JP6422046B2 - Stx2阻害4価ペプチドおよびこのStx2阻害4価ペプチドを含む治療薬 - Google Patents

Stx2阻害4価ペプチドおよびこのStx2阻害4価ペプチドを含む治療薬 Download PDF

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Description

本発明は、Stx2阻害4価ペプチドおよびこのStx2阻害4価ペプチドを含む治療薬に関する。
大腸菌O157: H7に代表される腸管出血性大腸菌(Enterohaemorrhagic E.coli; EHEC)の感染は、下痢や出血性大腸炎ばかりでなく時に溶血性尿毒症症候群や脳症等の生命に関わる重篤な合併症を併発する。EHECは主要な病原因子としてシガ毒素(Shiga toxin; Stx)を産生し、腸管上皮細胞の傷害を引き起こす。その一方で、Stxが循環血中に侵入すると、脳や腎臓の血管内皮細胞が傷害を受け、これらの重篤な合併症が引き起こされる。したがって、Stxの毒性を阻害する薬剤の開発は、EHEC感染症に対する有効な治療薬になると期待される。
これまでに、StxにはStx1ならびにStx2の2つのファミリーが存在すること、さらにStx1ファミリーには、Stx1a, Stx1c, Stx1dが、Stx2ファミリーには、Stx2a, Stx2b, Stx2c, Stx2d, Stx2e, Stx2f, Stx2gなど様々なサブタイプが存在することが示されている。特にStx2a, Stx2c, Stx2dは毒性が高く、症状の重篤化との密接な関連が指摘されている。したがって、これらサブタイプに対する阻害剤の開発が急務である。
StxはAB5型の毒素で、Aサブユニットはタンパク質合成を阻害する毒素本体であり、Bサブユニット5量体は標的細胞膜への結合、ならびにAサブユニットの細胞内への輸送に関与している。Bサブユニットが認識する標的細胞上の受容体は、糖脂質の1種globotriaosyl ceramide (Galα(1-4)-Galβ(1-4)-Glcβ1-ceramide; Gb3)であり、Bサブユニットはそのグロボ3糖部を特異的に認識する。Bサブユニット1分子にはサイト1、2、3の3種類のグロボ3糖結合部位が存在しており、したがって、5量体では最大15分子のグロボ3糖を結合し、結合親和性を著しく亢進させている。このように、ある機能分子とそのリガンドとの相互作用において、1対1の場合に比べて多価対多価の相互作用によって著しくその結合親和性が亢進する現象は、「クラスター効果」と呼ばれている。
本発明者らは、Stx1およびStx2のBサブユニットとグロボ3糖の結合にはクラスター効果が存在するとの知見から、1分子中に複数個のランダムペプチドライブラリーを有し、それ自体がクラスター効果を発揮する多価型ペプチドライブラリーを開発している(特許文献1)。そして、Stx1aならびにStx2aのBサブユニットに存在するグロボ3糖結合部位、サイト1ならびにサイト3をそれぞれ標的として、この多価型ペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、一連の新規Stx阻害ペプチドを開発している(特許文献1、2)。
さらに、本発明者らは、この多価型ペプチドライブラリーを応用したスクリーニング方法も開発している。具体的には、配列既知のペプチドをクラスター効果が発揮できるよう多価形の形状で、1枚のセルロースシート上に多数スポット合成し、このシート上にスポット合成された多価型ペプチドを、Stx1aのBサブユニットグロボ3糖結合部位、サイト2との高親和性結合を指標にスクリーニングすることにより、11種の新規なStx1a阻害ペプチドを開発している(特許文献3)。
WO2006/001542号公報 特開2011‐079808号公報 特開2011‐158341号公報
以上の通り、これまでの研究においては、主にStx1aならびにStx2aを対象としてStx阻害ペプチドを開発してきたが、毒性が高いStx2d、Stx2cに対する阻害ペプチド(阻害薬)についての検討は必ずしも十分になされていなかった。
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、これまでに同定した各種Stx阻害ペプチドの配列情報ならびに多価型ペプチドシート合成技術(特許文献3)を活
