JP6431397B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
本出願人は、先に、肌対向面側に突出した凸部を複数有する凹凸形状の表面シートを備えた吸収性物品として、例えば特許文献1〜特許文献3を提案した。特許文献1及び特許文献2に記載の吸収性物品の備える表面シートは、肌対向面側に突出し内部が空洞の凸部を複数有する凹凸形状のシートである。特許文献1及び特許文献2に記載の吸収性物品によれば、経血等の体液を表面に残すことなく、素早く吸収することができる。
一方、特許文献3に記載の吸収性物品の備える表面シートは、肌対向面側に突出し内部が中実の凸部を複数有する凹凸形状の上層シートを備えている。また、特許文献3に記載の吸収性物品の備える表面シートは、多数の切れ込みを有する下層シートを備えている。特許文献3に記載の吸収性物品の備える表面シートは、このような上層シート及び下層シートが積層されて構成されている。このような表面シートを備える特許文献3に記載の吸収性物品によれば、経血等の体液を素早く吸収して、表面シートの下に位置する吸収体へ迅速に移行させることができる。
特開2005−066355号公報 特開2013−132523号公報 特開2005−319043号公報
本発明者は、これら特許文献1〜3に開示されるような凹凸形状を有する表面材を備えた吸収性物品が着用時にヨレてしまった際に、吸収性物品に皺が発生することに加え、吸収体から浮き上がった部位で、表面シートが折り重なってしまう場合があり、このように折り重なった部分が表面シートに生じると、該部分で経血等の体液を素早く吸収することができないことを見出した。このように体液を素早く吸収することができなければ、吸収性物品の表面で体液が広がって漏れを引き起こしてしまったり、吸収性物品のドライ感を損なってしまったりしてしまう。このような現象は、特に、特許文献1及び特許文献2のように表面シートの凸部が中空構造である場合に生じやすいことも、本発明者は見出した。
しかし、特許文献1〜3には、着用時に吸収性物品がヨレて表面シートに折り重なった部分が生じても、該部分で体液を素早く吸収するようにする工夫に関して、何ら記載されておらず、特許文献1〜3に記載の吸収性物品には、更なる改良の余地があった。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
本発明は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート、及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部より着用者の腹側に配される前方部と、該排泄部対向部より着用者の背側に配される後方部とを有する吸収性本体を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、肌対向面側の上層シートと、該上層シートの非肌対向面側に隣接して配された下層シートとを有し、前記上層シートは、縦方向に延びる筋状の凸条部及び凹条部が横方向に交互に配された凹凸構造の不織布であり、前記上層シートを横方向に沿って断面視して、頂部域と底部域との間の側部域は、その繊維密度が、該頂部域の繊維密度及び該底部域の繊維密度よりも低く、前記表面シートは、前記上層シートと前記下層シートとが該上層シートの前記凹条部で接合部を介して接合され、該上層シートの前記凸条部と該下層シートとの間に中空構造を有しており、前記吸収体は、前記排泄部対向部にスリットを複数有しており、各前記スリットは、その幅が、前記表面シートにおける横方向に隣り合う前記凸条部の頂部どうしの間隔よりも狭い吸収性物品を提供するものである。
本発明によれば、経血等の体液を素早く吸収することができ、体液の漏れを防止し、ドライ感を向上させることができる。特に、表面シートの凸部が中空構造である場合に生じ易い着用時の表面シートの折り重なりが生じるような場合でも、そのような効果が高い。
図1は、本発明の吸収性物品の好ましい一実施形態である生理用ナプキンの肌対向面側(表面シート側)を示す平面図である。 図2(a)は図1のI−I線断面を模式的に示す断面図であり、図2(b)は図1のII−II線断面を模式的に示す断面図である。 図3は、図1に示す生理用ナプキンの備える表面シートの要部拡大斜視図である。 図4は、図1に示す生理用ナプキンの備える表面シートにおける肌対向面の平面図である。 図5は、図4に示す表面シートを構成する上層シートにおける要部拡大模式断面図である。 図6は、図5に示す上層シートを構成する構成繊維どうしが熱融着部にて固定されている状態を説明する図である。 図7は、図1に示す生理用ナプキンの備える吸収体の平面図である。 図8(a)ないし図8(b)は、図7に示す吸収体の排泄部スリット領域における縦スリットの好ましい配置を示す部分拡大平面図である。 図9は、図5及び図6に示す表面シートを構成する上層シートの製造に好適に用いられる製造装置を示す模式図である。 図10は、図9に示すIX−IX線断面図である。 図11(a)ないし図11(c)は、隣り合う融着部どうしの間の1本の構成繊維において複数の小径部と大径部とが形成される様子を説明する説明図である。
以下、本発明の吸収性物品を、その好ましい一実施形態である生理用ナプキンに基づき図面を参照して説明する。本実施形態のナプキン10は、図1及び図2に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する裏面シート3、及びこれら両シート2,3間に介在された吸収体4を具備する吸収性本体10Bを有している。また、ナプキン10及び吸収性本体10Bは、着用者の前後方向に対応する縦方向X及び該縦方向Xに直交する横方向Yを有する。
尚、本明細書において、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性本体10B)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。また、縦方向Xは、吸収性物品(吸収性本体10B)の長手方向に一致し、横方向Yは、吸収性物品(吸収性本体10B)の幅方向(長手方向に直交する方向)に一致する。
ナプキン10の吸収性本体10Bは、着用時に着用者の排泄部(膣口等)に対向配置される排泄部対向部Bと、該排泄部対向部Bよりも着用者の腹側(前側)寄りに配される前方部Aと、該排泄部対向部Bよりも着用者の背側(後側)寄りに配される後方部Cとを有している。吸収性本体10Bは、縦方向Xに、前方部A、排泄部対向部B及び後方部Cの順番で区分される。
本実施形態では、ナプキン10は、図1及び図2(a)に示すように、吸収性本体10Bに加えて更に、吸収性本体10Bにおける排泄部対向部Bの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部10W,10Wを有している。
尚、本発明の吸収性物品において、排泄部対向部Bは、本実施形態のナプキン10のようにウイング部10Wを有する場合には、吸収性物品の縦方向(吸収性物品の長手方向、図中のX方向)においてウイング部10Wを有する領域(一方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部10Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域)である。ウイング部を有しない吸収性物品における排泄部対向部は、吸収性物品が3つ折りの個装形態に折り畳まれた際に生じる、該吸収性物品を横方向(吸収性物品の幅方向、図中のY方向)に横断する2本の折曲線(図示せず)について、該吸収性物品の縦方向Xの前端から数えて第1折曲線と第2折曲線とに囲まれた領域である。
ナプキン10では、表面シート2は、図2(a)及び図2(b)に示すように、吸収体4の肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出している。一方、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出して、後述するサイドシート5と共にサイドフラップ部10Sを形成している。裏面シート3とサイドシート5とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。
ナプキン10では、サイドシート5は、図1及び図2に示すように、吸収性本体10Bの肌対向面(表面シート2の肌対向面)における縦方向Xに沿う両側部に配されている。好適には、サイドシート5は、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように、吸収性本体10Bの縦方向Xの全長に亘って配されている。
ナプキン10では、一対のサイドシート5,5は、それぞれ、図1に示すように、排泄部対向部Bに位置する線状の第1接合線61と、該第1接合線61の縦方向Xの前後(前方部A及び後方部C)に位置する線状の第2接合線62とで表面シート2に接合されている。第1接合線61は、平面視において横方向Yの外方に向けて凸の曲線状であり、第2接合線62は、平面視において縦方向に交差するように延びる線状(ジグザグ線状)である。このように、サイドシート5が、第1接合線61及び第2接合線62にて表面シート2に接合されて、吸収性本体10Bの肌対向面に固定されると、図2(a)及び図2(b)に示すように、第1接合線61及び第2接合線62よりも横方向Yの内方に、サイドシート5と表面シート2とで画成される空間部Pが形成される。この空間部Pは、吸収性本体10Bの横方向Yの中央に向けて開口しているので、横方向Yの中央から外方へ流れる経血等の体液が空間部Pに収容されるようになり、結果として体液の漏れが効果的に防止できる。
ナプキン10では、サイドフラップ部10Sは、図1に示すように、排泄部対向部Bにおいて横方向Yの外方に向かって大きく張り出しており、これにより吸収性本体10Bの縦方向Xに沿う左右両側に、一対のウイング部10W,10Wが延設されている。また、表面シート2及び裏面シート3は、図1に示すように、吸収体4の縦方向Xの前端及び後端それぞれから縦方向Xの外方に延出し、それらの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって、互いに接合されてエンドシール部を形成している。
ウイング部10Wは、ショーツ等の着衣のクロッチ部の非肌対向面側に折り返されて用いられるものである。ナプキン10では、ウイング部10Wは、図1に示すように、平面視において、下底(上底よりも長い辺)が、吸収性本体10Bの縦方向Xに沿う側部側に位置する略台形形状を有している。図2(a)に示すように、ウイング部10Wの非肌対向面には、該ウイング部10W(ナプキン10)をショーツ等の着衣(図示せず)に固定するウイング部粘着部71が形成されており、このウイング部粘着部71によって、使用時に、着衣のクロッチ部の非肌対向面(外面)側に折り返されたウイング部10Wを、該クロッチ部に粘着固定できるようになされている。また、図2(a)及び図2(b)に示すように、吸収性本体10Bの非肌対向面にも、吸収性本体10Bを、ショーツ等の着衣に固定するための本体粘着部72(ズレ止め部)が形成されている。
