以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、本実施形態に係る包装体の構成を詳細に説明する。図1は本実施形態に係る包装体1の一例が示された平面図である。なお、以下では、説明の便宜上、包装体1を載置させた図1の状態において、包装体1が引き裂かれた際に破断線の形成される側を上とし、図の手前側を表とする。
図1に示されるように、本実施形態に係る包装体1は、重ね合わされたフィルム10に内容物100が保持されるように構成される。そして、包装体1は、内容物収容部2と、第1のシール部3と、第2のシール部4と、未シール部5と、切り込み6と、開口部8、又は切り込みとを備える。包装体1の外観形状は、平面視で例えば、左右の幅方向が短辺である矩形になされている。製袋時におけるフィルム10の使用効率の観点から包装体1の外観形状は、例示された矩形、又は正方形であることが好ましい。しかしながら、包装体1の外観形状は、矩形や正方形には限らず、三角形や多角形、円形、楕円形、不規則な形状であっても良く、内容物100の形状や、製品の意匠性等に応じて適宜設計できる。なお、本実施形態に係る包装体1は、幅方向が数十mm程度の小型のものに適用されると特に有効である。
包装体1は、同一形状の2枚のフィルム10が重ね合わされて構成されている。重ね合わされたフィルム10の対向面は、予め定められた幅を有する帯状の第1のシール部3、及び第2のシール部4によってシールされる。周囲が、帯状に延びる第1のシール部3によってシールされた領域には内容物100を保持する内容物収容部2が形成される。
図1の例示において、第1のシール部3の形状は五角形になされている。第1のシール部3の下辺、並びに下辺の両端から各々延びる左辺、及び右辺は包装体1の外縁と接している。そして、第1のシール部3の左辺、及び右辺のそれぞれの上端は包装体1の上下方向の中途まで延びている。更に、第1のシール部3は、左辺、及び右辺のそれぞれの上端から包装体1の幅方向の内方かつ上方に向けて延びる2つの上辺を有している。そして、包装体1の幅方向の中心において2つの上辺が接続している。
第1のシール部3は、剥離しやすいヒートシール強度を呈するようにフィルム10を接着しており、イージーピール性(易剥離性)、すなわち易開封性を有する。このような容易に剥離開封できる接着は弱シールとも称される。第1のシール部3のヒートシール強度は人が開封できる程度であれば良い。具体的には、第1のシール部3のヒートシール強度は4〜8N/15mmであることがより好ましい。なお、内容物収容部2に空気が入らない場合や、内容物100が薄板状の場合には第1のシール部3のヒートシール強度は更に弱くても構わない。一方で、第1のシール部3の下辺、左辺、及び右辺は、剥離の必要がない場合には、弱シールよりもヒートシール強度の強い強シールであっても構わない。なお、ヒートシール強度としては、JIS−Z−0238に準拠した測定法によるものがある。
一方で、第2のシール部4は、包装体1の外縁の少なくとも一部と接する外縁シール部である。図1の例示では、第2のシール部4は包装体1の上辺と接している。仮に、第2のシール部4を有していない構成の場合には、シールされていない領域、すなわち未シール部5における重ね合わされた各フィルム10が摘み部とされて第1のシール部3が容易に剥離できる状態になる。したがって、包装体1の輸送中や、携帯中に摘み部が引っかかる等して、内容物100を保持するための第1のシール部3が剥がれてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、第2のシール部4が設けられることによって、包装体1の中の重ね合わされた各フィルム10が容易にはつかめない状態とされ、第1のシール部3が意図せず剥がれてしまうことが防止される。
包装体1の第1のシール部3を開封する摘み部を露出しないように構成されることが第2のシール部4に求められる条件である。このため、第2のシール部4は、包装体1の外縁に沿った形状とされており、更に、第2のシール部4自体が剥離されるきっかけも包装体1の外縁に形成されないようになされる。そして、第2のシール部4が、包装体1の外縁と接して形成されていると、たとえそれが弱シールであっても包装体1の開封は困難である。したがって、上述の第2シール部4の構成によって本実施形態に係る包装体1は初期状態において、第1のシール部3が意図せず剥がれてしまうことが防止される。
