以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るリーク検査装置5の概略構成を示している。リーク検査装置5は、検査対象となる容器の漏れを検査する装置である。
リーク検査装置5は、一端が、加圧気体の供給元である圧縮エア源3に通じ、他端に、検査対象となるワークWの接続口11aを備えた主管路11を有している。主管路11には圧縮エア源3のある上流側から順に電空レギュレータ21、第1圧力センサ22、加圧弁35、第2圧力センサ24が設けられている。電空レギュレータ21は、下流側が設定圧力を超えないようにする機能を果たす。
主管路11の第2圧力センサ24より下流の所定箇所から排気管12と第1分岐管13がそれぞれ分岐している。排気管12の途中には排気弁36が設けてあり、排気管12の末端は排気ポート12aを介して大気に開放されている。排気管12の分岐箇所と接続口11aとの間の主管路11には手動弁28が介挿されている。手動弁28は接続口1、2、3を備え、開状態では接続口1、2を連通させ接続口3を封鎖し、閉状態では接続口1を封鎖し、接続口2、3を連通させる。
第1分岐管13は、第3開閉弁33、および第2開閉弁32を介して差圧センサ26の一方の接続口に接続されている。主管路11の第2圧力センサ24より下流であって第1分岐管13の分岐箇所より上流の所定箇所から第2分岐管14が分岐している。第2分岐管14は、第4開閉弁34および第1開閉弁31を介して差圧センサ26の他方の接続口に接続されている。
さらにリーク検査装置5は、恒温槽40を備えている。第4開閉弁34より差圧センサ26側の第2分岐管14、第1開閉弁31、差圧センサ26、第3開閉弁33より差圧センサ26側の第1分岐管13の部分は恒温槽40に収容されている。恒温槽40は、上記の収容した部分を冷却して一定温度に維持する役割を果たす。
第1開閉弁31、第2開閉弁32、第3開閉弁33、第4開閉弁34、加圧弁35、排気弁36は、コイルの発熱を回避するために電磁弁ではなく、エアオペレート式のバルブ(スプリングリターン単動作動形)を採用している。また、第1開閉弁31、第2開閉弁32、第3開閉弁33、第4開閉弁34、加圧弁35は、駆動時に開き非駆動時に閉じるノーマルクローズ型であり、排気弁36は駆動時に閉じて非駆動時に開くノーマルオープン型である。バルブは内部に弁体があると共に配管取付部を持つ。従って通常の管と異なり、内部容積の割には熱容量が大きい。
第1圧力センサ22、第2圧力センサ24は、単圧式の圧力センサである。定格圧力0〜1000KPa、測定精度(誤差)は、±0.025%/フルスケール程度である。従って、測定レンジ1000KPa時には250Pa程度の誤差を含む。差圧センサ26は定格差圧0〜10KPa(定格圧力−5〜+5KPa)と第1圧力センサ22、第2圧力センサ24に比してわずかな圧力(圧力差)で壊れる(破壊圧力は定格圧力に略比例)。その代わりに、例えば2.5Pa程度の誤差しかないので、わずかな差圧を判別でき、高精度で検査することができる。
このほかリーク検査装置5は、当該リーク検査装置5の動作全体の制御、電空レギュレータ21や第1開閉弁31、第2開閉弁32、第3開閉弁33、第4開閉弁34、加圧弁35、排気弁36の駆動、第1圧力センサ22、第2圧力センサ24、差圧センサ26の駆動および出力値の読み取りなどを行う制御基板(図示省略)を備えている。電空レギュレータ21内にも圧力センサを備えているが、第1圧力センサ22等と同じ単圧式の圧力センサであり、定格圧力が高いものを用いている。
図2に示すように、第2分岐管14のうちの第1開閉弁31と差圧センサ26の間の部分を第1空間51、第1分岐管13のうちの第2開閉弁32と差圧センサ26との間の部分を第2空間52、第2開閉弁32と33との間の部分を第3空間53とする。また、加圧弁35より下流の主管路11および排気弁36より上流の排気管12、第3開閉弁33より上流の第1分岐管13、第4開閉弁34より上流の第2分岐管14および接続口11aに接続されたワークWの内部を合わせて第4空間54とする。第2分岐管14のうちの第1開閉弁31と第4開閉弁34との間の部分を第5空間55とする。図2では、第1空間51、第2空間52、第3空間53、第5空間55は太線で、第4空間54は太破線で示してある。なお第1空間51は、例えば特許文献1に開示されているような小マスタであってもかまわない。
第1空間51と第2空間52は、同一の放熱係数を有するように構成してある。すなわち。差圧センサ26の両端と第1開閉弁31、第2開閉弁32との間の配管は、同一材質、同一表面積、同一体積として、同じ放熱係数を持たせてある。
ここでは、圧縮エア源3による加圧は、例えば400〜1000KPaを目標圧力として行うものとする。また、ワークWの容積に比べて、第1空間51の容積は十分に小さくされている。たとえば、ワークWは100L、第1空間51は25mL=タンク状膨らみ13mL+配管12mLにされる。
図3は、恒温槽40およびその周囲の配管状況を示している。図中、恒温槽40は破線で示してある。恒温槽40の中に収められた第1開閉弁31、差圧センサ26、第2開閉弁32、および恒温槽40の外側近傍に設置された第4開閉弁34、第3開閉弁33は略水平に配列されており、第4開閉弁34から差圧センサ26に至る第2分岐管14および第3開閉弁33から差圧センサ26に至る第1分岐管13もそれぞれ水平に配管されている。
主管路11から分岐した第1分岐管13は、上方から第3開閉弁33に至るように配管されている。同様に第2分岐管14も上方から第4開閉弁34に至るように配管されている。
次に、リーク検査装置5によるリーク検査の手順について説明する。
図4はリーク検査装置5によるリーク検査の手順を示す流れ図である。まず、検査準備として、第1空間51と第2空間52と第3空間53と第4空間54を目標圧力に加圧した後、冷やして、安定な状態にする。