ナプキン10では、図1及び図2に示すように、吸収性本体10Bの肌対向面(表面シート2の肌対向面)に、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥してなる線状圧搾溝8が形成されている。線状圧搾溝8における「線状」とは、溝(凹陥部)の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。例えば、線状圧搾溝8は、不連続な多数の点エンボスのなす列から構成されていても良い。線状圧搾溝8は、前方部A及び後方部Cに、それぞれ横方向Yに延びる第1横圧搾溝81と、排泄部対向部Bの両側部を縦方向Xに延びる縦圧搾溝82とを有している。ナプキン10では、前方部A及び後方部Cの第1横圧搾溝81は、縦方向X外方に向けて凸の曲線状であり、各縦圧搾溝82は、横方向Y内方に向けて凸の曲線状である。ナプキン10では、前方部Aの第1横圧搾溝81、一方の縦圧搾溝82、後方部Cの第1横圧搾溝81、及び他方の縦圧搾溝82が繋がってリング状の全周溝を形成している。また、ナプキン10では、線状圧搾溝8は、前方部A及び後方部Cの第1横圧搾溝81よりも縦方向X内方に、それぞれ、横方向Yに延びる第2横圧搾溝83,83を有している。ナプキン10では、前方部A及び後方部Cの第2横圧搾溝83,83は、縦方向X外方に向けて凸の曲線状である。尚、ナプキン10の第2横圧搾溝83,83はいずれも、図1に示すように、一対の縦圧搾溝82,82と繋がっていないが、繋がっていてもよい。このように形成された線状圧搾溝8は、吸収体4の平面方向への体液の拡散を抑制して、ナプキン10の周囲から液漏れを効果的に防止することができる。
ナプキン10の表面シート2について詳述すると、表面シート2は、図2ないし図4に示すように、肌対向面側の上層シート1と、該上層シート1の非肌対向面側に隣接して配された下層シート21とを有している。上層シート1は、図2及び図3に示すように、縦方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14が横方向Yに交互に配された凹凸構造の不織布から構成されている。ナプキン10では、下層シート21は、フラットな構造の不織布から構成されている。そして、図2ないし図4に示すように、表面シート2は、上層シート1と下層シート21とが上層シート1の凹条部14の位置で接合されてなる接合部14sを有しており、上層シート1の凸条部13と下層シート21との間に中空構造を有している。
図3には、本実施形態のナプキン10において、表面シート2を構成する上層シート1の斜視図が示されている。上層シート1は、図3に示すように、表裏両面の断面形状がともに厚み方向の上方に向かって凸状をなす複数の凸条部13と、隣り合う凸条部13,13どうしの間に位置する凹条部14とを有している。凹条部14は、表裏両面の断面形状がともに上層シート1の厚み方向の上方に向かって凹状をなしている。言い換えれば、凹条部14は、表裏両面の断面形状がともに上層シート1の厚み方向の下方に向かって凸状をなしている。そして、複数の凸条部13は、それぞれ、上層シート1の縦方向Xに連続して延びて畝形状をなしており、複数の凹条部14も、上層シート1の縦方向Xに連続して延びる溝形状をなしている。凸条部13及び凹条部14は、互いに平行であり、前記縦方向Xに直交する横方向Yに交互に配されている。
上層シート1は、後述するように、繊維シート1aに、互いに噛み合う一対の凹凸ロール401,402を用いて凹凸加工を施して製造されたものである。上述した上層シート1の縦方向Xとは、繊維シート1a(図9参照)に凹凸加工を施して上層シート1を製造する際の機械方向(MD,流れ方向)と同じ方向であり、上述した上層シート1の縦方向Xに直交する横方向Yとは、機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)と同じ方向である。
凸条部13及び凹条部14からなる上層シート1の凹凸構造は、ナプキン10の横方向Yにおける中央域に少なくとも形成されていることが好ましい。これによって、着用者の肌と最も当接しやすい部位に凹凸構造を設け、表面積を大きくすることができるので、排泄された液を素早く吸収体4の内部に取り込むことができ、凸条部13の着用者の動作への追従効果が確実に発揮され、体に付着した排泄液を拭き取り清潔に保つことができる。特に、上層シート1は、サイドフラップ10S(図2参照)よりも内側の領域の全域に凹凸構造を有していることが、これらの効果が一層顕著なものとなる点から好ましい。
図5には、図3に示す上層シート1の厚み方向の断面が模式的に示されている。図6は、図3に示す上層シート1の構成繊維11の拡大模式図である。上層シート1は、図6に示すように、構成繊維11どうしの交点を熱融着して形成された融着部12を複数備えた不織布である。
ナプキン10では、上層シート1は、図3及び図5に示すように上層シート1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、頂部域13a、底部域13b、及びこれらの間に位置する側部域13cとから構成されている。凸条部13の頂部は頂部域13aから形成され、凹条部14の底部は底部域13bから形成されている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、上層シート1の縦方向Xに連続して延びている。頂部域13a、底部域13b及び側部域13cは、上層シート1を厚み方向Zに沿って断面視したとき、上層シート1のZ方向の厚みを三等分して、厚み方向Zの上方の部位を頂部域13a、中央の部位を側部域13c、下方の部位を底部域13bとして区別する。
ナプキン10では、上層シート1は、図3及び図5に示すように、上層シート1を横方向に沿って断面視して、頂部域13aと底部域13bとの間の側部域13cの繊維密度が、該頂部域13aの繊維密度及び該底部域13bの繊維密度よりも低く形成されている。ここで、繊維密度とは、上層シート1の断面における単位面積当たりの繊維の本数のことである。したがって、側部域13cは、頂部域13a及び底部域13bに比べて繊維の本数が少ない(繊維間距離が大きい)、疎な領域になっている。このことに起因して、側部域13cでの可動性が高まると共に、着用時に凸条部13が倒れて凸条部13の頂部域13aが隣接する凸条部13の側部域13cに重なっても吸収阻害を引き起こしにくい。
頂部域13aでの繊維密度(D13a)、又は底部域13bでの繊維密度(D13b)に対する側部域13cの繊維密度(D13c)の比率(D13c/D13a,D13c/D13a)は、好ましくは0.15以上0.9以下、更に好ましくは0.2以上0.8以下である。具体的に、上層シート1の繊維密度の具体的な値は、頂部域13aでの繊維密度(D13a)は、好ましくは90本/mm以上200本/mm以下、更に好ましくは100本/mm以上180本/mm以下である。また、底部域13bでの繊維密度(D13b)は、好ましくは80本/mm以上200本/mm以下、更に好ましくは90本/mm以上180本/mm以下である。また、側部域13cでの繊維密度(D13c)は、好ましくは30本/mm以上80本/mm以下、更に好ましくは40本/mm以上70本/mm以下である。繊維密度の測定方法は以下のとおりである。
〔頂部域13a、底部域13b及び側部域13cでの繊維密度の測定方法〕
フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて上層シート1及び下層シート21を含む表面シート2を構成している不織布を厚み方向Zに沿って切断する。頂部域13aでの繊維密度に関しては、上層シート1を構成する不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の上方の部位である頂部域13aを、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;150〜500倍)し、一定面積当たり(0.5mm程度)の前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数える。次に1mm当たりの繊維の断面数に換算し、これを頂部域13aでの繊維密度とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの繊維密度とする。同様に、底部域13bでの繊維密度に関しては、上層シート1を構成する不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の下方の部位を測定して求める。同様に、側部域13cの繊維密度に関しては、上層シート1を構成する不織布の切断面の厚みをZ方向に三等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。なお、以下において、上層シートを構成する不織布を単に上層シート不織布とも言い、表面シートを構成する不織布を単に表面シート不織布とも言う。
ナプキン10では、上層シート1の構成繊維11は高伸度繊維を含んでいる。ここで、構成繊維11が含む高伸度繊維とは、原料の繊維の段階で高伸度である繊維のみならず、製造された上層シート1の段階でも高伸度である繊維を意味する。「高伸度繊維」としては、弾性(エラストマー)を有して伸縮する伸縮性繊維を除き、例えば特開2010−168715号公報の段落[0033]に記載のように低速で溶融紡糸して複合繊維を得た後に、延伸処理を行わずに加熱処理及び/又は捲縮処理を行うことにより得られる、加熱によって樹脂の結晶状態が変化して長さの延びる熱伸長性繊維、あるいは、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂を用いて比較的紡糸速度を低い条件にして製造した繊維、又は、結晶化度の低い、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、若しくはポリプロピレンに、ポリエチレンをドライブレンドし紡糸して製造した繊維等が挙げられる。それらの繊維のうちでも、高伸度繊維は、熱融着性のある芯鞘型複合繊維であることが好ましい。芯鞘型複合繊維は、同心の芯鞘型でも、偏心の芯鞘型でも、サイド・バイ・サイド型でも、異形型でもよいが、特に同心の芯鞘型であることが好ましい。繊維がどのような形態をとる場合であっても、柔軟で肌触り等のよい上層シート不織布等を製造する観点からは、高伸度繊維の繊度は、原料の段階で、1.0dtex以上10.0dtex以下が好ましく、2.0dtex以上8.0dtex以下であることが更に好ましい。
上層シート1の構成繊維11は、高伸度繊維に加えて、他の繊維を含んで構成されていてもよいが、高伸度繊維のみから構成されていることが好ましい。他の繊維としては、例えば融点の異なる2成分を含みかつ延伸処理されてなる非熱伸長性の芯鞘型熱融着性複合繊維、あるいは、本来的に熱融着性を有さない繊維(例えばコットンやパルプ等の天然繊維、レーヨンやアセテート繊維など)等が挙げられる。上層シート1が高伸度繊維に加えて他の繊維も含んで構成されている場合、該上層シート1における高伸度繊維の割合は好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
高伸度繊維である熱伸長性複合繊維は、原料の段階で、未延伸処理又は弱延伸処理の施された複合繊維であり、例えば、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する、ポリエチレン樹脂を含む第2樹脂成分とを有しており、第1樹脂成分は、第2樹脂成分より高い融点を有している。第1樹脂成分は該繊維の熱伸長性を発現する成分であり、第2樹脂成分は熱融着性を発現する成分である。第1樹脂成分及び第2樹脂成分の融点は、示差走査型熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製DSC6200)を用い、細かく裁断した繊維試料(サンプル重量2mg)の熱分析を昇温速度10℃/minで行い、各樹脂の融解ピーク温度を測定し、その融解ピーク温度で定義される。第2樹脂成分の融点がこの方法で明確に測定できない場合、その樹脂を「融点を持たない樹脂」と定義する。この場合、第2樹脂成分の分子の流動が始まる温度として、繊維の融着点強度が計測できる程度に第2樹脂成分が融着する温度を軟化点とし、これを融点の代わりに用いる。