用して、Stx2dおよびStx2cのBサブユニットのグロボ3糖結合部位を標的とした新規な阻害ペプチドを提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明のStx2阻害4価ペプチドは、Stx2dまたはStx2cに結合して毒性を阻害するStx2阻害4価ペプチドであって、3つのリジン(Lys)が結合して形成された以下の分子核構造
の端部に位置する4つのアミノ基の各々に、配列番号1または2のペプチドモチーフの1種が、直接またはスペーサーを介して結合している。
このStx2阻害4価ペプチドでは、スペーサーは、炭素数4〜10の炭化水素鎖を有することが好ましい。
本発明の治療薬は、Stx2dまたはStx2cに起因する疾患の治療薬であって、前記Stx2阻害4価ペプチドを含有することを特徴としている。
この治療薬では、治療対象となる疾患が、腸管出血性大腸菌感染症であることが好ましい。
本発明のStx2阻害4価ペプチドによれば、Stx2(特にStx2dおよびStx2c)に対して高い結合親和性で結合して、細胞毒性を効果的に阻害することができる。
M,A,UはそれぞれMet, Ala, アミノカプロン酸を示す。XはCys以外の19種のアミノ酸の混合物を使用して合成を行ったことを示す。 セルロースシート上に合成された4価ペプチドの構造を示した概要図である。 シート上にスポット合成された各4価ペプチドが持つモチーフの配列と、シート上での位置情報を示す図である。各モチーフは全て、XMXRRRRの構造を持つ。図中右にXMX部の配列を示している。 シート上に合成された4価ペプチドに対するHis-標識Stx2d BサブユニットならびにHis-標識Stx2d BサブユニットN16Aの結合能力の定量解析の結果を示した表である。 Stx2aに対するMMA-tet、MMM-tet、MMS-tet、MMV-tet、MMK-tetの毒性阻害活性を示す図である。 Stx2dに対するMMA-tet、MMM-tet、MMS-tet、MMV-tet、MMK-tetの毒性阻害活性を示す図である。 Stx2aに対するMMA-tet、QMA-tet、IMA-tet、LMA-tet、KMA-tet、RMA-tetの毒性阻害活性を示す図である。 Stx2dに対するMMA-tet、QMA-tet、IMA-tet、LMA-tet、KMA-tet、RMA-tetの毒性阻害活性を示す図である。 ベロ細胞に対するMMA-tet、MMM-tet、MMS-tet、MMV-tet、MMK-tetの毒性阻害活性を示す図である。 ベロ細胞に対するQMA-tet、LMA-tet、IMA-tet、KMA-tet、RMA-tetの毒性阻害活性を示す図である。 Stx2cに対するMMA-tet、MMM-tet、LMA-tetの毒性阻害活性を示す図である。
本発明のStx2阻害4価ペプチドは、Stx2に高い結合親和性で結合することによって、Stx2の細胞毒性を阻害するものである。具体的には、本発明のStx2阻害4価ペプチドは、特にStx2d、Stx2cに対して優れた毒性阻害効果を発揮する。
本発明のStx2阻害4価ペプチドは、3つのリジン(Lys)が結合して形成された分子核構造の端部に位置する4つのアミノ基の各々に、以下のペプチドモチーフ(配列番号1〜6)、
配列番号1:Met-Met-Met-Arg-Arg-Arg-Arg(MMMRRRR)
配列番号2:Leu-Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg(LMARRRR)
配列番号3:Met-Met-Val-Arg-Arg-Arg-Arg(MMVRRRR)
配列番号4:Met-Met-Ser-Arg-Arg-Arg-Arg(MMSRRRR)
配列番号5:Gln-Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg(QMARRRR)
配列番号6:Ile-Met-Ala-Arg-Arg-Arg-Arg(IMARRRR)
のうちの1種が結合したものである。
すなわち、本発明のStx2阻害4価ペプチドは、例えば、以下の化学式、
において、分子核構造の端部に位置するXXXX部に、配列番号1〜6のペプチドモチーフのうちの1種が4つ組み込まれた4価ペプチドが例示される。
