しかしながら、上記特許文献1〜3記載の吸収性物品では、装着時に脚の付け根の内側部分によって幅方向両側から内側に向かう圧力(脚圧)が作用したとき、吸収体の両側部が極端に内側に変形して、各吸収性物品の緩やかな変形状態が維持できず、身体とのフィット性が低下するおそれがあった。また、フィット性の低下により、肌面との間に隙間が生じて肌面を伝う体液の漏れにつながるおそれもあった。
そこで本発明の主たる課題は、装着時に幅方向両側から内側に向かう脚圧が作用したときでも、身体とのフィット性に優れ、漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
前記吸収体の体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ、幅方向に沿うとともに前後に離間する2本のスリットが設けられ、前記スリットを内側に延長した仮想線の交点が体液排出部位の中心部に位置するように配置され、前記スリットで前後が区切られた領域において、前記吸収体と前記透液性表面シートとが非接合とされるとともに、前記吸収体と前記裏面シートとが接合され、この領域より幅方向中央側において、前記吸収体と前記裏面シートとが非接合とされるとともに、前記吸収体と前記透液性表面シートとが接合され、
前記スリットで前後が区切られた領域は、装着時に幅方向両側から内側に向かう圧力によって、幅方向中央側に隣接する吸収体の非肌側に入り込むように変形し、幅方向中央部の吸収体を肌側に隆起させるように作用する吸収体変形領域となっていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
上記請求項1記載の発明では、前記吸収体の体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ、幅方向に沿うとともに前後に離間する2本のスリットが設けられ、前記スリットを内側に延長した仮想線の交点が体液排出部位の中心部に位置するように配置されている。また、前記スリットで前後が区切られた領域において、前記吸収体と透液性表面シートとが非接合とされるとともに、前記吸収体と前記裏面シートとが接合され、この領域より幅方向中央側において、前記吸収体と裏面シートとが非接合とされるとともに、前記吸収体と前記透液性表面シートとが接合されている。これによって、前記スリットで前後が区切られた領域は、装着時に幅方向両側から内側に向かう圧力(脚圧)によって、幅方向中央側に隣接する吸収体の非肌側に入り込むように変形し、幅方向中央部の吸収体を肌側に隆起させるように作用する吸収体変形領域となっている。このように、前記吸収体変形領域を形成することによって、装着時に幅方向両側から内側に向かう脚圧が作用したときでも、前記吸収体変形領域が幅方向中央側の吸収体の非肌側に入り込むように変形し、幅方向中央部の吸収体を肌側に隆起させるため、身体とのフィット性に優れるとともに、吸収性物品と肌面との間に隙間が生じないので肌面を伝う体液の漏れが防止できるようになる。
請求項2に係る本発明として、前記吸収性物品の幅方向中央部に肌側に高い吸収体の中高部が設けられるとともに、前記スリットが前記中高部より幅方向外側に形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項2記載の発明では、前記吸収性物品の幅方向中央部に肌側に高い吸収体の中高部が設けられるとともに、前記スリットが前記中高部より幅方向外側に形成されているため、前記吸収体変形領域が脚圧によって幅方向中央側の吸収体の非肌側に入り込むように変形したとき、前記中高部を肌側に隆起させるように作用するので、身体とのフィット性が更に向上するようになる。
請求項3に係る本発明として、体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ、前記透液性表面シートの外面側から前記裏面シート側に向けて窪む圧搾溝が形成されるとともに、前記圧搾溝は、前記スリットにおいて離間するように形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項3記載の発明では、体液排出部位に対応する領域の両側部にそれぞれ圧搾溝を形成した場合において、前記圧搾溝は、前記スリットにおいて離間するように形成されているため、前記吸収体変形領域の変形が前記圧搾溝によって阻害されることなく、脚圧によって所定の状態に変形できるようになる。また、前記吸収体変形領域に前記圧搾溝が施されることによって、この圧搾溝を基点とした変形がしやすくなる。
