JP6421546B2 - グリーン成形体の製造方法及び無機系焼結体の製造方法 - Google Patents

グリーン成形体の製造方法及び無機系焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複雑な形状のグリーン成形体又は無機系焼結体を成形できる製造方法に関する。
従来のセラミックス成形体、金属成形体等は、切削法、射出成形法(金属紛体射出成形法を含む)、光造形法、真空注型法等によって成形される。
セラミックスや金属等の粒子とバインダー樹脂との混合物を射出成形する方法としては、例えば、特許文献1、2に開示されたものがある。特許文献1のステンレス焼結体の製造方法においては、金属の原料粉末にバインダーを添加してなる組成物を射出成形する方法について記載されている。また、特許文献2の粉末による部品の製造方法においては、セラミックス又は金属の粉末に有機バインダーを添加した後、射出成形により成形体を成形し、さらにこの成形体を振動成形機によって振動成形することが記載されている。
また、セラミックス等の粒子とバインダー樹脂との混合物を光造形する方法としては、例えば、特許文献3に開示されたものがある。特許文献3のセラミックスの光学的成形方法においては、次のようにしてセラミックス立体形状体を成形している。まず、セラミックス粉末、結合剤及び溶媒を含むスラリーから所定厚さのセラミックスラリー層を形成し、これに光を照射してセラミックスラリー層を硬化させ、セラミック硬化層とする。そして、セラミック硬化層上に、上記と同様に形成されるセラミック硬化層を順次積層して、セラミックス立体形状体を成形している。
特開平11−181541号公報 特開平6−145715号公報 特開平6−329460号公報
セラミックスや金属等の粒子とバインダー樹脂との混合物に、射出成形又は光造形を行う際には、混合物の流動性を確保するために、混合物に多量のバインダーを含有させる必要がある。このバインダーは、セラミックスや金属等の焼結体を成形する際に除去している。しかしながら、混合物の成形体からバインダーを除去した際に形成される空洞の分布等により、焼結時に成形体が体積収縮する際に生じる歪みに起因して、成形する焼結体に破損が生じるおそれがある。また、成形できる焼結体の形状、寸法精度等にも限界がある。また、射出成形による場合、大型、厚肉等の焼結体の製品を成形することが困難であり、成形できる焼結体の製品が小型のものに限られる。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、バインダーの含有量を極力少なくすることができ、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体を精度良く得ることができるグリーン成形体の製造方法及び無機系焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、成形型の、一対の型部の間に形成されたキャビティ内に、(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する組成物を配置する配置工程と、
上記組成物を加熱して上記(B)成分を溶融させるとともに、真空手段を介して上記キャビティ内の圧力を上記一対の型部の外部の圧力よりも低くして、該一対の型部に吸引力を発生させることにより、上記キャビティの容積を縮小させて上記組成物を圧縮する圧縮工程と、
上記組成物を冷却し、上記(B)成分を固化させてグリーン成形体を得る冷却工程と、を含むことを特徴とするグリーン成形体の製造方法にある。
本発明の他の態様は、上記グリーン成形体の製造方法により得られたグリーン成形体を加熱して、上記(B)成分を除去する除去工程と、
上記グリーン成形体中の上記(A)成分を焼結させて無機系焼結体を得る焼結工程と、を行うことを特徴とする無機系焼結体の製造方法にある。
本発明のさらに他の態様は、(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する組成物が配置される、容積可変に構成されたキャビティを内部に有する成形型を用い、上記キャビティ内に配置された上記組成物を加熱し上記(B)成分を溶融させた後に冷却することによってセラミックス含有成形体を得る工程と、
該セラミックス含有成形体中の上記(A)成分を焼結させてセラミックス成形体を得る工程と、を含むことを特徴とするセラミックス成形体の製造方法にある。
上記グリーン成形体の製造方法の圧縮工程においては、組成物を加熱して成形型のキャビティ内のバインダーを溶融させるとともに、キャビティの容積を縮小させて組成物を圧縮する。このとき、バインダーは、無機系微粒子が成形型によって圧縮されるときの潤滑剤として機能すればよい。そのため、組成物中のバインダーの含有量は、組成物の潤滑性を確保できる量であればよく、組成物の流動性を確保する量とする必要はない。これにより、組成物中のバインダーの含有量を極力少なくすることができる。
そして、成形されるグリーン成形体中のバインダーの含有量も極力少なくなる。そのため、無機系焼結体の焼結時に、無機系微粒子によって構成されるグリーン成形体が体積収縮する際の歪み量を減らすことができ、無機系焼結体に破損が生じにくくすることができる。また、成形する無機系焼結体の形状、寸法精度を向上させることができ、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体を成形することができる。また、特に、小型の無機系焼結体に限られず、大型、厚肉等の無機系焼結体を成形することが可能になる。
それ故、上記グリーン成形体の製造方法によれば、バインダーの含有量を極力少なくすることができ、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体の立体造形物を精度良く得ることができる。
また、上記無機系焼結体の製造方法によれば、上記グリーン成形体の製造方法の場合と同様にして、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体の立体造形物を精度良く得ることができる。
また、上記セラミックス成形体の製造方法によれば、従来のセラミックス成形法では成形できない微細かつ複雑な形状のセラミックス成形体を得ることができる。
また、上記セラミックス成形体の製造方法によれば、従来のセラミックス焼成時に生じる体積収縮によって生じる歪みに起因する成形体の破損を効果的に防止することができる。
なお、グリーン成形体とは、(A)成分としてセラミックス含有微粒子を用いた場合に成形されるセラミックス含有成形体を含む概念である。また、無機焼結体とは、(A)成分としてセラミックス含有微粒子を用いた場合に成形されるセラミックス成形体を含む概念である。
実施態様にかかる、原位置にある一対の型部の間のキャビティに組成物を配置した状態を、正面から見た断面で示す説明図。 実施態様にかかる、原位置にある一対の型部の間のキャビティに組成物を配置した状態を、側方から見た断面で示す説明図。 実施態様にかかる、一方側型部における吸引口及び複数の吸引ゲートの形成状態を、上方から見た状態の断面で示す説明図。 実施態様にかかる、電磁波の照射を受けたバインダーが溶融して、一対の型部が互いに接近してキャビティの容積が縮小した状態を、正面から見た断面で示す説明図。 実施態様にかかる、互いに接近した一対の型部を維持する状態を、正面から見た断面で示す説明図。 実施態様にかかる、組成物を模式的に示す説明図。 実施態様にかかる、シリコーンゴムにおける光の透過率を示すグラフ。
上述したグリーン成形体の製造方法及び無機系焼結体の製造方法における好ましい実施の形態について説明する。
<組成物>
上記組成物は、(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する。さらに任意成分として、組成物は(C)分散剤及び(D)その他の添加剤等を含有することができる。組成物は、無機系微粒子、バインダー、必要に応じて分散剤及びその他の添加剤等を十分に撹拌して混合することによって製造することができる。また、この混合は、乾燥空気気流下において、紫外線を遮蔽した容器中において行うことが好ましい。