以下、配列番号1のペプチドモチーフを有するStx2阻害4価ペプチドを「MMM-tet」、配列番号2のペプチドモチーフを有するStx2阻害4価ペプチドを「LMA-tet」、配列番号3のペプチドモチーフを有するStx2阻害4価ペプチドを「MMV-tet」、配列番号4のペプチドモチーフを有するStx2阻害4価ペプチドを「MMS-tet」、配列番号5のペプチドモチーフを有するStx2阻害4価ペプチドを「QMA-tet」、配列番号6のペプチドモチーフを有するStx2阻害4価ペプチドを「IMA-tet」と記載する。
また、上記化学式では、分子核構造の両端に位置する4つのアミノ基の各々に、スペーサーが結合している形態を例示しているが、スペーサーを介さず、4つのアミノ基の各々に、直接、配列番号1〜6のペプチドモチーフを結合させることもできる。スペーサーを結合させる場合、Stx2毒性に対する阻害活性を損なわないものであればよく、具体的な分子、長さは限定されない。スペーサーとしては、例えば、末端にアミノ酸を有する炭素数4〜10程度の鎖長のものが好ましく、Stx毒性阻害活性としては、特に上記化学式中の「U」で示される、amino hexanoic acid [NH2-(CH2)5-COOH](アミノカプロン酸)を好ましく例示することができる。また、スペーサーに含まれるアミノ酸としては、例えば、アラニン(A)を例示することができる。
さらに、本発明のStx2阻害4価ペプチドは、4つのペプチドモチーフ(配列番号1〜6)の各々の末端に修飾分子を有していることが好ましい。
また、ペプチドモチーフの末端にNH2が露出するとプラス電荷になることから、電荷調節の観点からは、配列番号1〜6のペプチドモチーフの各々の末端に、修飾分子としては、電荷がない分子、さらには、疎水性の分子を結合させることも考慮される。例えば、Stx2阻害4価ペプチド、またはこれを含有する治療薬を経口投与する場合、消化管内でのプロテアーゼによる分解を抑えるための安定化を目的として、末端のNH2をアセチル基により保護することができる。これによって、本発明のStx2阻害4価ペプチドは、Stx2毒性に対する阻害活性が増大する。このように、ペプチドモチーフの末端の修飾分子は適宜選択することができる。
なお、上記化学式で例示するペプチドは、末端にMA(Met−Ala)を有しているが、これは、後述の実施例において、スクリーニングの際に導入したものを例示しており、上記化学式のMAは、本発明のStx2阻害4価ペプチドにおいては必ずしも必要ではない。
そして、本発明のStx2阻害4価ペプチドの作成方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ペプチド合成装置等を利用するなどの方法によって作製することができる。
以上のとおり、本発明のStx2阻害4価ペプチドは、配列番号1〜6のペプチドモチーフのうちの1種を4つ有する4価のペプチドであり、クラスター効果によって、Stx2(特にStx2dおよびStx2c)に対して強い結合親和性を発揮し、効果的にStx2(特にStx2dおよびStx2c)の細胞毒性を阻害することができる。
本発明のStx2阻害4価ペプチド(MMM-tet、LMA-tet、MMV-tet、MMS-tet、QMA-tet、IMA-tet)は、Stx2のサブタイプのうち、Stx2aに対しては、本発明者が従来見出したMMA-tet(特許文献2)と比較して遜色のない阻害活性を発揮する。
また、MMV-tet、MMS-tet、QMA-tet、IMA-tetは、Stx2のサブタイプのうち、Stx2dおよびStx2cに対して、MMA-tet(特許文献2)と比較して遜色のない阻害活性を発揮する。
一方、MMM-tetおよびLMA-tetは、Stx2のサブタイプのうち、特にStx2dおよびStx2cに対して、格別顕著な毒性阻害効果を発揮する。具体的には、MMM-tetおよびLMA-tetは、Stx2dおよびStx2cに対して、例えば、MMA-tetよりも2.5〜3倍強い毒性阻害活性を有している。
そして、本発明のStx2阻害4価ペプチドを含有する治療薬によれば、Stx2に起因する疾患、例えば、腸管出血性大腸菌感染症などを効果的に治療することができる。
本発明のStx2阻害4価ペプチドはStx2阻害活性を有することから、このStx2阻害4価ペプチドを含有する薬剤はStx2に起因する疾患の治療薬となる。