なお、図1の例示では、第1のシール部3が、包装体1の3方の外縁と接している。しかしながら、例えば、第2のシール部4が、包装体1の4方の全外縁と接している構成の場合には、第1のシール部3が、包装体1の外縁とは接していなくても構わない。より具体的には、内側から内容物収容部2/第1のシール部3/未シール部5/第2のシール部4の例えばそれぞれの構成が周回状の場合がこれに該当する。
第2のシール部4は、弱シールであることが必須とはされない。しかしながら、後述される手順に沿った包装体1の開封が行われた際には第2のシール部4が剥離されやすい方が好都合である。これは、仮に、一方のフィルム10の裂け目が第2のシール部4に及んだ場合にも、第2のシール部4が剥離することによって、他方のフィルム10の裂け目が追随することなく、一方のフィルム10における裂け目の伝播が進行するからである。更に、例えば、第1のシール部3が弱シールで、第2のシール部4が強シールの構成の場合には、包装体1の製造時に、第1のシール部3には弱シール材を設け、第2のシール部4だけ弱シール材を設けないという処置になる。したがって、第2のシール部4は弱シールであることが好ましい。
第1のシール部3の外側の領域は、重ね合わされたフィルム10の対向面がシールされていない未シール部5とされる。未シール部5は、第1のシール部3と、第2のシール部4との間の領域に位置し、図1の例示では、第2のシール部4の下方、かつ第1のシール部3の上辺の上方に位置している。未シール部5が設けられることによって、第1のシール部3と、第2のシール部4とは接続されていない。そして、包装体1の外縁は、未シール部5の領域以外で、第1のシール部3と、第2のシール部4とによる端部シールとなる。このような構成を有する包装体1は、開封の端、すなわちきっかけが設けられない限り、イージーピール性を有する第1のシール部3、及び第2のシール部4のヒートシール強度が弱くても包装体1を容易に開封することはできない。
未シール部5は、包装体1の外縁において、予め定められた距離L以下とされることが好ましい。すなわち、包装体1の左右の外縁において、第1のシール部3と、第2のシール部4との間がそれぞれ予め定められた距離L以下とされることが好ましい。より具体的には、未シール部5は、包装体1の外縁において、例えば、人の指が入り込まない長さに設計される。このように、未シール部5は、包装体1の外縁において、予め定められた距離L以下とされることによって、包装体1が意図せず開封してしまう事態をより抑止することができる。
包装体1は、第2のシール部4に沿って未シール部5の領域が引き裂かれることによって包装体1から、第2のシール部4が取り除かれるように構成される。内容物収容部2や第1のシール部3側と、第2のシール部4側とが分断する際に、包装体1の開封端から、裂け目が進行(伝播)して包装体1の外縁(左右両端の少なくとも一方)に達すると想定される方向への延長線は仮想延長線7と称される。すなわち、未シール部5は、その領域内に、第1のシール部3と、第2のシール部4との間においてフィルム10の破れ方向に相当する仮想延長線7を含む。
仮想延長線7は、第1のシール部3の上端からある程度の距離を有していることが好ましい。これは、包装体1から、第2のシール部4が取り除かれた際に、仮想延長線7と、第1のシール部3との間が後述する摘み部となり、そのつかみやすさが左右されるからである。
包装体1は、仮想延長線7上に、重ね合わされたフィルム10の両方を貫通する開口部8を有する。開口部8は、包装体1の幅方向の中央付近に設けられるのが好ましい。開口部8は、包装体1の幅方向に延びる開口、又は切り込みである。ただし、開口部8の両端は、包装体1の左右の外縁からは離間した位置とされる。開口部8の長さは、包装体1の寸法、特に幅方向の長さに左右されるものの、全長5mm以上であれば開封端として機能し、おおむね全長10mm程度であると良い。開口部8は、包装体1の未シール部5の領域に1箇所設けられれば良い。なお、開口部8に替えて、フィルム10をそれぞれ貫通しない切れ目が設けられても良い。
包装体1は、重ね合わされている2枚のフィルム10の少なくとも一方における開口部8の一端側(ここでは左側)と、包装体1の外縁(ここでは左端)との間に、仮想延長線7と交差する少なくとも1つの第1の切り込みに相当する切り込み6を有する。図1には、表側のフィルム10における未シール部5の領域内で幅方向の左側に、1つの切り込み6を有する包装体1が例示されている。