組成物は、無機系微粒子、バインダー等を混錬した後、所定の大きさに造粒して得られる固体状のものとすることができる。
(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する組成物は、固体状のものを用いることができる。ここで、固体状には、ペレット等の粒子状又は固形状がある。粒子状には、粉末状も含まれ、固形状には、シート状、ブロック状が含まれる。粒子状とは、球状、円筒状、その他粉砕品に見られる不定形状等の状態のことをいう。固形状とは、板状、棒状、線状等の状態をいう。
目的とするグリーン成形体の形状によって、粒子状、固形状の組成物を適宜選択することができる。また、固体状の組成物は、2種以上の形態のものを混合して用いることができる。
組成物が粒子状である場合には、用いることができる組成物の粒子径は、成形する成形品の厚み、すなわちキャビティの幅に依存するが、組成物の粒子径は、1〜3000μmの範囲内とすることができる。組成物の粒子径は、好ましくは、10〜300μmの範囲内とすることができる。
また、組成物の平均粒子径がこれらの範囲内であって、更に1〜100μmの範囲内の組成物の小形粒子を含有していると、キャビティへの組成物の充填に際して好ましい場合がある。粒子状の組成物の嵩比重(組成物の単位体積(1cm3)当たりの質量(g))は、組成物中に含まれる(A)成分及び(B)成分の材質及び配合量によって大きく影響される。粒子状の組成物の嵩比重は、0.4以上10以下が好ましく、より好ましくは0.45以上8以下、更に好ましくは0.5以上6以下である。
<(A)無機系微粒子>
上記無機系微粒子は、特に制限されない。無機系微粒子の好ましい具体例としては、金属単体を含有する微粒子(以下、「金属単体の微粒子」ともいう。)、金属化合物を含有する微粒子(以下、「金属化合物の微粒子」ともいう。)、黒鉛を含有する微粒子(以下、「黒鉛の微粒子」ともいう。)等を挙げることができる。また、金属化合物の微粒子を用いて得られるグリーン成形体からセラミックスである無機系焼結体を得る場合には、その金属化合物の微粒子自体はセラミックスでなくても、その金属化合物の微粒子を便宜上、「セラミックスの微粒子」ともいう。
無機系微粒子を金属化合物の微粒子又はセラミックスの微粒子とする場合には、無機酸化物、無機炭化物及び無機窒化物等を主成分とする微粒子を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸化物としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン及び酸化セリウムを挙げることができる。
無機炭化物としては、例えば、炭化ジルコニウム、炭化ケイ素等を挙げることができる。
無機窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等を挙げることができる。
無機系微粒子としては、酸化アルミニウム、シリカ、炭化ケイ素、ジルコニア又はイットリア、又はこれらの混合物等が好適に用いられる。
無機系微粒子の形状は、特に限定されないが、例えば、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状があり、好ましくは不定形状又は球状である。
窒素を用いたBET比表面積測定法による、無機系微粒子の比表面積は、好ましくは10〜1000m2/gであり、さらに好ましくは100〜500m2/gである。
無機系微粒子の平均粒径は、通常5〜500nmの範囲内にあり、好ましくは5〜70nmの範囲内、より好ましくは10〜50nmの範囲内であることが好ましい。無機系微粒子の平均粒径が5nm未満であると、無機系微粒子の製造が難しく、また、焼成時の体積収縮が大きくなり、焼結する無機系焼結体が割れやすくなる。一方、平均粒径が500nmを超えると、焼結する無機系焼結体の成形精度が悪化するおそれがある。
ここで無機系微粒子の粒径とは、無機系微粒子がいかなる形状であっても、その最長部の長さをいう。具体的には、無機系微粒子が球状である場合にはその直径であり、板状である場合には、その長辺の長さであり、棒状、繊維状である場合には、その長さである。これらの粒径は、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いた観察によって求めることができる。また、平均粒径とは、任意に100個の無機系微粒子の粒径を測定した場合の数平均粒径のことをいう。
上記圧縮工程において、組成物を加熱する際にマイクロ波を用いる場合、組成物に金属の微粒子が含まれていると、この金属の微粒子にスパークが発生するおそれが考えられる。スパークが発生した個所は、局所的な異常高温となり、グリーン成形体に悪影響を与えることが想定される。この場合、金属の微粒子の平均粒径が20μm以下と小さいことにより、スパークが発生する可能性を低下させて、局所的な異常高温の発生を防ぐことができる。
上記無機酸化物であるシリカ微粒子として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製の商品名:メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また、粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製の商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製の商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製の商品名:E220A、E220、富士シリシア(株)製の商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製の商品名:SGフレ−ク等を挙げることができる。
また、酸化アルミニウム(アルミナ)として市販されている商品としては、日産化学工業(株)製の商品名:アルミナゾル−100、−200、−520を挙げることができる。
アンチモン酸亜鉛粉末としては、日産化学工業(株)製の商品名:セルナックスを挙げることができる。
アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等としては、シーアイ化成(株)製の商品名:ナノテックを挙げることができる。
アンチモンドープ酸化スズとしては、石原産業(株) 製 商品名:SN−100D、ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品を挙げることができる。
酸化セリウムとしては、多木化学(株)製の商品名:ニードラール等を挙げることができる。
無機系微粒子を金属単体の微粒子とする場合において、金属単体としては、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、セリウム、鉄、白金、金、銀、銅等が挙げられる。
無機系微粒子を黒鉛の微粒子とする場合において、黒鉛とは、グラファイト、グラフェン、ダイヤモンド等の炭素の同素体を包含する概念である。
無機系微粒子は、上記組成物全量に対して90〜99質量%配合することが好ましい。無機系微粒子の配合量が90質量%未満であると、バインダーを少なくすることによる効果が薄れる。一方、無機系微粒子の配合量が99質量%を超えると、グリーン成形体の機械的強度が十分でない場合がある。
<(B)バインダー>
上記バインダーは、熱可塑性樹脂とすることができる。この場合には、グリーン成形体の強度を高めることができる。
また、上記バインダーは、加熱されたときに溶融して、冷却されたときに固化する性質を有するものであればよく、熱可塑性樹脂以外にも、ロウ、ワックス、含水ゲル等とすることもできる。含水ゲルの具体例としては、寒天(アガロース又はアガロペクチン)等の多糖類の含水ゲル、ゼラチン(コラーゲンの加水分解体)等のポリペプチドの含水ゲル等が挙げられる。
(B)バインダーとして用いる熱可塑性樹脂としては、電磁波を吸収して加熱される性質を有するものを用いることができる。
この熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有する重合体を含むものであれば、特に限定されず、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、ASA樹脂(アクリレート・スチレン・アクリロニトリル樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン樹脂)等のゴム強化スチレン系樹脂、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、環状オレフィン樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フッ素樹脂、イミド系樹脂、ケトン系樹脂、スルホン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、感光性樹脂、液晶ポリマー、生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱可塑性樹脂のうち、電磁波照射成形に用いる熱可塑性樹脂として好適なものとして、ゴム強化スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ、ゴム強化スチレン系樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ、ゴム強化スチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂のアロイ等が挙げられる。
さらに、上記熱可塑性樹脂は、非晶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。
成形型をゴム材料から形成した場合には、熱可塑性樹脂の冷却速度は、金型の場合に比べて遅くなる。そのため、結晶性の高い熱可塑性樹脂を用いると冷却中に結晶成長が進み、成形品の寸法精度が低下したり、成形品の耐衝撃性が低下したりすることがある。これに対し、熱可塑性樹脂を非晶性熱可塑性樹脂にすることにより、上記成形品の寸法精度の低下及び耐衝撃性の低下等を防止できる場合がある。
また、上記(B)成分であるバインダーの含有量は、上記組成物全量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。バインダーの含有量は、組成物全量に対して0.3質量%以上8質量%以下とすることがさらに好ましい。
組成物におけるバインダーの含有量は、圧縮工程において加熱される際の組成物の潤滑性を確保でき、かつグリーン成形体の強度を確保できる範囲内で極力少なくすることが好ましい。
<(C)分散剤>
上記組成物には、(A)無機系微粒子を組成物中に均一に分散させるための(C)分散剤を含有させることが好ましい。分散剤を少量添加することによって、組成物のチクソ性を抑制することができる。
(C)分散剤は、側鎖中に極性基を有する櫛形有機ポリマーであることが好ましい。分散剤は、側鎖にポリオキシアルキレン基を有し、主鎖にイオン性基を有する有機ポリマーであることがより好ましい。分散剤は、側鎖中にアルキレンオキシド構造単位を有し、主鎖骨格中に無水カルボン酸構造を有する有機ポリマーであることがさらに好ましい。
(C)分散剤として用いる、極性基を有する櫛形有機ポリマーの具体例としては、下記式(1)で表される繰り返し構造を有するポリマー等が挙げられる。
Figure 0006421546
式(1)中、R6は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレングリコール基からなる繰り返し構造を有する1価の有機基である。
極性基を有する櫛形有機ポリマーの市販品としては、マリアリムAKM−0531、AAS−0851、AAB−0851、AFB−1521(以上、日本油脂(株)製)等が挙げられる。
<(D)その他の任意添加成分>
上記組成物には、必要に応じて、(D)その他の添加剤等を目的に応じて配合することができる。以下、その例を列挙する。
(D)成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系もしくは有機系の充填材(ただし、(A)成分及び(B)成分を除く。)、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を挙げることができる。
また、(D)成分としては、(B)成分以外の樹脂、エラストマー、オリゴマー等を配合することもできる。(B)成分以外の樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル等であって熱可塑性を有しない樹脂が挙げられる。エラストマーとしては、ポリブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブテン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。オリゴマーとしては、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等を挙げることができる。
<グリーン成形体の製造方法>
本発明のグリーン成形体の製造方法は、成形型のキャビティ内に、(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する組成物を配置する配置工程と、上記組成物を加熱して上記(B)成分を溶融させるとともに、上記キャビティの容積を縮小させて上記組成物を圧縮する圧縮工程と、上記組成物を冷却し、上記(B)成分を固化させてグリーン成形体を得る冷却工程とを含む。
[配置工程]
上記配置工程は、成形型のキャビティ内に、(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する組成物を配置する工程である。キャビティ内に組成物を配置する方法は任意である。ただし、成形型が一対の型部から構成されている場合又は複数の型部に分割されて構成されている場合には、成形型を各型部に分解してキャビティとなり得る部位に組成物を配置した後、再び型部を組み合わせて成形型とする方法を採用することが好ましい。
[圧縮工程]
上記圧縮工程は、上記組成物を加熱して上記(B)成分を溶融させるとともに、上記キャビティの容積を縮小させて上記組成物を圧縮する工程である。
圧縮工程においては、キャビティ内に配置された組成物を加熱し溶融させる加熱手段と、キャビティの容積を縮小させるように成形型に圧力を印加する圧力印加手段とを用いることが好ましい。加熱手段は、上記配置工程及び上記圧縮工程において用いることができ、圧力印加手段は、上記圧縮工程及び上記冷却工程において用いることができる。
圧力印加手段は、上記配置工程及び上記圧縮工程において、少なくとも(B)バインダーが溶融を開始する前からバインダーの温度が低下し始めるまでの間、成形型への圧力の印加を継続するよう構成することができる。
この場合には、グリーン成形体を精度よく成形することができる。
また、(B)バインダーの温度が低下し始めたかどうかは、実際の材料温度によって判定することができる。ただし、成形型内の温度変化を正確に把握することは困難な場合も多い。そのため、上記加熱手段による加熱を終了した時点をもって、バインダーの温度が低下し始めたものとしてもよい。また、後述する冷却手段による冷却が開始された時点をもって、バインダーの温度が低下し始めたものとしてもよい。
また、上記圧力印加手段は、上記圧縮工程及び上記冷却工程において、溶融した(B)バインダーが固化するまでの間、成形型への圧力の印加を継続するよう構成することができる。
この場合には、バインダーが固化するまでの間、容積縮小後のキャビティの形状を維持することができる。そして、容積縮小後のキャビティの形状に沿った形状のグリーン成形体を精度よく成形することができる。
また、上記成形型は、上記キャビティの容積を縮小可能な構造に形成されており、上記圧力印加手段は、上記成形型を外から機械的に加圧する装置の他に、上記キャビティ内を減圧する装置とすることができる。