詳細には、接続口11aに何も接続せずに手動弁28を閉じ、第1開閉弁31、第2開閉弁32、第3開閉弁33、第4開閉弁34を開き、排気弁36を閉じる(ステップS101)。次に、加圧弁35を開いて、圧縮エア源3からの加圧気体を導入し、第1空間51、第2空間52、第3空間53、第4空間54、第5空間55を目標圧力に加圧する。このとき、これらの空間51〜55は連通しているので同一圧力になる。加圧が完了したら加圧弁35を閉じる(ステップS102)。図9で従来構造における断熱圧縮による発熱箇所を図示したが、ステップS102での加圧による発熱箇所は、図5においてグレー色で示す箇所となる。すなわち、排気管12と排気弁36との接続箇所a1、手動弁28とその上流側の主管路11との接続箇所a2、差圧センサ26内部a3、である。断熱圧縮により気体が発熱し、この熱がリーク検査装置5の該当箇所表面に伝熱することで熱を持つ。目標圧力になったか否かは第2圧力センサ24の検出値で確認する。
ステップS102の加圧により、第1空間51に面する差圧センサ26内(図5の熱溜まり箇所a3)が、断熱圧縮により発熱した気体で満たされるため、その後、その発熱が放熱して安定状態が形成されるまで(この時間を安定経過時間とする)待つ。安定経過時間の経過後に第1開閉弁31、第4開閉弁34を閉じて第1空間51および第5空間55をそれぞれ密閉状態にし(ステップS103)、さらに第2開閉弁32、第3開閉弁33を閉じて第2空間52、第3空間53をそれぞれ密閉状態にする(ステップS104)。そして、検査準備が完了する。そしてこの作業は例えば終業時に行う。第1開閉弁31、第4開閉弁34は、この後、閉じた状態に維持される。
なお、このような安定経過時間を設けない場合、あるいは設定した安定経過時間が不十分な(短い)場合には、第1開閉弁31、第4開閉弁34を閉じた後も放熱が進み、該放熱と共に第1空間51内の圧力が下がってしまうので、第1空間51がワークWのリーク検査における基準にならなくなってしまう。そのため、十分な安定状態が形成されるだけの安定経過時間の経過を待ってから第1空間51を密閉している。
なお、例えば翌朝の始業時に、前日のステップS102において、第1空間51〜第5空間55までを同時に目標圧力まで加圧しきれていなかった場合には、目標圧力まで補充加圧することを繰り返し行って、冷えた状態で目標圧力になるようにする。補充加圧による断熱圧縮で発生する熱量は少ない。なお、前日の安定経過時間が十分ならば一度(前日)で目標圧力となっているので、補充加圧は不要となる。また、恒温槽40に収容されて一定温度に保たれているので、第3空間53、第5空間55には一定温度に保たれた気体がある。補充加圧を行うときにはこの一定温度に保たれた気体が差圧センサ26の両側に加えられるので差圧センサ26の温度ドリフトが発生せず、比較的短時間で目標圧力に加圧して安定させることができる。
すなわち、差圧センサ26の温度ドリフトは差圧センサ26の周囲温度、差圧センサ26に接触する第1空間51、第2空間52の温度によって左右されるが、後述の基準特性を取得する時やワークWの検査時等において第1空間51、第2空間52に流出入する気体もまた第1空間51、第2空間52の温度と同じであるようにすれば、第1空間51、第2空間52の温度が変化せず、もって、差圧センサ26の温度ドリフトの発生を防止できる(ドリフト対策)。
次に、第1空間51と、マスタMの、圧縮エア導入後の差圧の経時変化を測定し、リーク検査(第1空間51とワークWの、圧縮エア導入後の差圧の経時変化測定検査)での漏れを判定するための、判定値(以後基準特性)を求める工程を行う(ステップS105〜S109)。マスタMは、漏れのないワークWと同形状、同体積である(同一放熱特性を持つ)。
検査準備が完了した状態では、第1開閉弁31、第2開閉弁32は閉じてあるので排気弁36を開いても差圧センサ26の両側の第1空間51と第2空間52は高い圧力(目標圧力)に維持される。そして、排気弁36と手動弁28を開けて第4空間54を大気開放し、この状態で、加圧弁35を開けることで、主管路11、排気管12を掃気する(ステップS105)。この掃気により第4空間54を、数時間(たとえば2時間)ほど経過して自然放熱によって安定状態が形成された状態から、ワークWのリーク検査を開始するときと同じ条件にすることができる。すなわち、後に行うワークWのリーク検査と同じ条件で基準特性を取るために掃気を行う(後述の複数回のワークWのリーク検査も含む)。
第4空間54と、第4空間54に接する弁等は下記の3つの条件に分類される。
A:前記掃気により圧縮エア源3からの気体が流れる部分、例えば加圧弁35、第2圧力センサ24、加圧弁35から出た気体が第1分岐管13の分岐に至るまでの主管路11、排気管12、排気弁36、主管路11から分岐する第1分岐管13分岐点から手動弁28に至るまでの主管路11、手動弁28、手動弁28から接続口11a間の管路がこれに当たる。
B:前記掃気により圧縮エア源3からの気体が流れない部分、例えば第2分岐管14、第4開閉弁34がこれに当たる。
C:前記掃気により圧縮エア源3からの気体で置換、又は流れを作ることができる部分、第1分岐管13、第3開閉弁33がこれに当たる。
本実施の形態では、Cの条件に当てはまる第1分岐管13や、その分岐箇所から手動弁までの管は短いので、図5に示すような滞留防止構造により前述した掃気を行うことでCの条件に該当する部分も掃気される。なお、これらの管が長い場合には、必要に応じて掃気用の排気弁を増設して第2分岐管14を除く第4空間54内を掃気する。(例えば第3開閉弁33を3方弁とし、1:3方を閉、2:第1分岐管13と第2空間52を連通、3:第1分岐管13と大気を連通の3方向に切り替えできるようにすると共に、3の位置で掃気するようにしても良い)。
第2分岐管14は恒温槽内にあるので、これにより掃気の必要性を低減しているが、第4開閉弁34を3方弁として、第2分岐管14と大気とを連通できるようにし、この位置(3の位置)を用いて掃気するようにしても良い。Bの条件に当てはまる第2分岐管14、第4開閉弁34は恒温槽40に収容して冷却処置を行うことで、複数回のワークWのリーク検査が行われても蓄熱を防止する。
すなわち、A=掃気により、B=恒温槽40により、C=滞留防止構造による掃気により、第4空間54と、第4空間54に接する弁等の基準特性取得時、ワークWのリーク検査時(後述の複数回のワークWのリーク検査も含む)における蓄熱を防ぎ、又は蓄熱を短時間に解消して同一条件をつくることができるようにしている(掃気、恒温槽対策)。なお、第2分岐管14、第4開閉弁34部分の発熱量は、第2分岐管14の長さの影響を受けるので、第2分岐管14の長さを短くすることで発熱量を下げることも併せて行っても良い。さらに、第2分岐管14の長さを短くしつつ、主管路11から分岐する第2分岐管14の、分岐点部分構造を、後述のY字型等の慣性掃気構造(滞留防止構造)としてBの条件に該当する箇所をAの条件に該当する箇所に変えても良い。