Stx2に起因する疾患の治療薬には、上記Stx2阻害4価ペプチド以外に、任意の製薬上許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することにより調製され保存することができる。
許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる用量および濃度において患者に非毒性であることを条件として、剤形や投与経路に応じて適宜に選択することができる。
具体的には、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、ポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤などを例示することができる。
なお、体内に投与される薬剤は無菌であることが望ましい。また、徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、固体疎水性ポリマーの半透性マトリクス(例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形状)である。除放性マトリクスの例は、ポリエステルヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸およびγ-エチル-L-グルタメート、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ-(D)-3-ヒドロキシブチル酸などを例示することができる。
このようにして製剤化した治療薬は、例えば、疾患の種類や症状に応じて、経口投与、局所投与、あるいは静脈等を介して全身投与することができる。投与量は、患者の体重、症状等に応じて決定することができ、例えば、1回当たり約5〜100mg/Kg、目安としては、約5〜10mg/Kg程度とすることができる。
本発明の治療薬は、Stx2阻害4価ペプチドを含有し、効果的にStx2(特にStx2dおよびStx2c)の細胞毒性を阻害することができるため、Stx2産生性腸管出血性大腸菌感染症などの治療に有効利用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
1)シート上に合成する配列既知4価ペプチドライブラリーのデザイン
これまでに、本発明者らは、多価型ペプチドライブラリー法を用い、Stx1a Bサブユニットに存在するグロボ3糖結合部位、サイト1を標的として、4価ペプチドから構成されるStx1a阻害ペプチド;MMA-tet(化学式に示す多価型ペプチドライブラリーの構造中、-XXXX-部の配列が、MMARRRR(配列番号10)のもの)を開発している(特許文献1)。
そして、興味深いことに、MMA-tetはStx2aに対しても強い阻害活性を示し、さらにその活性は、特許文献1で報告しているStx2a阻害ペプチド、PPP-tet(図1に示す多価型ペプチドライブラリーの構造中、-XXXX-部の配列が、PPPRRRR(配列番号11)のもの)よりも強い。すなわち、MMA-tetはファミリーを超えて阻害活性を示すStx阻害ペプチドであるということができる。
一方で、Stx2aとStx2dのBサブユニットはホモロジーが高く、2アミノ酸の相違(Stx2aのAsp16がStx2d ではAsn16に、Asp24がAla24になっている)しかないこと、そして、このうちStx2d Bサブユニットのグロボ3糖結合部位に存在しているのはAsn16のみであることが見出されている。
以上の知見から、Stx2d BサブユニットのAsn16を標的として、高い親和性で結合活性を示すモチーフ取得するためのライブラリーは、MMA-tetの配列情報を基本としてデザインすることとした。
具体的には、MMA-tetを構成するStx結合モチーフ、MMARRRRのうち、2番目のMet、ならびに4番目から7番目のArgのクラスターはStx Bサブユニットへの結合に重要な役割を果たしているとの推測に基づいて、MMARRRRのうち、1番目のMet、3番目のAlaをそれぞれCys以外の19種のアミノ酸に置換した38種のペプチドをStx結合モチーフとして使用することにした。この際、特許文献2のスクリーニング方法(多価型ペプチドシート合成技術)を用い、それぞれのモチーフを4価で有するペプチド性化合物をセルロース上にスポット合成した。