この場合には、キャビティ内が減圧されることによって、成形型の外部とキャビティの内部との圧力差を利用して、キャビティの容積を縮小させることができる。また、この場合には、キャビティ内が減圧されることによって、成形型の外部とキャビティの内部との圧力差を利用して、キャビティの容積を縮小させることができる。
成形型は、複数の型部に分割し、複数の型部が互いに接近する際に、複数の型部が合わさる面に形成されたキャビティの容積を縮小させる構造に形成することができる。
上記成形型は、電磁波を透過する性質を有するゴム材料から構成することができる。また、成形型は、一対の型部から構成し、キャビティは、一対の型部の互いに合わさる対向側に形成することができる。一対の型部を用いることによって、成形型のキャビティの容積を縮小させる構成を容易に実現することができる。
上記成形型は、その全体を弾性変形可能な弾性部材としてのゴムによって形成することができる。この場合には、成形型を、キャビティを開放するための分割面において複数に分割することが容易であり、成形型の製造が容易である。また、ゴムの弾性変形を利用してキャビティの容積を縮小させることもできる。
また、成形型は、その全体をセラミックス等から形成することもできる。この場合には、複数に分割した型部を互いに接近させる構造を採用して、キャビティの容積を縮小させることができる。また、成形型は、硬質の外型部分の内部に、弾性変形可能な弾性部材からなる内型部分を配置して形成することもできる。
また、上記キャビティ内の圧力を上記成形型の外部の圧力よりも低くするとともに、上記成形型に電磁波を照射して上記組成物を加熱することにより、上記キャビティの容積を縮小させることができる。
成形型への電磁波の照射により、組成物におけるバインダーを効果的に溶融させることができる。また、キャビティ内の圧力が成形型の外部の圧力よりも低いことにより、一対の型部の間には、組成物を圧縮しようとする力が作用している。そして、バインダーが溶融したときには、成形型の外部とキャビティ内との圧力差によって、無機系微粒子間の隙間が小さくなるように、一対の型部が互いに接近する。これにより、キャビティの容積を簡単な構成で容易に縮小させることができる。
また、上記圧力印加手段は、上記成形型を外部から加圧する装置とすることもできる。
この場合には、成形型の外部から加える圧力によって、キャビティの容積を縮小させることができる。
また、上記加熱手段は、組成物(無機系微粒子及びバインダーの少なくとも一方)と、成形型におけるキャビティ形成面との少なくとも一方に吸収される電磁波を照射する装置とすることができる。
この場合には、組成物及びキャビティ形成面の少なくとも一方に電磁波を吸収させて、バインダーを加熱・溶融させることができ、グリーン成形体を成形するための装置の構成を簡単にすることができる。この電磁波を照射する装置としては、0.78〜2μmの波長領域(近赤外線領域)を含む電磁波(以下、「近赤外線等電磁波」ともいう。)、又は0.0001〜100mの波長領域(マイクロ波領域、高周波領域)を含む電磁波(以下、「マイクロ波等電磁波」ともいう。)を照射する電磁波照射手段を用いることができる。なお、電磁波とは光を含む広い概念である。
また、成形型に電磁波を照射したときには、直接的に組成物を加熱することができ、成形型を介して間接的に組成物を加熱することもできる。具体的には、組成物は、電磁波を組成物中における無機系微粒子及びバインダーの少なくとも一方に吸収させて、加熱することができる。また、組成物は、電磁波を成形型に吸収させ、成形型からの熱伝導によって、加熱することもできる。
上記加熱手段は、一対の型部の表面から、キャビティ内に配置された組成物に電磁波を照射する電磁波照射手段とすることができる。
上記圧力印加手段は、電磁波照射手段から照射する電磁波によってキャビティ内に配置された(B)バインダーを溶融させる際に、一対の型部を互いに接近させてキャビティの容積を縮小させる構成とすることができる。
上記電磁波照射手段から照射する電磁波としては、広い波長領域の電磁波を用いることができる。
この電磁波としては、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波(近赤外線)を用いることができる。この場合には、0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波は、成形型に吸収される割合に比べて、成形型を透過して(B)バインダーに吸収される割合が多く、成形型に比べて、バインダーをより強く加熱することが容易である。この場合には、成形型は、透明のゴム材料によって構成することができる。また、成形型は、電磁波を透過させる性質を有する程度で、半透明のゴム材料から構成することもできる。
なお、電磁波照射手段から照射される電磁波には、上記近赤外線以外の電磁波が含まれていてもよい。
また、上記電磁波としては、0.0001〜100mの波長領域を含む電磁波(マイクロ波、高周波)を用いることもできる。この場合には、0.0001〜100mの波長領域を含む電磁波によって、成形型及び組成物(無機系微粒子及びバインダーの少なくとも一方)の少なくとも一方に誘電加熱が行われる。
成形型がマイクロ波等電磁波を吸収する材料で形成されている場合には、成形型がマイクロ波等電磁波によって加熱され、さらに成形型からの熱伝導によってキャビティ内の組成物が加熱される。
また、組成物中の無機系微粒子及びバインダーの少なくとも一方がマイクロ波等電磁波を吸収する材料で形成されている場合には、無機系微粒子及びバインダーの少なくとも一方における誘電体損失が、成形型における誘電体損失よりも大きいことによって、成形型に比べて無機系微粒子及びバインダーの少なくとも一方をより強く加熱することが容易である。この場合には、成形型は、上記波長領域の電磁波の少なくとも一部を透過させる性質を有するものであればよく、透明又は半透明のゴム材料から構成する以外にも、種々の配色のゴム材料から構成することができる。
また、マイクロ波等電磁波によって、組成物中の無機系微粒子を加熱し、無機系微粒子からの熱伝導によってバインダーを加熱して溶融させることもできる。
なお、電磁波照射手段から照射される電磁波には、上記マイクロ波又は高周波以外の電磁波が含まれていてもよい。
また、上記電磁波照射手段は、近赤外線(0.78〜2μmの波長)、マイクロ波(0.0001〜1mの波長)又は高周波(1〜100mの波長)を照射する装置とすることができる。
また、上記成形型は、シリコーンゴム又はフッ素ゴムから形成することができる。
この場合には、成形型の作製が容易であるとともに、上記0.78〜2μmの波長領域を含む電磁波により、成形型をほとんど加熱することなく熱可塑性材料を強く加熱することができる。
また、シリコーンゴムの硬度は、JIS Aスプリング硬さ試験機による測定において25〜80であることが好ましい。
シリコーンゴムやフッ素ゴム(以下、これらを総称して「ゴム材料」という。)は、マイクロ波等電磁波を実質的に吸収しない。そのため、ゴム材料を用いてマイクロ波等電磁波を吸収する成形型を形成する場合には、ゴム材料に対して、マイクロ波等電磁波を吸収する性質を有する誘電性付与物質を添加することが好ましい。誘電性付与物質の具体例としては、炭化珪素、フェライト、チタン酸バリウム、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。これらの誘電性付与物質は、1種を単独で用いることができ、又は2種以上を併用することもできる。誘電性付与物質の添加量は、成形型を形成する全材料の体積に対して、5〜90体積%とすることができる。
誘電性付与物質は、成形型の全体に添加されていてもよく、成形型に対して部分的に添加されていてもよい。誘電性付与物質を成形型の一部分に添加する場合には、その添加部分は任意であるが、キャビティに接する部分に、誘電性付与物質が添加された表面層を設けてもよい。
表面層における誘電性付与物質の含有量が、表面層全体に対して5体積%未満である場合には、表面層がマイクロ波等電磁波を吸収する性質を十分に発揮することができないおそれがある。一方、表面層における誘電性付与物質の含有量が、表面層全体に対して90体積%超過である場合には、表面層を構成する、誘電性付与物質以外の材料との混合が難しくなり、また、表面層の機械的強度が低下するおそれがある。
