以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の一実施形態である生理用ナプキン10(以下、単に「ナプキン10」ともいう。)の斜視図が示されている。図2は、図1のII−II線断面図である。
ナプキン10は、図1及び図2に示すように、肌当接面を形成する液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する。液不透過性は、液難透過性を含む。ナプキン10は、縦長の形状を有し、長手方向X及び幅方向Yを有している。長手方向Xは、ナプキン10を着用したときの着用者の前後方向と一致し、幅方向Yは、ナプキン10の平面視において、長手方向Xと直交する方向である。
表面シート2及び裏面シート3は、吸収体4の周縁から延出している。ナプキン10の裏面シート3側の面(非肌当接面)には、該ナプキン10をショーツ等の下着に固定するための粘着部(図示略)が設けられている。肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、吸収性物品又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側とは反対側(通常、下着側)に向けられる面である。
ナプキン10の吸収体4は、吸収性コア41と、その表面の概ね全域を被覆する被覆シート42とから構成されている。吸収性コア41は、例えばパルプ等の吸液性繊維の積繊体や、該吸液性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体から構成することができる。吸収性コア41を構成する吸液性繊維としては、例えば、パルプ繊維、レーヨン繊維、コットン繊維、酢酸セルロース等のセルロール系の親水性繊維が挙げられる。セルロール系の親水性繊維に加えて、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル及びポリアミド等の縮合系繊維等を含んでいてもよい。吸収性ポリマーとしては例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。繊維及び吸収性ポリマーは、それぞれ一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。吸収性コア41を被覆する被覆シート42としては、例えばティッシュペーパーや不織布などの液透過性の繊維シートが好適に用いられる。また被覆シート42は、一枚のシートで吸収性コア41の全体を被覆していてもよいし、2枚以上の被覆シートで吸収性コア41の全体を被覆していてもよい。例えば、吸収性コア41の肌当接面側と非肌当接面側とを別々のシートで被覆していてもよい。
裏面シート3の形成材料としては、吸収性物品の裏面シートに従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等を用いることができる。
ナプキン10の肌当接面側における幅方向Yの両側部の位置には、長手方向に延びる防漏カフ8がそれぞれ設けられている。防漏カフ8は、長手方向にそれぞれ延びる自由端8a及び固定域8bを有している。固定域8bは表面シート2上に位置している。そして防漏カフ8は、固定域8bにおいて表面シート2と固定されている。また防漏カフ8の固定域8bは幅方向Yの外方へ延出しており、その延出部位と、裏面シート3の幅方向延出部位とが接合されてサイドフラップ7を形成している。防漏カフ8においては、自由端8a又はその近傍の位置に、長手方向Xに沿って延びる弾性部材8cが伸長状態で取り付けられている。弾性部材8cは、互いに概ね平行に複数本配されている。それら複数本の弾性部材8cが取り付けられた部位は、面状弾性領域8dを形成している。面状弾性領域8dは、幅方向Yに沿って所定の長さを有し、少なくとも着用者の排泄部対向部位の位置に長手方向Xに沿って延びている。そして面状弾性領域8dは、長手方向Xに沿って伸縮可能になっている。弾性部材8cが収縮することで、防漏カフ8は、その自由端8aと固定端8bとの間の位置が、着用者の身体側に向けて略L字状に起立して、面状弾性領域8dが着用者の肌に当接し、液の横漏れを阻止するようになっている。
防漏カフ8における面状弾性領域8dには、ナプキン10の幅方向Yに沿う方向連続して、凸状に隆起した部分(図示せず)と凹状に凹んだ部分(図示せず)とが交互に存在している。この凸状に隆起した部分と凹状に凹んだ部分とは、防漏カフ8を形成するシートを、歯車状に噛み合う一対のロールによって賦型して形成されていることが好ましい。
本実施形態のナプキン10における表面シート2は、図2及び図3(a)に示すように、一方向に延びる筋状の凸条部13及び凹条部14が幅方向に交互に配された凹凸構造の不織布1から構成されている。また、図2及び図3(a)に示すように、表面シート2は、その凹条部14において、隣接する下側シートであるセカンドシート6と接合部14sにおいて接合されており、凸条部13は不織布1とセカンドシート6との間に中空構造を有している。表面シート2を構成する不織布1は、好適には、後述する図11に示すように、繊維径が相互に異なる大径部17及び小径部16,16を有する繊維11を含んでいる。
図3(a)には、本実施形態のナプキン10において、表面シート2として用いた不織布1(以下、「不織布1」ともいう。)の斜視図が示されている。不織布1においては、図3(a)に示すように、凸条部13及び凹条部14が延びる「一方向」は、ナプキン10の長手方向Xと同方向であり、一方向(X方向)とも表記する。
不織布1は、図3(a)に示すように、表裏両面の断面形状がともに厚み方向の上方に向かって凸状をなす複数の凸条部13と、隣り合う凸条部13,13どうしの間に位置する凹条部14とを有している。凹条部14は、表裏両面の断面形状がともに不織布1の厚み方向の上方に向かって凹状をなしている。言い換えれば、凹条部14は、表裏両面の断面形状がともに不織布1の厚み方向の下方に向かって凸状をなしている。そして、複数の凸条部13は、それぞれ、不織布1の一方向(X方向)に連続して延びており、複数の凹条部14も、不織布1の一方向Xに連続して延びる溝状をなしている。凸条部13及び凹条部14は、互いに平行であり、前記一方向(X方向)に直交する方向(Y方向)に交互に配されている。
不織布1は、後述するように、繊維シート1aに、互いに噛み合う一対の凹凸ロール401,402を用いて凹凸加工を施して製造されたものである。上述した不織布1の長手方向Xとは、繊維シート1a(図12参照)に凹凸加工を施して不織布1を製造する際の機械方向(MD,流れ方向)と同じ方向であり、上述した不織布1のX方向に直交する方向Yとは、機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)と同じ方向である。
凸条部13及び凹条部14からなる不織布1の凹凸構造は、ナプキン10の幅方向Yにおける中央域に少なくとも形成されていることが好ましい。これによって、着用者の肌と最も当接しやすい部位に凹凸構造を設けることができるので、蒸れ防止の効果や、着用者の動作への追従効果が確実に発揮される。特に、表面シート2は、サイドフラップ7(図2参照)よりも内側の領域の全域に凹凸構造を有していることが、これらの効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。また、表面シート2は、吸収性コア41と重なる領域の全域に凹凸構造を有していることが好ましい。
図2に示すとおり、先に述べた防漏カフ8の固定域8bは、表面シート2を構成する不織布1における凸条部13の頂部域において、該表面シート2と接合していることが好ましい。防漏カフ8の固定域8bが、凸条部13の頂部域において接合されていることの利点は図4に示すとおりである。
図4は、本実施形態のナプキン10が着用者の身体に装着された状態を模式的に示している。ナプキン10の装着状態においては、防漏カフ8の面状弾性領域8dが、着用者の肌Bと面でもって当接しており、液の横漏れを効果的に防止している。この状態下に、例えば着用者の動作、例えば立ち座りの動作や横になる動作、歩行動作等に起因してナプキン10が幅方向Yに沿って移動した場合、表面シート2の凹凸構造が、その移動に追従して容易に傾倒して、移動に対する緩衝領域として作用する。図4においては、凸条部13が、同図中矢印で示す方向に向けて傾倒している状態が示されている。その結果、防漏カフ8の面状弾性領域8dと着用者の肌Bとの当接状態は、ナプキン10の移動による影響を受けづらくなる。このことに起因して、ナプキン10は、防漏カフ8の面状弾性領域8dと着用者の肌Bとの間での擦れが起こりにくくなり、良好な装着感が維持される。
以上の有利な効果を一層顕著なものとする観点から、防漏カフ8の固定域8bは、凸条部13の頂部域以外の部位においては該凸条部13と接合されていないことが好ましい。凸条部13の頂部域のみで固定域8bが接合されていると、凸条部13の傾倒が起こりやすくなるからである。同様の理由によって、固定域8bは、表面シート2における複数の凸条部13の頂部域において、該表面シート2と接合されていることが好ましい。更に、固定域8bと接合されている凸条部13は、セカンドシート6との間の中空構造が維持されていることが好ましい。更に、ナプキン10の平面視において、防漏カフ8の固定域8bが吸収体4と重なるように、該固定域8bが形成されていることが、同様の理由によって好ましい。「ナプキン10の平面視」とは、ナプキン10の自然状態、すなわち防漏カフ8の弾性部材8cに外力が加わっていない弛緩状態で、ナプキン10を平面視することをいう。以下の説明において「ナプキン10の平面視」というときは、これと同じ意味である。
