以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本願のD−π−A型増感材について以下に説明する。
π電子共役鎖とは、電子供与性部位(D)及び電子受容性部位(A)を架橋する構造であって、π電子によって共役しているものであれば特に限定するものではないが、例えば、連結又は縮環していても良いπ共役芳香族炭化水素基又は連結又は縮環していても良いπ共役ヘテロ芳香族基を例示することができ、より具体的な例としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、ナフチルベンゼン、チオフェン、ジチオフェン、フェニルチオフェン、ベンゾチオフェン、フェニルベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フェニルジベンゾチオフェン、フラン、ジフラン、フェニルフラン、ベンゾフラン、フェニルベンゾフラン、ジベンゾフラン、フェニルジベンゾフラン等が挙げられ、上記一般式(1)で示したπ共役鎖についても好ましい例として挙げられる。
当該π電子共役鎖は、一般式(A)及び一般式(D)で表される置換基を結合してD−π−A型増感材を形成するものであり、当該一般式(A)及び(D)以外の置換基を有していてもよい。
R2a、R2b、R2c及びR2dは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。但し、R2a、R2b、R2c及びR2dのうち、同時に3つ以上が水素原子とは成り得ない。
R2a、R2b、R2c及びR2dで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができる。これらのうち、色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、フッ素原子が好ましい。
また、R2a、R2b、R2c及びR2dとしては水素原子も好ましいが、R2a、R2b、R2c及びR2dのうち、3つ以上が同時に水素原子と成ることはない。
R3は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキルオキシ基を表す。
R3で表される炭素数1〜12のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキルオキシ基のいずれでもよく、特に限定するものではないが、具体的には、メトキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、エトキシ基、2−シクロペンチルエチルオキシ基、プロピルオキシ基、1−メチルプロピルオキシ基、1−エチルプロピルオキシ基、1,1−ジエチルプロピルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、2,2−ジメチル−1−tert−ブチルプロピルオキシ基、3−シクロプロピルプロピルオキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、ブトキシ基、1−メチルブチルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、3−メチルブチルオキシ基、2−ブトキシ基、シクロブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−エチルペンチルオキシ基、2,4−ジメチルペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、2,5−ジメチルシクロペンチルオキシ基、1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンチルオキシ基、3−エチルシクロペンチルオキシ基、3−ブチルシクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、1−メチルヘキシルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、3−メチルヘキシルオキシ基、3,3−ジメチルヘキシルオキシ基、4−エチルヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−エチルシクロヘキシルオキシ基、4,4−ジメチルシクロヘキシルオキシ基、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、1−メチルヘプチルオキシ基、2−メチルヘプチルオキシ基、3−メチルヘプチルオキシ基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、ビシクロ[2.2.2]オクチルオキシ基、ノナニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基等を例示することができる。
R3については、色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、炭素数1〜12の直鎖状アルキルオキシ基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖状アルキルオキシ基がより好ましく、中でもメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、又はヘキシルオキシ基がさらに好ましい。
D−π−A型増感色素に用いられる化合物としては、特に限定するものではないが、色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、一般式(1)
(式中、R
2a、R
2b、R
2c及びR
2dは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表す。但し、R
2a、R
2b、R
2c及びR
2dのうち、同時に3つ以上が水素原子とは成り得ない。R
3は、各々独立して、炭素数1〜12のアルキルオキシ基を表す。Yはカルコゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいニクトゲン原子を表す。nは1〜5の整数を表す。)
で表されるフェノール化合物が好ましい。
R2a、R2b、R2c、R2d、及びR3の具体例、及び好ましい範囲については上述したとおりである。
Yはカルコゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいニクトゲン原子を表す。
Yで表されるカルコゲン原子としては、特に限定するものではないが、例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等を例示することができる。
Yで表されるニクトゲン原子としては、特に限定するものではないが、例えば、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子を例示することができる。これらのニクトゲン原子は炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよく、このような炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等を例示することができ、色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。
Yについては、色素増感太陽電池における増感色素として性能が良い点で、硫黄原子又は炭素数1〜6のアルキル基で置換されていても良い窒素原子であることが好ましく、硫黄原子又はメチル基で置換されていても良い窒素原子であることがより好ましい。
nは1〜5の整数を表す。合成が容易である点で、nは1又は2が好ましい。
本願発明のフェノール化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、以下で示す構造の化合物を具体的に例示することができる。
次に、本発明のフェノール化合物(1)の製造方法について説明する。
本発明のフェノール化合物(1)は、次の反応式に示される工程1により製造することができる。
(式中、R
1はtert−ブチルオキシカルボニル基又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
3、Y及びnは前記と同じ意味を表す。R
4は、各々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表す。Lは脱離基を表す。)
工程1は、スズ化合物(2a)とベンゼン化合物(3a)とを、パラジウム触媒の存在下にカップリング反応させ、本発明のフェノール化合物(1)を製造する工程であり、一般的なStille反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
