、シート本体51が既存塗膜3に密着し、塗布した塗膜剥離剤4をシート本体51と既存塗膜3との間から押し出してしまう。これに対して、被覆部材5は突状部材52が磁性吸着作用をなすとともに、シート本体51と既存塗膜3との間に塗膜剥離剤4のための間隙を確保する作用をなす。突状部材52の突出量は、塗布する塗膜剥離剤4の厚みを考慮して設定されることが好ましい。
図5は、被覆部材5を用いた設置工程の完了状態を断面とともに示す斜視図である。図示するように、設置工程では、複数の被覆部材5を、シート本体51同士の間に隙間を設けるようにして配設してもよい。被覆部材5のシート本体51は塗膜剥離剤4に対して密接に配設されるので、塗膜剥離剤4を外側から物理的に押さえ、塗膜剥離剤4が垂れたり塗膜剥離剤4と既存塗膜3の表層部が膨れたりするのを抑制する作用をなす。塗布された塗膜剥離剤4の大部分がシート本体51に覆われることで、シート本体51同士の間に隙間があったとしても、塗膜剥離剤4の浸透作用に影響を及ぼすものとはならない。
このように被覆部材5が設置されることにより、塗膜剥離剤4の揮発作用を抑制しながら養生することができ、既存塗膜3を軟化させることができる(図1、S103)。塗膜剥離剤4の種類や環境条件によって、既存塗膜3の軟化時間は異なる。一般に、冬季など気温や塗布対象面の温度が低い場合、塗膜剥離剤4の浸透速度や軟化反応が遅くなる。このような場合、軟化時間は長くなるが、被覆部材5によって塗膜剥離剤4の揮発作用が抑えられるとともに、表層部が膨れる現象を抑えることができるので、既存塗膜3に十分に浸透させることが可能となる。
気象条件や現場環境によっては、気温や塗布対象面の温度が低い場合がある。このような場合、シート本体51の他面(突状部材52の突出面の反対面)に加温手段または保温手段を配設して施工対象箇所を加温または保温することが好ましい。加温手段としては、空気に接触すること等により発熱する発熱体が挙げられ、シート本体51の他面に接着させて用いることができる。保温手段としては、温度低下を抑止する断熱シートや保温シートなどが挙げられる。これにより、シート本体51を介して塗膜剥離剤4および既存塗膜3の温度を適温化し、塗膜剥離剤4の有効成分を十分に活用することが可能となり、塗膜剥離剤4の反応性の低下を抑制できるとともに軟化時間の短縮化につなげることができる。
鋼構造物1における部材下面や見上げ面に塗膜剥離剤4を塗布した場合であっても、その下側(外側)から被覆部材5を添え付け、無理なく塗膜剥離剤4を覆うことができる。そのため、塗膜剥離剤4や軟化した既存塗膜3が落下するおそれはなく、所定の軟化時間で塗膜剥離剤4を浸透させることが可能となる。
(除去工程)
図6は、既存塗膜3の除去工程を断面とともに示す斜視図である。所定の軟化時間が経過すると、被覆部材5を取り外し、既存塗膜3が軟化したことを確認した後、既存塗膜3を除去する(図1、S104)。取り外した被覆部材5は、繰り返し使用することが可能であり、他の施工対象箇所で再び使用することができる。
除去工程では、軟化した既存塗膜3をスクレーパーや鋲かき等の手工具7を用いて剥がし取る。被覆部材5を設置して養生したことによって、既存塗膜3の初期塗膜層31まで塗膜剥離剤4の有効成分が浸透し、既存塗膜3は柔軟な膜になる。そのため、既存塗膜3を容易に剥がし取り、除去することができる。剥がし取った既存塗膜3には、有害物質が含まれることがあるので、作業場内や作業床に拡散させないように容器に受けることが好ましい。
除去した既存塗膜3を作業場内等へ拡散させない手段として、図7に示す除去工具8を用いて既存塗膜3を除去する構成であってもよい。この除去工具8は、電源設備に接続された工具本体81と、工具本体81の先端部分に延設されたブレード82および噴射ノズル83とを備える。
工具本体81には、噴射ノズル83に接続する液体配管84が備えられている。ブレード82はその幅方向に微振動するように設けられている。噴射ノズル83は先端部がブレード82の刃先に向けられており、ブレード82に向けて液体を噴射する。
