以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るリーク検査装置5の概略構成を示している。リーク検査装置5は、検査対象となる容器(ワークW)の漏れを検査する装置である。
リーク検査装置5は、圧縮された気体の供給源である気体導入部10と、検査装置本体6とを有する。検査装置本体6は、一端が気体導入部10に通じ、他端に検査対象となるワークWの接続口31aを備えた主管路31を有している。主管路31には気体導入部10のある上流側から順に電空レギュレータ41、第1圧力センサ42、第1開閉弁43、第2圧力センサ44が設けてある。電空レギュレータ41は、下流側が設定圧力を超えないように調整する機能を果たす。
主管路21の第2圧力センサ44より下流の第1分岐箇所B1から排気管32と第1分岐管33が分岐している。排気管32の途中には排気弁45が設けてあり、排気管32の末端は排気ポート32aにて大気に開放されている。排気管32の分岐箇所と接続口31aとの間の主管路31には手動弁46が介挿されている。
手動弁46は、接続口1〜3を備えている。接続口1は前述の分岐箇所に通じ、接続口2はワークWの接続口31aに通じる。接続口3は大気に開放されている。手動弁46は、開状態と閉状態とに手動で切り替えられる。手動弁46は、開状態では接続口1、2を連通させ接続口3を封鎖し、閉状態では接続口1を封鎖し、接続口2、3を連通させる。
第1分岐管33は、第2開閉弁48を介して差圧センサ47の第1検出口47aに接続されている。主管路31の第2圧力センサ44より下流であって第1分岐管33の分岐箇所より上流の所定箇所から第2分岐管34が分岐している。第2分岐管34は、第3開閉弁49を介して差圧センサ47の第2検出口47bに接続されている。
第3開閉弁49と差圧センサ47の第2検出口47bとの間の第2分岐管34には、貫通型の容器である小マスタMbが介挿されている。小マスタMbは、ワークWに比べて、十分に容積が小さく、第2分岐管34との接続口を除いて漏れのないことが確認された容器である。
さらに、第1分岐管33は差圧センサ47の第1検出口47aの近傍に第1掃気口33aを備えている。また、第2分岐管34は差圧センサ47の第2検出口47bの近傍に第2掃気口34aを備えている。第1掃気口33aと第2掃気口34aは、それぞれ気体を外部へ逃がすための開口であり、接続管路35で互いが接続されている。該接続管路35には、第1サブ掃気弁52と、第1サブ掃気弁52より第2掃気口34a側に第2サブ掃気弁53が設けてある。さらに第1サブ掃気弁52と第2サブ掃気弁53の間の接続管路35には、接続管路35を排出ポート35aに連通させて大気開放にするか否かを切り替えるメイン掃気弁51が設けてある。
第1開閉弁43、排気弁45、第2開閉弁48、第3開閉弁49、メイン掃気弁51、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53はそれぞれ、コイルの発熱を回避するために電磁弁ではなく、エアオペレート式のバルブ(スプリングリターン単動作動形)を採用している。また、排気弁45、第2開閉弁48は、第3開閉弁49、第1サブ掃気弁52,第2サブ掃気弁53は、駆動時に閉じて非駆動時に開くノーマルオープン型であり、第1開閉弁43、メイン掃気弁51は、駆動時に開き非駆動時に閉じるノーマルクローズ型である。これらのバルブは内部に弁体があると共に配管取付部を持つ。従って通常の管と異なり、内部容積の割には熱容量が大きい。
第1圧力センサ42、第2圧力センサ44は、単圧式の圧力センサである。定格圧力0〜1000KPa、測定精度(誤差)は、±0.025%/フルスケール程度である。従って、測定レンジ1000KPa時には250Pa程度の誤差を含む。差圧センサ47は定格差圧0〜5KPa(定格圧力−5〜+5KPa)と、第1圧力センサ42、第2圧力センサ44に比してわずかな圧力(圧力差)で壊れる(破壊圧力は定格圧力に略比例)。その代わりに、例えば2.5Pa程度の誤差しかないので、わずかな差圧を判別でき、高精度で検査することができる。
検査装置本体6は、第1分岐箇所B1に、気体の滞留を防止する滞留防止構造を備えている。図3、図4は、滞留防止構造の一例を示している。図3は、Y字型の滞留防止構造であり、図4は、Y字型とノズル型を組み合わせた滞留防止構造である。滞留防止構造は、Y字構造やノズル構造を用いて、慣性力を用いた慣性掃気により分岐箇所で分岐した管路の奥深くまで掃気する機能を果たす。
第1分岐箇所B1には、Y字型とノズル型を組み合わせた滞留防止構造を設けてある。たとえば、第1分岐箇所B1では、第1開閉弁43側(図4における、入口)からY字型の滞留防止構造に到来した気体は、慣性を有するので、Y字構造の部分で急に向きを変えることができず、そのまま、第1分岐管33を通じて第2開閉弁48(図4における、至第1の行き止まり箇所)側へ向かう。第2開閉弁48が閉じていると、そこで行き止まり(溜まり場)になるので、その行き止まりの部分に滞留している気体を巻き込んで向きを変え、Y字構造の出口(手動弁46側)に向かう。Y字構造の出口には管径を細くしたノズル構造が設けてあるので(図4参照)、気体はこの部分で流速を増して手動弁48(図4における、至第2の行き止まり箇所)に向かって吐出し、手動弁48で行き止まりになっている管路内に滞留している気体を巻き込んで向きを変え、排気弁45(図4における、出口)へ向かって進む。このようにして、分岐管の奥深くまで掃気される。
なお、図3に示すY字型の滞留防止構造においては、入口から流入した気体は、慣性により、至行き止まり箇所、へ向かい、その部分の先が行き止まりになっていれば、その行き止まり部分に滞留している気体を巻き込んで向きを変え、Y字構造の出口側に向かう。このようにして、行き止まり箇所に滞留している気体が排出されて掃気される。
気体導入部10は、比熱の大きい気体を温度調整して主管路31へ送り出す。ここでは、比熱の大きい気体は、加湿した空気である。気体導入部10は、周囲から取り入れた空気を加熱するヒータ11と、気体導入部10に入る空気(ヒータ11を経た空気)の温度を測る入側温度センサ12と、ヒータ11を経た空気を所望の湿度に加湿する加湿器13と、加湿器13の出側の空気の湿度を測る湿度センサ14と、加湿器13を経た空気を圧縮するコンプレッサ15と、加圧され加湿された空気を除湿するエアクーラ16およびエアドライヤ17と、圧縮された空気を圧縮された状態で蓄えるエアタンク18と、エアタンク18に蓄えられている空気を加温するためのヒータ19と、雰囲気の気圧(大気圧)を測定する気圧計21と、リーク検査装置5(特に検査装置本体6)の周囲の雰囲気の温度と湿度を測定する温湿度センサ22と、気体導入部10から出る空気の温度を測定する出側温度センサ23と、目標圧力や大気圧等から、加湿器11で加湿した後の空気の湿度等を演算する演算部24と、気体導入部10を含めてリーク検査装置5の全体の動作を制御する制御部25を備えている。検査装置本体6の主管路31は、エアタンク18の出口に連通している。
気体導入部10は、エアタンク18から検査装置本体6内へ目標圧力になるように気体を加圧導入したとき、検査装置本体6の配管やワークW内等で結露が生じない湿度、たとえば、検査装置本体6内で相対湿度略80〜100%(加圧時相対湿度)を目標にする。検査装置本体6内の配管に導入されたときに該気体の湿度が略80〜100%となり、かつその温度が周囲温度とほぼ等しくなるように、湿度および温度を調整した加圧気体をエアタンク18に蓄える。目標圧力は、たとえば、400〜1000KPaにされる。
加湿器13で加湿する目的は、気体導入部10が取り入れる周囲の空気が乾燥している冬場であっても、エアドライヤ17から出てエアタンク18に蓄積される圧縮空気の湿度を略80〜100%(加圧時相対湿度)とするためである。
なお、従来のエアドライヤは以下のような構造である。すなわち、コンプレッサ15からの湿った熱い空気はエアドライヤ内の熱交換器で、該エアドライヤから出てくる湿った(除湿された)冷たい空気と熱交換されて予冷され、更に、エアクーラでフロンガスにより所定温度に冷却される。これにより空気中の水分は凝縮し、冷却除湿される。すなわち湿度100%(加圧時相対湿度100%)となる。その後、エアドライヤ内の熱交換器に入ってくる熱い空気と熱交換(余熱)されて湿度が下げられてからエアドライヤから排出される。すなわち、エアドライヤからは乾燥した空気が供給される。
