JP5856105B2 - インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

実施形態は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
振動板上に、インクを吐出するノズル、圧電素子及びアクチュエータを備えるインクジェットヘッドがある。他方、インクジェットヘッドは、全長に渡りノズルから吐出するインクの着弾位置精度を均等に保持する必要性がある。そのために、インクジェットヘッドの全長に渡りノズルからのインクの吐出角度を同じにし、ノズルから吐出するインクの着弾位置精度を均等に保持する必要があった。
特開2013−59915号公報
この発明の目的は、インクジェットヘッドの全長に渡りノズルからのインクの吐出角度を同じにし、ノズルから吐出するインクの着弾位置精度を均等に保持して、印字精度の高いインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置を提供することである。
上記課題を達成するために、実施形態のインクジェットヘッドは、第1の面にノズルを備える振動板を有し、前記第1の面と反対の第2の面に前記振動板と同じ材料で形成された反り低減層を有する基板と、前記基板の厚み方向に形成され、前記ノズルに連通し、インクを充填する圧力室と、前記振動板に設けられ圧電体を備える駆動部とを有する。
第1の実施形態のインクジェットプリンタを示す概略構成図。 第1の実施形態のインクジェットヘッドを示す概略分散斜視図。 図2のA−A´線におけるインクジェットヘッドの概略断面図。 第2の実施形態のインクジェットヘッドを示す概略断面図。 第3の実施形態のインクジェットヘッドを示す概略断面図。 第4の実施形態のインクジェットヘッドを示す概略断面図。 第5の実施形態のインクジェットヘッドを示す概略断面図。
以下実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態のインクジェット記録装置について図1乃至図3を参照して説明する。図1はインクジェット記録装置であるインクジェットプリンタ10の一例を示す。図1に示すインクジェットプリンタ10は、記録媒体である記録紙Pを搬送しながら画像形成等の各種処理を行う。インクジェットプリンタ10は、外郭を構成する筐体10a、給紙カセット11、排紙トレイ12、保持ローラ13、搬送部である給紙搬送部14、反転部16及び排紙搬送部17を備える。インクジェットプリンタ10は、保持ローラ13の周囲に保持装置18、画像形成部20、剥離装置21及びクリーニング装置22を備える。
給紙カセット11は、プリント前の記録紙Pを収容する。排紙トレイ12は画像形成後に筐体10aから排紙される記録紙Pを収容する。給紙搬送部14は、給紙カセット11から取り出した記録紙Pを保持ローラ13に給紙する。
保持ローラ13は、導体であるたとえばアルミニウムの円筒フレーム13aの表面に、薄い絶縁層13bを供える。円筒フレーム13aは接地される。保持ローラ13は、表面に記録紙Pを保持した状態で矢印s方向に回転して、記録紙Pを搬送する。保持装置18は、記録紙Pを保持ローラ13に押圧する押圧ローラ18aと、帯電による静電気力で記録紙Pを保持ローラ13に吸着させる帯電ローラ18bを備える。
画像形成部20は、例えばインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kを備える。インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、それぞれシアン、マゼンダ、イエロ、ブラックのインクを吐出して、保持ローラ13表面に保持される記録紙Pに、所望の画像をプリントする。
剥離装置21は、除電チャージャ21aと剥離爪21bを備える。剥離チャージャ21aは、記録紙Pに電荷を供給して記録紙Pを除電する。剥離爪21bは、記録紙Pを保持ローラ13の表面から剥離する。プリントを終了していれば、剥離装置21は、保持ローラ13から剥離した記録紙Pを、排紙搬送部17により排紙トレイ12に排紙する。両面プリントする場合は、剥離装置21は、保持ローラ13から剥離した記録紙Pを、反転部16で反転し、再び保持ローラ13に供給する。反転部16は、例えば記録紙Pの前後方向を逆にスイッチバックさせる反転経路16aを備え、保持ローラ13から剥離した記録紙Pを反転する。クリーニング装置22は、保持ローラ13表面をクリーニングする。
画像形成部20のインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kについて述べる。インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kはそれぞれ使用するインクが異なるものの同じ構成である。したがってシアンのインクジェットヘッド20Cについて詳述し、マゼンダ、イエロ、ブラックのインクジェットヘッド20M、20Y、20Kについては説明を省略する。
インクジェットヘッド20Cは、記録紙Pの搬送方向と直交する方向に延びる細長い形状を有する。インクジェットヘッド20Cは、図2及び図3に示すように、ノズルプレート100、圧力室構造体200及びインク流路構造体300を備える。インクジェットヘッド20Cは、インクタンク23、制御部24に接続する。
インクジェットヘッド20Cは、インクタンク23から供給されるインクを、インク流路構造体300を介して圧力室構造体200の圧力室210に充填する。インクジェットヘッド20Cは、圧力室210のインクを、ノズルプレート100に形成される複数のノズル110から、インク滴としてそれぞれ吐出して、記録紙Pに画像を形成する。複数のノズル110は、ノズルプレート100に例えば二列に配列される。ノズルプレート100の隣接するノズル110の中心間距離を、たとえば長手方向において340μmとし、短手方向において240μmとする。
インク流路構造体300は、インク供給口310、インク流路320及びインク排出口330を備える。インク流路構造体300は、インク供給口310に供給されインク流路320から圧力室210に流入し、インク流路320内のインクをインク排出口330からインクタンク23に排出する。インクジェットヘッド20Cは、インクタンク23とインク流路320との間でインクを循環して、インクの温度を一定に保ち、熱によるインクの変質を抑制する。
