(構成)
以下に、第1の実施の形態について、図1から図4を参照して説明する。なお、複数の表現が可能な各要素に、一つ以上の他の表現の例を付すことがある。しかし、これは、他の表現が付されていない要素について異なる表現がされることを否定するものではないし、例示されていない他の表現がされることを制限するものでもない。また、各図面は実施形態を概略的に示すものであり、図面に示される各要素の寸法は、実施形態の説明と異なることがある。
図1は、第1の実施の形態に係るインクジェットプリンタ1の全体の概略構成を示す縦断面図である。インクジェットプリンタ1は、インクジェット記録装置の一例である。なお、インクジェット記録装置はこれに限らず、複写機のような他の装置であっても良い。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、例えば、記録媒体である記録紙Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行う。インクジェットプリンタ1は、筐体10と、給紙カセット11と、排紙トレイ12と、保持ローラ(ドラム)13と、搬送装置14と、保持装置15と、画像形成装置16と、除電剥離装置17と、反転装置18と、クリーニング装置19とを備える。
給紙カセット11は、複数の記録紙Pを収容して、筐体10内に配置される。排紙トレイ12は、筐体10の上部にある。インクジェットプリンタ1によって画像形成がされた記録紙Pは、排紙トレイ12に排出される。
搬送装置14は、記録紙Pが搬送される経路に沿って配置された複数のガイドおよび複数の搬送ローラを有する。当該搬送ローラは、モータに駆動されて回転することで、記録紙Pを給紙カセット11から排紙トレイ12まで搬送する。
保持ローラ13は、導体によって形成された円筒状のフレームと、当該フレームの表面に形成された薄い絶縁層とを有する。前記フレームは接地(グランド接続)される。保持ローラ13は、その表面上に記録紙Pを保持した状態で回転することにより、記録紙Pを搬送する。
保持装置15は、搬送装置14によって給紙カセット11から搬出された記録紙Pを、保持ローラ13の表面(外周面)に吸着させて保持させる。保持装置15は、記録紙Pを保持ローラ13に対して押圧した後、帯電による静電気力で記録紙Pを保持ローラ13に吸着させる。
画像形成装置16は、保持装置15によって保持ローラ13の外面に保持された記録紙Pに、画像を形成する。画像形成装置16は、保持ローラ13の表面に面する複数のインクジェットヘッド21を有する。複数のインクジェットヘッド21は、例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの四色のインクを、それぞれ記録紙Pに吐出することで、画像を形成する。
除電剥離装置17は、画像が形成された記録紙Pを、除電することで、保持ローラ13から剥離する。除電剥離装置17は、電荷を供給して記録紙Pを除電し、記録紙Pと保持ローラ13との間に爪を挿入する。これにより、記録紙Pは保持ローラ13から剥離される。保持ローラ13から剥離された記録紙Pは、搬送装置14によって、排紙トレイ12または反転装置18に搬送される。
クリーニング装置19は、保持ローラ13を清浄する。クリーニング装置19は、保持ローラ13の回転方向において除電剥離装置17よりも下流にある。クリーニング装置19は、回転する保持ローラ13の表面にクリーニング部材19aを当接させ、回転する保持ローラ13の表面を洗浄する。
反転装置18は、保持ローラ13から剥離された記録紙Pの表裏面を反転させ、当該記録紙Pを再び保持ローラ13の表面上に供給する。反転装置18は、例えば記録紙Pを前後方向逆にスイッチバックさせる所定の反転経路に沿って記録紙Pを搬送することにより、記録紙Pを反転させる。
図2は、インクジェットヘッド21の要部構成を示す平面図である。図3は、インクジェットヘッド21の個別電極(下部電極部106c)と個別電極の接続端子との接続状態を示す要部の縦断面図である。図4は、インクジェットヘッド21の共通電極(上部電極部107c)と共通電極の接続端子との接続状態を示す要部の縦断面図である。なお、図2、図3および図4は、説明のために、本来は隠れる種々の要素を実線で示す。
インクジェットプリンタ1は、複数のインクジェットヘッド21に接続される図示しない複数のインクタンクおよび複数の制御部を備える。インクジェットヘッド21は、対応する色のインクを収容するインクタンクに接続される。
インクジェットヘッド21は、保持ローラ13に保持された記録紙Pに、インク滴を吐出することで文字や画像を形成する。インクジェットヘッド21は、図3、図4に示すようにノズルプレート100と、圧力室構造体200と、インク流路構造体400とを備える。圧力室構造体200は、基材の一例である。
ノズルプレート100は、矩形の板状に形成される。ノズルプレート100は、圧力室構造体200の上に、一体構造として形成される。ノズルプレート100は、複数のノズル(オリフィス、インク吐出孔)101と、複数の駆動素子(圧電素子、アクチュエータ)102と、を有する。
複数のノズル101は、円形の孔である。ノズル101の直径は、例えば20μmである。図2に示すように複数のノズル101は、ノズルプレート100の長手方向(図2中で上下方向)および短手方向(図2中で左右方向)に沿ってそれぞれ複数列に並んでいる。一方の列のノズル101と、他方の列のノズル101とは、ノズルプレート100の長手方向において一定の間隔を有して配置される。これにより、複数の駆動素子102がより高密度に配置される。
ノズルプレート100の長手方向において、隣接するノズル101の中心間距離は、例えば、340μmである。ノズルプレート100の短手方向(図2中で左右方向)において、ノズル101の二つの列の間の距離は、例えば、240μmである。