R1で表される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、特に限定するものではないが、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基等を例示することができる。
R1については、合成が容易である点で、tert−ブチルオキシカルボニル基又は炭素数1〜4の直鎖状アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
R4で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、特に限定するものではないが、前記R1にて例示した炭素数1〜4のアルキル基と同様のものを例示することができる。中でも収率がよい点で、直鎖状アルキル基が好ましく、取扱いが容易である点でメチル基又はブチル基がさらに好ましい。
Lで表される脱離基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、p−トルエンスホネ−ト、メタンスルホネ−ト、トリフルオロメタンスルホネ−ト等のスルホネ−ト、水素原子等を挙げることができる。これらのうち、反応性がよい点で、臭素原子又はヨウ素原子が好ましい。
工程1に用いるスズ化合物(2a)は、例えば、Chemistry of Materials,2002年,14巻,1884−1890頁に開示されている方法や、後述する実施例−3、4及び参考例−1に示した方法を用いて製造することができる。
工程1に用いるベンゼン化合物(3a)は、例えば、後述する参考例5〜8に示した方法を用いて製造することができる。また、市販品を用いてもよい。スズ化合物(2a)とベンゼン化合物(3a)とのモル比に特に制限はないが、1:10〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:5〜2:1がさらに好ましい。
工程1に用いるパラジウム触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等の塩を例示することができる。さらに、π−アリルパラジウムクロリドダイマ−、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム等の錯化合物、及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム等の第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体を例示することができる。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が収率がよい点で好ましく、トリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。工程1で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒とスズ化合物(3a)とのモル比は、1:50〜1:10が好ましい。
なお、これらの第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、特に限定するものではないが、具体的には、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、tert−ブチルジフェニルホスフィン、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2−(ジフェニルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリス(2,5−キシリル)ホスフィン、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等を例示することができる。これらのうち、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィンが好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は、第三級ホスフィン:パラジウム塩又は錯化合物が、1:10〜20:1の範囲が好ましく、収率がよい点で1:2〜10:1の範囲がさらに好ましい。
工程1は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエ−テル、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア等のアミド、ジメチルスルホキシド等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、収率がよい点でTHF、1,4−ジオキサン、DMF及びこれらの混合溶媒を用いることが好ましく、DMFがさらに好ましい。
工程1を実施する際の反応温度には特に制限はないが、0〜200℃から適宜選択された温度にて実施することができる。収率が良い点で40〜130℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
本発明のフェノール化合物(1)は、工程1の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、中和、再結晶、カラムクロマトグラフィ−又は昇華等で精製してもよい。また、精製することなく、次工程へ供してもよい。
また、本発明のフェノール化合物(1)に含まれる、上記一般式(1a)で示されるフェノール化合物[以下、本発明のフェノール化合物(1a)と称する。]は、次の反応式に示される工程2により製造することができる。
(式中、R
1、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
3、R
4、Y及びLは前記と同じ意味を表す。m及びqは1〜4の整数を表すが、mとqとの和は2以上5以下となる。rは2〜5の整数を表す。)
工程2は、スズ化合物(2b)と化合物(3b)とを、パラジウム触媒の存在下にカップリング反応させ、本発明のフェノール化合物(1a)を製造する工程であり、一般的なStille反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
工程2に用いるスズ化合物(2b)は、例えば、Chemistry of Materials,2002年,14巻,1884−1890頁に開示されている方法や、後述する実施例−3、4及び参考例−1に示した方法を用いて製造することができる。
工程2に用いる化合物(3b)は、例えば、後述する参考例9及び10に示した方法を用いて製造することができる。スズ化合物(2b)と化合物(3b)とのモル比に特に制限はないが、1:10〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:5〜2:1がさらに好ましい。
工程2に用いるパラジウム触媒としては、工程1にて例示したパラジウム触媒と同様のものを例示することができる。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が収率がよい点で好ましく、トリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。工程2で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒とスズ化合物(3b)とのモル比は、1:50〜1:10が好ましい。
なお、これらの第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、工程1にて例示した第三級ホスフィンと同様のものを例示することができる。これらのうち、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィンが好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は、第三級ホスフィン:パラジウム塩又は錯化合物が、1:10〜20:1の範囲が好ましく、収率がよい点で1:2〜10:1の範囲がさらに好ましい。
工程2は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、工程1にて例示した溶媒と同様のものを例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、収率がよい点でTHF、1,4−ジオキサン、DMF及びこれらの混合溶媒を用いることが好ましく、DMFがさらに好ましい。