切り込み6は、1枚のフィルム10の表面から裏面までを貫通した全カットか、1枚のフィルム10の表面、及び裏面のいずれかの表層からその厚さ方向の途中まで切れ目が入ったハーフカットかのいずれかの加工がなされたものである。本実施形態に係る包装体1には例えば、全カットで加工された切り込み6が用いられている。なお、本実施形態の包装体1に形成される切り込み6は、全カットであってもハーフカットであっても、両方が混在していても構わない。しかしながら、製造の効率の観点からは、全カット、及びハーフカットのいずれか一方が用いられることが好ましい。
切り込み6が、全カットか、ハーフカットかのいずれかである構成によれば、製造が容易である上に、効果的に、表裏2枚のフィルムにおけるそれぞれの破断線の間に摘み部としてつかみやすい段差を形成することができる。
切り込み6は、開口部8の一端側から仮想延長線7が延びる方向に対して傾斜角を有して交差する。より詳しくは、包装体1の未シール部5の領域内には、開口部8の一端側(ここでは左側)から仮想延長線7が延びる方向(ここでは左方向)に対して、切り込み6が、第1のシール部3に向かって下方向に交差するように延びて設けられる。なお、切り込み6の向きは逆に構成されていても良い。すなわち、仮想延長線7が延びる方向に対して、切り込み6が第2のシール部4に向かって上側に向かって延びて交差するように配置されていても良い。
切り込み6は、仮想延長線7に対して予め定められた範囲の角度を有する。図1では、仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α1が60度である例が示されている。なお、ここでは、仮想延長線7と、切り込み6との交点から開口部8側に延びる仮想延長線7を基準とし、包装体1の上側に延びる切り込み6との間の角度が用いられる。
仮想延長線7に対して予め定められた角度を有する切り込み6はフィルム10の引き裂きの際に、仮想延長線7に沿って切り込み6に伝播してきた裂け目の方向を切り込み6を経由させることによって変更する機能を有する。したがって、切り込み6を経由し、伝播する裂け目によって形成される破断線は未シール部5の領域内において上下方向に段差を有する形状となる。そして、第2のシール部4が取り除かれた未シール部5は、開口部8と、切り込み6と、仮想延長線7に沿った裂け目とが端部となり、第1のシール部3を剥離する摘み部の少なくとも一方を構成する
一方で、切り込み6を有していない他方のフィルム10(裏側フィルム)の引き裂きの際に生じる裂け目は略仮想延長線7上を伝播し、伝播する裂け目によって形成される破断線は未シール部5の領域内において上下方向に段差を有さない形状となる。そして、他方のフィルム10の第2のシール部4が取り除かれた未シール部5は、略仮想延長線7上に形成される破断線によって、第1のシール部3を剥離する摘み部の他方を構成する。
このような構成を有する本実施形態に係る包装体1は、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差ができて、それぞれの摘み部がつかみやすくなる。一方で、フィルム10が引き裂かれる前の状態では包装体1が誤って開封される事態を防止することができる。更に、切り込み6、及び開口部8は、未シール部5に形成されているため、内容物の保護性に影響を及ぼさない。したがって、内容物100の保護性に優れ、誤開封を防止しつつ、易開封性を有するとともに、その構造が単純で、製造が容易な包装体1を提供することができる。
なお、仮に、切り込み6を有していない構成では、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線(摘み部の端部)には段差がほとんどなく、摘み部がつかみづらい。
上述された仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α1は鋭角の25〜75度であることが好ましい。角α1が25〜75度であれば、表裏2枚のフィルム10におけるそれぞれの破断線の間に摘み部としてつかみやすい段差を形成することができる。なお、仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α1は鈍角の105〜155度であっても良い。角α1が105〜155度であっても、表裏2枚のフィルム10におけるそれぞれの破断線の間に摘み部としてつかみやすい段差を形成することができる。