ノズルプレート100は、振動板120上に、駆動部である駆動素子130、保護層である保護膜140及び撥インク膜150を備える。振動板120は、面状の駆動素子130の動作により厚み方向に変形する。インクジェットヘッド20Cは、振動板120の変形により圧力室構造体200の圧力室210内に発生する圧力変化によって、ノズル110に供給されたインクを吐出する。
振動板120は、例えば圧力室構造体200と一体に形成される。圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理すると、シリコンウエハ201の表面にSiO(酸化シリコン)膜が形成される。振動板120は、酸素雰囲気で加熱処理して形成されるシリコンウエハ201表面の厚さ4μmのSiO(酸化シリコン)膜を用いる。振動板120は、シリコンウエハ201表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。
振動板120の膜厚は、1〜50μmの範囲が好ましい。振動板120は、SiO(酸化シリコン)膜に代えて、SiN(窒化シリコン)等の半導体材料、或いは、Al(酸化アルミニウム)等を用いることもできる。
駆動素子130は、各ノズル110毎に複数在り、圧電体である圧電体膜132をはさんで下部電極131及び上部電極133を備える。駆動素子130は、下部電極131と、上部電極133とを絶縁する絶縁膜134を備える。下部電極131を例えば共通電極とした場合、上部電極133を駆動素子130毎の配線電極とする。上部電極133を共通電極とし、下部電極131を配線電極としても良い。駆動素子130は、ノズル110を囲む円環状である。駆動素子130の形状は限定されず、例えば円環の一部を切り欠いたC字状でも良い。
下部電極131は、円形の複数のノズル110と同軸の円形の複数の電極部131aをそれぞれ備える。例えば、ノズル110の直径を20μmとし、電極部131aの外径を172μmとする。電極部131aの内径は例えば42μmとする。下部電極131は、複数の電極部131aを接続し、ノズルプレート100の短手方向に伸びる配線部131bを備え、配線部131b端部に二つの端子部131cを備える。
駆動素子130は、電極部131a上に例えば厚さ1μmの圧電性材料である、PZT(Pb(Zr,Ti)O:チタン酸ジルコン酸鉛)からなる圧電体膜132を備える。圧電体膜132は、例えばノズル110と同軸であって、電極部131aより大きい外径が176μmであって内径が38μmの円環状である。圧電体膜132の膜厚は、概ね1〜5μmの範囲となる。圧電体膜132は、例えばPTO(PbTiO:チタン酸鉛)、PMNT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO)、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiO)、ZnO、AlN等の圧電材料を用いることもできる。
圧電体膜132は、厚み方向に分極を発生する。分極と同じ方向の電界を圧電体膜132に印加すると、圧電体膜132は、電界方向と直交する方向に伸縮する。言い換えると、圧電体膜132は、膜厚に対して直交する方向に収縮し或いは伸長する。
駆動素子130の上部電極133は、圧電体膜132上にノズル110と同軸であって、圧電体膜132より大きい円形の電極部133aを備える。電極部133aを、例えば外径180μm、内径を34μmに形成する。上部電極133は、各電極部133aから例えばノズルプレート100の短手方向に伸びる複数の配線部133bと、配線部133b端部の端子部133cを備える。複数の端子部133cは、下部電極131の二つの端子部131cの間に並んで配置される。制御部24は、配線部133bへの電圧のオン/オフを制御する。
下部電極131は、例えばスパッタリング法によりTi(チタン)とPt(白金)を積層して厚さ0.5μmに形成する。下部電極131の膜厚は、概ね0.01〜1μmの範囲となる。下部電極131は、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Au(金)等の他の材料を使用できる。下部電極131は、各種金属を積層して使用することもできる。
上部電極133は、Pt薄膜で形成した。薄膜の成膜はスパッタリング法を用い、膜厚0.5μmとした。上部電極133の他の電極材料として、Ni、Cu、Al、Ti、W、Mo、Auなどを利用することも可能である。他の成膜法として、蒸着、鍍金を用いることも可能である。複数の配線電極103の望ましい膜厚は0.01から1μmである。
絶縁膜134は、下部電極131と圧電体膜132上に部分的に形成される。絶縁膜134は、例えば、厚さ0.2μmのSiO(酸化シリコン)を用いる。
ノズルプレート100は、駆動素子130を保護する例えばポリイミドの保護膜140を備える。保護膜140は、振動板120のノズル110に連通するインク通過部141を備える。インク通過部141は、振動板120のノズル110の直径と同じ20μmである。
保護膜140は、他の樹脂またはセラミックス等の他の絶縁性の材料を利用することもできる。他の樹脂として、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、オイルエーテルサルフォン等がある。セラミックスとして、例えばジルコニア、炭化シリコン、窒化シリコン等がある。保護膜140の膜厚は、概ね3〜50μmの範囲にある。
更に保護膜140の材料選択においては、振動板120の材料とヤング率が大きく異なる、即ち振動板120と保護膜140のヤング率の差が大きい材料が望ましい。板形状の変形量は、板材料のヤング率と板厚が影響する。同じ力がかかった場合でも、ヤング率が小さい程、板厚が薄い程変形が大きい。実施形態においては、振動板120のSiO2膜のヤング率は80.6GPa、保護膜140のポリイミド膜のヤング率は10.9GPaであり、ヤング率は69.7GPaの差がある。この理由について説明する。