工程2を実施する際の反応温度には特に制限はないが、0〜200℃から適宜選択された温度にて実施することができる。収率が良い点で40〜130℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
本発明のフェノール化合物(1a)は、工程2の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、中和、再結晶、カラムクロマトグラフィ−又は昇華等で精製してもよい。また、精製することなく、次工程へ供してもよい。
また、本発明のフェノール化合物(1)は、次の反応式に示される工程3によっても製造することができる。
(式中、R
1、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
3、Y、L及びnは前記と同じ意味を表す。R
5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(OR
5)
2の2つのR
5は同一又は異なっていてもよい。又、2つのR
5は一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。)
工程3は、ホウ素化合物(4)と化合物(3c)とを、塩基及びパラジウム触媒の存在下にカップリング反応させ、本発明のフェノール化合物(1)を製造する工程であり、一般的な鈴木−宮浦反応の反応条件を適用することにより、収率よく目的物を得ることができる。
工程3に用いるホウ素化合物(4)中、B(OR5)2で表される基において、R5は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、B(OR5)2の2つのR5は同一又は異なっていてもよい。また、2つのR5は一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成することもできる。
B(OR5)2で表される基としては、特に限定するものではないが、具体的には、B(OH)2、B(OMe)2、B(OiPr)2、B(OBu)2等を例示できる。また、2つのR5が一体となって酸素原子及びホウ素原子を含んで環を形成した場合のB(OR5)2の例としては、次の(I)から(VI)で示される基を例示することができる。これらのうち、収率がよい点で、B(OH)2又は(II)で示される基が好ましい。
工程3に用いるホウ素化合物(4)は、当業者の良く知る方法を用いて製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
工程3に用いる化合物(3c)は、例えば、後述する参考例9、10に示した方法を用いて製造することができる。ホウ素化合物(4)と化合物(3c)とのモル比に特に制限はないが、1:10〜10:1が好ましく、収率がよい点で1:5〜2:1がさらに好ましい。
工程3に用いる塩基としては、特に限定するものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の金属酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の金属フッ化物塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。これらのうち、収率がよい点で炭酸カリウムが好ましい。
塩基とホウ素化合物(4)とのモル比に特に制限はないが、塩基:ホウ素化合物(3a)が、1:2〜10:1の範囲が好ましく、収率がよい点で1:1〜4:1の範囲がさらに好ましい。
工程3に用いるパラジウム触媒としては、工程1にて例示したパラジウム触媒と同様のものを例示することができる。中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が収率がよい点で好ましく、トリフェニルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。工程2で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒とホウ素化合物(4)とのモル比は、1:50〜1:10が好ましい。
なお、これらの第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体は、パラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。第三級ホスフィンとしては、工程1にて例示した第三級ホスフィンと同様のものを例示することができる。これらのうち、入手容易であり、収率がよい点で、トリフェニルホスフィンが好ましい。第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は、第三級ホスフィン:パラジウム塩又は錯化合物が、1:10〜20:1の範囲が好ましく、収率がよい点で1:2〜10:1の範囲がさらに好ましい。
工程3は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。このような溶媒としては、具体的には、水、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン等のエ−テル、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア等のアミド、ジメチルスルホキシド等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、収率がよい点で水、THF、1,4−ジオキサン、DMF及びこれらの混合溶媒を用いることが望ましい。
工程3を実施する際の反応温度には特に制限はないが、0〜200℃から適宜選択された温度にて実施することができる。収率が良い点で40〜130℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
本発明のフェノール化合物(1)は、工程3の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、中和、再結晶、カラムクロマトグラフィ−又は昇華等で精製してもよい。また、精製することなく、次工程へ供してもよい。
上記工程1〜3において、下記一般式(1b)
(式中、R
1、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
3、Y及びnは前記と同じ意味を表す。)
で示されるフェニルエーテル化合物が併産される場合があるが、該フェニルエーテル化合物(1b)は次の反応式に示される工程4によって、本発明のフェノール化合物(1)へと変換することができる。
(式中、R
1、R
2a、R
2b、R
2c、R
2d、R
3、Y、L及びnは前記と同じ意味を表す。)
工程4は、第三級アミン及びハロゲン化金属塩の存在下、フェニルエーテル化合物(1b)を反応させ、本発明のフェノール化合物(1)を製造する工程である。
工程4に用いることのできる第三級アミンとしては、特に限定するものではないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等の第三級アルキルアミン、ピリジン、ピラジン、キノリン等の環状アジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第三級環状アミンを例示することができる。これらのうち、反応収率が良い点で環状アジンが好ましく、安価である点でピリジン又はキノリンがさらに好ましい。
工程4に用いる第三級アミンの量に特に制限はないが、反応溶媒として用いてもよい。
工程4に用いることのできるハロゲン化金属塩としては、特に限定するものではないが、塩化リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化セシウム、フッ化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム等のハロゲン化アルカリ金属塩、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム等のハロゲン化アルカリ土類金属塩を例示することができる。これらのうち、溶解性が良い点でハロゲン化アルカリ金属塩が好ましく、反応収率が良い点でヨウ化リチウムがさらに好ましい。ハロゲン化金属塩とフェニルエーテル化合物(1b)とのモル比に特に制限はないが、10:1〜1:2が好ましく、収率がよい点で5:1〜1:1がさらに好ましい。
工程4は溶媒中で実施することができる。用いることのできる溶媒に特に制限はなく、反応を阻害しない溶媒であればよい。
工程4を実施する際の反応温度には特に制限はないが、0〜200℃から適宜選択された温度にて実施することができる。収率が良い点で40〜130℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
