本発明の化合物
本発明は、修飾された活性部分と、複合体部分、及び切断可能なリンカーを含む薬物複合組成物であって、リンカーの切断が実質的に標的組織において発生して、未修飾の活性部分と比較して標的組織からの流出が低減された、修飾された活性部分を生成する、組成物を提供する。本発明はまた、修飾された活性部分を含む、組成物を提供する。
使用される複合体部分は、生物学的要件、例えば、活性部分の薬物動態的及び薬力学的特性、並びに疾患状態の知識に加え、複合体部分及び活性部分両方の物理化学的特性に依存する。当業者は、上述の考察に基づいて、適切な複合体部分を選択することができるであろう。複合体部分は、小分子の活性部分、又はより大きな分子の活性部分、例えばタンパク質、ペプチド若しくはオリゴヌクレオチド等を送達するために、使用される。
複合体部分は、標的への、活性部分の送達を改善する。複合体部分は、活性部分の生物学的利用率を最大化し;活性部分の発効(onset)、持続時間及び送達速度を最適化し;並びに有効な治療に必要とされる限り、標的組織内の活性部分の濃度を治療域に維持するように、選択される。複合体部分はまた、活性部分の有害な副作用の最小化を補助することもできる。このように、複合体部分は、活性部分の薬理学的活性を長期化させ、不安定な活性部分を、化学的及びタンパク分解性の分解から安定化させ、副作用を最小化し、溶解度を増加させ、並びに活性部分を特定の細胞又は組織に送達する。
複合体部分の考慮すべき他の特性は、複合体部分が最小限の免疫原性及び毒性を有するか、又は非免疫原性及び非毒性であることである。複合体部分の分子量は、腎臓限外濾過により急激に除去されることを避けるために充分大きく、及び体内での望ましくない蓄積を予防するために充分小さくあるべきである。ある実施形態において、複合体部分は親水性であり、かつ生分解性である。非生分解性の複合体部分もまた、本発明の組成物及び方法において好適である。複合体部分は、必要量の活性部分を担持し、かつ標的組織への移動する間の活性部分の早期代謝を予防することが可能であるべきである。
好ましい複合体には、全ての形態のポリマー、すなわち、ペプチド、多糖類、ポリ核酸、抗体及びアプタマーを含む、合成のポリマー及び天然物関連のポリマーが含まれる。好ましい実施形態において、複合体は、合成ポリマーである。本発明の好ましいポリマーは、Bockらへの米国特許第4,997,878号明細書、Kopecekらへの同第5,037,883号明細書、Kopecekらへの同第5,258,453号明細書、Zhangらへの同第6,464,850号明細書、及びBrocchiniらへの同第6,803,438号明細書に記載され、そのそれぞれの全体が参照により援用される。追加の好ましいポリマーは、Subrら、J Controlled Release,18,123−132(1992)に記載されている。いくつかの実施形態において、ポリマーの合成方法は、2つ以上のポリマー鎖のカップリングをもたらし得、ポリマー複合体の重量平均分子量を増加させ得る。このカップリングが生じる場合、その結合は生分解性であることが、さらに理解される。
活性部分は、対象において治療効果をもたらす、いかなる化合物又は分子であってもよい。ある実施形態において、化合物又は分子は、2000ダルトン以下、1500ダルトン以下、1000ダルトン以下、500ダルトン以下、又は250ダルトン以下の分子量を有する。ある実施形態において、化合物又は分子はMetAP2阻害剤である。ある実施形態において、化合物又は分子は、フマギリン、フマギロール、又はその類似体、誘導体、塩若しくはエステルである。選択される化合物又は分子は、治療される状態又は疾患に依存する。ある実施形態においては、2つ以上の活性部分を使用し得る。ある実施形態においては、活性部分、及び不活性な「キャッピング(capping)」部分を使用し得る。ある実施形態において、治療される状態は肥満症である。本発明の組成物において、複合体部分は、リンカーを介して活性部分に連結される。修飾活性部分を、複合体部分に連結するために、当技術分野で公知のあらゆるリンカー構造を使用し得る。使用されるリンカーは、標的組織の生理的状態、最適化されている活性部分の特性、及び切断機序に依存する。D’Souzaらは、タンパク質切断を介して機能するリンカーを含む、各種リンカーについて概説している:“Release from Polymeric Prodrugs:Linkages and Their Degradation”J.Pharm.Sci.,93,1962−1979(2004)。Blencoeらは、種々の自己犠牲型(self−immolative)リンカーをについて記載している:“Self−immolative linkers in polymeric delivery systems”Polym.Chem.2,773−790(2011)。Ducryらは、Bioconj.Chem.21,5−13(2010)“Antibody−Drug Conjugates:Linking Cytotoxic Payloads to Monoclonal Antibodies”において、リンカーについて概説している。マトリックス・メタロプロテイン(MMP)による切断に好適なペプチドリンカーが、Chauらの“Antitumor efficacy of a novel polymer−peptide−drug conjugate in human tumor xenograft models”Int.J.Cancer 118,1519−1526(2006)、及びChauらの米国特許出願公開第2004/0116348号明細書に記載されている。本発明の組成物に好適な、他のリンカーの化学的特性は、Shioseら、Biol.Pharm.Bull.30(12)2365−2370(2007);Shioseら、Bioconjugate Chem.20(1)60−70(2009);Senterへの米国特許第7,553,816号明細書;De Grootへの同第7,223,837号明細書;Kingへの同第6,759,509号明細書;Susakiへの同第6,835,807号明細書;Susakiへの同第6,436,912号明細書;及びGemeinhartへの同第7,943,569号明細書;に示される。
ある実施形態において、リンカーはペプチドリンカーである。好ましいペプチドリンカーは、Susakiらへの米国特許第6,835,807号明細書、Inoueらへの同第6,291,671号明細書、Inoueらへの同第6,811,996号明細書、Susakiらへの同第7,041,818号明細書、Senterらへの同第7,091,186号明細書、及びSenterらへの同第7,553,816号明細書に記載されており、そのそれぞれの全体が参照により援用される。追加の好ましいペプチド及びそれらの切断が、Shioseら、Biol.Pharm.Bull.30(12)2365−2370(2007)及びShioseら、Bioconjugate Chem.20(1)60−70(2009)に記載されている。マトリックス・メタロプロテイン(MMP)による切断に好適なペプチドリンカーが、Chauら、“Antitumor efficacy of a novel polymer−peptide−drug conjugate in human tumor xenograft models”Int.J.Cancer 118,1519−1526(2006)、及びChauら、米国特許出願公開第2004/0116348号明細書に記載されている。
リンカーは、当技術分野で公知のいかなる機序により切断されてもよい。例えば、リンカーを、タンパク質切断又は細胞内タンパク質切断用に設計してもよい。ある実施形態においては、血漿中でリンカーの切断が無いか、又は血漿中で切断率が非常に低くなるように、リンカーを設計する。好ましいリンカー構造を、以下にさらに詳細に記載する。
ある実施形態において、リンカーは、疾患組織において優先的に切断されるような構造を有する。正常組織及び疾患組織の両方に加水分解酵素が存在するため、リンカーは、疾患組織においてより活性な、及び/又は疾患組織により多く存在する加水分解酵素により、切断されるべきである。例えば、腫瘍は、概して上方制御された代謝率を有し、特に、カテプシンを含むプロテアーゼを過剰発現している。がんにおける上方制御及びプロテアーゼの役割は、Masonら、Trends in Cell Biology 21,228−237(2011)に記載されている。
ある実施形態において、修飾された活性部分のクラスは、それらの標的に非可逆的に結合する部分である;すなわち、複合体から遊離した後、活性部分は生化学的標的に共有結合する。一度結合したら、活性部分は、細胞外に拡散又は輸送されることはない。不可逆性結合の場合において、標的指向化が起こるためには、標的に対して小分子が結合する速度、Krev1が、小分子流出の速度、ksm-1に対して、有意であるべきである。小分子結合に対して流出の速度が高いと、血漿と細胞内区画との間で小分子の平衡が確立され、細胞外送達に対する細胞内送達の優位性が失われる。
他の実施形態において、修飾された活性部分のクラスは、それらの標的に可逆的に結合する部分である。可逆性結合の場合において、標的指向化が起こるためには、標的に対する小分子結合の平衡定数、K=krev1/krev-1は大きくあるべきであり、かつ「会合速度(on−rate)」、krev1は、小分子流出の速度、ksm-1に対して高くあるべきである。小分子結合の速度に対して流出の速度が高いと、血漿と細胞内区画との間で、小分子の平衡が確立され、細胞外送達に対する細胞内送達の優位性が失われる。このような関係を、模式的に以下に示す。式中:[PC]=ポリマー複合体の濃度であり;[SM]=遊離した小分子の濃度であり;血漿=血漿濃度であり;細胞内(icell)=細胞内の濃度であり;細胞内(icell)−標的=細胞内の標的に可逆的に結合した小分子であり;及び不活性=小分子の不活性な代謝産物である。ある実施形態において、krev-1=0である場合、その部分は、非可逆的に標的に結合する。
他の実施形態において、修飾された活性部分のクラスは、非常に高い平衡定数、かつ流出に対する高い「会合速度(on−rate)」を有する部分である。他の実施形態において、修飾された活性部分のクラスは、流出に対して高い速度で、細胞内代謝を経る部分である。
ある実施形態において、活性部分に対する修飾は、切断の際に、リンカーの断片が活性部分に付着したまま残るような構造を有するリンカーを使用することにより達成される。その断片は、分子量、疎水性、極性表面積、又は活性部分の電荷のいずれかを変化させ、それにより、未修飾の活性部分と比較して標的細胞からの流出が低減された、修飾活性部分を生成し得る。例えば、MetAP2抑制性の活性部分を、本明細書に記載のリンカーを介してカップリングすることにより、リンカーの切断時に、リンカーの断片が結合した活性部分(修飾活性部分)を生成する複合体が得られる。本明細書に記載の修飾活性部分は、未修飾の活性部分と比較して、細胞からの流出が低減され得、その結果、親小分子に対してより優れた有効性、及び親小分子に対してより優れた有効性、及びより優れた薬物動態プロファイルを有する、修飾活性部分をもたらすことができる。
本発明は、以下:
(式中、各出現において独立して、R4は水素又はC1−C6アルキルであり;R5は水素又はC1−C6アルキルであり;R6はC2−C6ヒドロキシアルキルであり;Zは−NH−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−L又は−NH−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−Q−X−Y−C(O)−Wであり;AA1は、グリシン、アラニン、又はH2N(CH2)mCO2Hであり、mは2、3、4又は5であり;AA2は、結合、又はアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、若しくはチロシンであり;AA3は、結合、又はアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、若しくはチロシンであり;AA4は、結合、又はアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、若しくはチロシンであり;AA5は、結合、又はグリシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、若しくはアスパラギンであり;AA6は、結合、又はアラニン、アスパラギン、シトルリン、グルタミン、グリシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、若しくはH2N(CH2)mCO2Hであり、mは、2、3、4又は5であり;Lは、−OH、−O−スクシンイミド、−O−スルホスクシンイミド、アルコキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アロイルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、−NH2、−NH(C2−C6ヒドロキシアルキル)、ハロゲン化物又はパーフルオロアルキルオキシであり;QはNR、O、又はSであり;XはM−(C(R)2)p−M−J−M−(C(R)2)p−M−Vであり;Mは結合、又はC(O)であり;Jは、結合、又は((CH2)qQ)r、C5−C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR、O、若しくはSであり;YはNR、O、又はSであり;Rは水素又はアルキルであり;Vは結合又は:
であり;R9は、アルキル、アリール、アラルキル、若しくは結合であるか;又はR9はYと一緒になって複素環を形成し;R10はアミド又は結合であり;R11は水素又はアルキルであり;WはMetAP2阻害剤部分又はアルキルであり;xは1〜約450の範囲であり;yは1〜約30の範囲であり;nは1〜約50の範囲であり;pは0〜20であり;qは2又は3であり;及びrは1、2、3、4、5、又は6である)
の構造を有するリンカーを有する複合体を提供する。
ある実施形態において、R4はC1−C6アルキルである。ある実施形態において、R4はメチルである。ある実施形態において、R5はC1−C6アルキルである。ある実施形態において、R5はメチルである。ある実施形態において、R6は2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル又は3−ヒドロキシプロピルである。ある実施形態において、R6は2−ヒドロキシプロピルである。
ある実施形態において、化合物は、約60kDa未満の分子量を有する。他の実施形態において、分子量は約45kDa未満である。他の実施形態において、分子量は約35kDa未満である。
ある実施形態において、xのyに対する比は、約30:1〜約3:1の範囲である。他の実施形態において、xのyに対する比は、約19:2〜約7:2の範囲である。ある実施形態において、xのyに対する比は、約9:1〜約4:1の範囲である。ある実施形態において、xのyに対する比は、約11:1である。ある実施形態において、xのyに対する比は、約9:1である。ある実施形態において、xのyに対する比は、約4:1である。
ある実施形態において、Zは−水素−AAi−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−Lである。ある実施形態において、Lはメトキシ、エトキシ、ペンタフルオロフェニルオキシ、フェニルオキシ、アセトキシ、フッ化物、塩化物、メトキシカルボニルオキシ;エトキシカルボニルオキシ、フェニルオキシカルボニルオキシ、4−ニトロフェニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、又はトリフルオロエトキシである。ある実施形態において、Lは4−ニトロフェニルオキシである。
ある実施形態において、Zは−水素−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−Q−X−Y−C(O)−Wである。ある実施形態において、AA1はグリシンである。ある実施形態において、AA2はグリシンである。ある実施形態において、AA3はグリシンである。ある実施形態において、AA4はグリシン又はフェニルアラニンである。ある実施形態において、AA5はロイシン、フェニルアラニン、バリン又はチロシンである。ある実施形態において、AA6はアスパラギン、シトルリン、グルタミン、グリシン、ロイシン、メチオニン、スレオニン又はチロシンである。ある実施形態において、AA5−AA6はLeu−Cit、Leu−Gin、Leu−Gly、Leu−Leu、Leu−Met、Leu−Thr、Phe−Cit、Phe−Gln、Phe−Leu、Phe−Met、Phe−Thr、Val−Asn、Val−Cit、Val−Gln、Val−Leu、Val−Met、Val−Thr、Tyr−Cit、Tyr−Leu、又はTyr−Metである。ある実施形態において、AA1、AA3及びAA5は、グリシン、バリン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、又はアスパラギンである。ある実施形態において、AA2、AA4及びAA6は、グリシン、アスパラギン、シトルリン、グルタミン、グリシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン又はチロシンである。ある実施形態において、AA2は結合であり;及びAA3は結合である。ある実施形態において、AA1はグリシンであり;AA4はフェニルアラニンであり;AA5はロイシンであり;及びAA6はグリシンである。
ある実施形態において、Wは:
であり、
式中、R2は−OH又はメトキシであり;及びR3は水素、−OH又はメトキシである。
ある実施形態において、Wは:
である。
ある実施形態において、Wは:
である。
ある実施形態において、QはNRである。他の実施形態において、QはSである。
ある実施形態において、JはNRである。他の実施形態において、Jは((CH2)qQ)rである。他の実施形態において、JはC5−C8シクロアルキルである。ある実施形態において、Jはアリールである。
ある実施形態において、YはNRである。他の実施形態において、YはSである。
ある実施形態において、−Q−X−Yは:
であり;
Vは:
、又は結合であり;R12は水素又はMeであり;R12はR14と一緒になってピペリジン環を形成し;R11は水素又はMeであり;及びR13はR12と一緒になってピペリジン環を形成する。
ある実施形態において、−Q−X−Y−は:
である。
ある実施形態において、−Q−X−Y−は:
である。
ある実施形態において、−Q−X−Y−は:.
