JP6434900B2 - 電磁制御部品用鉄心部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
C:0.002〜0.02%、
Si:0%超、3.0%以下、
Mn:0.1〜0.5%、
P:0%超、0.03%以下、
S:0%超、0.03%以下、
Cu:0%超、0.1%以下、
Ni:0%超、0.1%以下、
Cr:0%超、2.0%以下、
Al:0.002〜0.04%、
N:0%超、0.005%以下、
O:0%超、0.020%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物であることが好ましい。
C:0.7〜0.95%、
Si:0.1〜0.5%、
Mn:13%超、20%以下、
P:0%超、0.07%以下、
S:0%超、0.045%以下、
Cr:0%超、2.0%以下、
Al:0%超、0.02%以下、
N:0.025〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、組織の99面積%以上がオーステナイト相であるMn非磁性鋼材であることが好ましい。
ソレノイド等の電磁制御部品では、固定鉄心から可動鉄心に流れる磁束量が多い程、吸引力が大きくなる。よって、軟磁性鋼材には、高い磁束密度を有することが求められる。更に省電力化の観点から、低磁界(小電流)で大きな磁束密度を実現することが望ましく、磁束密度と磁界の比である最大比透磁率の大きい軟磁性鋼材が不可欠となる。励磁電流と可動鉄心の移動量が線形に対応するリニア制御動作を実現するには、最大比透磁率として8000以上が不可欠である。小型・軽量化や動作応答性の向上を追求する上では、軟磁性鋼材の最大比透磁率が9500以上であることが好ましい。また、ヒステリシス特性を低減し、動作精度を一層高める上では、軟磁性鋼材の最大比透磁率が15000以上であることが好ましく、より好ましくは17000以上である。軟磁性鋼材の最大比透磁率の上限は特に限定されないが、通常30000程度である。
軟磁性鋼材はフェライト単相組織であり、フェライト結晶粒が微細になると、磁壁の移動抵抗が増大し、磁気特性の低下をもたらす。特に、フェライト結晶粒度番号が6番以上では、保磁力の増大が顕著となり、電磁制御の応答性や制御精度に大幅に低下する。よって本発明では、軟磁性鋼材のフェライト結晶粒度番号を6番未満とする。フェライト結晶粒度番号は5.5番以下が好ましく、より好ましくは4.5番以下である。結晶粒度番号を安定して確保する観点から、軟磁性鋼材は磁気焼鈍を実施することが望ましい。またフェライト粒度番号の下限は1.0番以上であることが好ましい。フェライト結晶粒が粗大化しすぎると、部品成形時の冷間鍛造性が低下するためである。フェライト粒度番号は好ましくは2.0番以上である。
一方、非磁性鋼材側には、磁束を軟磁性鋼材に優先的に流すため、磁気抵抗の高い状態すなわち最大比透磁率が低いことが求められる。理想的には真空状態の値である最大比透磁率1が望ましいが、1.03以下では実部品での影響が殆ど認められないことから、本発明では1.03を上限とした。好ましくは1.02以下であり、より好ましくは1.018以下である。非磁性鋼材の最大比透磁率の下限は1に近いほど好ましいが、通常1.004程度である。
本発明で用いる非磁性鋼材は上述した通り、最大比透磁率が1.03以下であり、このような非磁性鋼材は、通常、組織の99面積%以上がオーステナイト相である。オーステナイト相の割合は好ましくは99.5面積%以上であり、100面積%であることが最も好ましい。
上述した通り、本発明では軟磁性鋼材と非磁性鋼材の接合部の、軟磁性鋼材側に、微細結晶粒相が存在している点に特徴を有している。この微細結晶粒相は、軟磁性鋼材が接合の影響で変化して生成した領域であり、この微細結晶粒の領域もまたフェライト単相組織である。そして、フェライト結晶粒径が18μm以下になると、磁束との相互作用がより強くなり、上記の通り、素材の磁気特性は低下傾向となるが、非磁性鋼材との接合界面に限定的に存在させることで、磁束が非磁性鋼材に接する直前から固定鉄心と可動鉄心の間を円滑に流動できるため、磁気回路としての効率を向上させることができる。また、微細粒は靭性を高くできるため軟磁性鋼材と非磁性鋼材の接合面に設けることで、接合強度の向上にも寄与することができる。フェライト結晶粒が18μm以下の微細結晶粒の生成領域が50μmを下回ると接合強度が低下するため、本発明では50μmを下限とした。望ましくは80μm以上、より望ましくは100μm以上である。他方、微細粒の生成領域が大きすぎると、鉄心からの磁束漏れを助長する結果となり、電磁制御部品の吸引力や制御精度の低下を招くため、本願では200μmを上限とした。望ましくは180μm以下であり、より好ましくは160μm以下であり、更に好ましくは140μm以下である。微細結晶粒の領域のフェライト粒径の下限は特に限定されるものではないが、通常2〜5μm程度である。