請求項4に係る本発明として、前記スリットは、前記吸収体の側縁から体液排出部位の中心部に向けて直線状に延びるか、前記吸収体の側縁から体液排出部位の中心部に向けて長手方向中心線側に膨出する曲線状に延びている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項4記載の発明では、前記スリットの平面形状として、吸収体の側縁から体液排出部位の中心部に向けて直線状に延びるように形成してもよいし、吸収体の側縁から体液排出部位の中心部に向けて長手方向中心線側に膨出する曲線状に延びるように形成してもよいこととしている。前記スリットを長手方向中心線側に膨出する曲線状に形成した場合には、脚の付け根の内側部分に沿う形状となるため、スリットに対して脚圧がほぼ均等に作用するようになり、吸収体変形領域の変形がスムーズに行われるようになるとともに、幅方向中央部の吸収体部分に余計な力が加わらずに、この部分のヨレやシワが防止でき、身体とのフィット性がより一層向上するようになる。
請求項5に係る本発明として、前記スリットは、連続線又は間欠線からなる請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項5記載の発明では、前記スリットを連続線とした場合には、脚圧によって吸収体変形領域が変形しやすくなし、前記スリットを間欠線とした場合には、吸収体変形領域の吸収体の崩れが防止できるようになる。
請求項6に係る本発明として、前記吸収体は、肌側に配置された上層と、非肌側に配置された下層とからなり、前記下層に前記スリットが形成され、前記上層には前記スリットが形成されていない請求項1〜5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項6記載の発明では、吸収体が上層と下層との2層構造とされ、下層のみに前記スリットを設けるようにしている。これによって、吸収体変形領域の吸収体の崩れが防止できるようになる。なお、本実施形態においては、装着時に脚圧を受けたとき、下層吸収体のみが幅方向中央側の吸収体の非肌側に入り込むように変形する。
請求項7に係る本発明として、肌当接面側の両側部にそれぞれ立体ギャザーを形成するサイド不織布が配設され、前記サイド不織布は、前記吸収体変形領域と重なる領域が、非肌当接面側の部材に接着しない非接着領域とされ、それ以外の領域が、非肌当接面側の部材に接着する接着領域とされている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項7記載の発明では、肌当接面側の両側部にそれぞれ立体ギャザーを形成するサイド不織布を配設した場合において、前記サイド不織布は、前記吸収体変形領域と重なる領域が、非肌当接面側の部材(透液性表面シート)に接着しない非接着領域とすることによって、吸収体変形領域においてサイド不織布との縁が切れるため、脚圧によって前記吸収体変形領域が内側に変形するのに伴う立体ギャザーの起立形状の変形が防止でき、立体ギャザーと身体とのフィット性が低下せず、体液の堰き止め効果が維持できるようになる。
請求項8に係る本発明として、肌当接面側の両側部にそれぞれ立体ギャザーを形成するサイド不織布が配設され、前記サイド不織布は、前記スリットと重なる領域が、非肌当接面側の部材に接着しない非接着領域とされ、それ以外の領域が、非肌当接面側の部材に接着する接着領域とされている請求項1〜6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
上記請求項8記載の発明では、サイド不織布をスリットと重なる領域で非接着とすることによって、脚圧による前記吸収体変形領域の変形に伴う立体ギャザーの変形を防止している。
以上詳説のとおり本発明によれば、装着時に幅方向両側から内側に向かう脚圧が作用したときでも、身体とのフィット性に優れ、漏れが防止できるようになる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1〜図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、これら不透液性裏面シート2とサイド不織布7とによる積層シート部分によって側方に突出するウイング状フラップW、Wが形成されているとともに、これよりも臀部側に位置する部分にヒップホールド用フラップWB、WBが形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