である。
ある実施形態において、−Q−X−Y−は:
である。ある実施形態において、−Q−X−Y−は:
である。
ある実施形態において、R4及びR5はメチルであり;R6は2−ヒドロキシプロピルであり;Zは−NH−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−Q−X−Y−C(O)−Wであり;AA1はグリシンであり;AA2は結合であり;AA3は結合であり;AA4はフェニルアラニンであり;AA5はロイシンであり;AA6はグリシンであり;−Q−X−Y−は:
であり、及びWは:
である。
ある実施形態において、R4及びR5はメチルであり;R6は2−ヒドロキシプロピルであり;Zは−NH−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−Q−X−Y−C(O)−Wであり;AA1はグリシンであり;AA2は結合であり;AA3は結合であり;AA4はフェニルアラニン、AA5はロイシン、AA6はグリシンであり;−Q−X−Y−は:
であり、及びWは:
である。
ある実施形態において、R4及びR5はメチルであり;R6は2−ヒドロキシプロピルであり;Zは−NH−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−Q−X−Y−C(O)−Wであり;AA1はグリシンであり;AA2は結合であり;AA3は結合であり;AA4はフェニルアラニンであり;AA5はロイシンであり;AA6はグリシンであり;−Q−X−Y−は:
であり;及びWは:
である。
ある実施形態において、−Q−X−Y−は、以下のスキーム:
に示す通り、カルバメート誘導体の形態のMetAP2阻害剤を放出する自己犠牲型(self−immolative)リンカーである。
本発明の別の態様は、Z−Q−X−Y−C(O)−Wの構造を有するリンカーを有する複合体を提供し、式中、各出現において独立して、Zは、H2N−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−又は水素であり;AA2は、結合、又はアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、若しくはチロシンであり;AA3は、結合、又はアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、若しくはチロシンであり;AA4は、結合、又はアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファン、若しくはチロシンであり;AA5は、結合、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、若しくは であり;AA6は、アラニン、アスパラギン、シトルリン、グルタミン、グリシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン又はH2N(CH2)mCO2Hであり、mは2、3、4又は5であり、QはNR、O、又はSであり;XはM−(C(R)2)P−M−J−M−(C(R)2)P−M−Vであり;Mは結合、又はC(O)であり;Jは結合、又は((CH2)qQ)r、C5−C8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、NR、O、若しくはSであり;YはNR、O、又はSであり;Rは水素又はアルキルであり;Vは結合又は:
であり;R9は、アルキル、アリール、アラルキル、又は結合であるか;又はR9はYと一緒になって複素環を形成し;R10はアミド又は結合であり、R11は水素又はアルキルであり、WはMetAP2阻害剤部分であり、pは0〜20であり;qは2又は3であり;及びrは1、2、3、4、5、又は6である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−である。ある実施形態において、AA5はアラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、又はチロシンであり、及びAA6はグリシンである。ある実施形態において、AA5はロイシンであり、AA6はグリシンである。ある実施形態において、AA5はバリンであり、AA6はグリシンである。ある実施形態において、AA5はフェニルアラニンであり、AA6はグリシンである。ある実施形態において、AA5はグリシンであり、AA6はグリシンである。ある実施形態において、AA5はバリンではない。
他の実施形態において、ZはΗ2Ν−ΑΑ3−ΑΑ4−ΑΑ5−ΑΑ6−C(O)−である。ある実施形態において、AA5はアラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、又はチロシンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンである。ある実施形態において、AA5はロイシンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンである。ある実施形態において、AA5はバリンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンである。ある実施形態において、AA5はフェニルアラニンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンである。ある実施形態において、AA3はグリシン、AA4はフェニルアラニン、AA5はロイシンであり、及びAA6はグリシンである。ある実施形態において、AA3、AA4、AA5及びAA6の各々はグリシンである。ある実施形態において、AA5はバリンではない。
ある実施形態において、Zは水素である。他の実施形態において、ZはH2N−AA6−C(O)−である。ある実施形態において、AA6はグリシンである。
ある実施形態において、QはNRである。ある実施形態において、Mは結合である。ある実施形態において、Jは結合である。ある実施形態において、YはNRである。
ある実施形態において、Wは:
であり;
式中、R2は−OH又はメトキシであり;及びR3は水素、−OH又はメトキシである。
ある実施形態において、Wは:
である。
ある実施形態において、Wは:
である。
ある実施形態において、−Q−X−Y−は:
であり;
Vは:
又は結合であり;R12は水素又はMeであり;R12はR14と一緒になってピペリジン環を形成し;及びR11はR12と一緒になってピペリジン環を形成する。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はロイシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり、AA5はバリンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、Zは、H2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はフェニルアラニンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はグリシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はロイシンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はバリンであり、及びAA3、AA4、AA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はフェニルアラニンであり、及びAA3、AA4、AA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−A−C(O)−であり;AA3はグリシンであり、AA4はフェニルアラニンであり、AA5はロイシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA3、AA4、AA5及びAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA6−C(O)−であり;AA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;及びWは
である。
ある実施形態において、Zは水素であり;Q−X−Yは:
であり;及びWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はロイシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はバリンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はフェニルアラニンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はグリシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はロイシンであり、及びAA3、AA4又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はバリンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はフェニルアラニンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA−AA5−AA6−C(O)−であり;AA3はグリシン、AA4はフェニルアラニン、AA5はロイシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA3、AA4、AA5及びAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA6−C(O)−であり;AA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;及びWは:
である。
ある実施形態において、Zは水素であり;Q−X−Yは:
であり;及びWは:
である。
ある実施形態において、Zは、H2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はロイシンであり、AA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;及びWは:
である。
ある実施形態において、Zは、H2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はバリンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はフェニルアラニンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はグリシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はロイシンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、Zは、H2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はバリンであり、及びAA3、AA4、又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA5はフェニルアラニンであり、及びAA3、AA4又はAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、ZはH2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA3はグリシンであり、AA4はフェニルアラニンであり、AA5はロイシンであり、及びAA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、Zは、H2N−AA3−AA4−AA5−AA6−C(O)−であり;AA3、AA4、AA5及びAA6の各々はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;並びにWは:
である。
ある実施形態において、Zは、H2N−AA6−C(O)−であり;AA6はグリシンであり;Q−X−Yは:
であり;及びWは:
である。
ある実施形態において、Zは水素であり;Q−X−Yは:
であり;及びWは:
である。
本発明の複合体において使用するために修飾され得る他の活性部分には、以下の構造が含まれる:
ある実施形態において、活性部分は、抗肥満化合物である。他の実施形態において、活性部分は、メチオニンアミノペプチダーゼ−2(MetAP2)を阻害する分子、例えばフマギリン、フマギロール、又はその類似体、誘導体、塩若しくはエステル等である。さらに、好ましいMetAP2阻害剤は、Craigらへの米国特許第6,242,494号明細書、Hongらへの同第6,063,812号明細書、Craigらへの同第6,887,863号明細書、BaMaungらへの同第7,030,262号明細書、Comessらへの同第7,491,718号明細書に記載されており、そのそれぞれの全体が、参照により援用される。追加の好ましいMetAP2阻害剤は、Wangらの“Correlation of tumor growth suppression and methionine aminopeptidase−2 activity blockade using an orally active inhibitor,”PNAS 105(6)1838−1843(2008);Leeらの“Design,Synthesis,and Antiangiogenic Effects of a Series of Potent Novel Fumagillin Analogues,”Chem.Pharm.Bull.55(7)1024−1029(2007);Jeongらの“Total synthesis and antiangiogenic activity of cyclopentane analogues of fumagillol,”Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15,3580−3583(2005);Arico−Muendelらの“Carbamate Analogues of Fumagillin as Potent,Targeted Inhibitors of Methionine Aminopeptidase−2,”J.Med.Chem.52,8047−8056(2009);及びHeinrichらへの国際公開第2010/003475号パンフレットに記載されている。
フマギリンは、抗菌薬及び抗原虫薬として使用されている小分子である。その生理化学的特性及び製造方法は公知である(米国特許第2,803,586号明細書及びTurner、J.R.らの、The Stereochemistry of Fumagillin,Proc.Natl.Acad.Sci.48,733−735(1962)を参照のこと)。発酵生成物であるフマギリンを加水分解して、アルコールフマギロールを得、それを、カルバモイルフマギロール、MW325を含む種々の誘導体に変換してもよい。カルバモイルフマギロール及びいくつかの小分子誘導体の合成及び調製は、米国特許第5,166,172号明細書に記載されている。
フマギリン及び関連化合物は、MetAP2の阻害を介して、それらの生物学的効果を発揮すると信じられている。この酵素は、新生期の細胞タンパク質からN末端メチオニンを除去する(Tucker、L.Aらの“Ectopic Expression of Methionine Aminopeptidase−2 Causes Cell Transformation and Stimulates Proliferation”,Oncogene 27,3967(2008)を参照のこと)。
カルバモイルフマギロール及び誘導体並びに他のMetAP2阻害剤は、前臨床及び臨床研究において治療効果を示している。これらの化合物は、米国特許第5,166,172号明細書に記載される通り、細胞増殖及び血管新生を阻害する。フマギリン類似体又は誘導体、例えばCKD−732及びPI−2458等は、Bernierらの“Fumagillin class inhibitors of methionine aminopeptidase−2”Drugs of the Future 30(5):497−508,2005に記載される通り、種々の系において、良く研究されている。
フマギリン及びその類似体の抗肥満作用は公知である。Rupnickらの“Adipose tissue mass can be regulated through the vasculature”PNAS 99,10730〜10735,2002は、1日量、2.5mg/kg〜10mg/kgの範囲のTNP−470による、ob/obマウスにおける体重減少を記載している。Brakenhielmは、1日おきに15又は20mg/kgのTNP−470の用量での肥満症の予防を記載している:“The Angiogenesis Inhibitor,TNP−470,Prevents Diet−Induced and Genetic Obesity in Mice”Circulation Research 94:1579−1588、2004。Kimらは、“Assessment of the anti−obesity effects of the TNP−470 analog,CKD−732”J Molecular Endocrinology 38,455−465,2007において、5mg/kg/日の用量での、C57BL/6Jマウス及びSDラットにおける体重減少を記載している。Lijnenらの“Fumagillin reduces adipose tissue formation in murine models of nutritionally induced obesity”Obesity 12,2241−2246,2010は、毎日1mg/kgのフマギリンの経口送達が、C57BL/6マウスにおいて体重減少をもたらすことを記載している。
これらの誘導体のうちの1つである、クロロアセチルカルバモイルフマギロール(TNP−470)は、広く研究されている。(H.Mann−Steinbergら、“TNP−470:The Resurrection of the First Synthetic Angiogenesis Inhibitor”,Chapter 35 in Folkman and Figg,Angiogenesis:An Integrative Approach from Science to Medicine,Springer NY(2008)を参照のこと)。TNP−470は、肺がん、子宮頸がん、卵巣がん、乳がん及び結腸がんを含む多くのがんに対する活性を示している。用量制限性の神経毒性ゆえに、TNP−470は、複数の投薬レジメンを使用して試験されているが、その毒性を制限するためのこれらの試みは、成功していない。このようにTNP−470は、ヒトにおける使用には毒性が強すぎることが判っている。TNP−470は、短い半減期を有し、かつ治療的な使用のためには、長期に渡る静脈内投与を必要とする。TNP−470の代謝産物である、カルバモイルフマギロールは、人において12分間の半減期を有する(Herbstらの“Safety and Pharmacokinetic Effects of TNP−470,an Angiogenesis Inhibitor,Combined with Paclitaxel in Patients with Solid Tumors:Evidence for Activity in Non−Small−Cell Lung Cancer”,Journal of Clinical Oncology 20(22)4440−4447(2002)を参照のこと)。さらに、フマギリン及びその誘導体は疎水性であり、製剤化が難しい。
フマギリン誘導体の公知の有用性にもかかわらず、これらの化合物の低い水溶性、短い半減期の値、及び神経毒性の副作用の問題を克服することができないために、治療における使用は成功していない。先に観察された用量制限性の神経毒性に基づいて、パクリタキセルとの組み合わせにおけるTNP−470のMTDは、60mg/m2の週3回投与と判断されている:Herbstらの“Safety and pharmacokinetic effects of TNP−470,an angiogenesis inhibitor,combined with paclitaxel in patients with solid tumors:evidence for activity in non−small−cell lung Cancer”Journal of Clinical Oncology 20,4440−4447,2002。同様に、Shinらの、“A Phase 1 pharmacokinetic and pharmacodynamics study of CKD−732,an antiangiogenic agent,in patients with refractory solid cancer“Investigational New Drugs 28,650−658,2010”は、CKD−732のMTDは、錯乱及び不眠症ゆえに、4日ごとのスケジュールで投与される、15mg/m2/日であることを報告している。したがって、本発明の化合物は、現在知られるフマギリン誘導体に比べ、より強力であり、低減された毒性(より低い神経毒性)を示し、改善された水溶性を有し、より安定であり、及び/又はより長い半減期(血清半減期)を有する。
本明細書で使用される「低減された毒性」と言う表現は、当業者が理解する、その通常の意味を有する。単なる一例に過ぎず、決してこの用語の意味を限定するものではないが、フマギリン類似体複合体の投与は、フマギリン類似体の単独投与と比べて、マウスを用いたオープン・フィールド試験において、より少ない副作用をもたらす。
「改善された水溶性」と言う表現は、当業者が理解する、その通常の意味を有する。単なる一例に過ぎず、決してこの用語の意味を限定するものではないが、該用語に関する以下の記載は有益である:フマギリン類似体は、複合体中に共有結合によって組み込まれることにより、未結合のフマギリン類似体が単独で水に溶解する量よりも、より多く水中に溶解する。
「より長い半減期」と言う表現は、当業者が理解する、その通常の意味を有する。単なる一例に過ぎず、決してこの用語の意味を限定するものではないが、該用語に関する以下の記載は有益である:in vivo又はin vitroのいずれかにおけるフマギリン類似体単独の半減期と比較した、in vivo又はin vitroのいずれかにおいてフマギリン複合体を非活性化するのに必要とされる時間の長さの、あらゆる明らかな増加。