切り込み6は、包装体1の寸法や、上述の仮想延長線7とのなす角α1に左右されるものの、おおむね全長10mm程度であれば良い。なお、図1では、直線状の切り込み6が例示されている。しかしながら、切り込み6は例えば円弧状、S字状であっても良い。切り込み6が曲線状に形成されることによって裂け目の方向を誘導することができる。
次に、包装体1の変形例の構成を詳細に説明する。図2は包装体1の第1の変形例が示された平面図である。第1の変形例に係る包装体1は、上述の実施形態の構成とは異なる形態の切り込み6を有する。図2には、一方のフィルム10(表側フィルム)に第1の切り込みに相当する切り込み6を有するだけでなく、他方のフィルム10(裏側フィルム)にも第2の切り込みに相当する切り込み6を有する包装体1が例示されている。なお、その他の特徴については上述の実施形態と同様である。
包装体1の一方のフィルム10における未シール部5の領域内には、開口部8の一端側(ここでは左側)から仮想延長線7が延びる方向(左方向)に対して、切り込み6が、第2のシール部4に向かって上方向に交差するように延びて設けられる。図2では、仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α2が120度である例が示されている。一方で、第1の変形例に係る包装体1は更に、他方のフィルム10における開口部8の他端側から仮想延長線7が延びる方向に対して傾斜角を有して交差する切り込み6を有する。より詳しくは、包装体1の他方のフィルム10における未シール部5の領域内には、開口部8の他端側(ここでは右側)から仮想延長線7が延びる方向(右方向)に対して、切り込み6が、第2のシール部4に向かって上方向に交差するように延びて設けられる。図2では、仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α3が120度である例が示されている。
左側の切り込み6では、一方のフィルム10の裂け目が上側に向かって段差を有する形状となるのに対し、他方のフィルム10の裂け目が仮想延長線7上を左側に伝播していき段差を有さない形状となる。一方で、右側の切り込み6では、他方のフィルム10の裂け目が上側に向かって段差を有する形状となるのに対し、一方のフィルム10の裂け目が仮想延長線7上を右側に伝播していき段差を有さない形状となる。したがって、包装体1の左右両側において、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差が形成される。
このように、第1の変形例に係る包装体1の構成によっても、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差が確実にできて、それぞれの摘み部がつかみやすくなる。そして、仮想延長線7に対して、切り込み6の各々のなす角(α2、α3)が鈍角の105度〜155度である構成によっても、表裏2枚のフィルム10におけるそれぞれの破断線の間に摘み部としてつかみやすい段差を形成することができる。
図3は包装体1の第2の変形例が示された平面図である。第2の変形例に係る包装体1は、上述の第1の変形例の構成とは位置の異なる切り込み6を有する。図3には、一方のフィルム10(表側フィルム)の有する第1の切り込みに相当する切り込み6、及び他方のフィルム10(裏側フィルム)の有する第2の切り込みに相当する切り込み6と、仮想延長線7との交点が一致する包装体1が例示されている。なお、その他の特徴については上述の実施形態と同様である。
包装体1の一方のフィルム10における未シール部5の領域内には、開口部8の一端側(ここでは左側)から仮想延長線7が延びる方向(左方向)に対して、切り込み6が、第2のシール部4に向かって上方向に交差するように延びて設けられる。図3では、仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α4が120度である例が示されている。一方で、第2の変形例に係る包装体1は更に、他方のフィルム10における開口部8の一端側から仮想延長線7が延びる方向に対して傾斜角を有して交差する切り込み6を有する。より詳しくは、包装体1の他方のフィルム10における未シール部5の領域内にも、開口部8の一端側(ここでは左側)から仮想延長線7が延びる方向(左方向)に対して、切り込み6が、第2のシール部4に向かって上方向に交差するように延びて設けられる。図3では、仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α5が140度である例が示されている。