そして、接合部の非磁性鋼材側では、加工誘起マルテンサイトの生成がない。加工誘起マルテンサイトは強磁性であるため、加工誘起マルテンサイト相が生成すると精密な制御ができない。
C:0.002〜0.02%
Cは、部品強度の確保に有用な元素であるが、鋼中に固溶したCは、Fe格子をひずませて磁気モーメントを低下させ、磁束密度を減少させる原因になる。高磁束密度を重視する電磁制御部品用鉄心部材としては、C量を少量にするのがよく、0.02%以下に抑えることが望ましい。より好ましくは、0.01%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。一方、C量低減による磁気モーメントの増加は、0.002%程度で飽和するため、C量の下限は0.002%が好ましい。
Siは溶製時に脱酸剤として作用し、また、磁気異方性を低減することで磁束密度を向上させる効果を有する。更に、フェライトの硬さを増加させることで、非磁性鋼との強度の差を低減して、接合加工性の向上をもたらす。このような効果を有効に発揮するため、Si量は0.003%以上が好ましく、より好ましくは0.005%以上であり、更に好ましくは0.1%以上である。但し、磁気特性への効果は3.0%で飽和し、一方で過多添加は、冷間鍛造性の大幅な低下を招くため、3.0%以下が好ましい。好ましくは2.5%以下、より好ましくは2%以下である。
Mnは、溶製時に脱酸剤として用いられる元素であり、鋼中ではSと結合してSによる脆化を抑制する作用を有している。また、鋼中のSと結合してMnSを形成したり、鋼中の酸化物の周囲にMnSが複合析出して複合析出物を形成することで、部品の電気抵抗率を高める作用を有している。従ってMnは0.1%以上が好ましく、より好ましくは0.15%以上、更に好ましくは0.25%以上である。しかし、Mnが増加すると、磁気モーメントを担うフェライト相が不安定となり、磁束密度の低下をもたらすため、0.5%以下が好ましい。Mn量は、より好ましくは、0.45%以下、更に好ましくは0.40%以下である。
Pは結晶粒界に偏析しやすい元素であり、熱間加工性と冷間加工性に悪影響を及ぼす。極力低減することが望ましいが、経済性を考慮して0.03%以下とする。より好ましくは0.015%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。Pは少なければ少ない程好ましいが、通常0.002%程度含まれ得る。
Sは、上述の通り鋼中でMnSを形成する。電気抵抗率を向上させ渦電流を抑制する効果を有する。このような効果を有効に発揮するため、S量は0.003%以上が好ましく、より好ましくは0.010%以上である。しかし、Sを多量に添加すると、粒界に生成したFeSや多量生成したMnSによって、磁気特性と冷間鍛造性の双方を低下させるため、Pと同様、極力低減することが望ましい。本願では、経済性を考慮して0.03%を上限とした。好ましくは、0.015%以下である。
Cuは、フェライトに固溶することで、強度と電気抵抗率の向上をもたらす。このような効果を有効に発揮させるため、Cu量は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.02%以上である。一方、過多添加では、磁束密度の低下と冷間鍛造性の悪化を招き、経済性も損なう。従って、本発明では0.1%を上限とすることが好ましい。Cu量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
Cuと同様に、強度と電気抵抗率の向上に有効である。このような効果を有効に発揮さえるため、Ni量は0.01%以上が好ましく、より好ましくは0.02%以上である。一方、過多添加では、磁束密度の低下と冷間鍛造性の低下をもたらし、経済性も損なう。本発明では0.1%を上限とすることが好ましい。Ni量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
