JP6425374B2 - セラミック配線基板 - Google Patents

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Description

本発明は、基板両面にある電極パッド同士を接続する複数のビア導体からなるビア導体群を備えたセラミック配線基板に関するものである。
電力変換機器(インバータやDC−DCコンバータ)などの大電流を流す機器には、電力用のパワー半導体素子が用いられており、そのパワー半導体素子は、セラミック配線基板に実装された状態で使用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のセラミック配線基板には、半導体素子の入力電流や出力電流を流すための導体層(回路パターン)やビア導体(主電力ストレートビア)が形成されている。特許文献1に記載のビア導体は、半導体素子が搭載されている表面側とその裏面側とを導通させるべく基板の厚さ方向に延設された貫通導体であり、銀、銅、タングステン、モリブデンなどの導電性材料を用いて形成されている。
セラミック配線基板において、セラミック層とビア導体とでは熱膨張係数が異なる。また、ビア導体に大電流が流れると、ジュール熱によって発熱する。このため、ビア導体とセラミック層との境界部分では熱膨張差に起因する応力によってクラックが発生することが懸念される。また、複数のビア導体からなるビアアレイ(ビア導体群)に電流を流すように構成したセラミック配線基板がある。このセラミック配線基板では、複数のビア導体間にセラミック層が介在するため、熱膨張差に起因する応力を分散させることが可能となる。
因みに、特許文献2に開示されているセラミック配線基板には、電流が流されるビア導体群ではないが、発光素子の真下となる位置に複数のサーマルビアが設けられ、発光素子で発生した熱の放熱性を高めるように構成している。
特開2013−70018号公報 特開2013−65793号公報
従来のシリコンデバイスを用いたパワー半導体素子は、シリコンデバイス自体の耐久温度が低いため一般的に180℃以下の温度域で用いられる。一方で、炭化珪素デバイスなどを用いたパワー半導体素子は、デバイスの耐久温度が高いため、50℃〜300℃程度の高温の温度域で用いられる。また、使用される環境下(寒冷地での使用)では、低温になる場合もある。従って、高温で使用される半導体素子が実装されるセラミック配線基板には、半導体素子がオンオフすることによって、大きな熱ストレスが繰り返しかかることとなる。このようなセラミック配線基板では、複数のビア導体(ビアアレイ)を通して電流を流すように構成しても、応力の分散が不十分となるため、ビア導体間のセラミック層にクラックが発生してしまう。そして、それらクラックの発生により、基板表面の導体層(回路パターン)とビア導体との接続不良や、回路パターン自体の破損に進展することが懸念される。
また、特許文献2のセラミック配線基板に形成されている複数のサーマルビアは、放熱用の貫通導体であって大電流を流すことを想定しておらず、形成数も少ない。従って、特許文献2のセラミック配線基板を用いて各ビア導体に大電流を流してみた場合には、ビア導体間のセラミック層に発生する応力を十分に緩和することができず、ビア導体間でのクラックの発生を回避することはできない。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ビア導体群を構成するビア導体間でのクラックの発生を抑制し、製品信頼性の高いセラミック配線基板を提供することにある。
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、セラミック材料を用いて第1面及び第2面を有する板状に形成される基板本体と、前記第1面上に配置される第1面側電極パッドと、前記第2面上に配置される第2面側電極パッドと、前記第1面側電極パッドと前記第2面側電極パッドとを接続する複数のビア導体からなるビア導体群とを備え、前記第1面側電極パッド、前記第2面側電極パッド及び前記複数のビア導体に電気的に接続される電力用半導体素子が前記第1面側に搭載可能なセラミック配線基板であって、前記ビア導体群を構成する前記複数のビア導体が全体として格子状に配置され、前記ビア導体群の最外周を構成する前記ビア導体の中心を線分で繋ぐことによって得られる仮想図形は、複数の頂点を有する多角形状をなし、前記複数の頂点のうち少なくとも1つの頂点の内角が鈍角となっていることを特徴とするセラミック配線基板がある。