表面層における誘電性付与物質の含有量は、表面層全体に対して10〜70体積%であることが好ましく、13〜50体積%であることがさらに好ましく、15〜35体積%であることが最も好ましい。この場合には、表面層がより効果的にマイクロ波等電磁波を吸収して、キャビティ内の組成物を熱伝導によって加熱、溶融させることができる。
誘電性付与物質としては、上記列挙した物質だけに限定されず、無機化合物、有機化合物、これらの混合物等を用いることができ、誘電力率の高い樹脂を用いることもできる。また、誘電性付与物質は、無機化合物の焼結体とすることもでき、この焼結体は、公知の方法によって製造することができる。誘電性付与物質を焼結体とする場合、例えば炭化珪素は、表面層全体に対して50体積%以上含まれていることが好ましい。
[冷却工程]
冷却工程は、上記組成物を冷却し、上記(B)成分を固化させてグリーン成形体を得る工程である。グリーン成形体の製造方法の上記冷却工程においては、(B)バインダーを冷却する冷却手段を用いることができる。
この場合には、冷却手段によって、加熱・溶融後のバインダーを迅速に冷却することができ、グリーン成形体の成形時間を短くすることができる。
上記冷却手段としては、内部に冷媒を流通可能な金属板等を冷却対象物に接触させる接触型の熱交換体の他、成形型に空気を吹き付ける送風ファン、気化熱を利用して成形型を冷却する熱交換器・熱交換素子、所定温度以下に冷やされた冷却室等とすることができる。
<種々の手段>
また、グリーン成形体の製造方法の上記配置工程、上記圧縮工程及び上記冷却工程においては、例えば、以下の手段を用いることができる。
グリーン成形体の製造方法の上記配置工程及び上記圧縮工程においては、成形型のキャビティ内の真空引きを行う真空手段を用い、真空手段によってキャビティ内の圧力を、成形型を構成する一対の型部の外部の圧力よりも低くして、一対の型部に吸引力を発生させることにより、(B)バインダーが溶融する際に一対の型部を互いに接近させることができる。
この場合には、真空手段によって発生させた吸引力(型締め力)によって、一対の型部を互いに接近させることが容易である。また、吸引力を利用して一対の型部を互いに接近させることにより、溶融した(B)バインダーをキャビティの全体に容易に行き渡らせることができる。
なお、一対の型部は、真空手段によって発生させる吸引力を利用する以外にも、一対の型部に外力を加えて強制的に互いに接近させることもできる。
また、一対の型部は、互いに接近させる前の各型部の位置(原位置)において、いずれか一方に設けた被嵌入凹部内に他方に設けた嵌入凸部を嵌入し、嵌入凸部と被嵌入凹部とによって一対の型部の間に形成された分割面の全周を閉塞して構成することができる。
この場合には、一対の型部を互いに接近させるために分割面に形成した隙間から、溶融した(B)バインダーが漏れ出すことを容易に防止することができる。
また、一対の型部は、互いに接近させる前の原位置において、いずれか一方に設けたキャビティ形成凹部内に、他方に設けたキャビティ形成凸部を配置し、一対の型部の間に形成された分割面の全周に貼り付けられた樹脂テープによって、分割面の全周を閉塞して構成することもできる。
この場合にも、一対の型部を互いに接近させるために分割面に形成した隙間から、溶融した(B)バインダーが漏れ出すことを容易に防止することができる。
また、一対の型部の一方は、グリーン成形体の裏面を成形するキャビティ形成凸部と、キャビティ形成凸部の外縁部全周に形成された環状嵌入凹部と、環状嵌入凹部の外縁部全周において突出形成された環状外周凸部とを有しており、一対の型部の他方は、キャビティ形成凸部を内側に配置してグリーン成形体の意匠面を成形するキャビティ形成凹部と、キャビティ形成凹部の外縁部全周において突出して環状外周凸部内に嵌入される環状内周凸部とを有していてもよい。
この場合には、一対の型部の一方における環状外周凸部内に対する、一対の型部の他方における環状内周凸部の嵌入によって、一対の型部を互いに接近させるために分割面に形成した隙間から、溶融した(B)バインダーが漏れ出すことを容易に防止することができる。
また、上記配置工程及び上記圧縮工程においては、吸引口及び吸引ゲートを介してキャビティ内の真空引きを行うことにより、一対の型部の間に容易に吸引力を発生させることができ、溶融した(B)バインダーをキャビティの全体に容易に行き渡らせることができる。また、吸引口には、キャビティに配置されたバインダーが溶融する際に、このキャビティに余剰になった溶融状態のバインダーを溢れ出させることもできる。
また、上記吸引口は、上記組成物をキャビティ内へ投入する投入口も兼ねていることができる。
この場合には、キャビティ内に組成物を配置する際には、一対の型部を閉じた状態において、吸引口から組成物を投入することができる。
また、電磁波照射手段による電磁波を、一対の型部の他方における外側面の一方側から他方側へ部分的に順次移動しながら照射し、キャビティにおける一方側から他方側に向けて組成物を順次充填することもできる。
この場合には、キャビティ内の(B)バインダーを部分的に溶融させていくことにより、キャビティの全体に組成物を安定して行き渡らせることができる。
<無機系焼結体の製造方法>
本発明の無機系焼結体の製造方法は、上記グリーン成形体の製造方法によって得られたグリーン成形体を加熱して、上記(B)成分を除去する除去工程と、上記グリーン成形体中の上記(A)成分を焼結させて無機系焼結体を得る焼結工程を含む。
無機系焼結体の製造方法においては、有機成分は熱分解するが(A)無機系微粒子は焼結しない温度において、硬化物を加熱して(B)バインダー等の有機成分を分解して除去し(本発明の属する技術分野において、「脱脂」といわれることがある。)、実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体を得る工程(以下、「除去工程」という。)と、無機系前駆体を、(A)無機系微粒子が焼結する温度で加熱して無機系焼結体とする工程(以下、「焼結工程」という。)と、を含むことが好ましい。これらの工程により、無機系焼結体のひび割れや破損等をより効果的に防止できる。
また、無機系焼結体の製造方法においては、実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体に、焼成によって無機系焼結体を形成する流動性無機材料を含浸させて流動性無機材料含浸無機系前駆体を得る工程(以下、「流動性無機材料含浸工程」という。)と、流動性無機材料含浸無機系前駆体を、(A)無機系微粒子及び流動性無機材料が焼結する温度で加熱して無機系焼結体とする工程(以下、「無機系微粒子及び流動性無機材料焼結工程」という。)と、を含むことが好ましい。これらの工程により、焼結工程におけるクラックの発生を防止し、また、寸法変化を抑制でき、より緻密で高硬度の無機系焼結体を得ることができる。
<除去工程>
グリーン成形体の製造方法において得られたグリーン成形体を、窒素雰囲気下、有機成分は熱分解するが組成物中の(A)無機系微粒子は焼結しない温度において、加熱し、有機成分を分解除去し(一次加熱)、実質的に無機系微粒子のみからなる無機系前駆体を得る。「有機成分は熱分解するが無機系微粒子は焼結しない温度」は、無機系微粒子の材料の種類、無機系前駆体のサイズ、重合性バインダーの種類等の条件によって適宜選択する。この温度は、一般に300〜800℃の範囲内、好ましくは350〜600℃の範囲内である。
また、「実質的に無機系微粒子のみからなる」とは、有機成分が完全に分解除去されていなければならないということではなく、無機系前駆体を下記工程で焼結させる際に、悪影響を及ぼさない程度の量の有機成分が残存していてもよいことを意味する。この工程での加熱条件は、具体的には、毎分2℃程度の昇温速度で、常温からスタートして300〜800℃程度まで温度を上げることが好ましい。この一次加熱により、硬化物中の有機成分のみを先に分解除去することにより、実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体を得ることができる。