鞘部を構成する第2樹脂成分としては、上述のとおりポリエチレン樹脂を含んでいる。該ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。特に、密度が0.935g/cm以上0.965g/cm以下である高密度ポリエチレンであることが好ましい。鞘部を構成する第2樹脂成分は、ポリエチレン樹脂単独であることが好ましいが、他の樹脂をブレンドすることもできる。ブレンドする他の樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。ただし、鞘部を構成する第2樹脂成分は、鞘部の樹脂成分中の50質量%以上が、特に70質量%以上100質量%以下が、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。また、該ポリエチレン樹脂は、結晶子サイズが10nm以上20nm以下であることが好ましく、11.5nm以上18nm以下であることが更に好ましい。
芯部を構成する第1樹脂成分としては、鞘部の構成樹脂であるポリエチレン樹脂より融点が高い樹脂成分を特に制限なく用いることができる。芯部を構成する樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂を除く)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂等が挙げられる。更に、ポリアミド系重合体や樹脂成分が2種以上の共重合体等も使用することができる。複数種類の樹脂をブレンドして使用することもでき、その場合、芯部の融点は、融点が最も高い樹脂の融点とする。上層シート不織布の製造が容易となることから、芯部を構成する第1樹脂成分の融点と、鞘部を構成する第2樹脂成分の融点との差(前者−後者)が、20℃以上であることが好ましく、また150℃以下であることが好ましい。
高伸度繊維である熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分の好ましい配向指数は、用いる樹脂により自ずと異なるが、例えば第1樹脂成分がポリプロピレン樹脂の場合は、配向指数が60%以下であることが好ましく、更に好ましくは40%以下であり、更に好ましくは25%以下である。第1樹脂成分がポリエステルの場合は、配向指数が25%以下であることが好ましく、更に好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下である。一方、第2樹脂成分は、その配向指数が5%以上であることが好ましく、更に好ましくは15%以上であり、更に好ましくは30%以上である。配向指数は、繊維を構成する樹脂の高分子鎖の配向の程度の指標となるものである。そして、第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数がそれぞれ前記の値であることによって、熱伸長性複合繊維は、加熱によって伸長するようになる。
第1樹脂成分及び第2樹脂成分の配向指数は、特開2010−168715号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に記載の方法によって求められる。また、熱伸長性複合繊維における各樹脂成分が前記のような配向指数を達成する方法は、特開2010−168715号公報の段落〔0033〕〜〔0036〕に記載されている。
また、高伸度繊維の伸度は、原料の段階で、100%以上800%以下であることが好ましく、更に好ましくは200%以上500%以下、更に好ましくは250%以上400%以下である。この範囲の伸度を有する高伸度繊維を用いることで、該繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる。
高伸度繊維の伸度はJIS L−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±2%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された上層シート不織布から繊維を採取して伸度を測定するときを始めとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
高伸度繊維である熱伸長性複合繊維における第1樹脂成分と第2樹脂成分との比率(質量比、前者:後者)は、原料の段階で、10:90〜90:10、特に20:80〜80:20、とりわけ50:50〜70:30であることが好ましい。熱伸長性複合繊維の繊維長は、上層シート不織布の製造方法に応じて適切な長さのものが用いられる。上層シート不織布を例えば後述するようにカード法で製造する場合には、繊維長を30〜70mm程度とすることが好ましい。
高伸度繊維である熱伸長性複合繊維の繊維径は、原料の段階で、上層シート不織布の具体的な用途に応じ適切に選択される。上層シート不織布を吸収性物品の表面シート等の吸収性物品の構成部材として用いる場合には、10μm以上35μm以下、特に15μm以上30μm以下のものを用いることが好ましい。前記の繊維径は、次の方法で測定される。
〔繊維の繊維径の測定〕
繊維の繊維径として、繊維の直径(μm)を、マイクロスコープVH‐8000(キーエンス社製)を用いて、繊維の断面を200倍〜800倍に拡大観察して測定する。繊維の断面は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用い、繊維を切断して得る。抽出した繊維1本について円形に近似したときの繊維径を5箇所測定し、それぞれ測定した値5点の平均値を繊維の直径とする。
原料の段階で、高伸度繊維である熱伸長性複合繊維としては、上述の熱伸長性複合繊維の他に、特許第4131852号公報、特開2005−350836号公報、特開2007−303035号公報、特開2007−204899号公報、特開2007−204901号公報及び特開2007−204902号公報等に記載の繊維を用いることもできる。
ナプキン10では、上層シート1は、好適には、図6に示すように、繊維径が相互に異なる大径部17及び小径部16,16を有する繊維11を含んでいる。上層シート1は、図6に示すように、上層シート1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、該構成繊維11が、隣り合う融着部12,12どうしの間に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を有している。好適には、図6に示すように、上層シート1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、他の構成繊維11との交点を熱融着して形成された融着部12から、繊維径の小さい小径部16が略同じ繊維径で延出して形成されている。そして、該1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12それぞれから延出する小径部16,16どうしの間に、小径部16よりも繊維径の大きい大径部17が略同じ繊維径で延出して形成されている。更に好適には、上層シート1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12のうちの一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。このように、上層シート1の剛性が高まる部位である融着部12に隣り合うように、低剛性の小径部16が存在することで、上層シート1の柔軟性が向上し、肌触りが良好になる。また、大径部17を複数備える、言い換えると構成繊維11に低剛性の小径部16が多く存在するほど、上層シート1の柔軟性が更に向上し、肌触りが更に良好になる。
また、ナプキン10では、上層シート1は、図6に示すように、上層シート1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を複数(ナプキン10においては2個)備える構成繊維11を有している。好適には、上層シート1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12のうちの一方の融着部12から他方の融着部12に向かって、一方の融着部12側の小径部16、1個目の大径部17、小径部16、2個目の大径部17、他方の融着部12側の小径部16の順に配されている構成繊維11を有している。上層シート1は、1本の構成繊維11に着目して、隣り合う融着部12,12どうしの間に、大径部17を、肌触り向上と不織布強度低下の観点から、好ましくは1個以上5個以下備え、更に好ましくは1個以上3個以下備えている。
大径部17の繊維径(直径L17)に対する小径部16の繊維径(直径L16)の比率(L16/L17)は、好ましくは0.5以上0.8以下、更に好ましくは0.55以上0.7以下である。具体的に、小径部16の繊維径(直径L16)は、肌触り向上の観点から、好ましくは5μm以上28μm以下、更に好ましくは6.5μm以上20μm以下、特に好ましくは7.5μm以上16μm以下である。大径部17の繊維径(直径L17)は、肌触り向上の観点から、好ましくは10μm以上35μm以下、更に好ましくは13μm以上25μm以下、特に好ましくは15μm以上20μm以下である。
小径部16及び大径部17の繊維径(直径L16,L17)は、上述した繊維の繊維径の測定と同様にして測定する。
また、ナプキン10では、上層シート1は、図6に示すように、上層シート1の構成繊維11のうちの1本の構成繊維11に着目して、融着部12に隣接する小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されていることが好ましい。ここで、上層シート1の変化点18とは、小さい繊維径で延出する小径部16から、小径部16よりも繊維径の大きい繊維径で延出する大径部17へ、連続的に漸次変化する部位あるいは連続的に複数段階にわたって変化する部位を含まず、極端に一段で繊維径が変化する部位を意味する。また、前記1本の構成繊維11が熱伸長性複合繊維の場合には、上層シート1の変化点18とは、芯部を構成する第1樹脂成分と、鞘部を構成する第2樹脂成分との間で剥離することによって繊維径が変化する状態を含まず、あくまで、延伸により繊維径が変化している部位を意味する。
また、変化点18が、融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されているとは、上層シート1の構成繊維11をランダムに抽出し、該構成繊維11を、図6に示すように、走査電子顕微鏡として日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いて構成繊維11の隣り合う融着部12、12間が観察できるように(100倍〜300倍)拡大観察する。次いで、隣り合う融着部12,12の中心どうしの間隔Tを3等分して、一方の融着部12側の領域AT、他方の融着部12側の領域BT、中央の領域CTに区分する。そして、変化点18が、前記領域AT又は前記領域BTに配されていることを意味する。また、変化点18が、該融着部12から隣り合う融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に配されている上層シート1とは、上層シート1の構成繊維11を20本ランダムに抽出した際に、変化点18を前記領域AT又は前記領域BTに配している構成繊維11が、20本の構成繊維11のうちに少なくとも1本以上ある不織布を意味する。具体的に、前記構成繊維11は、肌触り向上の観点から、好ましくは1本以上、更に好ましくは5本以上、特に好ましくは10本以上である。