従って、手段1に記載の発明によると、電力用半導体素子を駆動する際に、ビア導体群を構成する複数のビア導体には、第1面側電極パッドや第2面側電極パッドを介して同じ方向に電流が流れ、ジュール熱が発生する。また、基板本体の第1面側に搭載された電力用半導体素子にも電流が流れてその半導体素子が発熱する。このとき、ビア導体群においてビア導体とセラミックとの熱膨張係数の違いによって応力が発生する。本発明のセラミック配線基板において、ビア導体群の仮想図形は、複数の頂点を有する多角形状をなしており、複数の頂点のうち少なくとも1つの頂点の内角は鈍角となっている。このようにすると、基板本体においてビア導体間の領域に発生する応力が比較的大きくなる頂点部分においてその発生応力を緩和することができる。この結果、セラミック配線基板において、熱ストレスが加わる頻度を抑えることができ、ビア導体間でのクラックの発生を抑制することができる。
ここで、ビア導体群の仮想図形の形状としては、多角形状であれば任意に設定することが可能であるが、例えば、菱形状、平行四辺形状、台形状、五角形状、六角形状、八角形状などを挙げることができる。なお、仮想図形は、複数の頂点のうち全ての頂点の内角が鈍角となっていてもよい。このようにすると、全ての頂点部分において発生応力を緩和することができるため、ビア導体間でのクラックの発生を確実に抑制することができる。
ビア導体群を構成する複数のビア導体は、全体として格子状に配置される。具体例として、ビア導体群は、3行以上×3列以上の格子状となるよう配置されたビアアレイであってもよい。このようにビアアレイを構成すると、ビア導体とセラミックとの熱膨張係数の違いによる発生応力を確実に分散させることができる。
同じビア導体群において、仮想図形を構成する複数の辺から延びる延長線同士の交差部分に、ビア導体が存在しない箇所が設定されていてもよい。このようにすると、ビア導体群においてビア導体が存在しない箇所での発生応力が緩和され、ビア導体間でのクラックの発生をより確実に防止することができる。
また、ビア導体群を複数備える場合、特定のビア導体群の仮想図形が有する複数の頂点と、特定のビア導体群に隣接するビア導体群の仮想図形が有する複数の頂点との距離のうち、内角が鈍角となる頂点同士の距離が最も短くてもよい。この場合、特定のビア導体群を構成する複数のビア導体のうち、隣接するビア導体群に最も近い箇所に存在するビア導体での発生応力が緩和されるとともに、隣接するビア導体群を構成する複数のビア導体のうち、特定のビア導体群に最も近い箇所に存在するビア導体での発生応力が緩和される。その結果、隣接するビア導体群間でのクラックの発生を確実に防止することができる。
電力用半導体素子は、10A以上の電流が流れることで200℃以上の温度に発熱するパワー半導体素子であってもよい。パワー半導体素子を搭載するセラミック配線基板では、使用時における熱ストレスが大きくなる。このセラミック配線基板において上記のようにビア導体群における頂点部分の発生応力を緩和することにより、ビア導体間でのクラックの発生を確実に防止することができる。
セラミック配線基板において、電流の流れる方向が異なる複数のビア導体群を備えていてもよい。この場合、各ビア導体群を繋ぐようにクラックが発生すると、沿面放電が生じやすくなる。これに対して、本発明のようにビア導体群の頂点部分の発生応力を緩和することにより、ビア導体群の外側へのクラックを抑制することができる。このため、複数のビア導体群間における沿面放電を確実に回避することができる。
セラミック配線基板において、基板本体の第2面側には、第1面側電極パッド、第2面側電極パッド及び複数のビア導体に電気的に接続される受動部品が搭載可能であってもよい。上述したように基板本体の第1面にパワー半導体素子が搭載される場合、第1面側は高温となる。この場合、耐熱性が比較的低い受動部品(コンデンサや抵抗などの電子部品)を第2面側に搭載すると、セラミック配線基板が有する断熱効果により第1面側の熱が第2面側に直接伝わらないため、受動部品の熱による性能劣化を低く抑えることができる。