かかる除去工具8を用いることで、例えば鋼構造物1の表面に沿ってブレード82を一方向に動かす作業者の一つの動作に対して、ブレード82の微振動が加わり、効果的に既存塗膜3を剥がし取ることが可能となる。このとき、噴射ノズル83から液体を噴射しながら既存塗膜3を剥がすことができる。塗膜剥離剤4を用いて湿式により既存塗膜3を剥離することに加えて、軟化した既存塗膜3に液体を噴射しながら剥がし取ることが可能となる。
これにより、既存塗膜3の飛散および拡散をより一層防止することが可能となり、作業者や周辺環境への影響を最小限に抑えることができる。なお、除去工具8において噴射する液体はアルカリ性溶液であることが好ましい。
次いで、剥がし取った除去塗膜を密閉容器等に回収し、作業場内での飛散および拡散を防止する(図1、S105)。除去塗膜の回収作業の後、それらを定められた場所に移動させる。これにより既存塗膜3の剥離作業が完了する(図1、S106)。
なお、従来の塗膜除去工法によれば、図16に示すように塗膜剥離剤40が最下層まで完全に浸透しないうちに表層部だけが剥がれてしまうことがあり、塗膜剥離剤40の塗布作業と、既存塗膜30の除去作業とを、複数回にわたって繰り返し実施しなければならなかった。その場合、図1において参考破線にて示すように、工程S104から工程S102へと戻り、塗膜剥離剤40の塗布、既存塗膜30の軟化および除去といった作業を繰り返すことなる。
これに対して、実施形態1に係る塗膜除去工法では、複数の被覆部材5を用いることで、工程S104から工程S102へ戻る参考破線にて示された繰り返し作業の必要性が大幅に低減され、またはほとんど必要なくなり、極めて効率よく早期に全工程を終了することが可能となる。その結果、塗膜剥離剤4の使用量を低減することも可能となり、コストが抑えられるだけでなく、作業者や周辺環境への影響に対し十分に配慮し得るものともなる。
なお、被覆部材5は、前記の構成を有するもの限定されず、多様な形態により実施することができる。図8は、実施形態1に係る被覆部材5の他の例を示す平面図である。例えば、図8に示すように、被覆部材5のシート本体51は横長の矩形状に形成され、図3のものより多くの突状部材52を備える。シート本体51には、表裏両面に貫通した注液孔53が備えられている。注液孔53は、シート本体51の複数箇所に均等に配設されていてもよい。
この場合、複数の被覆部材5を添え付ける、設置工程を行った後、設置したシート本体51の注液孔53を介して、シート本体51と既存塗膜3との間隙に塗膜剥離剤4を注入し充填することが可能となる。注入された塗膜剥離剤4はシート本体51と既存塗膜3との間隙を拡散しシート本体51の内側全体に拡がる。これによって、図5に示したように、既存塗膜3を塗膜剥離剤4で被覆することができる(塗布工程)。既存塗膜3には塗膜剥離剤4が塗布されており、設置工程の後に塗膜剥離剤4を注液孔53から補うようにしてもよい。
(実施形態2)
図9(a)および図9(b)は、実施形態2に係る被覆部材5を示す斜視図である。なお、以下の各実施形態に係る塗膜除去工法および被覆部材は、前記実施形態1と基本構成においては共通していることから、前記実施形態1と共通する構成については共通の参照符号を用いて説明し、各形態に特有の構成について詳細に説明する。
図9(a)および図9(b)に示す被覆部材5は、図3および図4に示したシート本体51と突状部材52を備える構成に加えて、多孔質シート材54を備えている。被覆部材5は、シート本体51における突状部材52の突出面に多孔質シート材54が重ねられて配設されている。すなわち、シート本体51に対して突状部材52を被覆するように多孔質シート材54が設けられている。
多孔質シート材54は、多孔質構造を有する合成樹脂製シート材であり、磁性を備えていない。例えば、多孔質シート材54として、メッシュシートや薄板状スポンジ材などを用いることができ、その厚みにおいて塗膜剥離剤4を保持するとともに、厚み方向に流通させることが可能とされている。シート本体51と多孔質シート材54とは、ほぼ同じ大きさおよび厚みを有している。