また、ナプキン10では、上層シート1は、側部域13cを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数が、頂部域13aを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数、及び底部域13bを構成する構成繊維における、変化点18を有する繊維の本数よりも多く形成されている。側部域13cにおける変化点18を有する繊維の数が頂部域13a、底部域13bより多くなることで、上層シート1の凸条部13は、側部域13cで体の動きに合わせて変形することが容易となる。また、体圧が表面シート2に加わっても上層シート1における側部域13cの部位で優先的に変形することができるため、頂部域13aや底部域13bが大きく変形することを防止することができる。その結果、装着時の動きの中で上層シート1の頂部域13aは身体の排泄部に一層追従し易くなり、排泄された液の素早い吸収が可能になる。一方で、上層シート1の底部域13bにおいては、ヨレや皺が防止されるため、吸収体4への吸収がより素早く行われる。また、上層シート1が着用者の動作に追従する際、側部域13cが肌に接する範囲が最も大きい為、側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数が、頂部域13aや底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数よりも多く形成されることで、側部域13cの肌触りが、より高まる。これらの観点から、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13a)、又は底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13b)に対する側部域13cを構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数(N13c)の比率(N13c/N13a,N13c/N13b)は、好ましくは2以上20以下、更に好ましくは5以上20以下である。具体的に、上層シート1の変化点18を有する繊維の本数の具体的な値に関し、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13a)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、底部域13bを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13b)は、好ましくは1本以上15本以下、更に好ましくは5本以上15本以下である。また、側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数(N13c)は、好ましくは5本以上20本以下、更に好ましくはg10本以上20本以下である。変化点18を有する繊維の本数の測定方法は以下のとおりである。
〔頂部域13a、底部域13b又は側部域13cを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数の測定方法〕
頂部域13aを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、上層シート不織布の厚みをZ方向に3等分した際の上方の部位である頂部域13aの頂点付近を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察(繊維断面が30〜60本程度計測できる倍率に調整;50〜500倍)し、頂部域13aを構成する構成繊維11を20本ランダムに抽出し、20本の構成繊維11の内に変化点18を有する繊維数を数える。これを、頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。測定は3箇所行い、平均してそのサンプルの頂部域13aを構成する構成繊維における変化点18を有する繊維の本数とする。同様に、底部域13bを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、上層シート不織布の厚みをZ方向に3等分した際の下方の部位である底部域13bの底点付近を測定して求める。同様に、側部域13cを構成する構成繊維11における変化点18を有する繊維の本数に関しては、上層シート不織布の厚みをZ方向に3等分した際の中央の部位を測定して求める。なお、走査電子顕微鏡としては、日本電子(株)社製のJCM−5100(商品名)を用いる。
上層シート1の厚さについては、表面シート2を側面視したときの表面シート2全体の厚さをシート厚みT(図3参照)とし、その凹凸に湾曲した上層シート1の局部的な厚さを層厚みT(図5参照)とする。シート厚みTは、用途によって適宜調節すればよいが、吸収性物品の表面シート2に用いる場合、0.5mm以上5mm以下が好ましく、1mm以上2mm以下が更に好ましい。この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができ、また、荷重が加わっても、凸条部13の形状を維持し得る。
層厚みTは、上層シート1内の各部位において異なっていてもよく、用途によって適宜調節すればよい。頂部域13aの層厚みTL1は0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下が更に好ましい。底部域13bの層厚みTL2は0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下が更に好ましい。側部域13cの層厚みTL3は0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下が更に好ましい。各層厚みTL1、TL2、TL3の関係は、この範囲とすることにより、使用時の体液吸収速度が速く、吸収体からの液戻りを抑え、更に、適度なクッション性を実現することができる。
シート厚みT及び層厚みTは以下の方法で測定される。
シート厚みTの測定方法は、上層シート1に0.05kPaの荷重を加えた状態で、厚み測定器を用いて測定する。厚み測定器にはオムロン社製のレーザー変位計を用いる。厚み測定は、10点測定し、それらの平均値を算出して厚みとする。
層厚みTの測定法は、フェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて表面シート2を厚み方向Zに沿って切断する。切断したシートの断面をキーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900により約20倍程度で拡大することで、各層の厚みを測定する。
また、ナプキン10では、表面シート2の凸条部13の頂部での高さHの値(図3参照)は、線状圧搾溝8の有する前方部A及び後方部Cにおける横方向Yに延びる第1横圧搾溝81及び第2横圧搾溝83の深さdの値(図2(b)参照)よりも大きくなっている。ここで、凸条部13の頂部での高さHは、上述するシート厚みTと同様の方法で切断したシートの断面をマイクロスコープで約20倍程度に拡大し、凸条部13の頂部と下層シートの肌面側の間の間隔で測定される。凸条部13の高さHは、0.45mm以上が好ましく、0.6mm以上が更に好ましく、また、3mm以下が好ましく、2mm以下が更に好ましく、また、0.45mm以上3mm以下が好ましく、0.6mm以上2mm以下が更に好ましい。また、第1横圧搾溝81又は第2横圧搾溝83の深さdは、例えば第1横圧搾溝81を例に挙げて説明すると、第1横圧搾溝81を横切るように縦方向Xにフェザー剃刀(品番FAS‐10、フェザー安全剃刀(株)製)を用いて吸収性物品を切断した際の断面を、キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−900により約20倍程度に拡大して観察する。そして観察した断面における、第1横圧搾溝81の底部と、表面シート2を構成する下層シート21の肌対向面と吸収体40での圧搾溝の底部の非肌対向面との間の間隔を、第1横圧搾溝81の深さdとする。第2横圧搾溝83の深さも同様の方法で測定される。第1横圧搾溝81又は第2横圧搾溝83の深さdは、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上が更に好ましく、また、0.8mm以下が好ましく、0.6mm以下が更に好ましく、また、0.3mm以上0.8mm以下が好ましく、0.4mm以上0.6mm以下が更に好ましい。圧搾溝81,83の深さdより凸条部13の頂部での高さHを高くしておくことで、表面シート2が圧搾溝81,83で吸収体40の非肌当接面側に向かって引張されたとしても表面シート2を構成している上層シート1は深さdより大きく引張されることがないため、上層シート1でのひきつりによる皺などが防止され、吸収スピードの低下を防止する。また、横圧搾溝81,83により凸条部13の側部域13c方向への動きが程よく抑制され、着用時の動きにより極端に凸条部13が倒れたり、つぶれたりすることを防止することができる。
上層シート1を平面視したときに、Y方向に隣り合う凸条部13の頂部どうしの間隔L13(図4参照)は、1mm以上が好ましく、1.5mm以上が更に好ましく、また、15mm以下が好ましく、10mm以下が更に好ましく、また、1mm以上15mm以下が好ましく、1.5mm以上10mm以下が更に好ましい。
また上層シート1の坪量は、シート全体の平均値で15g/m以上50g/m以下が好ましく、20g/m以上40g/m以下が更に好ましい。
上層シート1の構成繊維11の表面には、原料の段階で、繊維着色剤、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤等の繊維処理剤が、少量付着されていてもよい。
繊維処理剤を構成繊維11の表面に付着させる方法としては、各種公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、スプレーによる塗布、スロットコーターによる塗布、ロール転写による塗布、繊維処理剤への浸漬等が挙げられる。これらの処理は、ウエブ化する前の繊維に対して行ってもよいし、繊維を各種の方法でウエブ化した後に行ってもよい。ただし、後述する熱風吹き付け処理よりも前に処理を行う必要がある。繊維処理剤が表面に付着した繊維は、例えば、熱風送風式の乾燥機により、ポリエチレン樹脂の融点より十分に低い温度(例えば120℃以下)で乾燥される。
表面シート2を構成する上述した上層シート1の製造方法については、後段で詳述する。
上述したように、表面シート2は、図1,図3及び図4に示すように、上層シート1と下層シート21とが上層シート1の凹条部14の位置で接合されて接合部14sを形成しており、上層シート1の凸条部13と下層シート21との間に中空構造を有している。好適には、上層シート1と下層シート21との接合部14sは、上層シート1の凹条部14に沿って縦方向Xに連続的に延びて形成されていてもよいが、ナプキン10では、図1及び図4に示すように、上層シート1の凹条部14に沿って14sが縦方向Xに間欠的に形成されており、横方向Yに隣り合う接合部14s,14sどうしが、横方向Yに平行に延びる仮想直線(不図示)上に配されている。好適には、複数個の接合部14sが、縦方向Xに等間隔を空けて、縦方向Xに平行に延びる縦仮想直線(不図示)上に配されており、横方向Yにも等間隔を空けて、横方向Yに平行に延びる横仮想直線(不図示)上に配されている。このように、ナプキン10では、縦方向X及び横方向Yの両方向に分散した複数個の接合部14sによって、上層シート1と下層シート21とが部分的に接合されている。接合部14sは、接着剤を塗布したり、ヒートシール或いは超音波シールを施したりして形成することができ、ナプキン10では、ヒートシール或いは超音波シールを施して形成されている。
尚、接合部14sが接着剤を塗布して形成される場合には、接着剤を、公知の手段、例えば、スロットコートガン、スパイラルスプレーガン、スプレーガン、或いはドットガンを用いて塗布する。塗布する接着剤としては、例えば、ホットメルト接着剤が好ましく用いられる。ホットメルト接着剤の塗布量は、3g/m以上10g/m以下であることが好ましい。
