以下、本発明の一実施形態に係るフロントグリップとそれを備えたスピニングリール用の筒状リールシート並びにその筒状リールシートが装着された釣竿について図1乃至図12を参酌しつつ説明する。本実施形態における筒状リールシート(以下、単に「リールシート」という。)は、釣竿にスピニングリール(以下、単に「リール」という。)を固定するためのものである。該リールシートは、いわゆるパイプシートと称される全体として筒状のものであって釣竿の竿本体1(ブランク)に外装されて所定位置に移動不能に固定される。即ち、リールシートは軸線方向(竿本体1の中心軸1aの方向)に沿って貫通した貫通孔を有しており、該貫通孔に竿本体1が挿通されて、竿本体1の外周面に接着等により固定される。使用状態ではリールが釣竿の下側に位置する。図1では、リール脚2が載置されるリール脚載置面10を使用状態に即して下向きとして図示している。リール脚2は、図示しないリール本体から一本脚状に延びる脚主部3と、該脚主部3の先端部である足首部4から前後両側に延びる取付脚部5とを備えて、全体としてT字状に形成されている。
リールシートは、図2及び図3にも示しているように、竿本体1に移動不能に外装される筒状の本体部と、該本体部の後部に前後方向に移動可能に外装された筒状の可動フード体8と、該可動フード体8の後側に位置して可動フード体8を前後に移動させる筒状のナット9とを備えている。本体部は、硬質の合成樹脂からなる筒状のリールシート本体7と、該リールシート本体7の前側に位置し、リールシート本体7よりも軟質の材質、例えばEVAやコルクからリールシート本体7とは別体にて形成されたフロントグリップ6とから構成されている。尚、図面においてフロントグリップ6には、多数のドットを付して示している。
リールシート本体7は、硬質の合成樹脂から成形により形成され、前後方向に沿って貫通孔70(図4参照)を有しており、該貫通孔70の壁面が竿本体1に接着等により固定される。尚、竿本体1に筒状のスペーサを介してリールシート本体7を接着してもよい。リールシート本体7は、外周面が異形断面となった本体主部72と、該本体主部72の前側に形成され、外周面が貫通孔70に対して同心円状の円形断面となった前方円筒部71(図1参照)と、本体主部72の後側に形成され、外周面が貫通孔70に対して同心円状の円形断面となった後方円筒部73とから構成されている。
本体主部72の下面に、リール脚2の取付脚部5が載置されるリール脚載置面10が形成されている。該リール脚載置面10は、リールを取り付けるためのリール取付位置である。本体主部72の前部には固定フード部74が一体的に形成されている。該固定フード部74は、リール脚載置面10の前側に位置していて、後側に向けて開口する開口部74aを有しており、該固定フード部74に、リール脚2の取付脚部5の前端部、即ち、前側の脚先部5aが挿入される。また、本体主部72の左右両側面にはそれぞれ貫通孔70に連通した窓部75が形成されている。該窓部75はリール脚載置面10の左右両側に位置しており、該窓部75を介して竿本体1の外周面が部分的に外部に露出するため、窓部75を介して竿本体1を直接指先等で触れることができる。
固定フード部74よりも前側に前方円筒部71が形成されている。前方円筒部71は、本体主部72の前側に径方向内側への段差を介して延設されており、該前方円筒部71の外周面にフロントグリップ6の後部が外装され固定される。尚、本体主部72と前方円筒部71との間の境界部77は、前後方向に対して直交しておらず、前後方向に対して斜め方向に沿っている。即ち、境界部77は、下面から上面に向けて斜め後方に傾斜して延びていて、その後端は本体主部72の後端近傍に位置している。即ち、境界部77は、本体主部72の略全長に亘って斜めに傾斜して延びている。
後方円筒部73は、本体主部72の後側に段差なく滑らかな曲線を描きつつ延設されている。該後方円筒部73に可動フード体8とナット9が移動可能に外装される。従って、後方円筒部73の外周面には、その後端から前端近傍までの大部分に亘って雄ネジ部76が形成されており、該雄ネジ部76にナット9が螺合する。