この形態に係る被覆部材5では、図9(b)に示すように、多孔質シート材54を上にした状態で被覆部材5を配置し、多孔質シート材54に塗膜剥離剤4を塗布し、多孔質シート材54に適量の塗膜剥離剤4を保持させることができる。被覆部材5は、施工対象箇所が鋼構造物の下面や天井面である場合など、作業者が上向き姿勢で作業をしなければならない場面で特に有利に使用することができる。
図示するように、被覆部材5にあらかじめ塗膜剥離剤4を保持させ、鋼構造物1の下面を覆う既存塗膜3に被覆部材5をあてがう。被覆部材5は、突状部材52の磁性により、鋼構造物1に対して多孔質シート材54を介して磁性吸着する。かかる簡単かつ少ない工程により、被覆部材5を既存塗膜3の外側に容易に添え付けることができ、鋼構造物1に固定することができる(設置工程)。同時に、既存塗膜3を塗膜剥離剤4で被覆することができる(塗布工程)。
塗膜剥離剤4は多孔質シート材54に保持された状態で既存塗膜3に浸透し、多孔質シート材54の外側にシート本体51が配設されているので、塗膜剥離剤4が垂れたり、塗膜剥離剤4と既存塗膜3の表層部が膨れたりする現象を抑制するとともに、塗膜剥離剤4の揮発作用を抑制しながら、既存塗膜3を十分に軟化させることができる。
また、被覆部材5は、突状部材52に磁性を備えた構成であるに限らず、シート本体51と突状部材52の少なくとも一方に磁性が備えられていればよい。例えば、図10(a)および図10(b)に示すように、被覆部材5は、シート本体51とシート本体51の一面に添設された突状部材52とを備え、シート本体51に永久磁石または強磁性体を含んで構成されてもよい。
この場合、シート本体51は、シート状磁石や軟質磁性フィルム等の磁性を有するシート材から形成されている。一方、突状部材52は多孔質構造を有するシート材からなり、磁性を備えていない。突状部材52には、メッシュシートや薄板状スポンジ材などを用いることができ、塗膜剥離剤4をその厚み方向に流通させることが可能とされている。
被覆部材5のシート本体51は、突状部材52を介して既存塗膜3に磁性吸着するので、設置工程において被覆部材5を容易に設置することができる。また、突状部材52は既存塗膜3とシート本体51との間を離間させるとともに、多孔質構造によって塗膜剥離剤4を内包して既存塗膜3に浸透させることができる。
(実施形態3)
図11(a)および図11(b)は、実施形態3に係る塗膜除去工法および被覆部材6を示し、図11(a)は塗膜除去工法の一工程を示す断面図、図11(b)は被覆部材6を示す斜視図である。
実施形態3では、鋼構造物1において、複数のボルト13およびナット14等が設けられた構成部材の接合部12を塗膜除去工法の対象箇所として説明する。図11(a)に示すように、鋼構造物1の外表面に加えて、鋼構造物1に突設されたボルト13の頭部と、このボルト13に螺合されたナット14にも、前記同様の既存塗膜3が積層されている。このような既存塗膜3を前記同様の塗膜剥離剤4で被覆する(塗布工程)。
被覆部材6は、ボルト13の頭部およびナット14を覆うキャップ本体61と、キャップ本体61に備えられた突状部材64とを有する。図示するように、キャップ本体61は、ボルト13の頭部およびナット14を覆う形状の凹部62を備えている。キャップ本体61の凹部62の開放側外縁部には鍔部63が延設されている。鍔部63は既存塗膜3および鋼構造物1の表面に対して略平行な方向に延設されている。鍔部63と既存塗膜3との間には、永久磁石または強磁性体からなる突状部材64が備えられている。
キャップ本体61は、鋼構造物に適用される塗膜剥離剤4の非透過性を有する合成樹脂系材料により形成され、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂などを主材料として一体成形されている。
これにより、被覆部材6は、ボルト13およびナット14に対して、キャップ本体61の凹部62を被せるように設置することで、既存塗膜3を備えるボルト13およびナット14が凹部62に収容されるとともに突状部材64が鋼構造物1に磁性吸着して固定されるものとなる。