所定時間の掃気が終了したならば、加圧弁35を閉じて掃気を終了する。この掃気はマスタM取り付け前、複数回繰り返されるワークW検査のワークW取り付け前に行い、第4空間54を同一条件として、検査精度を高めるための工程である。なお、所定時間の掃気に替えて、サーミスタ等を1か所又は各3方弁等の掃気時排気出口(例えば排気管12等)に取り付けて検出される温度に基づいて(例えば微分値等を用いて)掃気の終了時期を直接検出するようにしてもかまわない。
次に、接続口11aに漏れのないワークWであるマスタMを接続し、(手動弁28を開き、)排気弁36を閉じた後(ステップS106)、加圧弁35を開き、第4空間54を目標圧力まで加圧し加圧が完了したら加圧弁35を閉じる(ステップS107)。なお、掃気後の第4空間54は該加圧による断熱圧縮によって温度が上昇する。温度が上昇する部分(熱溜まり箇所)は図5のハッチングを施した丸印等の部分(4箇所)である。具体的には、排気管12と排気弁36との接続箇所b1(a1と同じ箇所)、第3開閉弁33とその上流側の第1分岐管13との接続箇所b2、第4開閉弁34とその上流側の第2分岐管14との接続箇所b3、ワークW内の行き止まり箇所b4、である。なお、熱溜まり箇所b3に溜まる熱量は、第4開閉弁34より上流側の第2分岐管14の長さの影響を受けるので、第2分岐管14の長さを短くすることで熱溜まり箇所b3での発熱を低減する、あるいは第2分岐管14の長さをゼロにして発熱を防止することができる。
次に、第3開閉弁33を開いて第4空間54を第3空間53に連通させ、さらに第2開閉弁32を開いて第3空間53を第2空間52に連通させる(ステップS108)。
なお、第4空間54を目標圧力に加圧する際には、第2圧力センサ24の検出値に基づいて、第4空間54を目標圧力より少し高い圧力まで加圧する。たとえば、目標圧力800KPaに対して、800.25KPaまで(第2圧力センサ24の誤差分以上まで)加圧する。第2圧力センサ24は誤差が大きいので、第2圧力センサ24の測定レンジ(フルスケール)1000KPaにて検出値が800.25KPaを示していても、例えば第2圧力センサ24の測定精度(誤差)が、0.025%/フルスケールの場合、実際には、800.0〜800.5KPaの範囲の圧力になる。したがって、第1空間51よりも第4空間54は、0〜0.5KPaだけ高い圧力になる。
その後、第3開閉弁33、第2開閉弁32をこの順に少し時間差を空けて開き、第4空間54を第3空間53および第2空間52に連通させる。そして、差圧センサ26の検出値が、第1空間51と第2空間52の圧力が等しくなったことを示すまで、排気弁36から少しずつ気体を外界へ逃がすようにして、第2空間52側の圧力を目標圧力に合わせ込む。このようにすることで、第2圧力センサ24の測定誤差を差圧センサ26で校正して、正確に目標圧力(第1空間51側と同じ圧力)に加圧することができる。
特に加圧後に排気弁36から気体を逃がして合わせ込むようにすることで、加圧時の圧縮によって排気弁36の部分(図5の熱溜まり箇所b1)で発熱した温度の高い気体を速やかに排出して掃気することができる。なお、ワークWのリーク検査でも、加圧後に排気弁36から気体を逃がして合わせ込む方法の掃気を実施して静定時間を短くした高速測定を行うので、これとマッチングできるように基準特性を取る前にも同じ方法の掃気を行う。これにより、正確な基準特性を取る準備ができる。また、合わせ込みの差圧を第2圧力センサ24の測定誤差として記憶しておく。
本実施の形態では、管路が分岐して行き止まりとなっており、この行き止まり形状であるが故に、排気弁36から気体を逃がして合わせ込む時にも断熱圧縮の熱が溜まってしまう部位(たとえば、図5の熱溜まり箇所b2)にも掃気による排熱効果を高めるための流れができるように、管路の分岐箇所に滞留防止構造を採用している(図6参照)。例えばY字構造やノズル構造を用いて、慣性力を用いた慣性掃気により分岐管の奥深くまで掃気できるようにしている。
図6の場合、排気弁36から気体を逃がして合わせ込む際に、加圧弁35側から滞留防止構造に到来した気体は、慣性を有するので、Y字構造の部分で急に向きを変えることができず、そのまま、第1分岐管13を通じて第3開閉弁33に向かい、その後、この行き止まり部分に滞留していた気体を巻き込んで向きを変え、手動弁28のあるY字構造の出口側に向かう。Y字構造の出口には管径を細くしたノズル構造が設けてあるので、気体はこの部分で流速を増して手動弁28に向かって吐出し、手動弁28で行き止まりになっている管路内に滞留している気体を巻き込んで向きを変え、排気弁36へ向かって進む。このようにして、分岐管の奥深くまで掃気される。
なお、第4空間54を目標圧力より少し高い圧力800.25KPaに加圧する際も一度800.25KPaより高くしておいてから減圧しながら800.25KPaとすると、第2圧力センサ24のヒステリシスによる誤差を少なくすることができる。また、差圧センサ26で求めた第2圧力センサ24の測定誤差を用いて、次回以降の目標圧力より少し高い第4空間54内加圧の程度を少なくすることで、排気弁36から気体を外界へ逃がす時間を少なくし、検査時間を短くするようにしても良い。
その後、基準特性を求める(ステップS109)。詳細には、所定時間が経過するまでの間、差圧センサ26の検出値を測定し、差圧センサ26の検出値と経過時間との関係を示す特性を取得し、その時の周囲湿度、周囲温度、周囲気圧、加圧時の圧縮エア源3内のエア温度・湿度・圧力(周囲との圧力差)、加圧時間、加圧完了時の検査系内のエア温度など(以後検査条件)と共に記憶する。すなわち、第4空間54とマスタMは断熱圧縮により温度が上昇しているので、時間と共に内部の熱い気体が対流により移動(図5の例ではワークW内の熱溜まりb4にあった熱い気体がワークW内の上部c4に移動)したりしながら冷却され、これに伴い内部の圧力が低下する。これに対し、封止された恒温槽40内の第1空間51内圧力は一定値を保つ。そしてこの2者の差圧(差圧センサ26の検出値)は第4空間54内の気体の温度降下とともに大きくなり、第4空間54内とマスタM内の気体温度が下がり周囲温度との差が小さくなるにつれて温度降下の程度が少なくなり、2者の差圧の開きは一定値に至る(第4空間54内の圧力降下は連通される第3空間53を通じて第2空間52に伝播される)。
