JP6435819B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、エンジンおよびモータが出力する動力を、例えば遊星歯車装置などの歯車伝動機構を介して駆動軸へ伝達するように構成されたハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
特許文献1には、いわゆる2モータ式のハイブリッド車両が記載されている。この特許文献1に記載されたハイブリッド車両は、動力分割装置として機能する遊星歯車機構を備えている。その遊星歯車機構のキャリアには、エンジンの出力軸が連結されている。サンギヤには、発電機能のある第1モータが連結されている。そして、リングギヤが出力要素となっていて、そのリングギヤには、減速機構を構成している歯車列を介して、デファレンシャル装置が連結されている。また、上記の歯車列には、第2モータが連結されている。したがって、第2モータが出力したトルクでハイブリッド車両を走行させることができる。すなわち、エンジンの運転を停止した状態でモータのみの出力トルクによってハイブリッド車両を走行させるEV走行を行うことができる。さらに、この特許文献1に記載されたハイブリッド車両には、キャリアに連結されているエンジンの出力軸の回転を止めるワンウェイクラッチあるいはブレーキなどの制動手段が設けられている。制動手段を係合させてキャリアの回転を止めた状態では、プラネタリギヤユニットが減速機構として機能するように構成されている。したがって、第1モータが出力したトルクを増幅して遊星歯車機構のリングギヤから出力させることができる。
特開平8−295140号公報
上記の特許文献1に記載されたハイブリッド車両においては、エンジンの運転を停止した状態で制動手段を係合させて遊星歯車機構のキャリアの回転を止めることにより、第1モータおよび第2モータの両方の出力トルクによって効率よくかつ高出力でハイブリッド車両をEV走行させることができる。ただし、この場合、遊星歯車機構においては、ピニオンギヤが高速で回転する状態になり、そのピニオンギヤの温度が上昇する。ピニオンギヤの温度が過度に上昇すると、焼き付きや異常な摩耗などが発生してしまい、その結果、装置の耐久性が低下してしまう。そのような耐久性の低下を防ぐために、第1モータおよび第2モータの両方の出力トルクによるEV走行の際には、ピニオンギヤの温度を推定し、そのピニオンギヤの推定温度に応じてEV走行の状態を制御する必要がある。例えば、ピニオンギヤの上限温度を予め設定しておき、その上限温度までピニオンギヤの推定温度が上昇した場合には、第1モータの運転状態を制限するなどしてピニオンギヤに掛かる負荷を低下させる必要がある。
しかしながら、上記のようなピニオンギヤの温度を正確に推定することは容易ではなく、その推定値は誤差を含み易くなっている。そのため、上記のようにピニオンギヤの推定温度に基づいてEV走行の状態を制御したとしても、推定温度の誤差が大きい場合には、第1モータの運転を適切に制限することができず、その結果、上記のような耐久性の低下を防止することができないおそれがある。また反対に、第1モータの運転が過剰に制限されてしまい、その結果、第1モータおよび第2モータの両方の出力トルクによる高出力のEV走行が可能な走行時間が過剰に削減されてしまうおそれがある。
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、耐久性を向上させるとともに、高出力のEV走行が可能な走行時間あるいは走行領域を適切に確保してEV走行性能を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンならびに第1モータおよび第2モータを駆動力源とし、サンギヤ、リングギヤ、および前記エンジンの出力トルクが伝達されるキャリアを回転要素とする遊星歯車機構と、前記キャリアの回転を選択的に止めるブレーキ機構とを備え、前記サンギヤおよび前記リングギヤのうち、いずれか一方のギヤに前記第1モータが連結され、いずれか他方のギヤに駆動軸側へ動力を伝達する出力部材が連結され、前記出力部材に前記第2モータが連結されたハイブリッド車両であって、少なくとも前記エンジンの出力トルクによって前記ハイブリッド車両を走行させるHV走行モードと、前記第2モータの出力トルクによって前記ハイブリッド車両を走行させる第1EV走行