しかし、この構造では、加圧時相対湿度を略80〜100%とするという気体導入部10における加湿の目的を達成できない。そこで、気体導入部10で用いるエアドライヤ17は、前述した予冷、余熱を行う熱交換器を用いず(または低能力として)にエアドライヤ17から出る空気の湿度が下げられることなく(または下げ幅をコントロールして)高湿度で出る仕組みを用いていると共に、エアドライヤ17から出る空気の温度が略気体導入部10に入る空気の温度(雰囲気温度)と略同じ温度(又は所定温度低い温度)になるように温度調整する。これにより、エアドライヤ17の下流、例えば、検査装置本体6、エアタンク18、検査装置本体6〜エアタンク18(またはエアドライヤ17)間の配管等の内部で結露するのを防止している。
なお、夜間を含む略1日間の最低温度を記憶しておき、最低温度のときでも結露しない湿度とすべく、好ましくは湿度85%(加圧時湿度)のように若干湿度を低めにしてエアドライヤ17から出すようにしてもよい。なお、冬場に気体導入部10に入る空気の温度と検査装置本体6等がある場所の雰囲気温度が異なる場合には、気体導入部10に入る空気の温度とエアドライヤ17から出る空気の温度(雰囲気温度)とは同じ温度とせずに、エアドライヤ17から出る空気の温度は検査装置本体6等がある場所の雰囲気温度と同じ温度とすることで、前記配管等内で結露するのを防止することができる。
本実施の形態に示す気体導入部10では、加湿器13、コンプレッサ15、エアドライヤ17、エアタンク18の順に接続されているが、例えば加湿器13、コンプレッサ15、エアタンク18、エアドライヤ17の順であってもかまわず、順番は問わない。
図2は、リーク検査装置5の差圧センサ47の第1検出口47a側の第1空間61と、第2検出口47b側の第2空間62を示す。第1開閉弁43より下流の主管路31、排気弁45より上流の排気管32、第1分岐管33、第3開閉弁49より上流の第2分岐管34、第1掃気口33aと第1サブ掃気弁52の間の接続管路35および接続口31aにワークW(またはマスタM)が接続されている場合は該ワークW(またはマスタM)を合わせた部分を第1空間61とする。
また、第2分岐管34のうちの第3開閉弁49から差圧センサ47の第2検出口47bまでの部分、第2掃気口34aと第2サブ掃気弁53の間の接続管路35および小マスタMbを合わせた部分を第2空間62とする。
図2では、第1空間61は太破線で、第2空間62は太線で示してある。第1空間61のうち、第2開閉弁48から差圧センサ47の第1検出口47aまでの第1分岐管33の部分および第1掃気口33aと第1サブ掃気弁52の間の接続管路35の部分を第1サブ空間61bとし、残りの第1空間61の部分を第1メイン空間61aとする。
次に、リーク検査装置5を用いて行うリーク検査の手順について説明する。
図5はリーク検査装置5によるリーク検査の手順を示す流れ図である。まず、気体導入部10のエアタンク13に加湿して圧縮し温度調整した空気を蓄える(ステップS101)。すなわち、気体導入部10は、周囲から空気を取り入れ、この空気を加湿器13で加湿する。そして、加湿器13で加湿後の空気をコンプレッサ15で目標圧力以上に圧縮し、エアクーラ16およびエアドライヤ17を経て、エアタンク18に送り込み蓄える。このとき、制御部25は、検査装置本体6内の配管に導入されたときに該気体の湿度が略80〜100%となり、かつその温度が周囲温度とほぼ等しくなるように、湿度および温度を調整した加圧気体をエアタンク18に蓄える。
次に、検査装置本体6の全体を掃気する(ステップS102)。すなわち、主管路31、排気管32、第1分岐管33、第2分岐管34など検査装置本体6のすべての管路にエアタンク18からの気体を流してこれらの管路を掃気する(ステップS102)。
具体的には、排気弁45、手動弁46、第2開閉弁48、第3開閉弁49、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53、メイン掃気弁51を開いた後、第1開閉弁43を開いて、エアタンク18からの気体を各管路に流して掃気する。
第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53およびメイン掃気弁51を開くことで、差圧センサ47の第1検出口47aの極近くの第1掃気口33a、および差圧センサ47の第2検出口47bの極近くの第2掃気口34aが共に排出ポート35aに連通する。
そのため、エアタンク18からの気体が第1分岐管33を流れ、差圧センサ47の第1検出口47aの極近くの第1掃気口33aから接続管路35、第1サブ掃気弁52、メイン掃気弁54を通じて排出ポート35aから大気に排出される。このとき、エアタンク18から第1分岐管33に入ってきた気体は、第1掃気口33aに直接流れ込まず、慣性により直進して、差圧センサ47の第1検出口47aに到達し、この部分の気体を巻き込んで、第1掃気口33aへ流れ込み、排出ポート35aから排出される。同様に、エアタンク18からの気体は第2分岐管34を流れ、差圧センサ47の第2検出口47bに到達し、この部分の気体を巻き込んでから、第2検出口47bの極近くの第2掃気口34aから接続管路45、第2サブ掃気弁53、メイン掃気弁51を通じて排出ポート35aから大気に排出される。
これにより、差圧センサ47の第1検出口47a、第2検出口47bに至るまでの全ての管路内がエアタンク18からの気体に置き換わって、掃気される。ここでの掃気の目的は、気体導入部10から送られてくる気体と溜まり場にある気体とを、例えば同一の気体(比較する気体同士を同じ物理常数(温湿度)を持つ気体)として、正確な検査を可能にすることである。
なお、第1掃気口33a、第2掃気口34aは差圧センサ47の検出口47a、47bにできるだけ近くに設けることが望ましい。少なくとも、メイン掃気弁51、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を開いて掃気する際の気体の流れ(第1掃気口33aや第2掃気口34aから接続管路35へ向かう気体の流れ)に伴って、第1掃気口33aから第1検出口47aに至る第1分岐管33内、および第2掃気口34aから第2検出口47bに至る第2分岐管34内が掃気されるように、第1掃気口33a、第2掃気口34aを差圧センサ47の検出口47a、47bの近傍に設ける。
掃気を終える際には、第1開閉弁43を閉じ、排気弁45、手動弁46を閉じ、さらに、メイン掃気弁51を閉じてから第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を閉じる。メイン掃気弁51を閉じてから第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を閉じることで差圧センサ47の両端に大きな差圧が生じることが防止される。なお、最後に第1開閉弁43を閉じるようにすれば、大気が管内に逆流することなく、管内がエアタンク18からの気体で充満された状態で掃気を終えることができる。
次に、第1空間61と第2空間62(小マスタMbを含む)を目標圧力に加圧し、その後、冷やして、安定な状態にする(ステップS103)。
詳細には、第1開閉弁43を開いて、エアタンク18から加圧気体を検査装置本体6に導入し、第1空間61(第1メイン空間61a(ワークWを含まない)と第1サブ空間61b)、第2空間62(小マスタMbを含む)を目標圧力に加圧する。このとき、第1空間61、第2空間62は連通しているので、これらは同一圧力になる。加圧が完了したら第1開閉弁43を閉じる(ステップS102)。目標圧力になったか否かは第2圧力センサ44の検出値で確認する。
この時、目標圧力より少し高めの圧力としておき、加圧時に断熱圧縮されて昇温した気体が溜まっている場所からその熱い気体を排気して熱を外部に逃がして、目標圧力に至るようにしてもよい。加圧時に熱が溜まる場所は、排気管32が閉じた排気弁45に至る箇所、第1検出口47a、第2検出口47b、接続管路35が第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53に至る箇所である。これらの箇所に溜まった熱を外界へ排出するために、排気弁45、メイン掃気弁51(第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を開いてから)を少し開いて、排気し、目標圧力に調整する。なお、差圧センサ47の第1検出口47aの近傍の第1掃気口33aおよび第2検出口47bの近傍の第2掃気口34aの部分にはそれぞれY字型の滞留防止構造に代えてT字型の滞留防止構造が設けてあり、掃気用の気体が第1検出口47a、第2検出口47bから差圧センサ47の内部に入り込み、差圧センサ47内の気体をも巻き込んでから第1掃気口33a、第2掃気口34aへ流れ込む慣性掃気が行われ、接続管路35、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53、メイン掃気弁51を通じて外部へ排出される。