複数の駆動素子102は、複数のノズル101に対応して配置される。言い換えると、駆動素子102は、対応するノズル101と同一軸上に位置する。駆動素子102は、円環状に形成され、対応するノズル101を囲む。駆動素子102はこれに限らず、例えば、一部が開放された円環状(C字状)であっても良い。
圧力室構造体200は、シリコンウエハによって、矩形の板状に形成される。なお、圧力室構造体200はこれに限らず、例えば、炭化シリコン(SiC)やゲルマニウム基板のような他の半導体であっても良い。また、基材はこれに限らず、セラミックス、ガラス、石英、樹脂、または金属のような他の材料によって形成されても良い。利用されるセラミックスは、例えば、アルミナセラミックス、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、またはチタン酸バリウムのような窒化物、炭化物、または酸化物である。利用される樹脂は、例えば、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリエーテルサルフォンのようなプラスチック材である。利用される金属は、例えばアルミまたはチタンである。圧力室構造体200の厚さは、例えば725μmである。圧力室構造体200の厚さは、例えば、100〜775μmの範囲にある。
図3および図4に示すように、圧力室構造体200は、第1の面200aと、第2の面200bと、複数の圧力室(インク室)201を有する。第1および第2の面200a,200bは、平坦化される。第2の面200bは、第1の面200aの反対側に位置する。ノズルプレート100は、第1の面200aに固着する。
複数の圧力室201は円形の孔である。圧力室201の直径は、例えば、190μmである。なお、圧力室201の形状はこれに限らない。圧力室201は、圧力室構造体200をその厚さ方向に貫通し、第1および第2の面200a,200bにそれぞれ開口する。第1の面200aに開口する複数の圧力室201は、ノズルプレート100によって塞がれる。
複数の圧力室201は、複数のノズル101に対応して配置される。言い換えると、圧力室201は、対応するノズル101と同一軸上に位置する。このため、圧力室201に、対応するノズル101が連通する。圧力室201は、ノズル101を介してインクジェットヘッド21の外部につながる。
インク流路構造体400は、例えばステンレスによって矩形の板状に形成される。インク流路構造体400の厚さは、例えば4mmである。なお、インク流路構造体400の材料は、ステンレスに限らない。例えば、セラミックスまたは樹脂のような他の材料によって形成されても良い。使用されるセラミックスは、例えば、アルミナセラミックス、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素のような窒化物、炭化物、または酸化物である。使用される樹脂は、例えば、ABS、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、またはポリエーテルサルフォンのようなプラスチック材である。インク流路構造体400の材料は、インクを吐出するための圧力の発生に影響が生じないように、ノズルプレート100との膨張係数の差を考慮して選択される。
インク流路構造体400は、例えばエポキシ系接着剤によって、圧力室構造体200に接着される。インク流路構造体400は、インク流路401と、図示しないインク供給口と、インク排出口とを有する。
インク流路401は、インク流路構造体400の表面に形成された溝である。インク流路401の深さは、例えば2mmである。インク供給口は、インク流路の一方の端部に開口する。インク供給口は、例えばチューブを介してインクタンクに接続される。インクタンクは、インク流路401を介して複数の圧力室201に接続される。
インクタンクのインクは、インク供給口を通って、インク流路401に流入する。インク流路401に供給されたインクは、複数の圧力室201に供給される。圧力室201に充填されたインクは、圧力室201に開口するノズル101内にも流入する。インクジェットプリンタ1は、インクの圧力を適切な負圧に保つことで、インクをノズル101内に留める。インクは、ノズル101内にメニスカスを生じさせるとともに、ノズル101から漏れ出さないように維持される。
インク排出口は、インク流路401の他方の端部に開口する。インク排出口は、例えばチューブを介してインクタンクに接続される。圧力室201に流入しなかったインク流路401のインクは、インク排出口を通って、インクタンクに排出される。このように、インクタンクとインク流路401との間で、インクが循環する。インクが循環することで、インクジェットヘッド21と、インクとの温度が一定に保たれ、例えば熱によるインクの変質が抑制される。
次に、ノズルプレート100について詳しく説明する。図3および4に示すように、ノズルプレート100は、上述のノズル101および駆動素子102と、振動板104と、絶縁膜105と、下部電極106と、上部電極107と、保護膜108と、撥インク膜109とを有する。絶縁膜105および保護膜108は、絶縁部の一例である。
振動板104は、例えば、圧力室構造体200の第1の面200aに成膜されたSiO2(二酸化ケイ素)によって、矩形の板状に形成される。言い換えると、振動板104は、シリコンウエハである圧力室構造体200の酸化膜である。振動板104は、単結晶Si(ケイ素)、Al2O3(酸化アルミニウム)、HfO2(酸化ハフニウム)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、またはDLC(Diamond Like Carbon)のような他の材料によって形成されても良い。振動板104の厚さは、例えば4μmである。振動板104の厚さは、概ね1〜50μmの範囲にある。
振動板104は、第1の面104aと、第2の面104bとを有する。第1の面104aは、圧力室構造体200に固着し、複数の圧力室201を塞ぐ。第2の面104bは、第1の面104aの反対側に位置する。