セラミック配線基板の基板本体は、ビア導体部が設けられた複数のセラミック層を積層配置してなり、ビア導体は、複数のビア導体部をセラミック層の積層方向に連結することによって構成され、複数のビア導体部は、セラミック層の積層方向において同軸上に配置されていてもよい。
基板本体を構成するセラミック層としては、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素などといった高温焼成セラミックの焼結体が好適に使用される。また、ホウケイ酸系ガラスやホウケイ酸鉛系ガラスにアルミナ等の無機セラミックフィラーを添加したガラスセラミックのような低温焼成セラミックの焼結体を使用してもよい。
ビア導体群を構成するビア導体や電極パッドとしては特に限定されないが、例えば、メタライズ導体であってもよい。同時焼成法によってメタライズ導体及びセラミック層を形成する場合、メタライズ導体中の金属粉末は、セラミック層の焼成温度よりも高融点である必要がある。例えば、セラミック層がいわゆる高温焼成セラミック(例えばアルミナ等)からなる場合には、メタライズ導体中の金属粉末として、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)等やそれらの混合系が選択可能である。セラミック層がいわゆる低温焼成セラミック(例えばガラスセラミック等)からなる場合には、メタライズ導体中の金属粉末として、銅(Cu)または銀(Ag)等やそれらの混合系が選択可能である。
手段1のセラミック配線基板、及び、セラミック配線基板の第1面側に搭載される電力用半導体素子によってセラミックパッケージが構成される。このセラミックパッケージでは、セラミック配線基板におけるクラックの発生を抑制できることから、製品信頼性を高めることができる。
本実施の形態におけるセラミックパッケージの概略構成を示す断面図。 図1におけるA−A線での断面図。 ビアアレイを示す拡大断面図。 従来例であるベースモデルのビア配置を示す説明図。 対策後のモデルのビア配置を示す説明図。
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施の形態のセラミックパッケージ10の概略構成を示す断面図であり、図2は、図1におけるA−A線での断面図である。
図1に示されるように、セラミックパッケージ10は、自動車などにおける電力変換器(例えばインバータ)に用いられるパワーモジュールであり、セラミック配線基板11、電力用半導体素子12、受動部品13(コンデンサ、抵抗などの低発熱部品)、放熱基板14、及び放熱器15等を備えている。
セラミック配線基板11は、第1面21(図1では下面)及び第2面22(図1では上面)を有する板状に形成された基板本体23と、第1面21上に配置される第1面側電極パッド24と、第2面22上に配置される第2面側電極パッド25と、第1面側電極パッド24と第2面側電極パッド25とを接続する複数のビア導体27からなる電力用のビアアレイ28(ビア導体群)とを備える。セラミック配線基板11は、縦28mm×横20mm×厚さ1.0mmの平面視矩形状をなしている。
セラミック配線基板11において、基板本体23の第1面21側には、第1面側電極パッド24、第2面側電極パッド25及び複数のビア導体27に電気的に接続される電力用半導体素子12が搭載される。また、基板本体23の第2面22側には、第1面側電極パッド24、第2面側電極パッド25及び複数のビア導体27に電気的に接続される受動部品13が搭載されている。なお、基板本体23の第2面22には、電力の入出力用のバスバー(図示略)も搭載されている。また、電力用半導体素子12は、例えば、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor )や、ダイオード(ショットキーバリアダイオード)などのパワー半導体素子(パワーデバイス)である。この電力用半導体素子12には、例えば50A程度の大電流が流れ、その際には250℃程度の温度に発熱する。
放熱基板14は、セラミックからなる絶縁基板を含み、ガラスシートからなる接合部を介してセラミック配線基板11の下面(基板本体23の第1面21)に設けられている。放熱器15は、熱伝導性に優れる金属(例えば、アルミニウム)からなり、放熱基板14の下面に複数のネジ(図示略)を用いて固定されている。この放熱器15には、表面積を増すためのフィン(図示略)が複数設けられており、放熱器15の放熱性能が高められている。