一方のフィルム10の切り込み6では、一方のフィルム10の裂け目が上側に向かうのに対し、他方のフィルム10の切り込み6でも、他方のフィルム10の裂け目が上側に向かう。しかしながら、一方のフィルム10側の切り込み6と、他方のフィルム10側の切り込み6とでは、仮想延長線7とのなす角α4と、α5とがそれぞれ異なるため、それぞれのフィルム10が引き裂かれることによって形成される破断線の形状が異なる。したがって、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間には段差が形成される。
このように、第2の変形例に係る包装体1の構成によっても、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差が確実にできて、それぞれの摘み部がつかみやすくなる。そして、仮想延長線7に対して、切り込み6の各々のなす角(α4、α5)が鈍角の105度〜155度であり、各々のなす角(α4、α5)が互いに異なる構成によっても、表裏2枚のフィルム10におけるそれぞれの破断線の間に摘み部としてつかみやすい段差を形成することができる。
なお、図示は省略するものの、包装体1は、一方のフィルム10の有する切り込み6、及び他方のフィルム10の有する切り込み6と、仮想延長線7との交点が一致しない構成であっても良く、その場合には、仮想延長線7に対して、切り込み6の各々のなす角(α4、α5)が同じであっても構わない。
図4は包装体1の第3の変形例が示された平面図である。第3の変形例に係る包装体1の構成は、開口部8aが切り込み6と接している点で他の形態とは異なる。図4に例示されるように、第3の変形例に係る包装体1の開口部8aは、左側の切り込み6に接して設けられている。このように、開口部8aは、切り込み6に接するように設けられても構わない。更に、開口部8aは、左側の切り込み6だけでなく、右側の切り込み6にも接するように設けられても構わない。ただし、開口部8aと、切り込み6とが接して設けられる場合には切り込み6はハーフカットとされる。こうすることで、フィルム10が引き裂かれる前の状態において包装体1が誤って開封される事態を防止することができる。
なお、図4に例示された包装体1では、2つの切り込み6が、仮想延長線7が開口部8aの両端(左右両側)から包装体1の外縁(左右両端)にそれぞれ延びる方向に対して、いずれも第1のシール部3に向かって下方向に交差するように延びて設けられている。このように、本実施形態に係る包装体1の切り込み6は、図4に示される向きで設けられても構わない。
次に、本実施形態の包装体1を構成するフィルムについて詳細に説明する。本実施形態の包装体1を構成するフィルム10は、単層フィルムの形態であっても良く、複数の材料の積層された多層フィルムの形態であっても良い。フィルム10は例えば、表面層と、バリア層と、ヒートシール層とで構成される3層構造とすることができる。
表面層としては例えば、合成樹脂フィルムが用いられ、特に、一軸方向に方向性を有している一軸延伸熱可塑性合成樹脂フィルムや、一方向に比較して他方向の配向性が極めて大きい二軸延伸熱可塑性合成樹脂フィルムが用いられる。より具体的には、表面層としては例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタラート(PET:PolyEthylene Terephthalate)フィルムを用いることができる。これらの延伸フィルムは、延伸方向と、仮想延長線7の延びる方向とが一致するように積層されることによって、フィルム10の引き裂きをより容易にし、かつその方向性をより安定化させることができる。表面層には、フィルム10の基材としての強度が要求される。表面層の厚さは、12μm〜16μmであることが好ましい。表面層の裏面には印刷層が設けられていても良い。