下部電極106は、振動板104の第2の面104bに形成される。図2および図3に示すように、下部電極106は、配線部106aと、個別接続端子部106bと、圧電膜111と接する下部電極部(個別電極)106cとをそれぞれ有する。下部電極106の端子部106bは、振動板104の短手方向の一方の端部に位置し、振動板104の長手方向に沿って並ぶ並設部106fを有する。
図2および図4に示すように、上部電極107は、配線部107aと、共通接続端子部107bと、圧電膜111と接する上部電極部(共通電極)107cとを有する。端子部107bは、振動板104の短手方向の一方の端部に位置し、振動板104の長手方向に沿って配置された端子部106bの並設部106fとの間および両端部に位置する。
下部電極106は、例えば、Pt(白金)およびAl(アルミニウム)の薄膜である。
上部電極107の配線部107aおよび端子部107bは、例えば、Ti(チタン)およびAlの薄膜である。なお、下部電極106および上部電極107は、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ag(銀)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Au(金)のような他の材料によって形成されても良い。
下部電極106および上部電極107の厚さは、例えば0.5μmである。下部電極106および上部電極107の膜厚は、概ね0.01〜1μmの範囲にある。下部電極106の配線部106aおよび上部電極107の配線部107aの幅は、例えば10μmである。
図3および図4に示すように、駆動素子102は、圧電膜111に接する下部電極部106cと、圧電膜111と、圧電膜111に接する上部電極部107cとからなり、振動板104の第2の面104bにある。駆動素子102は、対応するノズル101からインク滴を吐出させるための圧力を、対応する圧力室201のインクに発生させる。
下部電極106の圧電膜111と接する電極部106cは、振動板104の第2の面104bにある。電極部106cは、ノズル101を囲む円環状に形成される。電極部106cは、ノズル101と同一軸上に位置する。電極部106cの外径は、例えば133μmである。電極部106cの内径は、例えば30μmである。このため、電極部106cは、ノズル101から離間する電極部106cのうち一部は圧電膜111とは接しない部分106dを有し、配線部106aと接することで導通を確保している。
下部電極106の配線部106aは、対応する駆動素子102の電極部106cと端子部106bとを接続する。配線部106aは、ノズルプレート100の短手方向に、ノズルプレート100の長手方向に隣接する駆動素子102間を通って延びる。
図3および4に示すように、圧電膜111は、ノズル101を囲むとともに、下部電極106の電極部106cとほぼ同じ大きさの円環状に形成される。圧電膜111は、下部電極106の電極部106cよりも僅かに小さく形成されるが、電極部106cより大きくても良い。圧電膜111は、ノズル101と同一軸上に位置する。圧電膜111は、下部電極106の電極部106cを覆う。
圧電膜111は、圧電性材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の膜である。なお、圧電膜111はこれに限らず、例えば、PTO(PbTiO3:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、ZnO、およびAlNのような種々の圧電性材料によって形成されても良い。
圧電膜111の厚さは、例えば2μmである。圧電膜の厚さは、例えば、圧電特性および絶縁破壊電圧によって決定される。圧電膜の厚さは、概ね0.1μmから5μmの範囲にある。
圧電膜111は、その厚み方向に分極を発生させる。当該分極の方向と同方向の電界が圧電膜111に印加すると、圧電膜111は、当該電界の方向と直交する方向に伸縮する。言い換えると、圧電膜111は、膜厚に対して直交する方向(面内方向)に収縮または伸長する。
なお、圧電膜111としてPZTのような強誘電体を使用した場合は、分極方向と反対の電界を加えることにより分極反転を生じる。したがって、実質的に分極方向と同じ方向にのみ電界を印加することが可能であり、電界を加えることにより圧電膜111は膜厚方向に伸長し、膜厚に対して直交する方向(面内方向)に収縮する。
上部電極107の電極部107cは、ノズル101を囲むとともに、下部電極106の電極部106cおよび圧電膜111とほぼ同じ大きさの円環状に形成される。上部電極107の電極部107cは、圧電膜111よりも僅かに小さく形成されるが、圧電膜111より大きくても良い。電極部107cは、ノズル101と同一軸上に位置する。電極部107cは、圧電膜111を覆う。言い換えると、電極部107cは、圧電膜111の吐出側(インクジェットヘッド21の外に向く側)に設けられる。
圧電膜111は、下部電極106の電極部106cと、上部電極107の電極部107cとの間に介在する。言い換えると、圧電膜111に、下部電極106の電極部106cおよび上部電極107の電極部107cが重なる。圧電膜111は、二つの電極部106c,107cの間を絶縁する。上部電極107の電極部107cは、圧電膜111を介して下部電極106の電極部106cに対向する。
上部電極107の電極部107cは、駆動素子102の外面102aを形成する。外面102aは、振動板104の反対側を向く駆動素子102の一面である。言い換えると、外面102aは、駆動素子102の吐出側に向く。外面102aは、振動板104の第2の面104bと略平行な面である。
絶縁膜105は、振動板104の第2の面104bと、駆動素子102の表面と、下部電極106の配線部106aと、を覆う。絶縁膜105は、下部電極106の端子部106bを露出させる複数の孔105bを有する。