セラミック配線基板11の基板本体23は、ビア導体部31が設けられた複数(本実施の形態では2層)のセラミック層32と導体層33とを積層配置してなる焼結体である。ビア導体27は、2つのビア導体部31をセラミック層32の積層方向に連結することによって構成されている。各ビア導体部31は、セラミック層32の積層方向において同軸上に配置されている。
各セラミック層32は、セラミック材料としてのアルミナ(Al)を用いて形成されている。各セラミック層32の間に設けられている導体層33は、例えばタングステン、モリブデン、又はこれらの合金のメタライズ層からなる。この導体層33は、電力用半導体素子12の駆動信号を伝達する制御回路用配線を含む。各ビア導体27(ビア導体部31)も、導体層33と同様にタングステン、モリブデン、又はこれらの合金のメタライズ層からなる。また、基板本体23における第1面21及び第2面22に形成される第1面側電極パッド24及び第2面側電極パッド25は、銅からなる導体層である。さらに、基板本体23の第1面21及び第2面22に形成される導体層としては、各電極パッド24,25以外に図示しない回路パターンや部品実装用のパッドなどを含んでいる。
なお、電力用半導体素子12が搭載された第1面側電極パッド24、及び、受動部品13が搭載された第2面側電極パッド25は、基板厚さ方向(図1では上下方向)から見たときに、大部分が重なるように対向配置(即ち、一部が重ならないように対向配置)されている。一方、電力用半導体素子12が搭載されていない第1面側電極パッド24、及び、受動部品13が搭載された第2面側電極パッド25は、基板厚さ方向から見たときに完全に重なるように対向配置されている。本実施の形態において、各電極パッド24,25の平面形状は、長方形状である。各電極パッド24,25の縦及び横の長さは、4mm×7mm程度であり、各電極パッド24,25の厚さは、100μm程度である。
図1及び図2に示されるように、ビアアレイ28を構成する複数のビア導体27は、共通の第1面側電極パッド24及び第2面側電極パッド25に接続される。つまり、ビアアレイ28を構成する複数のビア導体27は、第1面側電極パッド24及び第2面側電極パッド25に対して並列に接続されている。また、基板厚さ方向から見たとき、ビアアレイ28を構成する各ビア導体27は、各電極パッド24,25の内側となる領域に配置される。
セラミック配線基板11では、複数(本実施の形態では3つ)のビアアレイ28が設けられており、隣接する2つのビアアレイ28には、それぞれ異なる方向に電流が流れる。具体的には、図1の右側のビアアレイ28(各ビア導体27)には例えば下側(第1面21側)から上側(第2面22側)に電流が流れ、左側のビアアレイ28(各ビア導体27)には上側から下側に向けて電流が流れるようになっている。これらビアアレイ28を構成する複数のビア導体27は、基板本体23の厚さ方向に直線的に延設された主電力用のストレートビアである。
図3に示されるように、本実施の形態のビアアレイ28は、全体として例えば5行×7列の格子状となるように複数のビア導体27が配置されている。1つのビアアレイ28は、同ビアアレイ28の最外周を構成する複数個の外側ビア導体27aと、それら外側ビア導体27aによって包囲される複数個の内側ビア導体27bとによって構成される。なお、図3では、説明の便宜上、縦方向(図3では上下方向)に最大で5個のビア導体27a,27bが配置され、横方向(図3では左右方向)に最大で7個のビア導体27a,27bが配置されたビアアレイ28を図示したが、実際にはさらに多くのビア導体27a,27bが存在している。
本実施の形態において、各外側ビア導体27a及び各内側ビア導体27bは断面円形状をなし、外側ビア導体27aと内側ビア導体27bとが同じ直径を有している。具体的には、これらビア導体27a,27bの直径は200μmである。また、仮想図形P1の長手方向において隣接するビア導体27a,27b同士の距離、及び、仮想図形P1の短手方向において隣接するビア導体27a,27b同士の距離は、互いに等しくなっている。具体的に言うと、仮想図形P1の長手方向における各ビア導体27a,27bのピッチ(中心間距離)、及び、仮想図形P1の短手方向における各ビア導体27a,27bのピッチ(中心間距離)は、それぞれ300μmである。