可動フード体8は、全体として筒状であってリールシート本体7の後方円筒部73に後側から装着される。可動フード体8の前端部にはリール脚2の取付脚部5の後端部、即ち、後側の脚先部5bが挿入される可動フード部80が形成されている。具体的には、その前端部の周方向の下部が径方向外側に局部的に膨出形成されており、その膨出部から可動フード部80が構成され、可動フード部80とリールシート本体7との間にリール脚2の後側の脚先部5bが挿入される。可動フード部80は、リールシート本体7のリール脚載置面10の後側に位置していて固定フード部74と対向しており、固定フード部74と共にリール脚2の取付脚部5を前後に狭持してリール脚2を固定する。
尚、可動フード体8の前端面は、前後方向に対して直交しておらず、前端面のうち竿本体1の中心軸1aよりも上側半分の領域81aについては上側に向けて後方傾斜の形状とされ、前端面のうち竿本体1の中心軸1aよりも下側半分の領域81bについては下側に向けて後方傾斜の形状とされている。尚、竿本体1の中心軸1aを直交して横断する横断面に対する、前端面の上側半分の領域81aの傾斜角度と、前端面の下側半分の領域81bの傾斜角度とを比較すると、前者が後者に比して大きい。
可動フード体8は、ステンレスやアルミニウム合金等の金属製やABS等の硬質樹脂製、あるいは、カーボン繊維等を強化繊維とする繊維強化樹脂製であって、その厚さは例えば0.3mm〜1.5mmである。尚、可動フード体8を金属製や繊維強化樹脂製とする場合には、可動フード部80の内側に合成樹脂製の当て部材82を装着しておくことが好ましく、リール脚2を保持する際のガタツキを防止できると共にリール脚2の傷付きも防止できる。
次に、本体部の形状及びフロントグリップ6の形状について説明する。まず本体部の形状について説明すると、本体部は、その上面のうちリール脚載置面10とは径方向反対側の部分が径方向外側に向けて膨出している。最も径方向外側に膨出している部分を膨出ピーク部11と称することにする。膨出ピーク部11の位置が第一の位置である。また、リールシートにリールを取り付けた際、そのリール脚2の足首部4に対応したその径方向反対側の位置を足首対応位置と称することにすると、本体部の膨出ピーク部11は、足首対応位置あるいは足首対応位置よりも後側の位置に存在している。本体部の上面は、その前端から膨出ピーク部11まで後側に向けて上り勾配であり、膨出ピーク部11からリールシート本体7の本体主部72の後端まで後側に向けて下り勾配となっている。本体部の上面における膨出ピーク部11よりも前側の勾配は相対的に小さく緩やかであり、それに対して本体部の上面における膨出ピーク部11よりも後側の勾配は相対的に大きく急である。
また、本体部を上側からあるいは下側から見た時の左右方向の太さは、固定フード部74の開口部74aの位置よりも膨出ピーク部11の位置の方が細くなっている。本体部の左右方向の太さは、固定フード部74の開口部74aの位置よりも所定長さ前側の位置で最大となっており、本体部は前端から固定フード部74の開口部74aの位置よりも所定長さ前側の位置までは後側に向けてテーパ状に太くなっており、そこから後側に向けては逆に逆テーパ状に細くなっている。この逆テーパ状の領域は、少なくとも固定フード部74の開口部74aの位置から膨出ピーク部11の位置まで形成されており、本実施形態では、固定フード部74の開口部74aの位置よりも所定長さ前側の位置から、膨出ピーク部11を後側に所定長さ越えた位置まで形成されている。逆テーパ形状の領域は本体主部72の後端まで延びていてもよいが、本体主部72の後端よりも若干前側の位置で終了してそこから本体主部72の後端まで略一定の太さとなっていることが好ましい。
フロントグリップ6は、図5に示しているように、竿本体1の中心軸1aを中心とする貫通孔60を有した筒状である。貫通孔60は、前側の部分60aと後側の部分60bとに区画され、前側の部分60aは小径であり、後側の部分60bは大径である。貫通孔60の前側の部分60aの壁面は竿本体1の外周面に接着され、貫通孔60の後側の部分60bの壁面はリールシート本体7の前方円筒部71の外周面に接着される。尚、貫通孔60の前側の部分60aと後側の部分60bとの間に形成された径方向の段差部に、リールシート本体7の前端面即ち前方円筒部71の前端面が当接する。
フロントグリップ6は、後部の下側の部分が切り欠かれた形状となっている。この切欠形状によってフロントグリップ6は、主として二つの領域に分かれる。即ち、フロントグリップ6は、前側に位置する筒状のグリップ主部61と、該グリップ主部61から後側に延設され、全周のうち下側の所定角度範囲が欠如した後方延在部62とから構成される。フロントグリップ6の下側の切り欠き形状は後側に向けて徐々に大きくなっていて徐々に上側まで切り欠くようになっている。従って、切り欠かれずに残った後方延在部62の残存角度範囲は、後側に向けて徐々に小さくなっていく。このように後方延在部62は、下から上に向けて斜め後方に傾斜して延びていて、上述したリールシート本体7における本体主部72と前方円筒部71との間の境界部77の形状と略一致していて、フロントグリップ6の外周面とリールシート本体7の本体主部72の外周面とは略面一となっている。