合成に際しては、intavis AG社のスポットペプチドシンセサイザーを使用した。まずセルロースシート(Intavis AG社)上に存在するアミノ基に対して、Fmoc-βAla、続いてFmoc-アミノカプロン酸を反応させ、十分なスペーサー長を確保した。次にペプチド鎖を4価に分岐させるために、FmocLys(Fmoc)を2回連続で反応させ、形成された4個のアミノ基に対して均等にそれ以降の配列を与えるよう伸長反応を行った。この操作により、セルロースシート上に合成される4価ペプチドは、図2に例示したように、上記化学式および図1に示す多価型ペプチドライブラリーの核構造と同一視できる核構造を有していると考えることができる。
2)Stx2d BサブユニットのAsn16を標的とする新規ペプチドモチーフの同定
Stx2d BサブユニットのAsn16を標的として結合するペプチドモチーフを取得するために、Stx2d BサブユニットのAsn16のAla置換体(N16A)を作成し、スクリーニングに使用した。
上記1)で説明した38種の4価ペプチドをスポット合成したシートを2枚用意し、5 %スキムミルクでブロッキング後、一つはI125-His-標識Stx2d Bサブユニット(1μg/ml)と、もう一つはI125-His-標識Stx2d BサブユニットN16A(1μg/ml)と、それぞれ室温、1時間インキュベーション後、洗浄し、BAS3000にてシート上に結合した放射活性を検出し(図3)、定量解析を行った(図4)。
以上の操作により、シート上にスポット合成された各4価ペプチドが持つモチーフの配列と、シート上での位置情報を図3に示す。図3では、シート上に合成された4価ペプチドに対するHis-標識Stx2d BサブユニットならびにHis-標識Stx2d BサブユニットN16Aの結合が示されている。
さらに、定量解析は、各スポットの濃さ(PSL)を定量し、各群の化合物のPSL値の総計が19になるように補正表示した。すなわち、各化合物の間で結合に差が全く存在しない場合には、値は全て1.0となる。さらに、補正後のStx2d Bサブユニットへの結合量を、補正後のStx2d BサブユニットN16Aへの結合量で割った値を2dBH/N16A(結合比)として示し、この値についても総計が19になるように補正して表示した。
図4に、シート上に合成された4価ペプチドに対するHis-標識Stx2d BサブユニットならびにHis-標識Stx2d BサブユニットN16Aの結合能力の定量解析の結果を示す。図4ではStx2d Bサブユニットとの結合能力が高い順番に表示してある。
図4に示したように、I125-Stx2d Bサブユニットに強く結合することを指標にして、以下に示す9種のモチーフを決定した。
MMKRRRR(配列番号7)
MMVRRRR(配列番号3)
MMSRRRR(配列番号4)
MMMRRRR(配列番号1)
KMARRRR(配列番号8)
LMARRRR(配列番号2)
QMARRRR(配列番号5)
IMARRRR(配列番号6)
RMARRRR(配列番号9)

このうち、I125-Stx2d Bサブユニット/ I125-Stx2d BサブユニットN16Aの結合比に着目したところ、特にMMMRRRRならびにLMARRRRが高い値を示すことが明らかとなった。
3)Stx2dに対して強い阻害活性を示す新規ペプチド性化合物の同定
2)に示した9種のモチーフをそれぞれ図1(化学式)の-XXXX-部に組み入れ、9種の新規ペプチド性化合物(以下、MMK-tet,MMV-tet,MMS-tet,MMM-tet,KMA-tet, LMA-tet, QMA-tet, IMA-tet、RMA-tetと記載する)を合成した。なお、図1(化学式)で例示するペプチドは、末端にMA(Met−Ala)を有しているが、これは、スクリーニングのために導入したものである。
合成した9種の化合物ならびに特許文献2で報告しているMMA-tetについて、ベロ細胞に対するStx2aならびにStx2dの細胞障害活性に対する阻害効果を検討した。細胞障害活性は、Stx2a(10 pg/ml)あるいはStx2d(80 pg/ml)とベロ細胞を、各濃度のペプチド性化合物存在下37℃で72時間培養し、細胞の生存率をWST-1 Cell Counting kit(Wako)にて測定することによって評価した。