ナプキン10では、吸収体4は、排泄部対向部Bにスリット43を複数有している。好適には、ナプキン10では、図1及び図7に示すように、各スリット43は、表面シート2の凸条部13及び凹条部14と平行に配されている。即ち、各スリット43は、縦方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14と平行に縦方向Xに延びる縦スリットである。ナプキン10では、縦方向Xに延びるスリット(縦スリット)43が、縦方向X及び横方向Yの両方向に分散した状態に形成された排泄部スリット領域4Sを有している。更に好適に、吸収体4は、吸収性シート411〜413の積層体からなり、図1,図2及び図7に示すように、排泄部対向部Bに多層部42を有している。また、吸収体4における多層部42以外の部分も2層以上の積層構造となっている。ナプキン10では、吸収体4は、多層部42以外で吸収性シート411、412の2層構造である。ここで、多層部42とは、図2(a)に示すように、吸収体4を構成する吸収性シートの積層枚数が、その周囲に位置する部分より多い部分である。ナプキン10では、多層部42は、その周囲に位置する部分よりも厚みが厚く、排泄部対向部Bに、表面シート2側(ナプキン10の肌対向面側)に突出した隆起部を形成している。
また、ナプキン10では、吸収体4は、図2及び図7に示すように、吸収体4の外形を形成する主吸収体40と、主吸収体40の一部に重ねて配された主吸収体40より小型の補助吸収体41とを有している。主吸収体40は、平面視において角が丸みを帯びた略矩形形状で且つ前方部Aから排泄部対向部Bを経て後方部Cに亘って延びる2枚の同形同大の吸収性シート411,412から形成されている。補助吸収体41は、平面視において略矩形形状であり、排泄部対向部Bからその近傍の後方部Cに亘って配されている。補助吸収体41は、1枚の吸収性シート413を折り畳んで2層構造としたものであり、主吸収体40を構成する2枚の吸収性シート411,412間に配されている。主吸収体40の一部に2層構造の補助吸収体41を配することで、吸収体4の一部の吸収容量を容易且つ効率的に増大させることができる。補助吸収体41は、主吸収体40を構成する2枚の吸収性シート411,412間に配置するのに代えて、主吸収体40を構成する上側の吸収性シート411の肌対向面側に積層しても良いし、主吸収体40を構成する下側の吸収性シート412の非肌対向面側に積層しても良い。また、吸収性シート間は、接合されていなくても良いし、まばらに散布した接着剤等によって接合されていても良い。
ナプキン10では、吸収体4の縦スリット43は、図1,図2(a)及び図7に示すように、排泄部対向部Bにおける多層部42及び多層部42以外の部位、それぞれに、吸収体4をその厚み方向に亘って貫通する切り込みを入れて形成される。複数の縦スリット43が配された排泄部スリット領域4Sは、図7に示すように、排泄部対向部Bのみならず、前方部Aの一部及び後方部Cの一部に亘っている。スリット43にはわずかに空間が形成されて表面シート2からの排泄液が取り込み易くなっているうえに、スリット43の切断部は、切り込み加工する際にやや圧縮されているため更に吸収スピードが高められる。また、縦スリット43が吸収体4を完全に貫通することで、吸収体4へ到達した液は、吸収体4の非肌対向面側へ到達しやすくなり吸収体4を効率的に使用した吸収が可能になる。なお、スリット43は吸収体4の肌対向面側に開口が存在すれば上述した高い吸収スピードが得られるが、スリット43が吸収体4を完全に貫通する形態がより好ましい。
ナプキン10では、各縦スリット43は、図1に示すように、その横方向長さである幅W43(図7参照)が、表面シート2における横方向Yに隣り合う凸条部13の頂部どうしの間隔L13(図4参照)よりも狭く形成されている。ここで、スリットの幅とは、スリットの延びる方向と直交する方向における該スリットの長さのことをいう。また、ここでいう、スリットの幅とは、吸収性物品を衣類のクロッチ部等に固定する前の、張力を加えない自然状態における幅の内の最大幅であり、体液を吸収体4に吸収させる前の幅のことをいう。
凸条部13の頂部どうしの間隔L13に対するスリット(縦スリット)43の幅W43の割合((W43/L13)×100)は、1%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましく、90%以下であることが好ましく、70%以下であることが更に好ましく、そして、1%以上90%以下であることが好ましく、10%以上70%以下であることが更に好ましい。縦スリット43のように、表面シート2の凸条部13が延びる方向に対してスリットが平行に配置される場合は、着用時の動きにより表面シート2の凸条部13がスリットに入りこみにくく肌に追従しやすい形状を保つことができる。
一方、表面シート2の凸条部13が延びる方向に対してスリットが交差するように配置される場合は、着用時に身体形状に合わせて前後に製品が湾曲したときに生じる表面シート2の横皺を前後に吸収体4が伸ばされることによりスリットが少し開口することで抑えることができる。上記範囲で幅W43を設計しておくことで、その効果が高められる。
具体的に、各スリット(縦スリット)43を平面視したときのスリット(縦スリット)43の幅W43は、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上が更に好ましく、また、1mm以下が好ましく、0.8mm以下が更に好ましく、また、0.1mm以上1mm以下が好ましく、0.3mm以上0.8mm以下が更に好ましい。
ナプキン10では、排泄部スリット領域4Sにおけるスリットの配置は、各スリットが、縦方向X及び横方向Yの両方向に分散されている配置であれば、特に制限されないが、本実施形態におけるように、縦方向Xに沿う縦スリット43を有する場合、図7に示すように、ナプキン10の縦方向Xに沿って直列配置した複数の縦スリット43からなる縦列Lが、横方向Yに複数列形成されていることが好ましい。また、ナプキン10では横方向Yに隣り合う縦列L,Lにおける縦スリット43の縦方向Xの位置が一致していない配置が好ましい。
ナプキン10では、排泄部スリット領域4Sは、図7に示すように、多層部42を含むように形成されている。多層部42には、横方向Yに離間した2本以上の縦スリット43からなるスリット列が縦方向Xに2列以上形成されていることが好ましく、縦方向Xに3列以上形成されていることが更に好ましく、4列以上形成されていることが特に好ましい。また、個々のスリット列に含まれる横方向Xに離間した縦スリット43の本数は、好ましくは2本以上であり、更に好ましくは3本以上である。排泄部スリット領域4Sの縦方向Xには、多層部42に含まれるスリット列に加えて、多層部42より縦方向Xの前方若しくは後方又は前方及び後方の両方に、1列又は2以上のスリット列を有することが好ましい。
図8に、排泄部スリット領域4Sにおける縦スリット43の好ましい配置の例を示している。これらの図に示す配置においては、ナプキン10の横方向Yに離間した複数本の縦スリット43からなるスリット列R1,R2が、ナプキン10の縦方向Xに交互に複数列形成されている。図8に示す配置例においては、横方向Yに離間した2本の縦スリット43からなるスリット列R1と、横方向Yに離間した3本の縦スリット43からなるスリット列R2とが、縦方向Xに交互に形成されている。
図8に示した縦スリット43の好ましい配置の例においては、図8(a)及び図8(b)に示すように、縦方向Xに隣り合う2つのスリット列R1,R2における縦スリット43は、一方のスリット列R1の縦スリット43が、他方のスリット列R2における横方向Yに隣り合う縦スリットどうし43,43の間の中央部に配されている。そして、ナプキン10の縦方向Xに隣り合うスリット列R1,R2間には、間隔を有していない。即ち、縦方向Xに隣り合う2つのスリット列R1,R2間には、間隔は設けていない。隣り合うスリット列間に間隔を有しないという表現には、図8(a)に示すように、隣り合うスリット列R1,R2の縦スリット43の端部どうしの位置が一致している場合と、図8(b)に示すように、隣り合うスリット列R1,R2の縦スリット43の端部どうしが、縦方向Xにおいて一部重複している場合とが含まれる。図8(b)に示すように、2本のスリット列R1,R2の縦スリット43の端部どうしを重複させた状態で縦方向Xに配置する場合、その重複させる長さL1は、スリット列を構成する縦スリット43の同方向Xの長さL2の20%以下であることが好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
ナプキン10では、縦スリット43の長さL2(図8参照)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上であり、また、好ましくは35mm以下、更に好ましくは25mm以下であり、また、好ましくは10mm以上35mm以下、更に好ましくは15mm以上25mm以下である。
また、ナプキン10では、横方向Yに延びる同一スリット列内における縦スリット43の間隔L43(図7参照)は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは7mm以上、また、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下であり、また、好ましくは3mm以上20mm以下、更に好ましくは7mm以上15mm以下である。
上述した本実施形態のナプキン10の各構成部材の形成材料について説明する。
表面シート2を構成する上層シート1は、高伸度繊維を含む繊維ウエブの構成繊維どうしの交点を融着部にて熱融着して繊維シートを形成する融着工程と、前記繊維シートを一方向に延伸する延伸工程とを備える不織布の製造方法によって好適に製造される。上層シート1の製造方法の一実施態様について、上述した上層シート1の好ましい製造方法を例に挙げ、図9を参照しながら説明する。図9には、上層シート1の製造方法に用いられる好ましい製造装置100が模式的に示されている。製造装置100は、エアスルー不織布の製造に好適に用いられるものである。製造装置100は、製造工程の上流側から下流側に向けて、ウエブ形成部200、熱風処理部300、延伸部400、及び下層シート接合部500をこの順で備えている。
ウエブ形成部200には、図9に示すように、ウエブ形成装置201が備えられている。ウエブ形成装置201としては、カード機が用いられている。カード機としては、吸収性物品の技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。カード機に代えて、他のウエブ製造装置、例えばエアレイド装置を用いることもできる。
熱風処理部300は、図9に示すように、フード301を備えている。フード301内では、エアスルー方式で熱風を吹き付けることができるようになっている。また、熱風処理部300は、通気性ネットからなる無端状のコンベアベルト302を備えている。コンベアベルト302は、フード301内を周回している。コンベアベルト302は、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂、あるいは金属から形成されている。
フード301内にて吹き付けられる熱風の温度及び熱処理時間は、繊維ウエブ1bの構成繊維11の含む高伸度繊維の交点が熱融着するように調整することが好ましい。より具体的には、熱風の温度は、繊維ウエブ1bの構成繊維11の内の最も融点が低い樹脂の融点に対して、0℃〜30℃高い温度に調整することが好ましい。熱処理時間は、熱風の温度に応じて、1秒〜5秒に調整することが好ましい。また、構成繊維11どうしの更なる交絡を促す観点から、熱風の風速は0.3m/秒〜1.5m/秒程度であることが好ましい。また、搬送速度は、5m/min〜100m/min程度であることが好ましい。