バリア層としては例えば、金属箔が用いられ、中でも、好ましくは、アルミニウム(Al)箔が用いられる。バリア層の厚さは、7μm〜9μmであることが好ましい。表面層と、バリア層とは、接着剤例えば、ポリウレタン系接着剤によるドライラミネーションによって積層することができる。更に、表面層と、バリア層とは、接着剤の代わりに、熱融着性樹脂、例えばポリエチレンを溶融押し出しして圧着することによって積層しても良く、一般的な積層方法が利用できる。なお、酸素や、水蒸気等に対するバリア性の不要な内容物100の場合にはバリア層は省略されても構わない。
ヒートシール層は、熱によって溶融し、イージーピール性を呈するように相互に融着する材料であれば良い。より具体的には、ヒートシール層としては例えば、ポリエチレン(PE:PolyEthylene)フィルムを用いることができる。ヒートシール層の厚さは、30μm〜40μmであることが好ましい。バリア層と、ヒートシール層とは同様に、接着剤例えば、ポリウレタン系接着剤によるドライラミネーションによって積層することができる。更に、バリア層と、ヒートシール層とは、接着剤の代わりに、熱融着性樹脂、例えばポリエチレンを溶融押し出しして圧着することによって積層しても良く、一般的な積層方法が利用できる。
切り込み6は、多層フィルムの内の単層(表層)のみに形成されるハーフカットの場合には、フィルム10の積層前に形成されると良い。しかしながら、ハーフカットの切り込み6はフィルム10の積層後に形成することもできる。フィルム10の積層後であれば表層を含めた複数の層にハーフカットの切り込み6を形成することもできる。一方で、切り込み6は、全カットの場合には、フィルム10の積層後に形成されると良い。切り込み6は、全カット、及びハーフカットのいずれであっても、製袋後に、未シール部5となる箇所に適切に形成されていればその形成方法は問わず、例えばローラに設けられた刃をフィルム10に押し付けることによって形成することができる。
以上のような切り込み6が適宜位置に形成されたフィルム10から包装体1が製袋される。上述のように、本実施形態では、2枚の包装材が用いられ、それぞれの包装材が重ね合わされて製袋されている。しかしながら、1枚のフィルム10が折り曲げられて包装体1が製袋されても良い。包装体1の製袋時におけるフィルム10の接着は、接着剤が用いられる方法であっても構わない。しかしながら、フィルム10には、ヒートシール層として、例えばポリエチレンフイルムが用いられているため、フィルム10のヒートシール層が対向するように重ね合わされた上でヒートシール(熱融着)される方法であると製造が容易であり、好ましい。なお、包装体1を構成する2枚の包装材が同材質か、異材質かは問わないものの、製造の容易さからは、同材質である方が良い。
次に、本実施形態に係る包装体1の開封方法を詳細に説明する。図5は、包装体1が開封されるに際し、開口部8が押し込まれている状態の一例が示された概略図である。ここでは、図2の切り込み6の形成された包装体1についての開封方法が示される。
いずれか一方の手で包装体1の内容物収容部2や第1のシール部3側が把持され、他方の手の親指と人差し指とで第2のシール部4側が摘まれる。そして、図5に示されるように、包装体1の開封端である開口部8付近の上部が奥側を指し示す矢印の方向に押し込まれる。この際に、包装体1の上辺から親指を滑らせ、開口部8に爪を当てた状態とすると開封の操作がしやすくなる。そして、そのまま、親指が奥側に押し込まれる、又は奥側に押し込まれながら上側にひねられると、開口部8から裂け目が伝播し、切り込み6を経由して、あるいは経由せず、開口部8の上側の領域が包装体1から分断される。
図6は、包装体1が開封されるに際し、引き裂かれた後の状態の一例が示された概略図である。一方のフィルム10(表側フィルム)には、左側に切り込み6が設けられている。したがって、開口部8の左側から伝播した裂け目は切り込み6を経由して上側に向かう。一方で、開口部8の右側から伝播した裂け目は、上述の仮想延長線7に沿ってそのまま包装体1の右側の端部に向かい、破断線9を形成する。他方のフィルム10(裏側フィルム)には、右側に切り込み6が設けられている。したがって、開口部8の右側から伝播した裂け目は切り込み6を経由して上側に向かう。一方で、開口部8の左側から伝播した裂け目は、仮想延長線7に沿ってそのまま包装体1の左側の端部に向かい、破断線9を形成する。