いかなる理論にも拘束されないが、細胞外シグナル制御キナーゼ1及び2(ERK1/2)の活性を抑制するMetAP2の非酵素的作用は、MetAP2による、真核生物翻訳開始因子、elFの結合と同様に、重要であり得る。潜在的なERK関連のプロセスを反映するMetAP2阻害に対する細胞応答は、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)活性の抑制を含むことがあり、脂質及びコレステロール生合成の低減に至り得る。興味深いことに、長期間(約9ケ月間)のフマギリン曝露後の、肝臓及び脂肪組織遺伝子の発現パターンにおける変化は、MetAP2の阻害が、炎症に関与する因子の相対的存在量を変化させ得ることを示唆しており、ERK依存性細胞プロセスの低減と一貫している。身体によるエネルギー源としての蓄積脂肪の動員及び遊離脂肪酸の異化反応に至る、MetAP2阻害の推定上の機序は、先の研究において観察された血漿β−ヒドロキシブチレート、アディポネクチン、レプチン、及びFGF21における変化により、裏付けされている。ケトン体(β−ヒドロキシブチレート)の出現を伴う、主要な異化ホルモンであるアディポネクチン及びFGF21レベルの上昇は、本発明の化合物の、複合若しくは修飾フマギリン、フマギロール、又はその類似体、誘導体、塩若しくはエステルによるMetAP2の阻害が、エネルギー消費、脂肪の活用、及び脂質排出を促進することを示唆する。先の研究及び本明細書において提供される研究において観察された、レプチンの減少はまた、総脂肪組織の減少及び負のエネルギーバランスとも一貫している。本発明の化合物の、複合若しくは修飾フマギリン、フマギロール、又はその類似体、誘導体、塩若しくはエステルが、MetAP2と共有結合を形成し、それによって、新たに産生されたMetAP2のプールが標的組織(例えば、肝臓及び脂肪組織)において生成されるまで、既存の酵素を非可逆的に阻害及び機能停止させるという可能性もある。
ある実施形態において、本発明の化合物の、複合若しくは修飾フマギリン、フマギロール、又はその類似体、誘導体、塩若しくはエステルは、例えば、表1に示す、以下の式の構造を有する:
*式中、ポリマーは以下:
の構造を有し、及び好ましくは以下:
の構造を有する。
本発明の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,67th Ed.,1986−87,inside coverに従って、特定される。
「アルキル」という用語は、特定された数の炭素原子、又は特定されていない場合は、最大30個の炭素原子を有する、完全飽和の分岐又は非分岐炭素鎖ラジカルを指す。例えば、「低級アルキル」とは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチル、並びにこれらのアルキル位置異性体であるものを指す。10〜30個の炭素原子を有するアルキルには、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘクサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル及びテトラコシルが含まれる。ある実施形態において、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その主鎖に30個以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖ではC1−C30、分岐鎖ではC3−C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。同様にあるシクロアルキルは、それらの環構造に3〜10個の炭素原子を有し、及び該環構造に、5、6、又は7個の炭素を有してもよい。
炭素数が別途特定されない限り、本明細書で使用される「低級アルキル」とは、上で定義されるアルキル基であるが、その主鎖構造に1〜10個の炭素原子、又は1〜6個の炭素原子を有するもの、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチル等を意味する。同様に「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、類似した鎖長を有する。本明細書全体に渡って、あるアルキル基は低級アルキルである。ある実施形態において、本明細書においてアルキルと称される置換基は低級アルキルである。
本明細書で使用される「炭素環」という用語は、環の各原子が炭素である、芳香環又は非芳香環を指す。
本明細書で使用される「アリール」という用語には、0〜4個のヘテロ原子を含み得る、5、6及び7員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、及び同種のものが含まれる。環構造にヘテロ原子を有するアリール基は、「アリール複素環」又は「複素環式芳香族」とも呼ばれ得る。芳香環は、1つ又は複数の環位置において、上述のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族若しくは複素環式芳香族部分、−CF3、−CN、又は同種のもので置換され得る。「アリール」という用語はまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共有されている(これらの環は「縮合環」である)2つ以上の環を有する多環式環構造をも含み、ここで少なくとも1つの環は芳香族であり、例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリルであり得る。
「アルケニル」は、特定の数の炭素原子、又は炭素原子数の制限が特定されていない場合は、最大26個の炭素原子を有し;及びラジカルに1つ以上の二重結合を有する、あらゆる分岐又は非分岐不飽和炭素鎖ラジカルを指す。6〜26個の炭素原子を有するアルケニルは、種々の異性体型の、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル(heneicosoenyl)、ドコセニル、トリコセニル、及びテトラコセニルにより例示され、ここで不飽和結合はラジカルのいかなる場所に位置していてもよく、かつ二重結合については、(Z)構造又は(E)構造のいずれかを有し得る。
「アルキニル」という用語は、アルケニルの範囲のヒドロカルビルラジカルであるが、1つ又は複数の三重結合を有するものを指す。
本明細書で使用される「アルコキシル」又は「アルコキシ」という用語は、以下に定義する通り、酸素ラジカルが結合した、アルキル基を指す。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ、及び同種のものが含まれる。「エーテル」は、酸素により共有結合的に連結された、2つの炭化水素である。したがって、アルキルをエーテルにする、アルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2)m−R1(m及びR1は以下に記載する)のうちの1つで表され得るような、アルコキシルであるか、又はそれに似ている。
「ヘテロシクリル」又は「複素環基」という用語は、環構造が1〜4個のヘテロ原子を含む、3〜10員の環構造、より好ましくは3〜7員の環を指す。複素環は、多重環(polycycle)であり得る。ヘテロシクリル基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノン等のラクタム、スルタム、スルトン、及び同種のものが挙げられる。複素環は、1つ又は複数の位置において、上述の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルファミル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−CF3、−CN、又は同種のもの等で置換され得る。
「アルキルチオ」という用語は、上で定義されるアルキル基に硫黄ラジカルが結合したものを指す。ある実施形態において、「アルキルチオ」部分は、−(S)−アルキル、−(S)−アルケニル、−(S)−アルキニル、及び−(S)−(CH2)m−R1(m及びR1は以下に定義する)のうちの1つにより表される。代表的なアルキルチオ基にはメチルチオ、エチルチオ、及び同種のものが含まれる。
本明細書において使用される場合、「ニトロ」という用語は−N02を意味し;「ハロゲン」という用語はF、CI、Br又はIを指し;「スルフヒドリル」という用語は−SHを意味し;「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味し;及び「スルホニル」という用語は−SO2−を意味する。
「アミン」及び「アミノ」という用語は、当分野で認識されており、未置換及び置換アミン類の両方、例えば、一般式:
により表され得る部分を指し、
式中、R3、R5及びR6はそれぞれ独立して水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R1を表すか、又はR3及びR5は、それらが結合していているN原子と一緒になって、環構造中に4〜8個の原子を有する複素環を形成し;R1は、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル又はポリシクリルを表し;並びにmは0又は1〜8の範囲の整数である。ある実施形態において、R3又はR5のうちの1つだけがカルボニルであってもよく、例えば、R3、R5及び窒素は、一緒になってイミドを形成しない。ある実施形態において、R3及びR5(及び所望によりR6)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、又は−(CH2)m−R1を表す。したがって、本明細書で使用される「アルキルアミン」という用語は、上で定義されるアミン基に、置換又は非置換のアルキルが結合したもの、すなわち、少なくとも1つのR3及びR5がアルキル基であるものを意味する。ある実施形態において、アミノ基又はアルキルアミンは塩基性であり、すなわち、pKa≧7.00を満たすpKaを有する。これらの官能基のプロトン化形態は、7.00より高い水に対するpKaを有する。
「カルボニル」(C(O))という用語は、当分野で認識されており、かつ一般式:
で表され得るような部分を含み、
式中、Xは結合、又は酸素若しくは硫黄を表し、及びR7は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R1又は薬剤的に許容される塩を表し、R8は、水素、アルキル、アルケニル又は−(CH2)m−R1を表す(m及びR1は上述の定義の通りである)。Xが酸素であり、R7又はR8が水素ではない場合、上記式は、「エステル」を表す。Xが酸素であり、R7が上述の定義の通りである場合、上記部分は、本明細書においてカルボキシル基と呼ばれ、特にR7が水素である場合、上記式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、R8が水素である場合、上記式は「ホルメート」を表す。概して、上述の式の酸素原子が硫黄で置換されている場合、上記式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、R7又はR8が水素ではない場合、上記式は「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、R7が水素である場合、上記式は「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄であり、R8が水素である場合、上記式は「チオホルメート」基を表す。一方、Xが結合であり、R7が水素ではない場合、上述の式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、R7が水素である場合、上述の式は「アルデヒド」基を表す。
本明細書において使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことを意図する。広範な態様において、許容される置換基には、有機化合物の、非環式及び環状の、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。例となる置換基としては、例えば、上述されるものなどが挙げられる。許容される置換基は、1つ又は複数であり得、及び適切な有機化合物において、同一であっても異なっていてもよい。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、及び/又はヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載されるあらゆる有機化合物の許容される置換基を有し得る。本発明は、いかなる様式においても、有機化合物の許容される置換基により限定されることを意図していない。「置換」又は「で置換された」という表現には、このような置換が、置換された原子及び置換基の許容される原子価に基づいており、かつ置換が安定した化合物、例えば、転位、環化、脱離等による変換を自発的に経ることの無い化合物をもたらすという、暗黙の条件を含むことが理解される。
「スルファモイル」という用語は、当分野で認識されており、かつ、一般式:
で表され得る部分を含み、
式中、R3及びR5は、上述の定義の通りである。
「サルフェート」という用語は当分野で認識されており、かつ、一般式:
で表され得る部分を含み、
式中、R7は、上述の定義の通りである。
「スルファミド」という用語は当分野で認識されており、かつ一般式:
で表され得る部分を含み、
式中、R2及びR4は、上述の定義の通りである。
「スルホネート」という用語は、当分野で認識されており、かつ一般式:
で表され得る部分を含み、
式中、R7は、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである。
本明細書で使用される「スルホキシド」又は「スルフィニル」という用語は、一般式:
で表され得る部分を指し、
式中、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、又はアリールからなる群から選択される。
アルケニル及びアルキニル基に対する類似の置換により、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニル又はアルキニルを形成することが出来る。
本明細書において使用される場合、いずれかの構造において1回以上記載される場合、例えば、アルキル、m、n等の各表現の定義は、同一の構造におけるその他の箇所での定義とは、独立していることが意図される。
「アミノ酸」という用語は、天然又は合成であるかどうかに関わらず、アミノ官能基及び酸官能基の両方を含む、全ての化合物を包含することが意図され、アミノ酸類似体及び誘導体も含まれる。ある実施形態において、本発明において意図されるアミノ酸は、タンパク質に存在する天然型アミノ酸、又はアミノ基及びカルボキシル基を含む、このようなアミノ酸の天然型同化産物若しくは異化産物である。天然型アミノ酸は、本明細書全体を通して、以下の表に従って、アミノ酸の慣用名に対応する従来の3文字及び/又は1文字の略語により特定されている。略語は、ペプチドの分野において許容されており、かつ生化学命名法に関するIUPAC−IUB委員会により推奨されている。
「アミノ酸残基」という用語は、アミノ酸を意味する。概して、天然型アミノ酸を指すために、本明細書で使用される略語は、生化学的用語に関するIUPAC−IUB委員会の推奨に基づいている(Biochemistry(1972)11:1726−1732)。例えば、Met、He、Leu、Ala及びGlyは、それぞれ、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニン及びグリシンの「残基」を表す。残基とは、対応するα−アミノ酸から、カルボキシル基のOH部分及びα−アミノ基の水素部分を除去することにより得られるラジカルを意味する。
「アミノ酸側鎖」という用語は、K.D.Koppleの“Peptides and Amino Acids”,W.A.Benjamin Inc.,New York and Amsterdam,1966,pages 2 and 33に定義される通り、主鎖を除いたアミノ酸残基の部分であり;一般的なアミノ酸のこのような側鎖の例は、−CH2CH2SCH3(メチオニンの側鎖)、−CH2(CH3)−CH2CH3(イソロイシンの側鎖)、−CH2CH(CH3)2(ロイシンの側鎖)又はH−(グリシンの側鎖)である。これらの側鎖は、主鎖Cα炭素から垂下している。
本明細書で使用される「ペプチド」という用語は、ペプチド結合又は修飾されたペプチド結合により連結されたアミノ酸残基の配列を指す。「ペプチド」という用語は、ペプチド類似体、ペプチド誘導体、ペプチド模倣体及びペプチド変異体を包含することを意図する。「ペプチド」という用語は、あらゆる長さのペプチドを含むと理解される。本明細書に記載されるペプチド配列は、概して許容される慣習に従って表記され、N末端アミノ酸は左側に、C−末端アミノ酸は右側に記載される(例えば、H2N−AA1−AA2−AA3−AA4−AA5−AA6−CO2H)。
本発明のある化合物は、特定の幾何学異性型又は立体異性型として存在し得る。本発明は、本発明の範囲内に含まれる、シス及びトランス異性体、R−及びS−エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、並びにそれらの他の混合物を含む、すべてのそのような化合物を意図する。付加的な不斉炭素原子が、アルキル基等の置換基中に存在していてもよい。全てのそのような異性体、及びそれらの混合物が、本発明に含まれることが意図される。特定の異性体のいかなる提示も、単なる例示に過ぎない(例えば、トランス異性体の例示は、シス異性体をも包含する)。
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが所望の場合、非対称合成又はキラル補助基による誘導により調製することができ、この場合、得られたジアステレオマーの混合物を分離し、補助基を切断することにより、純粋な所望のエナンチオマーを得ることができる。あるいは、分子が、アミノ基等の塩基性の官能基、又はカルボキシル基等の酸性の官能基を含む場合、適切な光学的に活性な酸又は塩基によりジアステレオマーの塩を形成し、その後、そのようにして形成されたジアステレオマーを、当技術分野で公知の分別再結晶又はクロマトグラフ的手段により分割し、その後純粋なエナンチオマーを回収する。
本発明の化合物の合成
本発明の合成方法では、広範な官能基が許容され;したがって、種々の置換された出発材料を使用することができる。該方法においては、概して、全体的なプロセスの最後又は最後に近い時点で、所望の最終化合物が提供されるが、ある場合においては、該化合物を、その薬剤的に許容される塩、エステル又はプロドラッグにさらに変換することが望ましい場合もある。
本発明の化合物は、当業者に公知であるか又は本明細書の教示に照らして当業者に明らかとなるであろう、標準の合成方法及び手順を使用し、市販の出発材料、文献で公知の化合物、又はすぐに使用できるよう調製された中間体を用いて、種々の様式にて調製することができる。標準の合成方法、並びに有機分子の調製及び官能基の形質転換及び操作の手順は、当該分野の関連科学文献又は標準的な教科書から得ることができる。いずれか1つ又はいくつかの出典に限定されることはないが、参照により本明細書に援用される、古典的な文献、例えば、Smith,M.B.,March,J.,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,5th edition,John Wiley & Sons:New York,2001;及びGreene,T.W.,Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley & Sons:New York,1999は、当業者に公知の、有用かつ認識された、有機合成の参考文献である。合成方法に関する以下の記載は、本発明の化合物の調製のための基本的手順を例示するためのものであり、限定するためのものではない。
本発明の化合物は、当業者に知られる種々の方法により、便利に調製することができる。本発明の化合物は、本明細書において提供されるスキーム及び実施例に従って、市販の出発材料、又は文献に記載される手順を使用して調製し得る出発材料から、調製することができる。本発明の化合物、及びそれらの合成は、国際公開第2011/150088号パンフレット、及び同第2011/150022号パンフレットに、さらに記載されている。これらの刊行物の各々は、参照により、全ての目的のために、その全体が援用される。
医薬組成物
本発明はまた、本発明の化合物、又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、及び多形体、並びに薬剤的に許容される担体又は賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
本明細書において使用される場合「薬剤的に許容される賦形剤」又は「薬剤的に許容される担体」は、医薬品投与に適合する、あらゆる及びすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬及び抗真菌薬、等張化剤、並びに吸収遅延剤、及び同種のものを含むことを意図する。好適な担体は、当分野における標準的な参考文献である、Remington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。このような担体又は希釈剤の好ましい例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。
薬剤的に許容される担体には、ラクトース、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び同種のもの等、固体担体が含まれる。好ましい液体担体としては、シロップ、ビーナッツ油、オリーブ油、水、及び同種のものが挙げられる。同様に、担体又は希釈剤は、当技術分野に公知の遅延材料、例えば、単独又はワックスを含むモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチル、又は同種のものを含み得る。当技術分野で公知のもの等の、他の充填剤、賦形剤、香味剤、及び他の添加物もまた、本発明の医薬組成物に含まれ得る。リポソーム及び不揮発性油等の非水性賦形剤もまた、使用し得る。薬剤的に活性な物質に対する、このような媒体及び剤の使用は、当技術分野で公知である。いずれかの従来の媒体又は剤が活性化合物と不適合である場合を除き、組成物におけるそれらの使用は意図される。補足の活性化合物を、組成物に組み込むこともできる。ある実施形態において、医薬組成物は、DMSOを含む。