本実施の形態のインクジェットヘッド20Cは、駆動素子130が振動板120と保護膜140に挟まれた構造となり、駆動素子130に電界をかけて駆動素子130が電界方向と直交する方向に伸びた場合、振動板120は圧力室210側に対して凹形状に変形する力が負荷される。反対に、保護膜140は圧力室210側に対して凸形状に変形する力が負荷される。駆動素子130が電界方向と直交する方向に縮んだ場合は、振動板120は圧力室210側に対して凸形状、保護膜140は圧力室210側に対して凹形状に変形する力が負荷される。即ち、駆動素子130が電界方向と直交する方向に伸縮すると、振動板120と保護膜140は正反対の向きに変形する力が負荷される。それ故、振動板120と保護膜140の膜厚とヤング率が同じ場合、駆動素子130に電圧印加しても、振動板120と保護膜140は正反対の方向に同じ量変形する力が負荷されるため、ノズルプレート100が変形しないので、インク吐出しない。
本実施の形態においては、保護膜140のポリイミド膜の方が、振動板120のSiO2膜よりヤング率が小さいため、同じ力に対して保護膜140の方が変形量は大きくなる。本実施の形態の構造においては、駆動素子130が電界方向と直交する方向に伸びた場合、ノズルプレート100は圧力室210側に対して凸形状に変形して、圧力室201の容積が縮まる(保護膜140が圧力室210側に対して凸形状に変形する量の方が大きいため)。反対に、駆動素子130が電界方向と直交する方向に縮んだ場合は、ノズルプレート100は圧力室210側に対して凹形状に変形して、圧力室201の容積が広がる(保護膜140が圧力室210側に対して凹形状に変形する量の方が大きいため)。
駆動素子130への電圧の印加により、振動板120は変形して圧力室210の容積を変化させる。圧力室210の容積が拡大すると、圧力室210内のインクに負圧を生じ、インク流路320から圧力室210にインクが流入する。圧力室210の容積が縮小すると、圧力室210内のインクは、加圧されてノズル110から吐出する。
振動板120と保護膜140のヤング率の差が大きい程、同じ電圧をアクチュエータに印加した時、振動板の変形量の差が大きくなる。そのため、振動板120と保護膜140のヤング率の差が大きい方が、より低い電圧条件にてインク吐出が可能となる。
尚、上述したように、板形状の変形量は、板材料のヤング率だけでなく、板厚も影響する。そのため、振動板120と保護膜140の変形量に差をつける場合は、材料のヤング率だけでなく、それぞれの膜厚も考慮する必要がある。振動板120と保護膜140の材料のヤング率が同じでも、膜厚に違いがあれば、高電圧条件下ではあるが、インク吐出可能である。
その他、保護膜140の材料選択においては、耐熱性、絶縁性(導電率の高いインクを使用時に駆動素子130を駆動時に、上部電極133と接触することによるインク変質の影響を考慮)、熱膨張係数、平滑性、インクに対する濡れ性も考慮して行っている。
ノズルプレート100は、保護膜140を覆う撥インク膜150を備える。撥インク膜150は、インクをはじく特性のある例えばシリコーン系樹脂をスピンコーティングして形成される。撥インク膜150は、フッ素含有樹脂等のインクをはじく特性を有する材料で形成することもできる。撥インク膜150スピンコートした場合の、駆動素子130以外の領域の撥インク膜150の厚さは、例えば1μmである。
シリコンウエハ201を用いて形成される、厚さ525μmの圧力室構造体200は、振動板120と対向する面に、反り低減層である反り低減膜220を備える。圧力室構造体200は、反り低減膜220を貫通して振動板120位置に達し、ノズル110と連通する圧力室210を備える。圧力室210の振動板120が配置される側を第1の面とし、反り低減膜220が配置される側を第2の面とする。
圧力室構造体200の反り低減膜220側には例えばエポキシ系接着剤によりインク流路構造体300が接着される。圧力室構造体200の圧力室210は、反り低減膜220側で、インク流路構造体300のインク流路320に連通する。圧力室210は、例えばノズル110と同軸上に位置する直径240μmの円形に形成される。圧力室210の形状、及びサイズは限定されない。
但し第1の実施形態のように、圧力室210とインク流路320との間に圧力室210より穴径の小さいインク供給孔が形成されたセパレートプレートを備えない場合は、圧力室210の幅方向のサイズDより、深さ方向のサイズLを大きくすることが好ましい。深さ方向のサイズL>幅方向のサイズDとすることにより、ノズルプレート100の振動板120の振動により、圧力室210内のインクにかかる圧力が、インク流路320に逃げるのを遅らせる。尚、インクジェットヘッド20Cは、圧力室210とインク流路320との間にセパレートプレートを備えて、圧力室210内のインクにかかる圧力が、インク流路320に逃げないようにする構造でも良い。
反り低減膜220は、例えば圧力室構造体200を製造するためのシリコンウエハ201を酸素雰囲気で加熱処理して、シリコンウエハ201の表面に形成される厚さ4μmのSiO(酸化シリコン)膜を用いる。反り低減膜220は、シリコンウエハ201の表面にCVD法(化学的気相成膜法)でSiO(酸化シリコン)膜を成膜して形成しても良い。反り低減膜220は、インクジェットヘッド20Cに生じる反りを低減する。
一般にインクジェットヘッドは、例えば成膜プロセスを用いて基板にインクジェットヘッドの構成部材を作成する場合に、反りを生じる恐れがある。インクジェットヘッドの反りは、基板である例えばシリコンウエハと構成部材の膜応力が異なる場合に、基板の片面のみに構成部材を形成すると、生じる恐れがある。インクジェットヘッドの反りは、構成部材の膜厚が大きいほど反り量が大きくなる。
インクジェットヘッドに反りが生じると、インクジェットヘッドの長手方向の両側にあるノズルからのインクの吐出角度(吐出方向)が所望する方向に対してずれる恐れがある。インクの吐出角度がずれた場合、インクの着弾位置がずれて、インクジェットヘッドの印字精細度が低下して画質低下を生じるおそれがある。
また、インクジェットヘッドに反りが生じた場合に、力により強制的に反りを補正すると、インクジェットヘッド内に応力歪が残る。このためインクジェットヘッドを使用する間には、インクジェットヘッド内の応力歪が開放されて、インクジェットヘッドに亀裂を生じて破損する恐れがある。
更に、インクジェットヘッドの製造時にあっては、基板が反っていると、基板の装置への固定不良による不具合を生じることもある。