こうして、開口部8の上側の領域が分断された後の包装体1の左上部には一方のフィルム10(表側フィルム)のみが存在している領域11が形成され、右上部には他方のフィルム10(裏側フィルム)のみが存在している領域12が形成される。したがって、包装体1の左上部の領域11を摘むと一方のフィルム10(表側フィルム)をつかむことができ、包装体1の右上部の領域12を摘むと他方のフィルム10(裏側フィルム)をつかむことができる。
このように、一方のフィルム10と、他方のフィルム10とで、その破断線が異なる軌跡を描き、その形状が異なることで、一方のフィルム10と、他方のフィルム10とがつかみやすくなる。そして、未シール部5の領域が密着してしまっている場合においても一方のフィルム10と、他方のフィルム10とをそれぞれ別個に確実につかむことができる。
その後は、一方のフィルム10と、他方のフィルム10とがそれぞれ表方向と、裏方向とに離れるように引っ張られることで第1のシール部3が剥離し、内容物収容部2に保持されている内容物100が取り出される。その際に、一方のフィルム10と、他方のフィルム10とが確実につかまれているため、包装体1の開封が容易に行える。なお、この包装体1は、細かい指先の操作に多少の不安を有する例えば高齢者にとっても開封が容易である。
以上のように、本実施形態に係る包装体1の構成によれば、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差ができて、それぞれの摘み部がつかみやすくなる。一方で、フィルム10が引き裂かれる前の状態では包装体1が誤って開封される事態を防止することができる。したがって、内容物100の保護性に優れ、誤開封を防止しつつ、易開封性を有するとともに、その構造が単純で、製造が容易な包装体1を提供することができる。
なお、以上に説明がなされた本実施形態に係る包装体1や、その変形例等は、矛盾の生じない範囲で自由に組み合わせることができる。例えば、開口部8は、いずれの実施形態や変形例に係る切り欠き6に対しても図4に例示のように接触するように構成することが可能である。
以上に説明がなされたように、重ね合わされたフィルム10で内容物100を保持する包装体1において、包装体1は、周囲が、第1のシール部3によってシールされ、内容物100を保持する内容物収納部2と、包装体1の外縁の少なくとも一部と接する第2のシール部4と、第1のシール部3と、第2のシール部4との間において第2シール部4に沿った方向に相当する仮想延長線7を含む未シール部5とを備え、仮想延長線7上に、フィルム10を貫通する開口部8、又は切り込みを有し、仮想延長線7は、開口部8、又は切り込みの両端からそれぞれ包装体1の外縁の方向に延び、少なくとも一方のフィルム10における開口部8、又は切り込みの一端側と外縁との間に、仮想延長線7と交差する第1の切り込み6を有し、未シール部5は、開口部8、又は切り込みと、第1の切り込み6と、仮想延長線7に沿った裂け目とが端部となり、第1のシール部3を剥離する摘み部の少なくとも一方を構成する。
そして、本実施形態に係る構成によれば、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差ができて、それぞれの摘み部がつかみやすくなる。一方で、フィルム10が引き裂かれる前の状態では包装体1が誤って開封される事態を防止することができる。したがって、内容物100の保護性に優れ、誤開封を防止しつつ、易開封性を有するとともに、その構造が単純で、製造が容易な包装体1を提供することができる。
以下に、実施例を示して、本開示を更に詳細、かつ具体的に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料>
上述された本実施形態に係る包装体1が用いられた。すなわち、包装体1は、周囲が、第1のシール部3によってシールされ、内容物100を保持する内容物収納部2と、包装体1の外縁の少なくとも一部と接する第2のシール部4と、第1のシール部3と、第2のシール部4との間において第2シール部4に沿った方向に相当する仮想延長線7を含む未シール部5とを備え、仮想延長線7上に、フィルム10を貫通する開口部8、又は切り込みを有し、仮想延長線7は、開口部8、又は切り込みの両端からそれぞれ包装体1の外縁の方向に延び、少なくとも一方のフィルム10における開口部8、又は切り込みの一端側と外縁との間に、仮想延長線7と交差する第1の切り込み6を有し、未シール部5は、開口部8、又は切り込みと、第1の切り込み6と、仮想延長線7に沿った裂け目とが端部となり、第1のシール部3を剥離する摘み部の少なくとも一方を構成する等といった特徴を有している。