モードと、前記ブレーキ機構により前記キャリアの回転を止めた状態で前記第1モータおよび前記第2モータの両方の出力トルクによって前記ハイブリッド車両を走行させる第2EV走行モードとのいずれかの走行モードを設定して走行するように構成されたハイブリッド車両の制御装置において、前記各走行モードにおける走行の継続時間を求め、予め設定されている初期温度、前記第2EV走行モードでの走行時における前記遊星歯車機構の温度の昇温勾配、前記第1EV走行モードでの走行時における前記遊星歯車機構の温度の降温勾配、前記HV走行モードでの走行時における前記遊星歯車機構の温度の降温勾配、および、前記各走行モードにおける走行の継続時間に基づいて、前記遊星歯車機構の推定温度を求め、前記推定温度が所定の上限温度に達した場合に、前記第2EV走行モードにおける走行を制限するとともに、前記第2EV走行モードにおける走行を開始する際に前回の前記第2EV走行モードにおける走行が中断されてから所定時間以上経過している場合、または、前記第2EV走行モードにおける走行が中断されている間に前記推定温度が所定温度以下になった場合に、前記推定温度を前記初期温度にリセットするように構成されていることを特徴とするものである。
この発明では、第1モータの出力トルクを駆動輪側へ伝達する遊星歯車機構の温度が推定され、その推定温度が上限温度に達した場合には、第2EV走行モードでの走行が制限される。例えば、遊星歯車機構に掛かる負荷が低減するように第1モータの運転状態が制限される。第2EV走行モードでは、遊星歯車機構のキャリアの回転を止めて第1モータおよび第2モータの両方の出力トルクによってEV走行する。その場合、遊星歯車機構においてはサンギヤとリングギヤとの間の差回転が大きくなることから、ピニオンギヤの回転数が増大し、その温度が上昇する。ピニオンギヤの温度が過度に上昇すると焼き付きを起こしてしまうおそれがある。それに対して、この発明によれば、上記のように、遊星歯車機構の推定温度が上限温度に達した場合には第2EV走行モードでの走行が制限されることにより、ピニオンギヤの温度上昇を抑制して焼き付きの発生を防止することができる。
さらに、この発明では、上記のような遊星歯車機構の推定温度に含まれる誤差の影響を削減するために、第2EV走行モードにおける走行を開始する際に前回の第2EV走行モードにおける走行が中断されてから所定時間以上経過していること、あるいは、第2EV走行モードにおける走行が中断されている間に遊星歯車機構の推定温度が所定温度以下になっていること、などの条件が成立する度に、推定温度が所定の初期温度にリセットされる。したがって、第2EV走行モードでの走行が開始する際には、その都度、推定温度の誤差を考慮した判断が行われ、必要に応じて推定温度が初期温度にリセットされる。この場合の初期温度は、実験やシミュレーションなどで予め設定しておくことができるものであり、推定温度を初期温度にリセットすることにより、推定温度をより実際の温度に近づけておくことができる。すなわち、推定温度に含まれる誤差をより小さくしておくことができる。そのため、走行モードが切り替わる度に誤差が累積されて更に誤差が増大してしまうことを回避できる。また、第2EV走行モードでの走行を開始する際には、誤差の影響を排除した推定温度で制御を実行することができる。したがって、この発明によれば、上記のような第2EV走行モードにおける走行の制限を適切に行うことができ、その結果、ピニオンギヤの焼き付きを適切に防止して、装置の耐久性を向上させることができる。また、第2EV走行モードにおける走行が過剰に制限されてしまうことを抑制することができる。その結果、第2EV走行モードで高出力のEV走行が可能な走行時間あるいは走行距離を増やすことができ、ハイブリッド車両のEV走行性能を向上させることができる。
この発明による制御の対象とすることのできるハイブリッド車両の一例を示す図である。 この発明による制御を実行した場合の推定温度と実際の温度との比較および推定温度の挙動を説明するためのタイムチャートである。 この発明による制御を実行した場合の推定温度と実際の温度との比較および推定温度の挙動を説明するためのタイムチャートである。 この発明による制御を実行した場合の推定温度と実際の温度との比較および推定温度の挙動を説明するためのタイムチャートである。 この発明による制御を実行した場合の推定温度と実際の温度との比較および推定温度の挙動を説明するためのタイムチャートである。 この発明の制御装置で実行される制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