なお、本実施の形態では差圧の開きが一定値に至るまで基準特性を取得するのではなく、後述のワークWのリーク検査を行う所定時間と同一時間の経時変化特性を取得するようにして、比較誤差がでないようにもしている。なお基準特性は、例えば10時の休憩、昼食時の休憩、15時の休憩等で測定、更新することが好ましい。
なお、加圧完了後、放熱(漏れ以外の要因)による圧力低下がほぼ収まるまでの所定の時間を静定時間として設定し、マスタについて該静定時間が経過したときの圧力差の値を基準特性として取得し、ワークWの検査において静定時間が経過したときに検出された圧力差と基準特性としての静定時間経過後の圧力差とを比較し、その差が所定の閾値未満ならばワークWは漏れなし(検査合格)と判定し、閾値以上ならば漏れあり(検査不合格)と判定するようにしてもよい。
基準特性を得られたならワークWのリーク検査を行う(ステップS110〜S115)。まず、基準特性の取得を終えた時点では、第2開閉弁32、第3開閉弁33が開いているので、これらを閉じる(ステップS110)。これにより、第1開閉弁31、第2開閉弁32、第3開閉弁33、第4開閉弁34はいずれも閉じた状態となり、排気弁36を開いても差圧センサ26の両側の第1空間51、第2空間52、およびさらにその両隣の第5空間55、第3空間53は高い圧力に維持される。すなわち、次のリーク検査開始にあたって、差圧センサ26の両方を閉鎖系とする。
次に、排気弁36を開いて第4空間54を大気開放し、基準特性を求めた時と同じ所定時間の掃気を行う(ステップS111)。この掃気により前回第4空間54内で断熱圧縮により温度が上昇した気体が掃気される。この掃気を検査毎に行うことで、検査を繰り返しても第4空間54内を同じ条件とすること(断熱圧縮による第4空間54内の熱の蓄積を防止すること)ができる。次に、接続口11aに接続されているマスタMをワークWに交換(前回がワークWのリーク検査ならば、次のワークWに交換)して、再び排気弁36を閉じる(ステップS112)。
次に、加圧弁35を開き、第4空間54を目標圧力まで加圧する。加圧が完了したら加圧弁35を閉じる(ステップS113)。この時の発熱・蓄熱箇所はステップS107と同じ(図5の熱溜まり箇所b1〜b4)である。次に、第3開閉弁33を開いて第4空間54を第3空間53に連通させ、さらに第2開閉弁32を開いて第3空間53を第2空間52に連通させる(ステップS114)。
なお、第4空間54を目標圧力に加圧する際には、第2圧力センサ24の検出値に基づいて、第4空間54を目標圧力より少し高い圧力まで加圧する。たとえば、目標圧力800KPaに対して、800.25KPaまで加圧する。第2圧力センサ24の誤差が大きいので、第2圧力センサ24の検出値が800.25KPaを示していても、実際には、800.0〜800.5KPaの範囲の圧力になる。したがって、第1空間51よりも第4空間54は、0〜0.5KPaだけ高い圧力になる。
その後、第3開閉弁33、第2開閉弁32をこの順に少し時間差を空けて開き、第4空間54を第3空間53および第2空間52に連通させる。そして、差圧センサ26の検出値が、第1空間51と第2空間52の圧力が等しくなったことを示すまで、排気弁36から少しずつ気体を外界へ逃がすようにして、第2空間52側の圧力を目標圧力に合わせ込む。このようにすることで、第2圧力センサ24の測定誤差を差圧センサ26で校正して、正確に目標圧力に加圧することができる。
すなわち、第2圧力センサ24は目標圧力800KPaに対して、800.25KPaまで加圧しても誤差があるので、本当の圧力は800.0〜800.5KPaの範囲の圧力であることしか判らない(誤差250Pa)。そこで、事前に第1空間51を加圧しておいた差圧センサ26の検出にバトンタッチし、第1空間51内圧力を基準とした圧力合わせ込みで、第1空間51に対する誤差を2.5Pa以内に抑える。この合わせ込みによって、第2圧力センサ24の高耐圧という利点と差圧センサ26のわずかな差圧を見つけることができるという利点を併せ持ったセンサを用いたのと略同等のリーク検査(後述のS115)を行う準備ができる(第1空間51の圧力が250Paの誤差を持つので、必ずしも同等ではないがステップS109の基準特性が第1空間51の圧力を基準に取得するので、略同等のリーク検査を行うことができる)。
ワーク交換の際に、第4空間54は大気圧から目標圧力(たとえば800KPa+α)まで加圧されるので、第4空間54内の気体は断熱圧縮により熱くなっている。第3空間53は前回の検査終了時の圧力に保持されているので、第4空間54は第3空間53より僅かに高い圧力になっている。
そのため、第3開閉弁33を開くと、熱い気体が僅かに第3空間53に入り込み、第3空間53内の気体が僅かに加圧されて断熱圧縮による熱が少し生じる。そこで、前述したように、少し時間差を空けて、第3空間53内の気体が冷えるのを待ってから第2開閉弁32を開く。これより、第2開閉弁32を開いても熱い気体が差圧センサ26に至ることが防止される。すなわち、差圧センサ26内にあるサーミスタ等の校正素子が温度ドリフト補正を行うのにタイムラグが出るが、温度の影響を少なくすることでタイムラグを短くすることができる。
なお、図3に示すように、第1分岐管13は上方から第4開閉弁34に至るように配管されている。そのため、第3開閉弁33を開いても、熱い気体は上になり、第1分岐管13内の熱い気体と第3空間53内の冷たい気体との間で対流は生じない。つまり、第3開閉弁33を開いたときに第1分岐管13内の熱い気体が第3空間53に少し加わったとしても、その熱い気体は第1分岐管13寄りの位置に留まり、第2開閉弁32内にあった冷たい空気と混ざらず、第2開閉弁32寄りの気体は冷たい状態に維持される。したがって、第3開閉弁33を開いてから直ぐに第2開閉弁32を開いても問題はない。