フィルム10は、PET(厚さ:12μm)/Al(9μm)/PE(30μm)の3層であり、各層間をポリウレタン系接着剤によるドライラミネーションによって積層した。2枚のフィルム10のPE層を対向させてヒートシールすることによって包装体1を製袋した。仮想延長線7上のフィルム10の幅方向中央に開口部8を形成した。包装体1のフィルム10に、図1、又は図2に示されるような形態の切り込み6を形成した。切り込み6を全カットとした。以下に各実施例の構成を示す。
[実施例1]
図1に示される切り込み6、及び開口部8を有する包装体1を用いた。すなわち、表側のフィルム10における開口部8の左側から仮想延長線7が延びる方向(左方向)に対して、下方向に交差するように延びる切り込み6を設けた。仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α1は60度とした。切り込み6の長さを10mmとした。開口部8の長さも10mmとした。
[実施例2]
図2に示される切り込み6、及び開口部8を有する包装体1を用いた。すなわち、表側のフィルム10における開口部8の左側から仮想延長線7が延びる方向(左方向)に対して、上方向に交差するように延びる切り込み6を設けた。仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α2を120度とした。更に、裏側のフィルム10における開口部8の右側から仮想延長線7が延びる方向(右方向)に対して、上方向に交差するように延びる切り込み6を設けた。仮想延長線7と、切り込み6とのなす角α3も120度とされた。切り込み6の長さをいずれも10mmとした。開口部8の長さも10mmとした。
<開封方法>
表1は、各実施例の開封方法、及び結果が示されたものである。開口部8の上側(外縁シール部側)を右手で持つか、左手で持つか、及び引き裂きの方法(奥側に押し込むか、奥側に押し込みながら上側にひねるか)の組み合わせによって4つの開封方法を設けた。2つの実施例の包装体1において4つの開封方法で、表裏2枚のフィルム10それぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差ができるか否かの判定を行った。
[開封方法1]
開口部8の上側の外縁シール部側を右手で持ち、右手を奥側に押し込んで、包装体1のフィルム10の開封を行った。
[開封方法2]
開口部8の上側の外縁シール部側を右手で持ち、右手を奥側に押し込みながら上側にひねって、包装体1のフィルム10の開封を行った。
[開封方法3]
開口部8の上側の外縁シール部側を左手で持ち、左手を奥側に押し込んで、包装体1のフィルム10の開封を行った。
[開封方法4]
開口部8の上側の外縁シール部側を左手で持ち、左手を奥側に押し込みながら上側にひねって、包装体1のフィルム10の開封を行った。
<結果>
[実施例1]
利き手、及び反対の手のいずれでも包装体1が開封でき、開封方法1〜開封方法4のいずれの開封方法によっても、表裏のフィルム10に形成されたそれぞれの破断線の軌跡が異なっており、段差が形成された。したがって、摘み部がつかみやすかった。
[実施例2]
利き手、及び反対の手のいずれでも包装体1が開封でき、開封方法1〜開封方法4のいずれの開封方法によっても、表裏のフィルム10に形成されたそれぞれの破断線の軌跡が異なっており、段差が形成された。したがって、摘み部がつかみやすかった。
上述された実施例から、本実施形態に係る包装体1の構成によれば、表裏2枚のフィルム10のそれぞれが引き裂かれることによって形成されるそれぞれの破断線の間に段差ができて、それぞれの摘み部がつかみやすくなることが示された。そして、切り込み6の仮想延長線7に対する角α1、並びにα2、及びα3が60度、及び120度の包装体1であると特に効果的に段差が形成されることが示された。一方で、フィルム10が引き裂かれる前の状態では包装体1が誤って開封される事態を防止することができる。したがって、内容物100の保護性に優れ、誤開封を防止しつつ、易開封性を有するとともに、その構造が単純で、製造が容易な包装体1を提供することができることが示された。