この発明を、図を参照して具体的に説明する。先ず、図1に、この発明で制御対象とすることのできるハイブリッド車両の一例を示してある。図1に示す車両Veは、エンジン(ENG)1、ならびに、第1モータ(MG1)2および第2モータ(MG2)3を駆動力源とするハイブリッド車両である。車両Veは、エンジン1が出力する動力を、動力分割装置4によって第1モータ2側と駆動軸5側とに分割して伝達するように構成されている。また、第1モータ2で発生した電力を第2モータ3に供給し、その第2モータ3が出力する動力を駆動軸5に付加することができるように構成されている。
エンジン1は、その出力の調整や起動ならびに停止の動作を電気的に制御するように構成されている。例えばガソリンエンジンであれば、スロットル開度、燃料の供給量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。
第1モータ2および第2モータ3は、いずれも、発電機能のあるモータ(いわゆる、モータ・ジェネレータ)であり、例えば永久磁石式の同期電動機などによって構成されている。そして、第1モータ2および第2モータ3は、いずれも、インバータ(図示せず)を介してバッテリ(図示せず)に接続されており、回転数やトルク、あるいはモータとしての機能および発電機としての機能の切り替えなどが電気的に制御されるように構成されている。
動力分割装置4は、3つの回転要素を有する差動機構によって構成されている。具体的には、サンギヤ6、リングギヤ7、およびキャリア8を有する遊星歯車機構によって構成されている。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構が用いられている。
上記の動力分割装置4を構成する遊星歯車機構は、エンジン1の出力軸1aと同一の回転軸線上に配置されている。そして、遊星歯車機構のサンギヤ6に第1モータ2が連結されている。なお、第1モータ2は、動力分割装置4に隣接してエンジン1とは反対側に配置されていて、その第1モータ2のロータ2aに一体となって回転するロータ軸2bがサンギヤ6に連結されている。そのサンギヤ6に対して同心円上に、内歯歯車のリングギヤ7が配置されている。これらサンギヤ6とリングギヤ7とに噛み合っているピニオンギヤ9がキャリア8によって自転および公転できるように保持されている。そして、キャリア8には、この動力分割装置4の入力軸4aが連結されていて、その入力軸4aに、ワンウェイブレーキ10を介して、エンジン1の出力軸1aが連結されている。
ワンウェイブレーキ10は、出力軸1aもしくはキャリア8と、ハウジングなどの固定部材(図示せず)との間に設けられている。そして、出力軸1aもしくはキャリア8に、エンジン1の回転方向と逆方向のトルクが作用した場合に係合してその回転を止めるように構成されている。このようなワンウェイブレーキ10を使用することにより、トルクの作用方向に応じて出力軸1aおよびキャリア8の回転を止めることができる。なお、このワンウェイブレーキ10は、後述するように、第1モータ2および第2モータ3の両方の出力トルクによって車両VeをEV走行させる場合に、エンジン1の出力軸1aの回転を止めるエンジン軸固定手段として機能するものである。したがって、このワンウェイブレーキ10に替えて、例えば、係合させることにより出力軸1aの回転を止めるブレーキ機構を用いることもできる。
動力分割装置4を構成する遊星歯車機構のリングギヤ7の外周部分に、外歯歯車のドライブギヤ11が一体に形成されている。また、動力分割装置4や第1モータ2などの回転軸線と平行に、カウンタシャフト12が配置されている。このカウンタシャフト12の一方(図1での右側)の端部に、上記のドライブギヤ11と噛み合うカウンタドリブンギヤ13が一体となって回転するように取り付けられている。カウンタシャフト12の他方(図1での左側)の端部には、終減速機であるデファレンシャルギヤ14のリングギヤ15と噛み合うカウンタドライブギヤ16が、カウンタシャフト12に一体となって回転するように取り付けられている。したがって、動力分割装置4のリングギヤ7が、上記のドライブギヤ11、カウンタシャフト12、カウンタドリブンギヤ13、およびカウンタドライブギヤ16からなるギヤ列、ならびに、デファレンシャルギヤ14を介して、駆動軸5に連結されている。