延伸部400は、図9及び図10に示すように、互いに噛み合いが可能になっている一対の凹凸ロール401,402を備えている。一対の凹凸ロール401,402は、加熱可能に形成されており、それぞれ、大径凸部403,404と小径凹部(図示せず)とがロール軸方向に交互に配されて形成されている。凹凸ロール401,402は加熱してもしなくてもよいが、凹凸ロール401,402を加熱する場合の加熱温度は、後述する繊維シート1aの構成繊維11の含む高伸度繊維を延伸しやすくする観点から、高伸度繊維内の最もガラス転移点が高い樹脂のガラス転移点以上、高伸度繊維内の最も融点が低い樹脂の融点以下にすることが好ましい。より好ましくは繊維のガラス転移点より10℃高い温度以上、融点よりも10℃低い温度以下であり、更に好ましくは繊維のガラス転移点より20℃高い温度以上、融点よりも20℃低い温度以下である。例えば、繊維に芯/鞘構造の繊維として、ガラス転移点67℃、融点258℃のPET(芯)/ガラス転移点−20℃、融点135℃のPE(鞘)を用いた際に加熱する場合には、67℃以上、135℃以下が好ましく、より好ましくは77℃以上、125℃以下、更に好ましくは87℃以上、115℃以下に加温する。
また、製造装置100においては、図10に示すように、凹凸ロール401のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし403,403の間隔(ピッチ)、及び凹凸ロール402のロール軸方向に隣り合う大径凸部どうし404,404の間隔(ピッチ)が同じ間隔(ピッチ)wであり、間隔(ピッチ)wは、繊維シート1aの構成繊維11の含む高伸度繊維が延伸装置内で首尾よく引き伸ばされて、先に述べた小径部から大径部への変化点が融着部に隣接され、肌触りが良好となる観点から、好ましくは1mm以上10mm以下であり、特に好ましくは1.5mm以上8mm以下である。同様の観点から、図10に示すように、一対の凹凸ロール401,402の押し込み量t(ロール軸方向に隣り合う大径凸部403の頂点と大径凸部404の頂点との間隔)は、好ましくは1mm以上3mm以下であり、特に好ましくは1.2mm以上2.5mm以下である。そして機械延伸倍率は、同様の観点から、好ましくは1.5倍以上3.0倍以下であり、特に好ましくは1.7倍以上2.8倍以下である。
下層シート接合部500は、凹凸ロール402と表面平滑なフラットロール501とを備えており、凹凸ロール402の大径凸部403とフラットロール501の周面との間で、凹凸形状とされた上層シート1と下層シート21とを、加熱及び加圧することにより接合する。
以上の構成を有する製造装置100を用いた上層シート1の製造方法について説明する。
先ず、図9に示すように、ウエブ形成部200にて、高伸度繊維である熱伸長性複合繊維を有する短繊維状の構成繊維11を原料として用い、カード機であるウエブ形成装置201によって繊維ウエブ1bを形成する(ウエブ形成工程)。ウエブ形成装置201によって製造された繊維ウエブ1bは、その構成繊維11どうしが緩く絡合した状態にあり、シートとしての保形性を獲得するには至っていない。
次いで、図9に示すように、高伸度繊維を含む繊維ウエブ1bの構成繊維11どうしの交点を融着部12にて熱融着して繊維シート1aを形成する(融着工程)。具体的には、繊維ウエブ1bは、コンベアベルト302上に搬送され、熱風処理部300にて、フード301内を通過する間に、熱風がエアスルー方式で吹き付けられる。このようにエアスルー方式で熱風が吹き付けられると、繊維ウエブ10の構成繊維11どうしが更に交絡すると同時に、絡合した繊維の交点が熱融着して(図11(a)参照)、シート状の保形性を有する繊維シート1aが製造される。このように製造された繊維シート1aの構成繊維11である高伸度繊維(熱伸長性複合繊維)は、熱風によって、殆ど伸長していない状態であることが好ましい。
次いで、図9に示すように、融着された繊維ウエブ1aを一方向に延伸する(延伸工程)。具体的には、シートとしての保形性を有する融着された繊維ウエブ1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、図11(a)ないし図11(c)に示すように、繊維ウエブ1aを延伸して、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に、繊維径の小さい2個の小径部16,16に挟まれた繊維径の大きい大径部17を形成するとともに、該小径部16から該大径部17への変化点18を、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成する。詳述すると、図11(a)に示すような、構成繊維11どうしの交点が融着部12にて熱融着している繊維シート1aを、一対の凹凸ロール401,402の間に搬送して、繊維ウエブ1aを、機械方向(MD,流れ方向)に直交する直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸する。繊維シート1aが直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸される際には、図11(a)に示す、構成繊維11どうしを固定している隣り合う該融着部12,12どうしの間の領域が、直交方向(CD,ロール軸方向)に積極的に引き伸ばされる。特に、図11(b)に示すように、構成繊維11どうしを固定している各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こりやすく、隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、両端に2個の小径部16,16が形成され、該2個の小径部16,16に挟まれた部分が大径部17となり、2個の小径部16,16に挟まれた大径部17が形成される。このように、各融着部12の近傍で、先ず局部収縮が起こりやすいので、小径部16から大径部17への変化点18が、該融着部12から隣り合う該融着部12,12どうしの間隔Tの1/3の範囲内に形成される。
そして、一部の隣り合う融着部12,12どうしの間の1本の構成繊維11に関しては、図11(c)に示すように、伸長できる余地(伸びしろ)を残した状態で、更に直交方向(CD,ロール軸方向)に延伸され、該隣り合う融着部12,12どうしの間の大径部17が延伸され、大径部17の中に小径部16が複数形成されるようになる。
延伸工程においては、高伸度繊維から小径部16及び大径部17が形成されるのと同時に、繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール402の大径凸部404との間に位置する部分が、他の部分よりも引き延ばされる。この場合、繊維シート1aの構成繊維は高伸度繊維なので、引き伸ばしを受けても切断せず、首尾よく引き伸ばしが行われる。繊維シート1aのうち、凹凸ロール401の大径凸部403と、凹凸ロール402の大径凸部404との間に位置する部分は、目的とする上層シート1における凸条部13の側部域13cであるから、前記の引き伸ばしによって側部域13cでは繊維が切断されることなく繊維間距離が延伸前に比べて増加する。その結果、側部域13cの繊維密度が他の部位よりも低下して、通気性が向上する。しかも、側部域13cを構成する繊維に切断は生じていないので、凸条部13の強度が高いレベルに維持される。その結果、凸条部13に荷重が加わっても、該凸条部13が潰れにくくなる。
以上のようにして製造された上層シート1は、凹凸ロール402によって、凹凸形状に変形された状態のまま、下層シート接合部500のシート合流部に搬送される。シート合流部には、ロール状巻回物21’から巻き出された帯状の下層シート21が供給されており、凹凸形状の上層シート1は、帯状の下層シート21と重ねた状態とされて、凹凸ロール402とフラットロール501との間に導入される。凹凸ロール402とフラットロール501との間においては、凹凸形状の上層シート1における凹条部14の部分と帯状の下層シート21とが、凹凸ロール402の大径凸部404とフラットロール501の周面との間で加熱及び加圧されて形成される接合部14sを介して接合する。このようにして、上層シート1が、凹条部14において下層シート21に接合された帯状の表面シート2が得られる。帯状の表面シート2は、巻き取った後に、ナプキン10の製造ラインに導入されるか、巻き取ることなく、ナプキン10の製造ラインに導入される。
表面シート2を構成する下層シート21としては、熱可塑性樹脂の繊維の集合体である、各種製法によって得られた不織布を用いることができる。例えば、カード法又はエアレイド法により得た繊維ウエブにエアスルー法で繊維どうしの熱融着点を形成したエアスルー不織布、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維どうしの熱融着点を形成したヒートロール不織布、ヒートエンボス不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布等の種々の不織布を用いることができる。
特に、下層シート21を構成する不織布としては、上層シート1よりも親水度や密度が高い親水性不織布を用いることが、上層シート1を透過してきた液を吸収体4へ円滑に移行させる観点から好ましい。下層シート21及び上層シート1の親水性は、親水化剤を施す量や、親水化剤の種類によって調整することができる。下層シート21の密度は、カード法により得た繊維ウエブにヒートロール法で繊維どうしの熱融着やヒートエンボスによる接着により調整することができる他、スパンボンド又はメルトブロー法の不織布を用いることでも調整が可能である。
とりわけ下層シート21としては、見掛け密度が0.005g/cm以上0.5g/cm以下、特に0.01g/cm以上0.2g/cm以下である不織布を用いることが好ましい。このような密度を有する不織布を下層シート21として用いることで、上層シート1と密度勾配を形成し、より上層シート1からの排泄液を引き込みやすくし、吸収スピードとドライ感向上を高めることが可能となる。また下層シート21は、ある程度の透過性を維持しながら液保持性も有しているため上層シート1で吸収透過させた排泄液を一時的に下層シート21で保持しながら吸収体4へ徐々に吸収させることができるため、多量の排泄が起こった場合においても吸収体4でオーバーフローすることなく、上層シート1への液戻りを防止することができる。下層シート不織布としては、例えばエアスルー不織布、ヒートエンボス不織布、エアレイド不織布、レジンボンド不織布などを好適に用いることができる。
裏面シート3としては、吸収性物品の裏面シートに従来使用されている各種のもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布とのラミネートシート等を用いることができる。
吸収体4を構成する吸収性シート411〜413としては、湿潤状態の吸水性ポリマーに生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性ポリマーとの間を結合させてシート状としたもの等を好ましく用いることができる。また、吸収性シートとしては、特開平8−246395号公報記載の方法にて製造された吸収性シート、気流に乗せて供給した粉砕パルプ及び吸水性ポリマーを堆積させた後、接着剤(例えば酢酸ビニル系の接着剤、PVA等)で固めた乾式シート、紙や不織布の間にホットメルト接着剤等を塗布した後高吸水性ポリマーを散布して得られた吸収性シート、スパンボンド又はメルトブロー不織布製造工程中に高吸水性ポリマーを配合して得られた吸収性シート等を用いることができる。これらの吸収性シートは、一枚を所定形状に裁断してシート状吸収体として用いることができる。