Crは、鋼部品の電気抵抗を大きくし、渦電流損を低減して電磁部品の応答性を向上させる作用を有する元素である。また、鋼部品の金属組織をフェライト化し、交流磁気特性を向上させる作用も有している。こうした作用を有効に発揮させるには、Crは0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.01%以上である。但し、増量添加に伴い、鋼材の磁気モーメントが低下し、本発明の志向する高磁束密度が得られなくなるため、2.0%を上限とすることが好ましい。Cr量は、好ましくは1.8%以下であり、より好ましくは1.6%以下である。
Alは、鋼中のNと結合してAlNを形成し、固溶Nによる磁気特性の低下を抑制する作用を有する。したがって、Alは0.002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、0.004%以上である。しかし、過多に添加すると、増加したAlNが結晶粒の成長を阻害し、磁気特性に有害な結晶粒界が増加する。また、Nと結合しなかったAlはフェライト中に固溶して強度増加をもたらすため、変形抵抗が上昇し、冷間鍛造性の悪化を招く。よって、本発明では、0.04%を上限とするのが好ましい。好ましくは、0.020%以下であり、より好ましくは0.015%以下である。
Nは、上述のように、Alと結合してAlNを形成し、結晶粒成長を阻害する作用を有する。このような効果を有効に発揮させるため、N量は0.0015%以上が好ましく、より好ましくは0.0020%以上である。また、鋼中に固溶したNは、磁気特性低下に加え、時効硬化による冷間鍛造性の悪化の原因となるため、0.005%を上限とすることが好ましい。好ましくは、0.0040%以下であり、より好ましくは、0.0030%以下である。
Oは、鋼中に酸化物を形成し磁気特性の低下に加え、鋼材の変形能の低下や冷間鍛造時の割れを発生限界の低下を原因となる。従ってOは、できるだけ低減することが望ましく、本発明では上限を0.020%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.005%以下である。Oは少なければ少ない程好ましいが、通常0.001%程度含み得る。
C:0.7〜0.95%
Cは、非磁性相であるオーステナイト相の安定化に有効な元素である。その含有量が0.7%未満では、摩擦接合部の界面や仕上げ切削加工を施した際に加工誘起マルテンサイトが生成して非磁性特性が損なわれる傾向がある。一方、含有量が0.95%を超えるとオーステナイト地の加工硬化性を増大させ、鍛造性や被削性が大幅に低下するとともに、粗大な炭窒化が生成するため、非磁性特性の低下と靱性の劣化を招きやすい。従って、C含有量は0.7〜0.95%の範囲とするのが好ましい。C量の下限は、より好ましくは0.75%以上であり、更に好ましくは0.80%以上である。C量の上限は、より好ましくは0.90%以下であり、更に好ましくは0.87%以下である。
Siは溶製時に脱酸剤として作用し、また、Crを代替するオーステナイト化元素として有効である。しかし、0.5%を超えて添加すると熱間加工性を損ない鋼材製造性が大幅に低下するとともに、脱炭層の生成を招き、最大比透磁率が増加する傾向がある。従って、Si含有量は0.1〜0.5%とするのが好ましい。Si量の下限は、より好ましくは0.15%以上であり、更に好ましくは0.20%以上である。Si量の上限は、より好ましくは0.45%以下であり、更に好ましくは0.40%以下である。
Mnは重要なオーステナイト形成元素である。摩擦接合後に仕上げ切削を行っても加工誘起マルテンサイトの生成を抑制する為には、13%超の添加が好ましい。一方、Mnは加工硬化を促進する元素であり、過多添加すると延性低下や割れ感受性の増加をもたらすことから、本発明では20%を上限とすることが好ましい。Mn量の下限は、より好ましくは13.5%以上であり、更に好ましくは14.0%以上である。Mn量の上限は、より好ましくは18%以下であり、更に好ましくは17%以下である。
Pは熱間加工性および溶接性を損なう不純物元素であり、極力低減することが望ましい。また多量に添加するとMn3Pの粒界析出により、熱間加工性が著しく低下するとともに、曲げ加工性も損なう可能性がある。従って、P含有量の上限を0.07%とするのが好ましい。より好ましくは0.050%以下、更に好ましくは0.030%以下、特に好ましくは0.015%以下にするのがよい。P量は少なければ少ない程良いが、通常0.010%程度含み得る。