除去工程で得られた実質的に無機系微粒子のみからなる無機系前駆体は、(A)無機系微粒子間を結合させていた有機成分が除去されているため、内部に空隙を有している。これを、焼結工程で焼結させると、緻密かつ高硬度の無機系焼結体となる。
<焼結工程>
次に、有機成分が分解除去された後の実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体を、マッフル炉等の高温加熱手段を用い、無機系微粒子が焼結する温度で加熱する(二次加熱)。「無機系微粒子が焼結する温度」は、無機系微粒子の種類、無機系前駆体のサイズ、無機系微粒子の粒子径等の条件によって適宜選択する。この温度は、一般に1000〜3000℃の範囲内、好ましくは1200〜2500℃の範囲内である。
この工程での加熱条件は、具体的には、毎分5℃程度の昇温速度で、常温からスタートして1000〜3000℃程度まで温度を上げ、この温度で0.1〜10時間程度保持し、(A)無機系微粒子を焼結させて無機系焼結体を得ることがより好ましい。その後、無機系焼結体を室温まで徐々に冷却する。
<流動性無機材料含浸工程>
上記除去工程で得られた実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体を二次加熱する前に、無機系前駆体に、焼成によって無機系焼結体を形成する流動性無機材料を含浸させ、流動性無機材料含浸無機系前駆体を得る。この工程により、当該実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体中の空隙に流動性無機材料が入り込み、空隙を満たす。これを二次加熱(焼結)した場合、流動性無機材料が縮合及び焼結して(A)無機系微粒子とともに均一化し、極めて緻密な無機系焼結体が得られる。
焼成によって無機系焼結体を形成する流動性無機材料としては、例えば、水ガラス、テトラメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等が挙げられる。
実質的に(A)無機系微粒子のみからなる無機系前駆体に、流動性無機材料を含浸させるには、例えば、無機系前駆体を、流動性無機材料の溶液(例えば、メタノール溶液)中に入れて常温で0.1〜5時間程度放置するか、又は流動性無機材料を無機系前駆体に塗布すればよい。含浸のための手順は1回でもよいし、複数回繰り返してもよい。
<無機系微粒子及び流動性無機材料焼結工程>
上記のようにして無機系前駆体に流動性無機材料を含浸させ、乾燥した後、(A)無機系微粒子及び流動性無機材料が焼結する温度で二次加熱を行い、無機系焼結体を得る。「無機系微粒子及び流動性無機材料が焼結する温度」は、無機系微粒子及び流動性無機材料の種類、無機系前駆体のサイズ、無機系微粒子の粒子径等の条件により適宜選択する。この温度は、好ましくは1000〜3000℃の範囲内、より好ましくは1200〜2500℃の範囲内である。具体的な加熱条件については、上記焼結工程と同様である。
上記無機系焼結体の製造方法によれば、微細かつ複雑な形状を有する無機系焼結体が得られ、かつ得られる無機系焼結体は、硬化収縮によるひび割れや破損が効果的に防止されている。
<無機系前駆体>
上記無機系焼結体の製造方法において説明した、所望の形状を有する無機系前駆体及び流動性無機材料含浸無機系前駆体は、新規な構成を有する。これらの無機系前駆体を、(A)無機系微粒子、又は(A)無機系微粒子及び上記流動性無機材料が焼結する温度で加熱することにより、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体を得ることができる。
実施態様
以下に、グリーン成形体の製造方法及び無機系焼結体の製造方法にかかる実施態様につき、図面を参照して説明する。
本実施態様のグリーン成形体7の製造方法は、配置工程、圧縮工程及び冷却工程を行ってグリーン成形体7を成形する。配置工程においては、図1、図2に示すように、成形型を構成する一対の型部2A,2Bの間に形成されたキャビティ20内に、無機系微粒子61及びバインダー62を含有する組成物6を配置する。次いで、圧縮工程においては、図4に示すように、組成物6を加熱してバインダー62を溶融させるとともに、一対の型部2A,2Bのキャビティ20の容積を縮小させて組成物6を圧縮する。その後、冷却工程においては、図5に示すように、組成物6を冷却し、バインダー62を固化させてグリーン成形体7を得る。
また、無機系焼結体の製造方法においては、除去工程及び焼結工程を行って無機系焼結体を得る。除去工程においては、グリーン成形体7の製造方法によって得たグリーン成形体7を加熱して、グリーン成形体7中のバインダー62を除去する。その後、焼結工程においては、グリーン成形体7中の無機系微粒子61を焼結させて無機系焼結体を得る。
<成形装置>
次に、本実施態様のグリーン成形体7の製造方法及び無機系焼結体に用いる成形装置1について詳説する。
図6は、造粒して得られた粒子状の組成物6を模式的に示す。同図に示すように、本実施態様の組成物6は、無機系微粒子61としてのセラミックスの微粒子と、バインダー62としての熱可塑性樹脂とが混錬され、所定の大きさに造粒されて粒子状に形成されたものである。組成物6の各粒子は、微細な無機系微粒子61とバインダー62とが混ざり合った状態にある。組成物6の各粒子中の無機系微粒子61の粒子径は、10〜50nmの範囲内にあり、組成物6の粒子径は、100〜200μmの範囲内にある。組成物6の全量に対するバインダー62の含有量は、10質量%以下にしている。そして、組成物6中のバインダー62の含有量を極めて少なくしてグリーン成形体7を成形する。
図1、図4に示すように、配置工程、圧縮工程及び冷却工程においては、一対の型部2A,2Bの他に、一対の型部2A,2Bのキャビティ20内に配置された組成物6を加熱しバインダー62を溶融させる加熱手段と、キャビティ20の容積を縮小させるように一対の型部2A,2Bに圧力を印加する圧力印加手段とを備えた成形装置1を用いる。一対の型部2A,2Bは、加熱に用いる電磁波の種類及びバインダー62の種類によって選択することができる。
本実施態様の加熱手段は、一対の型部2A,2Bの表面から、キャビティ20内に配置した組成物6に電磁波Xを照射する電磁波照射手段4である。圧力印加手段は、キャビティ20内を減圧する真空手段5である。
本実施態様においては、近赤外線等電磁波を照射する電磁波照射手段4を用いるため、一対の型部2A,2Bは、ゴム材料から形成される。なお、マイクロ波等電磁波を照射する電磁波照射手段4を用いる場合において、マイクロ波等電磁波をあまり吸収することができない組成物6を用いるときには、一対の型部2A,2Bは、ゴム材料に誘電性付与物質を添加した材料から形成される。また、マイクロ波等電磁波を照射する電磁波照射手段4を用いる場合において、マイクロ波等電磁波を吸収することができる組成物6を用いるときには、一対の型部2A,2Bは、ゴム材料に誘電性付与物質を添加しないゴム材料から形成することができる。
本実施態様の一対の型部2A,2Bは、ゴム材料としての透明又は半透明のシリコーンゴムから形成される。この一対の型部2A,2Bは、成形するグリーン成形体7のマスターモデル(手作りの現物等)を液状のシリコーンゴム内に配置し、このシリコーンゴムを硬化させ、硬化後のシリコーンゴムからマスターモデルを取り出して作製することができる。また、一対の型部2A,2Bは、ゴム製であるため、成形後のグリーン成形体7を取り出す際の型開きを行うための分割面(パーティング面)205(図1、図2参照)を簡単にかつ任意に形成することができる。
図4に示すごとく、電磁波照射手段4は、近赤外線等電磁波である電磁波Xを発生させるよう構成されている。電磁波照射手段4は、0.78〜2μmの波長領域(ほぼ近赤外線の波長領域に相当する。)を含む電磁波Xを発するハロゲンランプを用いて構成してある。このハロゲンランプは、0.78〜2μmの波長領域内に(本実施態様では約0.9μmに)電磁波強度のピークを有するものを用いた。