防漏カフ8の固定域8bと凸条部13の頂部域との接合は、ナプキン10の長手方向Xに沿って、防漏カフ8の全長にわたって連続的に形成することもでき、また、防漏カフ8の全長にわたって間欠的に形成することもできる。
防漏カフ8の固定域8bと凸条部13の頂部域との接合には、これらを構成する材料に応じて適切な接合手段が用いられる。例えば接着剤を用いた接着や熱融着などを用いることができる。表面シート2の凹凸構造の幅方向Yに沿った傾倒を容易に生じさせる観点からは、接着剤によって固定域8bと凸条部13の頂部域とを接合することが好ましい。接着剤としては、例えばホットメルト接着剤を用いることが好ましい。
図3(a)に示すように、表面シート2が、それに隣接する下側シートと凹条部14において接合されていると、該凹条部14及び凸条部13による表面シート2の凹凸構造が安定化されるので、外力に対する凹凸構造の安定性が増すという利点がある。その結果、表面シート2の凹凸構造の幅方向Yに沿った傾倒(図4参照)が一層確実に起こるようになる。この目的のために、本実施形態においては、図5に示すように、表面シート2の凹条部14を、吸収体4を構成するセカンドシート6と接合させることができる。この場合、両者の接合部14sは、ナプキン10の長手方向Xに沿って、これらのシートの全長にわたって間欠的に形成することができる。表面シート2とセカンドシート6とを間欠的に接合することで、両シート間での通気性を確保することができ、ナプキン10の装着状態での蒸れを一層軽減することができる。尤も、表面シート2とセカンドシート6とを長手方向Xの全域にわたって連続して接合することは妨げられない。また、図5に示された表面シート2とセカンドシート6との接合部14sの面積は表面シート2とセカンドシート6との接合強度を所定の強度に設定する目的で、便宜調整が可能である。表面シート2とセカンドシート6との接合には、例えば熱融着や、ホットメルト型接着剤等の接着剤による接合等を採用することができる。
セカンドシート6は、熱可塑性樹脂の繊維の集合体からなる液透過性のものであることが好ましく、特に不織布であることが好ましい。
図3(a)に示すように、表面シート2の凹条部14は、ナプキン10の長手方向において、連続的にセカンドシート6に接合されている。両者の接合部位である接合部14sは、ナプキン10の長手方向Xに沿って間欠的に形成されている。表面シート2とセカンドシート6とを間欠的に接合することで、両シート間での通気性を確保することができ、ナプキン10の装着状態での蒸れを一層軽減することができる。尤も、表面シート2とセカンドシート6とを長手方向Xの全域にわたって連続して接合することは妨げられない。
セカンドシート6は、その2つの表面のうち、吸収体4と対向する面に接着剤が施されており、それによってセカンドシート6と吸収体4とが接合固定されていることが好ましい。接着剤は、セカンドシート6から吸収体4への液の円滑な移行を妨げないような態様で施されていることが好ましい。例えばスパイラル状のパターン、Ω字状のパターン及びビード状のパターンなど、接着剤の非塗工領域が生じるような塗工パターンで施されていることが好ましい。
セカンドシート6を構成する熱可塑性樹脂の繊維の集合体としては、各種製法によって得られた不織布を用いることができる。例えば、カード法又はエアレイド法により得た繊維ウエブにエアスルー法で繊維どうしの熱融着点を形成したエアスルー不織布、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維どうしの熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布、エアレイド法により製造されるエアレイド不織布等の種々の不織布を用いることができる。
特に、セカンドシート6を構成する不織布として、表面シート2よりも親水度が高い親水性不織布を用いることが、表面シート2を透過してきた液を吸収体4へ円滑に移行させる観点から好ましい。セカンドシート6及び表面シート2の親水性は、親水化剤を施す量や、親水化剤の種類、またはシート中にパルプ繊維やレーヨン繊維等の再生セルロース繊維を混綿することによって調整することができる。
とりわけセカンドシート6として、見掛け密度0.01g/cm3以0.15g/cm3以下、特に0.01g/cm3以上0.10g/cm3以下である嵩高の不織布を用いることが好ましい。嵩高不織布をセカンドシート6として用いることで、該セカンドシート6が吸収体4と表面シート2とを隔離するスペーサーとして機能し、吸収体4と表面シート2との間での空気の流通を促進させる。これによっても、ナプキン10の着用状態における蒸れが一層防止される。嵩高不織布としては、例えばエアスルー不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布などを好適に用いることができる。
吸収体4が、吸収性コア41と被覆シート42とから構成されていることは上述のとおりであるところ、図3(a)及び(b)に示すように、吸収性コア41は、相対的に坪量が高く非肌当接面側に向けて突出した凸の形状を有する高坪量部411と、高坪量部411に隣接し、かつ相対的に坪量が低く肌当接面側に向けて凹んだ低坪量部412とを有している。高坪量部411と低坪量部412とは一体成形されている。吸収性コア41は、その非肌当接面側が凹凸構造となっており、かつ肌当接面側が平坦となっている。したがって、吸収性コア41は、その非肌当接面側に、長手方向Xに延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ条溝413を複数有している。吸収性コア41の非肌当接面側を凹凸構造にすると、吸収性コア41に加わる外力によって吸収性コア41が柔軟に変形しやすくなる。その結果、ナプキン10のフィット性が向上する。「一体成形されている」とは、これらの部位が、接着剤や熱融着等の接合手段を介さずに互いに分離不可能に一体化されており、同一の材料から一体的に形成されていることを意味する。これらの部位が一体成形されていると、体液がスムーズに移動し得る連続性を有するようになる。なお簡便のため、図3(a)においては被覆シート42の図示は省略されている。
図3(b)に示すように、低坪量部412は、その複数本が吸収性コア41の長手方向Xと平行に延びている。また低坪量部412は、その複数本が吸収性コア41の幅方向Yにも延びている。その結果、低坪量部412は、吸収性コア41の長手方向及び幅方向に延びる直交した格子状の形状をしている。したがって条溝413も、長手方向及び幅方向に延びる直交した格子状の形状をしている。すなわち、条溝413は、長手方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ長手方向条溝と、幅方向に延び、且つ肌当接面側に向けて凹んだ幅方向条溝を有している。そして、低坪量部412によって形成される格子内に高坪量部411が位置している。したがって個々の高坪量部411は低坪量部412によって区画されており、個々に独立している。別の見方をすると、高坪量部411は、長手方向Xに沿って断続的に延びている。各高坪量部411の形状はほぼ同じであり、平面視して矩形をしており、長手方向の長さが、幅方向の長さよりも大きくなっている。一方、低坪量部412に関しては、該低坪量部412が吸収性コア41の長手方向及び幅方向に延びて互いに連結しており連続体となっている。吸収性コア41の長手方向に延びる低坪量部412の幅と、吸収性コア41の幅方向に延びる低坪量部412の幅とは同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
以上のとおり、吸収性コア41は、坪量が相対的に高い複数の高坪量部411と、坪量が相対的に低い低坪量部412とからなるブロック構造を有しており、かつ各高坪量部411の周囲はその全域にわたって低坪量部412によって囲まれて個々に独立しているブロック領域を備えている。更に、図3(b)には示していないが、ブロック構造の最外周は、低坪量部412によって囲まれていることが好ましい。
高坪量部411と低坪量部412とからなる前記のブロック領域を有することで、吸収性コア41は、その長手方向X及び幅方向Yの双方に柔軟なものとなり、そのことに起因して吸収性コア41は着用者の身体の形状に沿いやすくなる。更に、排泄された液が、厚みの薄い低坪量部に案内されて流れることで、吸収性コア41の長手方向及び幅方向の拡散性を向上させることができる。