上記の動力分割装置4から駆動軸5に伝達されるトルクに、第2モータ3が出力するトルクを付加できるように構成されている。すなわち、上記のカウンタシャフト12と平行に第2モータ3が配置されていて、そのロータ3aに一体となって回転するロータ軸3bに連結されたリダクションギヤ17が、上記のカウンタドリブンギヤ13に噛み合っている。したがって、動力分割装置4のリングギヤ7には、上記のようなギヤ列あるいはリダクションギヤ17を介して、駆動軸5および第2モータ3が連結されている。
上記のように、この車両Veは、エンジン1の出力軸1aおよび第1モータ2のロータ軸2bが動力分割装置4を介して駆動軸5側のギヤ列およびデファレンシャルギヤ14に連結されている。すなわち、エンジン1および第1モータ2の出力トルクが、遊星歯車機構によって構成された動力分割装置4を介して、駆動軸5側へ伝達されるように構成されている。また、上記のように、この車両Veは、ドライブギヤ11、カウンタシャフト12、カウンタドリブンギヤ13、およびカウンタドライブギヤ16からなるギヤ列を介して、動力分割装置4のリングギヤ7とデファレンシャルギヤ14および駆動軸5との間で動力を伝達するように構成されている。そして、上記のギヤ列に、リダクションギヤ17を介して、第2モータ3が連結されている。したがって、上記のドライブギヤ11、カウンタシャフト12、カウンタドリブンギヤ13、およびカウンタドライブギヤ16からなるギヤ列、ならびに、リダクションギヤが、この発明における出力部材に相当している。
さらに、この車両Veには、動力分割装置4における遊星歯車機構の冷却や潤滑のために、オイルポンプ18、および、オイルポンプ18を補助するオイルポンプ19の2つのオイルポンプが設けられている。
オイルポンプ18(以下、MOP18)は、オイル供給用および油圧制御用のポンプとして、従来、車両のエンジンや変速機に用いられている一般的な構成の機械式オイルポンプである。このMOP18は、エンジン1が出力するトルクによって駆動されて油圧を発生するように構成されている。具体的には、MOP18のロータ(図示せず)がエンジン1の出力軸1aと共に回転するように構成されている。したがって、エンジン1が燃焼運転されて出力軸1aからトルクを出力する際には、MOP18も駆動されて油圧を発生する。
上記のように、MOP18は、エンジン1の出力軸1aの回転が停止している場合には油圧を発生することができない。そのため、この車両Veには、エンジン1が停止している場合であっても、動力分割装置4の遊星歯車機構へのオイルの供給を維持するために、オイルポンプ19が設けられている。
オイルポンプ19(以下、EOP19)は、電気モータが出力するトルクによって駆動されて油圧を発生する電動オイルポンプである。したがって、このEOP19には、EOP19を駆動するためのポンプ用モータ20が備えられている。ポンプ用モータ20は、エンジン1ならびに第1モータ2や第2モータ3などの車両Veの駆動力源とは別の電気モータであって、EOP19専用に設けられている。
上記のように、EOP19は、エンジン1以外の他の動力源によって駆動されて油圧を発生することにより、動力分割装置4の遊星歯車機構へオイルを供給するように構成されている。また、このEOP19は、エンジン1が停止している場合にMOP18の代わりに油圧を発生するためのポンプである。MOP18の代替となるポンプは、エンジン1以外の他の動力源によって駆動されて油圧を発生するものであればよいので、このEOP19以外の構成のポンプを用いることもできる。例えば、ロータが駆動軸5と共に回転するように構成された機械式オイルポンプを用いることもできる。
後述するように、車両Veは、少なくともエンジン1の出力トルクによって走行するHV走行モードと、第2モータ3の出力トルクによって走行する第1EV走行モードと、ワンウェイブレーキ10が係合して動力分割装置4のキャリア8の回転が止められた状態で第1モータ2および第2モータ3の両方の出力トルクによって走行する第2EV走行モードとのいずれかの走行モードを設定して走行するように構成されている。そして、それら各走行モードにおける走行の継続時間を計測するためのタイマー21が設けられている。タイマー21によって各走行モードにおける走行の継続時間をそれぞれ計測することにより、各走行モードにおける走行が中断されてからの経過時間も求めることができる。なお、上記のようなタイマー21の他に、例えば、オイルの温度を検出するための油温センサ22や、車両Veの車速を検出する車速センサ23などが設けられている。