ここでの掃気は、断熱圧縮されて昇温した気体が、排気弁45や差圧センサ47で行き止まりになって溜まり場になっている部分で周囲に熱を撒き散らしている状態を一刻も早く解消することを目的としている。
ステップS103の加圧により、第2空間62に面する差圧センサ47内が、断熱圧縮により発熱した気体で満たされるため、その後、その発熱が放熱して安定状態が形成されるまで(この時間を安定経過時間とする)待つ。安定経過時間の経過後に第3開閉弁49を閉じて第2空間62を密閉状態にし、さらに第2開閉弁48を閉じて第1サブ空間61bを密閉状態にする(ステップS104)。そして、検査準備が完了する。この作業は例えば終業時に行う。第3開閉弁49は、この後、閉じた状態に維持される。
なお、このような安定経過時間を設けない場合、あるいは設定した安定経過時間が不十分な(短い)場合には、第3開閉弁49を閉じた後も放熱が進み、該放熱と共に第2空間62内の圧力が下がってしまうので、第2空間62がワークWのリーク検査における基準にならなくなってしまう。そのため、十分な安定状態が形成されるだけの安定経過時間の経過を待ってから第2空間62を密閉する。
次に、小マスタMbとマスタMの、圧縮気体導入後の差圧の経時変化を測定し、リーク検査(小マスタMbとワークWの、圧縮気体導入後の差圧の経時変化測定検査)での漏れを判定するための、判定値(以後、基準特性とする)を求める工程を行う(ステップS105〜S109)。マスタMは、漏れのないワークWと同形状、同体積である(同一放熱特性を持つ)。
検査準備が完了した状態では、第2開閉弁48、第3開閉弁49は閉じてあるので排気弁45を開いても差圧センサ47の両側の第1サブ空間61bと第2空間62は高い圧力(目標圧力)に維持される。そして、排気弁45を開いて第1メイン空間61aを大気開放し、この状態で、第1開閉弁43を開けることで、第1メイン空間61a(主管路31、排気管32)を掃気する(ステップS105)。
この時本実施の形態では、第1分岐管33や、その分岐箇所から手動弁46までの管は短いので、前述した滞留防止構造により掃気される。なお、これらの管が長い場合には、必要に応じて掃気用の排気弁を増設して第1メイン空間61a内を掃気する。たとえば、第2開閉弁48を3方弁とし、1:3方を閉、2:第1分岐管33と第1サブ空間61bを連通、3:第1分岐管33と大気を連通、の3方向に切り替えができるようにすると共に、3の位置で掃気するようにしても良い。なお、第3開閉弁49より上流の第2分岐管34を掃気するために、第3開閉弁49を3方弁として第2分岐管34と大気とを連通できるようにし、第3開閉弁49から排気して掃気するようにしても良い。
所定時間の掃気が終了したならば、第1開閉弁43を閉じて掃気を終了する。この掃気はマスタMの取り付け前、および、複数回繰り返されるワークWの検査においてワークWの取り付け前に行う。これにより、複数回繰り返されるワークWの検査において第1メイン空間61aを同一条件として、検査精度を高めることができる。
次に、接続口31aに漏れのないワークWであるマスタMを接続し、手動弁46を開き、排気弁45を閉じた後、第1開閉弁43を開き、第1メイン空間61aを目標圧力まで加圧し、加圧が完了したら第1開閉弁43を閉じて第1メイン空間61aを密閉状態にする(ステップS106)。
なお、掃気後の第1メイン空間61aは目標圧力まで加圧する際の断熱圧縮により温度が上昇する。温度が上昇する部分(熱溜まり箇所)は図2のグレーの塗りつぶし部分(4箇所)である。具体的には、排気管32と排気弁45との接続箇所(熱溜まり箇所H1)、第2開閉弁48とその上流側の第1分岐管33との接続箇所(熱溜まり箇所H2)、第3開閉弁49とその上流側の第2分岐管34との接続箇所(熱溜まり箇所H3)、ワークW内の行き止まり箇所(熱溜まり箇所H4)である。
しかし、リーク検査装置5においては、熱溜まり箇所H2は、加圧する際にも気体の流れと第1分岐箇所B1に設けた滞留防止構造により掃気されて熱の溜まりが防止される。熱溜まり箇所H3に溜まる熱量は、第3開閉弁49より上流側の第2分岐管34の長さの影響を受けるので、第2分岐管34の長さを短くすることで熱溜まり箇所H3での発熱を低減する、あるいは第2分岐管34の長さをゼロにして発熱を防止することができる。熱溜まり箇所H1に溜まる熱は、目標圧力より少し高めに加圧した後、排気弁45を開くことで外界へ排出する。
次に、第2開閉弁48を開いて第1メイン空間61aと第1サブ空間61bを連通させ、密閉された第1空間61を形成する(ステップS107)。
なお、第1メイン空間61aを目標圧力に加圧する際には、第2圧力センサ44の検出値に基づいて、第1メイン空間61aを目標圧力より少し高い圧力まで加圧する。たとえば、目標圧力800KPaに対して、800.25KPaまで(第2圧力センサ44の誤差分以上まで)加圧する。第2圧力センサ44は誤差が大きいので、第2圧力センサ44の測定レンジ(フルスケール)1000KPaにて検出値が800.25KPaを示していても、例えば第2圧力センサ44の測定精度(誤差)が、0.025%/フルスケールの場合、実際には、800.0〜800.5KPaの範囲の圧力になる。したがって、第2空間62よりも第1サブ空間61bは、0〜0.5KPaだけ高い圧力になる。
その後、第2開閉弁48を開き、第1メイン空間61aと第1サブ空間61bを連通させる。そして、差圧センサ47の検出値が、第1空間61と第2空間62の圧力が等しくなったことを示すまで、排気弁45から少しずつ気体を外界へ逃がすようにして、第1空間61側の圧力を目標圧力(第1空間61と同圧)に合わせ込む。このようにすることで、第2圧力センサ44の測定誤差を差圧センサ47で校正して、正確に目標圧力(第2空間62と同じ圧力)に加圧することができる。
特に加圧後に排気弁45から気体を逃がして合わせ込むようにすることで、加圧時の圧縮によって排気弁45の部分(熱溜まり箇所H1)で発熱した温度の高い気体を速やかに排出して掃気することができる。なお、ワークWのリーク検査でも、加圧後に排気弁45から気体を逃がして合わせ込む方法の掃気を実施して静定時間を短くした高速測定を行うので、これとマッチングできるように基準特性を取る前にも同じ方法の掃気を行う。これにより、正確な基準特性を取る準備ができる。また、合わせ込みの差圧を第2圧力センサ44の測定誤差として記憶しておく。
その後、基準特性を求める(ステップS108)。詳細には、所定時間が経過するまでの間、差圧センサ37の検出値を測定し、差圧センサ47の検出値と経過時間との関係を示す特性(基準特性)を取得し、その時の周囲湿度、周囲温度、周囲気圧、加圧時のエアタンク18内のエア温度・湿度・圧力(周囲との圧力差)、加圧時間、加圧完了時の検査装置本体6内のエア温度など(以後検査条件)と共に記憶する。
なお、本実施の形態では、検出される差圧が一定値に至るまで基準特性を取得するのではなく、後述のワークWのリーク検査を行う所定時間と同一時間の経時変化特性を取得するようにして、比較誤差がでないようにもしている。基準特性は、例えば10時の休憩、昼食時の休憩、15時の休憩等で測定、更新することが好ましい。
なお、加圧完了後、放熱(漏れ以外の要因)による圧力低下がほぼ収まるまでの所定の時間を静定時間として設定し、マスタについて該静定時間が経過したときの圧力差の値を基準特性として取得し、ワークWの検査において静定時間が経過したときに検出された圧力差と基準特性としての静定時間経過後の圧力差とを比較し、その差が所定の閾値未満ならばワークWは漏れなし(検査合格)と判定し、閾値以上ならば漏れあり(検査不合格)と判定するようにしてもよい。
基準特性を得たら、次にワークWのリーク検査を行う(ステップS110〜S115)。基準特性の取得を終えた時点では、第2開閉弁48が開いているので、これを閉じる(ステップS109)。これにより、第2開閉弁48、第3開閉弁49はいずれも閉じた状態となり、排気弁45を開いても差圧センサ47の両側は高い圧力かつ少ない圧力差に維持される。