Sは、過多添加すると熱間加工性を損なうとともに、圧延後にMnSとして析出すると、オーステナイトの安定化に有効な固溶Mnを減少させるため、極力低減することが望ましい。本発明では、経済性を考慮して0.045%以下とするのが好ましい。より好ましくは、0.030%以下であり、更に好ましくは0.015%以下にするのが良い。S量は少なければ少ない程良いが、通常0.002%程度含み得る。
オーステナイト相の安定化に有用な元素である。このような効果を有効に発揮されるため、Cr量は0.4%以上が好ましく、より好ましくは0.7%以上である。しかし、Crを多量添加すると、δフェライト相や粗大な炭化物が生成し易くなり、非磁性特性と靱性を損なうことになるため、上限を2.0%以下とするのが好ましい。Cr量はより好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1.2%以下である。
Alは、オーステナイト中のCの拡散速度を低減し、圧延時の表層脱炭による悪影響を軽減できる効果を有する。このような効果を有効に発揮するため、Al量は0.002%以上が好ましく、より好ましくは0.004%以上である。一方で、オーステナイト相の安定化に有効な固溶NをAlNとして析出させ、かつマルテンサイトに変態する温度(Ms点)を増加させるため、低温曲げの観点からは、Al量は低減することが望ましい。本発明では、0.02%以下に制限するのが好ましい。Al量は、より好ましくは0.017%以下であり、更に好ましくは0.013%以下である。
Nは、Cと同様にオーステナイトの安定化、高強度化に有効な元素である。含有量が0.025%未満では、摩擦接合時の脱窒素に伴う加工誘起マルテンサイトを完全に抑制するには不十分であり、一方、その含有量が0.05%を超えると、鋼材中にブローホール等の欠陥部が生成し易くなり、鋼材製造性が著しく悪化すると共に、冷間加工性や切削加工性の低下をもたらす。従ってN量は0.025〜0.05%とするのが好ましい。N量の下限は、より好ましくは0.030%以上であり、更に好ましくは0.033%以上である。N量の上限は、より好ましくは0.045%以下であり、更に好ましくは0.040%以下である。
Cuは、オーステナイトの安定化と靱性向上に有効である。従って、Cu量は0.01%以上が好ましい。しかし、Cuの過多添加では、熱間延性が低下し、鋼材製造性を損なう。従って、Cu量は0.1%以下が好ましい。Cu量は、より好ましくは0.08%以下であり、更に好ましくは0.06%以下である。
Bは、オーステナイト組織の粒界強度を向上させ、鋼材製造性を改善させる面で有用な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、B量は0.0010%以上が好ましく、より好ましくは0.0020%以上である。しかし、多量添加するとFe2Bが粒界に沿って析出し、粒界強度が低下して鋼材製造性の悪化と非磁性特性の悪化を招く。従ってB量は0.006%以下が好ましく、より好ましくは0.0050%以下であり、更に好ましくは0.0040%以下である。
1.熱間圧延時の加熱温度
鋼中の合金成分を母相に完全に固溶させるため、できるだけ高温で加熱することが望ましいが、1200℃を超えるとフェライト結晶粒の粗大化が顕著となって部品成型時の冷間鍛造性低下をもたらすので、その上限温度を1200℃とすることが好ましい。一方、加熱温度が低すぎると局所的にフェライト相が生成し、熱間圧延時の母相(オーステナイト相)と変形抵抗が大きく異なるため圧延時の割れ発生を招く危険性がある。また、低温側では圧延時のロール負荷が上昇し生産性の低下するため、加熱温度は1000℃以上が好ましい。
仕上げ温度が低すぎるとミクロ組織が細粒傾向になり、その後の冷却過程や部品製造時の焼鈍過程において、部分的な異常粒成長(GG、Grain Growth)の発生を招く。GG発生部は、冷間鍛造時の肌荒れや割れ発生限界圧縮率の低下、最大比透磁率の減少やばらつき増加の原因となるため、均一な整粒生成を確保する観点から、仕上げ温度は850℃以上が好ましい。このようにすることによって母相の平均結晶粒度番号と比べて2.0番以上小さい粗大なフェライト結晶粒の混在を防止できる。
上記した圧延条件で得られた線材で作製した部品の磁気特性向上に際しては、下記の条件で磁気焼鈍を行うことが大変有効である。析出した窒化物が結晶粒の成長を阻害するため、850℃未満では実用的な熱処理時間で最適なフェライト結晶粒を得ることができない。一方、1000℃を超えて加熱しても効果に著しい差は認められない事から、焼鈍温度範囲を850〜1000℃とした。