図5に、Stx2aに対するMMA-tet、MMM-tet、MMS-tet、MMV-tet、MMK-tetの毒性阻害活性を示す。図6に、Stx2dに対するMMA-tet、MMM-tet、MMS-tet、MMV-tet、MMK-tetの毒性阻害活性を示す。図7に、Stx2aに対するMMA-tet、QMA-tet、IMA-tet、LMA-tet、KMA-tet、RMA-tetの毒性阻害活性を示す。図8に、Stx2dに対するMMA-tet、QMA-tet、IMA-tet、LMA-tet、KMA-tet、RMA-tetの毒性阻害活性を示す。
また、図9に、ベロ細胞に対するMMA-tet、MMM-tet、MMS-tet、MMV-tet、MMK-tetの毒性阻害活性を示す。図10に、ベロ細胞に対するQMA-tet、LMA-tet、IMA-tet、KMA-tet、RMA-tetの毒性阻害活性を示す。
図5、図6に示したように、MMK-tetは、図4に示したように非常に強くStx2d Bサブユニットに結合するにも関わらず、Stx2dならびにStx2aに対する毒性阻害活性が弱く、高濃度では阻害効果が減弱してしまうことが明らかとなった。これは、MMK-tetではそのモチーフ中に塩基性アミノ酸が5個以上存在することになり、そのために高濃度にすると単独でもベロ細胞に対して毒性を発揮してしまうためであると考えられる(図9)。同様の効果はKMA-tet、RMA-tetでも観察される(図10)。
また、図5、図7に示したように、Stx2aに対してMMS-tetはMMA-tetよりも若干阻害効果は減弱するが、その他については、MMA-tetと同等の阻害活性を示した。
これに対し、図6、図8に示したように、Stx2dに対しては、MMM-tet、LMA-tetの2種がMMA-tetよりも優れた阻害活性を示すこと、その他についても細胞毒性の強いMMK-tet、KMA-tet、RMA-tet以外はMMA-tetとほぼ同等の阻害活性を示す事が明らかとなった。
なお、MMV-tet、MMS-tet、MMM-tet、LMA-tet、QMA-tet、IMA-tetは単独ではベロ細胞に対する細胞毒性を全く示さないことが確認された(図9、図10)。
以上の結果は、Stx2dの毒性を選択的、かつこれまでに同定している最も強いStx阻害ペプチド(MMA-tet)よりもより強力なStx2阻害ペプチドが2種(MMM-tet、LMA-tet)確立できたことを示している。
また、Stx2dとStx2cは、そのBサブユニットのアミノ酸配列が同一であることから、上記の結果から、本発明のStx2阻害4価ペプチド(特にMMM-tet、LMA-tet)は、Stx2cに対しても強力な阻害活性を有していると考えられる。
そこで、本発明のStx2阻害4価ペプチドのMMM-tetおよびLMA-tetとMMA-tetとについて、Stx2cの細胞毒性に対する阻害効果を検討した。具体的には、Stx2c(80 pg/ml)とベロ細胞を、各濃度のペプチド性化合物(MMM-tet、LMA-tet、MMA-tet)存在下37℃で72時間培養し、細胞の生存率をWST-1 Cell Counting kit(Wako)にて測定することによって評価した。
結果を図11に示す。図11に示したように、Stx2dの場合と同様に、MMM-tetおよびLMA-tetは、Stx2cに対してもMMA-tetよりも優れた毒性阻害効果を有していることが確認された。

Claims (4)

  1. Stx2dまたはStx2cに結合して毒性を阻害するStx2阻害4価ペプチドであって、3つのリジン(Lys)が結合して形成された以下の分子核構造
    の端部に位置する4つのアミノ基の各々に、配列番号1または2のペプチドモチーフの1種が、直接またはスペーサーを介して結合していることを特徴とするStx2阻害4価ペプチド。
  2. スペーサーは、炭素数4〜10の炭化水素鎖を有することを特徴とする請求項1のStx2阻害4価ペプチド。
  3. Stx2dまたはStx2cに起因する疾患の治療薬であって、請求項1または2のStx2阻害4価ペプチドを含有することを特徴とする治療薬。
  4. 治療対象となる疾患が、腸管出血性大腸菌感染症であることを特徴とする請求項3の治療薬。
JP2014013815A 2013-01-28 2014-01-28 Stx2阻害4価ペプチドおよびこのStx2阻害4価ペプチドを含む治療薬 Expired - Fee Related JP6422046B2 (ja)

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