また、リールシート本体7のリール脚載置面10とは径方向反対側の部分の外側にフロントグリップ6の後方延在部62が位置する。そして、膨出ピーク部11はフロントグリップ6の後方延在部62に位置している。フロントグリップ6の後方延在部62は、膨出ピーク部11を後側に所定長さ越えて延びており、従って、本体部の膨出形状の大部分はフロントグリップ6により形成され、特にはその後方延在部62の上面により形成される。尚、フロントグリップ6の上面は、グリップ主部61から後方延在部62にかけて連続している。
リールシート本体7の本体主部72の左右方向の幅は固定フード部74の開口部74aの位置から前側に向けて徐々に狭くなっており、本体部において左右方向の太さが最大となっている位置は、フロントグリップ6にあってその位置はグリップ主部61の後端即ち後方延在部62の前端の近傍にあり、その位置が第二の位置である。フロントグリップ6はそこから後側に向けて逆テーパ状に左右方向の太さが細くなっている。尚、フロントグリップ6の左右方向の太さとリールシート本体7の左右方向の太さを比較すると、膨出ピーク部11の近傍よりも前側においてはフロントグリップ6の方が太く、膨出ピーク部11の近傍よりも後側においては逆にリールシート本体7の方が太くなっている。
フロントグリップ6は、竿本体1の中心軸1aを中心とした断面円弧状の外周面63(図4参照)を全長に亘って備えている。尚、図4において断面円弧状の外周面63の全周のうち切り欠かれて欠如している部分を二点鎖線で示している。この断面円弧状の外周面63がグリップ主部61から後方延在部62にかけて拡径することにより後方延在部62に膨出ピーク部11が形成されている。即ち、フロントグリップ6の断面円弧状の外周面63における竿本体1の中心軸1aを中心した円又は円弧の半径が、フロントグリップ6の前端から膨出ピーク部11まで徐々に大きくなっており、膨出ピーク部11において最大となり、膨出ピーク部11から後端までは逆に徐々に小さくなっている。このように竿本体1の中心軸1aを中心としたフロントグリップ6の断面円弧状の外周面63によって本体部の膨出形状が形成されている。
そして、フロントグリップ6における左右方向の太さの逆テーパ形状は、竿本体1の中心軸1aを中心としたフロントグリップ6の断面円弧状の外周面63が左右両側部において平面状に削られることにより形成されている。即ち、フロントグリップ6の後方延在部62の左右両側部には、竿本体1の中心軸1aを中心とした断面円弧状の外周面63が所定のカット基準面65a,65b,65cによって平面状に削られたカット面64a,64b,64cがそれぞれ左右対称に形成されており、該カット面64a,64b,64cが形成されることによってフロントグリップ6における左右方向の太さの逆テーパ形状が形成されている。
カット面64a,64b,64cは左右両側部にそれぞれ複数ずつ形成されており、また、後方延在部62に全て形成されている。本実施形態では、左右両側部にそれぞれ三つのカット面64a,64b,64cが形成されている。三つのカット面64a,64b,64cは、そのカット基準面65a,65b,65cの傾斜角度が互いに異なっている。カット面64a,64b,64cを形成するためのカット基準面65a,65b,65cの傾斜角度について更に詳述すると、カット基準面65a,65b,65cの傾斜角度には、竿本体1の中心軸1aを含む上下方向の垂直面(縦断面)を基準として、竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aと上下方向の軸線周りの傾斜角度Bという二つの傾斜角度がある。以下、単に、竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度A、及び、上下方向の軸線周りの傾斜角度Bという。隣り合うカット面64a,64b,64c同士のカット基準面65a,65b,65cは、二つの傾斜角度A,Bのうち少なくとも一方が異なっており、好ましくは両方が異なっている。尚、カット面64a,64b,64cの面積は種々であってよいが、例えば、前側から順に一番目である第一のカット面64aが最大で、二番目である第二のカット面64bが第一のカット面64aよりも小さく、三番目である第三のカット面64cが最小である。