本実施形態に係る生理用ナプキン1では、図1及び図2に示されるように、前記吸収体4の幅方向中央部であって体液排出部位Hを含む領域に、肌側に高い吸収体の中高部6を設けているが、この中高部6は設けなくてもよい。前記中高部6は、吸収体4の肌側面に隣接して配置され、吸収体4より幅寸法及び長手寸法が短く形成されている。前記中高部6の厚みは、厚くし過ぎると吸収体4の剛性が上がり身体への密着性が低下するため3〜25mm、好ましくは5〜18mmとするのが好ましい。
前記中高部6の近傍外側部位置の少なくとも両側部にそれぞれ、透液性表面シート3の外面側から不透液性裏面シート2に向けて窪む圧搾溝8を形成するのが好ましい。前記圧搾溝8は、少なくとも体液排出部位Hに対応する領域の両側部にそれぞれ形成され、図1に示される例では、体液排出部位H及び臀部溝の中央部を含む領域を周方向にほぼ閉合する形状で付与されている。前記圧搾溝8は、透液性表面シート3の外面側からの圧搾により、透液性表面シート3から吸収体4にかけての部材を一体的に圧搾したものである。前記圧搾溝8は中高部6の位置ズレを防止し、中高部6をきっちりと画成するとともに、臀部溝に対するフィット性を高めるために付与されている。前記圧搾溝8は、後述するスリット20で離間して配置するのが好ましいが、これについては後段で詳細に説明する。なお、図示例では、前記圧搾溝8の前後にそれぞれ長手方向外側に膨出する曲線状の圧搾溝9,10が形成されている。
前記中高部6は、少なくともパルプ繊維と合成繊維とを含むとともに、前記パルプ繊維:合成繊維との比率を重量換算で80〜20:20〜80、好ましくは40〜60:60〜40で混合したものが望ましい。また、前記中高部6は吸水性ポリマーを含有することができる。前記吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。配合量は中高部6が吸収体4側への浸透を促進する必要上、配合量を多くすると所謂ゲルブロッキング現象が起きるため、パルプ繊維及び合成繊維の合計重量に対して重量換算で1〜10%の割合で配合するのが望ましい。なお、吸水性ポリマー含有率が50%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなるため望ましくない。
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/m2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により、ほぼ体液排出部に相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップWB、WBを形成している。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップWB、WBの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップWBをショーツの内面に止着するようになっている。
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された糸状弾性伸縮部材11が配設されるとともに、前記糸状弾性伸縮部材11の上側部位に複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材12,12が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、断面Z状に折り畳んで積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、図2に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材11配設部位を屈曲点として、断面く字状に内側に開口を向けたポケットP、Pを形成しながら表面側に起立する左右対の立体ギャザーBS、BSが形成されている。
〔吸収体変形領域について〕
本生理用ナプキン1では、図1及び図4(A)に示されるように、前記吸収体4の体液排出部位Hに対応する領域の両側部にそれぞれ、ナプキン幅方向に沿うとともに前後に離間する2本のスリット20、20が設けられ、前記スリット20を内側に延長した仮想線Sの交点が体液排出部位Hの中心部に位置するように配置されている。
