JP6427465B2 - 立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法、及び、立方体形状のチタン酸ストロンチウム微粒子、立方体形状の金属ドープチタン酸ストロンチウム微粒子、及びその製造方法 - Google Patents
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同時に本発明は、近年、可視光による水の水素または酸素への分解を行うことで環境エネルギー材料として脚光を浴びつつある光触媒材料を構成するのに好適な、原料としての形状制御されたチタン酸ストロンチウム微粒子及びロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子及びその製造方法にも関する。
また、光触媒材料へ向けた母触媒材料としては、太陽光の多くの割合を占める可視光に対して活性を有することが好ましい。可視光活性を有する高効率な水素生成を可能なチタン酸ストロンチウム光触媒として、Pt,Rh,Cu等の金属を助触媒として担持させてなるチタン酸ストロンチウムや、更に太陽光の可視光域の有効利用を目的として、RhやIr等をドープすることで、バンド構造を変調させたチタン酸ストロンチウム等が期待されている。
この中で、水溶液中でSrTiO3系ペロブスカイト型微粒子を直接合成しうる技術に関する特許として、特許文献1が知られている。この特許は大気圧下での液相合成ではあるものの、立方体形状の微粒子は得られてはいない。特に、SrTiO3微粒子を直接水溶液中で合成する製造方法を記した特許文献1には、最適合成条件として、
水溶液のpH値は13.5以上、温度は90℃以上の大気圧下での沸点近傍、
反応時間は2時間程度、投入時の[Sr]/[Ti]モル比は1が好適としている一方、得られた微粒子の形態に関しては、
「SrTiO3微粒子の粒子サイズは、100〜200Åで均一なものであった。」との記載だけで、形状に関しては一切記載がない。
特許文献2には、水酸化ストロンチウムとチタンペルオキソ乳酸アンモニウム等の水溶性チタン化合物とを、オレイン酸等の両親媒性化合物及びヒドラジン等の金属元素非含有塩基性化合物存在下で、200℃、強アルカリ条件で水熱合成することにより、結晶形状が制御されたチタン酸ストロンチウムナノ粒子を凝集させることなく製造可能であることが記載されている。
RhドープされたSrTiO3微粒子であり、その形状が立方体形状であり、かつその合成法が、高温高圧を必要としない大気圧下での液相合成によるものは、従来の公開文献には存在していない。
また一方で、ノンドープの純粋なSrTiO3の立方体形状の微粒子の大気圧下液相合成の製法に関する報告事例も、これまでの公開文献には存在しない。
このような状況を鑑みると、大気圧下での液相合成プロセスにおいて、立方体形状のチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)微粒子が合成されたという先行報告はないということに結論される。当然ながら、金属ドープをされた立方体形状のSrTiO3微粒子を大気圧下の液相プロセスで合成された過去の先行事例もこれまでに報告された文献には存在しない。
アルカリ性水溶液中にストロンチウム原料とチタン原料とが添加されてなる反応液を調製する反応液調製工程と、
反応液を大気圧下において80℃以上に加熱して反応液を反応させる反応工程とを有する。
ストロンチウム原料としては、ストロンチウムの酢酸塩、硝酸塩、塩化物、炭酸塩、硫化物、及び水酸化物のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、反応工程において反応液のpHは13.5以上であることが好ましい。
また、本発明の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子は、
一般式Sr(Ti1−x(Rh1−y,My)x)O3で表され、
0<x≦0.07、且つ、0≦y<1であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Nb、Mo、Ru、Pd、In、Sb、Ta、W、Re、Ir、Pt、Bi、及び、Laからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素である。
本発明の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子は、一辺の長さの平均値が、30nm以上80nm以下である立方体形状を有することが好ましい。
本明細書において、一辺の長さの平均値(平均粒子径)とは、倍率10万倍のTEM写真から、立方体形状を有する任意の10個の微粒子を選択し、各微粒子の一辺の長さ(粒子径)を測定した平均値である。
図面を参照して、本発明にかかる一実施形態のチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法について説明する。図1は本実施形態のチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法のフロー図を示したものである。
本発明者らは、水溶液中のTiの電位―pH図に着目し、従来の水熱合成において用いられるチタン原料が、水溶液中において、pH条件等により二酸化チタン水和物(TiO2・H2O)や、Ti水酸化物(Ti(OH)4)又はHTiO3 ―イオン状態など、結合状態が変化することが、チタン酸ストロンチウム微粒子の形状制御に影響を及ぼしていると考えた。
従来の方法において、pH13.5以上に匹敵する水素イオン濃度条件とした場合に、形状制御性が良好となっていることから、強アルカリ条件の反応液中において安定な、Ti水酸化物(Ti(OH)4)又はHTiO3 ―イオンを、反応液中に安定して形成すること、すなわち、反応液の調製において、水中に加えられるチタン原料として、チタン酸化物を用いることにより、大気圧下であっても形状制御されたチタン酸ストロンチウム微粒子を製造可能となることを見出した。
アルカリ性水溶液中にストロンチウム原料とチタン原料、特にチタン酸化物原料とが添加されてなる反応液を調製する反応液調製工程と、
調整した反応液を大気圧下において80℃以上に加熱して反応液を反応させる反応工程とを有するものである。
反応工程では、上記反応液調製工程にて調製した反応液を、大気圧下、80℃以上にて反応させる。反応液を反応させる温度は、80℃以上沸点以下であればよく、90℃以上であることが好ましい。