これらのカット面64a,64b,64cの形成工程の概要についてカット基準面65a,65b,65cを仮想的に矩形に示しつつ説明する。カット面64a,64b,64cの形成工程を模式図として図6〜図10に示しており、図中、クロスハッチングを施している部分が、各工程において形成されるカット面64a,64b,64cである。尚、図6〜図10において貫通孔60の図示は省略している。まず、図6のように第一のカット基準面65aによって第一のカット面64aを形成する。第一のカット基準面65aは、竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aが0度であって上下方向の軸線周りの傾斜角度Bが図6(b)のように例えば数度(1度〜10度未満)である。尚、第一のカット基準面65aにおける竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aが0度であることから、第一のカット面64aは図7(a)のように正面視において上下方向中央部に形成される。但し、第一のカット基準面65aにおける竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aは0度には限られない。
次に、図7及び図8のように第二のカット面64bを形成する。第二のカット基準面65bは、竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aが図8のように例えば10度以上、具体的には20度〜40度であり、上下方向の軸線周りの傾斜角度Bが図7(b)のように例えば数度(1度〜10度未満)である。尚、第二のカット基準面65bにおける竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aは、第一のカット基準面65aのそれよりも大きいことが好ましい。また、第二のカット基準面65bにおける上下方向の軸線周りの傾斜角度Bも、第一のカット基準面65aのそれよりも大きいことが好ましい。また、第二のカット面64bは、第一のカット面64aの後側且つ上側に形成され、第一のカット面64aの後部上方領域を更に削るようにして形成される。尚、傾斜角度Aは、竿本体1の中心軸1aの方向に見た時、両カット基準面65a、65b、65cが上側に向けて互いに接近する方向をプラスとする。また、傾斜角度Bは、両カット基準面65a、65b、65cが平面視において後側に向けて互いに接近する方向をプラスとする。
更に、図9及び図10のように、第三のカット面64cを形成する。第三のカット基準面65cは、竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aが図10のように例えば10度以上、具体的には、20度〜40度であり、上下方向の軸線周りの傾斜角度Bが図9(b)のように例えば数度から十数度(1度〜20度未満)である。尚、第三のカット基準面65cにおける竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aは、第二のカット基準面65bのそれとは異なっていることが好ましく、また、第三のカット基準面65cにおける上下方向の軸線周りの傾斜角度Bは、第二のカット基準面65bのそれよりも大きいことが好ましい。また、第三のカット面64cは、第二のカット面64bの後側且つ上側に形成され、第二のカット面64bの後部を更に削るようにして形成される。このように、第一のカット面64aから第二のカット面64b、第三のカット面64cへと徐々に後側且つ上側に形成箇所が推移していく。尚、断面円弧状の外周面63は、竿本体1の中心軸1a回りにフロントグリップ6を回転させることで切削でき、また、カット面64a,64b,64cはフロントグリップ6を回転させずに固定した状態で切削できる。