尚、本発明の吸収性物品には、通常、生理用ナプキン等の吸収性物品に用いられる、吸収性ポリマーの粒子及び繊維材料から構成された吸収コアをティッシュペーパによって被覆されている吸収体を用いることもできる。
ナプキン10の吸収体4は、吸収性シート411〜413の積層体から形成されており、該積層体は、枚葉の吸収性シートを複数枚貼り合わせて積層したものでも良いし、一枚の吸収性シートを折り畳むと共にそれらの層間を接着して積層体としたものでも良い。また、そのような積層体を、2枚の吸収性シート間や折り畳んで2層以上とした積層体の層間に挟んだり、他の吸収性シートの肌対向面側又は非肌対向面側に積層したものであっても良い。また、吸収性シートの折り畳み方も多様な折り畳み方を採用できる。
ナプキン10の吸収体4は、多層部42における厚みが、好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは5mm以下、更に好ましくは4mm以下であり、より具体的には、好ましくは0.7mm以上5mm以下、更に好ましくは1mm以上4mm以下である。多層部42の厚みをこのような範囲とすることで、多層部42が形成されている排泄部対向部Bにおける良好な装着感と高い吸収性能を両立することが容易となる。また、本実施形態のナプキン10のように吸収性物品がウイング部を備えている場合には、装着時に排泄部対向部での吸収体のヨレを抑制しやすくなる。また、吸収体は、多層部42以外の部分における厚みが、好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、更に好ましくは2.5mm以下であり、より具体的には、好ましくは0.3mm以上3mm以下、更に好ましくは0.5mm以上2.5mm以下である。この範囲であることが、高い吸収性能と着用者の動きへの追従性を高める観点から好ましい。
また、ナプキン10の吸収体4において、中高部42とその周辺部との境界又はその近傍における両者の厚み差(段差)は2mm以下であることが好ましく、更に1.5mm以下であることが好ましい。この目的は、排泄部対向部Bにおいて、中高部42とその周辺部分の主吸収体40のみが存在する領域との境界付近におけるヨレの発生を抑制することである。この段差が大きいと、着用中にナプキン10が着用者の動きに追従した際、段差による隙間を埋めようとするため、結果として段差の影響でヨレが生じ易くなることがあるが、該段差を前記範囲内に設定とすることで、排泄部対向部Bにおけるヨレの発生を抑える効果が高まる。前述した吸収体4の各部の厚みは下記方法により測定される。
<吸収体の厚みの測定方法>
測定対象物である吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、5cN/cm2の荷重下での厚みを測定する。厚みの測定には、ダイヤルゲージ式厚み計(PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製))を用いる。このとき、厚み計の先端部と測定対象物における測定部分との間に、平面視円形状又は正方形状のプレート(厚さ5mm程度のアクリル板)を配置して、荷重が5cN/cm2となるようにプレートの大きさを調整する。
また、ナプキン10のように、吸収体4にスリットを形成するには、吸収性シートの積層体を、公知の切断手段により部分的に切断すれば良く、例えば、ロールの周面に、周方向に延びる切断刃が、ロールの周方向及び軸長方向に分散させて多数形成されたカッターロールと、該カッターロールの刃を受けるアンビルロールとを備えた切断装置を用いることができる。
なお、吸収体4を構成する吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、(でんぷん−アクリル酸)グラフト共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、ポリアスパラギン酸等が挙げられる。また、吸収体4を構成する吸収性シートは、そのいずれもが吸水性ポリマーを含有する吸水性シートであることが好ましいが、吸水性ポリマーを含有する吸水性シートと、吸水性ポリマーを含有しない吸水性シートを組み合わせて、吸収体を構成する吸水性シートの積層体としても良い。
サイドシート5としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、液不透過性又は撥水性の樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体等を用いることができる。その他の材料としては、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布(S)とメルトブロー不織布(M)とが複合化されたシート(例えばSM、SMS、SMMS等)、ヒートロール不織布、エアスルー不織布等の撥水性(疎水性)不織布が挙げられる。特に撥水性のエアスルー不織布を用いることが、肌触りのよさと横モレ防止の点から好ましい。
ウイング部粘着部71や本体粘着部72(ズレ止め部)の形成方法としては、下着等の衣類に固定して用いる吸収性物品に従来用いられる方法を特に制限なく用いることができる。例えば、粘着剤を裏面シート3に直接塗工して形成することもできるし、粘着剤が塗工された粘着テープの他面側を裏面シートに接合して形成することもできる。粘着部の形成に用いる粘着剤としては、例えば、エマルジョン系、水系、溶剤系の粘着剤が挙げられる。また、ズレ止め部は、優れた位置ずれ防止性能及び安定な生産性を得る観点から、ホットメルト粘着剤等の粘着剤を塗布して形成することが好ましい。そのような粘着剤としては、この種の物品に通常用いられるものを制限なく採用することができるが、主に天然ゴム類似の基本構造を有する合成ゴム系のブロック共重合体を用いることが好ましい。そのようなブロック共重合体としては、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。粘着剤は、これらのブロック共重合体から選択される一種又は二種以上のベースポリマーを10〜65重量%、特に30〜50重量%含むことが好ましい。なお、ズレ止め部は、吸収性本体とそれを固定する衣類との間のズレを防止できる限り、粘着性がなくても良い。
線状圧搾溝8(第1横圧搾溝81、縦圧搾溝82及び第2横圧搾溝83)は、熱を伴うか又は伴わない圧搾加工(いわゆるエンボス加工)、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。線状圧搾溝8においては、表面シート2及び吸収体4が、図示しないが、接着剤を介して圧着される、あるいは熱融着等により一体化(結合)している。表面シート2と吸収体4との間が結合しているという表現には、表面シート2と吸収体4との間にセカンドシート等の他のシートが介在し、その表面シートと当該他のシートとが接合され、更に当該他のシートと吸収体4とが接合(結合)している場合も含まれる。線状圧搾溝8の幅は、この種の吸収性物品における線状圧搾溝と同様に設定すれば良い。
上述したナプキン10の作用効果について説明する。
ナプキン10の表面シート2は、図1及び図3に示すように、縦方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14が横方向Yに交互に配された凹凸構造の上層シート1を有している。そして、表面シート2は、凹凸構造の上層シート1と下層シート21とが上層シート1の凹条部14で接合部14sを介して接合され、上層シート1の凸条部13と下層シート21との間に中空構造を有している。その為、表面シート2がナプキン10の着用中にヨレてしまい、上層シート1の頂部域13aが側部域13cに折り重なったとしても、凹凸構造の上層シート1は、頂部域13aと底部域13bとの間の側部域13cの繊維密度が、該頂部域13aの繊維密度及び該底部域13bの繊維密度よりも低く形成されているので、体液を素早く吸収することができると共に、側部域13cが変形し易く、装着時の動きの中で上層シート1の頂部域13aはより身体の排泄部に追従でき、排泄された液の素早い吸収が可能になる。底部域13bにおいては、ヨレや皺が防止されるため、吸収体4への吸収がより素早く行われる。また、ナプキン10は、吸収体4が、図1及び図7に示すように、排泄部対向部Bにスリット(縦スリット)43を複数有しているので、ナプキン10の着用中のヨレを防止することができると共に、スリット43にわずかに空間が形成されて表面シート2からの排泄液が取り込み易くなっているうえに、スリット43の切断部は、切り込み加工する際にやや圧縮されているため更に吸収スピードが高められる。更に、各スリット(縦スリット)43は、その幅W43が、表面シート2における横方向Yに隣り合う凸条部13の頂部どうしの間隔L13よりも狭く形成されているので、凸条部13がスリット43に入り込み吸収体4での吸収阻害を引き起こすことなく表面シート2は肌に追従しやすい形状を保ちながら、スリット43により吸収体4内へ体液を吸収することができる。以上のように、ナプキン10は、着用時にヨレて表面シート2の凸条部13,13どうしが折り重なった部分が生じたとしても、体液を素早く吸収することができ、体液の漏れを防止し、ドライ感を向上させることができる。スリット43が吸収体4を貫通していると、この効果は一層優れたものとなる。
また、ナプキン10では、吸収体4の有する複数のスリット43が、図1及び図7に示すように、凹凸構造の上層シート1の縦方向Xに延びる筋状の凸条部13及び凹条部14と平行に配されている縦スリットであるため、ナプキン10の着用中に横方向内方への力が作用したとしても、ナプキン10へのヨレる方向が揃い易く、表面シート2と吸収体4との間が浮き難くなり、体液吸収のスピードを向上することができる。
また、ナプキン10は、図1及び図2に示すように、吸収性本体10Bの肌対向面(表面シート2の肌対向面)に、表面シート2及び吸収体4が裏面シート3側に向かって一体的に凹陥してなる線状圧搾溝8を備えている。線状圧搾溝8は、前方部A及び後方部Cに、横方向Yに延びる第1横圧搾溝81及び第2横圧搾溝83を有しており、凸条部13の頂部での高さHの値は、第1横圧搾溝81及び第2横圧搾溝83の深さdの値よりも大きくなっている。その為、第1横圧搾溝81及び第2横圧搾溝83を圧搾して形成する際に、表面シート2の引きつりを抑えることができ、表面シート2の上層シート1の凹凸構造を保つことができ、体液を素早く吸収することができる。また、横圧搾溝81,83により凸条部13の側部域13c方向への動きが程よく抑制され、着用時の動きにより極端に凸条部13が倒れたり、つぶれたりすることを防止することができる。
請求項4発明の効果
また、ナプキン10は、図1及び図4に示すように、上層シート1と下層シート21とを接合する接合部14sが、上層シート1の凹条部14に沿って縦方向Xに間欠的に形成されており、横方向Yに隣り合う接合部どうし14s,14sが、横方向Yに平行に延びる仮想直線(不図示)上に配されている。その為、ナプキン10は、着用中に、前記仮想直線(不図示)に沿って曲がり易くなり、着用中の横方向Yへのヨレを防止することができる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明の吸収性物品は前記実施形態のナプキン10に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、ナプキン10の吸収体4が有する複数のスリット43は、図1及び図7に示すように、縦スリットであるが、ナプキン10の横方向に沿う横スリットであってもよいし、縦方向X及び横方向Yの両者に対して角度を有する斜め方向に延びるスリットであってもよいし、縦スリットと横スリットとを混在してもよい。横スリットの場合においては、表面シート2上で凸条部13に沿って前後に拡散しやすい液を吸収体4内で抑制することができる。また、ナプキン10の吸収体4が有する複数のスリット43は、図2(a)に示すように、吸収体4をその厚み方向に亘って貫通しているが、貫通していなくてもよい。