反応工程で使用する合成反応槽としては、大気圧を維持できるものであれば特に制限されず、丸底フラスコが好ましい。
一方で、反応後、反応液に対して、デカンテーションを数回行い、液全体のpHを中性にした後、シンプルにろ過を行うことで、微粒子を回収することも十分可能である。
本発明の立方体形状のチタン酸ストロンチウム微粒子は、上記本発明の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法により製造されてなり、立方体形状を有している。
また、本発明の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子は、
一般式Sr(Ti1−x(Rh1−y,My)x)O3で表され、
0<x≦0.07、且つ、0≦y<1であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Nb、Mo、Ru、Pd、In、Sb、Ta、W、Re、Ir、Pt、Bi、及び、Laからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素である。
上記一般式において、yが0であるRh単独ドープチタン酸ストロンチウム微粒子であることが好ましい。
一方で、非特許文献4より光触媒の活性面と考えられている{100}面が露出された、50nm程度の均一な立方体形状の微粒子を製造することができるため、光触媒用途に好適である。
光電着工程における反応液の最高到達温度は、溶媒の蒸発を抑えるために、40℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃〜25℃が好ましい。
従って、本発明の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子は、格子定数値が、0.3915nm以上0.3930nm以下の範囲であることが好ましい。
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。
(実施例1)
図1に示すフローのとおり、テフロン(登録商標)製三口フラスコに入れた純水160mLに水酸化ナトリウム(NaOH)1molを溶解させて水酸化ナトリウム水溶液を調製し、硝酸ストロンチウム(II)無水物(和光純薬製、98%)2.04mmol、及び、酸化チタン(TiO2(P25))(Degussa、99.5%)2.04mmolを40mLの純水中に添加して得られたSr,Ti含有水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液に混合して混合溶液を得た。この混合溶液に、塩化ロジウム三水和物(RhCl2・3H2O)(和光純薬製、95%)を、反応液中のRhモル濃度がSrモル濃度の1.0%([Rh]/[Sr]=0.01)となるように添加した後、超音波を数分間照射することにより懸濁状態の反応液を得た。反応液のpHは14.3であった。
脱塩後、沈殿物の入った遠心管に、それぞれ純水30mLを加えて沈殿物が分散されてなる懸濁液を得、得られた懸濁液をシャーレに移し、シャーレをホットプレート上に置いて100℃にて1時間乾燥させて、脱塩処理が施された沈殿物を得た。
チタン原料をルチル型にした以外は、実施例1と同様にして、ロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子を作製した。
本実施例では、実施例1と同様の製造条件において、生成物の時系列変化を確認するために、加熱前、沸騰直後、そして沸騰後1時間おきにフラスコ内の反応液をそれぞれ4mLずつサンプリングし、それぞれの反応液に対して、溶媒中のアルカリ成分等を除去する脱塩工程及び乾燥工程を実施して、それぞれのサンプル内の沈殿物を回収し、各沈殿物のXRD測定(図3)、及び、TEM写真の撮影(図4)を行った。図3、及び図4から、沸騰後少なくとも1時間で、立方体形状のペロブスカイト構造のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子が得られることが確認された。
塩化ロジウム(RhCl2)の添加量を、反応液中において、[Rh]/[Sr]=0(実施例4−1)、0.02(実施例4−2)、0.03(実施例4−3)、0.05(実施例4−4)、0.10(実施例4−5)、0.15(実施例4−6)となるようにした以外は実施例1と同様にして、ロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子を作製した。これらのXRDスペクトル及びTEM像を撮影した結果を、図5および図7A,Bに示す。まず図5のX線回折パターンより、ロジウムドープ濃度5%までは単相ペロブスカイト構造が得られ、ロジウムドープ濃度10%以上で異相が生じることが確認された。また図7A,BのTEM写真から、いずれのドープ濃度においても、立方体形状を有するロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子が得られることが確認された。さらに、XRDパターンのピーク位置から、格子定数を算出した結果を図6に示す。ロジウムドープ濃度に比例して除々にその格子定数は増加し、およそ7%で極大を示し、その後漸減していた。これらのことを総合して判断すると、ロジウムドープ濃度7%程度まではロジウムが格子にきちんと入り込んで、固溶していると判断できる。
実施例4におけるRh濃度が3モル%のRhドープチタン酸ストロンチウム微粒子と、固相法により製造したRh濃度が1モル%のRhドープチタン酸ストロンチウム微粒子について、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma,ICP)その結果を表2に示す。固相法では、炭酸ストロンチウム(SrCO3)とニ酸化チタン(TiO2)および、酸化ロジウム(Rh2O3)を混合し、900℃1時間で仮焼成を施した後、粉砕し、1000℃10時間で本焼成を行ない粉砕することでRhドープチタン酸ストロンチウム微粒子を得た。
表2に示されるように、合成して得られた微粒子中のロジウム濃度は、仕込み組成とほぼ同程度であることが確認された。