高坪量部411の坪量に対する低坪量部412の坪量は、その下限値が好ましくは20%であり、更に好ましくは30%である。上限値は好ましくは80%であり、更に好ましくは70%である。高坪量部411自体の坪量は、その下限値が好ましくは300g/m2であり、更に好ましくは350g/m2である。上限値は好ましくは900g/m2であり、更に好ましくは800g/m2である。低坪量部412に関しては、その坪量の下限値が好ましくは100g/m2であり、更に好ましくは150g/m2である。上限値は好ましくは500g/m2であり、更に好ましくは400g/m2である。坪量は、次のようにして測定される。
吸収性コア41における高坪量部411と低坪量部412の境界線に沿ってフェザー社製の片刃剃刀を用いて切断する。切断して得られた高坪量部411の小片10個をそれぞれ電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定し、高坪量部411の小片1個の平均重量を求める。求めた平均重量を高坪量部411の小片1個当たりの平均面積で除して高坪量部411の坪量を算出する。
次いで、高坪量部411と低坪量部412の境界線のうちナプキン10の縦方向(Y方向)に延びた境界線に沿って、長さ100mm、幅は低坪量部412の幅の設計寸法に合わせて、フェザー社製の片刃剃刀を用いて、細いストライプ状の低坪量部412のY方向の小片5個を切り出す。得られた小片5個をそれぞれ電子天秤(A&D社製電子天秤GR−300、精度:小数点以下4桁)を用いて測定し、平均して低坪量部412の小片1個の平均重量を求める。求めた平均重量を低坪量部412のY方向の小片1個当たりの平均面積で除して低坪量部224bのY方向の坪量を算出する。低坪量部412のX方向についても、低坪量部412のY方向と同様にして坪量を算出する。
高坪量部411は、低坪量部412よりも坪量が大きいだけでなく、厚みも大きくなっている。高坪量部411の厚みに対する低坪量部412の厚みは、その下限値が好ましくは30%であり、更に好ましくは40%である。上限値は好ましくは90%であり、更に好ましくは80%である。高坪量部411自体の厚みは、その下限値が好ましくは2mmであり、更に好ましくは3mmである。上限値は好ましくは8mmであり、更に好ましくは7mmである。低坪量部412に関しては、その厚みの下限値が好ましくは1.5mmであり、更に好ましくは2.5mmである。上限値は好ましくは4.5mmであり、更に好ましくは4mmである。厚みの測定方法は、以下のとおりである。
所定のサイズにサンプルをカットし、5kPaで測定部位を10分間加圧し、除重後すぐに測定を行う。測定箇所は、1枚あたり腹側部、股下部、背側部の任意それぞれ1点以上を含む3点以上とし、サンプル2枚(測定箇所6点以上)の平均で厚みを求める。例えばナプキン10を、鋭利な剃刀で、ナプキン10の長手方向X、又は幅方向Yに切断し、この切断されたサンプルの断面を測定する。肉眼にて測定し難い場合には、前記切断されたサンプルの断面を、例えば、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX−1000)を用いて20〜100倍の倍率で観察し、測定してもよい。
高坪量部411は、低坪量部412よりも坪量が大きいだけでなく、密度も大きくなっている。換言すれば、低坪量部412は高坪量部411よりも低密度になっている。このような構成は、例えば、吸収性コア4を製造する工程において、厚みの大きな領域である高坪量部411を、厚みの小さな領域である低密度部412よりも強くプレスすることで得ることができる。プレスによる圧力は厚みの大きい高坪量部411に集中し、厚みの小さい低坪量部412はプレスにより圧力を受けず圧縮されない。このように、高坪量部411のみが圧縮されることで高坪量部411は 低坪量部412に対して密度が高まる。
高坪量部411の密度に対する低坪量部412の密度は、その下限値が好ましくは44%であり、更に好ましくは51%である。上限値は好ましくは99%であり、更に好ましくは88%である。高坪量部411自体の密度は、その下限値が好ましくは0.12g/cm3であり、更に好ましくは0.15g/cm3である。上限値は好ましくは0.50g/cm3であり、更に好ましくは0.30g/cm3である。低坪量部412に関しては、その密度の下限値が好ましくは0.005g/cm3であり、更に好ましくは0.01g/cm3である。上限値は好ましくは0.15g/cm3であり、更に好ましくは0.10g/cm3である。密度は、上述した方法によって測定された坪量及び厚みの値を用い、坪量を厚みで除すことで算出される。
以上の構成を有する吸収性コア41を製造するために好適な方法は、例えば特開2013−255566号公報等に記載されている。
吸収性コア41に上述した長手方向に延びる条溝413が形成されていると、先に図4を参照しながら述べた表面シート2の凹凸構造の幅方向Yに沿った傾倒とともに、その傾倒方向と同方向に向けて吸収性コア41が変形しやすくなる(図4参照)。その結果、表面シート2の凹凸構造が、移動に対する緩衝領域として作用するだけでなく、吸収性コア41も移動に対する緩衝領域として作用するようになる。そのことに起因して、防漏カフ8の面状弾性領域8dと着用者の肌Bとの当接状態が、ナプキン10の移動による影響を更に一層受けづらくなる。
図3(a)に示すように低坪量部412の非肌当接面は周囲の高坪量部411の非肌当接面よりも肌当接面側に形成される。したがって、低坪量部412を含む断面においては、低坪量部412は吸収性コア41の非肌当接面から肌当接面に向かって形成される溝状の構造となる。この溝状の構造の断面形状は、非肌当接面に形成される溝状の構造の開口部の幅よりも、溝状構造の底面部の幅が狭く形成されることが、移動に対する緩衝領域がより大きくなるという観点からより好ましい。
特に、ナプキン10の平面視において、条溝413と、防漏カフ8の面状弾性領域8dとが重なるように、該条溝413が形成されていると、面状弾性領域8dと着用者の肌Bとの当接状態が、ナプキン10の移動による影響を更に一層受けづらくなるので好ましい。特に、条溝413のうち、ナプキン10の平面視において面状弾性領域8dと重なる部分の該条溝413の深さが、ナプキン10の幅方向Yの中央部における該条溝413の深さよりも大きいことが、ナプキン10の幅方向Yの中央部において発生した該ナプキン10のよれに起因する歪みが、面状弾性領域8dの基部に伝達されにくく、面状弾性領域8dと着用者の肌Bとの当接状態がナプキン10の移動により、より影響を受けにくくなる観点から好ましい。また、条溝413の深さは、吸収体の厚みの30%以上であることが好ましく、50%以上であることが更に好ましい。これに関連して、条溝413の深さは、吸収体4の厚みの95%以下であることが好ましく、90%以下であることが更に好ましい。そして、条溝413の深さは、吸収体の厚みの30%以上95%以下であることが好ましく、50%以上90%以下であることが更に好ましい。
吸収体4の厚みは、予め厚みを測定しておいた5g/cm2の錘を乗せ、KEYENCE社製非接触レーザー厚み計を用いて測定される。一方、条溝413の深さは、フェザー社製片刃剃刀を用いて条溝の底部に当たる低坪量部412を切り取り、その上に予め厚みを測定しておいた5g/cm2の錘を乗せ、KEYENCE社製非接触レーザー厚み計を用い、錘ごと厚みを測定した値から錘の厚みを引いて低坪量部412の厚みを求めた後、吸収体4の厚みから低坪量部412の厚みを引くようにして測定される。
また、条溝413は、その底部において平坦となる底面を有していることが好ましい。そして、条溝413の開口部の幅が、該条溝413の底面の幅よりも広いことが好ましい。特に条溝413は、その底面から開口部に向けてその幅が漸次広くなっていることが好ましい。条溝413がこのような形状を有することで、着用者が装着中に着用者の足を閉じる動作によって、製品が両側縁から中央部に向かって圧縮された際に、条溝の開口部側がより大きく変形する。従って、吸収体4は肌当接面よりも非肌当接面で大きく変形することから、吸収体4は着用者の肌に向かって凸状に変形し、吸収体4が着用者の肌に密着することで漏れを防止するという有利な効果が奏される。
図6及び図7には、本発明の吸収性物品の別の実施形態が示されている。これらの実施形態に関して特に説明しない点については、先に述べた図1ないし図5に示す実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また図6及び図7において、図1ないし図5と同じ部材には同じ符号を付してある。
図6に示す実施形態のナプキン10は、吸収体4の吸収性コア41に条溝が設けられていない点が、先に説明した実施形態と相違している。また、防漏カフ8の固定域8b及び裏面シート3が、幅方向Yに沿って外方に延出しておらず、固定域8bが吸収体4の非肌当接面側に巻き込まれ、吸収体4と裏面シート3との間に挟持固定されている点が、先に説明した実施形態と相違している。
図7に示す実施形態のナプキン10は、吸収体4の吸収性コア41に条溝が設けられていない点が、先に説明した実施形態と相違している。また、防漏カフ8の形状が、先に説明した実施形態と相違している。詳細には、防漏カフ8は、自由端8aと固定域8bとの間に、表面シート2上から起立した基壁部8eを有し、基壁部8eの上端部と面状弾性領域8dとが連設された構造となっている。そして防漏カフ8は、幅方向Yに沿った厚さ断面の形状が略T字状となっている。