反り低減膜220は、シリコンウエハ201の振動板120側と対向する側にあって、シリコンウエハ201の反りを低減する。反り低減膜220は、圧力室構造体200と振動板120との膜応力の違い更には、駆動素子130の各種構成膜の膜応力の違い等によるシリコンウエハ201の反りを低減する。反り低減膜220は、成膜プロセスを用いてインクジェットヘッド20Cの構成部材を作成する場合に、インクジェットヘッド20Cが反るのを低減する。
反り低減膜220の材料及び膜厚等は振動板120と異なるものであっても良い。但し、反り低減膜220を振動板120と同じ材料で同じ膜厚とすれば、シリコンウエハ201両面にての振動板120との膜応力の違いと反り低減膜220との膜応力の違いは同じになる。反り低減膜220を振動板120と同じ材料で同じ膜厚とすれば、インクジェットヘッド20Cに生じる反りをより効果的に低減する。
インクジェットヘッド20Cの製造方法の一例について述べる。インクジェットヘッド20Cは、先ず圧力室構造体200を形成するためのシリコンウエハ201両面の全面に、SiO(酸化シリコン)膜を成膜する。シリコンウエハ201の一方の面に形成したSiO(酸化シリコン)膜を振動板120として用いる。シリコンウエハ201の他方の面に形成したSiO(酸化シリコン)膜を反り低減膜220として用いる。
例えばバッチ式の反応炉を用いて、酸素雰囲気で加熱処理する熱酸化法によって、例えば円板状のシリコンウエハ201の両面にSiO(酸化シリコン)膜を成膜する。
成膜プロセスにより、円板状のシリコンウエハ201に複数個のノズルプレート100及びノズルプレート100と一体の圧力室210を形成する。ノズルプレート100及び圧力室210を形成後、円板状のシリコンウエハ201を切って、ノズルプレート100と一体の、複数の圧力室構造体200に分離する。円板状のシリコンウエハ201を用いて、複数個のインクジェットヘッド20Cを一度に量産できる。シリコンウエハ201は円板状でなくても良い。1枚の矩形のシリコンウエハ201を用いて、一体のノズルプレート100と圧力室構造体200とを個別に形成しても良い。
シリコンウエハ201に形成される振動板120を、エッチングマスクを用いてパターニングしてノズル110を形成する。パターニングは、エッチングマスクの材料として、感光性レジストを用いる。振動板120表面に感光性レジストを塗布後、露光及び現像して、ノズル110に相当する開口部をパターニングしたエッチングマスクを形成する。エッチングマスク上から振動板120を圧力構造体200に達するまでドライエッチングして、ノズル110を形成する。振動板にノズル110を形成後、例えば剥離液を用いてエッチングマスクを除去する。
次にノズル110が形成された振動板120の表面に、ノズル110、駆動素子130、保護膜140および撥インク膜150を形成する。ノズル110、駆動素子130、保護膜140および撥インク膜150の形成は、成膜工程と、パターニングする工程を繰り返す。成膜工程は、スパッタリング法或いはCVD法等により行う。パターニングは、例えば感光性レジストを用いて膜上にエッチングマスクを形成し、膜材料をエッチングした後、エッチングマスクを除去することで行う。
振動板120に、下部電極131の材料として、膜厚0.45μmのTi(チタン)膜と膜厚0.05μmのPt(白金)膜をスパッタリング法により順に成膜する。Ti(チタン)及びPt(白金)膜は、蒸着法或いは鍍金により形成しても良い。成膜したTi(チタン)及びPt(白金)上に電極部131a、配線部131b及び端子部131cを残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Ti(チタン)及びPt(白金)の膜を除去し、下部電極131を形成する。
下部電極131を形成した振動板120上に、圧電体膜132の材料として、膜厚1μmのPZT(Pb(Zr,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)膜を基板温度350℃にてRFマグネトロンスパッタリング法により成膜する。PZT膜を成膜後、500℃で3時間熱処理することによりPZT膜は、良好な圧電性能を得る。PZT膜は、CVD(化学的気相成長法)、ゾルゲル法、AD(エアロゾルデポジション)法、水熱合成法により形成しても良い。
成膜したPZT膜上に、圧電体膜132を残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、PZT膜を除去し、圧電体膜132を形成する。
圧電体膜132を形成した振動板120上に、絶縁膜134の材料として、膜厚0.2μmのSiO(酸化シリコン)膜を成膜する。SiO(酸化シリコン)膜は、例えばCVD法により低温成膜して良好な絶縁性を得る。成膜したSiO(酸化シリコン)膜をパターニングして絶縁膜134を形成する。絶縁膜134は、パターニングのばらつきによる不具合を抑制するために、圧電体膜132を部分的に覆う。圧電体膜132を部分的に覆う絶縁膜134は、圧電体膜132の変形量を阻害しない程度とした。
絶縁膜134を形成した振動板120上に、上部電極133の材料として、膜厚0.5μmのPt(白金)膜をスパッタリング法により成膜する。成膜したPt(白金)膜上に電極部133a、配線部133b及び端子部133cを残すエッチングマスクを作る。エッチングマスク上からエッチングをして、Pt(白金)の膜を除去し、上部電極133を形成する。
上部電極133を形成した振動板120上に、膜厚4μmの保護膜140の材料であるポリイミド膜を成膜する。ポリイミド膜は、振動板120上にポリイミド前駆体を含む溶液をスピンコーティング法により塗布し、ベークによる熱重合及び溶剤を除去して成膜する。成膜したポリイミド膜をパターニングして、インク通過部141、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する保護膜140を形成する。
保護膜140上に、例えばシリコンウエハ201のCMP(化学機械研磨)用の裏面保護テープを、カバーテープとして貼り付けて保護膜140を保護し、圧力室構造体200をパターニングする。シリコンウエハ201の反り低減膜220上に、圧力室210の直径240μmを露出するエッチングマスクを形成し、まず、反り低減膜220をCF4(4フッ化カーボン)とO2(酸素)の混合ガスによってドライエッチングする。次に、例えばSF(6フッ化シリコン)とO2の混合ガスで、シリコンウエハ専用の垂直深堀ドライエッチングをする。ドライエッチングは、振動板120に当接する位置で止め、圧力室構造体200に圧力室210を形成する。