そして、上記のようなエンジン1の運転制御、第1モータ2および第2モータ3の回転制御、ならびに、ポンプ用モータ20の回転制御などを実行するための電子制御装置(ECU)24が設けられている。ECU24は、例えばマイクロコンピュータを主体にして構成されている。このECU24には、例えば、上記のタイマー21、油温センサ22、および車速センサ23などの計測値あるいは検出値が入力されるように構成されている。そして、それら入力されたデータおよび予め記憶させられているデータ等を使用して演算を行い、その演算結果を基に制御指令信号を出力するように構成されている。
上記のように構成された車両Veは、駆動力源としてのエンジン1ならびに第1モータ2および第2モータ3を有効に利用して、エネルギ効率あるいは燃費が良好になるように制御される。具体的には、少なくともエンジン1の出力によって車両Veを走行させる「HV走行モード」と、エンジン1の運転を停止して第1モータ2および第2モータ3の少なくともいずれかのモータ・ジェネレータの出力によって車両Veを走行させる「EV走行モード」とが、車両Veの走行状態に応じて適宜に選択される。
上記の各走行モードのうち、特に「EV走行モード」は、第2モータ3の出力によって車両Veを走行させる「第1EV走行モード」と、第1モータ2および第2モータ3の両方のモータ・ジェネレータの出力により、高出力で車両Veを走行させる「第2EV走行モード」とに区分される。これら「第1EV走行モード」と「第2EV走行モード」とが、車両Veの走行状態に応じて適宜に選択される。
「第1EV走行モード」では、第2モータ3がモータとして正方向(エンジン1の出力軸1aの回転方向)に回転してトルクを出力するように制御される。そして、その第2モータ3の出力トルクによって発生させた駆動力で車両Veが走行させられる。
「第2EV走行モード」では、第1モータ2および第2モータ3の両方の出力によって車両Veが走行させられる。この「第2EV走行モード」では、第1モータ2がモータとして負方向(エンジン1の出力軸1aの回転方向と逆方向)に回転してトルクを出力するように制御される。また、第2モータ3がモータとして正方向に回転してトルクを出力するように制御される。そして、それら第1モータ2の出力トルクおよび第2モータ3の出力トルクによって発生させた駆動力で車両Veが走行させられる。この場合、エンジン1の出力軸1aには負方向のトルクが作用するため、ワンウェイブレーキ10が係合する。したがって、エンジン1の出力軸1aおよび動力分割装置4の遊星歯車機構におけるキャリア8の回転が止められて固定された状態で、第1モータ2および第2モータ3の両方の出力トルクによって、高出力で、かつ効率良く車両Veを走行させることができる。
この車両Veでは、上記のような各走行モードが、車両Veの走行状態や要求駆動力などに応じて適宜切り替えられる。それら各走行モードのうち、特に、「第2EV走行モード」が設定された場合には、ワンウェイブレーキ10が係合して出力軸1aおよびキャリア8の回転が止められた状態で、第1モータ2と第2モータ3とが、それぞれ逆方向に回転させられる。すなわち、動力分割装置4の遊星歯車機構においては、キャリア8の回転が止められた状態で、サンギヤ6とリングギヤ7とがそれぞれ逆方向に回転する。そのため、キャリア8に支持されているピニオンギヤ9は、サンギヤ6の回りの公転が止められた状態で自転する。この場合の自転の回転数はサンギヤ6とリングギヤ7と差回転数によって決まるが、サンギヤ6とリングギヤ7とが互いに逆方向に回転していることから、ピニオンギヤ9は高速で自転することになる。このピニオンギヤ9の回転数が過度に上昇すると、ピニオンギヤ9やそれを支持しているピニオンピン(図示せず)で焼き付きが発生してしまう。