「薬剤的に許容される塩」という用語は、化合物の、比較的非毒性の、無機及び有機酸付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終単離及び精製の間に、又は遊離塩基形態の精製された化合物を、好適な有機酸若しくは無機酸と別々に反応させ、そのようにして形成された塩を単離することにより、in situで調製することができる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩、及び同種のものが挙げられる。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩、及び同種のものが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、及び同種のものが挙げられる(例えば、Bergeら(1977)“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.66:1−19を参照のこと)。
「薬剤的に許容される」という表現は、本明細書において、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症を起こすことなく、合理的な利益/リスク比に見合う、健全な医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触する使用に好適な、実質的に非発熱性の、リガンド、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。
本明細書において使用される場合、「代謝産物」という用語は、本発明の化合物、又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、及び多形体と類似する活性をin vivoにおいて示す、本発明の化合物の代謝産物、又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、及び多形体を意味する。
本明細書において使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、例えばアミノ酸部分又は他の水溶性部分等の1つ又は複数のプロ部分(pro−moiety)に共有結合的に連結された、本発明の化合物、又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、及び多形体を意味する。本発明の化合物、又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、及び多形体は、プロ部分(pro−moiety)から、加水分解的、酸化的、及び/又は酵素的な放出機序を介して放出され得る。1つの実施形態において、本発明のプロドラッグ組成物は、水溶性の増加、安定性の改善、及び薬物動態プロファイルの改善という付加的な利益を示す。プロ部分(pro−moiety)は、所望のプロドラッグ特性を得るために、選択され得る。例えば、プロ部分(pro−moiety)、例えばR4内のホスフェートなどのアミノ酸部分又は他の水溶性部分は、溶解度、安定性、生物学的利用率、及び/又はin vivoでの送達又は取り込みに基づいて選択することができる。プロドラッグの例としては、限定されないが、本発明の化合物中の、ヒドロキシ官能基のエステル(例えば、酢酸エステル、ジアルキルアミノ酢酸エステル、ギ酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル及び安息香酸エステル誘導体)及びカルバミン酸エステル(例えば、Ν,Ν−ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えば、N−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基、及びエナミノン、並びにケトン及びアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタール、エノールエステル、及び同種のものが挙げられる:Bundegaard,H.,Design of Prodrugs,pi −92,Elesevier,New York−Oxford(1985)を参照のこと。
治療方法
本発明は、それを必要とする対象において、体重減少を誘発するか又は引き起こす方法であって、体重減少を誘発するか又は引き起こすために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。ある実施形態において、対象は体重過多又は肥満である。ある実施形態において、体重減少を誘発するか又は引き起こすことは、体重減少を増加させることである。
本発明はまた、そのリスクを有する対象において、体重増加を予防するか又は遅延させる方法であって、体重の増加を予防するか又は遅延させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。ある実施形態において、対象は、体重過多又は肥満になるリスクを有する。
本発明は、それを必要とする対象において、肥満症を治療する方法であって、肥満症を治療するか又は寛解させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明はまた、そのリスクを有する対象において、肥満症の発症を予防するか又は遅延させる方法であって、肥満症の発症を予防するか又は遅延させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明は、それを必要とする対象において、代謝症候群又は1つ若しくは複数のその構成要素を治療する方法であって、代謝症候群又は1つ若しくは複数のその構成要素を治療するか又は寛解させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明はまた、そのリスクを有する対象において、代謝症候群又は1つ若しくは複数のその構成要素の発症を予防するか又は遅延させる方法であって、代謝症候群又は1つ若しくは複数のその構成要素の発症を予防するか又は遅延させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明はまた、それを必要とする対象において、体重を減少させる方法であって、体重を減少させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。ある実施形態において、対象は体重過多又は肥満である。ある実施形態において対象は過剰な脂肪組織を減少させる必要がある。
肥満症及び体重過多であることは、対象が、除脂肪体重に対して、過剰な脂肪を有することを指す。過剰な脂肪蓄積は、脂肪組織細胞の大きさ(肥大又は脂肪症)及び数(過形成)の増加と関連している。肥満症は、遺伝的(例えばプラダー・ウィリー症候群)又は環境的要因如何に関わらず、あらゆる要因に起因し得る。肥満症は、絶対体重、体重伸長比、過剰体脂肪の程度、内臓又は皮下脂肪の分布、並びに社会的及び審美的規範の観点から、多様に測定される。体脂肪の一般的な基準は、肥満度指数(Body Mass Index)(BMI)である。BMIは、身長(メートルで表される)の二乗に対する、体重(キログラムで表される)の比率を表す。肥満度指数は、以下の式を使用して正確に算出することができる:SI単位:BMI=体重(kg)/(身長2(m2)、又は米国単位:BMI=(体重(ポンド)*703)/(身長2(インチ2)。
本明細書において「体重過多」は、それ以外は健康な成人が、25kg/m2〜29.9kg/m2のBMIを有する状態を指す。本明細書において、「肥満」又は「肥満症」は、それ以外は健康な成人が、30kg/m2以上のBMIを有する状態を指す。肥満症は、いくつかのサブカテゴリーを有する。35kg/m2以上のBMIを有する成人は、「重篤な肥満」又は「重症肥満症」と呼ばれる。40〜44.9kg/m2以上のBMIを有する成人、又は35kg/m2以上のBMIを有し、かつ少なくとも1つの肥満関連の健康上の状態を有する成人は、「病的な肥満」又は「病的な肥満症」と呼ばれる。45kg/m2以上のBMIを有する成人は「超肥満」又は「超肥満症」と呼ばれる。小児における、体重過多及び肥満の定義は、年齢及び性別による体脂肪への作用を考慮する。
異なる国々が、異なるBMIにより、肥満症及び体重過多を定義し得る。「肥満症」という用語は、全ての国における定義を包含することを意図する。例えば、アジア人においては、より低い肥満度指数(BMI)において、肥満症に付随する増加したリスクが発生する。日本を含むアジア諸国において、「肥満症」とは、体重減少を必要とするか又は体重減少により改善されるであろう、少なくとも1つの肥満誘発性又は肥満関連の併存症を有する対象が、25.0kg/m2以上のBMIを有する状態を指す。南米及び中米の人々は、欧州人又は北米人よりも、よりアジア人により近いとして分類される傾向がある。
過剰な脂肪組織が、身体の異なる部分において選択的に生じ、かつ脂肪組織の発生が、身体のいくつかの部分において、身体の他の部分におけるよりも、より危険であり得るという事実を、BMIにより説明することはできない。例えば、典型的に「リンゴ型」体型と関連付けられる「中心性肥満」は、特に、腹部脂肪及び内臓脂肪を含む腹部領域における過剰な脂肪蓄積に起因し、かつ典型的に「洋ナシ型」体型と関連付けられ、特に腰部における過剰な脂肪蓄積に起因する「末梢性肥満」よりも、より高い併存症のリスクを有する。胴囲/臀囲比(WHR)の測定を、中心性肥満の指数として使用することができる。中心性肥満を示す最小のWHRは、多様に設定されており、中心性肥満の成人は典型的に、女性の場合、約0.85以上、及び男性の場合、約0.9以上のWHRを有する。
疾患の判定は、当技術分野で公知の標準的な方法、例えば、適切なマーカーをモニターすることにより、実施される。例えば、肥満症に関しては、以下のマーカーをモニターし得る:体重、BMI、体組成調査、体脂肪分布、中心性脂肪分布(central fat distribution)、食物又はカロリー摂取量、空腹感及び満腹感の行動測定、代謝率、及び肥満関連の併存症。
除脂肪体重に対する過剰な脂肪組織の比率を説明する、対象が体重過多又は肥満であるかどうかの判定方法には、対象の体組成の情報を得ることが含まれる。体組成は、腹部、肩甲下の領域、腕、臀部及び太腿などの、身体の複数箇所の皮下脂肪の厚さを測定することにより得ることができる。次いで、これらの測定を使用して、約4パーセントポイントの許容誤差で、総体脂肪を推定する。別の方法は、身体を通過する電流の抵抗を使用して体脂肪を推定する、生体インピーダンス法(BIA)である。別の方法は、大きなタンクの水を使用して、身体浮力を測定する。より多い体脂肪はより大きな浮力をもたらし、より大きな筋肉量は沈む傾向をもたらす。別の方法は扇状ビーム二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)である。DEXAは、体組成、特に総体脂肪及び/又は局所体脂肪量を、非侵襲的に測定することができる。体組成を非侵襲的に測定するために、MRIを使用することもできる。
本明細書に記載されるすべての方法に関して、本発明の化合物への言及は、1つ又は複数のこれらの化合物を含む、本明細書に記載の医薬組成物等の、組成物をも含む。これらの組成物は、例えば当技術分野に公知の緩衝剤を含む、薬剤的に許容される賦形剤等の、好適な賦形剤をさらに含んでもよい。本発明は単独で、又は他の従来の治療方法と組み合わせて、使用することができる。
本発明により提供される治療を必要とする対象は、少なくとも1つの肥満誘発性又は肥満関連の併存症、すなわち体重過多又は肥満であることに関連するか、それにより悪化するか又は誘起される、疾患及び他の有害な健康状態を有し得る(すなわち、併存症と診断されるか又は併存症を患い得る)。他の実施形態において、対象は、少なくとも2つの肥満誘発性又は肥満関連の併存症を有し得る。
肥満誘発性又は肥満関連の併存症としては、限定されないが、糖尿病、インスリン非依存型II型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖異常、血糖異常(dysglycaemia)、血漿インスリン濃度上昇、インスリン抵抗性症候群、高脂血症、脂質異常症、遊離脂肪酸上昇、高血圧、高尿酸血症、痛風、冠動脈疾患、心疾患、心筋梗塞、狭心症、微小血管障害、睡眠時無呼吸、閉塞型睡眠時無呼吸、ピックウィック症候群、脂肪肝;脳梗塞、脳卒中、脳血栓、呼吸器系合併症、胆石症、胆嚢疾患、腎疾患、胃食道逆流、緊張性尿失禁、動脈硬化症、心臓疾患、心拍異常、不整脈、一過性虚血発作、整形外科的障害、骨関節炎、変形性関節炎、腰痛(lumbodynia)、月経異常、ホルモン失調、内分泌疾患及び不妊症が挙げられる。特に、併存症としては:高血圧、高脂血症、脂質異常症、耐糖能障害、心血管疾患、睡眠時無呼吸、糖尿病、及び他の肥満関連状態が挙げられる。
本発明は、それを必要とする対象において、肥満症を治療するか、又は体重減少を誘発するか、引き起こすか若しくは増加させる(体重を減少させる)ことに加え、これらの肥満誘発性又は肥満関連の併存症を患う対象において、前記併存症のうちの1つ又は複数を治療する方法であって、前記方法が、肥満症を治療するか若しくは寛解させるか、又は体重を減少させ、かつ肥満誘発性若しくは肥満関連の併存症のうちの1つ若しくは複数を治療するか若しくは寛解させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明は、それを必要とする対象において、代謝障害又は代謝症候群を治療する方法であって、前記症候群が:1)腹部肥満症(腹部内部及び周囲の過剰な脂肪組織);2)アテローム性脂質異常症(高トリグリセリド;低HDLコレステロール及び高LDLコレステロール、又は低HDL:LDL比);3)血圧上昇;4)インスリン抵抗性又は耐糖能障害;5)血栓形成促進状態(例えば、血液中の高フィブリノゲン又は高プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1);6)炎症誘発性状態(例えば、血液中のCRP上昇);並びに7)糖尿病前症又は2型糖尿病;を含む、一群の代謝危険因子により特徴づけられる、方法を提供する。本発明は、代謝疾患を単独で治療することができ、又は肥満症を治療すること若しくは体重減少を誘発するか、引き起こすか若しくは増加させることと組み合わせて治療することもできる。
本発明はまた、それを必要とする対象において、肥満症を治療するか、又は体重減少を誘発するか、引き起こすか若しくは増加させることに加え、限定されないが:血漿トリグリセリドレベル、LDL−コレステロールレベル、C反応性タンパク質(CRP)レベル、及び血圧(収縮期血圧及び/又は拡張期血圧)からなる群から選択される1つ若しくは複数の心血管代謝危険因子を、前記危険因子に罹患している対象において、治療するか、減少させるか又は改善する方法であって、前記方法が、肥満症を治療するか若しくは寛解させるか、又は体重を減少させ、及び1つ若しくは複数の危険因子を治療するか若しくは寛解させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
本発明の化合物、又はその薬剤的に許容される塩、プロドラッグ、代謝産物、類似体又は誘導体を、第2の活性薬剤と組み合わせて投与することもできる。第2の活性薬剤は、ポリマーと複合していてもよい。
意図される第2の活性薬剤としては、2型糖尿病を治療するために投与されるもの:例えば、スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、グリピジド、グリブリド、グリメピリド);メグリチニド(例えば、レパグリニド及びナテグリニド);ビグアナイド(例えば、メトホルミン);チアゾリジンジオン(ロシグリタゾン、トログリタゾン、及びピオグリタゾン);グルカゴン様1ペプチド模倣体(例えばエクセナチド及びリラグルチド);ナトリウム−グルコース共輸送体阻害剤(例えば、ダパグリフロジン)、ジペプチジルペプチダーゼ4阻害剤(例えばグリプチン)、ナトリウム−グルコース連結輸送体阻害剤、レニン阻害剤、及びアルファ−グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース及びメグリトール(meglitol));並びに/又は、高血圧、脂質異常症、虚血性心疾患、心筋症、心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓塞栓性疾患及び肺高血圧症等の、体重過多又は肥満症に関連付けられる、心臓の障害及び状態を治療するために投与されるもの、例えば、クロルサリドン;ヒドロクロロチアジド;インダパミド、メトラゾン;ループ利尿薬(例えば、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、ラシックス、トルセミド);カリウム保持剤(例えば、塩酸アミロライド、スピロノラクトン、及びトリアムテレン);末梢性薬剤(peripheral agent)(例えば、レセルピン);中枢性アルファアゴニスト(central alpha−agonist)(例えば、塩酸クロニジン、グアナベンズ酢酸、塩酸グアンファシン、及びメチルドパ);α遮断薬(例えば、メシル酸ドキサゾシン、塩酸プラゾシン、及び塩酸テラゾシン);β遮断薬(例えば、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、フマル酸ビソプロロール、塩酸カルテオロール、酒石酸メトプロロール、メトプロロールサクシネート、ナドロール、硫酸ペンブトロール、ピンドロール、塩酸プロプラノロール、及びマレイン酸ピリラミン);α遮断薬及びβ遮断薬の併用(例えば、カルベジロール及び塩酸ラベタロール);直接血管拡張薬(例えば、塩酸ヒドララジン及びミノキシジル);カルシウム拮抗薬(例えば、塩酸ジルチアゼム及び塩酸ベラパミル);ジヒドロピリジン(例えば、ベシル酸アムロジピン、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、及びニソルジピン);ACE阻害剤(塩酸ベナゼプリル、カプトプリル、マレイン酸エナラプリル、ホシノプリルナトリウム、リシノプリル、モエキシプリル、塩酸キナプリル、ラミプリル、トランドラプリル);アンジオテンシンII受容体遮断薬(例えば、ロサルタンカリウム、バルサルタン、及びイルベサルタン);及びそれらの組み合わせ;並びに、典型的に脂質異常症の治療のための、メバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、ベロスタチン(velostatin)、ジヒドロコンパクチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ダルバスタチン、カルバスタチン(carvastatin)、クリルバスタチン、ベバスタチン(bevastatin)、セフバスタチン(cefvastatin)、ロスバスタチン、ピタバスタチン、及びグレンバスタチン(glenvastatin)等のスタチンが挙げられる。
同時投与(例えば順次又は同時に)することができる、他の第2の活性薬剤としては:スタチン、硝酸塩(例えば、二硝酸イソソルビド及び硝酸イソソルビド)、β遮断薬、及びカルシウムチャネル拮抗薬を含む、虚血性心疾患を治療するために投与される薬剤;陽性変力薬(例えば、ジゴキシン)、利尿薬(例えば、フロセミド)、ACE阻害剤、カルシウム拮抗薬、抗不整脈薬(例えば、ソトロール(Sotolol)、アミオダロン及びジソピラミド)、及びβ遮断薬を含む、心筋症を治療するために投与される薬剤;ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、直接血管拡張薬、β遮断薬、抗不整脈薬及び血小板溶解薬(例えば、アルテプラーゼ、レタプラーゼ(Retaplase)、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、及びウロキナーゼ)を含む心筋梗塞を治療するために投与される薬剤;抗血小板薬(例えば、アスピリン、クロピドグレル、ジピリダモール、及びチクロピジン)、抗凝固薬(例えば、ヘパリン)、及び血小板溶解薬を含む、脳卒中を治療するために投与される薬剤;抗血小板薬、抗凝固薬、及び血小板溶解薬を含む、静脈血栓塞栓性疾患を治療するために投与される薬剤;陽性変力薬、抗凝固薬、利尿薬、カリウム(例えば、K−dur)、血管拡張薬(例えば、ニフェジピン及びジルチアゼム)、ボセンタン、エポプロステノール、及びシルデナフィルを含む、肺高血圧症を治療するために投与される薬剤;気管支拡張薬、抗炎症薬、ロイコトリエン遮断薬、及び抗Ige薬を含む、喘息を治療するために投与される薬剤が挙げられる。