圧力室210を形成するエッチングは、薬液を用いるウェットエッチング法、プラズマを用いてのドライエッチング法等で行っても良い。エッチング終了後、エッチングマスクを除去する。圧力室210を形成後、圧力室構造体200の反り低減膜220側に、インク流路構造体300を接着する。
圧力室構造体200にインク流路構造体300を接着した後、保護膜140上に貼り付けたカバーテープに紫外線を照射して接着性を弱めてから、カバーテープを保護膜140から剥がす。
保護膜140が形成されず、振動板120上で露出される下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cに電極端子カバーテープを貼る。電極端子カバーテープは、例えば容易に剥がせる樹脂性の粘着テープを用いる。保護膜140上に撥インク膜150の材料であるシリコーン系樹脂膜を膜厚1μmにスピンコーティング法により成膜する。
撥インク膜150を成膜する間、インク流路構造体300のインク供給口310から陽圧空気を注入する。インク供給口310に陽圧空気を注入することにより、インク流路320及び圧力室210を介してノズル110から陽圧空気が排出される。ノズル110から陽圧空気を排出しながら撥インク膜150を成膜して、ノズル110の内周面に撥インク膜150の材料が付着するのを抑制する。保護膜140上に撥インク膜150を成膜後、電極端子カバーテープを剥がし、円板状のシリコンウエハ201を切って、複数個のインクジェットヘッド20Cに分離形成する。マゼンダ、イエロ、ブラックのインクジェットヘッド20M、20Y、20Kもシアンのインクジェットヘッド20Cと同様に形成する。
夫々に形成したインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kをインクジェットプリンタ10の画像形成部20に搭載する。上部電極133の端子部133cを、例えばフレキシブルケーブルを介して制御部24に接続する。インク流路構造体300のインク供給口310及びインク排出口330を、例えばチューブを介してインクタンク23に接続する。
インクジェットプリンタ10の給紙カセット11に記録紙Pをセットしてプリントを開始すると、給紙搬送部14は、保持装置18と保持ローラ13間に記録紙Pを搬送する。矢印s方向に回転する保持ローラ13は、保持装置18に付与された静電気力により記録紙Pを画像形成部20に搬送する。画像形成部20のインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、制御部24の制御によりそれぞれノズル110からインクを吐出して、記録紙Pにプリント画像を形成する。
インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、反り低減膜220を備えていることから、長手方向における反りを低減される。反りを低減されたインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、長手方向の両側にあるノズル110から、所望する吐出角度でインクを吐出する。インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kのノズル110は、長手方向の全長に渡り均等の吐出角度を保持する。インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kによる記録紙P上のインクの着弾位置は、長手方向の全長に渡り所望する位置を保持する。
反りを低減されたインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、画像形成部20でのプリント時に、長手方向の全長に渡り均等な印字精細度を実現し、良好なプリント画像を実現する。
インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kによるプリント画像形成後、保持ローラ13は記録紙Pを剥離装置21に搬送する。剥離装置21により保持ローラ13から剥離された記録紙Pは、プリントを終了していれば、剥離爪21bにより排紙搬送路17方向に分岐される。排紙搬送路17は記録紙Pを排紙トレイ12に排紙し、プリント操作を終了する。
記録紙Pの裏面にプリントをする場合は、保持ローラ13から剥離された記録紙Pは、剥離爪21bにより反転部16方向に分岐される。反転部16で反転された記録紙Pは、保持装置18と保持ローラ13間に再度搬送され、裏面のプリント終了後、排紙トレイ12に排紙され、プリント操作を終了する。
第1の実施形態によれば、インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kの夫々の圧力室構造体200は、振動板120と対向する側に反り低減膜220を備える。圧力室構造体200が、反り低減膜220を備えることから、成膜プロセスを繰り返して圧力室構造体200にノズルプレート100を形成しても、インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kが、長手方向に反るのを低減できる。
反りを低減されたインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは長手方向の全長に渡りノズル110からのインクの吐出角度を均等に得られる。インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、長手方向の全長に渡りインクを所望する着弾位置に吐出出来る。インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kは、長手方向の全長に渡り均等な印字精細度を得られ、良好なプリント画像を提供する。
更にインクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kの反りを強制的に補正した場合に生じる内部の応力歪により、インクジェットヘッドが破損するのを防止して、インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kの長寿命化を得る。