上記のようにしてワークの交換が完了すると、ワークWのリーク検査を行う。詳細には、所定時間が経過するまでの間、差圧センサ26の検出値を測定し、差圧センサ26の検出値と経過時間との関係を示す特性を取得し、これを基準特性と比較してワークWに気体の漏れがあるか否かを判定する(ステップS115)。あるいは前述した静定時間経過後の差圧を検出し、該差圧と基準特性が示す差圧と比較して漏れの有無を判定する。
次のワークWについてリーク検査を行う場合は(ステップS116;No)、ステップS110に戻って作業を継続する。すべてのワークWのリーク検査が終了した場合は(ステップS116;Yes)、第2開閉弁32、第3開閉弁33を閉じて(ステップS117)から排気弁36を開き、最後に検査したワークWを取り外して(ステップS118)、作業を終了する(エンド)。すなわち検査終了後、差圧センサ26の両方を閉鎖系として排気弁34を開き、作業を終了する。
つぎの日に検査を再開する際には、ステップS111から行えばよい。又は終業時にステップS101〜S104を行ってつぎの日の検査に備えても良い。図4の手順は、作業員が行う、あるいは一部(ワークWの取り付け、取り外しなど)は作業員の手を借り、その他は制御基板が制御して実行する。
このようにリーク検査装置5では、複数のワークWについてのリーク検査を続けて行う場合でも、第1空間51への気体の加圧は一度だけで済むので、断熱圧縮が繰り返し行われて第1空間51に熱が蓄積され、検査の精度が低下するといったことがない。すなわち、第1空間51を作る第1開閉弁31を差圧センサ26のワークW側の圧力を検出しない側に設けて加圧した気体を封止することで、第1空間51に熱が蓄積され、検査の精度が低下するといったことがない。つまり、第1空間51の放熱に必要な時間を検査毎に設ける必要がないので短時間の複数回連続測定ができる。
詳述すると、ワークWのリーク検査を基準特性と比較する場合に、大きな誤差を生む第1空間51内の熱蓄積に差がないので、ステップS108において第4空間54内と第1空間51内の差圧の経時特性は基準特性と良く一致するために、2者の差圧(差圧センサ26の検出値)の開きが一定値に至る時間まで待たずに漏れの有無を高精度で判断できる。さらに、第4空間54内の蓄熱も掃気工程を用いることで阻止でき、もって短時間測定に貢献している。
また、ワークWを交換するときは、第2開閉弁32を閉じて第2空間52を密閉状態にするので(この時も第1開閉弁31は閉じてあるので)、差圧センサ26の両側の圧力がほぼ検査時の圧力に維持されて差圧がほとんどなく、差圧センサ26にダメージを与えることがない。すなわち、差圧センサ26の両側に開閉弁(第1開閉弁31、第2開閉弁32)を持ち、ワークW交換時や後述の停電等で差圧センサ26の一端が大気開放になりそうな時には差圧センサ26の両側の開閉弁を閉じることで差圧センサ26にダメージを与えることを防ぐことができる。
本実施の形態では、差圧センサ26の両側に第1開閉弁31と第2開閉弁32の2つの弁をもつことで、蓄熱を防ぐために第1空間51内を封止した際におけるワークW交換で、第2空間52が大気開放となることを防止できる。この結果、第4空間54が大気開放となっても壊れない。また、耐圧が高い(定格差圧が大きい)が低精度(判別圧力差が大)の差圧センサではなく、耐圧が低い(定格差圧が小さい)が高精度(判別圧力差が小)の差圧センサ26を用いることが可能となるので、高精度でわずかな漏れを検出できる。
すなわち、ワークWの交換で、第2空間52が大気開放となると、例えば800KPaや1000KPaのような高い圧力下で検査するためには差圧センサ26の定格差圧や片耐圧の最大値が例えば800KPaや1000KPa以上必要となる。しかし、ワークWの交換で、第2空間52が大気開放とならなければ、ライン圧力(両耐圧)が高い、すなわち差圧センサ26の圧力検知センサ部を収納している密閉容器の耐圧が高いセンサであれば、圧力検知センサ部の感度が高いが故に検知センサ部の強度が弱いセンサでも用いることができる。換言すればワークWの交換で、第2空間52が大気開放となる場合には、検知センサ部の強度が強いセンサ(片耐圧が例えば1000KPa以上)で、かつ、例えば10Pa程度のわずかな差圧を判別できるようなセンサが必要となるが、このようなセンサは現時点で存在しない。
そこで、高耐圧(片耐圧が例えば1000KPa以上、定格1000KPa)だがわずかな差圧を判別できない(誤差250Pa、測定精度(誤差)0.025%/フルスケール)第2圧力センサ24と、低耐圧(片耐圧が例えば250KPa、定格−5〜+5KPa)だがわずかな差圧を判別できる(誤差2.5Pa、測定精度(誤差)0.025%/フルスケール)差圧センサ26とを併用し、さらにステップS114に記載される圧力合わせ込み等の制御を含む本願制御、並びに、差圧センサ26の両側に第1開閉弁31と第2開閉弁32の2つの弁をもつ特有の構造をもって、あたかも高耐圧(片耐圧が例えば1000KPa以上)で、かつ、わずかな差圧を判別できる(誤差2.5Pa、測定精度(誤差)0.00025%/フルスケール)センサを用いたのと略同等の測定、すなわち高精度でわずかな漏れを検出することができる。
さらに、ワークWを交換するときは、第3開閉弁33も閉じて第3空間53を密閉状態にし、ワークWを交換した後に、第4空間54を目標圧力に加圧して(流れが止まってから)から、第3開閉弁33を開き、その後、第2開閉弁32を開いて、第4空間54を、第3空間53を通じて第2空間52に連通させるので、交換後の加圧によって第4空間54内の気体が熱くなっていても、第3空間53に溜まっていた冷たい気体が緩衝域となり、第4空間54の熱が差圧センサ26に到達することが回避される(差圧センサ26の温度ドリフト対策)。
また、記憶された同一検査条件の基準特性を用いて、基準特性を求める工程を省いてもかまわない。又は同一検査条件でなくても、各種条件補正を演算によって求めても良い。
さらに、第1空間51を恒温槽40に入れて冷却しているので、第1空間51の圧力を一定に維持することができる。特に第4開閉弁34を設け、第1開閉弁31と第4開閉弁34の間の第5空間55を密閉状態にしているので、ワークWの交換時に、第4開閉弁34に接する第4空間54内の気体が熱くなっても、第1空間51を冷たい状態に維持することができる。