設置工程では、キャップ本体61の凹部62を、ボルト13およびナット14に被せて設置する。キャップ本体61の凹部62に予め塗膜剥離剤4を充填しておくことで、キャップ本体61をボルト13およびナット14に被せると同時に、既存塗膜3を塗膜剥離剤4で被覆することもできる。これによって、設置工程と塗布工程とを同時に進めることも可能となる。
被覆部材6を設置することにより、塗膜剥離剤4の揮発作用を抑制しながら養生することができ、既存塗膜3を軟化させることができる(図1、S103)。特に、かかる構成部材の接合部12は多様な傾斜角度で鋼構造物1に備えられており、複数のボルト13等が近接して存在し、複雑な凹凸形状を有する。そのため接合部12では、塗膜剥離剤4を均一に塗布することが難しいものである。
これに対して、被覆部材6を用いることで、ボルト13およびナット14の既存塗膜3に対して確実かつ迅速に塗膜剥離剤4を塗布することが可能となる。なお、設置工程の後、既存塗膜3を軟化させる間に、ボルト13およびナット14に対し、被覆部材6を介して振動を付与してもよい。
(実施形態4)
図12〜図15は、実施形態4に係る塗膜除去工法および被覆部材5を示し、図12は被覆部材5の一部を拡大して示す分解斜視図、図13は塗膜除去工法の一工程であって被覆部材5を示す部分断面図、図14は塗膜除去工法の一工程であって被覆部材5の他の形態を示す部分断面図である。また、図15(a)〜図15(d)は、被覆部材5における多様な構成例を示し、シート本体51の一面側を見た概略平面図である。
本実施形態に係る被覆部材5は、前記実施形態1と同様に、矩形板状のシート本体51と、シート本体51の一面に突設された複数の突状部材551を備えている。このシート本体51の一面は、既存塗膜3に対向する面となされる。
シート本体51は、塗膜剥離剤4の非透過性を有する、合成樹脂系材料の板状体により形成されている。例えば、シート本体51には、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂などを主材料として形成された厚さ3mm程度の板状部材を好適に用いることができる。
シート本体51は、透明体または半透明体であり、既存塗膜3の状態や塗膜剥離剤4の浸透具合を、シート本体51を介して目視により確認することが可能とされている。また、図12に示すように、シート本体51には、磁石挿入孔511が表裏両面に貫通して設けられている。
本実施形態に係る被覆部材5において、突状部材551は、磁石挿入孔511に挿入される磁石部55に一体に設けられている。図12に示すように、突状部材551は、永久磁石からなる磁石部55に一体の部材であって、円形状に穿孔された磁石挿入孔511に対して、円柱形状を有する磁石部55の一方の端面に備えられている。突状部材551は、磁石挿入孔511の孔径よりも大きい外径を有し、磁石部55の外方に張り出した鍔状部552を備えた形状を有する。
図12に示すように、磁石部55および突状部材551には、その軸心部に貫通孔553が設けられている。貫通孔553には締結部材としての固定ねじ56が嵌挿される。シート本体51の他面(既存塗膜3に対向しない側の面)には、締結部材としてワッシャー57と雌ねじ部材58が備えられる。
シート本体51の磁石挿入孔511に対して、磁石部55がシート本体51の一面側から挿入されるとともに、磁石挿入孔511を塞ぐように突状部材551があてがわれ、位置決めされる。鍔状部552は磁石挿入孔511の外周部に当接し、抜け止めされる。貫通孔553には固定ねじ56がシート本体51の一面側からねじ込まれて、他端にワッシャー57を介して雌ねじ部材58が螺合される。
これにより、図13に示すように、被覆部材5は、シート本体51の磁石挿入孔511に磁石部55が納められて固定されるとともに、突状部材551がシート本体51の一面から突出した状態に備えられる。突状部材551の突出量は0.5〜3mmであることが好ましく、より好ましくは1mmとされることである。すなわち、突状部材551および鍔状部552は、概ね1mmの厚さを有して形成されることが好ましい。