次に、排気弁45を開いて第1メイン空間61aを大気開放し、基準特性を求めた時と同じように掃気する(ステップS110)。この掃気により第1メイン空間61a内の前回の断熱圧縮によって温度の変化した気体が新たな気体に置き換えられて掃気される。この掃気を、検査毎に行うことで、検査を繰り返しても、熱の蓄積を防止して、第1メイン空間61a内を同じ条件にすることができる。
次に、接続口31aに接続されているマスタMをワークWに交換(前回がワークWのリーク検査ならば、次のワークWに交換)して、排気弁45を閉じる。そして、第1開閉弁43を開き、第1メイン空間61aを目標圧力まで加圧して、第1開閉弁43を閉じる(ステップS111)。この時の発熱・蓄熱箇所はステップS106と同じ(図2の熱溜まり箇所H1〜H4)である。熱を逃がす対策もS106の場合と同一である。
加圧が完了したら、第2開閉弁38を開いて第1メイン空間51aと第1サブ空間51bを連通させる(ステップS112)。
ワークWを接続して目標圧力にする場合においても、マスタMを接続して目標圧力に加圧した場合と同様に、第1メイン空間61aを目標圧力より少し高い圧力としてから、第1メイン空間61aと第1サブ空間61bを連通させ、その後、排気弁45を開いて、差圧センサ47の差圧がゼロになるまで排気し、目標圧力に合わせ込むことを行う。
その後、ワークWのリーク検査を行う。詳細には、所定時間が経過するまでの間、差圧センサ47の検出値を測定し、差圧センサ47の検出値と経過時間との関係を示す特性を取得し、これを基準特性と比較してワークWに気体の漏れがあるか否かを判定する(ステップS113)。あるいは前述した静定時間経過後の差圧を検出し、該差圧と基準特性が示す差圧と比較して漏れの有無を判定する。
ワークWの検査が終了したら第2開閉弁48を閉じる(ステップS114)。
次のワークWについてリーク検査を行う場合は(ステップS115;No)、ステップS110に戻って作業を継続する。すべてのワークWのリーク検査が終了した場合は(ステップS115;Yes)、本処理を終了する。終了の際には、排気弁45を開き、最後に検査したワークWを取り外して作業を終了する。すなわち、検査終了後、差圧センサ47の両方を閉鎖系として排気弁45を開き、作業を終了する。
次の日に検査を再開する際には、ステップS110から行えばよい。又は終業時にステップS101〜S104を行って次の日の検査に備えても良い。このとき、第1サブ空間61b、第2空間62は高い圧力になっているので、メイン掃気弁51を開いてから、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53の順に開くと、第1サブ掃気弁52を開いた時点で差圧センサ47の第1検出口47aは大気圧になり、第1検出口47aと第2検出口47bの圧力差が大きくなって差圧センサ47を破損する恐れがある。
そこで、メイン掃気弁51を開くときは、まず、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を開いて、差圧センサ47の第1検出口47a側と第2検出口47b側を連通させ、その後、メイン掃気弁51を開く。これにより、メイン掃気弁51を開いても、差圧センサ47の第1検出口47aと第2検出口47bに大きな圧力差が生じない。掃気を終えるときは、メイン掃気弁51を閉じてから、第1サブ掃気弁52と第2サブ掃気弁53を任意の順で閉じる。これにより、差圧センサ47の第1検出口47aと第2検出口47bに大きな圧力差を与えることなく、掃気を終えることができる。
なお、図5の手順は、作業員が行う、あるいは一部(ワークWの取り付け、取り外しなど)は作業員の手を借り、その他は制御基板が制御して実行する。
このように、リーク検査装置5では、雰囲気とは異なる気体(加湿した空気)を検査に使用するので、検査前の掃気において、検査装置本体6の各管内を該気体に置き換える。このとき、差圧センサ47の第1検出口47aに至る第1分岐管33や第2検出口47bに至る第2分岐管34が差圧センサ47で行き止まりになっていると、これらの管内を差圧センサ47に至るところまで掃気することはできない。しかし、本実施の形態に係るリーク検査装置5では、差圧センサ47の第1検出口47a、第2検出口47bの極近傍に開閉可能な掃気口33a、34aを設け、これらの掃気口33a、34aを掃気の際に開くようにしたので、差圧センサ47の第1検出口47a、第2検出口47bに至るまでエアタンク18からの気体を流して掃気することができる。
また、メイン掃気弁51を開くときは、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を開いてからメイン掃気弁51を開き、メイン掃気弁51を閉じるときは、メイン掃気弁51を閉じてから第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を閉じるので、メイン掃気弁51の開閉によって、差圧センサ47の両側に大きな差圧が生じることはない。
また、小マスタMbを貫通型の容器としたので、小マスタMbの中も掃気することができる。また、第3開閉弁49側からの気体を貫通型の小マスタMbを通じて差圧センサ47の第2検出口47bまで導入することができる。
リーク検査装置5では、複数のワークWについてのリーク検査を続けて行う場合でも、第2空間62への気体の加圧は一度だけで済むので、断熱圧縮・断熱膨張が繰り返し行われて第2空間62に熱(負の熱(冷却)も含む)が蓄積され、検査の精度が低下するといったことがない。
また、ワークWを交換するときは、第2開閉弁48を閉じて第1サブ空間61bを密閉状態にするので(この時も第3開閉弁49は閉じてあるので)、差圧センサ47の両側の圧力がほぼ検査時の圧力に維持されて差圧がほとんどなく、差圧センサ47にダメージを与えることがない。
なお、第1サブ掃気弁52と第2サブ掃気弁53の一方を省略してもかまわない。図6は、第2サブ掃気弁53を省略したリーク検査装置5Bを示している。メイン掃気弁51を開くときは、第1サブ掃気弁52を開いてからメイン掃気弁51を開く。メイン掃気弁51を閉じるときは、メイン掃気弁51を閉じてから第1サブ掃気弁52を閉じる。
すなわち、メイン掃気弁51を開くときは、先に第1サブ掃気弁52を開いて差圧センサ47の両側を接続管路35を通じて連通させて差圧をなくしてから、メイン掃気弁51を開く。メイン掃気弁51を閉じるときは、差圧センサ47の両側が接続管路35を通じて連通して差圧のない状態でメイン掃気弁51を閉じ、その後、第1サブ掃気弁52を閉じて差圧センサ47の両側が接続管路35を通じて連通しないようにする。
また、気体導入部10で生成する加湿した空気は、比熱の大きい気体である。そのため、雰囲気温度とリーク検査装置5の検査装置本体6内の気体温度、マスタM内の気体温度、ワークW内の気体温度、小マスタMb、Mc内の気体温度とが異なっていても、加湿していない空気をそのまま加圧導入する場合に比べて温度変化(温度変化に起因する圧力変化)を少なく抑えられる。これにより、測定の精度や安定性を向上させることができる。
なお、加湿器11で加湿する際の目標湿度(エアタンク18に貯留する気体の湿度)は、検査にあたって第1開閉弁43等を開いて空気を電空レギュレータ41で減圧導入する際に検査装置本体6内で結露が生じない湿度にする。たとえば、検査装置本体6内で相対湿度略80〜100%(加圧時相対湿度)を目標にする。
しかし、検査の過程で主管路21等からの放熱があるため、大気圧に戻すことによって冷却された後の空気の温度は、加圧前の空気の温度より低くなる。このため、大気圧に戻した空気の相対湿度は、加圧前の空気の相対湿度より高くなる。
そこで、掃気により温度と湿度がコントロールされた気体を所定時間流し、大気圧に減圧して温度と湿度が異なってしまった気体を排出することで、測定の精度や安定性を向上させることができる。
また、天候によって、加湿器13に入る空気の温度や湿度、気圧が相違する。そこで、天候に左右されずに、毎日の検査を同じ条件で行うために、制御部25は、加湿器13で加湿しコンプレッサ15で圧縮してエアタンク18に蓄える空気が、一定密度(kg/m3)、一定比熱KJ(/kg・K)、一定熱伝導度W/(M・K)になるように加湿器13、コンプレッサ15、エアクーラ16、エアドライヤ17、ヒータ19等を制御する。
なお、空気の比熱Cは以下の式によって求められる。
C=(Cpa・t+(γ+Cpv・t)x)/t
Cpa:乾き空気の定圧比熱[1.006KJ/(kg/K)]
Cpv:水蒸気の定圧比熱[1.805KJ/(kg/K)]
γ:1気圧、0℃の水の蒸発潜熱[2500KJ/kg]
t:湿り空気の温度[℃]