面状弾性領域8dには、ナプキン10の長手方向に沿って弾性部材8cが配設されて弾性伸縮性が付与されている。弾性部材8cは、幅方向Yに離間して複数本配設されている。基壁部8eと面状弾性領域8dの連接部は、該面状弾性領域8dの幅方向Yに沿う左右の端部の間に位置している。この連接部を基準として、面状弾性領域8dは、幅方向Yの内方及び外方のそれぞれに向けて張り出している。その張り出しの程度は、幅方向Yの内方及び外方において同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
面状弾性領域8dの上面(肌当接面)は、吸収体4の上面(肌当接面)と略平行になっている。面状弾性領域8dは、ナプキン10の装着状態において、少なくとも着用者の排泄部に対向する部位において着用者の肌に面状に当接するようになっている。
以上の構成を有する図6及び図7に示す実施形態においても、先に説明した図1ないし図5に示す実施形態と同様の有利な効果が奏される。
次に、上述の各実施形態に共通の事項について説明する。図8には、図3(a)に示す不織布1の厚み方向の断面が模式的に示されている。図9は、図3(a)に示す不織布1の構成繊維11の拡大模式図である。不織布1は、図9に示すように、構成繊維11どうしの交点を熱融着して形成された融着部12を複数備えた不織布である。
不織布1は、図8に示すように不織布1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、頂部域13a、底部域13b、及びこれらの間に位置する側部域13cとから構成される。凸条部13の頂部は頂部域13aから形成され、凹条部14の底部は底部域13bから形成されている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、不織布1の一方向(X方向)に連続して延びている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、不織布1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、不織布1のZ方向の厚みを三等分して、厚み方向Zの上方の部位を頂部域13a、中央の部位を側部域13c、下方の部位を底部域13bとして区別する。底部域13bは、凹条部14と概ね一致する。
図8に示すように、不織布1をその厚み方向Zに沿って観察したとき、側部域13cの繊維密度は、頂部域13aの繊維密度及び底部域13bの繊維密度よりも低くなっていることが好ましい。繊維密度とは、不織布1の断面における単位面積当たりの繊維の本数のことである。したがって、側部域13cは、頂部域13a及び底部域13bに比べて繊維の本数が少ない(繊維間距離が大きい)、疎な領域になっている。このことに起因して、側部域13cは、頂部域13a及び底部域13bに比べて通気性が高くなっている。その結果、不織布1を表面シート2として用いている本実施形態のナプキン10は、その装着状態において、凹条部14に沿って空気が流通するとともに、凸条部13において、側部域13cを通じて、凸条部13と直交する方向に空気が流通する。このように、本実施形態のナプキンは、肌対向面側において長手方向X及び幅方向Yのいずれの方向にも空気が流通する構造になっているので、肌対向面側における通気性が良好で、着用状態での蒸れが起こりにくいものとなる。しかも、不織布1からなる凸条部13と凹条部14とが交互に形成されているので、ナプキン10の着用状態において、表面シート2の凹凸構造が着用者の動作に追従しやすく、肌あたりが良好である。
頂部域13aでの繊維密度(D13a)、又は底部域13bでの繊維密度(D13b)に対する側部域13cの繊維密度(D13c)の比率(D13c/D13a,D13c/D13b)は、好ましくは0.15以上0.9以下、更に好ましくは0.2以上0.8以下である。具体的に、不織布1の繊維密度の具体的な値は、頂部域13aでの繊維密度(D13a)は、好ましくは90本/mm2以上200本/mm2以下、更に好ましくは100本/mm2以上180本/mm2以下である。また、底部域13bでの繊維密度(D13b)は、好ましくは80本/mm2以上200本/mm2以下、更に好ましくは90本/mm2以上180本/mm2以下である。また、側部域13cの繊維密度(D13c)の繊維密度(D15)は、好ましくは30本/mm2以上80本/mm2以下、更に好ましくは40本/mm2以上70/mm2以下である。繊維密度の測定方法は以下のとおりである。
〔頂部域13a、底部域13b及び側部域13cでの繊維密度の測定方法〕
フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて不織布を厚み方向Zに沿って切断する。頂部域13aでの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の上方の部位である頂部域13aを、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)し、一定面積当たり(0.5mm2程度)の前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。次に1mm2当たりの繊維の断面数に換算し、これを頂部域13aでの繊維密度とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。同様に、底部域13bでの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の下方の部位を測定して求める。同様に、側部域13cの繊維密度に関しては、不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
不織布1の構成繊維11には、高伸度繊維が含まれている。ここで、構成繊維11が含む高伸度繊維とは、原料の繊維の段階で高伸度である繊維のみならず、製造された不織布1の段階でも高伸度である繊維を意味する。「高伸度繊維」としては、弾性(エラストマー)を有して伸縮する伸縮性繊維を除き、例えば特開2010−168715号公報の段落[0033]に記載のように、低速で溶融紡糸して複合繊維を得た後に、延伸処理を行わずに加熱処理及び/又は捲縮処理を行うことにより得られる、加熱により樹脂の結晶状態が変化して長さの延びる熱伸長性繊維が挙げられる。また、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂を用いて比較的紡糸速度を低い条件にして製造した繊維、又は、結晶化度の低い、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、若しくはポリプロピレンに、ポリエチレンをドライブレンドし紡糸して製造した繊維等が挙げられる。それらの繊維の内でも、高伸度繊維は、熱融着性のある芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘型複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異形型でもよいが、特に同心の芯鞘型であることが好ましい。繊維がどのような形態をとる場合であっても、柔軟で肌触り等のよい不織布等を製造する観点からは、高伸度繊維の繊度は、原料の段階で、1.0dtex以上10.0dtex以下が好ましく、2.0dtex以上8.0dtex以下であることがより好ましい。
不織布1の構成繊維11は、高伸度繊維に加えて、他の繊維を含んで構成されていてもよいが、高伸度繊維のみから構成されていることが好ましい。他の繊維としては、例えば融点の異なる2成分を含み且つ延伸処理されてなる非熱伸長性の芯鞘型熱融着性複合繊維、あるいは、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)等が挙げられる。不織布1が高伸度繊維に加えて他の繊維も含んで構成されている場合、該不織布1における高伸度繊維の割合は好ましくは50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
高伸度繊維である熱伸長性複合繊維は、原料の段階で、未延伸処理又は弱延伸処理の施された複合繊維であり、例えば、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有しており、第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
鞘部を構成する第2樹脂成分としては、上述のとおりポリエチレン樹脂を含んでいる。該ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。特に、密度が0.935g/cm3以上0.965g/cm3以下である高密度ポリエチレンであることが好ましい。鞘部を構成する第2樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましいが、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する第2樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下が、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、該ポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることがより好ましい。