ブルームなどの中間製品の緩冷却時に生じた炭化物を再固溶させるため、熱間圧延時の加熱温度は1000〜1250℃とすることが好ましい。また仕上げ圧延後の冷却過程で粒界炭化物析出が生成すると、オーステナイト相の安定度が低下し、摩擦接合部の界面で強磁性である加工誘起マルテンサイト相が生成して電磁制御部品の吸引力や制御精度の低下をもたらす。上記悪影響を抑制する為、750〜500℃の温度域における平均冷却速度を100℃/分以上として冷却することが好ましい。
上記した直棒状材料から試験片を切出し、磁気特性測定に供した。軟磁性鋼材については、外径20mm×内径14mm×高さ3mmのリング状試験片を用い、JIS C2504に規定する方法で行い、自動磁化測定装置(理研電子社製:BHS−40)を用いて印加磁界400A/mまでのヒステリシス曲線を描き、得られたヒステリシス曲線における原点を通る接線の勾配が最大値を最大比透磁率と定義した。また、非磁性鋼材に関しては、棒状鋼材から5mm角の立方体を採取し、振動試料型磁化自動測定装置(理研電子株式会社製BHV−3.5)を用いて最大比透磁率を測定した。
本評価に用いたソレノイドの概略構造を図1に示す。中心部に可動鉄心(プランジャ)11があり、外周部に軟磁性鋼材12と非磁性鋼材13の接合部を有する円筒状の固定鉄心(コアステータ)14が配置される。また、固定鉄心の外側に磁界印加用の銅製の励磁コイル15が巻かれ、その巻線数は250ターンである。本実施例では、可動鉄心11と固定鉄心14に用いられる軟磁性鋼材はいずれも同一であり、固定鉄心14については後記する表4に示す通り軟磁性鋼材と非磁性鋼材を溶接接合または摩擦接合したものである。
接合強度については、軟磁性鋼材と非磁性鋼材との接合界面を1ヵ所有するφ20×300mmL(JIS2号試験片)を用いてつかみ間隔200mmLでJIS Z2241に従って引張試験を行い、破断強度を接合強度と定義して評価した。
接合部の組織形態については、ソレノイドの特性評価後に分解し、円筒状の鉄心を縦断面で切断し、接合面のミクロ組織を調査した。
12 軟磁性鋼材
13 非磁性鋼材
14 固定鉄心
15 励磁コイル
Claims (6)
- 軟磁性鋼材と非磁性鋼材が交互に接合された鉄心部材であって、
両端部はいずれも軟磁性鋼材であり、
前記軟磁性鋼材は、最大比透磁率が8000以上で、かつ組織が結晶粒度番号6番未満のフェライト単相組織であり、
前記非磁性鋼材は、最大比透磁率が1.03以下であり、
前記軟磁性鋼材と前記非磁性鋼材の接合部では、軟磁性鋼材側にフェライト結晶粒径が18μm以下の相が50〜200μmの厚さで存在し、且つ、非磁性鋼材側に加工誘起マルテンサイト相の生成がないことを特徴とする電磁制御部品用鉄心部材。 - 前記軟磁性鋼材が、質量%で、
C:0.002〜0.02%、
Si:0%超、3.0%以下、
Mn:0.1〜0.5%、
P:0%超、0.03%以下、
S:0%超、0.03%以下、
Cu:0%超、0.1%以下、
Ni:0%超、0.1%以下、
Cr:0%超、2.0%以下、
Al:0.002〜0.04%、
N:0%超、0.005%以下、
O:0%超、0.020%以下を含有し、残部が鉄および不可避不純物である請求項1に記載の鉄心部材。 - 前記非磁性鋼材が、質量%で、
C:0.7〜0.95%、
Si:0.1〜0.5%、
Mn:13%超、20%以下、
P:0%超、0.07%以下、
S:0%超、0.045%以下、
Cr:0%超、2.0%以下、
Al:0%超、0.02%以下、
N:0.025〜0.05%を含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、組織の99面積%以上がオーステナイト相であるMn非磁性鋼材である請求項1または2に記載の鉄心部材。 - 前記非磁性鋼材が更に、質量%で、
Cu:0%超、0.1%以下およびNi:0%超、0.1%以下の少なくとも1種を含有する請求項3に記載の鉄心部材。 - 前記非磁性鋼材が更に、質量%で、
B:0%超、0.006%以下を含有する請求項3または4に記載の鉄心部材。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の鉄心部材の製造方法であって、
前記軟磁性鋼材と前記非磁性鋼材を摩擦接合することを特徴とする電磁制御部品用鉄心部材の製造方法。
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