本発明のフェノール化合物(1)は、工程4の反応の終了後に通常の処理を行うことで得ることができる。必要に応じて、中和、再結晶、カラムクロマトグラフィ−又は昇華等で精製してもよい。また、精製することなく、次工程へ供してもよい。
次に、本発明のフェノール化合物(1)を含む半導体電極(以下、「本発明の半導体電極」という)の製造方法について説明する。
本発明の半導体電極は、金属半導体ペ−ストを作成する工程5、基板上に金属半導体薄膜を形成する工程6、及び金属半導体薄膜に本発明のフェノール化合物(1)を吸着させる工程7を経ることにより得られる。
工程5は、金属半導体を溶媒、ポリマ−及び界面活性剤等と混練し、金属半導体ペ−ストを作成する工程である。工程5に用いる金属半導体としては、特に限定するものではないが、例えば、TiO2、ZnO、In2O3、SnO2、ZrO2、Ta2O5、Nb2O5、Fe2O3、Ga2O3、WO3、SrTiO3等の金属酸化物及び複合酸化物、AgI、AgBr、CuI、CuBr等の金属ハロゲン化物、ZnS、TiS2、ZnO、In2S3、SnS、SnS2、ZrS2、Ag2S、PbS、CdS、TaS2、CuS、Cu2S、WS2、MoS2、CuInS2等の金属硫化物、CdSe、TiSe2、ZrSe2、Bi2Se3、In2Se3、SnSe、SnSe2、Ag2Se、TaSe2、CuSe、Cu2Se、WSe2、MoSe2、CuInSe2、CdTe、TiTe2、ZrTe2、Bi2Te3、In2Te3、SnTe、SnTe2、Ag2Te、TaTe2、CuTe、Cu2Te、WTe2、MoTe2等の金属カルコゲン化物等を挙げることができる。これらのうち、入手容易である点でTiO2、ZnO、SnO2等の金属酸化物が好ましく、色素増感太陽電池における半導体電極としての性能が良い点でTiO2がさらに好ましい。
工程5で用いる金属半導体の形状は、金属半導体ペーストを作成できれば特に制限はないが、焼結後に表面積の大きな多孔質構造を形成できる点で微粒子状が好ましい。この際、微粒子の粒子径は、1nm〜10μmが好ましく、さらに好ましくは5〜1000nmである。
工程5で用いる溶媒としては、水の他、塩酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液等の酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等の塩基性水溶液、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル等のアルコ−ル、ジエチルエ−テル、THF、1,4−ジオキサン等のエ−テル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル、DMF、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。極性が高く金属半導体の分散が良い点で水、酸性水溶液又はアルコ−ルが好ましく、中でも水、硝酸水溶液、メタノ−ル又はエタノ−ルがさらに好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無く、金属半導体に対し好ましくは1〜200重量%、さらに好ましくは15〜50重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。
工程5で用いるポリマ−としては、ポリエチレングリコ−ル(PEG)、ポリプロピレングリコ−ル(PPG)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメタクリル酸エステル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。金属半導体の分散が良い点でPEGが好ましい。ポリマ−の使用量に特に制限は無く、金属半導体に対し好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは1〜10重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。
工程5で用いる界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硝酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、第四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、多価アルコ−ル等の非イオン界面活性剤を挙げることができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。これらのうち、金属半導体の分散が良い点で非イオン界面活性剤が好ましく、オクチルフェノキシポリエトキシエタノ−ル(商品名:Toriton X−100)がさらに好ましい。界面活性剤の使用量に特に制限はなく、金属半導体に対し、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは1〜10重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。
工程5における混練方法としては、例えば、撹拌、振盪、ボ−ルミル等、一般的な手法を用いることができる。
金属半導体ペーストは市販品をそのまま用いてもよい。
工程6は、基板上に金属半導体ペーストを塗布し、次いで焼結することにより、金属半導体薄膜を形成する工程である。基板としては、導電性及び光透過性を持つものであれば特に制限はなく、例えば、ITO、フッ素でドープされた酸化スズ(FTO)、又はアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)等の導電性透明酸化物半導体薄膜をコートしたガラス又はプラスチック基板等が挙げられる。これらのうち、耐薬品性が高く電気抵抗が低い点から、FTOコ−トガラスが好ましい。
工程6において金属半導体ペーストを塗布する方法に特に制限はなく、例えば、ディップ法、キャスト法、スピンコ−ト法、ドクターブレード法、スクリ−ン印刷法等を挙げることができる。これらのうち、簡便に平坦な膜を得られる点でドクターブレード法又はスクリ−ン印刷法が好ましい。
工程6における焼結条件は、用いる金属半導体の焼結体が生成する条件であれば特に制限はない。TiO2を金属半導体に用いる場合には、好ましくは200〜1000℃にて5分から10時間、さらに好ましくは400〜600℃にて15分から1時間の条件から適宜選ばれた条件で焼結することにより、良好な金属半導体薄膜を形成することができる。
工程7は、本発明のフェノール化合物(1)を含む溶液を調製し、ここに金属半導体薄膜を浸漬させることにより、金属半導体薄膜に本発明のフェノール化合物(1)を吸着させ、本発明の半導体電極を得る工程である。
工程7において、本発明のフェノール化合物(1)を含む溶液の調製に用いる溶媒に特に制限はなく、本発明のフェノール化合物(1)が溶解すればよい。このような溶媒として、具体的には、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル等のアルコ−ル、ジエチルエ−テル、THF、1,4−ジオキサン等のエ−テル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、DMF、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。これらのうち、本発明のフェノール化合物(1)の金属電極に対する吸着性が良い点で、アルコ−ル、ハロゲン化炭化水素、トルエン又はアセトニトリルが好ましく、アセトニトリルがさらに好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無く、得られる溶液の濃度が好ましくは1×10−6〜1×10−2M、吸着が良好な点でさらに好ましくは5×10−5〜9×10−4Mの範囲から適宜選ばれた濃度となる量の溶媒を用いることができる。
工程7において、本発明のフェノール化合物(1)を含む溶液に金属半導体薄膜を浸漬させる際の温度に制限はなく、好ましくは−50〜150℃、さらに好ましくは−20〜60℃の範囲から適宜選ばれた温度にて浸漬させることができる。
工程7において、本発明のフェノール化合物(1)を含む溶液に金属半導体薄膜を浸漬させる際の時間に制限はなく、好ましくは30分〜100時間、さらに好ましくは2〜24時間の範囲から適宜選ばれた時間にて浸漬させることができる。
工程7において、本発明のフェノール化合物(1)を含む溶液に金属半導体薄膜を浸漬させた後は、当業者における通常の技術手段に従って後処理を施しても良い。該後処理としては、例えば、アセトニトリル等の有機溶媒を用いて金属半導体薄膜を洗浄し、乾燥させる処理等を挙げることができる。