上記のようなピニオンギヤ9の焼き付きは、例えば、ピニオンギヤ9の温度の上限を設定しておき、ピニオンギヤ9の温度が上昇して上限に達した場合に、第1モータ2の運転を制限してピニオンギヤ9に掛かる負荷を低減させることによって防止することができる。しかしながら、ピニオンギヤ9の温度を正確に検出することは容易ではなく、また、温度を推定する場合は、その推定温度には不可避的に誤差が含まれてしまう。推定温度の誤差が大きいと、上記のようなピニオンギヤの焼き付きを適切に防止することができないおそれがある。あるいは、第1モータ2の運転を過剰に制限してしまい、第2EV走行モードでの高出力のEV走行が可能な走行時間あるいは走行距離が削減されてしまうおそれがある。そこで、この車両Veの制御装置では、上記のような焼き付きの発生を適切に防止し、かつ、第2EV走行モードでの走行可能な領域を確保あるいは拡大するために、以下の例に示す制御を実行するように構成されている。
この車両Veの制御装置において実行される制御の一例を、図2のフローチャートに示してある。この図2のフローチャートで示す制御は、第1モータ2および第2モータ3の両駆動による走行、すなわち、第1モータ2および第2モータ3の両方の出力トルクによって車両Veを走行させる「第2EV走行モード」での走行が終了していることもしくは実行されていないことが前提となっている。図2のフローチャートにおいて、先ず、第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求があるか否か、すなわち、「第2EV走行モード」での走行の要求があるか否かが判断される(ステップS1)。第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求がないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求があったことにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進む。ステップS2では、直前までの第2モータ3の単駆動による走行すなわち「第1EV走行モード」での走行の継続時間、もしくは、「HV走行モード」での走行の継続時間が、所定時間t1よりも長いか否かが判断される。言い換えると、「第2EV走行モード」における走行が所定時間t1以上中断されているか否かが判断される。
前回の「第2EV走行モード」での走行が終了してからの経過時間が所定時間t1以下であること、すなわち、「第2EV走行モード」における走行が所定時間t1以上中断されていないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、ステップS3へ進む。ステップS3では、「第2EV走行モード」での走行を開始するのにあたり、前回の推定値(後述の推定温度Te)を引き継いで、動力分割装置4における遊星歯車機構の温度推定が実施される。具体的には、遊星歯車機構のピニオンギヤ9の推定温度Tが、
T=Te−θS×tS−θH×tH
の計算式から算出され、その推定温度Tを初期値としてピニオンギヤ9の温度推定が実施される。ここで、Teは前回の「第2EV走行モード」での走行が終了した時点におけるピニオンギヤ9の推定温度、θSは「第1EV走行モード」での走行時の降温勾配、tSは直前までの「第1EV走行モード」での走行の継続時間、θHは「HV走行モード」での走行時の降温勾配、そして、tHは直前までの「HV走行モード」での走行の継続時間である。上記のようにして遊星歯車機構の温度推定が開始されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
一方、前回の「第2EV走行モード」での走行が終了してからの経過時間が所定時間t1よりも長いこと、すなわち、「第2EV走行モード」における走行が所定時間t1以上中断されていることにより、ステップS2で肯定的に判断された場合は、ステップS4へ進む。ステップS4では、「第2EV走行モード」での走行を開始するのにあたり、前回の推定値をリセットして、動力分割装置4における遊星歯車機構の温度推定が実施される。具体的には、遊星歯車機構のピニオンギヤ9の推定温度Tが、所定の初期温度T0にリセットされ、その推定温度T(T0)を初期値としてピニオンギヤ9の温度推定が実施される。初期温度T0は、実験やシミュレーションの結果を基に予め設定されている。このように推定温度が初期温度T0にリセットされることにより、ピニオンギヤ9の実際の温度に対する推定温度の乖離を小さくすることができる。上記のようにして遊星歯車機構の温度推定が開始されると、その後、このルーチンを一旦終了する。