以上のように構成されたリールシートは竿本体1に装着され、そのリールシートにリールが取り付けられて使用される。リールシートを把持すると、フロントグリップ6の前端から膨出ピーク部11まで断面円弧状の外周面63が拡径しているので、フロントグリップ6の上面は前端から膨出ピーク部11に向けて上方に膨出した形状となる。従って、フロントグリップ6の上面への手の密着性が良好なものとなる。一方、左右両側部のカット面64a,64b,64cによってフロントグリップ6の左右方向の太さは拡大せずに細く抑制されている。従って、把持する手の左右方向の開き具合も大きくなりにくく、軽い力で把持することができる。このように、断面円弧状の外周面63を拡径することによって膨出ピーク部11を頂点とする上面の膨出形状が確保される一方、左右方向の寸法については左右両側部にカット面64a,64b,64cを形成することによって細く抑制している。従って、釣竿を把持した際のホールド性が向上して軽い力で釣竿を把持することができ、長時間釣りをしても疲れにくい。
更に種々の持ち方のうち、釣竿の前後の揺動を抑制することに適した持ち方でリールシートを把持した場合について説明する。図11及び図12に示しているように、中指と薬指の間にリール脚2の足首部4を位置させて、フロントグリップ6の前部上面を人差し指の指先で上方から押さえつけ、中指の第二関節付近と親指とでリール脚2よりも前側の部分であるリールシートの前部を左右に挟み込み、中指の指先と薬指と小指でリール脚2の取付脚部5やリールシートの下面を下側から押さえてリールシートの上面を手のひらに押し付けるようにすると共に、母指球と小指球とであるいは母指球と薬指及び小指の付け根の関節部分とでリール脚2よりも後側の部分であるリールシートの後部を左右に挟み込むようにする。このように把持すると、手首を伸ばした状態で把持することができて手首を固定しやすく、従って、釣竿の前後の揺動を抑制しやすい。より詳細には、人差し指の指先は、フロントグリップ6の前端近傍に位置し、中指の第二関節付近と親指で固定フード部74の開口部74a近傍の左右両側部を左右に挟み込む。このように把持すると釣竿の前後の揺動を容易に抑制することができる。
例えば、シーバスフィッシング等のルアーフィッシングにおいては、ロッドアクションを加えない場合、釣竿の特に竿先が前後に揺動しないように注意しながらリールを回転させてルアーをリトリーブすることが重要になる。リトリーブ時に釣竿の竿先が前後に揺動すると、ルアー自体のアクションが釣竿の前後の動きによって吸収緩和されることになり、きびきびとしたルアー本来のアクションが発生しにくくなるためである。従って、リトリーブ時にはリールシートを把持する手の手首をしっかりと固定して釣竿が前後に揺動しないように注意する必要がある。それと同時に釣竿を持つ持ち方にも工夫が必要であり、上述したような釣竿の前後の動きを極力小さく抑えることができる持ち方が推奨される。
このような持ち方で釣竿を把持した場合、リールシートの膨出ピーク部11が足首対応位置あるいは足首対応位置よりも若干後側に位置しているので、人差し指の付け根の関節部分100がリールシートの上面に密着しやすくなり、手首を楽に固定することができ、手首への負担が軽減される。比較例として図13にリールシートの上面に膨出形状が形成されていない場合を示している。この図13に示しているフロントグリップ6は断面円弧状の外周面63が径略一定のストレート形状となっている。この図13のようにリールシートが膨出形状のないストレート形状であると、人差し指の付け根の関節部分100とリールシートの上面との間に大きな空間が生じることになり、リールシートの上面には人差し指の指先と手のひらの手首近傍の部分の二点で接触することになって、手首を固定するために強く力を入れる必要があり、手首への負担が大きい。
また、リールシートがストレート形状ではなくても、例えば、膨出ピーク部11が足首対応位置よりも前側に位置している場合であっても同様に手首への負担が大きい。即ち、人差し指の指先でリールシートを押さえつけようとすると、人差し指は、指先と付け根の関節部分において低くなり、その間の第二関節部分において高くなりやすい。従って、膨出ピーク部11が足首対応位置よりも前側に位置していると、その膨出ピーク部11は人差し指の第二関節付近に位置するため、膨出ピーク部11を設けても人差し指には接触しにくい。また、人差し指の付け根の関節部分100がリールシートの上面に接触すると安定しやすいが、膨出ピーク部11が足首対応位置よりも前側に位置していると、人差し指の付け根の関節部分100がリールシートの上面から浮き上がりやすくなるため、やはり手首に力が入りやすい。このように膨出ピーク部11が足首対応位置よりも前側に位置している構成であっても手首への負担が大きいのである。それに対して、本実施形態のリールシートにあってはリールシートの膨出ピーク部11が足首対応位置あるいはそれよりも若干後側に位置しているので、人差し指の付け根の関節部分100がリールシートの上面に密着しやすくなり、手首を楽に固定することができて手首への負担が軽減されるのである。