次に、本発明の半導体電極を有する色素増感型太陽電池素子(以下、「本発明の太陽電池素子」という。)の製造方法について説明する。
本発明の太陽電池素子は、スペ−サ−を介して本発明の半導体電極と対極を貼り合わせ、空隙に電解液を注入することで製造される。スペ−サ−の材質としては当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテ−ト、又は熱あるいは光可塑性樹脂などのポリマ−フィルムが好ましい。スペ−サ−の膜厚は、好ましくは1μm〜1mm、さらに好ましくは15〜100μmの範囲から適宜選択することができる。対極としては当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、Fe、Al、Cu、Ti等の卑金属、Ag、Au、Pt、Rh、Ru等の貴金属又はカ−ボンを例示することができる。耐薬品性が高い点で、貴金属が好ましく、導電性の点でPtがさらに好ましい。
また、これらの卑金属、貴金属又はカ−ボンは、工程6に例示した導電性透明酸化物半導体薄膜をコートしたガラス又はプラスチック基板にコートして用いることもできる。電解液としては当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体的には、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化イミダゾウリウム、チオシアン酸グアジニウム及び4−tert−ブチルピリジン等をアセトニトリル等に溶解したものを用いることができる(例えば、Chem.Commun.,2198−2200,2009年参照)。
以下、実施例及び参考例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
実施例−1
アルゴン雰囲気下、参考例−2にて合成した2−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}チオフェン(465mg,1.2mmol)を、THF(3mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにn−BuLiヘキサン溶液(1.59M,881μL,1.4mmol)を加え15分撹拌した後、塩化トリメチルスズ(279mg,1.4mmol)を加えた。この混合物を同温にて30分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。次いで、前記混合物から溶媒を減圧留去して得られた固体に、参考例−9にて合成した2−ブロモ−5−(3,5−ジシアノ−4−メトキシフェニル)チオフェン(319mg,1.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(58mg,0.05mmol)、及びDMF(6mL)を加えた。得られた混合物を110℃にて17時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)および分取HPLC(溶離液:クロロホルム)により精製することで、目的の2,6−ジシアノ−4−{5’−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’−ビチオフェン−5−イル}フェノールを黄色固体として得た(233mg,38%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.91(s,2H),7.39(d,J=8.7Hz,2H),7.18(d,J=3.8Hz,1H),7.15(d,J=3.8Hz,1H),7.14(d,J=3.8Hz,1H),7.11(d,J=3.8 Hz,1H),7.08(d,J=8.9Hz,4H),6.92(d,J=8.7Hz,2H),6.85(d,J=8.9Hz,4H),3.81(s,6H).
実施例−2
アルゴン雰囲気下、参考例−4にて合成した5−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’−ビチオフェン(470mg,1.0mmol)を、THF(3mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにn−BuLiヘキサン溶液(1.59M,755μL,1.2mmol)を加え15分撹拌した後、塩化トリメチルスズ(143mg,1.2mmol)を加えた。この混合物を同温にて30分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。次いで、前記混合物から溶媒を減圧留去して得られた固体に、参考例−7にて合成した4−ブロモ−2,3−ジシアノアニソール(285mg,1.2mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(58mg,0.05mmol)、及びDMF(10mL)を加えた。得られた混合物を110℃にて17時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)及び分取HPLC(溶離液:クロロホルム)により精製した。精製して得られた生成物とヨウ化リチウム(308mg,2.3mmol)をキノリン(5mL)に溶解し、180℃にて5時間撹拌した。放冷後、反応混合物に1N−塩酸を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物を再結晶(DMSO/水/1N−塩酸)及び分取HPLC(溶離液:クロロホルム)により精製することで、目的の2,3−ジシアノ−4−{5’−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’−ビチオフェン−5−イル}フェノールを赤色固体として得た(94mg,15%)。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ7.88(d,J=9.0Hz,1H),7.53(d,J=3.9Hz,1H),7.49(d,J=8.9Hz,2H),7.40(d,J=3.9Hz,1H),7.38(d,J=9.0Hz,1H),7.37(d,J=3.8Hz,1H),7.34(d,J=3.8Hz,1H),7.06(d,J=9.0Hz,4H),6.94(d,J=9.0Hz,4H),6.77(d,J=8.9Hz,2H),3.75(s,6H).
実施例−3
アルゴン雰囲気下、参考例−10にて合成した5−ヨード−5’−(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,2’−ビチオフェン(118mg,0.25mmol)、2−{4−[N,N−ビス(4−ヘキシルオキシフェニル)アミノ]フェニル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(172mg,0.3mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(8.8mg,0.013mmol)、及び2M−炭酸カリウム水溶液(500μL,1.0mmol)を、THF(2.5mL)に溶解した。この混合物を60℃にて14時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物とヨウ化リチウム(335mg,2.5mmol)をピリジン(3mL)に溶解し、100℃にて43時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)により精製することで、目的の4−{5’−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’−ビチオフェン−5−イル}−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールを暗緑色油状物として得た(108mg,56%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.37−7.40(m,1H),7.39(d,J=8.8Hz,2H),7.18(d,J=3.8Hz,1H),7.17(d,J=3.8Hz,1H),7.10(d,J=3.8Hz,1H),7.06(d,J=9.0Hz,4H),6.91(d,J=8.8Hz,2H),6.83(d,J=9.0Hz,4H),3.94(t,J=6.5Hz,4H),1.77(m,4H),1.45(m,4H),1.34(m,8H),0.91(t,J=7.1Hz,6H).
19F−NMR(376MHz,CDCl3):δ−163.4(m,2F),−141.4(m,2F).