図2,図3に示されるように、3つのビアアレイ28のうち特定のビアアレイ28aの最外周を構成する外側ビア導体27aの中心C1を線分L1で繋ぐことによって得られる仮想図形P1は、複数(本実施の形態では8個)の頂点P2を有する多角形状(本実施の形態では八角形状)をなしている。そして、仮想図形P1では、各頂点P2のうち全ての頂点P2の内角θ1が鈍角(本実施の形態では135°)となっている。また、例えば、同じビアアレイ28aにおいて、仮想図形P1を構成する複数(本実施の形態では4本)の辺から延びる延長線L2同士の交差部分に、ビア導体27が存在しない箇所27cが設定されている。このため、ビア導体27間の領域に発生する応力が比較的大きくなる頂点P2の部分において、セラミック層32に発生する応力が緩和される。
図2に示されるように、特定のビアアレイ28aに隣接するビアアレイ28bでは、ビアアレイ28bの最外周を構成する外側ビア導体27aの中心を線分で繋ぐことによって得られる仮想図形P3が、複数(本実施の形態では10個)の頂点P4を有する多角形状(本実施の形態では略L字形状)をなしている。そして、仮想図形P3では、各頂点P4のうち9個の頂点P4の内角が鈍角(本実施の形態では135°)となり、1個の頂点P4の内角が直角となっている。本実施形態では、各頂点P4のうち、少なくとも基板本体23の中心近傍に位置する頂点P4の内角が鈍角となっている。また、例えば、同じビアアレイ28bにおいて、仮想図形P3を構成する複数(本実施の形態では4本)の辺から延びる延長線同士の交差部分等に、ビア導体27が存在しない箇所27cが設定されている。このため、ビア導体27間の領域に発生する応力が比較的大きくなる頂点P4の部分において、セラミック層32に発生する応力が緩和される。
また、特定のビアアレイ28aに隣接するビアアレイ28cでは、ビアアレイ28bの最外周を構成する外側ビア導体27aの中心を線分で繋ぐことによって得られる仮想図形P5は、複数(本実施の形態では10個)の頂点P6を有する多角形状(本実施の形態では略L字形状)をなしている。そして、仮想図形P5では、各頂点P6のうち9個の頂点P6の内角が鈍角(本実施の形態では135°)となり、1個の頂点P4の内角が直角となっている。本実施形態では、各頂点P6のうち、少なくとも基板本体23の中心近傍に位置する頂点P6の内角が鈍角となっている。また、例えば、同じビアアレイ28cにおいて、仮想図形P5を構成する複数(本実施の形態では4本)の辺から延びる延長線同士の交差部分等に、ビア導体27が存在しない箇所27cが設定されている。このため、ビア導体27間の領域に発生する応力が比較的大きくなる頂点P6の部分において、セラミック層32に発生する応力が緩和される。
なお、本実施の形態では、特定のビアアレイ28aにおいて、隣接するビアアレイ28bに最も近い箇所に、ビア導体27が存在しない箇所27cが設定されている。その結果、仮想図形P1(ビアアレイ28a)が有する各頂点P2と仮想図形P3(ビアアレイ28b)が有する各頂点P4との距離のうち、内角θ1が鈍角となる頂点P2,P4(即ち、ビア導体27が存在しない箇所27cの近傍にある頂点)同士の距離D1(図2参照)が最も短くなる。さらに、本実施の形態では、特定のビアアレイ28aにおいて、隣接するビアアレイ28cに最も近い箇所にも、ビア導体27が存在しない箇所27cが設定されている。その結果、仮想図形P1(ビアアレイ28a)が有する各頂点P2と仮想図形P5(ビアアレイ28c)が有する各頂点P6との距離のうち、内角θ1が鈍角となる頂点P2,P6(即ち、ビア導体27が存在しない箇所27cの近傍にある頂点)同士の距離D2(図2参照)が最も短くなる。
次に、本実施の形態におけるセラミック配線基板11の製造方法について説明する。
アルミナ粉末を主成分とするセラミック材料を用いてグリーンシートを複数枚形成する。そして、複数枚のグリーンシートに対し、レーザ加工を行って、所定の位置に複数の貫通孔を形成する。なお、貫通孔の形成は、パンチング加工、ドリル加工等によって行ってもよい。