前記スリット20は、吸収体4の側縁から生理用ナプキン1の長手方向中心線CLに向けて所定の長さで形成された吸収体4の切り込み部である。前記スリット20は、吸収体4の表裏を貫通するように、厚み方向に亘って形成されている。前記スリット20においては、所定の幅を有する空間部が形成されるようにするのが好ましいが、吸収体4を構成する繊維の端部がスリット20の側面からスリット20内に突出するなどして実質的に幅を有さないように形成されていても構わない。前記スリット20の幅としては、5mm以下、好ましくは3mm以下とするのがよい。
前記スリット20は、概ね吸収体4の幅方向に沿うように形成されている。具体的には、吸収体4の両側部に形成された各2本のスリット20、20のうち、前側のスリット20は後側に傾斜するように延び、後側のスリット20は前側に傾斜するように延びている。前記スリット20の内方側端縁から内側に延長した仮想線Sは、体液排出部位Hの中心部で交差するように形成されている。体液排出部位Hの中心部とは、着用者の排血口部(排尿口部)の概ね中心に当たる部分であり、この位置は装着位置や体型により若干の相違があるため、ある程度の大きさを有する部分となっている。従って、前記スリット20、20…は、内側延長線が長手方向中心線CL上の厳密な点で交差しなくても、ある程度近接していればよい。この範囲としては、長手方向中心線CL上で10mm以下、好ましくは5mm以下である。
前記スリット20、20で前後が区切られた領域では、図2に示されるように、前記吸収体4と透液性表面シート3の間が非接合とされた非接合領域22となっているとともに、この領域より幅方向中央側の領域では、前記吸収体4と不透液性裏面シート2の間が非接合とされた非接合領域23となっている。一方、両側の非接合領域22、22間の概ね中高部6配置領域においては、中高部6と透液性表面シート3との間がホットメルト接着剤等で接合された接合領域24とするのが好ましく、前記非接合領域23の両側部はそれぞれ前記吸収体4と不透液性裏面シート2の間がホットメルト接着剤等で接合された接合領域25とするのが好ましい。
前記スリット20、20で前後が区切られた領域は、図4(B)及び図5に示されるように、装着時に、脚の付け根の内側部分による幅方向両側から内側に向かう圧力(脚圧)によって、幅方向中央側に隣接する吸収体4の非肌側に入り込むように変形し、幅方向中央部の吸収体4を肌側に隆起させるように作用する吸収体変形領域21となっている。
前記吸収体変形領域21は、装着時に幅方向両側から内側に向かう脚圧が加わると、前後のスリット20、20の先端部をナプキン長手方向に繋ぐ仮想線又はその近傍を基端として幅方向内側に折れ曲がるとともに、中間部分が幅方向外側に折れ曲がることによって、断面Z状を成すように変形しながら、幅方向中央側に隣接する吸収体4の非肌側に入り込むように移動する。このとき、前記吸収体変形領域21の肌側は、前記非接合領域22によって透液性表面シート3と縁切りされるとともに、両側の吸収体変形領域21、21間の非肌側は、前記非接合領域23によって不透液性裏面シート2と縁切りされているため、前記吸収体変形領域21の変形が透液性表面シート3や不透液性裏面シート2によって制限されることなく行われるようになり、幅方向中央部の吸収体の非肌側に入り込んで幅方向中央部の吸収体を肌側に隆起させやすくなっている。
本生理用ナプキン1の装着時における吸収体4の断面形状は、図5に示されるように、幅方向両側から内側に向かう脚圧によって、吸収体変形領域21が断面Z状に折れ曲がって幅方向中央部の吸収体4の非肌側に入り込み、幅方向中央部の吸収体4が緩やかに肌側に凸状に湾曲しながら肌側に隆起させることによって、全体として略Ω状に変形するようになる。このため、肌側に隆起した幅方向中央部が身体に密着してフィット性に優れるとともに、身体との間に隙間が生じず体液の漏れが防止できるようになる。このとき、図示例のように、幅方向中央部に前記中高部6が設けられていると、生理用ナプキン1をより一層身体に密着させることができるため好ましい。
前記吸収体変形領域21の大きさとしては、図4(A)に示されるように、吸収体変形領域21の幅方向外側のナプキン長手方向の長さL1(吸収体4の側縁における前後のスリット20、20間の長さ)は、55〜85mm、好ましくは65〜75mmとするのがよい。また、吸収体変形領域21の幅方向内側のナプキン長手方向長さL2(スリット20の内方側端縁における前後のスリット20、20間の長さ)は、20〜50mm、好ましくは35〜45mmとするのがよい。更に、吸収体変形領域21のナプキン幅方向の長さMは、10〜30mm、好ましくは15〜25mmとするのがよい。吸収体4の側縁に対する前記スリット20の傾斜角θは、30〜80°、好ましくは45〜65°とするのがよい。前記スリット20の傾斜角θは、前後のスリット20で同じ大きさとしてもよいし、異なるようにしてもよい。