参考例−1
アルゴン雰囲気下、4−ブロモトリフェニルアミン(4.80g,13.9mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(281mg,0.4mmol)、及び2−(トリブチルスタニル)チオフェン(8.80mL,27.7mmol)を、DMF(50mL)に溶解した。この混合物を100℃にて20時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで黄褐色固体の2−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]チオフェンを得た(3.50g,78%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.47(d,J=8.8Hz,2H),7.24−7.28(m,4H),7.21−7.23(m,2H),7.12(dd,J=8.1,1.1Hz,4H),7.03−7.08(m,3H),7.07(d,J=8.8Hz,2H).
アルゴン雰囲気下、合成した2−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]チオフェン(654mg,2.0mmol)を、THF(20mL)に加え、−78℃に冷却した。ここにn−BuLiヘキサン溶液(1.62M,1.9mL,3.0mmol)を加え15分撹拌した後、さらに塩化トリメチルスズ(1.10g,5.7mmol)を加えた。この混合物を同温で30分撹拌した後、室温で12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧蒸留することで、目的の5−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]−2−(トリメチルスタニル)チオフェンを黄褐色油状物として得た。この化合物は精製することなく、次工程へ用いた。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.47(d,J=8.7Hz,2H),7.33(d,J=3.4Hz,1H),7.28(m,4H),7.14(d,J=3.4Hz,1H),7.11(dd,J=8.7,1.1Hz,4H),7.06(d,J=8.8Hz,2H),7.00−7.05(m,2H),0.38(s,9H).
参考例−2
アルゴン雰囲気下、2−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(1.3g,3mmol)、炭酸セシウム(3.9g,12mmol)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(105mg,0.15mmol)を、THF(15mL)に懸濁した。ここに2−ブロモチオフェン(345μL,3.6mmol)を加え、60℃にて17時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)により精製することで目的の2−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}チオフェンを油状物として得た(1.1g,91%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.41(d,J=8.6Hz,2H),7.17−7.19(m,2H),7.07(d,J=8.9Hz,4H),7.04(dd,J=5.0,3.7Hz,1H),6.92(d,J=8.6Hz,2H),6.84(d,J=8.9Hz,4H),3.80(s,6H).
参考例−3
アルゴン雰囲気下、5−(トリメチルスタニル)−2,2’−ビチオフェン(329mg,1.0mmol)、4−ブロモトリフェニルアミン(486mg,1.5mmol)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(21mg,0.03mmol)を、DMF(10mL)に溶解した。この混合物を100℃にて20時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)により精製することで目的の5−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]−2,2’−ビチオフェンを黄色固体として得た(326mg,80%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.46(d,J=8.8Hz,2H),7.26(dd,J=7.3,8.5Hz,4H),7.20(dd,J=5.1,1.1Hz,1H),7.17(dd,J=3.6,1.1Hz,1H),7.11−7.13(m,6H),7.06(d,J=8.8Hz,2H),7.02−7.06(m,2H),7.17(dd,J=5.1,3.6Hz,1H).
参考例−4
アルゴン雰囲気下、2−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(100mg,0.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(8.1mg,0.01mmol)、5−ヨード−2,2’−ビチオフェン(101mg,0.3mmol)、及び2M−炭酸カリウム水溶液(450μL,0.9mmol)を、THF(5mL)に溶解した。この混合物を60℃にて20時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:へキサン/クロロホルム)により精製することで、目的の5−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’−ビチオフェンを黄褐色固体として得た(82mg,75%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.39(d,J=8.8Hz,2H),7.19(d,J=5.1Hz,1H),7.16(d,J=3.6Hz,1H),7.10(d,J=3.8Hz,1H),7.06−7.08(m,5H),7.00(dd,J=5.1,3.6Hz,1H),6.91(d,J=8.8Hz,2H),6.84(d,J=9.0Hz,4H),3.80(s,6H).
参考例−5
アルゴン雰囲気下、4−ブロモ−2−シアノフェノール(198mg,1.0mmol)、及びジ−tert−ブチルジカルボネート(345μL,1.5mmol)を、ヘキサン(3mL)に溶解した。この混合物を0℃に冷却し、ジメチルアミノピリジン(6.1mg,0.05mmol)を加え、70℃にて22時間撹拌した。次いで、反応混合物に飽和食塩水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去することで黄色液体の4−ブロモ−2−シアノ−(O−tert−ブトキシカルボニル)フェノールを得た(298mg,quant.)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.78(d,J=2.4Hz,1H),7.72(dd,J=8.8,2.4Hz,1H),7.23(d,J=8.8Hz,1H),1.58(s,9H).
参考例−6
アルゴン雰囲気下、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール(4.0g,20mmol)、及び炭酸カリウム(13.8g,100mmol)を、アセトン(120mL)に懸濁した。ここにヨウ化メチル(12.5mL,200mmol)を加え、30℃にて6時間撹拌した。放冷後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物に水を加えクロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去することで乳白色油状の4−ブロモ−2,6−ジメチルアニソールを得た(4.2g,93%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.13(s,2H),3.69(s,3H),2.25(s,6H).
水酸化カリウム(741mg,13mmol)、及び合成した4−ブロモ−2,6−ジメチルアニソール(6.5g,30mmol)を、水(281mL)に懸濁し、100℃に加熱した。ここに過マンガン酸カリウム(23.7g,150mmol)を加え、同温にて43時間撹拌した。次いで、セライトを用いて反応混合物を熱濾過し、不溶物を熱水(30mL×3)にて洗浄した。得られたろ液に塩酸を加えpH=1に調製し、析出した固体をろ別することで白色固体の4−ブロモ−2−メトキシイソフタル酸を得た(5.2g,63%)。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ7.93(s,2H),3.80(s,3H).