絶縁膜105は、例えば、SiO2によって形成される。絶縁膜105は、例えば、SiN(窒化ケイ素)のような他の材料によって形成されても良い。絶縁膜105は、振動板104の第2の面104bと、駆動素子102の表面と、下部電極106の下部電極部106cと、の上において、おおよそ均一な厚さを有する。絶縁膜105の厚さは1μmである。絶縁膜105の厚さは、好ましくは大よそ0.1μmから5μmの範囲にある。
なお、絶縁膜105の厚さは、部分的に異なっても良い。
絶縁膜105は、複数のコンタクト部113を有する。コンタクト部113は、対応する駆動素子102の外面102aの上にある絶縁膜105の一部に設けられた孔105cである。コンタクト部113は、例えば、直径20μmの円形に形成される。コンタクト部113の孔105bは、圧電膜111と接しない部分107dの一部を露出させる。また、コンタクト部113の孔105cは、上部電極107の電極部107cの一部を露出させる。コンタクト部113の孔105cは、円環状の電極部107cの内周と外周との間の中央よりも、電極部107cの外周に近く配置される。
図4に示すように上部電極107の共通接続端子部107bと、配線部107aとは、絶縁膜105の表面105aにある。言い換えると、上部電極107の端子部107bおよび配線部107aは、絶縁膜105の上にある。絶縁膜105の表面105aは、振動板104の反対方向に向く。
図3および4に示すように、上部電極107の配線部107aは、対応する駆動素子102の電極部107cと、共通接続端子部107bとをつなぐ。配線部107aは、ノズルプレート100の短手方向に延びる。
図2に示すように配線部107aは、ノズルプレート100の短手方向の中央付近において合体し、ノズルプレート100の長手方向に沿って延びる部分を形成する。このため、共通接続端子部107bと、8個の電極部107cとは、配線部107aによって接続される。一方、短手方向端部にある駆動素子102と接続し、周期的にノズルプレート100の端部側に引き出された配線部107aは、共通接続端子部107bへとつながり、各駆動素子102と共通接続端子部107bとの距離が短くなるように配置される。
図4に示すように、上部電極107の配線部107aは、駆動素子102を覆う絶縁膜105の表面105aを通る。配線部107aの一方の端部は、コンタクト部113を通って、上部電極107の電極部107cに接続される。言い換えると、コンタクト部113は、配線部107aを電極部107cに接続するために、絶縁膜105が部分的に除去された部分である。
絶縁膜105は、上部電極107の配線部107aと、下部電極106の電極部106cとの間を隔てる。絶縁膜105は、下部電極106と上部電極107とが電気的に接続することを防ぐ。
保護膜108は、振動板104の第2の面104b上にある。保護膜108は、例えば、東レ株式会社のフォトニース(登録商標)のような感光性ポリイミドによって形成される。すなわち、保護膜108は、絶縁膜105と異なるとともに、絶縁性を有する材料によって形成される。保護膜108はこれに限らず、樹脂またはセラミックスのような、他の絶縁性の材料によって形成されても良い。利用される樹脂は、例えば、他の種類のポリイミド、ABS、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォンのようなプラスチック材である。利用されるセラミックスは、例えば、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸バリウムなどの窒化物、または酸化物である。また、保護膜108は、駆動素子102および上部電極107との絶縁性を有するならば、金属材料によって形成されても良い。当該金属材料は、例えば、アルミ、SUS、またはチタンである。
保護膜108の材料は、耐熱性、絶縁性、熱膨張係数、平滑性、インクに対する濡れ性を考慮して選択される。当該材料の絶縁性は、インクジェットプリンタ1が導電率の高いインクを使用する場合、駆動素子102が駆動する際のインクの変質度合いに影響し得る。
保護膜108は、振動板104の第2の面104bと、絶縁膜105の表面105aと、上部電極107の配線部107aとを覆う。言い換えると、保護膜108は、絶縁膜105の上から駆動素子102および下部電極106の配線部106aを覆う。保護膜108は、例えばインクや空気中の水分から、駆動素子102、下部電極106、および上部電極107を保護する。保護膜108は、下部電極106および上部電極107の複数の端子部106b,107bをそれぞれ露出させる複数の孔を有する。
保護膜108の材料は、振動板104の材料とヤング率が異なる。振動板104を形成するSiO2のヤング率は、80.6GPaである。一方、保護膜108を形成するポリイミドのヤング率は、4GPaである。すなわち、保護膜108のヤング率は振動板104のヤング率よりも小さい。
保護膜108の表面108aは、大よそ平滑に形成されるが、微小な凹凸を有する。例えば、駆動素子102が設けられた部分において、保護膜108の表面108aは、他の部分に比べて隆起する。保護膜108の表面108aは、振動板104に固着した面の反対側に位置する。
駆動素子102、下部電極106、および上部電極107がある部分以外の保護膜108の厚さは、約4μmである。保護膜108の膜厚は、概ね1〜50μmの範囲にある。
この保護膜108の厚さは、振動板104の第2の面104bから、保護膜108の表面108aまでの距離である。駆動素子102上に形成された保護膜108の厚さは、約2.5μmである。この保護膜108の厚さは、駆動素子102の上にある絶縁膜105の表面105aから、保護膜108の表面108aまでの距離である。
撥インク膜109は、保護膜108と、絶縁膜105の一部とを覆う。撥インク膜109は、例えば、旭硝子株式会社のサイトップ(登録商標)のような、撥液性を有するシリコーン系撥液材料またはフッ素含有系有機材料によって形成される。なお、撥インク膜109は、他の材料によって形成されても良い。