図7は、透明のシリコーンゴムと半透明のシリコーンゴムについて、横軸に波長(nm)をとり、縦軸に電磁波Xの透過率(%)をとって、各シリコーンゴムにおける電磁波Xの透過率を示すグラフである。同図において、各シリコーンゴムは、200〜2200(nm)の間の波長の電磁波Xの多くを透過させることがわかる。そのため、この波長の領域である近赤外線をシリコーンゴム製の型部2A,2Bの表面に照射すると、当該近赤外線の多くを、型部2A,2Bを透過させてキャビティ20内のバインダー62に吸収させることができる。
図1に示すごとく、真空手段5は、一対の型部2A,2Bに設けられた真空引き経路であり、真空引き経路に外部の真空ポンプを接続して、組成物6が配置されたキャビティ20内の真空引きを行い、このキャビティ20内を真空状態にするよう構成されている。図4に示すごとく、真空手段5を介してキャビティ20内の圧力を一対の型部2A,2Bの外部の圧力よりも低くして、一対の型部2A,2Bに吸引力(型締め力)Fを発生させることにより、組成物6中のバインダー62が溶融する際には、一対の型部2A,2Bが互いに接近する。
図1、図2に示すごとく、一対の型部2A,2Bの一方である一方側型部2Aは、グリーン成形体7の裏面702を成形するキャビティ形成凸部21と、キャビティ形成凸部21の外縁部全周に形成された環状嵌入凹部22と、環状嵌入凹部22の外縁部全周に突出形成された環状外周凸部23とを有している。一対の型部2A,2Bの他方である他方側型部2Bは、キャビティ形成凸部21を内側に配置してグリーン成形体7の意匠面701を成形するキャビティ形成凹部25と、キャビティ形成凹部25の外縁部全周において突出して、環状外周凸部23内に嵌入される環状内周凸部26とを有している。
他方側型部2Bにおける環状内周凸部26は、一対の型部2A,2Bを互いに接近させる前の原位置において、環状外周凸部23内に嵌入されている。一対の型部2A,2Bは、互いに接近させる前後において、環状内周凸部26と環状外周凸部23とによって、一対の型部2A,2Bの間に形成された分割面205の全周が閉塞されている。
図1〜図3に示すごとく、一方側型部2Aには、キャビティ形成凸部21に開口する吸引口27と、環状嵌入凹部22に開口する吸引ゲート28とが貫通形成されている。吸引口27は、組成物6をキャビティ20内へ投入するための投入口の機能も兼ねている。一方側型部2Aにおける、分割面205とは反対側の面には、バックアッププレート3が重ねて配置されている。そして、真空引き経路である真空手段5は、一方側型部2Aとバックアッププレート3との間に形成されている。真空手段5は、吸引口27及び複数の吸引ゲート28に連通している。
図4に示すごとく、電磁波照射手段4は、他方側型部2Bにおける、分割面205とは反対側の面に対向して配設されている。キャビティ20内に配置された組成物6中のバインダー62は、電磁波照射手段4に近い部分から先に溶融する。そして、吸引口27及び複数の吸引ゲート28の近くに位置する、組成物6中のバインダー62が後から溶融し、吸引口27及び吸引ゲート28が閉塞されないようにしている。
図示は省略するが、マイクロ波等電磁波を発生する電磁波照射手段4を用いる場合には、一対の型部2A,2Bの少なくとも一方は、ゴム材料による一般部と、ゴム材料よりもマイクロ波等電磁波の吸収性がよい物質(誘電性付与物質)が添加された改良部とによって形成することができる。誘電性付与物質が添加された改良部は、キャビティ20を形成するキャビティ形成部分等とすることができる。また、誘電性付与物質は、一対の型部2A,2Bの少なくとも一方の全体に添加することもできる。
また、例えば、一対の型部2A,2Bにおいて、キャビティ20に接する部分にマイクロ波等電磁波の吸収性がよい表面層を形成し、この表面層に、電磁波照射手段4から照射されるマイクロ波等電磁波を吸収させることができる。この場合には、表面層からの熱伝導によってキャビティ20内の組成物6中のバインダー62を加熱・溶融させることができる。
次に、グリーン成形体7の製造方法及び無機系焼結体の製造方法、並びにそれらの作用効果について詳説する。
まず、配置工程として、一対の型部2A,2Bの間に形成するキャビティ20内に、無機系微粒子(セラミックスの微粒子)61及びバインダー(熱可塑性樹脂粒子)62が混合された組成物6を配置する。このとき、組成物6は、一方側型部2Aに形成した吸引口(投入口)27から互いに組み合わせた状態の一対の型部2A,2Bの間のキャビティ20内へ投入することができる。また、組成物6は、開いた状態の他方側型部2Bにおけるキャビティ形成凹部25内に配置することもできる。この場合、組成物6を配置した他方側型部2Bに、一方側型部2Aを組み合わせる。
また、組成物6をキャビティ20内に配置したときには、キャビティ20を形成する面と組成物6との間や、組成物6同士の間に空隙が形成される。
次いで、圧縮工程として、図1に示すごとく、真空手段5から吸引口27及び複数の吸引ゲート28を介してキャビティ20内の真空引きを開始する。このとき、キャビティ20内の空隙から空気が吸引され、一対の型部2A,2Bには、互いに接近しようとする吸引力Fが作用し、組成物6の粒子同士の間に圧力が加わる。なお、一対の型部2A,2Bは大気圧下に配置されている。
そして、図4に示すごとく、真空手段5による真空引きを継続した状態で、電磁波照射手段4によって他方側型部2Bにおける外側面へ電磁波Xを照射する。このとき、電磁波Xの多くは他方側型部2Bを透過し、キャビティ20内の組成物6に吸収される。そして、キャビティ20内に配置された組成物6中のバインダー62は、電磁波照射手段4に近い部分から先に溶融する。これにより、溶融したバインダー62及び無機系微粒子61が、吸引口27及び複数の吸引ゲート28を塞いでしまうことを防止する。
なお、電磁波Xとしてマイクロ波等電磁波を用いる場合には、他方側型部2Bは、誘電性付与物質が添加されたゴム材料によって形成することができる。この場合には、電磁波Xの多くは他方側型部2Bによって吸収される。また、この場合には、キャビティ20内に配置された組成物6中のバインダー62は、電磁波Xによって加熱された他方側型部2Bから伝導した熱によって加熱されて溶融する。
このとき、一対の型部2A,2Bに作用する吸引力Fを受けて、バインダー62が組成物6同士の間の空隙に広がり、組成物6間の距離が縮まり、その結果、キャビティ20の容積が減少する。これにより、キャビティ20の容積が減少した分だけ一対の型部2A,2Bが互いに接近する。また、キャビティ20内の組成物6中のバインダー62が溶融を開始した後も、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する。
こうして、バインダー62が溶融して組成物6が圧縮され、キャビティ20内に形成されていた空隙がほとんどなくなる。このとき、バインダー62は、無機系微粒子61が一対の型部2A,2Bによって圧縮されるときの潤滑剤として機能すればよい。そのため、組成物6中のバインダー62の含有量は、組成物6の潤滑性を確保できる量であればよく、組成物6の流動性を確保する量とする必要はない。これにより、組成物6中のバインダー62の含有量を極力少なくすることができる。
次いで、図5に示すように、冷却工程として、一対の型部2A,2Bにおけるキャビティ20内に、バインダー62が溶融して圧縮された組成物6が配置された状態を、所定の時間維持する。そして、溶融したバインダー62が冷やされて固化し、容積が縮小したキャビティ20内に、グリーン成形体7を得ることができる。
また、冷却工程においては、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを、グリーン成形体7の冷却が完了するまで継続する。そして、一対の型部2A,2Bにおけるキャビティ20の容積が縮小した状態が、溶融したバインダー62が固化するまでの間維持され、容積が縮小したキャビティ20の形状が維持される。そして、溶融したバインダー62の漏れ出しや、バインダー62が固化する時の組成物6の変形を最小限に抑え、容積縮小後のキャビティ20の形状に沿った形状のグリーン成形体7を精度よく得ることができる。