なお、上記のように推定温度Tを初期温度T0にリセットする制御は、推定温度Tを低下させる方向にリセットする場合と、推定温度Tを上昇させる方向にリセットする場合との2通りのパターンがある。図3のタイムチャートに、推定温度Tを低下させる方向にリセットする場合の例を示してある。時刻tで両駆動要求、すなわち、「第2EV走行モード」での走行要求があると、直前までの「第2EV走行モード」での走行の中断時間tが、所定時間t1よりも長いことから、推定温度がリセットされる。また、この場合は推定温度が初期温度T0よりも高いことから、推定温度が初期温度T0まで低下させられる。
この図3に示す例のように、推定温度Tを低下させる方向にリセットする場合は、「第2EV走行モード」での走行可能な時間を無駄に制限してしまうことを回避できる。すなわち、「第2EV走行モード」で高出力のEV走行が可能な走行時間を増やすことができる。そのため、車両VeのEV走行性能を向上させることができる。なお、上記の初期温度T0をより低い値に設定することにより、上記のような「第2EV走行モード」での走行可能な時間が制限されてしまうことを抑制し、「第2EV走行モード」で高出力のEV走行が可能な走行時間を積極的に増やすことができる。
図4のタイムチャートには、推定温度Tを上昇させる方向にリセットする場合の例を示してある。時刻tで両駆動要求、すなわち、「第2EV走行モード」での走行要求があると、直前までの「第2EV走行モード」での走行の中断時間tが、所定時間t1よりも長いことから、推定温度がリセットされる。また、この場合は推定温度が初期温度T0よりも低いことから、推定温度が初期温度T0まで上昇させられる。
この図4に示す例のように、推定温度Tを上昇させる方向にリセットする場合は、ピニオンギヤ9の焼き付きに対して安全側に温度を推定することになるので、ピニオンギヤ9の焼き付きの発生を確実に抑制することができる。なお、上記の初期温度T0をより高い値に設定することにより、上記のようなピニオンギヤ9の焼き付きに対する安全性を積極的に高めることができる。また、図5のタイムチャートに示すように、推定温度Tが初期温度T0を下回る場合は、推定温度Tを初期温度T0に保持して、温度の推定を中断するように制御してもよい。そうすることにより、制御を簡素化して制御処理の負荷を低減することができる。
この車両Veの制御装置において実行される制御の他の例を、図6のフローチャートに示してある。この図6のフローチャートで示す制御は、第1モータ2および第2モータ3の両駆動による走行、すなわち、第1モータ2および第2モータ3の両方の出力トルクによって車両Veを走行させる「第2EV走行モード」での走行が終了された場合に開始される。図6のフローチャートにおいて、先ず、降温勾配に基づいて遊星歯車機構の温度推定が行われる(ステップS11)。例えば、前述の図2のフローチャートにおけるステップS3の制御と同様に、各走行モードにおける降温勾配θSH、および、各走行モードにおける走行継続時間tS,tH等を用いて遊星歯車機構の温度推定が行われる。
続いて、ステップS12では、上記のステップS11で推定された遊星歯車機構の推定温度が初期温度T0よりも低いか否かが判断される。遊星歯車機構の推定温度が初期温度T0以上であることにより、このステップS12で否定的に判断された場合は、ステップS13へ進む。
ステップS13では、第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求があるか否か、すなわち、「第2EV走行モード」での走行の要求があるか否かが判断される第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求がないことにより、このステップS13で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求があったことにより、ステップS13で肯定的に判断された場合には、ステップS14へ進む。そして、ステップS14では、「第2EV走行モード」での走行を開始するのにあたり、現在の推定温度を初期値として、動力分割装置4における遊星歯車機構の温度推定が実施される。すなわち、遊星歯車機構の温度推定が、推定温度をリセットすることなく、継続して実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