撥インク膜109は、下部電極106の端子部106bと、上部電極107の端子部107bとの周辺において、保護膜108を覆わずに露出させる。撥インク膜109の表面109aは、ノズルプレート100の表面を形成する。撥インク膜109の表面109aは、保護膜108に固着した面の反対側に位置する。
駆動素子102、上部電極107、および下部電極106がある部分以外の撥インク膜109の厚さは、例えば1μmである。撥インク膜109の厚さは、好ましくは例えば、0.01〜10μmの範囲にある。駆動素子102が設けられた部分における撥インク膜109の厚さは、他の部分よりも薄い。なお、撥インク膜109の厚さは一定でも良い。
ノズル101が吐出したインク滴がノズル101近傍に付着すると、インク吐出の安定性が低下する可能性がある。撥インク膜109は、インク滴がノズルプレート100の表面に付着することを抑制する。
ノズル101は、振動板104と、保護膜108と、撥インク膜109とを貫通する。
言い換えると、ノズル101は、振動板104と、保護膜108と、撥インク膜109とに形成される。振動板104および保護膜108が親インク性(親液性)を有するため、圧力室201に収容されたインクのメニスカスは、ノズル101内に保たれる。保護膜108の一部は、ノズル101と、駆動素子102の内周面との間に介在する。
下部電極106の端子部106bに、例えばフレキシブルケーブルを介して、図示しない制御部が接続される。制御部は、例えば、インクジェットヘッド21を制御するICや、インクジェットプリンタ1を制御するマイクロコンピュータである。一方、上部電極107の端子部107bは、例えば、GND(グランド接地=0V)に接続される。
制御部は、下部電極106に、対応する駆動素子102を駆動するための信号を伝送させる。下部電極106は、複数の駆動素子102を独立して動作させるための個別電極として用いられる。
上記のインクジェットヘッド21は、例えば次のように印字(画像形成)を行う。ユーザの操作によって、制御部に印字指示信号が入力される。制御部は、当該印字指示に基づいて、複数の駆動素子102に信号を印加する。言い換えると、制御部は、下部電極106の電極部106cに、駆動電圧を印加する。
下部電極106の電極部106cに信号が印加されると、下部電極106の電極部106cと、上部電極107の電極部107cとの間に電位差が生じる。これにより、圧電膜111に分極方向と同方向の電界が印加され、駆動素子102が電界方向と直交する方向に伸縮する。
このようなノズルプレート100において、駆動素子102が電界方向と直交する方向に伸びた場合、振動板104は、圧力室201の容積を縮小させるように湾曲する。反対に、駆動素子102が電界方向と直交する方向に縮んだ場合、振動板104は、圧力室201の容積を拡大させるように湾曲する。この際、絶縁膜105および保護膜108は、当該湾曲を阻害する。
詳しく説明すると、図3および図4に示すように、駆動素子102は、振動板104と、絶縁膜105および保護膜108と、に挟まれる。このため、駆動素子102が電界方向と直交する方向に伸びた場合、振動板104に、圧力室201側に対して凹形状に変形する力がかかる。言い換えると、振動板104は、圧力室201の容積を増大させる方向に湾曲しようとする。反対に、絶縁膜105および保護膜108に、圧力室201側に対して凸形状に変形する力がかかる。言い換えると、絶縁膜105および保護膜108は、圧力室201の容積を減少させる方向に湾曲しようとする。
一方、駆動素子102が電界方向と直交する方向に縮んだ場合、振動板104に、圧力室201側に対して凸形状に変形する力がかかる。言い換えると、振動板104は、圧力室201の容積を減少させる方向に湾曲しようとする。また、絶縁膜105および保護膜108に、圧力室201側に対して凹形状に変形する力がかかる。言い換えると、絶縁膜105および保護膜108は、圧力室201の容積を増大させる方向に湾曲しようとする。
上述のように、振動板104と、絶縁膜105および保護膜108とは、互いに反対方向に湾曲しようとする。すなわち、絶縁膜105および保護膜108が形成する絶縁部は、駆動素子102による振動板104の変形を阻害する力(膜応力)を生じさせる。
部材の変形量は、ヤング率および当該部材の厚さに影響される。保護膜108を形成するポリイミドは、振動板104を形成するSiO2よりヤング率が小さい。このため、保護膜108の方が、振動板104よりも、同じ力に対する変形量が大きい。さらに、絶縁膜105は、振動板104よりも薄い。このため、絶縁膜105の方が、振動板104よりも、同じ力に対する変形量が大きい。
以上のように、駆動素子102は、ベンディングモード(屈曲振動)で動作する。駆動素子102は、電圧が印加されたときに、振動板104を変形させることで、圧力室201の容積を変化させる。
まず、駆動素子102は、振動板104を変形させることで圧力室201の容積を増大させる。これにより、圧力室201に収容されたインクに負圧が生じ、インク流路401から圧力室201にインクが流入する。
次に、駆動素子102は、振動板104を変形させることで圧力室201の容積を減少させる。これにより、圧力室201のインクが加圧される。当該インクにかかる正の圧力は、インク流路401に逃げず、圧力室201に閉じ込められる。これにより、加圧されたインクがノズル101から吐出される。
振動板104と保護膜108とのヤング率の差が大きいほど、インク吐出が可能となる電圧がより低くなり、インクジェットヘッド21が効率良くインクを吐出できる。さらに、絶縁膜105および保護膜108が形成する絶縁部と、振動板104との厚さの差が大きいほど、インク吐出が可能となる電圧がより低くなり、インクジェットヘッド21が効率良くインクを吐出できる。
次に、インクジェットヘッド21の製造方法の一例について説明する。まず、圧力室201が形成される前の圧力室構造体200(シリコンウエハ)の第1の面200aの全域に、振動板104としてのSiO2膜を成膜する。当該SiO2膜は、例えば熱酸化膜法によって成膜される。なお、SiO2膜はCVD法のような他の方法によって成膜されても良い。