その後、従来周知のペースト印刷装置(図示略)を用い、各グリーンシートの貫通孔に導電性ペースト(例えばタングステン、モリブデンペースト)を充填し、ビア導体27となる未焼成のビア導体部31を形成する。さらに、従来周知のペースト印刷装置を用いて、導電性ペーストを印刷して未焼成の導体層33を形成する。なお、導電性ペーストの充填及び印刷の順序は逆にしてもよい。
そして、導電性ペーストの乾燥後、それら複数枚のグリーンシートを積み重ねて配置し、シート積層方向に押圧力を付与することにより、各グリーンシートを圧着、一体化してセラミック積層体を形成する。次に、セラミック積層体を脱脂し、さらに所定温度で所定時間焼成を行う。その結果、グリーンシートのアルミナ及びペースト中のタングステンが同時焼結し、ビア導体27及び導体層33を有する基板本体23が形成される。さらに、基板本体23の第1面21及び第2面22に、銅ペーストを用いた印刷によって第1面側電極パッド24及び第2面側電極パッド25を形成する。なお、各電極パッド24,25は、銅ペーストの印刷以外に銅めっき等によって形成してもよい。また、導体層33と同様に導電性ペーストの印刷後、グリーンシートと同時焼結させることで各電極パッド24,25を形成してもよい。以上の工程によってセラミック配線基板11が製造される。
本実施の形態のセラミックパッケージ10では、電力用半導体素子12がオンオフすることで、セラミック配線基板11に熱ストレスが加わる。このとき、セラミック配線基板11の各ビアアレイ28では、セラミック層32の頂点P2,P4,P6部分における発生応力が緩和されるため、クラックの発生が抑制される。
本発明者らは、シミュレーション解析により、ビアアレイ28の最外周を構成する複数の外側ビア導体27aのうち、中心C1が仮想図形P1の頂点P2−1,P2−2となる外側ビア導体27aにおいて、セラミック層32に発生する応力が緩和されることを確認した。ここでは、直径を200μmとした外側ビア導体27a及び内側ビア導体27bを縦横等ピッチ(300μm)で配置させたものを対策前のベースモデル(図4参照)とする。また、四角形状に描画された仮想図形P7(図4参照)から四隅(頂点P7−1)にある外側ビア導体27aを欠落させたものを対策後のモデル(図5参照)とする。そして、各モデルにおいて高温から低温に温度変化させたときの外側ビア導体27aの周囲及び内側ビア導体27bの周囲に働く応力を確認した。なお、セラミック層32(アルミナ)の熱膨張係数を7.6ppm/K、ビア導体27a,27bの熱膨張係数を5.6ppm/K、温度変化を焼成温度である1540℃から−50℃(熱サイクル最低温度)を計算条件として、シミュレーションを行った。
その結果、ベースモデルでは、頂点P7−1の周囲には、最大で960MPaの応力が加わることが確認された。一方、対策後のモデルでは、頂点P2−1の周囲に加わる最大応力が885MPa、頂点P2−2の周囲に加わる最大応力が881MPaであるため、最大応力が8%程度減少していることが確認された。
また、本発明者らは、上記のように製造したセラミック配線基板11について、−50℃〜240℃の熱衝撃試験を繰り返し行い、仮想図形P1の頂点P2−1,P2−2の部分において、クラックの発生が抑制されることを確認した。
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施の形態のセラミック配線基板11では、電力用半導体素子12を駆動する際に、ビアアレイ28を構成する複数のビア導体27に対して、第1面側電極パッド24や第2面側電極パッド25を介して同じ方向に電流が流れ、ジュール熱が発生する。また、基板本体23の第1面21側に搭載された電力用半導体素子12にも電流が流れてその電力用半導体素子12が発熱する。このとき、ビアアレイ28では、ビア導体27とセラミック層32との熱膨張係数の違いによって応力が発生する。そこで、本実施の形態では、ビアアレイ28の仮想図形P1,P3,P5を、複数の頂点P2,P4,P6を有する多角形状とし、各頂点P2,P4,P6の内角θ1を鈍角としている。このようにすると、基板本体23においてビア導体27間の領域に発生する応力が比較的大きくなる頂点P2,P4,P6の部分においてその発生応力を緩和することができる。この結果、セラミック配線基板11において、熱ストレスが加わる頻度を抑えることができ、ビア導体27間でのクラックの発生を抑制することができる。