また、第1開閉弁31、第2開閉弁32がノーマルクローズ型のバルブなので、停電等があっても差圧センサ26を保護することができる。すなわち、差圧センサ26の片側だけが大気開放となることが防止されるので、上限を超える差圧で差圧センサ26が破壊されることがない。さらに、加圧弁35、第4開閉弁34がノーマルクローズ型のバルブなので、第1開閉弁31、第2開閉弁32等に作動遅れ等があっても確実に差圧センサ26をダメージから守ることが出来る。
さらに終業時にリーク検査装置5の電源を切ると、第1開閉弁31と第2開閉弁32、第3開閉弁33、第4開閉弁34が閉じるので、差圧センサ26の両側が密閉され、圧力が高いまま封止される。そのため、翌日の検査開始にあたって、第1空間51、第2空間52、第3空間53、第5空間55を大気開放から加圧し直す必要がなく、始業時間までに熱平衡となっているので、すぐにリーク検査を開始することができる。
本実施の形態において、加圧された気体は一律に断熱圧縮して発熱するとしているが、必ずしも的確な表現ではないので補足説明を行う。本実施の形態に係るリーク検査装置及びワークWやマスタM等の断熱が確実な場合には、0〜800KPaの加減圧は400±400KPaの加減圧であり、これにより蓄熱の温度飽和状態は+400KPaの状態に至る。すなわち、発熱はプラス方向となる。
しかし、実際には加圧による発熱が起きた後、大気との熱交換により温度は降下する。そしてこの状態が長いと最初は温度が急降下するもののやがて放熱しにくくなる。次に減圧すると、この減圧によりマイナスの発熱が起き、最初は温度が急上昇するもののやがて吸熱しにくくなる。この加圧後の放熱時間と減圧後の吸熱時間を同じにしても元の温度にまで復帰しない(発熱がマイナス方向である図7参照)。しかも配管位置やワークWやマスタM内の内部でも温度分布が生じる。すなわち、リーク検査装置5及びワークWやマスタM等の断熱程度や加圧後の放熱時間、減圧後の吸熱時間によって発熱はプラス方向である場合もあるし、マイナス方向の場合もある。本実施の形態ではプラス方向の発熱も、マイナス方向の発熱も、発熱としている。なお、図3はプラス方向の発熱の場合の構造であるので、マイナス方向の発熱時には天地が逆となる。
次にステップS111で行う所定時間の掃気の短時間化について説明を行う。掃気の目的は、S115で行うワークWに気体の漏れがあるか否かの判定時に、上記発熱の影響を最小限に抑えるためであるが、影響を最小限に抑えるためには掃気が長時間に及ぶ場合がある。そこで、毎回の発熱の影響を略同一として、次回測定時における発熱の影響を予測し、もって掃気の短時間化と測定精度の向上をはかる以下の制御を行う。詳述すると、S113の加圧時発熱とS111やS118の減圧吸熱、気体とリーク検査装置5との摩擦によって発生する熱(摩擦発熱)はマッハ数によって左右され、加圧後の静定時間中の放熱(S115)は、リーク検査装置5内気体温度と周囲温度との差によって左右される。
そこでS113の加圧時における圧力差の絶対値と時間の関係(例えば+800KPa圧力差1秒間、+700KPa圧力差1秒間、+600KPa圧力差1.5秒間、+500KPa圧力差2秒間・・・+100KPa圧力差10秒間)を、S111やS118の減圧においても同じ条件(例えば−800KPa圧力差1秒間、−700KPa圧力差1秒間、−600KPa圧力差1.5秒間、−500KPa圧力差2秒間・・・−100KPa圧力差10秒間)となるように減圧速度をコントロール(加減圧で同一時間を要するように)する。それに加え、マッハ数を1未満とすることでリーク検査装置5内を流れる気体がリーク検査装置5と摩擦することによって発生する熱(摩擦発熱)を所定量内に抑えるようにもしている。
この結果、加減圧時における圧力差の絶対値と時間の関係を毎回同一とすることと相まって、毎回の発熱の影響を略同一とできるので、掃気を最小限に抑えても、次回測定に持ち越される蓄熱量を事前に予測できる。圧縮エア源3から供給される気体は圧縮エア源3のエアタンクから検査系に導入される際に減圧されて目標圧力になるので、吸熱する。そこで、前述の蓄熱量をこの吸熱でキャンセルし、圧縮エア源3から供給された気体が目標圧力になったときの温度が、周囲温度と略一致するように、圧縮エア源3から供給する気体の温度を調整制御する等の対応が可能になる。換言すれば、摩擦発熱を掃気で除去しきれなかった蓄熱分を、周囲温度より少し低い温度の気体で満たす(S113)ことによって相殺することで、加圧後の静定時間中の放熱(S115)は、リーク検査装置5内気体温度と周囲温度との差がほぼない状態からスタートする僅かな放熱となるので、掃気の短時間化を図ることができる。
なお、マッハ数によって左右されるものの、伝熱の影響がなく、音速(マッハ=1.0)未満で流れが移動している場合には、加減圧時の流れは断熱的(断熱圧縮)と言える(断熱圧縮の温度は圧力の0.3 乗に比例するが、マッハ1を超えると衝撃波が発生し、圧力に比例する別の温度上昇現象が発生するのでマッハ1未満としている)。本発明では伝熱の影響があるので、正確には断熱圧縮という表現は適切ではないが、断熱圧縮という表現を用いて説明を行っている。
次にリーク検査を行うワークWの製造方法について述べる。本実施の形態に係るリーク検査装置5が検査対象とするものは、内部に液体を入れて使用する容器(例えば電気温水器で使用するようなステンレス製温水貯湯タンク(オールステンレス)、瞬間湯沸器で使用するような銅製熱交換器(銅製フィンと銅管))であり、溶接によって作られる(又は射出成型によるプラスチック製温水貯湯タンクでも良い)。
内部に気体を入れて使用する容器としてのワークWをリーク検査するならば、許される漏れ許容値として気体の漏れ量を簡単に設定できる。すなわち、検査時と実際の使用時とでワークWの中に入れるものが同じ気体であれば、検査時の判定基準となる漏れ気体量と、実際に使用する際に許される気体の漏れ許容量とに同じ基準値を用いることができる。しかし、液体を入れて用いるワークの検査に気体を用いる場合には、実際の使用時に許される液体の漏れ許容値を気体の漏れ量に換算して、検査時用漏れ許容値(気体)を設定しなければならない。
この換算に当たっては動粘性係数の差を用いて換算する。本発明での検査対象とする容器としてのワークWは製造して、リーク検査合格後に機器に組み込まれる。例えば瞬間湯沸器の場合には出荷検査で(内部に組み込まれたワークWを含めて)水を通水するが、ステンレス製温水貯湯タンクがワークWのような場合には機器に組み込まれて施工現場に運び込まれてから初めて、ワークWを組み込んだ製品に通水される。すなわち、ワークWは容器に加工される部品(例えばステンレス板、銅板、銅管等部品)段階から容器形状となってリーク検査に至るまでの間は、一度も通水されることなく、水で洗浄されることもない。