また、ナプキン10の吸収体4の排泄部スリット領域4Sは、排泄部対向部Bのみに形成されていてもよいし、排泄部対向部Bから後方部Cの一部に延在していてもよいし、排泄部対向部Bから、前方部Aの一部及び後方部Cの一部に延在していてもよい。また、多層部42における吸収性シートの積層数は、4枚に代えて、2枚又は3枚でも良く、5枚以上であっても良い。また、多層部42とそれ以外の部分との吸収性シートの積層枚数の差も1枚又は3枚以上であっても良い。
また、本発明の吸収性物品は、生理用ナプキンの他、パンティーライナー(おりものシート)、失禁パッド等であってもよい。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
肌対向面を形成する液透過性の表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート、及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部より着用者の腹側に配される前方部と、該排泄部対向部より着用者の背側に配される後方部とを有する吸収性本体を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有する吸収性物品であって、前記表面シートは、肌対向面側の上層シートと、該上層シートの非肌対向面側に隣接して配された下層シートとを有し、前記上層シートは、縦方向に延びる筋状の凸条部及び凹条部が横方向に交互に配された凹凸構造の不織布であり、前記上層シートを横方向に沿って断面視して、頂部域と底部域との間の側部域は、その繊維密度が、該頂部域の繊維密度及び該底部域の繊維密度よりも低く、前記表面シートは、前記上層シートと前記下層シートとが該上層シートの前記凹条部で接合部を介して接合され、該上層シートの前記凸条部と該下層シートとの間に中空構造を有しており、前記吸収体は、前記排泄部対向部にスリットを複数有しており、各前記スリットは、その幅が、前記表面シートにおける横方向に隣り合う前記凸条部の頂部どうしの間隔よりも狭い吸収性物品。
<2>
各前記スリットは、前記表面シートの前記凸条部及び前記凹条部と平行に配されている前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
前記吸収性物品は、前記表面シートの肌対向面に、該表面シート及び前記吸収体が前記裏面シート側に向かって一体的に凹陥してなる線状圧搾溝が形成されており、前記線状圧搾溝は、前記前方部及び前記後方部に、横方向に延びる横圧搾溝を有し、前記表面シートの前記凸条部は、その頂部での高さの値が、前記横圧搾溝の深さの値よりも大きい前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記上層シートと前記下層シートとの前記接合部は、縦方向に間欠的に形成されており、横方向に隣り合う該接合部どうしが、横方向に平行に延びる仮想直線上に配されている前記<1>〜<3>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<5>
前記スリットは前記吸収体を貫通している、前記<1>〜<4>の何れか1項に記載の吸収性物品。
<6>
前記スリットは前記凸条部が延びる方向に対して平行に延びている、前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載の吸収性物品。
<7>
前記スリットは前記凸条部が延びる方向に対して交差するように延びている、前記<1>〜<5>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<8>
隣接する前記凸条部の頂部同士の間隔に対する前記スリットの幅の割合が1%以上90%以下である、前記<1>〜<7>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<9>
前記スリットの幅が0.1mm以上1mm以下である、前記<1>〜<8>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<10>
前記上層シートは、繊維径が相互に異なる、相対的に、繊維径が大きい大径部及び繊維径が小さい小径部を有する繊維を含んでいる、前記<1>〜<9>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<11>
前記上層シートの構成繊維のうちの1本の構成繊維に着目して、他の構成繊維との交点を熱融着して形成された融着部から前記小径部が延出して形成され、該1本の構成繊維に着目して、隣り合う融着部それぞれから延出する小径部どうしの間に前記大径部が形成されている前記<10>記載の吸収性物品。
<12>
前記大径部の繊維径を直径L17、前記小径部の繊維径を直径L16としたときの比率L16/L17が0.5以上0.8以下である、前記<10>又は<11>に記載の吸収性物品。
<13>
前記上層シートの構成繊維のうちの1本の構成繊維に着目して、融着部に隣接する小径部から大径部への変化点が、該融着部から隣り合う融着部どうしの間隔の1/3の範囲内に配されている、前記<10>〜<12>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<14>
前記上層シートは、前記側部域を構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数が、前記頂部域を構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数、及び底部域を構成する構成繊維における変化点を有する繊維の本数よりも多く形成されている前記<13>に記載の吸収性物品。
<15>
前記吸収体は、吸収性シートの積層体からなっている、前記<1>〜<14>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<16>
前記吸収体は、前記排泄部対向部では、その周囲に位置する部分よりも前記吸収性シートの積層枚数が多い多層部を有している、前記<15>記載の吸収性物品。
<17>
前記吸収体は、吸収体の外形を形成する主吸収体と、該主吸収体の一部に重ねて配置された該主吸収体よりも小型の補助吸収体とを有しており、前記多層部は該主吸収体と該補助吸収体とが重ねて配置されて形成されている、前記<16>記載の吸収性物品。
<18>
前記スリットは、排泄部対向部から、前方部の一部及び後方部の一部に亘って配されている、前記<1>〜<17>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<19>
前記多層部には、横方向に離間した2本以上の縦スリットからなるスリット列が縦方向に2列以上形成されている、前記<16>〜<18>に記載の吸収性物品。
<20>
前記縦方向に隣り合う2つのスリット列における縦スリットは、一方のスリット列の縦スリットが、他方のスリット列における横方向に隣り合う縦スリット同士の間の中央部に位置している、前記<19>に記載の吸収性物品。
<21>
前記上層シートは、熱伸長性複合繊維を有する短繊維状の構成繊維を原料としたものである、前記<1>〜<20>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<22>
前記下層シートは、熱可塑性樹脂の繊維の集合体である不織布である、前記<1>〜<21>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<23>
前記下層シートを構成する不織布は、前記上層シートよりも密度が高い、前記<1>〜<22>の何れか1つに記載の吸収性物品。
<24>
前記吸収性物品が生理用ナプキンである、前記<1>〜<23>の何れか1つに記載の吸収性物品。
10 生理用ナプキン(吸収性物品)
10B 吸収性本体
10W ウイング部
10S サイドフラップ部10S
2 表面シート
1 上層シート
11 構成繊維
12 融着部
13 凸条部
14 凹状部
14s 接合部
16 小径部
17 大径部
18 変化点
3 裏面シート
4 吸収体
411,412,413 吸収性シート
4S 排泄部スリット領域
40 主吸収体
41 補助吸収体
42 多層部
43 縦スリット
5 サイドシート
61 第1接合線
62 第2接合線
71 ウイング部粘着部
72 本体粘着部
8 線状圧搾溝
81 第1横圧搾溝
82 縦圧搾溝
83 第2横圧搾溝
100 製造装置
200 ウエブ形成部
201 ウエブ形成装置
300 熱風処理部
301 フード
302 コンベアベルト
400 延伸部
401,402 凹凸ロール
403,404 大径凸部

Claims (5)

  1. 肌対向面を形成する液透過性の表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート、及びこれら両シート間に介在された吸収体を具備し、着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部と、該排泄部対向部より着用者の腹側に配される前方部と、該排泄部対向部より着用者の背側に配される後方部とを有する吸収性本体を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向に直交する横方向を有する吸収性物品であって、
    前記表面シートは、肌対向面側の上層シートと、該上層シートの非肌対向面側に隣接して配された下層シートとを有し、
    前記上層シートは、縦方向に延びる筋状の凸条部及び凹条部が横方向に交互に配された凹凸構造の不織布であり、
    前記上層シートを横方向に沿って断面視して、頂部域と底部域との間の側部域は、その繊維密度が、該頂部域の繊維密度及び該底部域の繊維密度よりも低く、
    前記表面シートは、前記上層シートと前記下層シートとが該上層シートの前記凹条部で接合部を介して接合され、該上層シートの前記凸条部と該下層シートとの間に中空構造を有しており、
    前記吸収体は、前記排泄部対向部にスリットを複数有しており、
    各前記スリットは、その幅が、前記表面シートにおける横方向に隣り合う前記凸条部の頂部どうしの間隔よりも狭い吸収性物品。
  2. 各前記スリットは、前記表面シートの前記凸条部及び前記凹条部と平行に配されている請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記吸収性物品は、前記表面シートの肌対向面に、該表面シート及び前記吸収体が前記裏面シート側に向かって一体的に凹陥してなる線状圧搾溝が形成されており、
    前記線状圧搾溝は、前記前方部及び前記後方部に、横方向に延びる横圧搾溝を有し、
    前記表面シートの前記凸条部は、その頂部での高さが、前記横圧搾溝の深さよりも高い請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記上層シートと前記下層シートとの前記接合部は、縦方向に間欠的に形成されており、横方向に隣り合う該接合部どうしが、横方向に平行に延びる仮想直線上に配されている請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品。
  5. 前記スリットは前記吸収体を貫通している、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品。
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