圧力室構造体200を形成するシリコンウエハは、大きな一枚の円板である。当該シリコンウエハから、後で複数の圧力室構造体200が切り取られる。なお、これに限らず、一枚の矩形のシリコンウエハから、一つの圧力室構造体200を形成しても良い。
前記シリコンウエハは、インクジェットヘッド21の製造過程において、繰り返し加熱および薄膜の成膜がなされる。このため、前記シリコンウエハは、耐熱性を有し、SEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)規格に準じ、且つ鏡面研磨によって平滑化されたものである。
次に、振動板104の第2の面104bに、下部電極106を形成する金属膜を成膜する。まず、スパッタリング法を用いてTiの膜とPtの膜とを順番に成膜する。Ptの膜厚は例えば0.45μm、Ti膜厚は例えば0.05μmである。なお、当該金属膜は、蒸着および鍍金のような他の製法によって形成されても良い。
次に、下部電極106を形成する金属膜の上に、圧電膜111を形成する。圧電膜111は、例えばRFマグネトロンスパッタリング法により成膜される。このとき、前記シリコンウエハの温度は、例えば350℃に加熱される。圧電膜111は、成膜後、圧電膜111に圧電性を付与するために、650℃で3時間熱処理される。これにより、圧電膜111は、良好な結晶性を得るとともに、良好な圧電性能を得る。圧電膜111は、例えば、CVD(化学的気相成長法)、ゾルゲル法、AD法(エアロゾルデポジション法)、水熱合成法のような他の製法によって形成されても良い。
次に、圧電膜111の上に、上部電極107の電極部107cを形成するPtの金属膜を成膜する。当該金属膜は、例えばスパッタリング法によって成膜される。当該金属膜は、真空蒸着および鍍金のような他の製法によって形成されても良い。
次に、上記金属膜および圧電膜111をエッチングすることで、上部電極107の電極部107cと、圧電膜111とをパターニングする。パターニングは、前記金属膜の上にエッチングマスクを作り、当該エッチングマスク以外の前記金属膜および圧電膜111をエッチングによって除去することで行う。前記金属膜および圧電膜111は、一時にパターニングされる。なお、前記金属膜および圧電膜111は、個別にパターニングされても良い。エッチングマスクは、感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、およびポストベークによって形成される。
次に、パターニングによって、下部電極106を形成する。パターニングは、圧電膜111および上部電極107の電極部107cと、圧電膜111の下の前記金属膜(Pt/Ti)との上にエッチングマスクを作り、当該エッチングマスク以外の前記金属膜をエッチングによって除去することで行う。エッチングマスクは、感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、およびポストベークによって形成される。
下部電極106および上部電極107の電極部106c,107cと圧電膜111との中心にノズル101が形成される。このため、電極部106c,107cおよび圧電膜111の中心と同心円の、金属膜および圧電膜111がない部分が形成される。このように、駆動素子102が振動板104の第2の面104bに形成される。パターニングによって、下部電極106の配線部106a、下部電極部106c、および駆動素子102以外では、振動板104が露出する。
次に、振動板104の第2の面104bと、駆動素子102との上に、絶縁膜105を形成する。絶縁膜105は、良好な絶縁性を低温成膜にて実現できるCVD法によって形成される。絶縁膜105はこれに限らず、スパッタリング法、または蒸着のような他の方法によって形成されても良い。
絶縁膜105は、成膜後にパターニングされる。ノズル101を形成するため、駆動素子102の中心と同心円の絶縁膜105がない部分が形成される。同時に、コンタクト部113が形成される。当該絶縁膜105が無い部分の直径は、例えば10μmである。パターニングは、エッチングマスク以外の絶縁膜105をエッチングによって除去することで行う。エッチングマスクは、感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、定着、およびポストベークによって形成される。
次に、絶縁膜105の上に、下部電極の配線部106aおよび端子部106b、上部電極107の配線部107aおよび端子部107bを形成する金属膜を成膜する。当該金属膜は、例えばスパッタリング法によって成膜されるTi(チタン)/Al(アルミニウム)薄膜である。Tiの膜厚は、例えば0.1μm、Alの膜厚は、例えば0.4μmである。当該金属膜は、真空蒸着および鍍金のような他の製法によって形成されても良い。当該金属膜は、コンタクト部113を通って下部電極106の電極部106c、上部電極107の電極部107cにのいずれかに接続される。
上記金属膜をパターニングすることで、下部電極の配線部106aおよび端子部106b、上部電極107の配線部107aおよび端子部107bを形成する。パターニングは、前記金属膜上にエッチングマスクを作り、当該エッチングマスク以外の前記金属膜をエッチングによって除去することで行う。エッチングマスクは、感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、およびポストベークによって形成される。
次に、振動板104を形成するSiO2膜をパターニングし、ノズル101の一部を形成する。パターニングは、SiO2膜上にエッチングマスクを作り、エッチングマスク以外のSiO2膜をエッチングによって除去することで行う。エッチングマスクは、振動板104の上への感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、およびポストベークによって形成される。