x:絶対湿度[kg/kg(DA)]
空気の比熱は、空気中に含まれる水分量(絶対湿度)に大きく左右されるので、空気に含ませることのできる水分量を多くするために、特に冬場においては、空気を加温して加湿することが有効になる。
たとえば、周囲から取り入れた空気を気体導入部10に設けたヒータ11で昇温してから加湿器13で加湿する。加温しても(さらにコンプレッサ15で圧縮されて発熱しても)エアタンク18に貯留している間に放熱して雰囲気温度に近づく。すると、検査時に、主管路31等に導かれた時に、電空レギュレータ41で減圧(断熱膨張によりさらに冷却)するので、主管路31などの各管路(第1空間61、第2空間62を構成する管路)を断熱材で保温したり、エアタンク18内にヒータ19を入れて保温するとよい。
上記の保温は、電空レギュレータ41で減圧冷却した温度が雰囲気温度となるように、減圧後の湿度、エアタンク18内圧力、目標圧力等からエアタンク13内の貯留温度を求めて制御する。このように、管路を断熱材で保温したり、エアタンク18内にヒータ19を入れて保温することで、減圧した際に結露し難くなるので、加湿器13で加湿後の空気の絶対湿度を高めることができる。
ここで、エアタンク18内に蓄える空気の湿度、温度を目標値に調整する際に気体導入部10が行う制御や演算について説明する。
気体導入部10の演算部24は、空気の湿度を演算する第1演算、エアタンク18内の加圧された空気の貯留温度を演算する第2演算、検査装置本体6内の目標圧力に対してエアタンク18内の圧力をどの程度高くしておくかを表す係数の値を決定する第3演算等を行う。係数は、エアタンク18内に蓄えられる空気圧力/目標圧力 で表される。
空気の湿度を演算する第1演算は次のように行なう。
大気圧をP1、検査での目標圧力をP2、気体導入部10に取り入れる空気の温度をT1、エアタンク18の出口での気体の温度をT2、大気圧P1かつ温度T1での飽和水蒸気量をV1、大気圧P1かつ温度T2での飽和水蒸気量をV2とし、エアタンク内での気体を湿度100%とする場合、
加圧前の大気圧下の空気に必要な湿度H1は、
H1=V2×圧縮比÷V1×100=V2×(P1/((P1+P2)×係数))÷V1×100
として求まる。
必要な湿度H1が、大気圧下の加湿前の空気の湿度H2より高ければ、(H1−H2)だけ加湿器13で加湿する必要があり、H1がH2以下であれば、加湿器13で加湿する必要はない。
<演算例1>
たとえば、大気圧100KPa、目標圧力900KPa、目標加圧時相対湿度100%、係数1.3、気体導入部10に取り入れる空気の温度T1が30℃、エアタンク18の出口で気体の温度T2が30℃の時について、必要な湿度H1を求める。
この場合の圧縮比は、
圧縮比=1/13(=大気圧100KPa/((大気圧100KPa+900KPa目標圧力)×係数1.3)) となる。
雰囲気温度T1が30℃のとき、検査装置本体6に供給される圧縮空気の温度(エアタンク18の出口での気体の温度)T2も、周囲温度と同じ30℃にすべきである。大気圧下かつ30℃での飽和水蒸気量V2は30.4(g/m3)なので、気体導入部10から吐出する空気中の(湿度100%時の)水分量Kは、
水分量K=V2×圧縮比=30.4(g/m3)×(1/13)=2.338(g/m3)となる。
加湿器13の入口温度T1が30℃ならば、加湿器13の入側の空気の飽和水蒸気量V1はV2と同じ30.4(g/m3)である。よって大気圧下かつ30℃での必要な湿度H1は、
H1=V2×圧縮比÷V1×100=K÷V1×100=2.338/30.4×100=7.7%となる。
したがって、加湿器13の入口湿度が約7.7%以下ならば加湿を行って約7.7%以上としてエアドライヤ17(コンプレッサ15)に送り込む(7.7%は大気圧時湿度)。例えば夏期では、気温が高く(例えば30℃)湿度も高い(例えば65%RH)。このような時期において雰囲気の湿度を測定する温湿度センサ22の出力が例えば65%RHを出力していた場合には、目標圧力から求める必要湿度H1(上記演算例1)が約7.7%なので、この差(7.7−65.0)がマイナスの場合には加湿不要として、加湿器11を動かす(加湿する)ことは行わない。
なお、検査装置本体6が置かれている場所の雰囲気温度と気体導入部10に入る空気の温度とが異なる場合には下記のように演算を行う。
<演算例2>
目標加圧時相対湿度100%、目標圧力420KPa、大気圧103KPa、気体導入部10に入る空気の温度10℃、検査装置本体の周囲の雰囲気温度が25℃の場合、
大気圧下、10℃での飽和水蒸気量は9.4(g/m3)、
大気圧下、25℃での飽和水蒸気量は23.0(g/m3)、
圧縮比=103/((420+103)×1.3)=0.151から
H1=V2×圧縮比÷V1×100=23.0×0.151÷9.4×100=37.1% となる。
雰囲気温度が仮に10℃であれば、H1=15.1%であるが、雰囲気温度が25℃なので37.1%以上としてエアドライヤ17(コンプレッサ15に送り込む。
例えば冬期では、気温が低く(例えば10℃)湿度も低い(例えば12%RH/25℃)。このような時期において雰囲気の湿度を測定する温湿度センサ22の出力が例えば12%RH/25℃を出力していた場合には、目標圧力から求める必要湿度H1(上記演算例2)が約37.1%となるので、この差がプラスの場合(0<(37.1%−12.0%))には加湿必要として、加湿器13を大気圧時湿度において37.1%となるように動かして加湿する。
すなわち、この加湿によって、例えば春〜秋期に至る期間(例えば演算例1の場合)と、乾燥した冬場の期間(例えば演算例2の場合)とで、加圧時の湿度に差が生じないように、すなわち、検査条件に差が生じないようにしている。
次に、エアタンク18内の加圧された空気の貯留温度を演算する第2演算について説明する。エアタンク18内の加圧された空気の貯留温度は下記のようにして求める。
例えば、大気圧100KPa、目標圧力900KPa、係数1.3の場合、エアタンク内の圧力は1200KPa(=((大気圧100KPa+900KPa目標圧力)×係数1.3)−大気圧100KPa)であるが、この空気が検査装置本体6に充填されると900KPa(目標圧力)となる。
すなわち、減圧充填されるので、エアタンク13内にある時に比して充填されると温度が下がる(検査装置本体6は断熱構造ではないが、断熱圧縮時の発熱と逆の現象(断熱膨張)で温度が下がる)。検査装置本体6内に空気を加圧導入して目標圧力である900KPaになったときの検査装置本体6内の空気の温度が周囲温度と略同じになれば、加圧導入直後に、温度の安定した状態にすることができる。そこで、該状態にすべく係数1.3に基づき(正確には大気圧、湿度等も考慮に入れて)、周囲温度に比して所定温度高めた温度でエアタンク13内に空気を蓄える。
この時、所定温度高めた温度を下記理由に基づいてやや低めとしても良い。詳述すると、図5に示すS111の加圧時とS110の減圧時等において、空気と検査装置本体6内の配管との摩擦によって熱が発生する(摩擦発熱)。この摩擦発熱の大きさはマッハ数(空気の速度)によって左右される(断熱圧縮の温度は圧力の0.3乗に比例するが、マッハ1を超えると衝撃波が発生し、圧力に比例する別の温度上昇現象が発生するのでマッハ1未満としている)。
ところで、S110の掃気によってある程度の熱は除去できるものの、掃気時間を短くしようとすればするほど摩擦発熱の熱が残ってしまう(発熱の絶対量が多くなる為)。そこで、摩擦発熱のうちの掃気で除去しきれなかった蓄熱分を、S111の加圧時に周囲温度より少し低い温度の空気をエアタンク18から導入して相殺する。
これにより、加圧後の静定時間中の放熱(S113)は、検査装置本体6内の空気温度と周囲温度との差がほぼない状態からスタートする僅かな放熱となるので、掃気の短時間化を図ることができる。このように、エアタンク18内の加圧された空気の貯留温度は、周囲温度に比して所定温度高めた温度ではなく、摩擦発熱を相殺するためにやや低めとしても良い。
次に、目標圧力に対してエアタンク18内の圧力をどの程度高くすべきかを示す係数の値を決定する第3演算について説明する。係数は固定でなくても良い。
たとえば、大気圧100KPa、目標圧力800KPa(加圧時相対湿度80%)、係数1.3の場合、エアタンク18内の圧力は1070KPa(=((大気圧100KPa+目標圧力800KPa)×係数1.3)−大気圧100KPa)にされる。1070KPaのエアタンク18内の湿度を100%(加圧時相対湿度)とすると、800KPaに減圧したときの湿度は、以下に示すように77%になる。