ところで、ワークWと同じはずのマスタMを元に基準特性(ステップS109)を取得し、複数のワークWのリーク検査を行うが、マスタMを含めた複数のワークW(以下ワークW等)間の製造誤差によりそれぞれの重さが微妙に異なり、リーク検査に影響を与える(外乱)。本実施の形態で用いているワークW等の重量差は、部品に用いている母材と異なる(比熱が異なる)物、たとえば内部の水等によって重量が異なるわけではないので(ワークW等と比熱が異なる外乱物の混入がないので、「比熱が異なる外乱物の除去」は不要なので)、重量の差は母材重量の差である。そこで、マスタMとの重量差を補正するために、母材と同一材質で作った補正部品を、ワークW内に入れたり接続口11aに接続する部品内に取り付けたりすることで重量差を補正する(ワークW等と「同一比熱補正部品を用いた外乱防止」)。
もちろん、接続口11aに接続する部品や接続口11aに接続する場所以外の開口部を塞ぐ補機類の材質と重量も、複数のワークW等間で差がないように同一部材を用いると共に同じ重量物を用いることで熱容量を合わせる(「接続口11aに接続する部品や補機類による外乱防止」)。
このような各種外乱の防止を行った後、均温化作業に入る。すなわち、ワークW等間で温度が異なると、その保有熱量によりリーク検査に影響を与えるのでそれを除去する(「保有熱量合わせ込みによる外乱防止」)。上述のような外乱防止は、ステップS101〜ステップS104のように、ステップS105を行う前日に行う。
次に、液体の漏れ許容値を気体の漏れ量に換算する換算計算式等について説明する。
<粘性係数を用いた換算計算式>
細孔から漏れる流量は粘性係数を用いて計算することができる。
粘性係数(μ Pa・s)20℃時 水のμ=0.0010050Pa・s 空気のμ=0.0000181Pa・s、細孔の直径 0.1mm(=0.0001m)、細孔の長さ 1mm(=0.001m)、大気圧(雰囲気の気圧)101300Pa Abs、細孔入口圧(目標圧力)300kPa G(=401300Pa Abs)、細孔出口圧(雰囲気の圧力)0kPa G(=101300Pa Abs)の時の水の漏れ量は、
ΔP(以下、水ΔPとする)=[細孔入口圧]−[細孔出口圧](Pa Abs)=300000(Pa Abs)
とすると、
[水の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[水ΔP]/(128×[水のμ]×[細孔の長さ])
=3.14×0.0001[m]4×(300000[Pa Abs])/(128×0.0010050[Pa・s]×0.001[m]
=0.00000073[m3/s]=0.73[ml/s]、となる。
これに対し空気の漏れ量は、水が非圧縮性流体であるのに対し、空気は圧縮性流体であるので差圧(以下、空気ΔPとする)は下記のように表される。
空気ΔP=([細孔入口圧]2-[細孔出口圧]2)/(2×[細孔入口圧])
=744225(Pa Abs)
[空気の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[空気ΔP]/(128×[空気のμ]×[細孔の長さ])
=3.14×0.0001[m]4×(744225[Pa Abs])/(128×0.0000181[Pa・s]×0.001[m]
=0.00010087[m3/s]=100.87[ml/s]、となる。
[水の漏れ量]を基に、リーク検査装置からの[空気の漏れ量]を換算する為の換算係数([水の細孔入口圧]=[空気の細孔入口圧]とした場合に)は、
[空気の漏れ量]=[水の漏れ量]×[換算係数]
[換算係数]=[空気の漏れ量]/[水の漏れ量]
=([細孔入口圧]2-[細孔出口圧]2)×[水のμ]/(2×[細孔入口圧]×[空気のμ]×([細孔入口圧]−[細孔出口圧]))
=137.7(=100.87/0.73) となる。
たとえば、70℃の温水を300[kPa G]で蓄えるタンクの許容温水漏れ量が10[ml/h]の時で検査時の周囲温度(=リーク検査装置に満たされる気体温度)が20℃の時に200[kPa G]で検査する場合([水の細孔入口圧]=[空気の細孔入口圧]とならない場合)には、[20℃空気のμ]=0.0000181Pa・s、[70℃の温水のμ]=0.0004Pa・s、大気圧(雰囲気の気圧)101300Pa Absとすると、
[換算係数]=[空気の漏れ量]/[水の漏れ量]は、
[空気の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[空気ΔP]/(128×[空気のμ]×[細孔の長さ])
[水の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[水ΔP]/(128×[水のμ]×[細孔の長さ]) なので、
[換算係数]=([空気ΔP]×[水のμ])/([空気のμ]×[水ΔP])
で表される。計算すると、
[換算係数]=29.28(=292.8/10) となり、
許容気体漏れ量([空気の漏れ量])=292.8[ml/h] として求められる。
但し、圧力センサには誤差があるので、その分を考慮に入れて換算係数を修正して、許容気体漏れ量を設定する必要がある。ここでは、
A:高耐圧(片耐圧が例えば1000KPa以上)で、誤差250Pa、測定精度(誤差)0.025%/フルスケールの第2圧力センサ24を用いる場合
B:高耐圧(片耐圧が例えば1000KPa以上)で、わずかな差圧を判別できる(誤差2.5Pa、測定精度(誤差)0.00025%/フルスケール)差圧センサを用いる場合
を比較して説明する。
Aの差圧センサ25を用いる場合、目標圧力800KPaに対して、800.25KPaまで加圧しても誤差があるので、本当の圧力は800.0〜800.5KPaの範囲の圧力であることしか判らない(誤差250Pa)。漏れ量はBと同程度に測れるが、加圧する目標圧力に対する誤差があるので、前述の換算係数の演算で用いる細孔入口圧が変わり、Bに対してある程度厳しい漏れ判定基準を用いなければならない。
すなわち、Aの場合、