(2)本実施の形態では、特定のビアアレイ28aを構成するビア導体27a,27bのうち、隣接するビアアレイ28bに最も近い箇所に存在する外側ビア導体27aでの発生応力が緩和されるとともに、隣接するビアアレイ28bを構成するビア導体27a,27bのうち、特定のビアアレイ28aに最も近い箇所に存在する外側ビア導体27aでの発生応力が緩和される。また、特定のビアアレイ28aを構成するビア導体27a,27bのうち、隣接するビアアレイ28cに最も近い箇所に存在する外側ビア導体27aでの発生応力が緩和されるとともに、隣接するビアアレイ28cを構成するビア導体27a,27bのうち、特定のビアアレイ28aに最も近い箇所に存在する外側ビア導体27aでの発生応力が緩和される。その結果、隣接するビアアレイ28a〜28c間でのクラックの発生を確実に防止することができる。
(3)本実施の形態において、セラミック配線基板11に搭載される電力用半導体素子12は、10A以上の電流が流れることで200℃以上の温度に発熱するパワー半導体素子である。このような電力用半導体素子12を搭載するセラミック配線基板11では、使用時における熱ストレスが大きくなるが、上記のようにビアアレイ28におけるビア導体27間での発生応力を抑制することにより、クラックの発生を確実に防止することができる。
(4)本実施の形態のセラミック配線基板11は、電流の流れる方向が異なる複数のビアアレイ28を備えている。このセラミック配線基板11では、ビアアレイ28間でのクラックの発生を抑制できることから、異なる方向に電流が流れる2つのビアアレイ28を近接して設けることが可能となり、セラミック配線基板11の小型化が可能となる。
なお、本発明の実施の形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、仮想図形P1が有する複数(8個)の頂点P2のうち全ての頂点P2の内角θ1が鈍角となっていた。しかし、各頂点P2のうち、1個のみの頂点P2の内角を鈍角としてもよいし、2個以上7個以下の頂点P2の内角を鈍角としてもよい。同様に、上記実施の形態では、仮想図形P3が有する複数(10個)の頂点P4のうち9個の頂点P4の内角が鈍角となっていたが、全ての頂点P4の内角を鈍角としてもよいし、1個以上8個以下の頂点P4の内角を鈍角としてもよい。また、上記実施の形態では、仮想図形P5が有する複数(10個)の頂点P6のうち9個の頂点P6の内角が鈍角となっていたが、全ての頂点P6の内角を鈍角としてもよいし、1個以上8個以下の頂点P6の内角を鈍角としてもよい。
・上記実施の形態のセラミック配線基板11は、電流の流れる方向が異なる複数のビアアレイ28a〜28cを備えていた。しかし、ビアアレイ28a〜28cを構成する複数のビア導体27には、それぞれ同じ方向に電流が流れるようになっていてもよい。
・上記実施の形態において、ビアアレイ28を構成するビア導体27の断面形状が円形であったが、これに限定されるものではない。例えば、楕円形、三角形、四角形などの断面形状を有する複数のビア導体によってビアアレイを形成してもよい。
・上記実施の形態では、ビア導体27が、2つのビア導体部31をセラミック層32の積層方向に連結することによって構成されていた。しかし、ビア導体27は、基板本体23の第1面21から第2面22に延びる1本の導体であってもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1において、前記ビア導体群を複数備え、それぞれのビア導体群の前記仮想図形が有する前記複数の頂点のうち、少なくとも前記基板本体の中心近傍に位置する頂点の内角を鈍角としたことを特徴とするセラミック配線基板。
(2)手段1において、前記ビア導体群は、3行以上×3列以上の格子状となるよう配置されたビアアレイであることを特徴とするセラミック配線基板。
(3)手段1において、前記ビア導体は断面円形状をなすことを特徴とするセラミック配線基板。
(4)手段1において、前記電力用半導体素子は、200℃以上の温度に発熱するパワー半導体素子であることを特徴とするセラミック配線基板。
(5)手段1において、前記電力用半導体素子は、10A以上の電流が流れるパワー半導体素子であることを特徴とするセラミック配線基板。