合成した4−ブロモ−2−メトキシイソフタル酸(8.3g,30mmol)を塩化チオニル(50mL)に懸濁し、100℃にて20時間撹拌した。放冷後、低沸分を減圧留去し、析出した固体を氷冷した28%−アンモニア水(500mL)へ加えた。この混合物を同温にて1時間、室温にて1時間撹拌した。反応終了後、析出した固体をろ別し、水で洗浄することで薄黄色固体の4−ブロモ−2−メトキシイソフタル酸アミドを得た(5.8g,71%)。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ7.83(s, 2H),7.71(s,2H),7.68(s,2H),3.81(s,3H).
合成した4−ブロモ−2−メトキシイソフタル酸アミド(339mg,1.2mmol)を1,2−ジクロロエタン(2.5mL)に溶解し、ここに塩化チオニル(2.5mL)を加えた。この混合物を80℃にて18時間撹拌した。反応終了後、反応混合物の低沸分を減圧留去し、得られた粗生成物に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)により精製することで目的の4−ブロモ−2,6−ジシアノアニソールを白色固体として得た(245mg,83%)。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6):δ8.45(s,2H),4.22(s,3H).
参考例−7
アルゴン雰囲気下、4−ブロモ−2−シアノアニソール(1.1g,5.0mmol)をTHF(20mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにリチウム ジイソプロピルアミドTHF溶液(0.5M,11mL,5.5mmol)を加え30分間撹拌した後、THF(10mL)に溶解したヨウ素(1.5g,6.0mmol)を加えた。この混合物を同温にて30分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。反応終了後、反応混合物にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去することで白色固体の4−ブロモ−2−シアノ−3−ヨードアニソールを得た(1.7g,quant.)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.73(d,J=9.0Hz,1H),6.87(d,J=9.0Hz,1H),3.92(s,3H).
アルゴン雰囲気下、合成した4−ブロモ−2−シアノ−3−ヨードアニソール(1.0 g,3.0mmol)及びシアン化銅(671mg,7.5mmol)を取り、ピリジン(4mL)に溶解した。この混合物を80℃にて23時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)により精製することで、目的の4−ブロモ−2,3−ジシアノアニソールを白色固体として得た(608mg,85%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.82(d,J=9.2Hz,1H),7.12(d,J=9.2Hz,1H),4.00(s,3H).
参考例−8
アルゴン雰囲気下、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(996mg,6.0mmol)をジメトキシエタン(1mL)に溶解した。ここにジメトキシエタン(9mL)に溶解した臭素(461μL,9.0mmol)を加え、60℃にて20時間撹拌した。放冷後、反応混合物にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで無色油状物の4−ブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノールを得た(1.3g,86%)。
19F−NMR(376MHz,CDCl3):δ−156.0(m,2F),−134.4(m,2F).
アルゴン雰囲気下、合成した4−ブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロフェノール(983mg,4.0mmol)及び炭酸カリウム(2.76g,20mmol)を、アセトン(24mL)に懸濁した。ここにヨウ化メチル(2.5mL,40mmol)を加え、30℃にて7時間撹拌した。放冷後、溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去することで目的の4−ブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロアニソールを橙色油状物として得た(745mg,71%)。
1H−NMR(400 MHz,CDCl3):δ4.08(s,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl3):δ−161.2(m,2F),−134.6(m,2F).
参考例−9
アルゴン雰囲気下、参考例−6にて合成した4−ブロモ−2,6−ジシアノアニソール(1.4g,6mmol)、2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)チオフェン(2.5g,12mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(211mg,0.3mmol)及び炭酸セシウム(7.8g,24mmol)を、THF(24mL)に懸濁した。この混合物を60℃にて16時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)および再結晶(ヘキサン)にて精製することで白色固体の2−(3,5−ジシアノ−4−メトキシフェニル)チオフェンを得た(1.2g,85%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.96(s,2H),7.40(dd,J=5.1,1.1Hz,1H),7.30(dd,J=3.7,1.1Hz,1H),7.13(dd,J=5.1,3.7Hz,1H),4.34(s,3H).
アルゴン雰囲気下、合成した2−(3,5−ジシアノ−4−メトキシフェニル)チオフェン(1.2g,5mmol)及びN−ブロモスクシイミド(1.0g,6mmol)り、クロロホルム(8mL)に溶解した。この混合物を室温にて24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)にて精製することで、目的の2−ブロモ−5−(3,5−ジシアノ−4−メトキシフェニル)チオフェンを白色固体として得た(1.6g,85%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.86(s,2H),7.08(d,J=3.9Hz,1H),7.05(d,J=3.9Hz,1H),4.35(s,3H).
参考例−10
アルゴン雰囲気下、2,2’−ビチオフェン(1.3g,8.0mmol)をTHF(40mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにn−BuLiヘキサン溶液(1.6M,5.5mL,8.8mmol)を加え15分撹拌した後、さらに塩化トリメチルスズ(1.8g,8.8mmol)を加えた。この混合物を同温にて30分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。次いで、前記混合物から溶媒を減圧留去して得られた固体に、参考例−8にて合成した4−ブロモ−2,3,5,6−テトラフルオロアニソール(1.3mL,8.8mmol)、ジ−tert−ブチルヒドロキシトルエン(数片)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(462mg,0.4mmol)、及びキシレン(80mL)を加えた。得られた混合物を140℃にて15時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)により精製することで黄色固体の5−(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,2’−ビチオフェンを得た(1.1g,41%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.44(d,J=3.9Hz,1H),7.24−7.27(m,2H),7.21(d,J=3.9Hz,1H),7.05(dd,J=5.1,3.6Hz,1H),4.12(s,3H).