磁石部55および突状部材551は永久磁石からなり、鋼構造物1に対して磁性吸着する特性を備えている。突状部材551を含めた磁石部55の材質としては、ネオジムと鉄とホウ素を主成分とするネオジム磁石、サマリウムとコバルトを主成分とするサマリウムコバルト磁石等の希土類磁石を用いることができる。また、これら以外にフェライト磁石、アルニコ磁石等が用いられてもよい。これにより、突状部材551は鋼構造物1に対して磁性吸着し、シート本体51を鋼構造物1に固定するものとなる。
また、図13に示すように、本実施形態に係る被覆部材5において、シート本体51の一面は平滑ではなく、粗面51aとされている。粗面51aは、シート本体51の一面の全面を粗面化処理することにより予め形成されている。粗面化処理は、例えば、サンディングマシン等の適宜の研削具を接触移動させる粗し処理(サンディング)、粒子状研磨材を吹き付けるブラスト処理、あるいはサンドペーパ掛けによる処理等によることができる。また、シート本体51の一面がエンボス加工、溝切り加工、または切り目加工等によって粗面化されていてもよく、粗面化処理の方法は特に限定されるものではない。
シート本体51の粗面51aは、設置工程において塗膜剥離剤4と接触する(図4参照)。このとき、粗面51aは塗膜剥離剤4の流動抵抗となって、塗膜剥離剤4が垂れるのを抑制し、塗膜剥離剤4をシート本体51と鋼構造物1との間に安定的に保持する作用をなす。
また、既存塗膜3が比較的厚みを有するなど、鋼構造物1に対して被覆部材5をより強固に固定しようとする場合には、追加マグネット59を用いることができる。図12および図14に示すように、追加マグネット59はリング形状の永久磁石であり、軸心方向の一方にN極、他方にS極が形成され、軸心部に空洞部591を有している。追加マグネット59は、磁石部55と同様の材質であることが好ましく、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石等により形成されている。
図14に示すように、追加マグネット59は、空洞部591に雌ねじ部材58を収容して、シート本体51の他面からワッシャー57の表面に取り付けることができ、ワッシャー57を介して磁石部55に磁性吸着するものとなる。複数個の追加マグネット59を軸心方向に重ねて取り付けることも可能であり、追加マグネット59の設置数を増やすことで、シート本体51の鋼構造物1に対する固定強度をより一層高めることができる。
これにより、既存塗膜3の厚みやシート本体51の大きさ等に応じて、追加マグネット59をシート本体51の各所に取り付け、シート本体51を鋼構造物1に対して吸着させる強度を容易に高めることができる。被覆部材5は、塗膜剥離剤4に対して密接に配設され、複数の追加マグネット59の作用と相まって、塗膜剥離剤4を外側から物理的に押圧し、塗膜剥離剤4が垂れたり膨れたりするのを抑制することが可能となる。
図15各図に示すように、被覆部材5における矩形のシート本体51は、平面視で長方形状や正方形状の多様な形状により形成することができる。例えば、図15(a)ないし図15(c)に示すシート本体51は、長辺が500mmの長方形状の板状体により構成される。また、図15(d)に示すシート本体51は、一辺が300mmの正方形状の板状体により構成される。それぞれ、シート本体51には、磁石部55および突状部材551が均等に複数箇所に配設されている。
この被覆部材5を用いた塗膜除去工法においては、1種類の被覆部材5を用いるに限られず、図15各図に示す複数種類の被覆部材5を組み合わせて用いることも可能である。これにより、鋼構造物1の大きさや形状に関わらず、被覆部材5を用いて効率よく既存塗膜3を除去することが可能になる。
また、塗布工程で既存塗膜3に塗膜剥離剤4を塗布した後、その塗膜剥離剤4の上から被覆部材5を被せて設置する(設置工程)。図13に示すように、被覆部材5は、シート本体51の一面に突状部材551が突出しており、鋼構造物1に対して強固に磁性吸着する。設置工程では、シート本体51を塗膜剥離剤4の上にあてがうだけで作業が済ませられ、複数の被覆部材5を短時間で容易に設置することが可能となる。