エアタンク内の圧力が1070KPa時の圧縮比は、圧縮比=大気圧/((大気圧+目標圧力)×1.3)=100/((100+800)×1.3)=1/11.7であり、目標圧力における圧縮比は、圧縮比=大気圧/(大気圧+目標圧力)=100/(100+800)=1/9、である。したがって、
圧縮比1/11.7:湿度100%=圧縮比1/9:77%、
なので、800KPaに減圧したときの湿度は77%になる。
このように、係数1.3の場合には目標圧力800KPaとすると検査装置本体6に導入したときの気体の湿度は77%となり、希望の80%にならない。そこで、第3演算では、係数を、たとえば、1.3から1.25に変更する。すなわち、目標圧力800KPaに対してエアタンク18内の圧力を1070KPaから1025KPaに落とす。こうすると、加圧時間が長くなって検査時間が延びるものの、目標圧力800KPa時の湿度を略80%以上(加圧時相対湿度)にすることができ、検査装置本体6に送りこむ気体の比熱を大きくして、温度による影響を少なくできる。
なお、エアタンク18の容量Vと、エアタンク18内の圧力P1と、必要吐出圧力P2と、使用空気量(必要空気量−吐出空気量)(m3)と、使用時間t(分)との間には以下の関係がある。
V=Q×t÷((P1−P2)×10)
<第1の変形例>
図7に示す第1の変形例に係るリーク検査装置5Cは、ワークW、小マスタMcの両方について検査毎に掃気してから改めて気体を加圧導入するようになっている。図1と同一部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は適宜省略する。
図7に示すリーク検査装置5Cでは、第2分岐管34は、第1分岐管33の途中から分岐し、第2開閉弁48を経た後、さらに分岐し、一方は差圧センサ47の第2検出口47bに至り、他方は非貫通型の小マスタMcに至っている。小マスタMcは、接続口を除いて漏れのないことが確認された容器である。
また、小マスタMcの極近傍の第2分岐管34に掃気口34bが設けてあり、該掃気口34bは管路36にて、第2掃気口34aと第2サブ掃気弁53の間の接続管路35に接続されている。
この構成では、第1空間は、第1開閉弁43より下流の主管路31、接続口31aに接続されているワークW(またはマスタM)、排気弁45より上流の排気管32、第1分岐管33、第2開閉弁48より上流の第2分岐管34、第1サブ掃気弁52から第1掃気口33aまでの接続管路35になる。第2空間は、第2開閉弁48より下流の第2分岐管34、小マスタMc、第2サブ掃気弁53から第2掃気口34aまでの接続管路35、管路36になる。
検査手順は次のようになる。
まず、図5のステップS101と同様にして、気体導入部10のエアタンク18に加湿して圧縮した空気を蓄える。すなわち、検査装置本体6C内に減圧導入したとき(目標圧力における)の気体の温度が検査装置本体6Cの雰囲気温度とほぼ同一となり、湿度が略80%となるように前述した第1から第3演算に基づいて湿度や温度を調整した気体をエアタンク18に蓄える。
次に、主管路31、排気管32、第1分岐管33、第2分岐管34、接続管路35、管路36など検査装置本体6C内のすべての管路にエアタンク18からの気体を流してこれらの管路を掃気する。
具体的には、排気弁45、手動弁46、第2開閉弁48、第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53、メイン掃気弁51を開いた後、第1開閉弁43を開いて、エアタンク18からの気体を各管路に流して掃気する。掃気を終える際には、第1開閉弁43を閉じ、排気弁45、手動弁46を閉じ、さらに、メイン掃気弁51を閉じてから第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53を閉じる。
次に、接続口31aにマスタMを取り付け、手動弁46を開き、排気弁45を閉じた後、第1開閉弁43を開き、エアタンク18からの気体(加湿され圧縮された空気)を、第2開閉弁48を開いて連通している第1空間および第2空間に加圧導入し、これらの空間内を目標圧力にする。
第1空間および第2空間が目標圧力に達したら、第1開閉弁43を閉じ、さらに第2開閉弁48を閉じる。これにより、第1空間と第2空間が連通しなくなり、それぞれが独立した閉鎖系(密閉した状態)になる。
その後、差圧センサ47の検出値の時間経過に伴う変化を測定して基準特性を求める。
次に、マスタMをワークWに交換して、ワークWの漏れを検査する。具体的には、第2開閉弁48を開いて第1空間と第2空間を連通させた後、排気弁45を開いて大気開放にする。その後、最初と同様にして測定系のすべての管路を掃気する。
次に、マスタMを取り外して(前回がワークWのリーク検査ならば、該ワークWを取り外して)、検査対象のワークWを接続口31aに取り付ける。そして、排気弁45を閉じ、第2開閉弁48を開いた状態で、第1開閉弁43を開いてエアタンク18からの気体を、連通状態の第1空間と第2空間に加圧導入して目標圧力にする。
目標圧力に到達したら、第1開閉弁43を閉じ、さらに第2開閉弁48を閉じる。その後、差圧センサ47の検出値の時間経過に伴う変化を測定し、この測定結果と、先に測定した基準特性を比較することで、ワークWの漏れの有無を判定する。
第1の変形例に係るリーク検査装置5Cにおいても、差圧センサ47の第1検出口47a、第2検出口47bの極近傍に設けた掃気口33a、34a、および小マスタMcの接続口の極近傍に設けた掃気口34bから、掃気の際に気体を大気へ逃がすようにしたので、差圧センサ47の検出口の極近くや小マスタMcの接続口の極近くに至るまで検査装置本体6Cの各管路内をエアタンク18からの気体に置き換えて掃気することができる。
なお、第1の変形例に示すリーク検査装置5Cにおいても、図6に示したものと同様に、第2サブ掃気弁53を省略する構成としてもよい。
この第1の変形例は、小マスタを連通させたもの(気体の出入口を2か所設けた貫通型の小マスタMb)ではないが故に、断熱圧縮されて昇温した気体の溜まり場となる小マスタMc及び差圧センサ47の第2検出口47b側を、共通の掃気弁(メイン掃気弁51、第2サブ掃気弁53)を用いて同時に掃気できない。すなわち、小マスタMcは貫通型ではないので、その内部を掃気することはできない。しかし、差圧センサ47の第2検出口47bの極近くや小マスタMcの接続口の極近くに至るまで測定系の管路内をエアタンク18からの気体に置き換えて掃気することができる。
<第2の変形例>
図8は、第2の変形例に係るリーク検査装置5Dを示している。図7との相違点を説明する。第2分岐管34は、差圧センサ47の第1検出口47aの極近傍で第1分岐管33から分岐し、第2開閉弁48を経て、差圧センサ47の第2検出口47bに至っている。第1分岐管33からの分岐箇所は、第1掃気口33aとして機能する。
差圧センサ47の第2検出口47bの極近傍の第2分岐管34には第2掃気口34aが設けてある。第2掃気口34aには管路37の一端が接続されている。管路37の他端は排出ポート35aに接続されている。管路37の途中には貫通型の小マスタMbとメイン掃気弁51が設けてある。メイン掃気弁51は小マスタMbより排出ポート25a側に設けられている。
この構成では、第1開閉弁43より下流の主管路31、接続口31aに接続されているワークW(またはマスタM)、排気弁45より上流の排気管32、第1分岐管33、第2開閉弁48より上流の第2分岐管34が第1空間になる。第2空間は、第2開閉弁48より下流の第2分岐管34、メイン掃気弁51より上流の管路37おおび小マスタMbになる。
気体導入部10から導入されて第1分岐管33を進んだ気体は、第1掃気口33aを無視して直進(慣性力で直進)し、第1検出口47aに至る。第1検出口47a内を掃気した気体は第1掃気口33aから出て行く。第1検出口47aと第1掃気口33a間の距離が離れている場合(管径との兼ね合いも含めて距離が離れている場合)には、このような戻りが発生しにくいが、第1検出口47aと第1掃気口33a間において、管の直径が、上記の戻りが許される程度に大きく、かつ、長さを短くすることで、慣性力による掃気を可能としている。
また、第2開閉弁48を通過して第2分岐管34を進んだ気体は第2掃気口34aを無視して直進(慣性力で直進)し、第2検出口47bに至る。第2検出口47bと第2掃気口34a間における管の直径と長さの関係は、第1検出口47aと第1掃気口33a間の管の直径、長さと同じようにして、慣性力で第2検出口47b内を掃気するようにしている。