芯部を構成する第1樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や樹脂成分が2種以上の共重合体等も使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。不織布の製造が容易となることから、芯部を構成する第1樹脂成分の融点と、鞘部を構成する第2樹脂成分の融点との差(前者−後者)が、20℃以上であることが好ましく、また150℃以下であることが好ましい。
高伸度繊維である熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なるが、例えば第1樹脂成分がポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、より好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維は、加熱によって伸長するようになる。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
また、高伸度繊維の伸度は、原料の段階で、100%以上800%以下であることが好ましく、より好ましくは200%以上500%以下、更に好ましくは250%以上400%以下である。この範囲の伸度を有する高伸度繊維を用いることで、該繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる。
高伸度繊維の伸度はJISL−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±2%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
高伸度繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比、前者:後者)は、原料の段階で、10:90〜90:10、特に20:80〜80:20、とりわけ50:50〜70:30であることが好ましい。高伸度繊維の繊維長は、不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
高伸度繊維の繊維径は、原料の段階で、不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10μm以上35μm以下、特に15μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。前記の繊維径は、次の方法で測定される。
〔繊維の繊維径の測定〕
繊維の繊維径として、繊維の直径(μm)を、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)社製JCM−5100)を用いて、繊維の断面を200倍〜800倍に拡大観察して測定する。繊維の断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、繊維を切断して得る。抽出した繊維1本について円形に近似したときの繊維径を5箇所測定し、それぞれ測定した値5点の平均値を繊維の直径とする。
原料の段階で、高伸度繊維である熱伸長性繊維としては、上述の熱伸長性繊維の他に、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
不織布1は、図9に示すように、不織布1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、該構成繊維11が、隣り合う融着部12,12どうしの間に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を有していることが好ましい。具体的には、図9に示すように、不織布1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、他の構成繊維11との交点を熱融着して形成された融着部12から、繊維径の小さい小径部16が略同じ繊維径で延出して形成されている。そして、該1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12それぞれから延出する小径部16,16どうしの間に、小径部16よりも繊維径の大きい大径部17が略同じ繊維径で延出して形成されている。詳述すると、不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12のうちの一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。
上述したように不織布1の剛性が高まる融着部12に隣り合うように低剛性の小径部16が存在することにより、不織布1の柔軟性が向上し、肌触りが良好になる。また、大径部17を複数備えるほど、言い換えると構成繊維11に低剛性の小径部16が多く存在するほど、不織布1の柔軟性が更に向上し、肌触りが更に良好になる。
不織布1は、図9に示すように、不織布1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を複数(不織布1においては2個)備える構成繊維11を有している。詳述すると、不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12のうちの一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個目の大径部17、小径部16、2個目の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。不織布1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を、肌触り向上の観点から、好ましくは1個以上5個以下備え、更に好ましくは1個以上3個以下備えている。
大径部17の繊維径(直径L17)に対する小径部16の繊維径(直径L16)の比率(L16/L17)は、好ましくは0.5以上0.8以下、更に好ましくは0.55以上0.7以下である。具体的に、小径部16の繊維径(直径L16)は、肌触り向上の観点から、好ましくは5μm以上28μm以下、更に好ましくは6.5μm以上20μm以下、特に好ましくは7.5μm以上16μm以下である。大径部17の繊維径(直径L17)は、肌触り向上の観点から、好ましくは10μm以上35μm以下、更に好ましくは13μm以上25μm以下、特に好ましくは15μm以上20μm以下である。
小径部16及び大径部17の繊維径(直径L16,L17)は、上述した繊維の繊維径の測定と同様にして測定する。
また、不織布1は、図9に示すように、不織布1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、融着部12に隣接する小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されていることが好ましい。ここで、不織布1の変化点18とは、小さい繊維径で延出する小径部16から、小径部16よりも繊維径の大きい繊維径で延出する大径部17へ、連続的に漸次変化する部位あるいは連続的に複数段階にわたって変化する部位を含まず、極端に一段で繊維径が変化する部位を意味する。また、前記1本の構成繊維11が熱伸長性複合繊維の場合には、不織布1の変化点18とは、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分との間で剥離することによって繊維径が変化する状態を含まず、あくまで、延伸により繊維径が変化している部位を意味する。
また、変化点18が、融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されているとは、不織布1の構成繊維11をランダムに抽出し、該構成繊維11を、図9に示すように、走査型電子顕微鏡として日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いて構成繊維11の隣り合う融着部12,12間が観察できるように拡大(倍率=100倍〜300倍)観察する。次いで、隣り合う融着部12,12の中心どうしの間隔Tを3等分して、一方の融着部12側の領域AT、他方の融着部12側の領域BT、中央の領域CTに区分する。そして、変化点18が、前記領域AT又は前記領域BTに配されていることを意味する。また、変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されている不織布1とは、不織布1の構成繊維11を20本ランダムに抽出した際に、変化点18を前記領域AT又は前記領域BTに配している構成繊維11が、20本の構成繊維11のうちに少なくとも1本以上ある不織布を意味する。具体的には、肌触り向上の観点から、好ましくは1本以上、更に好ましくは5本以上、特に好ましくは10本以上である。