特定の喘息薬としては、ザフィルルカスト、フルニソリド、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、テルブタリン、フルチカゾン、ホルモテロール、ベクロメタゾン、サルメテロール、テオフィリン、及びゾペネックス(Xopenex)が挙げられ;睡眠時無呼吸を治療するために投与される薬剤としては、モダフィニル及びアンフェタミンが挙げられ;非アルコール性脂肪性肝疾患を治療するために投与される薬剤としては、抗酸化剤(例えば、ビタミンE及びC)、インスリン感受性改善薬(メトホルミン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、及びベタイン)、肝保護剤(hepatoprotectant)、及び高脂血症治療薬が挙げられ;荷重関節の骨関節炎を治療するために投与される薬剤としては、アセトアミノフェン、非ステロイド系の抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、エトドラク、オキサプロジン、ナプロキセン、ジクロフェナク、及びナブメトン)、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、ステロイド、サプリメント(例えばグルコサミン及びコンドロイチン硫酸)、及び人工関節液が挙げられ;プラダー・ウィリー症候群を治療するために投与される薬剤としては、ヒト成長ホルモン(HGH)、ソマトロピン、及び抗肥満薬(例えば、オルリスタット、シブトラミン、メタンフェタミン、イオナミン、フェンテルミン、ブプロピオン、ジエチルプロピオン、フェンジメトラジン、ベンズフェテルミン(Benzphetermine)、及びトパマックス)が挙げられ;多嚢胞性卵巣症候群を治療するために投与される薬剤としては、インスリン感受性改善薬、合成エストロゲン及びプロゲステロンの組み合わせ、スピロノラクトン、エフロールニチン、及びクロミフェンが挙げられ;勃起障害を治療するために投与される薬剤としては、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、タダラフィル、シルデナフィルシトレート、及びバルデナフィル)、プロスタグランジンE類似体(例えば、アルプロスタジル)、アルカロイド(例えば、ヨヒンビン)、及びテストステロンが挙げられ;不妊症を治療するために投与される薬剤としては、クロミフェン、クエン酸クロミフェン、ブロモクリプチン、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト、タモキシフェン/ノルバデックス、性腺刺激ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、ヒト閉経期ゴナドトロピン(HmG)、プロゲステロン、組換え型卵胞刺激ホルモン(FSH)、ウロフォリトロピン、ヘパリン、フォリトロピンα、及びフォリトロピンβが挙げられ;分娩合併症を治療するために投与される薬剤としては、塩酸ブピバカイン、ジノプロストンPGE2、メペリジンHC1、Ferro−folic−500/iberet−folic−500、メペリジン、マレイン酸メチルエルゴノビン、ロピバカインHC1、ナルブフィンHC1、オキシモルフォンHC1、オキシトシン、ジノプロストン、リトドリン、臭化水素酸スコポラミン、クエン酸スフェンタニル、及び分娩促進薬が挙げられ;うつ病を治療するために投与される薬剤としては、セロトニン再取り込阻害剤(例えば、フルオキセチン、エシタロプラム、シタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、及びベンラファキシン);三環式抗うつ剤(例えば、アミトリプチリン、アモキサピン、クロミプラミン、デシプラミン、塩酸ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、オピプラモール、プロトリプチリン、及びトリミプラミン);モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えば、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン、ラサギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、リネゾリド、ダイエノライド・カバピロン・デスメトキシヤンゴニン(Dienolide kavapyrone desmethoxyyangonin)、及びデキストロアンフェタミン);覚醒剤(例えば、アンフェタミン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、及びアレコリン);抗精神病薬(例えば、ブチロフェノン、フェノチアジン、チオキサンテン、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クェチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、パリペリドン、シンビアキス、テトラベナジン、及びカンナビジオール);及び気分安定薬(例えば、炭酸リチウム、バルプロ酸、ジバルプロックスナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリジン、カルバマゼピン、ガバペンチン、オキシカルバゼピン、及びトピラメート)が挙げられ;不安症を治療するために投与される薬剤としては、セロトニン再取り込阻害剤、気分安定薬、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、クロナゼパム、ジアゼパム、及びロラゼパム)、三環式抗うつ剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、及びβ遮断薬;並びに:セロトニン及びノルアドレナリン再取り込み阻害剤;ノルアドレナリン再取り込み阻害剤;選択的セロトニン再取り込み阻害剤;及び腸リパーゼ阻害剤を含む、他の抗肥満薬が挙げられる。特定の抗肥満薬としては、オルリスタット、シブトラミン、メタンフェタミン、イオナミン、フェンテルミン、ブプロピオン、ジエチルプロピオン、フェンジメトラジン、ベンズフェテルミン(benzphetermine)、及びトパマックスが挙げられる。
本発明はまた、それを必要とする対象において脂肪細胞を減少させる方法であって、脂肪細胞又は脂肪組織を減少させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。本発明はまた、そのリスクを有する対象において、脂肪細胞の増加を予防する方法であって、脂肪細胞の増加を予防するために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。脂肪細胞を減少させることは、脂肪細胞の数を減少させるか又は大きさ(脂肪量)を減少させることを意味する。脂肪細胞の増加を予防することは、脂肪細胞の数を減少させるか若しくは維持すること、又は脂肪細胞の大きさを減少させるか若しくは維持することを意味する。ある実施形態において、本発明の化合物の投与は、それを必要とする対象において、脂肪細胞を収縮させる。脂肪組織は、白色脂肪組織又は褐色脂肪組織であり得る。
本発明はまた、それを必要とする対象において、摂食量を減少させる方法であって、摂食量を減少させるために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
摂食量の減少とは、1日の摂食量の減少を意味する。1日の摂食量の減少は、約5%の減少〜約50%の減少(例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、又は約50%)であり得る。1日2000kcalの食事量に基づいて、減少は、1日あたり約100kcal〜約1000kcalの減少(例えば、約100kcal、約200kcal、約400kcal、約600kcal、約800kcal又は約1000kcal)である。
本発明はまた、それを必要とする対象において、空腹感を低減する方法であって、空腹感を低減するために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を対象に投与することを含む、方法を提供する。対象はまた、摂食量の減少をも有し得る。
空腹感は、食欲に関する研究において多く利用されている、10ポイントの視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して、絶食状態において評価することができる。Flintら、Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.24(1):38−48,2000を参照のこと。具体的には、10が極度に空腹であり、1が全く空腹ではないことを示す、1〜10までのスケールで、その前の2日間の全体的な空腹感を、対象に評価してもらう。
本発明の方法はまた、それを必要とする対象において、腹囲を減少させることができる。腹囲は、腸骨稜の1cm上の腹部に配置した巻尺を使用して評価する。本発明の対象は、約1インチ(2.54cm)〜約20インチ(50.8cm)(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20インチ(2.54cm、5.08cm、7.62cm、10.16cm、12.7cm、15.24cm、17.78cm、20.32cm、22.86cm、25.4cm、27.94cm、30.48cm、33.02cm、35.56cm、38.1cm、40.64cm、43.18cm、45.72cm、48.26cm又は50.8cm))の腹囲の減少を有し得る。
本発明の方法において、化合物の投与は、前記患者において体脂肪の減少及び実質的な筋肉量の維持をもたらす。ある実施形態において、摂食量制限療法のみを行っている患者と比較して、化合物の投与により、患者における脂肪の酸化が促進された。例えば、本明細書において、それを必要とする患者において、体脂肪を減少させる方法が提供される。そのような患者は、エネルギー制限食事療法のみを行っている患者における体脂肪の減少と比較して、実質的により多い筋肉量を維持し得る。
本発明はまた、それを必要とする対象において、手術結果を改善する方法であって、手術結果を改善するために、治療的有効量の、少なくとも1つの本発明の化合物を、手術前に対象に投与することを含む、方法を提供する。ある実施形態において、投与は、前記患者における肝臓及び/又は腹部脂肪を減少させ、かつ手術結果を改善する。ある実施形態において、手術は緊急手術ではない。このような手術は、肥満外科手術、心血管の手術、腹部の手術、又は整形外科的手術を含み得る。
本明細書に記載される「患者」又は「対象」は、ヒト又は非ヒト対象を意味し得る。ある実施形態において、対象は脊椎動物である。ある実施形態において、脊椎動物は哺乳動物である。哺乳類には、限定されないが、家畜、競技動物(sport animals)、ペット、霊長類(ヒトを含む)、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットも含まれる。ある実施形態において、哺乳動物はヒトである。
本明細書において使用される場合、「それを必要とする対象」は、体重過多若しくは肥満である対象(1つ又は複数の併存症を有していてもいなくてもよい)、又は一般の母集団に対して、体重過多になるか若しくは肥満症を発症するリスクが高い対象である。ある態様において、それを必要とする対象は、30kg/m2以上のBMIを有する、肥満の対象である。ある態様において、それを必要とする対象は、体重過多若しくは肥満であるか、又は一般の母集団に対して、体重過多になるか若しくは肥満症を発症するリスクが高い対象であって、がん、過剰増殖性障害、黄斑変性に起因する網膜血管新生、乾癬及び化膿性肉芽腫、リューマチ性、免疫性及び変形性関節症からなる群から選択される障害を患っていないか又は該障害と診断されていない、患者である。
「予防的又は治療的な」治療という用語は、当分野で認識されており、1つ又は複数の主題の組成物を宿主に投与することを含む。治療が、望ましくない状態(例えば、宿主動物の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床的な徴候の前に実施される場合、該治療は予防的であり(すなわち、宿主が望ましくない状態を発症しないように保護する)、一方治療が、望ましくない状態の徴候後に実施されれば、該治療は治療的である(すなわち、現存する望ましくない状態又はその副作用を軽減させるか、寛解させるか又は安定化させることを意図する)。
本明細書において使用される場合、「治療」は、有益な又は所望の臨床的な結果を得るための手法である。本発明の目的において、有益な又は所望の臨床的な結果には、限定されないが:疾患に付随する1つ若しくは複数の症状を改善すること;その重症度を軽減すること;又は緩和すること;のうちの1つ若しくは複数が含まれる。肥満症に関しては、有益な又は所望の臨床的な結果としては、以下のうちのいずれか1つ又は複数が挙げられる:体重を減少させること又は維持すること;摂食量又はカロリー摂取量を制御すること(減少させることを含む);代謝率を増加させること又は代謝率の減少を阻害すること;並びに、例えば糖尿病、インスリン非依存型糖尿病、高血糖、低耐糖能、インスリン抵抗性、脂質障害、脂質異常症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、腹部肥満症、摂食障害、代謝症候群、高血圧、骨関節炎、心筋梗塞、脂肪性肝疾患、脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、脳卒中及び他の関連疾患等の、肥満症に付随する障害のうちのいずれかを改善すること、その重症度を軽減すること、及び/又は緩和すること;肥満症を患う患者の生活の質を向上させること、並びに/又は寿命を延長すること。
本明細書において使用される場合、肥満症の発症を「遅延させる」とは、該疾患の発症を繰り延べる、妨げる、減速させる、遅らせる、安定化させる、及び/又は延期することを意味する。この遅延は、疾患の履歴及び/又は治療される対象の病歴に応じて、様々な時間の長さであり得る。当業者には明らかなように、充分な又は有意な遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、事実上予防を包含し得る。例えば、発症を遅延させることの1つの結果は、肥満症のリスクを有する対象の体重を、本明細書に記載される組成物の投与直前の該対象の体重と比較して、減少させることであり得る。発症を遅延させることの別の結果は、食事療法、運動、又は薬物療法の結果として先に減少した体重が、再び戻ることを予防することであり得る。発症を遅延させることの別の結果は、肥満症のリスクを有する対象において、肥満症の発症前に治療を実施した場合に、肥満症の発病を予防することであり得る。発症を遅延させることの別の結果は、肥満症のリスクを有する対象において、肥満症の発病前に該治療を実施した場合に、肥満関連障害の発生及び/又は重症度を減少させることであり得る。
肥満症の「リスクを有する」個体は、検出可能な疾患を有していてもいなくてもよく、及び本明細書に記載の治療方法の実施前に、検出可能な疾患を示していてもいなくてもよい。「リスクを有する」とは、個体が、肥満症の発症と相関する測定可能なパラメータである、1つ又は複数のいわゆる危険因子を有することを表す。これらの危険因子のうちの1つ又は複数を有する個体は、これらの危険因子を有さない個体よりも、肥満である確率がより高い。これらの危険因子としては、限定されないが、年齢、食習慣(diet)、物理的不活発性、代謝症候群、肥満症の家族歴、民族性、遺伝的症候群、以前の病歴(例えば摂食障害、代謝症候群、及び肥満症)、前駆疾患(例えば、体重過多)の存在、が挙げられる。例えば、25.0〜30.0kg/m2未満のBMIを有する、それ以外は健康な個体、又は25.0kg/m2〜27.0kg/m2未満のBMIを有する、少なくとも1つの併存症を有する個体は、肥満症のリスクを有する。
肥満症の「発症」は、個体における疾患の発病及び/又は進行(本発明の異なる実施形態であり得る)を意味する。肥満症の発症は、本明細書に記載の標準的な臨床技術を使用して、検出することができる。しかしながら、発症は、初期には検出不可能な、疾患の進行をも表し得る。本発明の目的において、進行は、疾患状態の生物学的過程を指し、この場合、進行は、BMIを推定するための身長及び体重の評価、腹囲の測定、併存症の評価、並びに肥満症合併症、例えば動脈硬化症、II型糖尿病、多嚢胞性卵巣疾患、心血管疾患、骨関節炎、皮膚科的障害、高血圧、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、及び胆石症等の発病及び/又は悪化により測定される。これらの多様な診断検査が、当技術分野で公知である。「発症」には、発生、再発、及び発病が含まれる。本明細書で使用される、肥満症の「発病」又は「発生」には、初期の発病及び/又は再発が含まれる。
本明細書において使用される場合「体重の制御」又は「体重の改善」は、個体において体重を減少させること又は維持することを指す(治療前のレベルと比較して)。いくつかの実施形態において、体重は概ね正常な範囲内に維持される。体重は、カロリー摂取量を減少させること及び/又は体脂肪蓄積を減少させることにより、減少させることができる。いくつかの実施形態においては、体重は、個体において、治療前のレベルと比較して、少なくとも約3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、又は50%のうちのいずれか、減少する。
本明細書において使用される場合、「摂食量を制御すること」は、個体における摂食量を減少させるか又は維持することを指す(治療前のレベルと比較して)。いくつかの実施形態において、摂食量は概ね正常な範囲に維持される。いくつかの実施形態において、摂食量は、個体において、治療前のレベルと比較して、約3%、4%、5%、10%、20%、30%、40%、又は50%のうちのいずれかの分、減少する。
治療における使用に関する、化合物の「治療的有効量」は、所望の投薬レジメンの一部として投与された際(哺乳動物、好ましくはヒトに)、治療される障害若しくは状態又は美容的目的において臨床的に許容される基準、例えば、あらゆる内科的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比等に従って、症状を緩和するか、状態を寛解させるか、又は疾患状態の発病を遅らせるか若しくは予防する、製剤中の化合物の量を指す。「治療的有効量」は、「有効用量」と同義である。
本明細書において使用される場合、薬物、化合物、又は医薬組成物の「有効投与量」又は「有効量」は、有益な又は所望の結果をもたらすのに充分な量である。予防的使用において、有益な又は所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的徴候、疾患の合併症、及び疾患の発症中に表れる中間的な病理学的表現型を含めて、疾患のリスクを除去するか若しくは減少させること、重症度を低減すること、又は発病を遅延させること等の結果が含まれる。治療的使用において、有益な又は所望の結果には、例えば、疾患の発作の強度、持続時間、又は頻度を減少させること;及び、疾患の合併症及び疾患の発症中に表れる中間的な病理学的な表現型を含めて、疾患から生じる1つ又は複数の徴候(生化学的、組織学的及び/又は行動的)を減少させること;疾患を患う患者の生活の質を増加させること;該疾患を治療するために必要とされる他の薬剤の用量を減少させること;別の薬物療法の効果を強化すること;並びに/又は患者の疾患の進行を遅延させること;等の臨床結果が含まれる。有効投与量は、1回又は複数回の投与にて投与することができる。本発明の目的において、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、予防的又は治療的治療を、直接的又は間接的のいずれかで達成するために充分な量である。臨床的状況において理解される通り、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効投与量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物とともに達成されても、そうでなくてもよい。したがって、1つ又は複数の他の薬剤との併用において、望ましい結果が達成され得るか又は達成される場合、「有効投与量」は、1つ又は複数の治療薬を投与する状況において考慮されてもよく、及び単独の薬剤を有効量で投与することを考慮してもよい。例えば、肥満症を治療するための本発明の化合物の有効量は、肥満症に付随する1つ又は複数の症状を治療するか又は寛解させるために充分な量である。「有効量」は、以下のうちの1つ又は複数(本発明の種々の実施形態にも対応し得る)をもたらすのに充分な量である:体重を減少させるか、低減するか若しくは制御すること、摂食量を減少させるか、低減するか若しくは制御すること、代謝率を増加させること、肥満症に付随する疾患に起因する1つ若しくは複数の症状を低減すること、肥満症を患う患者の生活の質を増加させること、及び/又は寿命を延長すること。
本明細書に記載の1つ又は複数の化合物を対象に提供する際、投与される化合物の投与量は、対象の年齢、体重、身長、性別、全般的な医学的状態、以前の病歴、疾患の進行、投与経路、製剤、及び同種のものの要因に応じて変化する。
本発明の化合物の投与量は、1回又は複数回の投与を受けた個体において、経験的に決定することができる。個体に、次第に増加する投与量の、本発明の化合物を投与する。本発明の化合物の有効性を評価するために、疾患状態のマーカーをモニターすることができる。投与量が、個体、疾患の段階(例えば、肥満症の段階)、並びに過去の治療及び併用されている治療に応じて変化することは、当業者には明らかであろう。
本発明の化合物の毒性及び治療有効性は、実験動物における標準的な医薬的手順によって、判定することができる。中毒量を、最大許容投与量(MTD)、あるいは、LD50(母集団の50%に対して致死的な用量)として決定してもよい。有効用量を、ED50(母集団の50%において治療的に有効な用量)、又は、動物においていくらかの平均的な量の変化をもたらすのに必要とされる用量(例えば対象群において、10mmHgの収縮期血圧の平均的減少をもたらすのに必要な用量)として決定してもよい。
有効用量及び中毒量は、同一の種において決定されることが理想的である。しかしながら、異なる種において決定される場合、非比例的スケーリング(allometric scaling)を使用して、別の種に対する有効用量又は中毒量に換算することができる。中毒作用と治療効果の用量比が、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。マウスをラットと比較すると、一般に許容される倍率は2であり、ラットの用量はマウスにおける用量の2分の1であると推定される。したがって、ラットにおける中毒量が100mg/kgであり、マウスにおける有効用量が1mg/kgである場合、ラットにおける治療指数は、ラットにおける有効用量を1mg/kg/2、すなわち0.5mg/kgとして算出することができ、治療指数は200となる。FDAは、(a)半数致死量及び半数有効量間の差が2倍未満である場合;又は(b)血液中の最小中毒濃度及び最小有効濃度間の差が2倍未満である場合、薬物は狭い治療域を有すると定義している。
高い治療指数を示す、本発明の化合物が好ましい。毒性副作用を示す本発明の化合物を使用することもできるが、感染していない細胞に損傷を与える可能性を最小化し、それにより副作用を低減するために、そのような本発明の化合物を、罹患した組織の部位に送達する送達系の設計においては、注意を払うべきである。
ヒトにおける使用のための投与量の範囲を公式化するために、動物実験から入手したデータを使用することができる。このような本発明の化合物の投与量は、わずかな毒性で、又は毒性を有さずに有効用量を含む、血中濃度の範囲であることが好ましい。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。1000未満のMWを有する本発明の化合物においては、最初は、細胞培養アッセイから治療的有効量を推定することができるが、一方、活性部分を放出するためにリンカーの切断が必要な複合体のための用量に関しては、動物モデルによって、より良い推定が可能になる。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。ポリマーとの複合が、活性部分活性を弱める(dilute)(ポリマーは希釈剤である)ということは、当技術分野で公知である。これは、以下の表に示す抗がん剤のマウス投薬モデルにおいて、例証される。