検査手順は次のようになる。
まず、図5のステップS101と同様にして、気体導入部10のエアタンク18に加湿して圧縮した空気を蓄える。次に、主管路31、排気管32、第1分岐管33、第2分岐管34、管路37など測定系のすべての管路にエアタンク18からの気体を流してこれらの管路を掃気する。
具体的には、排気弁45、手動弁46、第2開閉弁48、メイン掃気弁51を開いた後、第1開閉弁43を開いて、エアタンク18からの気体を各管路に流して掃気する。
このとき、エアタンク18から第1分岐管33を通じて差圧センサ47の第1検出口47aに達した気体は第1掃気口33aから第2分岐管34を通って差圧センサ47の第2検出口47bに至った後、その極近傍の第2掃気口34aから管路37へ流れ、さらに小マスタMb、メイン掃気弁51を通って排出ポート35aから排出される。掃気において、第2開閉弁48は、図1や図7の第1サブ掃気弁52、第2サブ掃気弁53としての役割、すなわち、第1掃気口33aと第2掃気口34aを連通させるか否かを切り替える機能を果たしている。
掃気を終える際には、第1開閉弁43を閉じ、排気弁45、手動弁46を閉じ、さらに、メイン掃気弁51を閉じる。
次に、接続口31aにマスタMを取り付け、手動弁46を開き、排気弁45を閉じた後、第1開閉弁43を開き、エアタンク18からの気体(加湿され圧縮された空気)を、第2開閉弁48を開いて連通している第1空間および第2空間に加圧導入し、これらの空間内を目標圧力にする。
第1空間および第2空間が目標圧力に達したら、第1開閉弁43を閉じ、さらに第2開閉弁48を閉じる。これにより、第1空間と第2空間が連通しなくなり、それぞれが独立した閉鎖系(密閉した状態)になる。
その後、差圧センサ47の検出値の時間経過に伴う変化を測定して基準特性を求める。
次に、マスタMをワークWに交換して、ワークWの漏れを検査する。具体的には、第2開閉弁48を開いて第1空間と第2空間を連通させた後、排気弁45を開いて大気開放にする。次に、最初と同様にして測定系のすべての管路を掃気する。
次に、マスタMを取り外して(前回がワークWのリーク検査ならば、該ワークWを取り外して)、検査対象のワークWを接続口31aに取り付ける。そして、排気弁45を閉じ(メイン掃気弁51は掃気終了時に閉じている)、第2開閉弁48を開いた状態で、第1開閉弁43を開いてエアタンク18からの気体を、連通状態の第1空間と第2空間(小マスタMbを含む)に加圧導入して目標圧力にする。
目標圧力に到達したら、第1開閉弁43を閉じ、さらに第2開閉弁48を閉じる。その後、差圧センサ47の検出値の時間経過に伴う変化を測定し、この測定結果と、先に測定した基準特性を比較することで、ワークWの漏れの有無を判定する。
第2の変形例に係るリーク検査装置5Dにおいても、差圧センサ47の第1検出口47a、第2検出口47bに至るまでを含めてほぼすべての管路内を掃気することができる。また、貫通型の小マスタMbの中についても、エアタンク18からの気体に入れ替えることができる。
<第3の変形例>
これまでは、差圧センサ47を用いた例を示したが、単圧式の圧力センサを用いるリーク検査装置であっても、本発明は適用される。
図9は、単圧式の圧力センサ71を用いたリーク検査装置5Eの一例を示している。図1と同一部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は適宜省略する。
図9に示すリーク検査装置5Eでは、主管路31から第2分岐管34は分岐していない。第1分岐管33には、その末端に単圧式の圧力センサ71が接続されている。単圧式の圧力センサ71の検出口の極近くには第1掃気口33aが設けてある。第1掃気口33aに、メイン掃気弁51が介挿された掃気管72が接続され、該掃気管72の終端は排出ポート35aになっている。
検査手順は次のようになる。
エアタンク18に加湿して圧縮した気体を蓄える。次に、排気弁45およびメイン掃気弁51を開いた状態で第1開閉弁43を開いて管路を掃気し、その後、第1開閉弁43、排気弁45、メイン掃気弁51を閉じて掃気を終える。
単圧式の圧力センサ71の検出口の極近くに、メイン掃気弁51で開閉される第1掃気口33aを設けたので、単圧式の圧力センサ71の検出口に至るまで第1分岐管33内を掃気することができる。
次に、接続口31aにワークWを取り付け、第1開閉弁43を開いて、加湿された空気をワークWに加圧導入する。次に、第1開閉弁43を閉じてワークWの含まれる空間を密閉する。該空間は、第1開閉弁43より下流の主管路31、ワークW、排気弁45より上流の排気管32、単圧式の圧力センサ71に至る第1分岐管33、第1掃気口33aからメイン掃気弁51までの掃気管72からなる。この状態で単圧式の圧力センサ71の検出値を監視してワークWの漏れの有無を判定する。
次に、図1に示すリーク検査装置5での検査において、検査圧力の切換えがある場合について説明する。
まず、検査準備として、第1空間61と第2空間62を目標圧力に加圧した後、冷やして、安定な状態にする。前回の検査が演算例1に示すような目標圧力(900KPa)であり、今回の検査が演算例2に示すような目標圧力(420KPa)であるような場合には、以下のような方法でリーク検査装置5の検査装置本体6内の掃気を行う。
すなわち、前回の検査は目標圧力900KPa(雰囲気温度30℃)であり、気体導入部10に蓄える気体は、圧力が1200KPa(=((100+900)×1.3)-100)で湿度は100%(加圧時湿度)なので、これを絶対湿度に換算すると2.3(=30.4×1/13)(g/m3)となる。
今回の検査が目標圧力420KPa(雰囲気温度25℃)の場合、絶対湿度は3.5(=23.0×1/13)(g/m3)となり、前回の検査状態を放置したまま今回の検査を行うと、第1空間61、第2空間62内に残っている空気の湿度(例えば絶対湿度2.3g/m3)と、今回検査に用いる空気の湿度(例えば絶対湿度3.5g/m3)とが異なることとなり、検査毎に少しずつ空間内の空気が今回の検査の空気と入れ替わる第1空間61と、まったく入れ替わらない第2空間62内の空気の湿度(比熱)が異なることとなり、測定毎に誤差が生じてくる。
そこで検査条件が異なる場合には、事前に第1空間61、第2空間62内の空気を入れ替える。さらに初回の検査前にもこの掃気を行う。なぜならば、第1空間61、第2空間62内の空気はリーク検査装置5の検査装置本体6が組立てられた時の空気で満たされているためである。
このような検査前の検査条件切換えに伴う掃気は、各所にY字型の滞留防止構造やノズル型の滞留防止構造を用いつつ貫通型の小マスタMbを用いるような装置で行われる(慣性掃気)。
なお、図1のリーク検査装置5では、差圧センサ47の両側(検出口47a、47b)で行き止まりとなる箇所の気体を、第1掃気口33a、第2掃気口34aから排気するので、検査圧力変更等で必要となる空気の入れ替えが速やかに行え、第1空間61、第2空間62内の空気が同一となり、同一の物理常数(検査用気体の調湿を行って、同一温度、同一圧力の元で、同一の比熱)を持った空気での比較を行うことができる。
次にリーク検査を行うワークWの製造方法について述べる。
本実施の形態に係るリーク検査装置5、5B〜5Eが検査対象とするものは、内部に液体を入れて使用する容器(例えば電気温水器で使用するようなステンレス製温水貯湯タンク(オールステンレス)、瞬間湯沸器で使用するような銅製熱交換器(銅製フィンと銅管))であり、溶接によって作られる(又は射出成型によるプラスチック製温水貯湯タンクでも良い)。
内部に気体を入れて使用する容器としてのワークWをリーク検査するならば、許される漏れ許容値として気体の漏れ量を簡単に設定できる。すなわち、検査時と実際の使用時とでワークWの中に入れるものが同じ気体であれば、検査時の判定基準となる漏れ気体量と、実際に使用する際に許される気体の漏れ許容量とに同じ基準値を用いることができる。しかし、液体を入れて用いるワークの検査に気体を用いる場合には、実際の使用時に許される液体の漏れ許容値を気体の漏れ量に換算して、検査時用漏れ許容値(気体)を設定しなければならない。
この換算に当たっては動粘性係数の差を用いて換算する。本発明での検査対象とする容器としてのワークWは製造して、リーク検査合格後に機器に組み込まれる。例えば瞬間湯沸器の場合には出荷検査で(内部に組み込まれたワークWを含めて)水を通水するが、ステンレス製温水貯湯タンクがワークWのような場合には機器に組み込まれて施工現場に運び込まれてから初めて、ワークWを組み込んだ製品に通水される。すなわち、ワークWは容器に加工される部品(例えばステンレス板、銅板、銅管等部品)段階から容器形状となってリーク検査に至るまでの間は、一度も通水されることなく、水で洗浄されることもない。