設置工程で設置された被覆部材5により、シート本体51と既存塗膜3との間には、塗布された塗膜剥離剤4が安定的に保持される。塗膜剥離剤4はシート本体51の一面が密着され、既存塗膜3を被覆した状態に保たれる。また、シート本体51の一面は粗面51aとされているので、塗膜剥離剤4の流下や液垂れを抑制する。これにより、塗膜剥離剤4の揮発作用が抑えられるとともに、塗膜剥離剤4が膨れたり垂れたりする現象を効果的に抑えることができ、塗膜剥離剤4を既存塗膜3に十分に浸透させることが可能となる。
このように、被覆部材5を設置して養生することによって、既存塗膜3の初期塗膜層31まで塗膜剥離剤4の有効成分を含浸させることが可能となり、既存塗膜3を剥がし取って容易に除去することが可能となる(図6参照)。これにより、既存塗膜3の飛散および拡散を防止することができ、作業者や周辺環境への影響を最小限に抑えつつ、既存塗膜3の除去作業を効率よく実施することができる。
なお、本実施形態に係る被覆部材5にあっては、磁石部55と突状部材551とが一体に構成されてシート本体51に固定されてなる構成について説明したが、本発明はこれに限られず、永久磁石からなる磁石部55に対して、円盤形状の永久磁石または強磁性体からなる別体の突状部材が、ともに、前記締結部材によってシート本体51に固定されてなる構成であってもよく、前記形態に限定されるものではない。また、シート本体51や追加マグネット59等の形状や大きさにあっても、前記形態に限定されるものではなく、どのように構成されてもよい。
以上説明したように、本発明に係る塗膜除去工法および被覆部材5、6は、磁性吸着させて設置可能な被覆部材5、6によって、塗膜剥離剤4で被覆した既存塗膜3を容易に覆うことができ、塗膜剥離剤4を既存塗膜3に十分に浸透させることが可能となる。そのため、既存塗膜3を飛散および拡散させることなく、効率よく剥離除去することが可能となり、作業期間の短縮化やコストの低減化を図ることが可能となる。
本発明に係る塗膜除去工法および被覆部材は、前記実施形態以外にも他の様々な形で実施することができる。したがって、前述の実施形態は本発明の例示であってこれに限定されるものではない。
本発明は、橋梁や建物などの鋼構造物の塗り替え塗装において好適に利用可能である。
1 鋼構造物
11 鋼板
12 接合部
13 ボルト
14 ナット
3 既存塗膜
31 初期塗膜層
33 表面塗膜層
4 塗膜剥離剤
5 被覆部材
51 シート本体
51a 粗面
511 磁石挿入孔
52 突状部材
53 注液孔
55 磁石部
551 突状部材
552 鍔状部
553 貫通孔
56 固定ねじ(締結部材)
57 ワッシャー(締結部材)
58 雌ねじ部材(締結部材)
59 追加マグネット(追加の磁石)
591 空洞部
6 被覆部材
61 キャップ本体
62 凹部
63 鍔部
64 突状部材
7 手工具
8 除去工具
81 工具本体
82 ブレード
83 噴射ノズル
84 液体配管

Claims (15)

  1. 鋼構造物に施されている既存塗膜を、塗膜剥離剤を用いて除去する塗膜除去工法であって、
    既存塗膜を塗膜剥離剤で被覆する工程と、
    既存塗膜の外側に複数の被覆部材を添え付ける設置工程と、
    前記被覆部材を取り外し、軟化した既存塗膜を剥がし取る除去工程とを具備し、
    前記被覆部材は、板状のシート本体と該シート本体の一面に突設された突状部材とを備え、塗膜剥離剤に対して非透過性を有するとともに鋼構造物に吸着し得る磁性を有しており、
    前記設置工程では前記被覆部材をその磁性によって鋼構造物に磁性吸着させ、既存塗膜と前記シート本体とを前記突状部材により離間させて設置することを特徴とする塗膜除去工法。
  2. 請求項に記載の塗膜除去工法において、
    前記被覆部材は、シート本体と突状部材の少なくとも一方が磁性を有することを特徴とする塗膜除去工法。