次に、振動板104、絶縁膜105、下部電極の配線部106aおよび端子部106b、上部電極107の配線部107aおよび端子部107bの上に、保護膜108をスピンコーティング法(スピンコート)によって形成する。すなわち、絶縁膜105を覆う保護膜108を形成する。まず、ポリイミド前駆体を含有した溶液で振動板104の第2の面104bおよび絶縁膜105を覆う。次に、前記シリコンウエハが回転させられ、溶液表面が平滑にされる。ベークによって熱重合と溶剤除去を行うことで、保護膜108が形成される。
保護膜108の形成方法は、スピンコーティングに限らない。保護膜108は、CVD、真空蒸着、または鍍金のような他の方法によって形成されても良い。
保護膜108をパターニングすることによって、ノズル101を形成するとともに、下部電極106の端子部106bと、上部電極107の端子部107bとを露出させる。パターニングは、保護膜108の材料に応じた手順で行われる。
保護膜108が、例えば、東レ株式会社のセミコファイン(登録商標)のような非感光性ポリイミドによって形成される場合について説明する。まず、ポリイミド前駆体を含有した溶液をスピンコーティング法によって成膜し、ベークによって熱重合と溶剤除去を行って焼成成形する。その後、非感光性ポリイミド膜上にエッチングマスクを作り、エッチングマスク以外のポリイミド膜をエッチングによって除去することで、パターニングがなされる。エッチングマスクは、非感光性ポリイミド膜上への感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、およびポストベークによって形成される。
保護膜108が、例えば、東レ株式会社のフォトニース(登録商標)のような感光性ポリイミドによって形成される場合について説明する。まず、溶液をスピンコーティング法によって成膜した後、プリベークを行う。その後、マスクを用いた露光と、現像工程とを経てパターニングが行われる。ポジ型感光性ポリイミドの場合、上記マスクは、ノズル101、開口部115、下部電極106の端子部106b、および上部電極107の端子部107bに対応する部分が開口する(光が透過する)。ネガ型感光性ポリイミドの場合、上記マスクは、ノズル101、開口部115、下部電極106の端子部106b、および上部電極107の端子部107bに対応する部分が遮光される。その後、ポストベークが行われ、保護膜108が焼成成形される。
次に、保護膜108の上にカバーテープを貼り付ける。カバーテープは、例えば、シリコンウエハの化学機械研磨(Chemical Mecanical Polishing:CMP)用の裏面保護テープである。カバーテープが貼り付けられた圧力室構造体200を上下反転し、圧力室構造体200に複数の圧力室201を形成する。圧力室201は、パターニングによって形成される。
図3および4は、第1の実施形態の絶縁性の保護膜が形成されたインクジェットヘッドを示す断面図である。シリコン基板専用のDeep−RIEと呼ばれる垂直深堀ドライエッチング(例えば、国際公開第2003/030239号参照)を行い、圧力室構造体200をエッチングし、圧力室201を形成する。このとき、シリコンウエハである圧力室構造体200上に所望のパターンを形成したレジストマスクを作り、これにより、前記圧力室201が所望のパターンに形成される。レジストマスクは、感光性レジストの塗布、プリベーク、所望のパターンが形成されたマスクを用いた露光、現像、およびポストベークによって形成される。
上記エッチングに用いられるSF6ガスは、振動板104のSiO2や保護膜108のポリイミドに対してはエッチング作用を及ぼさない。そのため、圧力室201を形成する前記シリコンウエハのドライエッチングの進行は、振動板104で止まる。言い換えると、振動板104は、上記エッチングのストップ層として機能する。
なお、上述のエッチングは、薬液を用いるウェットエッチング法、プラズマを用いるドライエッチング法のような、種々の方法を用いて良い。さらに、材料によってエッチング方法やエッチング条件を変えて良い。
以上のように、振動板104上に駆動素子102およびノズル101を形成する工程から、圧力室構造体200に圧力室201を形成する工程までが、成膜技術、フォトリソグラフィエッチング技術、およびスピンコーティング法によって行われる。このため、ノズル101、駆動素子102、および圧力室201が、一つのシリコンウエハに精密かつ簡便に形成される。
次に、圧力室構造体200の第2の面200bに、インク流路構造体400を接着する。すなわち、インク流路構造体400を、エポキシ系接着剤でレジストマスク210に接着する。
次に、下部電極106の端子部106bと、上部電極107の端子部107bとを覆うように、カバーテープを保護膜108の一部に貼り付ける。当該カバーテープは樹脂によって形成され、保護膜108から容易に脱着可能である。前記カバーテープは、下部電極106の端子部106bおよび上部電極107の端子部107bに、ゴミや撥インク膜109が付着することを防止する。
次に、保護膜108上に撥インク膜109を形成する。撥インク膜109は、保護膜108上に液状の撥インク膜材料をスピンコーティングすることによって成膜される。この際、インク供給口より陽圧空気を注入する。これにより、インク流路401と繋がったノズル101から陽圧空気が排出される。この状態で、液体の撥インク膜材料を塗布すると、ノズル101の内周面に撥インク膜材料が付着することが抑制される。撥インク膜109が形成された後、前記カバーテープを保護膜108から剥がす。
次に、前記シリコンウエハを分割して、複数のインクジェットヘッド21を形成する。
インクジェットヘッド21は、インクジェットプリンタ1の内部に搭載される。下部電極106の端子部106bに、例えばフレキシブルケーブルを介して制御部が接続される。
さらに、インク流路構造体400のインク供給口およびインク排出口が、例えばチューブを介してインクタンクに接続される。