不織布1は、側部域13cを構成する構成繊維における、変化点を有する繊維の本数が、頂部域13aを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数、及び底部域13bを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数よりも多く形成されている。頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13a)、又は底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13b)に対する側部域13cを構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数(N13c)の比率(N13c/N13a,N13c/N13b)は、好ましくは2以上20以下、更に好ましくは5以上20以下である。具体的に、不織布1の変化点18を有する繊維の本数の具体的な値に関し、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13a)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13b)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13c)は、好ましくは5本以上20本以下、更に好ましくは10本以上20本以下である。変化点18を有する繊維の本数の測定方法は以下のとおりである。
〔頂部域13a、底部域13b又は側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数の測定方法〕
頂部域13aを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の上方の部位である頂部域13aの頂点付近を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;50〜500倍)し、頂部域13aを構成する構成繊維11を20本ランダムに抽出し、20本の構成繊維11の内に変化点18を有する繊維数を数える。これを、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。同様に、底部域13bを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の下方の部位である底部域13bの底点付近を測定して求める。同様に、側部域13cを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、不織布の厚みをZ方向に3等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
不織布1の厚さについては、不織布1の側面視したときの全体の厚さをシート厚みTSとし、その凹凸に湾曲した不織布1の局部的な厚さを層厚みTLとする。シート厚みTSは、用途によって適宜調節すればよいが、吸収性物品の表面シートあるいはサブレイヤーとして用いる場合、0.5mm以上7mm以下が好ましく、1.0mm以上5mm以下がより好ましい。この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができる。また、荷重が加わっても、凸条部13の形状を維持し得る。
層厚みTLは、不織布1内の各部位において異なっていてもよく、用途によって適宜調節すればよい。頂部域13aの層厚みTL1は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。底部域13bの層厚みTL2は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。側部域13cの層厚みTL3は0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.2mm以上2.0mm以下がより好ましい。各層厚みTL1、TL2、TL3の関係は、TL1=TL3=TL2であることが好ましい。この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性に優れた不織布1とすることができる。
シート厚みTS及び層厚みTLは以下の方法で測定される。
シート厚みTSの測定方法は、不織布1に0.05kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定する。厚み測定器にはオムロン社製のレーザー変位計を用いる。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとする。
層厚みTLの測定法は、シートの断面をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900により約20倍程度で拡大することで、各層の厚みを測定する。
不織布1を平面視したときに、Y方向に隣り合う凸条部13の頂部どうしのピッチは、1mm以上15mm以下が好ましく、3mm以上10mm以下がより好ましい。凸条部13の高さH(図3参照)は、1mm以上7mm以下が好ましく、1.5mm以上5mm以下がより好ましい。高さHは、後述するシート厚みTSと同じであり、TSと同様の方法で測定される。
また不織布1の坪量は、シート全体の平均値で15g/m2以上50g/m2以下が好ましく、20g/m2以上40g/m2以下がより好ましい。
不織布1の構成繊維11の表面には、原料の段階で、繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤等の繊維処理剤が、少量付着されていてもよい。
繊維処理剤を構成繊維11の表面に付着させる方法としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、繊維処理剤への浸漬等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行ってもよいし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよい。ただし、後述する熱風吹き付け処理よりも前に処理を行う必要がある。繊維処理剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、ポリエチレン樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。
本実施形態のナプキン10において、表面シート2として用いる不織布1は、高伸度繊維を含む繊維ウエブの構成繊維どうしの交点を融着部にて熱融着して繊維シートを形成する融着工程と、前記繊維シートを一方向に延伸する延伸工程とを備える不織布の製造方法によって好適に製造される。表面シート2として用いる不織布1の製造方法の一実施態様について、上述した不織布1の好ましい製造方法を例に挙げ、図10を参照しながら説明する。図10には、不織布1の製造方法に用いられる好ましい製造装置100が模式的に示されている。製造装置100は、エアスルー不織布の製造に好適に用いられるものである。製造装置100は、製造工程の上流側から下流側に向けて、ウエブ形成部200、熱風処理部300、延伸部400、及び下側シート接合部500をこの順で備えている。
ウエブ形成部200には、図10に示すように、ウエブ形成装置201が備えられている。ウエブ形成装置201としては、カード機が用いられている。カード機としては、吸収性物品の技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。カード機に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。
熱風処理部300は、図10に示すように、フード301を備えている。フード301内では、エアスルー方式で熱風を吹き付けることができるようになっている。また、熱風処理部300は、通気性ネットからなる無端状のコンベアベルト302を備えている。コンベアベルト302は、フード301内を周回している。コンベアベルト302は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、あるいは金属から形成されている。
フード301内にて吹き付けられる熱風の温度及び熱処理時間は、繊維ウエブ1bの構成繊維11を含む高伸度繊維(熱伸長性複合繊維)が加熱されて伸長しにくく、かつ繊維の交点が熱融着するように調整することが好ましい。具体的に、熱風の温度は、繊維ウエブ1bの構成繊維11のうちの最も融点が低い樹脂の融点に対して、0℃〜30℃高い温度に調整することが好ましい。熱処理時間は、熱風の温度に応じて、1秒〜5秒に調整することが好ましい。また、構成繊維11どうしの更なる交絡を促す観点から、熱風の風速は0.3m/秒〜1.5m/秒程度であることが好ましい。また、搬送速度は、5m/min〜300m/min程度であることが好ましい。