  3. 鋼構造物に施されている既存塗膜を、塗膜剥離剤を用いて除去する塗膜除去工法であって、
    鋼構造物におけるナットおよびボルト頭部に施された既存塗膜を除去対象とし、
    既存塗膜を塗膜剥離剤で被覆する工程と、
    既存塗膜の外側に複数の被覆部材を添え付ける設置工程と、
    前記被覆部材を取り外し、軟化した既存塗膜を剥がし取る除去工程とを具備し、
    前記被覆部材は、ナットおよびボルト頭部を覆う凹部を有するキャップ本体を備え、塗膜剥離剤に対して非透過性を有するとともに鋼構造物に吸着し得る磁性を有しており、
    前記設置工程では、キャップ本体の凹部を前記ナットおよびボルト頭部に被せ、磁性によって鋼構造物に磁性吸着させて前記被覆部材を設置することを特徴とする塗膜除去工法。
  4. 請求項に記載の塗膜除去工法において、
    前記設置工程の後、前記ナットおよびボルト頭部に対し、前記被覆部材を介して既存塗膜に振動を付与することを特徴とする塗膜除去工法。
  5. 請求項1〜のいずれか一つの請求項に記載の塗膜除去工法において、
    前記被覆部材の外側に加温手段または保温手段を配設し、前記被覆部材を介して既存塗膜を加温または保温することを特徴とする塗膜除去工法。
  6. 請求項1〜のいずれか一つの請求項に記載の塗膜除去工法において、
    前記設置工程では、前記複数の被覆部材を、該被覆部材同士の間に隙間を設けて配設することを特徴とする塗膜除去工法。
  7. 塗膜剥離剤を用いた塗膜除去工法に用いられる被覆部材であって、
    鋼構造物に適用される塗膜剥離剤の非透過性を有する板状のシート本体と、鋼構造物の既存塗膜に対面する前記シート本体の一面に突設された突状部材とを備え、
    前記シート本体または前記突状部材の少なくとも一方に磁性を有することを特徴とする被覆部材。
  8. 塗膜剥離剤を用いた塗膜除去工法に用いられる被覆部材であって、
    自立性を有する合成樹脂製板状体のシート本体と、前記シート本体の一面に突設される磁性を有する突状部材と、塗膜剥離剤の流通性を有する多孔質シート材とを備え、
    前記シート本体の一面に多孔質シート材が配設されてなることを特徴とする被覆部材。
  9. 請求項またはに記載の被覆部材において、
    前記突状部材は永久磁石または強磁性体を含むことを特徴とする被覆部材。
  10. 請求項に記載の被覆部材において、
    前記シート本体は表裏両面に貫通する複数の磁石挿入孔を有し、前記突状部材は前記磁石挿入孔に挿入される磁石部に備えられ、
    前記磁石部は永久磁石からなり、前記磁石挿入孔に挿通されて締結部材により前記突状部材とともに前記シート本体に固定されていることを特徴とする被覆部材。
  11. 請求項10に記載の被覆部材において、
    前記突状部材は前記磁石部に一体に設けられて外方へ鍔状に張り出した鍔状部を備え、
    前記突状部材および前記磁石部の軸心部に、締結部材が取り付けられる貫通孔が設けられていることを特徴とする被覆部材。
  12. 請求項10または11に記載の被覆部材において、
    前記磁石部には、前記シート本体の他面側から追加の磁石が磁性吸着されてなることを特徴とする被覆部材。
  13. 請求項12のいずれか一つの請求項に記載の被覆部材において、
    前記シート本体の前記一面は粗面化されていることを特徴とする被覆部材。
  14. 請求項に記載の被覆部材において、
    前記シート本体は永久磁石または強磁性体を含み、前記突状部材は多孔質構造を有することを特徴とする被覆部材。
  15. 塗膜剥離剤を用いた塗膜除去工法に用いられる被覆部材であって、
    ボルト頭部と該ボルト頭部に装着されたナットとを覆う凹部を有するキャップ本体と、前記キャップ本体の外縁部に備えられた突状部材とを備え、
    前記突状部材は永久磁石または強磁性体を含むことを特徴とする被覆部材。
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