(6)手段1において、同じビア導体群を構成する前記複数のビア導体にはそれぞれ同じ方向に電流が流れることを特徴とするセラミック配線基板。
(7)手段1において、電流の流れる方向が異なる複数の前記ビア導体群を備えていることを特徴とするセラミック配線基板。
(8)手段1において、前記第2面側には、前記第1面側電極パッド、前記第2面側電極パッド及び前記複数のビア導体に電気的に接続される受動部品が搭載可能であることを特徴とするセラミック配線基板。
(9)手段1において、前記基板本体は、ビア導体部が設けられた複数のセラミック層を積層配置してなり、前記ビア導体は、複数の前記ビア導体部を前記セラミック層の積層方向に連結することによって構成され、複数の前記ビア導体部は、前記セラミック層の積層方向において同軸上に配置されていることを特徴とするセラミック配線基板。
(10)セラミック材料を用いて第1面及び第2面を有する板状に形成される基板本体と、前記第1面上に配置される第1面側電極パッドと、前記第2面上に配置される第2面側電極パッドと、前記第1面側電極パッドと前記第2面側電極パッドとを接続する複数のビア導体からなるビア導体群とを備えるセラミック配線基板、及び、前記第1面側に搭載され、前記第1面側電極パッド、前記第2面側電極パッド及び前記複数のビア導体に電気的に接続される電力用半導体素子からなるセラミックパッケージであって、前記ビア導体群を構成する前記複数のビア導体が全体として格子状に配置され、前記ビア導体群の最外周を構成する前記ビア導体の中心を線分で繋ぐことによって得られる仮想図形は、複数の頂点を有する多角形状をなし、前記複数の頂点のうち少なくとも1つの頂点の内角が鈍角となっていることを特徴とするセラミックパッケージ。
11…セラミック配線基板
12…電力用半導体素子
21…第1面
22…第2面
23…基板本体
24…第1面側電極パッド
25…第2面側電極パッド
27…ビア導体
27a…ビア導体としての外側ビア導体
27b…ビア導体としての内側ビア導体
27c…ビア導体が存在しない箇所
28…ビア導体群としてのビアアレイ
28a…特定のビア導体群としてのビアアレイ
28b,28c…隣接するビア導体群としてのビアアレイ
C1…ビア導体の中心
D1,D2…内角が鈍角となる頂点同士の距離
P1,P3,P5…仮想図形
P2,P4,P6…頂点
L1…線分
L2…延長線
θ1…内角

Claims (4)

  1. セラミック材料を用いて第1面及び第2面を有する板状に形成される基板本体と、前記第1面上に配置される第1面側電極パッドと、前記第2面上に配置される第2面側電極パッドと、前記第1面側電極パッドと前記第2面側電極パッドとを接続する複数のビア導体からなるビア導体群とを備え、前記第1面側電極パッド、前記第2面側電極パッド及び前記複数のビア導体に電気的に接続される電力用半導体素子が前記第1面側に搭載可能なセラミック配線基板であって、
    前記ビア導体群を構成する前記複数のビア導体が全体として格子状に配置され、
    前記ビア導体群の最外周を構成する前記ビア導体の中心を線分で繋ぐことによって得られる仮想図形は、複数の頂点を有する多角形状をなし、前記複数の頂点のうち少なくとも1つの頂点の内角が鈍角となっている
    ことを特徴とするセラミック配線基板。
  2. 前記仮想図形は、前記複数の頂点のうち全ての頂点の内角が鈍角となっていることを特徴とする請求項1に記載のセラミック配線基板。
  3. 前記ビア導体群を複数備え、
    特定のビア導体群の前記仮想図形が有する前記複数の頂点と、前記特定のビア導体群に隣接するビア導体群の前記仮想図形が有する前記複数の頂点との距離のうち、内角が鈍角となる頂点同士の距離が最も短い
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック配線基板。
  4. 同じビア導体群において、前記仮想図形を構成する複数の辺から延びる延長線同士の交差部分に、前記ビア導体が存在しない箇所が設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセラミック配線基板。
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