19F−NMR(376MHz,CDCl3):δ−158.1(m,2F),−141.3,(m,2F).
アルゴン雰囲気下、合成した5−(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,2’−ビチオフェン(172mg,0.5mmol)をTHF(2.5mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにリチウム ジイソプロピルアミドTHF溶液(0.5M,1.1mL,0.55mmol)を加え15分撹拌した後、THF(1mL)に溶解したヨウ素(152mg,0.6mmol)を加えた。得られた混合物を同温にて30分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。次いで、反応混合物にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)により精製することで、5−ヨード−5’−(4−メトキシ−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)−2,2’−ビチオフェンを黄色固体として得た(201mg,86%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.42(d,J=3.9Hz,1H),7.19(d,J=3.8Hz,1H),7.15(d,J=3.9Hz,1H),6.91(d,J=3.8Hz,1H),4.12(s,3H).
19F−NMR(400MHz,CDCl3):δ−145.2(m,2F),−141.4(m,2F).
比較例−1
アルゴン雰囲気下、参考例−5にて合成した4−ブロモ−2−シアノ−(O−tert−ブトキシカルボニル)フェノール(298mg,1.0mmol)、及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(11mg,0.015mmol)を、参考例−1にて合成した5−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]−2−(トリメチルスタニル)チオフェン(0.5mmol)のDMF溶液(3mL)に加えた。この混合物を90℃にて23時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで有機層を抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)および再結晶(ヘキサン/ジクロロメタン)により精製することで、目的の2−シアノ−4−{5−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]チオフェン−2−イル}フェノールを淡緑色固体として得た(150mg,68%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.71−7.72(m,1H),7.68−7.72(m,1H),7.47(d,J=8.4Hz,2H),7.25−7.30(m,6H),7.18(s,1H),7.13(dd,J=8.6,1.0Hz,4H),7.07(d,J=8.4Hz,2H),7.05−7.08(m,2H).
比較例−2
アルゴン雰囲気下、参考例−3にて合成した5−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]−2,2’−ビチオフェン(205mg,0.5mmol)をTHF(5mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ここにn−BuLiヘキサン溶液(1.6M,344μL,0.55mmol)を加え15分撹拌した後、塩化トリメチルスズ(110mg,0.55mmol)を加えた。この混合物を同温にて30分撹拌した後、室温で1時間撹拌した。次いで、前記混合物から溶媒を減圧留去して得られた固体に、参考例−5にて合成した4−ブロモ−2−シアノ−(O−tert−ブトキシカルボニル)フェノール(221μL,1.0mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(11mg,0.015mmol)、及びDMF(5mL)を加えた。この混合物を110℃にて20時間撹拌した。放冷後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて撹拌した後、ろ液を取得し、該ろ液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/クロロホルム)および再結晶(メタノール)にて精製し、目的の2−シアノ−4−{5’−[4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]−2,2’−ビチオフェン−5−イル}フェノールを黄土色固体として得た(150mg,57%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.71(d,J=2.3Hz,1H),7.69(dd,J=8.6,2.3Hz,1H),7.46(d,J=8.7Hz,2H),7.25−7.29(m,4H),7.11−7.15(m,8H),7.07(d,J=8.7Hz,2H),7.05(t,J=7.3Hz,2H),7.01(d,J=8.6Hz,1H).
試験例
酸化チタンペ−スト(日揮触媒化成工業社製、PST−18NR D,0.5mL)をFTOガラス基板上に取り、50μm程度の厚みに塗布した。これを室温で1時間乾燥させた後、電気炉にて焼成した(450℃,30分、次いで550℃,30分)。放冷後、この基板を、実施例−1で得られたフェノール化合物(1)[2,6−ジシアノ−4−{5’−{4−[N,N−ビス(4−メトキシフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’−ビチオフェン−5−イル}フェノール]の溶液(0.5mM)に浸し、室温で16時間浸漬した。基盤をアセトニトリルで洗浄後、乾燥し、半導体電極を得た。
アルゴン雰囲気下、ヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム(2.66g,10.0mmol)、ヨウ化リチウム(67mg,0.50mmol)、4−tert−ブチルピリジン(676mg,5.0mmol)、ヨウ素(76mg,0.05mmol)、及びグアニジンチオシアナ−ト(118mg,1.0mmol)を、無水アセトニトリル及びバレロニトリルの混合溶液(MeCN:BuCN=85:15,10mL)に加えることによって、電解質溶解液を調製した。
先に作製した半導体電極及びPt板を、高分子製スペ−サ−を介して張り合わせ、間隙に前記電解質溶解液を20μL注入し、色素増感太陽電池素子を得た。色素増感太陽電池素子の電流密度−電圧特性はソーラーシミュレータ(AM1.5,100mW/cm2)を用いて測定した。得られた短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ−(ff)及び光電変換効率(Efficiency)を表1に示した。
表1に示すその他の色素増感太陽電池素子も、用いたフェノール化合物を表1に示すフェノール化合物に置き換えた以外は全く同じ方法で作製した。
試験例−1〜3に示したように、本発明のフェノール化合物(1)を用いた色素増感太陽電池素子は、光照射下にて良好な光電流の発生を示した。これは、本発明のフェノール化合物が強酸性官能基を持たないにも関わらず、酸化物半導体表面と強固な結合を形成し、光励起による電子移動が円滑に進行していることを示す。