前記吸収体変形領域21の位置は、前述の通り、スリット20の中心線を内側に延長した仮想線Sの交点が体液排出部位Hの中心部に位置するように形成されている。より具体的には、前記吸収体変形領域21の外側縁(吸収体4の側縁)が、ウイング状フラップWの基端長さの範囲内に位置するのが好ましい。これにより、脚圧が作用しやすいウイング状フラップWの範囲内に吸収体変形領域21が位置するため、前記吸収体変形領域21が脚圧によって変形しやすくなる。また、別の観点から吸収体変形領域21の位置を規定すると、前記スリット20を内側に延長した仮想線の交点を通るナプキン幅方向線CWが、ウイング状フラップWの長手範囲の中間部、好ましくはウイング状フラップWの長手方向中央部を通るように配置するのが好ましい。具体的には、前記ナプキン幅方向線CWとウイング状フラップWの長手方向中央部とのナプキン長手方向の離間距離は、20mm以内、好ましくは10mm以内、より好ましくは5mm以内とするのがよい。
前記吸収体変形領域21には、種々のパターンで圧搾部を施すことにより、この吸収体変形領域21にコシを持たせるようにしてもよい。前記圧搾部は、吸収体変形領域21を構成する吸収体4の肌側又は非肌側からの圧搾により形成したものである。前記圧搾部のパターンとしては、ナプキン長手方向に沿うとともに幅方向に離間する複数の溝からなる縦縞状や、ナプキン幅方向に沿うとともに長手方向に離間する複数の溝からなる横縞状、格子状、斜め格子状、正格子又は千鳥格子に配置したドット状など種々のパターンで形成することができる。
図1及び図4(A)に示されるように、吸収体4の幅方向中央部に前記中高部6を配置した場合において、前記スリット20は、前記中高部6より幅方向外側に形成するのが好ましい。すなわち、前記スリット20は、前記中高部6の近傍外側位置を内側端として形成するのが好ましい。これにより、装着時に脚圧によって吸収体変形領域21が変形したとき、幅方向中央部の中高部6が配置された吸収体4の非肌側に入り込むようになるため、中高部6がより一層肌側に向けて隆起しやすくなり、身体との密着性が更に向上するようになる。前記中高部6とスリット20の内側端とのナプキン幅方向の離間距離は、10mm以下、好ましくは5mm以下とするのがよい。
図1に示されるように、前記圧搾溝8を形成した場合、前記圧搾溝8は、前記スリット20において前後に離間するように形成するのが好ましい。すなわち、体液排出部位Hに対応する領域の両側部にそれぞれ、概ねナプキン長手方向に沿って、吸収体変形領域21より前側から後側にかけて形成された圧搾溝8が、スリット20が通る部分において分断するように形成するのが好ましい。これによって、前後のスリット20、20によって吸収体変形領域21が確実に前後方向に分断し、吸収体変形領域21のみが脚圧によって変形できるようになる。また、吸収体変形領域21の基端部にナプキン長手方向に沿う圧搾溝8が通るようになるため、図5に示されるように、この圧搾溝8を基点として吸収体変形領域21が折れ曲がりやすくなる。
前記スリット20の平面形状は、図1及び図4(A)に示されるように、吸収体4の側縁から体液排出部位Hの中心部に向けて直線状に延びるように形成することができる。直線状に形成することにより、スリット20を比較的簡単に設けることができるとともに、幅方向両側からの脚圧によってスリット20に沿って吸収体変形領域21が移動しやすくなる。
また、前記スリット20の平面形状は、図6に示されるように、吸収体4の側縁から体液排出部位Hの中心部に向けて長手方向中心線CL側に膨出する曲線状に延びるように形成してもよい。図示例では、吸収体4の両側縁から内側に向けて前記スリットが円弧状に延びるとともに、前記スリット20を内側に延長した円弧状の仮想線S、Sが体液排出部位Hの中心部で接するように形成されている。このような曲線状に形成することにより、スリット20が脚の付け根の内側部分に沿った形状となるため、スリット20に対して脚圧がほぼ均等に作用するようになり、吸収体変形領域21の変形がスムーズになるとともに、幅方向中央部の吸収体部分に余計な力が加わらないため、この部分のヨレやシワが防止でき、身体とのフィット性がより一層向上できる。