したがって、治療指数が改善されない場合、ポリマーとの複合が、臨床用量を増加させることは、良く理解されている。これは、以下の表に示す抗がん剤のヒト投薬モデルにおいて、例証される。
本発明の、ポリマー複合及び修飾化合物は、驚くべきことに、未複合及び/又は未修飾の親薬物/活性部分と比較して、より優れた有効性及びより低い毒性をもたらす。
例えば、本発明のフマギロール複合体及び修飾フマギロール化合物は、フマギロール小分子よりも、驚くほど優れており、等モル用量にて、DIOマウスに増加した体重減少をもたらした。本発明の化合物を、より低いモル用量及びより頻度の少ない投薬にて使用して、同等の体重減少をもたらすことができる。より低いモル用量及び低減された投薬頻度は、全身の薬物曝露及び全身の薬物毒性を低減する。さらに、本発明のフマギロール複合体及び修飾フマギロール化合物は、フマギロール小分子の作用に類似した作用、すなわち、DIOマウスにおける好ましい脂肪減少及び摂食量の減少作用を提供する。
従来のポリマー複合体は、活性を弱め(dilute)、用量を5〜20倍に増加させ、かつ治療指数のわずかな変化(2倍未満)しかもたらさない。これに対して、本発明のポリマー複合化合物は、驚くべきことに、かつ予想外にも、治療指数を増加させ(大幅な改善)、かつより低い用量にて増加した活性を示す。
本発明の方法において、本発明のポリマー複合化合物は、より頻度の低い投与(例えば、q4d:4日ごとの投薬、q7d:7日ごとの投薬、q8d:8日ごとの投薬)、フマギロール同等物の少なくとも84モル%に低減された用量、非標的区画における低減されたAUCを示す一方、治療指数は増加(10倍超)する。
別の実施形態においては、有効投与量、例えば本発明の化合物の1日投与量が、本明細書において提供される。例えば、ここでは、体重減少に有効な、本発明の化合物の用量を投与することを含む、方法が提供される。例えば、本明細書に記載の方法において、意図される本発明の化合物の投薬は、体重に関わらず、約200mg/日、約80mg/日、約40mg/日、約20mg/日、約10mg/日、約5mg/日、約3mg/日、約2mg/日、約1mg/日、約0.5mg/日、約0.2mg/日、約0.05mg/日、約0.01mg/日、又は約0.001mg/日の用量を投与することを含み得る。
患者における体重減少のための薬物の有効量は、体重又は体表面積に基づいて投与されてもよく、かつ約0.0001mg/kg〜約5mg/kg体重/日であり得る。例えば、意図される投与量は、約0.001〜5mg/kg体重/日、約0.001mg/kg〜1mg/kg体重/日、約0.001mg/kg〜0.1mg/kg体重/日、約0.001〜約0.010mg/kg体重/日又は約0.007mg/kg体重/日であり得る。
本発明の化合物を、患者の体重を約0.5kg/週〜約1kg/週(又は週あたり体重の約0.5%〜週あたり体重の約1%)減少させるのに充分な量で、投与することができる。ある実施形態において、週ごとの体重の減少は、治療の持続期間中に生じる。
本発明の方法に従った本発明の化合物の投与は、例えば、投与を受ける患者の生理的な状態、投与の目的が治療的であるか又は予防的であるか、及び熟練された開業医に公知の他の要因に応じて、連続的であっても、断続的であってもよい。本発明の化合物の投与は、予め選択された期間に渡って、本質的に連続していてもよく、又は間隔をあけた一連の投薬であってもよい。
数日間又はそれより長い期間に渡る反復投与に関しては、状態に応じて、病徴の望ましい抑制又は充分な治療的レベルが達成されるまで、治療を継続する。例えば、週に1〜5回の投薬が意図される。ある実施形態においては、本発明の化合物を、約4日ごとに投与する。他の投薬レジメンとしては、週に1〜5回、3〜4日ごと、又はより少ない頻度のレジメンが挙げられる。いくつかの実施形態においては、薬物投与に対する応答の持続時間に応じて、週に約1回、2週間ごとに1回、又は月に約1〜4回、本発明の化合物を投与する。2日〜最大7日間、又は14日間の間をあけた、スタガー用量(staggered dosage)による断続的な投薬レジメンを使用してもよい。いくつかの実施形態においては、1日ごとの投薬から治療を開始し、その後に、週ごとから月ごとの投薬に変更してもよい。この治療の進行は、従来の技術及びアッセイにより、又は米国特許第6,548,477号明細書に記載される通りにMetAP2を測定することにより、容易にモニターすることができる。
投与の頻度は、治療の過程に渡って決定し、かつ調節することができる。例えば、投与の頻度は、治療される疾患の種類及び重症度、薬剤投与の目的が予防的であるか又は治療的であるかどうか、以前の治療歴、患者の臨床歴、及び薬剤への応答、並びに主治医の指示に基づいて、決定するか又は調節することができる。典型的に、臨床医は、望ましい結果を達成する投与量に達するまで、本発明の化合物を投与する。
治療は、所望の限り長期間継続することも、短期間に限ることもできる。好適な治療期間は、例えば、少なくとも約1週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、又は無期限であり得る。治療期間は、所望の結果、例えば目標とする体重減少が達成された時、例えば、体重の約5%、体重の約10%、体重の約20%、体重の約30%以上の減少が達成された時に、終了することができる。治療レジメンは、本発明の化合物を:過剰な脂肪蓄積の減少をもたらすのに充分な用量、又は投薬頻度で投与する、矯正段階;その後、過剰な脂肪蓄積の再発を予防するのに充分なより低い化合物用量、又はより低い投薬頻度で投与する、維持段階;を含み得る。
化合物、又はその薬剤的に許容される塩、エステル又はプロドラッグ(又はその医薬組成物)は、当技術分野で公知のあらゆる手段により投与することができる。例えば、本発明の化合物又は組成物は、経口投与、経鼻投与、経皮投与、局所投与、肺投与、吸入投与、頬側投与、舌下投与、腹腔内(intraperintoneally)投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経直腸投与、胸腔内投与、くも膜下腔内投与及び非経口的投与することができる。投与は、静脈内投与などの全身的投与、又は局所投与であってもよい。ある実施形態において、投与経路は、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、くも膜下腔内、胸腔内、子宮内、直腸、膣、局所経路、及び同種のものであり得る。ある実施形態において、化合物は皮下投与される。
一態様において、本発明の化合物、又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー、及び多形体は、従来の手順に従って、治療的有効量(例えば、所望の治療効果を達成するのに充分な有効レベル)の本発明の化合物又はその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、ジアステレオマー及び多形体(活性成分として)を、標準的な医薬担体又は希釈剤と組み合わせることにより(すなわち、本発明の医薬組成物を作製することにより)調製された好適な剤形又は製剤にて、投与することができる。これらの手順は、所望の製剤を達成するのに適切に、成分を混合、造粒、及び圧縮又は溶解することを含み得る。
非経口の剤形は、当技術分野に公知のあらゆる手段により調製することができる。例えば、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、無菌の注射用の水性又は油性懸濁液を、公知の技術に従って製剤化してもよい。
経口剤形、例えばカプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び粒剤は、当分野で公知のあらゆる好適な方法を使用して、調製することができる。例えば、本発明の化合物を腸溶性材料と混合し、圧縮して錠剤としてもよい。あるいは、本発明の製剤を、チュアブル錠、押しつぶし可能な(crushable)錠剤、口内で迅速に溶解する錠剤、又はうがい薬に組み込む。
肺(例えば、気管支内)投与用には、本発明の化合物を、従来の賦形剤とともに製剤化して、微粉末又は霧化可能な液体形態の、吸入可能な組成物に調製することができる。眼投与用には、本発明の化合物を、従来の賦形剤とともに製剤化して、例えば、点眼薬又は眼インプラントの形態にすることができる。点眼薬において有用な賦形剤としては、眼内での保持を改善することにより、流涙による損失を最小化するための、粘化剤又はゲル化剤などが挙げられる。
経口又は他の投与のための液体剤形としては、限定されないが、薬剤的に許容される乳濁液、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤及びエリキシル剤が挙げられる。活性薬剤に加え、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(より詳細には、綿実油、落花生油、コーン油、はい芽油、オリーブ油、ひまし油、及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物を含み得る。不活性な希釈剤に加え、眼送達、経口送達、又は他の全身的に送達される組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤等の補助剤を含み得る。
ジェット噴霧器及び超音波噴霧器を含む、液体製剤のための市販の噴霧器は、投与に有用である。液体製剤を直接噴霧することもでき、凍結乾燥された粉末を、再構成の後に噴霧することもできる。あるいは、本発明の化合物を、フルオロカーボン製剤と定量吸入器を使用してエアロゾル化してもよく、又は凍結乾燥粉末及び粉砕された粉末として吸入してもよい。
本発明の医薬組成物の局所又は経皮投与のための剤形は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、噴霧剤、吸入剤、又はパッチ剤を含み得る。活性薬剤は、無菌の状態下、必要に応じて、薬剤的に許容される担体及びいずれかの必要とされる保存剤又は緩衝剤と混和される。例えば、皮膚経路による投与は、水性の滴剤、噴霧剤、乳濁液、又はクリームにより達成される。
経皮パッチは、活性成分の、身体への制御された送達を提供するという、付加的な優位性を有し得る。このような剤形は、適切な媒体中に化合物を溶解するか又は分注することにより作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚に渡る化合物の流動(flux)を増加させてもよい。速度制御膜を提供する事により、又はポリマーマトリックス若しくはゲル中に化合物を分散させることにより、速度を制御することもできる。
直腸投与又は膣投与のための組成物は、本発明の化合物を、好適な非刺激性の賦形剤又は担体、例えば、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸又は膣腔内で融解して活性薬剤を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、又は座薬ワックス等と混合することにより調製し得る、坐薬であってもよい。あるいは、対象の直腸に内視鏡を挿入した後に、意図される製剤を内視鏡の管腔から放出することにより、投与することもできる。
当業者は、本明細書に記載される公知の技術又は同等の技術の詳細な説明のために、一般的な参考文献を参照してもよい。これらの文献としては、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology;John Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3d ed.),Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coliganら、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.;Ennaら、Current Protocols in Pharmacology,John Wiley & Sons,N.Y.;Fingl ら、The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975),Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition(1990);が挙げられる。もちろん、本発明の態様を利用した作製及び使用においても、これらの文献を参照することができる。
実施例を以下に提供し、本発明の様々な特徴をさらに例示する。実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を例示する。これらの実施例は、特許請求の範囲の発明を限定するものではない。
基本手順
タンジェント流濾過(TFF)を用いて本発明のポリマー生成物を精製した。Pall Minimate(商標)Capsule及びMinimate(商標)TFFシステムを使用し、製造者の取扱説明に従ってTFFを実施した。5kDa Omega膜(5K)を備えたMinimate TFF Capsule又は10kDa Omega膜(10K)カートリッジを備えたMinimate TFF Capsuleを精製に用いた。全ての場合に、透過水を廃棄し、濃縮水を凍結乾燥すると、ポリマー生成物が得られた。生成物の構造を1H NMRで確認し、小分子も質量分析(MS)で特徴付けた。実施例で報告したポリマー重量は、水分含量補正をしなかった。
カルバモイルフマギロール及びクロロアセチルカルバモイルフマギロールは、米国特許第5,166,172号明細書(Kishimotoら、尚、この文献は参照により本明細書に援用される)に開示される方法に従って調製することができる。p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネートは、公表されている手順に従って調製することができる。(Han,C.ら、Biorg.Med.Chem.Lett.2000,10,39−43参照。)MA−GFLG−ONpは、米国特許第5,258,453号明細書(Kopecekら、尚、この文献は参照により本明細書に援用される)に開示される方法に従って調製することができる。
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)の合成
ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA、22.16g、155mmol)、N−メチアクリル(methyacryl)−gly−phe−leu−gly p−ニトロフェニルエステル(MA−GFLG−ONp、10.00g、17.19mmol)、AIBN(1.484g、9.037mmol)及びアセトン(225g)の混合物を脱気した(凍結、ポンプ適用、解凍を4サイクル)。得られた反応混合物を50℃で48時間撹拌し、次いで室温に冷却した。所望の生成物を、アセトンで摩砕により精製し、次いで真空乾燥すると、17.6gのポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)が白色固体として得られた。構造を1H NMRで確認し、生成物に実質的に不純物(例えば、p−ニトロフェノール)がないことを示した。紫外線吸光度によると、コポリマーは、ポリマー1グラム当り0.47mモルのp−ニトロフェニルエステルを含有していた。本実施例のコポリマーを以後の実施例のほとんどで用いる。様々なモノマー及び/又はモノマー比に基づく幅広い種類のコポリマーを、化学量論比の調整及び/又は異なるモノマーの使用により、本手順に従って作製してもよい。
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−OH)の合成
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)(700mg)を0.1M NaOH(11.3mL)の溶液に0℃で少しずつ加えた。黄色の反応混合物を0℃で0.5時間、次いで室温で4時間撹拌した。溶液の半分を0.1M HClでpH=6に酸性化させた。水相を酢酸エチルで抽出して必要以上のp−ニトロフェノールを除去した。水相を凍結乾燥すると、ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−OH)が無色固体(360mg)として得られた。
ポリ(HPMA−co−MA−GG−ONp)の合成
ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA、82.5g)、N−メチアクリル−gly−gly p−ニトロフェニルエステル(MA−GG−ONp、16.8g)、AIBN(5.7g)、及びアセトン(875g)の混合物にアルゴンを90分吹き込んだ。得られた反応混合物を50℃で48時間撹拌し、次いで室温に冷却した。所望の生成物を、アセトンで摩砕により精製し、次いで真空乾燥すると、69.3gのポリ(HPMA−co−MA−GG−ONp)が白色固体として得られた。構造を1H NMRで確認し、生成物に実質的に不純物(例えば、p−ニトロフェノール)がないことを示した。ポリマー1グラム当りのp−ニトロフェニルエステルの量を紫外線吸光度で決定してもよい。様々なモノマー及び/又はモノマー比に基づく幅広い種類のコポリマーを、化学量論比の調整及び/又は異なるモノマーの使用により、本手順に従って作製してもよい。
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2N(Me)BOC)の合成及び基本手順A
DMF(6mL)及びH2O(10mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)(1.0g、0.534mmol)の溶液を水(20mL)中tert−ブチルN−(2−アミノエチル)−N−メチルカルバメート(0.20g、1.15mmol)の溶液に0℃、15分で滴下して加えた。反応混合物を0℃で15分撹拌し、次いで室温に加温し、12時間撹拌した。溶媒を減圧蒸発させた。得られた残渣を水(50mL)中に溶解させ、0.1M NaOHでpHを約8.0に調整した。溶液をVacuCapフィルターで濾過し、次いでTFF(10K)を用いて精製した。ポリマー含有溶液を25mM NaCl溶液(800mL)で洗って(TFF工程の一部として)、p−ニトロフェノールを除去し、0.1M HClで溶液のpHを約4に調整し、次いで水(400mL)で洗った(TFF工程の一部として)。ポリマー溶液を凍結乾燥すると、化合物ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2N(Me)BOC)が淡黄色固体(720mg、71%)として単離された。
Fmoc−Phe−Gly−NH−(CH2)6NH−Bocの合成:
無水物THF(20mL)中Fmoc−Phe−Gly−OH(0.66g)の溶液にN2下0℃でN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.307g)及び1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(0.201g)を加えた。15分撹拌した後、N−Boc−1,6−ジアミノヘキサン(0.322g)を加えた。反応混合物を室温に放置加温し、一夜撹拌した。固体を濾別し、それらをEtOAcで洗った。次いで濾液及び洗液を減圧濃縮した。得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2中0〜10%MeOH)で精製すると、Fmoc−Phe−Gly−NH−(CH2)6NH−Bocが白色固体(0.9g)として得られた。
Fmoc−Phe−Gly−NH−(CH2)6NH2−TFAの合成:
Fmoc−Phe−Gly−NH−(CH2)6NH−Boc(0.7g)をCH2Cl2(4mL)中にN2下0℃で溶解させ、次いでトリフルオロ酢酸(TFA)(4mL)を加えた。反応混合物を室温に放置加温し、N2下2時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣を高真空で乾燥すると、0.71gのFmoc−Phe−Gly−NH(CH2)6−NH2 TFAが得られた。この粗材料を用いて、さらなる精製なしに調製をした。
Fmoc−Phe−Gly−NH(CH2)6NH−CO−フマギロールの合成:
N2下、無水物CH2Cl2(20mL)及びDMF(1mL)中化合物Fmoc−Phe−Gly−NH(CH2)6−NH2TFA(0.71g)の0℃溶液に、ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(0.536g)を加えた。次いでジイソプロピルエチルアミン(ジPEA)(0.74mL)を加えた。反応混合物を室温に放置加温し、次いで同じ温度で一夜撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた残渣をEtOAc(70mL)中に溶解させた。EtOAcを水及び食塩水で洗った。次いで酢酸エチル溶液をMgSO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2中0〜10%MeOH)で精製すると、Fmoc−Phe−Gly−NH−(CH2)6NH−CO−フマギロールがオフホワイト色固体(0.81g)として得られた。
H−Phe−Gly−NH(CH2)6NH−CO−フマギロール の合成
N2下、無水物CH2Cl2(20mL)中化合物Fmoc−Phe−Gly−NH−(CH2)6NH−CO−フマギロール(0.80g)の0℃溶液にDBU(0.15g)を加えた。反応混合物を室温に放置加温した。溶媒を減圧除去し、得られた残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CH2C12中0〜10%MeOH)で精製すると、H−Phe−Gly−NH−(CH2)6H−CO−フマギロールが淡黄色ゴム(0.45g、76%)として得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GGFG−N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成及び基本手順B