なお、本実施態様においては、冷却工程においても、真空手段5によるキャビティ20内の真空引きを継続する場合を示した。これ以外にも、真空手段5を閉塞した後に、外部の真空ポンプと真空手段(真空引き経路)5を分離して、キャビティ20内が減圧された状態を維持することもできる。また、一対の型部2A,2Bに対して機械的に外力を加えることによって、容積が縮小したキャビティ20の形状を維持することもできる。
また、本実施態様においては、ゴム製の一対の型部2A,2Bを用いるため、従来の金型に比べて組成物6の温度低下が緩やかである。そのため、急激な冷却を防止して、グリーン成形体7に反りやヒケが生じないようにすることができる。さらに、キャビティ20の容積を縮小させた状態で緩やかに組成物6を冷却することにより、次の効果を得ることもできる。
すなわち、組成物6の温度が低下する際には、その容積が減少する。このとき、組成物6の容積減少に追随して、一対の型部2A,2Bが若干互いに接近して、キャビティ20の容積を縮小させることができる。これにより、容積縮小後のキャビティ20の形状に沿った形状のグリーン成形体7をさらに精度よく成形することができる。
その後、一対の型部2A,2Bを離型して、成形したグリーン成形体7を取り出すことができる。
また、一対の型部2A,2Bに比べて組成物6中のバインダー62を強く加熱して溶融させることができ、一対の型部2A,2Bの温度上昇を抑制して、バインダー62を効果的に加熱することができる。そのため、グリーン成形体7を成形する際に、一対の型部2A,2Bの熱劣化を効果的に防止することができる。
次いで、除去工程として、グリーン成形体7を加熱して、グリーン成形体7中のバインダー62を除去する。グリーン成形体7を加熱する温度は、バインダー62の融点以上であって、無機系微粒子61の焼結温度以下とする。そして、バインダー62が熱分解されてグリーン成形体7から除去され、グリーン成形体7には、無機系微粒子61が残る。
その後、焼結工程として、無機系微粒子61を焼結させて無機系焼結体を得る。
上記のごとく、組成物6中のバインダー62の含有量は、組成物6の全量に対して10質量%以下と極力少なく、成形されるグリーン成形体7中のバインダー62の含有量も極力少なくなる。そのため、無機系焼結体の焼結時に、無機系微粒子61によって構成されるグリーン成形体7が体積収縮する際の歪み量を減らすことができ、無機系焼結体に破損が生じにくくすることができる。
また、成形する無機系焼結体の形状、寸法精度を向上させることができ、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体の立体造形物を成形することができる。また、特に、無機系焼結体によって、小型の立体造形物に限られず、大型、厚肉等の立体造形物を成形することができる。
それ故、本実施態様のグリーン成形体7の製造方法及び無機系焼結体の製造方法によれば、バインダー62の含有量を極力少なくすることができ、微細かつ複雑な形状の無機系焼結体の立体造形物を精度良く得ることができる。
本実施態様においては、無機系微粒子61としての金属微粒子と、バインダー62としての熱可塑性樹脂粒子とが混合された組成物6から、グリーン成形体7及び無機系焼結体を成形し、それらの成形性を確認した。
金属微粒子は、平均粒径が7μmであるSUS316Lとし、組成物6中の熱可塑性樹脂粒子(バインダー)62の含有量は組成物6の全量に対して8質量%又は5質量%とした。組成物6は、金属微粒子と熱可塑性樹脂粒子とを混錬して成形したペレットを、粉砕して微細化し、180μmのメッシュを通過したものとした。
上記実施態様に示したグリーン成形体7及び無機系焼結体の製造方法によって成形するグリーン成形体7及び無機系焼結体(試験品1、2)と、射出成形法によって成形するグリーン成形体7及び無機系焼結体(比較品1、2)とについて、成形性を比較評価した。
試験品1、2においては、グリーン成形体7を成形する際に、マイクロ波成形を行うために、マイクロ波を照射する加熱手段を有する(株)DMEC製Amolsys M150を用いた。比較品1、2においては、グリーン成形体7を成形する際に、射出成形を行うために、射出成形機として、東芝機械(株)製IS80Aを用いた。成形するグリーン成形体7の形状は、50mm×50mm×2mmの正方形のプレートとした。
また、試験品1、2及び比較品1、2ともに、グリーン成形体7からバインダー62を除去した後に、1350℃で2時間の焼結を行い、無機系焼結体を得た。
表1に、試験品及び比較品について成形性を比較評価した結果を示す。
Figure 0006421546
試験品1及び比較品1においては、組成物6中のバインダー62の含有量は組成物6の全量に対して8質量%とし、試験品2及び比較品2においては、組成物6中のバインダー62の含有量は組成物6の全量に対して5質量%とした。
試験品1、2については、グリーン成形体7を成形することができ、無機系焼結体を成形した際の縦寸法と横寸法との差が小さく、無機系焼結体の形状に歪みがほとんどなく、等方性に優れていることがわかる。一方、比較品1については、グリーン成形体7を成形することはできたものの、無機系焼結体を成形した際の縦寸法と横寸法との差が大きく、無機系焼結体の形状に歪みが生じ、等方性が悪いことがわかる。また、比較品2については、バインダー62の含有量が少なくて、グリーン成形体7を成形することができなかった。
また、試験品1、2については、無機系焼結体の形状に反りがほとんど発生しなかったのに対し、比較品1、2については、無機系焼結体の形状に反りが発生した。この反りの有無は、基準とする平板上に無機系焼結体を載置し、平板に対する無機系焼結体のがたつきの有無で判断した。
なお、全長が182mm、肉厚が3.2mmのダンベルのグリーン成形体7についても、上記試験品1、2及び比較品1、2と同様に成形して評価を行った。この場合、試験品1、2については、歪みの少ない無機系焼結体を成形することができた一方、比較品1、2については、グリーン成形体7を成形することができなかった。
以上の結果より、上記実施態様に示したグリーン成形体7及び無機系焼結体の製造方法によれば、形状、寸法精度に優れた無機系焼結体を成形できることがわかった。
1 成形装置
2A,2B 型部
20 キャビティ
4 電磁波照射手段
5 真空手段
6 組成物
61 無機系微粒子
62 バインダー
7 グリーン成形体

Claims (6)

  1. 成形型の、一対の型部の間に形成されたキャビティ内に、(A)無機系微粒子及び(B)バインダーを含有する組成物を配置する配置工程と、
    上記組成物を加熱して上記(B)成分を溶融させるとともに、真空手段を介して上記キャビティ内の圧力を上記一対の型部の外部の圧力よりも低くして、該一対の型部に吸引力を発生させることにより、上記キャビティの容積を縮小させて上記組成物を圧縮する圧縮工程と、
    上記組成物を冷却し、上記(B)成分を固化させてグリーン成形体を得る冷却工程と、を含むことを特徴とするグリーン成形体の製造方法。
  2. 上記圧縮工程における上記組成物の加熱は、0.0001〜100mの波長領域を含む電磁波を上記成形型に照射することによって行うことを特徴とする請求項1に記載のグリーン成形体の製造方法。
  3. 上記(A)成分は、金属単体、金属化合物又は黒鉛を含有する微粒子から構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグリーン成形体の製造方法。
  4. 上記(A)成分の平均粒径は、10nm以上20μm以下であることを特徴とする請求項に記載のグリーン成形体の製造方法。
  5. 上記(B)成分の含有量は、上記組成物全量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のグリーン成形体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のグリーン成形体の製造方法により得られたグリーン成形体を加熱して、上記(B)成分を除去する除去工程と、
    上記グリーン成形体中の上記(A)成分を焼結させて無機系焼結体を得る焼結工程と、を含むことを特徴とする無機系焼結体の製造方法。
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