第1の実施形態の反り低減膜220は、振動板120と同じ材料であり、同じ膜厚である。圧力室構造体200と振動板120との膜応力の違いと、圧力室構造体200と反り低減膜220との膜応力の違いが同じであり、圧力室構造体200の両面に生じる膜応力はほぼ同じとなる。反り低減膜220と振動板120とを同じ材料且つ同じ膜厚とすることにより、インクジェットヘッド20C、20M、20Y、20Kが反るのをより確実に低減する。
第1の実施形態では、シリコンウエハ201を熱酸化法で処理して、シリコンウエハ201の両面にSiO(酸化シリコン)膜を得る。シリコンウエハ201の一方の面に形成したSiO(酸化シリコン)膜を振動板120とし、シリコンウエハ201の他方の面に形成したSiO(酸化シリコン)膜を反り低減膜220とする。シリコンウエハ201の両面に振動板120と反り低減膜220とを同時に製造でき、製造工程を簡素化する。
(第2の実施形態)
第2の実施形態のインクジェットヘッド400を、図4を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態において、振動板にノズルを形成するのではなく、保護膜にノズルを形成する。第2の実施形態にあって、前述の第1の実施形態で説明した構成と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図4に示すように、インクジェットヘッド400のノズルプレート410の振動板120は、直径d1のノズル420と同軸位置に開口である直径d2の周孔430を備える。周孔430の直径d2は、ノズル420の直径d1より大きい。ノズルプレート410は、駆動素子130が形成される振動板120上に保護膜440を備える。保護膜440は、周孔430の内周面を覆い、圧力室210に連通する、保護膜440に、例えば直径20μmのノズル420を形成する。周孔430は、保護膜440を介して圧力室210と連通する。
インクジェットヘッド400の製造時、シリコンウエハ201と一体の振動板120を、エッチングマスクを用いてパターニングして周孔430を形成する。振動板120に駆動素子130を形成した上にポリイミド膜を成膜する。ポリイミド膜をパターニングして、ノズル420を備える保護膜440を形成する。保護膜440は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する。
例えば第1の実施形態では、同軸且つ同径のノズル110とインク通過部141とを夫々にパターニングしていることから、ノズル110とインク通過部141の形状が不均一になる恐れがある。ノズル110とインク通過部141とが不均一である場合、ノズル110から吐出したインク滴の着弾位置がずれる恐れがある。これに対して、第2の実施形態のノズル420は、保護膜440に施す1回のパターニングにより形成する。したがってノズル420の内周面を均一に形成出来る。ノズル420から吐出したインク滴の着弾位置がずれる恐れがなく、インクジェットヘッド400を用いたプリント時に、高い印字精度を得る。
第2の実施形態によれば、インクジェットヘッド400は、第1の実施形態と同様、反り低減膜220を備えることから、インクジェットヘッド400が長手方向に反るのを低減できる。インクジェットヘッド400は長手方向の全長に渡り均等なインク吐出角度を得られ、均等な印字精細度を得られることから、良好なプリント画像を提供する。
更にインクジェットヘッド400は、振動板120の周孔430の内周面を覆う保護膜440に、1回のパターニングによりノズル420を形成する。圧力室210に連通するノズル420の内周面を均一に出来、ノズル420から吐出するインク滴の着弾位置精度を良好に保持する。プリント時に、インクジェットヘッド400は高い印字精度を実現する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態のインクジェットヘッド500を、図5を参照して説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態において、保護膜に、ノズルと同軸であってノズルの直径より大きいインク通過部を形成する。第3の実施形態にあって、前述の第1の実施形態で説明した構成と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すように、インクジェットヘッド500のノズルプレート510は、振動板120上に、直径d1のノズル110及び駆動素子130を備え、更に保護膜540及び撥インク膜550を備える。保護膜540は、ノズル110と同軸であって、ノズル110の直径より大きい直径d3のインク通過部541を備える。例えば、ノズル110の直径d1を20μmとし、インク通過部541の直径d3を30μmとする。ノズルプレート510は、保護膜540上に撥インク膜550を備える。撥インク膜550は、保護膜540のインク通過部541表面を覆い、ノズル110に連通する。インク通過部541は、撥インク膜550を介してノズル110と連通する。
インクジェットヘッド500の製造時、ノズル110を有する振動板120の駆動素子130を形成した上にポリイミド膜を成膜する。ポリイミド膜をパターニングしてインク通過部541を備える保護膜540を形成する。保護膜540は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する。ノズル110から陽圧空気を排出しながら保護膜540上に撥インク膜550を成膜する。撥インク膜550は、ノズル110の内周面に付着することなく、保護膜540表面を覆う。
例えば第1の実施形態では、同軸且つ同径のノズル110とインク通過部141のパターニングが不均一である場合に、ノズル110から吐出したインク滴の着弾位置がずれる恐れがある。これに対して、インク通過部541の直径がノズル110の直径より大きい第3の実施形態では、ノズル110とインク通過部541のパターニングが多少不均一である場合でも、インク滴の着弾位置がずれる恐れがない。
第3の実施形態によれば、インクジェットヘッド500は、第1の実施形態と同様、反り低減膜220を備えることから、インクジェットヘッド500が長手方向に反るのを低減できる。インクジェットヘッド500は長手方向の全長に渡り均等なインク吐出角度を得られ、均等な印字精細度を得られることから、良好なプリント画像を提供する。