上記のように、本実施形態では、圧力室構造体200の上にノズルプレート100を作成する。しかし、ノズルプレート100を圧力室構造体200の上に作成する代わりに、圧力室構造体200の一部を、振動板104としても良い。例えば、圧力室構造体200の一方の面に駆動素子102を形成し、他方の面側から圧力室201に相当する穴を形成する。当該穴は、圧力室構造体200を貫通しない。圧力室構造体200の一方の面側には薄い層が残り、この部分が振動板104として動作する。
(作用・効果)
次に、図2を参照して、上記構成の第1の実施の形態の作用効果について説明する。第1の実施形態のインクジェットプリンタ1のインクジェットヘッド21によれば、複数のノズル101が形成されているノズルプレート100と、個々のノズル101に対応した複数の駆動素子102と、を具備する。ノズルプレート100は、複数の駆動素子102に接続し、駆動素子102に電圧を印加する共通電極である上部電極部107cと、個々の駆動素子102に電圧を印加するための個別電極である下部電極部106cと、を有する。さらに、ノズルプレート100の端部に個別電極の下部電極部106cと接続する複数の個別電極の接続端子である端子部106bを並設した並設部106fを設けている。
共通電極である上部電極部107cの接続端子である端子部107bは、振動板104の長手方向に沿って配置された端子部106bの並設部106fとの間および両端部に位置する。これにより、上部電極107の接続端子部107bを高頻度にノズルプレート100の端部へ引き出すことができる。そのため、上部電極部107cと電圧を印加するための外部素子との接続端子である端子部107bをヘッド本体の端部のみに配置した場合に比べて各駆動素子102の上部電極部107cと接続端子部107bとの距離を短縮することができる。したがって、各駆動素子102と上部電極部107cの接続端子部107bとの距離を短くすることができることによって、配線抵抗による電圧変動を軽減することができる。さらに、各駆動素子102の上部電極部107cと接続端子部107bとの間の、最長距離と最短距離との差を軽減することができる。これによって、各駆動素子102間での電圧変動差が小さくなり、駆動の安定性を保つことが可能となる。加えて、接続端子部107bが高頻度に設けられることによって電流集中を回避することができ、ショートや配線破損などの発生による歩留低下を抑制することができる。
また、本実施の形態では複数の駆動素子102を複数のグループに分割し、各グループ毎に個別電極である下部電極部106cと、共通電極である上部電極部107cとをそれぞれ配設している。ここでは、図2に示すように8個の駆動素子102を1つのグループとし、各駆動素子102のほぼ中心位置間に上部電極107の配線部107aを配置している。配線部107aの配置方向と直交する方向に下部電極106の配線部106aを延出している。ここで、下部電極106の配線部106aは、下部電極106の端子部106bの並設部106fの並設方向に対して各下部電極106の両側に配置されている。さらに、下部電極106の配線部106aは、ノズルプレート100の長手方向に隣接する他方の列の駆動素子102との間を通り、端子部106bへと引き出されている。これにより、各グループの駆動素子102を同形状で規則的に成形することができ、インクジェットヘッド21の製造を簡素化することができる。
なお、上記実施の形態では、8個の駆動素子102を1つのグループとし、すべてのグループに含まれる駆動素子102の数を同数にした例を示したが、各グループに含まれる駆動素子102の数は、必ずしも同数にする必要はなく、各グループに含まれる駆動素子102の数を変更してもよい。この場合も、各駆動素子102の上部電極部107cと接続端子部107bとの間の、最長距離と最短距離との差を軽減することができる。そのため、上部電極部107cの接続端子部107bを高頻度に形成することで、上部電極部107cの接続端子部107bと駆動素子102との間の最長距離を短縮すると同時に最長距離と最短距離の差を軽減することができ、駆動に与える影響を軽減することができる。
これらの実施形態によれば、共通電極の接続端子と駆動素子との間の最長距離を短縮することができ、各駆動素子を安定して駆動することで、安定性を高めることができるインクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]複数のノズルが形成されているノズルプレートと、個々の前記ノズルに対応した複数のアクチュエータと、を具備し、前記ノズルプレートは、複数の前記アクチュエータに接続し、前記アクチュエータに電圧を印加する共通電極と、個々の前記アクチュエータに電圧を印加するための個別電極と、を有し、複数の前記アクチュエータを複数のグループに分割し、前記各グループ毎に前記個別電極と、前記共通電極とをそれぞれ配設し、前記ノズルプレートの端部に前記個別電極と接続する複数の個別電極の接続端子を並設した並設部を設け、前記共通電極の接続端子は、前記個別電極の接続端子の並設部の外側部分と、前記個別電極の接続端子間とにそれぞれ配置したインクジェットヘッド。
[2][1]に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記個別電極は、前記アクチュエータ間を通り、前記接続端子へと引き出されるインクジェットヘッド。
[3][1]に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記ノズルプレートの前記各グループは、それぞれ前記個別電極の数が同数であるインクジェットヘッド。
[4][3]に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記個別電極の配線部は、前記個別電極の接続端子の並設方向に対して前記個別電極の両側に配置されているインクジェットヘッド。
[5][1]乃至[4]のいずれかに記載のインクジェットヘッドを有するインクジェット記録装置。