また、フロントグリップ6の膨出ピーク部11よりも後側の勾配が膨出ピーク部11よりも前側の勾配よりも急になっているので、本体部の膨出ピーク部11よりも後側の部分を容易に小径化でき、可動フード体8を含めたリールシートの後部の全体の外径を抑制することができる。従って、より一層把持しやすくなる。更に、フロントグリップ6の後方延在部62に膨出ピーク部11が形成されているので、人差し指の付け根の関節部分100が軟質のフロントグリップ6の後方延在部62に密着することになって、より一層良好なホールド性が得られ、より一層楽に把持できて手首の負担もより一層軽減される。
また、本体部の左右方向の太さを固定フード部74の開口部74aの位置から膨出ピーク部11の位置にかけて後側に向けて逆テーパ状に細くしていて、固定フード部74の開口部74aの位置よりも膨出ピーク部11の位置の方が細くなっているので、図12のように手のひらの左右の開きが小さくなり、手首をより一層楽に固定することができる。更に、本体部の左右方向の太さが固定フード部74の開口部74aよりも前側の位置で最大となっていてそこから後側に向けて逆テーパ状に形成されているので、手のひらの開きがより一層小さくなって手首への負担がより一層軽減される。また更に、逆テーパ状の領域が膨出ピーク部11よりも更に後側まで延びているので、手のひらの特に母指球と小指球との間の開きが小さくなり、手首への負担がより一層軽減される。
特に、フロントグリップ6が竿本体1の中心軸1aを中心とした断面円弧状の外周面63を全長に亘って備えていて、その断面円弧状の外周面63の半径が前端から膨出ピーク部11まで拡大しているので、後方延在部62に容易に膨出ピーク部11を形成することができる。しかも、後方延在部62の左右両側部にカット面64a,64b,64cが形成されているので、そのカット面64a,64b,64cによって左右方向の太さを容易に細くすることができ、逆テーパ形状にも容易に形成できる。即ち、膨出ピーク部11に向かって膨出していく上面の膨出形状を確保しつつ左右方向の太さを容易に細くすることができる。また、カット基準面65a,65b,65cの傾斜角度Aや傾斜角度Bが異なる複数のカット面64a,64b,64cが形成されているので、単一のカット面64a,64b,64cが形成されている場合に比して、左右方向の太さをスムーズに細くすることができる。特に、カット基準面65a,65b,65cの竿本体1の中心軸1a周りの傾斜角度Aと上下方向の軸線周りの傾斜角度Bのうち、少なくとも一方が隣り合うカット面64a,64b,64c同士の間で互いに異なっていると、より一層スムーズに細くすることができ、傾斜角度Aと傾斜角度Bの両方が異なっていると更にスムーズに細くすることができる。
尚、本実施形態では、後方延在部62の左右両側部にカット面64a,64b,64cを形成することによってその左右方向の幅を前後方向の中途部(第二の位置)から後側に向けて逆テーパ状に細くしたが、逆テーパ状に細くするのではなく、前後方向の中途部から後側に向けて幅略一定のストレート形状としてもよい。その場合においても左右両側部にカット面を形成することによって後方延在部62の左右方向の幅を細くすることができる。後方延在部62の左右方向の幅をストレート形状、即ち略一定とする場合、カット基準面の上下方向の軸線周りの傾斜角度Bは0度とする。そのように、カット基準面が平面視において竿本体1の中心軸1aと平行であっても、フロントグリップ6の上面については断面円弧状の外周面63が前端から所定位置(第一の位置)まで後側に向けて拡径していってその所定位置において最大半径となるので、上面の膨出形状は確保される一方、左右方向の幅は抑制できる。また更に、カット基準面の上下方向の軸線周りの傾斜角度Bが若干(例えば1度程度)マイナスであってもよい。その場合、カット面を形成しても、逆テーパ形状にはならず後側に向けて左右方向の幅が若干太くなっていくが、断面円弧状の外周面63の拡径率よりも小さいものであれば、上面の膨出形状を維持しつつ、左右方向の幅が後側に向けて大きく拡大することを抑制できる。
尚、後方延在部62を形成せずに全体を筒状のグリップ主部61から構成してもよい。