更にインクジェットヘッド500は、保護膜540に形成するインク通過部541の直径をノズル110の直径より大きく形成する。ノズル110とインク通過部541のパターニングがずれたとしても、ノズル110から吐出するインク滴は、インク通過部541の影響を受けない。ノズル110からのインク滴は、着弾位置精度を良好に保持し、プリント時に、インクジェットヘッド500は高い印字精度を実現する。
(第4の実施形態)
第4の実施形態のインクジェットヘッド600を、図6を参照して説明する。第4の実施形態は、第3の実施形態において、保護膜に形成するインク通過部の内周面を傾斜して形成する。第4の実施形態にあって、前述の第3の実施形態で説明した構成と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図6に示すように、インクジェットヘッド600のノズルプレート610は、振動板120上に、直径d1のノズル110及び駆動素子130を備え、更に保護膜640及び撥インク膜650を備える。保護膜640の材料はネガ型感光性ポリイミドとする。保護膜640は、ノズル110と同軸であって、振動板120側の直径がノズル110の直径より大きい直径d3の断面が台形状のインク通過部641を備える。例えば、ノズル110の直径を20μmとし、インク通過部641の振動板120側の直径を30μmとする。インク通過部641は、撥インク膜650側に広くなる断面が台形状に形成される。撥インク膜650は、保護膜640のインク通過部641表面を覆い、ノズル110に連通する。インク通過部641は、撥インク膜650を介してノズル110と連通する。
インクジェットヘッド600の製造時、ノズル110を有する振動板120の駆動素子130を形成した上にネガ型感光性ポリイミド膜を、例えば膜厚3μmに成膜する。ネガ型感光性ポリイミド膜をパターニングしてインク通過部641を備える保護膜640を形成する。保護膜640は、下部電極131の端子部131c及び上部電極133の端子部133cを露出する。ノズル110から陽圧空気を排出しながら保護膜640上に撥インク膜650を成膜する。撥インク膜650は、ノズル110の内周面に付着することなく、保護膜640表面を覆う。
一般にネガ型感光性ポリイミド膜のパターニング時、露光々は、エッチングマスクに対して極力垂直方向に照射される。しかしながら、エッチングマスクを通過後、露光々はネガ型感光性ポリイミド膜内で平面方向に広がる。露光々がネガ型感光性ポリイミド膜内で平面方向に広がると、ネガ型感光性ポリイミド膜の膜厚が厚い場合は、エッチング面が傾斜する恐れがある。
インク通過部641の断面形状を、撥インク膜650側に広くなる断面が台形状とし、更にインク通過部641の振動板120側の直径d3をノズル110の直径d1より大きくする。インク通過部641のパターニング時にエッチング面が傾斜した場合でも、インク通過部641の開口を広くして、ノズル110から吐出したインク滴の着弾位置がインク通過部641の影響によりずれるのを防止する。
第4の実施形態によれば、インクジェットヘッド600は、第3の実施形態と同様、反り低減膜220を備えることから、インクジェットヘッド600が、長手方向に反るのを低減できる。インクジェットヘッド600は長手方向の全長に渡り均等なインク吐出角度を得られ、均等な印字精細度を得られることから、良好なプリント画像を提供する。
更にインクジェットヘッド600は、保護膜640に形成するインク通過部641を、断面形状が、撥インク膜650側に広くなる台形状に形成する。インク通過部641の振動板120側の直径をノズル110の直径より大きく形成する。パターニング時に、インク通過部641のエッチング面が傾斜した場合でも、ノズル110から吐出するインク滴は、インク通過部641の影響を受けない。ノズル110からのインク滴は、着弾位置精度を良好に保持し、プリント時に、インクジェットヘッド600は高い印字精度を実現する。
(第5の実施形態)
第5の実施形態のインクジェットヘッド700を、図7を参照して説明する。第5の実施形態は、第1の実施形態と駆動素子の構造が異なる。第5の実施形態にあって、前述の第1の実施形態で説明した構成と同一構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図7に示すように、インクジェットヘッド700のノズルプレート710は、振動板120上に駆動素子720を備える。駆動素子720は、下部電極721の電極部721a、圧電体膜722及び上部電極723の電極部723aを備える。電極部721a、圧電体膜722及び電極部723aは、ノズル110と同軸であり、同じ大きさの円形パターンである。ノズルプレート710は、下部電極721と、上部電極723とを絶縁する絶縁膜730を備える。
絶縁膜730は、駆動素子720領域にあっては、電極部721a、圧電体膜722及び電極部723aの周縁を覆う。絶縁膜730は、下部電極721の配線部721bを覆う。絶縁膜730は、上部電極723の配線部723b領域で振動板120を覆う。絶縁膜730は、上部電極723の電極部723aと配線部723bを電気的に接続するコンタクト部730aを備える。
圧電体膜722に用いるPZT膜内のチタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zi)、酸素(O3)等の原子配列は、下地層の下部電極721のPt(白金)の原子配列によって規制される。言い換えれば、PZT膜の原子配列は、下地層の原子配列に依存する。PZT膜の原子配列が規制されることにより、PZT膜は膜厚方向に沿って分極を発生する。
例えば第1の実施形態では、下部電極131の電極部131a上に、電極部131aの直径より少し大きい直径のPZTの圧電体膜132を成膜する。電極部131aの段差部である内周縁部或いは外周縁部にかかる圧電体膜132の内周縁部或いは外周縁部のPZT膜の原子配列は、電極部131aの段差部の影響を受ける。圧電体膜132のPZT膜の膜厚方向の原子配列は、内周縁部領域或いは外周縁部領域と、それ以外の領域とで異なる可能性がある。内周縁部領域或いは外周縁部領域と、それ以外の領域とで圧電体膜132の原子配列が異なる場合に、内周縁部領域或いは外周縁部領域で、圧電体膜132の分極率が低くなる可能性がある。