本合成法にて作製されたロジウムドープチタン酸ストロンチウムに含有されるロジウムの電子状態を調べるために、電子スピン共鳴(Electoron Spin Resonance,ESR)によるRh価数計測(Bruker Biospin社製 EMX型ESR装置を使用)を行った結果を図10に示す。また、固相法により製造したサンプルについて、Rh4価由来のESR信号を測定した結果を図11に示す。本合成法にて合成したロジウムドープチタン酸ストロンチウムは、ロジウム4価由来のピーク信号が検出されなかった。ロジウムは、3価あるいは4価で安定であることが知られており、ロジウムの3価はESRに対して不活性である。これらの結果から、ロジウムは3価で存在していることが示唆された。ロジウムの3価が光触媒能の向上に寄与していると考えられており、本合成法によるロジウムドープチタン酸ストロンチウムは、光触媒に好適な原材料であると期待される。
次に、pHの影響を検証するために、pH14.3(実施例5−1)、pH13.5(実施例5−2)、pH12(実施例5−3)とし、Rh濃度を [Rh]/[Sr]=0とした以外は実施例1と同様にしてチタン酸ストロンチウム微粒子を作製した。
(実施例6)
pH及び反応温度の影響を検証するために、pH12とし、反応温度90℃(実施例6−1)あるいは80℃(実施例6−2)、Rh濃度を [Rh]/[Sr]=0とした以外は実施例1と同様にしてチタン酸ストロンチウム微粒子を作製した。
(実施例7)
形状制御されたロジウム含有チタン酸ストロンチウムの製造可否の条件を検証するために、反応温度を90℃とした以外は実施例1と同様にして作製した。
形状制御されたロジウム含有チタン酸ストロンチウムの製造可否の条件を検証するために、反応温度を77℃とした以外は実施例1と同様にして作製した。
表3に、上記実施例及び比較例で得られたチタン酸ストロンチウム微粒子またはロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子について、反応温度とpH条件、[Rh]/[Sr]値、及び立方体形状の評価結果を示してある。表3において、立方体形状の評価はExcellent,Good,Passable,Badの4段階にて記載してある。評価は、電子顕微鏡(TEM)写真において、孤立した1粒子像を、面積が最小となるような長方形で外接し、その長方形の面積S0、粒子像の面積ScubeからScube/S0の値を求めることにより行い、0.9<Scube/S0をExcellent,0.85<Scube/S0≦0.9をGood,0.8<Scube/S0≦0.85をPassable,Scube/S0≦0.8をBadとした。
Claims (14)
- アルカリ性水溶液中にストロンチウム原料とチタン原料とが添加されてなる反応液を調製する反応液調製工程と、
該反応液を大気圧下において80℃以上に加熱して前記反応液を反応させる反応工程とを有し、
前記反応液調製工程において、pHが12以上である前記アルカリ水溶液中に、Rh原料が添加されてなる,あるいは、Rh原料と、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Nb,Mo,Ru,Pd,In,Sb,Ta,W,Re,Ir,Pt,Bi,又はLaのうち少なくとも1種の金属原料とが添加されてなる前記反応液を調製する立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。 - 前記チタン原料がチタン酸化物を含む請求項1記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記チタン酸化物が二酸化チタンである請求項2記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記二酸化チタンの主成分がアナターゼ型二酸化チタンである請求項3記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記ストロンチウム原料が、ストロンチウムの酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩化物、硫化物、及び水酸化物のうち少なくとも1種を含む請求項1〜4いずれか一項記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記反応工程において前記反応液を反応させる温度が90℃以上沸点以下である請求項1〜5いずれか一項記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記反応工程において前記反応液のpHが13.5以上である請求項1〜6いずれか一項記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記反応液中のRh原料及び前記金属原料が水溶性原料である請求項1〜7いずれか一項記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記反応液中の前記ストロンチウム原料のモル量に対する前記Rh原料と前記金属原料の総モル比が0.15以下である請求項1〜8いずれか一項記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 前記反応液調製工程において、前記アルカリ水溶液中に、Rh原料が添加されてなる請求項1〜9いずれか一項記載の立方体形状を有するチタン酸ストロンチウム微粒子の製造方法。
- 一般式Sr(Ti1−x(Rh1−y,My)x)O3で表され、
0.05≦x≦0.07、且つ、y=0あり、MはV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Nb,Mo,Ru,Pd,In,Sb,Ta,W,Re,Ir,Pt,Bi,及びLaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素である立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子。 - 格子定数値が、0.3915nm以上0.3930nm以下の範囲である請求項11記載の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子。
- 光学バンドギャップが3.21eVから3.54eVまでの範囲にある、請求項11記載の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子。
- 一辺の長さの平均値が、30nm〜80nmである請求項11〜請求項13いずれか一項記載の立方体形状のロジウムドープチタン酸ストロンチウム微粒子。
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