前記スリット20は、図4(A)に示されるように、吸収体側縁からスリット20の内側端まで連続した切り込みが形成された連続線としてもよいし、図7に示されるように、途中で分断する間欠部20aが設けられた間欠線としてもよい。前記連続線とした場合には、脚圧によって吸収体変形領域21が変形しやすくなる。一方で、連続した切り込みが形成されるため、吸収体が低密度の場合や低目付の場合、エンボスなどによる高剛性化手段を講じていない場合には、吸収体変形領域21の吸収体が崩れるおそれがある。これに対して、前記スリット20を間欠線とした場合には、吸収体の崩れが防止でき、脚圧による変形がしやすくなる。前記間欠部20aは、あまり多く設けると、吸収体変形領域21の変形が生じにくくなるため、3箇所以内、好ましくは1箇所程度とするのがよい。
前記吸収体4は、図8及び図9に示されるように、肌側に配置された上層4Aと、非肌側に配置された下層4Bとからなり、前記下層4Bに前記スリット20が形成され、上層4Aには前記スリット20が形成されないようにしてもよい。これによって、下層4Bに形成される吸収体変形領域21において上層4Aとの2層構造となるため、吸収体の崩れが防止でき、吸収体変形領域21が確実に変形できるようになる。本実施形態においては、装着時に脚圧を受けたとき、図10に示されるように、下層4Bの吸収体変形領域21のみが幅方向中央側の吸収体部分の非肌側に入り込むように変形する。前記下層4Bは、図示例では幅方向中央部で離間して左右にそれぞれ配置されているが、幅方向に連続する1枚のシートからなるものでもよい。
次に、前記サイド不織布7の接着領域について説明する。図11に示されるように、前記サイド不織布7は、吸収体変形領域21と重なる領域が、非肌当接面側の部材(透液性表面シート3)に接着しない非接着領域26とし、それ以外の領域が、非肌当接面側の部材(透液性表面シート3又は不透液性裏面シート2)に接着する接着領域27とするのが好ましい。前記非接着領域26を設けることによって、吸収体変形領域21が透液性表面シート3と非接着とされるとともに、前記サイド不織布7とも非接着となり、吸収体変形領域21とサイド不織布7との縁が切れるため、脚圧によって吸収体変形領域21が内側に変形するのに伴って立体ギャザーBSの起立形状が変形するのが防止でき、立体ギャザーBSと身体とのフィット性が低下せず、体液の堰き止め効果が維持できるようになる。一方、前記吸収体変形領域21より前後においては、接着領域27とされているため、前記サイド不織布7によって吸収体4の両側部が補強され、脚圧を受けたときでも吸収体4の崩れやヨレが防止できる。
本実施形態の前記非接着領域26は、吸収体変形領域21よりナプキン長手方向及びナプキン幅方向に対して若干外側位置まで延在して形成するのが好ましい。前記非接着領域26のナプキン長手方向の長さとしては、30〜50mm、好ましくは35〜45mmとするのがよい。
また、サイド不織布7の接着領域に関する他の実施形態として、図12に示されるように、前記サイド不織布7は、前記スリット20と重なる領域が、非肌当接面側の部材(透液性表面シート3)に接着しない非接着領域26とし、それ以外の領域が、非肌当接面側の部材(透液性表面シート3又は不透液性裏面シート2)に接着する接着領域27とすることができる。前記サイド不織布7をスリット20と重なる領域で非接着とすることによって、上記と同様に、脚圧による吸収体変形領域21の変形に伴う立体ギャザーBSの変形が防止できる。また、本実施形態では、吸収体変形領域21の側縁部が透液性表面シート3とサイド不織布7との接合シート部分によって覆われるため、脚圧による吸収体変形領域21の崩れが抑制できるようになる。
本実施形態においても前記非接着領域26は、前記スリット20と重なる領域よりナプキン長手方向及び幅方向に対して若干外側位置まで延在して形成するのが好ましい。前記非接着領域26のナプキン長手方向の長さとしては、3〜20mm、好ましくは5〜10mmとするのがよい。
図13に示されるように、臀部側の両側部にそれぞれ、前後に離間する2本のスリット30、30…を設けることによって、前記スリット30、30で前後が区切られた領域が、装着時に臀部で幅方向両側から内側に向かう圧力によって、幅方向中央側に隣接する吸収体の非肌側に入り込むように変形して幅方向中央部の吸収体4を臀裂部にフィットするように隆起させる吸収体変形領域31となるようにしてもよい。