一方、遊星歯車機構の推定温度が初期温度T0よりも低いことにより、上記のステップS12で肯定的に判断された場合は、ステップS15へ進む。ステップS15では、遊星歯車機構の推定温度が初期温度T0に設定される。すなわち、図5のタイムチャートに示すように、推定温度の値が初期温度T0で一定に保持される。したがって、これ以降は遊星歯車機構の温度推定は行われることがない。そのため、制御を簡素化して制御処理の負荷を低減することができる。
続いて、ステップS16では、第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求があるか否か、すなわち、「第2EV走行モード」での走行の要求があるか否かが判断される第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求がないことにより、このステップS16で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。
これに対して、第1モータ2および第2モータ3の両駆動要求があったことにより、ステップS16で肯定的に判断された場合には、ステップS17へ進む。そして、ステップS17では、「第2EV走行モード」での走行を開始するのにあたり、上記のステップS15で推定温度に設定された初期温度T0を初期値として、動力分割装置4における遊星歯車機構の温度推定が実施される。すなわち、遊星歯車機構の推定温度が初期温度T0にリセットされた状態で、遊星歯車機構の温度推定が実行される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
1…エンジン(ENG)、 2…第1モータ(MG1)、 3…第2モータ(MG2)、 4…動力分割装置(遊星歯車機構)、 5…駆動軸、 6…サンギヤ、 7…リングギヤ、 8…キャリア、 9…ピニオンギヤ、 10…ワンウェイブレーキ、 14…デファレンシャルギヤ、 15…リングギヤ、 18…オイルポンプ(MOP)、 19…オイルポンプ(EOP)、 21…タイマー、 24…電子制御装置(ECU)、 Ve…ハイブリッド車両。

Claims (1)

  1. エンジンならびに第1モータおよび第2モータを駆動力源とし、サンギヤ、リングギヤ、および前記エンジンの出力トルクが伝達されるキャリアを回転要素とする遊星歯車機構と、前記キャリアの回転を選択的に止めるブレーキ機構とを備え、前記サンギヤおよび前記リングギヤのうち、いずれか一方のギヤに前記第1モータが連結され、いずれか他方のギヤに駆動軸側へ動力を伝達する出力部材が連結され、前記出力部材に前記第2モータが連結されたハイブリッド車両であって、少なくとも前記エンジンの出力トルクによって前記ハイブリッド車両を走行させるHV走行モードと、前記第2モータの出力トルクによって前記ハイブリッド車両を走行させる第1EV走行モードと、前記ブレーキ機構により前記キャリアの回転を止めた状態で前記第1モータおよび前記第2モータの両方の出力トルクによって前記ハイブリッド車両を走行させる第2EV走行モードとのいずれかの走行モードを設定して走行するように構成されたハイブリッド車両の制御装置において
    前記各走行モードにおける走行の継続時間を求め、
    め設定されている初期温度、前記第2EV走行モードでの走行時における前記遊星歯車機構の温度の昇温勾配、前記第1EV走行モードでの走行時における前記遊星歯車機構の温度の降温勾配、前記HV走行モードでの走行時における前記遊星歯車機構の温度の降温勾配、および、前記各走行モードにおける走行の継続時間に基づいて、前記遊星歯車機構の推定温度を求め
    記推定温度が所定の上限温度に達した場合に、前記第2EV走行モードにおける走行を制限するとともに、
    前記第2EV走行モードにおける走行を開始する際に前回の前記第2EV走行モードにおける走行が中断されてから所定時間以上経過している場合、または、前記第2EV走行モードにおける走行が中断されている間に前記推定温度が所定温度以下になった場合に、前記推定温度を前記初期温度にリセットする
    ように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
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