空気ΔP=([901550±250 Pa Abs]2-[101300 Pa Abs]2)/(2×[901300±250 Pa Abs])
[換算係数]=[空気ΔP]×[水のμ]/[空気のμ]×[水ΔP]で表される。計算すると、
[換算係数]=(([901550-250 Pa Abs]2-[101300 Pa Abs]2)/(2×[901300-250 Pa Abs])×[水のμ]/[空気のμ]×[水ΔP]、となる。
Bの差圧センサを用いる場合、目標圧力800KPaに対して、800.25KPaまで加圧すると、本当の圧力は800.2475〜800.2525KPの範囲にある。したがって、Bの場合、
空気ΔP=([901550±2.5 Pa Abs]2-[101300 Pa Abs]2)/(2×[901300±2.5 Pa Abs])
[換算係数]=[空気ΔP]×[水のμ]/[空気のμ]×[水ΔP]で表され、計算すると、
[換算係数]=(([901550-2.5 Pa Abs]2-[101300 Pa Abs]2)/(2×[901300-2.5 Pa Abs])×[水のμ]/[空気のμ]×[水ΔP]、となる。
したがって、Bに対してAの方を厳しい判定基準にすることで、同等の測定(判定)が可能になる。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
第4開閉弁34は設けなくてもよい。
実施の形態では、リーク検査の開始時に第1空間51と第2空間52側の圧力が目標圧力になるように排気弁36から少しずつ気体を逃がして合わせ込むようにしたが、リーク検査開始時の第1空間51と第2空間52の圧力は同一でなくてもよく、リーク検査開始時の差圧に応じた基準特性を採用すればよい。又はその差圧補正を演算によって求めても良い。
排気弁36の図5に示す、発熱する部分a1、b1を例えばフィン付きの銅管等伝熱係数の大きい部材で構成し、外部からファン等を用いて強制冷却をかけて、測定毎に排気弁36本体に蓄熱される熱量をコントロールすることで、加圧直後に行う、排気弁36から気体を逃がし熱くなった気体を逃がす工程を短時間化しても(又は無くしても)良い。又は排気弁36から所定距離だけ圧縮エア源3側の位置に弁体を設け、その弁体を加圧後に閉じることで、その弁体と排気弁36との間に前記熱くなった気体を閉じ込めるようにして測定誤差が生じ難くなるようにしても良い。あるいは、加圧完了直前に排気弁36を開いて熱溜まりa1、b1にあった気体を外部に逃がし、その後、上記の弁体を閉じて目標圧力にする。すなわち、熱溜まりにあった気体を外部に逃がしても排気弁36やその近傍の管路は熱を持っているので、上記の弁体を閉じることでその熱が測定系に伝導することを防止する。
実施の形態では、最初に、第1空間51〜第5空間55を同時に目標圧力に加圧するようにしたが、第1空間51と第2空間52と第3空間53を目標圧力に加圧して密閉できれば、第4空間54は加圧しなくてもよい。たとえば、別途の圧縮エア源4を使用して第1空間51、第2空間52、第3空間53を、あるいはこれらと第5空間55を目標圧力まで加圧した後これらを密閉状態にして検査準備を行ってもよい。
リーク検査装置の構成は実施の形態に例示したものに限定されない。たとえば、図1のリーク検査装置5では、第2圧力センサ24の下流で主管路11から分岐させた第2分岐管14により加圧気体を第4開閉弁34、第1開閉弁31へ導くようにしたが、第2分岐管14に代えて、第2開閉弁32と差圧センサ26の間で分岐させた気体通路を第1開閉弁31の入り側、あるいは第4開閉弁34の入側に接続するような構成でもかまわない。
差圧センサ26は定格差圧として例えば−5〜+5KPaのものを用いたが、このセンサの最大圧力は例えば100KPa(片耐圧)、破壊圧力は例えば250KPa(片耐圧)、ライン圧力は例えば250KPa(両耐圧)であるので、例えば800KPaにまで加圧する際に、差圧センサ26の両側の第1空間51と第2空間52に同時に気体を加圧導入せずに、一方に先に加圧気体を導入した後、破壊圧力である250KPaに至る前に他方にも加圧気体を導入し、圧力が破壊圧力である250KPa(片耐圧)を超えて差圧センサ26が破壊されないようにタイムラグを設けて加圧気体を導入してもかまわない。
さらに、検査対象の交換にあたっては、第2開閉弁32を閉じて第2空間52を密閉状態にしてから行なうのではなく、交換作業開始によって差圧センサ26の差圧が破壊圧力である250KPaに至る前に第2開閉弁32を閉じて第2空間52を密閉状態とし、圧力が破壊圧力である250KPa(片耐圧)を超えて差圧センサ26が破壊されないようにしてもかまわない。交換後の検査対象のリーク検査は、第3空間53を目標の圧力に加圧してから第2空間に連通させるのではなく、加圧途中であって第1空間51と第3空間53との差圧が破壊圧力である250KPa(片耐圧)以下となった時点を起点として第2空間52に連通させても良い。さらに第4開閉弁34を開くタイミングも第1空間と第2空間との差圧が破壊圧力である250KPa(片耐圧)近くなってからでも良い。
実施の形態ではワークWの漏れを検査するにあたって、ワークW内に気体を加圧導入して、細孔等の漏れをもたらす構造欠陥等を、ワークW内の気体が漏れ出ることで発見する手法について記載したが、ワークW内の気体を吸引減圧してワーク内に気体が流入することで発見してもかまわない。この場合に差圧センサ26の両側の第1空間と第2空間の気体を吸引減圧して第1空間を密閉状態に維持し、第3空間の気体を第1空間より多めに吸引減圧したのち大気開放して第1空間との圧力差を合わせて検査を行う。
実施の形態では、漏れ検査の媒体気体として空気を用いたが、ヘリウム等不活性ガスや、炭酸ガス等を用いてもかまわない。
恒温槽40に収容する空間として、第2分岐管14、第4開閉弁34も収容するようにしても良い。
第3開閉弁33、第4開閉弁34等をソレノイド型等エアオペレイト型でなくてもかまわない。3方弁とする場合には、ソレノイド型でなくステッピングモーターを用いたものであってもかまわない。
掃気を実施するタイミングは実施の形態の例示に限定されず、検査対象の交換の際に第4空間を切り離した(第2開閉弁32、第3開閉弁33を閉じた)後であって、リーク検査において第4空間を目標圧力に加圧する前であればよい。たとえば、ワークWを交換した後でもよい。