延伸部400は、図10及び図11に示すように、互いに噛み合いが可能になっている一対の凹凸ロール401,402を備えている。一対の凹凸ロール401,402は、加熱可能に形成されており、それぞれ、大径凸部403,404と小径凹部405,406とがロール軸方向に交互に配されて形成されている。凹凸ロール401,402は加熱してもしなくてもよいが、凹凸ロール401,402を加熱する場合の加熱温度は、後述する繊維シート1aの構成繊維11を延伸しやすくする観点から、高伸度繊維内の最もガラス転移点が高い樹脂のガラス転移点以上で、かつ高伸度繊維内の最も融点が低い樹脂の融点以下にすることが好ましい。より好ましくは高伸度繊維内の最もガラス転移点が高い樹脂のガラス転移点より10℃高い温度以上、更に好ましくは高伸度繊維内の最もガラス転移点が高い樹脂のガラス転移点より20℃高い温度以上で、かつ高伸度繊維内の最も融点が低い樹脂の融点よりも20℃低い温度以下である。
また、製造装置100においては、図11に示すように、凹凸ロール401のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし403,403の間隔、及び凹凸ロール402のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし404,404の間隔が同じ間隔wである。間隔wは不織布1の構成繊維11の含む高伸度繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先の述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる観点から、好ましくは1mm以上10mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以上8mm以下である。このような形態に不織布1の構成繊維11を延伸する観点から、図11に示すように、一対の凹凸ロール401,402の押し込み量t(ロール軸方向に隣り合う大径凸部403の頂点と大径凸部404の頂点との間隔)は、好ましくは1mm以上3mm以下であり、特に好ましくは1.2mm以上2.5mm以下である。そして機械延伸倍率は、同様の観点から、好ましくは1.5倍以上3.0倍以下であり、特に好ましくは1.7倍以上2.8倍以下である。
下側シート接合部500は、凹凸ロール402と表面平滑なフラットロール501とを備えており、凹凸ロール402の大径凸部403とフラットロール501の周面との間で、凹凸形状とされた不織布1と下側シート6とを、加熱及び加圧することにより接合する。
以上の構成を有する製造装置100を用いた不織布1の製造方法について説明する。
先ず、図10に示すように、ウエブ形成部200にて、高伸度繊維を有する短繊維状の構成繊維11を原料として用い、カード機であるウエブ形成装置201によって繊維ウエブ1bを形成する(ウエブ形成工程)。ウエブ形成装置201によって製造された繊維ウエブ1bは、その構成繊維11どうしが緩く絡合した状態にあり、シートとしての保形性を獲得するには至っていない。
次いで、図10に示すように、高伸度繊維を含む繊維ウエブ1bの構成繊維11どうしの交点を融着部12にて熱融着して繊維シート1aを形成する(融着工程)。具体的には、繊維ウエブ1bは、コンベアベルト302上に搬送され、熱風処理部300にて、フード301内を通過する間に、熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。このようにエアスルー方式で熱風が吹き付けられると、繊維ウエブ10の構成繊維11どうしが更に交絡すると同時に、絡合した繊維の交点が熱融着して(図12(a)参照)、シート状の保形性を有する繊維シート1aが製造される。
次いで、図10に示すように、融着された繊維ウエブ1aを一方向に延伸する(延伸工程)。具体的には、シートとしての保形性を有する融着された繊維ウエブ1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、図12(a)ないし図12(c)に示すように、繊維ウエブ1aを延伸して、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を形成するとともに、該小径部16から該大径部17への変化点18を、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成する。詳述すると、図12(a)に示すような、構成繊維11どうしの交点が融着部12にて熱融着している繊維シート1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、繊維ウエブ1aを、機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸する。繊維シート1aが直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸される際には、図12(a)に示す、構成繊維11どうしを固定している隣り合う該融着部12,12どうしの間の領域が、直交方向(CD,ロール軸方向)に積極的に引き伸ばされる。特に、図12(b)に示すように、構成繊維11どうしを固定している各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こりやすく、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、両端に2個の小径部16,16が形成され、該2個の小径部16,16に挟まれた部分が大径部17となり、2個の小径部16,16に挟まれた大径部17が形成される。このように、各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こりやすいので、小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成される。
そして、一部の隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、図12(c)に示すように、伸長できる余地(伸びしろ)を残した状態で、更に直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸され、該隣り合う融着部12,12どうしの間の大径部17が延伸され、大径部17の中に小径部16が複数形成されるようになる。
延伸工程においては、高伸度繊維から小径部16及び大径部17が形成されるのと同時に、繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール401の大径凸部404との間に位置する部分が、他の部分よりも引き延ばされる。この場合、繊維シート1aの構成繊維は高伸度繊維なので、引き伸ばしを受けても切断せず、首尾よく引き伸ばしが行われる。繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール401の大径凸部404との間に位置する部分は、目的とする不織布1における凸条部13の側部域13cであるから、前記の引き伸ばしによって側部域13cでは繊維が切断されることなく繊維間距離が延伸前に比べて増加する。その結果、側部域13cの繊維密度が他の部位よりも低下して、通気性が向上する。しかも、側部域13cを構成する繊維に切断は生じていないので、凸条部13の強度が高いレベルに維持される。その結果、凸条部13に荷重が加わっても、該凸条部13が潰れにくくなる。
以上のようにして製造された不織布1は、凹凸ロール402によって、凹凸形状に変形された状態のまま、下側シート接合部500のシート合流部に搬送される。シート合流部には、ロール状巻回物6’から巻き出されたセカンドシート用の帯状の不織布6が供給されており、凹凸形状の不織布1は、帯状の不織布6と重ねた状態とされて、凹凸ロール402とフラットロール501との間に導入される。凹凸ロール402とフラットロール501との間においては、凹凸形状の不織布1における凹条部部分と帯状の不織布6とが、凹凸ロール402の大径凸部403とフラットロール501の周面との間で加熱及び加圧されて接合する。このようにして、不織布1からなる表面シート2が、凹条部14において下側シート6に接合された帯状の複合シート8が得られる。帯状の複合シート8は、巻き取った後に、ナプキン10の製造ラインに導入されるか、巻き取ることなく、ナプキン10の製造ラインに導入される。
以上本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は、上述した本実施形態に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。例えば前記の実施形態は本発明を生理用ナプキン10に適用した例であったが、これに代えて、本発明を他の吸収性物品、例えば生理用ナプキンや失禁パッド、パンティライナー、使い捨ておむつなどに適用してもよい。
また前記実施形態においては、防漏カフ8には、複数本の弾性部材8cが配されていたが、これに代えて弾性部材8cを1本のみ配してもよい。
また前記実施形態においては、防漏カフ8に面状弾性領域8dが設けられていたが、該面状弾性領域8dを設けなくてもよい。
また前記実施形態においては、吸収体4と表面シート2との間にセカンドシート6が配されていたが、該セカンドシート6を配さなくてもよい。その場合には、表面シート2の凹状部14は、その直下に位置する下側シートである吸収体4の被覆シート42と接合されていることが好ましい。