ところで、ワークWと同じはずのマスタMを元に基準特性(ステップS108)を取得し、複数のワークWのリーク検査を行うが、マスタMを含めた複数のワークW(以下ワークW等)間の製造誤差によりそれぞれの重さが微妙に異なり、リーク検査に影響を与える(外乱)。本実施の形態で用いているワークW等の重量差は、部品に用いている母材と異なる(比熱が異なる)物、たとえば内部の水等によって重量が異なるわけではないので(ワークW等と比熱が異なる外乱物の混入がないので、「比熱が異なる外乱物の除去」は不要なので)、重量の差は母材重量の差である。そこで、マスタMとの重量差を補正するために、母材と同一材質で作った補正部品を、ワークW内に入れたり接続口31aに接続する部品内に取り付けたりすることで重量差を補正する(ワークW等と「同一比熱補正部品を用いた外乱防止」)。
もちろん、接続口31aに接続する部品や接続口31aに接続する場所以外の開口部を塞ぐ補機類の材質と重量も、複数のワークW等間で差がないように同一部材を用いると共に同じ重量物を用いることで熱容量を合わせる(「接続口に接続する部品や補機類による外乱防止」)。
このような各種外乱の防止を行った後、均温化作業に入る。すなわち、ワークW等間で温度が異なると、その保有熱量によりリーク検査に影響を与えるのでそれを除去する(「保有熱量合わせ込みによる外乱防止」)。上述のような外乱防止は、ステップS101〜ステップS104のように、基準特性や検査の前日までに行うとよい。
ところで断熱圧縮による発熱は、検査にあたってリーク検査装置5等の検査装置本体6等に導入される気体と異なる気体(例えば前回検査して放熱しきって温度が異なる気体や、ワークWが作られた際に一緒に閉じ込められた湿度・温度が違う気体等)が残っているからなのであるから、例えば検査に先立ちリーク検査装置5の検査装置本体6内の気体、ワークW内気体、マスタM内気体、差圧センサ47内気体等、検査装置本体内のすべてを真空吸引してしまえば、断熱圧縮による発熱問題は一気に解消される。発熱の根源である気体を無くしてしまうのであるから理想的である(ただし、真空吸引に起因する減圧冷却が静定する静定時間が代わりに必要となる)。
ところが真空吸引しても発熱の根源である気体を完全に無くすことはできない。なぜならば、気体のない空間(絶対真空)をだれ一人つくれた者がいないからである。このことはJISの定義で、真空とは「大気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間の状態」となっていることからも判る。すなわち、真空にしても気体が残存するので断熱圧縮による発熱は回避できない。
本発明では、負圧吸引で真空を作り、そこに気体導入部10からの検査用気体を流し込むことで、新旧気体の置換をはかるのではなく、気体導入部10から検査用気体を流し込み、加圧掃気で新旧気体の置換を行った。これにより、コンプレッサ15のほかに真空ポンプを設ける必要がない。
さらに付言すれば、真空吸引の方式では、以下のような方法を取り得る。すなわち、真空吸引によって減圧冷却が起き、この時所定量の気体を残して加圧すれば残った気体の断熱圧縮で発熱がおきる。そこで、この減圧冷却量と断熱圧縮発熱量が等量になった時点で吸引から加圧に切り替えれば、熱が相殺され、たとえ完全に吸引(絶対真空)を作ることができなくとも目的(測定時間の短縮化)を達することができる。
ところが、吸引が足りずに加圧したり、逆に吸引しすぎてから加圧したりする場合には、熱が相殺できずに測定毎の誤差が生じる。これに対して、加圧掃気による新旧気体の置換では、所定時間以上の掃気であれば良く、測定毎の誤差を簡単に収束させることができる。
次に、液体の漏れ許容値を気体の漏れ量に換算する換算計算式等について説明する。
<粘性係数を用いた換算計算式>
細孔から漏れる流量は粘性係数を用いて計算することができる。
粘性係数(μ Pa・s)20℃時 水のμ=0.0010050Pa・s 空気のμ=0.0000181Pa・s、細孔の直径 0.1mm(=0.0001m)、細孔の長さ 1mm(=0.001m)、大気圧(雰囲気の気圧)101300Pa Abs、細孔入口圧(目標圧力)300kPa G(=401300Pa Abs)、細孔出口圧(雰囲気の圧力)0kPa G(=101300Pa Abs)の時の水の漏れ量は、
ΔP(以下、水ΔPとする)=[細孔入口圧]−[細孔出口圧](Pa Abs)=300000(Pa Abs)
とすると、
[水の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[水ΔP]/(128×[水のμ]×[細孔の長さ])
=3.14×0.0001[m]4×(300000[Pa Abs])/(128×0.0010050[Pa・s]×0.001[m]
=0.00000073[m3/s]=0.73[ml/s]、となる。
これに対し空気の漏れ量は、水が非圧縮性流体であるのに対し、空気は圧縮性流体であるので差圧(以下、空気ΔPとする)は下記のように表される。
空気ΔP=([細孔入口圧]2-[細孔出口圧]2)/(2×[細孔入口圧])
=744225(Pa Abs)
[空気の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[空気ΔP]/(128×[空気のμ]×[細孔の長さ])
=3.14×0.0001[m]4×(744225[Pa Abs])/(128×0.0000181[Pa・s]×0.001[m]
=0.00010087[m3/s]=100.87[ml/s]、となる。
[水の漏れ量]を基に、リーク検査装置からの[空気の漏れ量]を換算する為の換算係数([水の細孔入口圧]=[空気の細孔入口圧]とした場合に)は、
[空気の漏れ量]=[水の漏れ量]×[換算係数]
[換算係数]=[空気の漏れ量]/[水の漏れ量]
=([細孔入口圧]2-[細孔出口圧]2)×[水のμ]/(2×[細孔入口圧]×[空気のμ]×([細孔入口圧]−[細孔出口圧]))
=137.7(=100.87/0.73) となる。
たとえば、70℃の温水を300[kPa G]で蓄えるタンクの許容温水漏れ量が10[ml/h]の時で検査時の周囲温度(=リーク検査装置に満たされる気体温度)が20℃の時に200[kPa G]で検査する場合([水の細孔入口圧]=[空気の細孔入口圧]とならない場合)には、[20℃空気のμ]=0.0000181Pa・s、[70℃の温水のμ]=0.0004Pa・s、大気圧(雰囲気の気圧)101300Pa Absとすると、
[換算係数]=[空気の漏れ量]/[水の漏れ量]は、
[空気の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[空気ΔP]/(128×[空気のμ]×[細孔の長さ])
[水の漏れ量]=π×[細孔の直径]4×[水ΔP]/(128×[水のμ]×[細孔の長さ]) なので、
[換算係数]=([空気ΔP]×[水のμ])/([空気のμ]×[水ΔP])
で表される。計算すると、
[換算係数]=29.28(=292.8/10) となり、
許容気体漏れ量([空気の漏れ量])=292.8[ml/h] として求められる。
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
実施の形態では、比熱の大きい気体を、加湿した空気としたが、雰囲気より比熱の大きい気体は、たとえば、エチレン、メタン、ヘリウム等の単体、あるいはこれを空気に混ぜたものであってもよい。また、加圧導入する気体は、雰囲気より比熱の大きい気体に限定されず、任意の気体でよく、周囲の空気であっても構わない。
本発明に係るリーク検査装置の構成は、実施の形態に例示したリーク検査装置5、5B、5C、5D、5Eに限定されない。圧力計の検出口に至る管路の該検出口の極近傍から気体を外部に逃がすことができるように構成されたリーク検査装置であれば、任意でよい。
実施の形態では、圧力計(圧力センサ47、71)の検出口に至って行き止まりになる管路の該検出口の近傍に開閉可能な掃気口を設け、この掃気口から掃気の際に気体を外部へ逃がすようにしたが、圧力計の検出口の近傍に限らず、測定系の中で行き止まりになる箇所が他にあれば、その箇所またはその箇所の近傍に開閉弁で開閉される掃気口を設ければよい。また、分岐先が行き止まりになる箇所の場合、その分岐箇所に滞留防止構造を設けて掃気するように構成すればよい。