第5の実施形態の駆動素子720は、積層した下部電極721の電極部721aと圧電体膜722の直径が同じ円形パターンになっている。圧電体膜722は内周縁部或いは外周縁部において、電極部721aの段差部の影響を受けない。圧電体膜722の膜厚方向の原子配列は、円形パターンの全領域で同じになる。圧電体膜722は、内周縁部領域或いは外周縁部領域の分極率が低くなるおそれがなく、全領域で厚み方向に高い分極率を得る。分極率の高い圧電体膜722を備える駆動素子720は、振動板120の変形に要する駆動電圧を低減可能となる。
インクジェットヘッド700の製造時、ノズル110を有する振動板120に下部電極721、圧電体膜722及び上部電極723の材料を成膜する。下部電極721の材料膜を残して、上部電極723の電極部723aと圧電体膜722とを同じエッチングマスクを用いてパターニングする。下部電極721のエッチングマスクを用いて、下部電極721をパターニング後、絶縁膜730の材料を成膜する。絶縁膜730をパターニング後、上部電極723の材料を成膜し、上部電極723の配線部723b及び端子部723cをパターニングして、駆動素子720を形成する。
第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様、反り低減膜220を備えることから、インクジェットヘッド700が、長手方向に反るのを低減できる。インクジェットヘッド700は長手方向の全長に渡り均等なインク吐出角度を得られ、均等な印字精細度を得られることから、良好なプリント画像を提供する。
更に第5の実施形態によれば、インクジェットヘッド700の駆動素子720の圧電体膜722は、下部電極721の電極部721aと同じ大きさの円形パターンであって、同軸に積層される。圧電体膜722は、電極部721aの周縁の段差部の影響を受けることがなく、内周縁部領域或いは外周縁部領域の分極率が低下しない。圧電体膜722が全領域で厚み方向に同じ分極率を得ることから、圧電体膜722の分極率を高めることが出来る。圧電体膜722の分極率を高めることにより、振動板120を駆動するために駆動素子720に供給する駆動電圧の節約を得られる。
以上説明した実施形態では、駆動部を円形としたが、駆動部の形状は限定されない。駆動部の形状は、例えばひし形或いは楕円等であっても良い。例えばひし形の駆動部を交互にずらして配置した場合、隣り合う駆動部を近接して配置できるので、駆動部の配置密度を高めることが出来る。また圧力室の形状も円形に限らず、ひし形或いは楕円形、更には矩形等であっても良い。
また、実施形態では、駆動部の中心にノズルを配置したが、圧力室のインクを吐出可能であれば、ノズルの位置は限定されない。例えばノズルを、駆動部の領域内ではなく、駆動部の外側に形成しても良い。ノズルを駆動部の外側に配置した場合には、駆動部の複数の膜材料を貫通してノズル或いはノズルに連通するインク通過部等をパターニングする必要がない。ノズルプレートの振動板更には保護膜をパターニングするのみで、ノズルを形成でき、ノズルのパターニングが容易となる。ノズルを駆動部の外側に配置した場合には、ノズルのパターニング不良により、インク滴の着弾位置がずれるのを抑制できる。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、インクジェットヘッドは、反り低減膜を備える。反り低減膜は、成膜プロセスにより基板に構成部材を作成する場合に、堆積する膜と基板との膜応力の差によりインクジェットヘッドに反りを生じるのを低減できる。反りの無いインクジェットヘッドは長手方向の全長に渡り均等なインク吐出角度を得られ、均等な印字精細度を得られることから、良好なプリント画像を提供する。
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…インクジェットプリンタ
20C、20M、20Y、20K…インクジェットヘッド
23…インクタンク
24…制御部
100…ノズルプレート
110…ノズル
120…振動板
130…駆動素子
131…下部電極
132…圧電体膜
133…上部電極
140…保護膜
200…圧力室構造体
210…圧力室
220…反り低減膜
300…インク流路構造体

Claims (6)

  1. 第1の面にノズルを備える振動板を有し、前記第1の面と反対の第2の面に前記振動板と同じ材料で形成された反り低減層を有する基板と、
    前記基板の厚み方向に形成され、前記ノズルに連通し、インクを充填する圧力室と
    前記振動板に設けられ圧電体を備える駆動部と
    するインクジェットヘッド。
  2. 第1の面に開口を備える振動板を有し、前記第1の面と反対の第2の面に前記振動板と同じ材料で形成された反り低減層を有する基板と、
    前記基板の厚み方向に形成され、前記開口に連通し、インクを充填する圧力室と
    前記振動板に設けられ圧電体を備える駆動部と、
    前記振動板上で、前記駆動部前記開口の内周面とを覆い、前記圧力室に連通するノズルを備える保護層と
    するインクジェットヘッド。
  3. 第1の面にノズルを備える振動板を有し、前記第1の面と反対の第2の面に前記振動板と同じ膜厚で形成された反り低減層を有する基板と、
    前記基板の厚み方向に形成され、前記ノズルに連通し、インクを充填する圧力室と、
    前記振動板に設けられ圧電体を備える駆動部と、
    を有するインクジェットヘッド。
  4. 第1の面に開口を備える振動板を有し、前記第1の面と反対の第2の面に前記振動板と同じ膜厚で形成された反り低減層を有する基板と、
    前記基板の厚み方向に形成され、前記開口に連通し、インクを充填する圧力室と、
    前記振動板に設けられ圧電体を備える駆動部と、
    前記振動板上で、前記駆動部と前記開口の内周面とを覆い、前記圧力室に連通するノズルを備える保護層と、
    を有するインクジェットヘッド。
  5. 前記振動板及び前記反り低減層は熱酸化膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
  6. 請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドと、
    前記インクジェットヘッドから前記インクが吐出される位置に記録媒体を搬送する搬送部とを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
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