また前記の各実施形態は、本発明で奏される効果を損なわない限り、それらの構成を交互に置換してもよい。例えば図6及び図7に示す実施形態において、吸収体4の吸収性コア41に、図1ないし図5に示す実施形態で採用した条溝413を採用してもよい。また、図1ないし図5に示す実施形態においては、吸収体4の吸収性コア41に条溝413を設けなくてもよい。
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
肌当接面を形成する液透過性の表面シート、裏面シート及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備し、長手方向及び幅方向を有する吸収性物品であって、
前記表面シートは、長手方向に延びる筋状の凸条部及び凹条部が幅方向に交互に配された凹凸構造の不織布からなり、
前記表面シートは、該表面シートに隣接する下側シートと前記凹条部において接合されており、
前記凸条部が前記不織布と前記下側シートとの間に中空構造を有し、
前記吸収性物品は、その肌当接面側における幅方向の両側部の位置に、長手方向に延びる防漏カフがそれぞれ設けられており、
前記防漏カフは、自由端、及び前記表面シート上に位置し該防漏カフを前記表面シートに固定する固定域を有しており、
前記固定域は、前記表面シートにおける前記凸条部の頂部域において、該表面シートと接合されている、吸収性物品。
<2>
前記固定域は、前記表面シートにおける複数の前記凸条部の頂部域において、該表面シートと接合されている前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記固定域は、前記表面シートにおける前記凸条部の頂部域において、接着剤によって該表面シートと接合されている前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記防漏カフにおける自由端又はその近傍の位置に、長手方向に延びる弾性部材が伸長状態で取り付けられている前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<5>
前記防漏カフにおける自由端又はその近傍の位置に、長手方向に延びる複数本の弾性部材が伸長状態で取り付けられており、それら複数本の弾性部材が取り付けられた部位が面状弾性領域を形成している前記<4>に記載の吸収性物品。
<6>
前記防漏カフにおける前記面状弾性領域に、前記物品の幅方向に沿う方向連続して、凸状に隆起した部分と凹状に凹んだ部分とが交互に存在する前記<5>に記載の吸収性物品。
<7>
前記防漏カフの前記面状弾性領域に交互に形成された、凸状に隆起した部分と凹状に凹んだ部分とが、前記防漏カフを形成するシートを、歯車状に噛み合う一対のロールによって賦型して形成されている前記<6>に記載の吸収性物品。
<8>
前記吸収体は、その非肌当接面側に、長手方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ長手方向条溝を複数有し、
平面視において、前記長手方向条溝と前記面状弾性領域とが重なるように、該条溝が形成されている前記<5>ないし<7>のいずれ1に記載の吸収性物品。
<9>
前記吸収体は、その非肌当接面側に、長手方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ長手方向条溝を複数有し、
凹んだ前記長手方向条溝はその底部において平坦となる底面を有しており、
平面視において、前記長手方向条溝と前記面状弾性領域とが重なるように、該長手方向条溝が形成されており、
前記凹んだ長手方向条溝の開口部の幅が、該凹んだ長手方向条溝の底面の幅よりも広い前記<5>ないし<8>のいずれ1に記載の吸収性物品。
<10>
前記吸収体は、その非肌当接面側に、長手方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ長手方向条溝を複数有し、
凹んだ前記長手方向条溝のうち、平面視において前記面状弾性領域と重なる部分の凹んだ該長手方向条溝の深さが、前記物品の中央部における凹んだ該長手方向条溝の深さよりも大きい前記<5>ないし<9>のいずれ1に記載の吸収性物品。
<11>
前記吸収体は、その非肌当接面側に、長手方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ長手方向条溝を複数有し、
凹んだ前記長手方向条溝の深さが前記吸収体の厚みの30%以上である前記<1>ないし<10>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<12>
平面視において、前記防漏カフの前記固定域が前記吸収体と重なるように、該固定域が形成されている前記<1>ないし<11>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<13>
前記固定域は、前記凸条部の頂部域以外の部位においては該凸条部と接合されていない前記<1>ないし<12>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<14>
前記固定域と接合されている前記凸条部は、前記下側シートとの間の中空構造が維持されている前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<15>
前記表面シートと前記下側シートとが長手方向に沿って間欠的に接合されている前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<16>
前記吸収体は、その非肌当接面側に、かつ肌当接面側に向けて凹んだ条溝を複数有し、該条溝は、長手方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ長手方向条溝と、幅方向に延び、かつ肌当接面側に向けて凹んだ幅方向条溝とから構成され、
前記条溝は、長手方向及び幅方向に延びる直交した格子状の形状をしている前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収体は、吸収性コアと、その表面の概ね全域を被覆する被覆シートとから構成されている前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<18>
前記吸収体は、吸収性コアと、その表面の概ね全域を被覆する被覆シートとから構成されており、
前記吸収性コアは、坪量が相対的に高い複数の高坪量部と、坪量が相対的に低い低坪量部とから構成され、高坪量部の周囲はその全域にわたって低坪量部によって囲まれて個々に独立しているブロック構造を有している前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<19>
前記吸収体は、吸収性コアと、その表面の概ね全域を被覆する被覆シートとから構成されており、
前記下側シートが前記被覆シートからなる前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<20>
前記固定域は、前記物品の幅方向の外方へ延出しており、その延出部位と、前記裏面シートの幅方向延出部位とが接合されてサイドフラップを形成している前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<21>
前記表面シートは、前記サイドフラップ7よりも内側の領域の全域に凹凸構造を有している前記<20>に記載の吸収性物品。
<22>
前記固定域が、前記吸収体の非肌当接面側に巻き込まれ、該吸収体と前記裏面シートとの間に挟持固定されている前記<1>ないし<21>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<23>
前記防漏カフは、前記自由端と前記固定域との間に、表面シート上から起立した基壁部を有し、基壁部の上端部と面状弾性領域とが連設された構造となっており、該防漏カフは、前記物品の幅方向に沿った厚さ断面の形状が略T字状となっている前記<1>ないし<22>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<24>
前記面状弾性領域の上面である肌当接面は、前記吸収体の上面である肌当接面と略平行になっている前記<1>ないし<23>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<25>
前記吸収体は、吸収性コアと、その表面の概ね全域を被覆する被覆シートとから構成されており、
前記下側シートは前記吸収体の前記被覆シートであり、
前記表面シートの前記凹状部は、前記被覆シートと接合されている前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の吸収性物品。
<26>
前記吸収体は、吸収性コアと、その表面の概ね全域を被覆する被覆シートとから構成され、
前記表面シートは、前記吸収性コアと重なる領域の全域に凹凸構造を有している前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の吸収性物品。