N2下0℃で、無水物DMF(12mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GG−ONp)(0.68g)の溶液に無水物DMF(5mL)中H−Phe−Gly−NH(CH2)6NHCO−フマギロール(0.45g)を加え、続けてジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(0.25mL)を加えた。反応混合物を室温に放置加温し、N2下一夜撹拌後、3−アミノ−1−プロパノール(0.032g)を加えた。混合物をさらに1時間放置撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた残渣を300mLの蒸留水中に溶解させ、EtOAcで抽出した(4回)。飽和水性NaCl溶液(50mL)を用いて相分離を促進させた。痕跡量のEtOAcを、窒素ガス流下撹拌することによってポリマー溶液から除去した。ポリマー溶液をvacu capフィルター(pH=5.56)に通して濾過し、10KカプセルでTFFによって30mLに濃縮し、TFFによって水(700mL)で洗った。次いでポリマーを凍結乾燥すると、所望のポリマー複合体ポリ[HPMA−co−MA−GGFG−N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]が薄いピンク色の気泡体(0.685g)として得られた。スピロエポキシド含有量を、2−メルカプトピリミジンとの反応によって測定し、0.4mmol/gであると決定した。
ポリ[HPMA−co−MA−GGLG−N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成
標準的な技術を用いて、ジペプチドH−Leu−Gly−NH(CH2)6NHCO−Fumを調製し、基本手順Bを用いてポリ(HPMA−co−MA−GG−ONp)にカップリングさせた。
ポリ[HPMA−co−MA−GGVG−N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成
標準的な技術を用いて、ジペプチドH−Val−Gly−NH(CH2)6NHCO−Fumを調製し、基本手順Bを用いてポリ(HPMA−co−MA−GG−ONp)にカップリングさせた。
ポリ[HPMA−co−MA−GGGG−N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成:
標準的な技術を用いて、ジペプチドH−Gly−Gly−NH(CH2)6NHCO−Fumを調製し、基本手順Bを用いてポリ(HPMA−co−MA−GG−ONp)にカップリングさせた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(シス−4−アミノシクロヘキシルアミン−HCl)]経由のポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(シス−4−アミノシクロヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成:
ds−1,4−ジアミノシクロヘキサン(0.914g)及びポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)(1.5g)を用い、基本手順Cに従うと、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(ds−4−アミノシクロヘキシルアミン−HCl)]がオフホワイト色固体(1.08g)として得られた。
DMF16mL中ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(シス−4−アミノシクロヘキシルアミン−HCl)](0.98g)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(0.465g)、及びDIEA(0.268g)を用い、基本手順Fに従った。溶媒を蒸発させ、溶液を水で希釈した。水相(500mL合計)を酢酸エチル(80mL合計)で抽出し、追加の350mLの水を用い、TFFによって精製した。濃縮水を水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、凍結乾燥すると、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(シス−4−アミノシクロヘキシル)カルバモイルフマギロール]が薄いピンク色の固体(0.79g)として得られた。
1H NMR(DMSO−d6):δ7.90−8.35(m,4H,アミド−NH),7.0−7.70(m,25H,フェニルアラニン及びアミド−NH),5.26(m,H−5−Fum),5.18(bt,アルケン−Fum),4.60−4.90(m,14H),4.50−4.60(m,1H,フェニルアラニンのαプロトン),4.10−4.30(m,1H,ロイシンのαプロトン),3.40−3.80(m,21H),3.26(s,3H,OMe−Fum),2.80−3.10(m,31H),2.17(m,2H,アリル−Fum),0.37−2.0[m,166H{1.69(s,3H,Fum−Me),1.59(s,3H,Fum−Me),1.07(s,3H,Fum−Me)}]。
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2NH2HCl)の合成及び基本手順C又はジアミンとポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)の反応:
水(20mL)中エチレンジアミン(0.33g、5.49mモル)の溶液、pH11.7、を、37%HCl水溶液(17〜18滴)の添加によってpH9.1に調整した。溶液を氷浴中冷却し、DMF(6mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)(1.03g)を、温度を4℃より低く維持しながら20分で滴下して加えた。溶液を4℃で20分、室温で50分撹拌すると、レモンイエロー色の溶液、pH8.1、として得られた。溶液を40℃で蒸発させた。H2O(10mLを3回)を加え、蒸発させた。生成物を水(60mL)で希釈し、溶液をNaOHでpH8.0に調整した。溶液をVacuCapフィルターに通して濾過し、以下の通りTFFによって精製した。まず、ポリマー溶液を25mM NaCl溶液(800mL)で洗い、p−ニトロフェノールを除去した。溶液を水(400mL)で洗い、次いで0.1M HClでpH4に調整した。TFF濃縮水を回収し、フィルターを10mLの水で2回洗った。濃縮水と洗液を1つにまとめると、ポリマー溶液が得られ、これを凍結乾燥すると、化合物ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2NH2HCl)が淡黄色固体(0.71g、72%)として単離された。
N−[(2R)1−ヒドロキシ−2−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギロールの合成及び基本手順D:
p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(400mg、0.89mmol)及び(R)−2−アミノ−3−メチル−1−ブタノール(280mg、2.71mmol)の溶液を、エタノール(10mL)中室温で12時間撹拌した。黄色溶液を濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製すると、N−[(2R)1−ヒドロキシ−2−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギロール(340mg、0.83mmol)が無色油として得られた。
N−(6−ヒドロキシヘキシル)カルバモイルフマギロールの合成:
エタノール(10mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(150mg)及び6−アミノヘキサノール(48mg)を用い、基本手順Dに従った。生成物を無色油(110mg、78%)として単離した。
N−[1−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバモイルフマギロールの合成:
エタノール(3mL)及びTHF(1mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(100mg)及びシクロロイシノール(cycloleucinol)(52mg)を用い、基本手順Dに従うと、N−[1−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバモイルフマギロールが油(50mg)として得られた。
N−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)カルバモイルフマギロールの合成:
エタノール(3mL)及びTHF(2mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(100mg)及び2−アミノ−2−メチルプロパノール(40mg)を用い、基本手順Dに従うと、N−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)カルバモイルフマギロールが油(37mg)として得られた。
フマギル−6−イル(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレートの合成:
基本手順Dに従った。S−プロリノール(68mg、0.67mmol)をエタノール(4mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(150mg、0.335mmol)と反応させた。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製すると、フマギル−6−イル(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボキシレートが白色気泡体(81mg、63%)として得られた。
N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロールの合成:
メタノール(8mL)中1,6−ジアミノヘキサン(0.13g)の溶液を0℃に冷却し、メタノール(2mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(0.13g)を滴下して加えた。溶媒を回転蒸発によって2mLに減少させた。酢酸エチルを加え、有機相を水、0.1N NaOH、水、食食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を蒸発させ、残渣をエタノール(15mL)に溶解させた。DL−酒石酸(16mg)を加え、溶液を一夜保存し、次いで蒸発させて約0.5mLにした。エーテルを加えると、白色固体が形成された。固体を濾過によって回収し、エーテルで洗い、乾燥すると、N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロールの酒石酸塩(74mg)が得られた。
フマギル−6−イル[トランス−(4−アミノシクロヘキシル)]カルバメートの合成:
0〜5℃でメタノール(80ml)中トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン(1.3g)の溶液に、メタノール(20ml)及びCH2Cl2(20ml)中フマギル−6−イル4−ニトロフェニルカーボネート(1.0g)の溶液を30分で加え、次いで30分撹拌した。回転蒸発器での20mlへの濃縮及び酢酸エチル(75ml)での希釈の後、有機層を水(30ml)、0.1N NaOH(30ml)、水、そして食食塩水(30ml)で洗い、乾燥し(MgSO4)、減圧濃縮すると、0.78gの固体が得られた。これをエタノール(80ml)中に溶解させ、DL−酒石酸(127mg)を加えた。1時間後、溶液が形成され、これを一夜放置し、その後減圧濃縮し、実質上全てのエタノールを除去した。MTBE(100ml)を加え、濃縮し、MTBE(30ml)を加えた。固体を濾過によって回収し、MTBE(10mlで2回)で洗い、真空乾燥すると、フマギル−6−イル[トランス−(4−アミノシクロヘキシル)]カルバメートヘミ酒石酸(0.73g)、融点180〜185℃、が得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH(CH2)6NH2−HCl]の合成:
1,6−ジアミノヘキサン(621mg、5.36mmol)及びポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)(1.0g)を用い、基本手順Cに従った。粗生成物を、水性NaCl(25mM)を用いてTFF(5K)によって精製し、次いで0.1M HC1でpH4.0に酸性化し、水を使いTFFによってさらに精製すると、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH(CH2)6NH2−HCl]がオフホワイト色固体(860mg)として得られた。
p−ニトロフェニルN−[(2R)1−ヒドロキシ−2−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギル−6−イルカーボネートの合成及び基本手順E:
N2下0℃で塩化メチレン中アルコールN−[(2R)1−ヒドロキシ−2−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギロール(1.11g)の溶液にDMAP(660mg、5.40mmol)を加え、p−ニトロフェニルクロロホルメート(810mg)を少しずつ加えた。反応混合物を0℃で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、得られた残渣をEtOAc中に溶解させ、水、食塩水で洗い、乾燥した(Na2SO4)。EtOAcを蒸発させると、粗生成物が得られ、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ式、溶出は100%ヘキサン、次いで2〜30%EtOAcで)で精製した。純水な生成物を含有する画分を1つにまとめて蒸発させると、N−[(2R)1−(p−ニトロフェノールカルボニルヒドロキシ−2−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギロール(1.25g、80%)が白色固体として単離された。
N−[1−(p−ニトロフェノキシカルボニルヒドロキシメチル)−2−メチルプロパン−2−イル)カルバモイルフマギロールの合成:
基本手順Eに従い、ジメチルアルコール(60mg)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(46mg)、及びDMAP(37mg)を塩化メチレン(8mL)中で反応させた。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水(3回)、次いで食食塩水で洗った。有機相を乾燥し(Na2SO4)、蒸発させると、黄色気泡体(87mg)が得られ、これをさらなる精製なしで用いた。
N−[1−(p−ニトロフェノキシカルボニルヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバモイルフマギロールの合成:
基本手順Eに従い、N−[1−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバモイルフマギロール(実施例14の生成物、74mg)、p−ニトロフェニルクロロホルメート(53mg)、及びDMAP(43mg)を塩化メチレン(5mL)中で反応させた。抽出処理の後、N−[1−(p−ニトロフェノキシカルボニルヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバモイルフマギロール(100mg)を、さらなる生成なしで用いた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH(CH2)6NHカルバモイル−[1−ヒドロキシ−3−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギロール]の合成及び基本手順F:
0℃でDMF(8mL)中ポリマー(400mg)及びp−ニトロフェニルN−[(2R)1−ヒドロキシ−3−メチルブタン−2−イル]カルバモイルフマギル−6−イルカーボネート(240mg)の溶液にDIEA(0.11g)を滴下して加えた。溶液を0℃で1時間撹拌し、室温に放置加温した。3日後、溶媒を蒸発させ、水(80mL)を加えた。出発カーボネートが質量分析で全く検出できなくなるまで、水相を酢酸エチル(合計500mL)で抽出した。水相をTFF(10K)で精製し、濃縮水を凍結乾燥すると、複合体が白色固体(380mg、77%)として得られた。
1H NMR(DMSO−d6):δ8.25(bs,2H,アミド−NH),8.0(bs,1H,アミド−NH),7.70(bs,2H,アミド−NH),7.10−7.30(m,15H,フェニルアラニン及びアミド−NH),7.10(bt,1H,NH−Fum),6.92(bd,1H,NH−Fum),5.26(m,H−5−Fum),5.18(bt,アルケン−Fum),4.50−4.80(m,1H,フェニルアラニンのαプロトン),4.0−4.21(m,1H,ロイシンのαプロトン),3.50−3.84(m,19H),3.29(s,3H,OMe−Fum),2.80−3.10(m,28H),2.51(d,1H,J=4.4Hz,H−2−Fum),2.19(m,2H,アリル−Fum),0.82−1.92[m,131H{1.84(m,2H,Fum),1.72(s,3H,Fum−Me),1.60(s,3H,Fum−Me),1.09(s,3H,Fum−Me),0.84(dd,6H,Fum−イソプロピル}]。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(2−アミノエチル)カルバモイルフマギロール]の合成:
DMF(10mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2NH2−HCl)(200mg)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(100mg)、及びDIEA(57mg)を用いて、基本手順Fに従った。生成物を、水を使いTFF(10K)によって精製し、凍結乾燥すると、複合体が淡黄色固体(160mg)として得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N(Me)−(2−メチルアミノエチル)カルバモイルフマギロール]の合成:
DMF(5mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−N(Me)CH2CH2NHMe−HCl)(200mg)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(100mg)、及びDIEA(57mg)を用いて、基本手順Fに従った。生成物を、水を使いTFF(10K)を用いて精製し、凍結乾燥すると、複合体がオフホワイト色固体(180mg)として得られた。
ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−N−(2−アミノエチル)カルバモイルジヒドロフマギロールの合成:
DMF(10mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2NH2−HCl)(200mg)、p−ニトロフェニルジヒドロフマギル−6−イルカーボネート(200mg)、及びDIEA(57mg)を用いて、基本手順Fに従った。生成物を、水(150mL)を使いTFF(10K)によって精製し、凍結乾燥すると、ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−N−(2−アミノエチル)カルバモイルジヒドロフマギロールが淡黄色固体(160mg)として得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(3−アミノプロピル)カルバモイルフマギロール]の合成:
DMF(6mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2CH2NH2−HCl)(220mg)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(110mg)、及びDIEA(63mg)を用いて、基本手順Fに従った。溶媒を蒸発させ、得られた溶液を水で希釈した。水相を酢酸エチルで抽出し、350mLの水を用いてTFFによって精製した。濃縮水を凍結乾燥すると、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(3−アミノプロピル)カルバモイルフマギロール]が薄いピンク色の粉末(200mg)として得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(6−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成:
DMF(25mL)中ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(トランス−4−アミノシクロヘキシルアミン−HCl)](1.0g)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(0.48g)、及びDIEA(0.27g)を用いて、基本手順Fに従った。溶媒を蒸発させ、溶液を水で希釈した。水相(300mL)を酢酸エチル(合計700mL)で抽出し、追加の350mLの水を用いてTFFによって精製した。濃縮水を凍結乾燥するすると、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(4−アミノシクロヘキシル)カルバモイルフマギロール]が薄いピンク色の固体(0.9g)として得られた。
1H NMR(DMSO−d6):δ8.10−8.35(m,3H,アミド−NH),7.90−8.10(m,アミド−NH),7.05−7.32(m,22H,アミド−NH)5.27(m,H−5−Fum),5.18(bt,アルケン−Fum),4.60−4.90(m,14H),4.50−4.60(m,1H,フェニルアラニンのαプロトン),4.10−4.30(m,1H,ロイシンのαプロトン),3.40−3.80(m,21H),3.27(s,3H,OMe−Fum),2.80−3.20(m,33H),2.56(d,1H,H=3.90Hz,H−2−Fum),2.18(m,2H,アリル−Fum),0.37−2.0[m,147H{1.70(s,3H,Fum−Me),1.60(s,3H,Fum−Me),1.07(s,3H,Fum−Me)}]。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(トランス−4−アミノシクロヘキシル)カルバモイルフマギロール]の合成:
DMF25mL中ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(トランス−4−アミノシクロヘキシルアミン−HCl)](1.0g)、p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(0.48g)、及びDIEA(0.27g)を用いて、基本手順Fに従った。溶媒を蒸発させ、溶液を水で希釈した。水相(300mL)を酢酸エチル(合計700mL)で抽出し、追加の350mLの水を用いてTFFによって精製した。濃縮水を凍結乾燥すると、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(3−アミノヘキシル)カルバモイルフマギロール]が薄いピンク色の固体(0.9g)として得られた。
1H NMR(DMSO−d6):δ7.90−8.35(m,4H,アミド−NH),7.0−7.70(m,25H,フェニルアラニン及びアミド−NH),5.26(m,H−5−Fum),5.18(bt,アルケン−Fum),4.60−4.90(m,14H),4.50−4.60(m,1H,フェニルアラニンのαプロトン),4.10−4.30(m,1H,ロイシンのαプロトン),3.40−3.80(m,21H),3.26(s,3H,OMe−Fum),2.80−3.10(m,31H),2.17(m,2H,アリル−Fum),0.37−2.0[m,166H{1.69(s,3H,Fum−Me),1.59(s,3H,Fum−Me),1.07(s,3H,Fum−Me)}]。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−[2−(4−アミノフェニル)エチル]カルバモイルフマギロール]の合成:
0℃でDMF(6mL)中ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−OH](200mg)、N−[2−(4−アミノフェニル)エチル]カルバモイルフマギロール](100mg)、及びDIEA(75mg)の懸濁液にEDCI(合計44mg)を少しずつ加えた。溶液を室温に放置加温し、一夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を水中に懸濁させ、懸濁液をEtOAcで抽出した(7回、合計250mL)。水相を水(350mL)を用いてTFF(10K)によって精製した。濃縮水を凍結乾燥すると、ポリマーが白色のふわふわした固体(170mg)として得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH−2−[(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチル]カルバモイルフマギロール]の合成:
0℃で蒸留水(20mL)中2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)(0.79g、5.34mmol)の溶液(pH=11.56)に、溶液のpHが(pH計で測定して)9.01になるまで濃縮HClを加えた。DMF(6mL)及びH2O(10mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−ONp)(1.0g、0.534mmol)をアミン含有溶液に15分間かけて滴下して加え、反応混合物を0℃で15分撹拌した。次いで、反応混合物を室温に放置加温し、2時間撹拌した。溶液のpHを測定すると8.15であった。反応混合物を蒸留水(300mL)で希釈し、VacuCapフィルターに通して濾過し、反応フラスコを水(100mL)で洗った。ポリマー溶液をTFF(10K)によって濃縮して40mLにし、25mM NaCl(800mL)で洗ってp−ニトロフェノールを除去し、次いでpHを0.1M HClで4に調整し、そして水(400mL)で洗った。純粋なポリマー溶液を凍結乾燥すると、ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH−2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エチルアミン−HCl]がピンク色の固体(800mg、78%)として単離された。
N2下0℃で無水物DMF(5mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(93mg、0.208mmol)及びポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−2−[(2−(2−アミノエトキシ)]エトキシ)エチルアミン−HCl](200mg、0.104mmol)の混合物にDIEA(57mg、0.416mmol)を加えた。反応混合物を室温に放置加温し、12時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた残渣を水(30mL)中に懸濁させ、EtOAcで抽出し(形成される乳濁液からできる水相と有機相は遠心分離を用いて分離して)、必要以上のp−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート及びp−ニトロフェノールを除去した。窒素を水溶液に通してEtOAcの痕跡を除去し、TFF(5K)を用いて溶液を水(150mL)で洗うことによって精製し、DIEA塩酸塩を除去した。ポリマー溶液を凍結乾燥すると、所望のポリマー複合体ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−2−[2−(2−アミノエトキシ)エトキシエチル]カルバモイルフマギロール](220mg、95%)がオフホワイト色固体として得られた。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH−(6−アミノデシル)カルバモイルフマギロール]の合成:
N2下0℃で、無水物DMF(6mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(300mg、0.67mmol)及びポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−10−[デシルアミン−HCl](300mg、0.15mmol;アミンとして1,10−ジアミノデカンを用いた以外は実施例33と同様に作製した)の混合物にDIEA(83mg、0.64mmol)を加えた。反応混合物を室温に放置加温し、12時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、得られた残渣を水(30mL)中に懸濁させ、EtOAcで抽出し(形成される乳濁液からできる水相と有機相は遠心分離を用いて分離して)、必要以上のp−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート及びp−ニトロフェノールを除去した。窒素を水溶液に通して微量のEtOAcを除去した。TFF(10K)を用い、粗水溶液を水(150mL)で洗うことによって精製し、DIEA塩酸塩を除去した。ポリマー溶液を凍結乾燥すると、所望のポリマー複合体ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH−(10−アミノデシル)カルバモイルフマギロール](300mg、87%)がオフホワイト色固体として得られた。
N−(2−アセトアミドエチル)カルバモイルフマギロールの合成:
0℃でエタノール(5mL)中p−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネート(200mg)の溶液にN−(2−アミノエチル)アセトアミド(0.132mL)を加えた。溶液を0℃で1時間、室温で一夜撹拌した。反応物を酢酸エチルで希釈し、水で洗った。水相を酢酸エチルで逆抽出し、有機相を1つにまとめて乾燥した(MgS04)。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで精製した。生成物は黄色固体(120mg)であった。
次の化合物の合成:
0℃でDMF(6mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2NH2−HCl)(200mg)及びN−(5−カルボキシペンチル)カルバモイルフマギロール(96mg)の溶液にDIEA(104mg)を加え、続けてN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドハイドロクロライド(42mg)を加えた。溶液を室温に放置加温し、一夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を水(50mL)中に溶解させ、酢酸エチル(200mL)で抽出した。水相を、水(450mL)を使いTFFによって精製した。濃縮水を凍結乾燥すると、ポリマー(200mg)が淡黄色固体として得られた。
次の化合物の合成:
0℃でDMF(8mL)中ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N(CH2)6H2−HCl](216mg)、2−カルボキシエチルカルバモイルフマギロール(91mg)の溶液にDIEA(118mg)を加え、続けてN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドハイドロクロライド(88mg)を加えた。溶液を室温に放置加温し、一夜撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣を水(50mL)中に溶解させ、酢酸エチル(200mL)で抽出した。水相を、水(1L)を使いTFF(10K)によって精製した。濃縮水を凍結乾燥すると、ポリマー(170mg)が淡黄色固体として得られた。
次の化合物の合成:
DIEA(63mg)とともに、DMF(6mL)中ポリ(HPMA−co−MA−GFLG−NHCH2CH2CH2NH2−HCl)(220mg)及びカーボネート(実施例24、100mg)を用いて、基本手順Fに従った。反応物を酢酸エチルで抽出した。水を使ったTFF(10K)による精製に続けて、凍結乾燥すると、生成物が薄いピンク色の粉末(140mg)として単離された。
BocNHCH2CH2N(Me)CH2C(O)NHC(O)2−フマギル−6−イル(クロロアセチルカルバモイルフマギロールによるN−BOC、N’−メチルエチレンジアミンのアルキル化):
DMF(3mL)中ΤΝΡ−470(0.2g)及びDIEA(0.105g)の溶液を0℃に冷却した。DMF(3mL)中tert−ブチルN−[2−(メチルアミノ)エチル]カルバメート(0.105g)の溶液を加え、混合物を0℃で3時間、次いで一夜撹拌した。反応物を酢酸エチルで希釈し、水で抽出した。水相を酢酸エチルで逆抽出し、有機相を1つにまとめて食塩水で抽出し、乾燥し(MgSO4)、蒸発させると、油が得られた。生成物画分をシリカゲルクロマトグラフィー(メタノール/塩化メチレン)で精製し、蒸発させると、BocNHCH2CH2N(Me)CH2C(O)NHC(O)2−フマギル−6−イルが白色気泡体(0.16g、60%)として得られた。
tert−ブチルN−[2−アミノエチル]カルバメートとクロロアセチルカルバモイルフマギロールの反応:
DMF中Boc−エチレンジアミンの1M溶液の30uLアリコートをDMF(270uL)に加えた。溶液を0℃に冷却し、DMF(600uL)中TNP−470(48mg)の溶液を2分で滴下して加えた。反応物をLC/MSで監視した。観察した最大量の所望のアルキル化生成物は34%であった。カルバモイルフマギロールもまた生成させた。カルバモイルフマギロールに対する所望の生成物の比率は1.0対0.4であった。所望の生成物の単離を試みた結果、ヒダントイン及びフマギロールの単離となった。このようにして、所望の生成物は、分解速度のために単離することができなかった。このようにして、TNP−470は、記載した方法に従ってアルキル化することができなかった。
DIO C57B16マウスのin vivo試験−体重変化、摂食量、体組成
平均体重34gの13週齢のC57B16雄性マウス(N=6)に、Kcalの60%を脂肪から構成する高脂肪食(ハーラン(Harlan)食)であるTD.06414を自由に摂食させた。試験第1日に動物を、各群の平均体重が33.9gとなるように無作為に群に分けた。マウスをリン酸緩衝食食塩水(賦形剤)、TNP−470、又は化合物16のいずれかで治療した(背部、皮下投与)。治療を、下表に示す用量とスケジュールで31日間継続した。動物を隔日に体重測定した。摂食量を週に1回測定した。第33日に、肉眼所見を得て体組成を決定した。
図1は、表2に掲げる異なる用量/レジメンによって本発明のフマギロール−複合体化合物(化合物16)又はTNP−470(合成フマギリン類似体)で治療した後の、肥満DIOマウスにおける体重減少を比較する。
図1の結果は、賦形剤対照群の体重増加が16%、q4d投薬レジメンで化合物16を投与した場合の体重減少が19%であることを示す。化合物16の投与は治療的及び予防的効果の両方を提供する。具体的には、化合物16は、体重減少を誘導又は促進させ、また体重増加を防ぐ。化合物16は、体重減少の程度においてTNP−470よりも優れている。化合物16は、フマギロールの用量が低減される点においてTNP−470よりも優れている。
表3は、本明細書に記載する異なる用量/レジメンによって化合物16又はTNP−470で治療した後の、肥満DIOマウスにおける体脂肪組成を比較する。第33日に分析を実施して肉眼所見とした。賦形剤群の合計脂肪は、体重のパーセンテージとした場合、13.2%であり、一方、化合物16で治療された群の合計死亡は、8.2%(1mg/kg、qod)又は5.6%(6mg/kg、q4d)であった。
図2は、異なる用量/レジメンによって化合物16又はTNP−470で治療した後の、肥満DIOマウスにおける平均の1日摂食量を比較する。図2の結果は、化合物16で治療した後の減少摂食量を示し、化合物16はTNP−470よりも摂食量に大きい減少をもたらす。
図3は、異なる用量/レジメンによって化合物16又はTNP−470で治療した後の、肥満DIOマウスにおける体組成(脂肪対体重)を比較する。図3の結果は、減少した体重量が脂肪減少に直接相関することを示す。
DIO C57B16マウスのin vivo試験−体重変化、摂食量、糖耐能、体組成用量反応
平均体重42gの15週齢の雄性C57B16マウス(N=6)に、Kcalの60%を脂肪から構成する高脂肪食(ハーラン食)であるTD.06414を自由に摂食させた。試験第1日に動物を、リン酸緩衝食食塩水(賦形剤)又は化合物16のいずれかにより異なる用量で治療した(背部、皮下投与)。治療を、下表に示す用量とスケジュールで29日間継続した。動物を隔日に体重測定した。摂食量を週に1回測定した。第24日に(マウスは直近では第21日に化合物16で治療されている)、一夜絶食させる腹腔内(IP)耐糖能試験(GTT)を賦形剤群及び化合物16治療の4群に行った。各動物の体重測定をし、ベースラインの絶食グルコース測定値を収集した。各動物にキロ当たり1グラムの用量のブドウ糖を25%溶液として腹腔内注射によって与えた。血糖値を、(Abbott Laboratories(North Chicago,Illinois,USA)市販のAlphaTRAK血糖監視システム(グルコース計器及び試験紙を含む)を用いて尾部静脈血液試料を経由して)グルコースを腹腔内投与して15分、30分、60分、90分、及び120分後に測定した。AlphaTRAK計器は、20〜750mg/dL(1.1〜41.7mmol/L)の結果を表示する。第32日に(マウスは直近では第29日に投与が行われている)、動物を3時間絶食させ、体重測定し、心穿刺によって血液を採取し、肉眼所見を得て体組成を決定した。血液分析はIdexx laboratoriesが実施した。血糖は、用量0、0.2、0.6、2.0、及び6.0に対してそれぞれ278、290、265、259、及び227mg/dLであった。血中尿素窒素(BUN)は、用量0、0.2、0.6、2.0、及び6.0に対してそれぞれ21.8、22.0、19.7、15.3、及び16.5であった。
表4は、時間と化合物16用量の関数として血糖値を示す。表4は、化合物16の用量が高くなるとその結果血糖値が低くなり、用量が最も低い0.2mg/kgででもそうであることを示し、これらの結果は図4に示す。
表5は、化合物16の用量を増加させた場合、q4dの0.2mg/kgより多い用量で体重減少の有意な向上という結果になることを示す。表6は、q4dの2mg/kg及びq4dの6mg/kgの用量は、賦形剤対照に比べて摂食量の有意な減少につながること、及び摂食量が用量反応的であることを示す。第9〜29日から2mg/kgの群の1週間の摂食量は賦形剤の90%であったが、6mg/kgの群の摂食量は賦形剤の75%であった。
表7では、対照群のマウスは脂肪が約13%であるのに対して、2mg/kg・q4d群及び6mg/kg・q4d群のマウスは脂肪がそれぞれ11%及び10%である通り、脂肪組織が他の組織よりも先に失われることを示す。
図5の結果は、q4dスケジュールを用いて0.6mg/kg以上の用量の化合物16で治療した後の体重減少が向上していることを示す。重量減少は用量反応的であり、用量が上がるに従い重量減少が大きくなる。
表8の結果は、化合物16の用量増加に付随するコレステロール、トリグリセリド、HDL、LDL、及びHDL/LDL比の減少を示す。これらの結果を図6に示す。
表9の結果は、化合物16の用量増加に付随するアルカリホスファターゼ、SGPT、SGOT、及びCPKの好ましい変化を示す。
実施例
平均体重42gの15週齢の雄性C57B16マウス(N=6)に、Kcalの60%を脂肪から構成する高脂肪食(ハーラン食)であるTD.06414を自由に摂食させた。試験第1日に動物を、リン酸緩衝食食塩水(賦形剤)、又は用量2mg/kgの化合物16、28、29、若しくは30、又は6mg/kgの化合物31のいずれかで、q4dスケジュールに基づいて治療した(背部、皮下投与)。動物を隔日に体重測定した。図10は、本発明の様々な複合体で23日間治療した後の肥満DIOマウスにおける体重減少を比較する。図10の結果は、リンカーのみの変化の結果、体重減少の程度の変化となることを示す。
実施例
平均体重300gの9〜10週齢の雄性Sprague Dawleyラット(N=3)に、標準げっ歯類食餌(PharmaServ lab diet 5001)を自由に摂食させた。図7−ラットを、第1、8、15、22、及び29日に、100mg/kg又は200mg/kgのいずれかの化合物16で治療した(静脈内、尾部静脈)。定期的にラットの体重測定をし、第10、17、24日に採血した。生存中の血液採取のために、ラットに4%イソフルランと1.5%酸素の吸入用混合物で麻酔をかけ、次いで、少なくとも体積1mLの血液を、眼窩後叢(retro−orbital plexus)の穿刺により採取した。第31日に、動物を体重測定し、心穿刺によって血液を採取し、肉眼所見を得て体組成を決定した。正常範囲及び投与前データと比較した限りにおいては、アルブミン、アルブミン/グロブリン比、アルカリ性、ホスファターゼ、ALT(SGPT)、AST(SGOT)、炭酸水素塩、直接ビリルビン、間接ビリルビン、総ビリルビン、BUN、BUN/クレアチニン比、カルシウム、クロライド、コレステロール、CK、クレアチニン、グロブリン、グルコース、リン、カリウム、ナトリウム、ナトリウム/カリウム比、総タンパク質に関する臨床的所見に目立ったことはなかった。体重減少及び本明細書に報告される他の所見を別にすれば、動物は全体的に正常に見え、運動失調、失見当識、振戦、又は痙攣など、神経毒性の形跡はいずれも示さなかった。図7の結果は、化合物16が、q7d投薬スケジュールに基づく高い用量で許容されることを示す。
実施例
Sprague Dawley雄性ラット(N=3、平均体重350g)に、賦形剤、化合物1(30mg/kg)、又は化合物16(200mg/kg)のいずれかを1回の静脈内ボーラスによって投与した。0、0.25、0.5、1、2、4、8、24、及び48時間後に血液試料を伏在静脈穿刺により採取した。各試料のアリコートを、内部標準としてプロプラノロールを含有するメタノールで希釈して、2.5nMの定量下限を持つLC/MS/MSによって分析した。化合物1又は化合物16のいずれの投与の場合にも、分析物は化合物1であった。小分子化合物1の半減期は、10〜15分の範囲にあり、最高血中濃度(Cmax)は約15μΜであり、T0で起こる。ポリマー複合体の化合物16については、放出された小分子は、約3時間での約0.3μΜの最高血中濃度、及び10時間の最終排出半減期(terminal elimination half−life)を示す。これらの結果を図9に示す。
実施例 DIO Levinラットのin vivo試験−体重変化、摂食量、体組成、スケジュール−用量反応、レプチンレベル:
フマギロールポリマー複合体である化合物16、及び小分子フマギロール誘導体である化合物1、及びCKD−732(ベロラニブ(beloranib)及びZGN−433とも言われる)の相対的有効性を評価する試験を実施した。本明細書にいうCKD−732は、次の構造:
のヘミ酒石酸塩であり、化合物1もまたヘミ酒石酸塩の形で試験した。
試験物を、4日ごと(q4d)のスケジュールに基づき、食餌で誘導した肥満(DIO)Levin−DSラットモデルに皮下投与した。また、化合物16の有効性を週1回(q7d)投薬スケジュールに基づき評価した。薬物介入と比較するために食餌介入(標準Chow、Labdiet 5001;3.4kcal/g)を含めた。3週齢になったばかりの雄性ラットに、カロリーの60%を脂肪からとし、カロリーの21%を炭水化物からとするハーラン食TD.06414;5.1kcal/gのペレットを自由に取らせた。投薬の前にラットを、平均体重が595gmの3匹の動物の群に無作為に分けた。ラットを、リン酸緩衝食食塩水(賦形剤)、化合物16若しくは化合物1、又はCKD−732のいずれかで治療した(背部、皮下投与)。化合物16を賦形剤中に溶解させた。ヘミ酒石酸の形式の化合物1及びヘミ酒石酸の形式のCKD−732をエタノールに溶解させ、その後賦形剤で希釈した。全ての用量は、5.0ml/kgの体積であった。治療を、下の表10に示す用量及びスケジュールで68日間継続した。CKD−732の分子量は化合物1の分子量より15%大きいので、CKD−732を1.15mg/kgで投与し、一方、化合物1は、モル基準の比較を目的として、1mg/kgで投与した。第1日に第1回目の投与で、ラットは14週齢であった。また、第1日に、群2を高脂肪食から標準chow食へ切り替え、その他の群は試験期間中高脂肪食を維持した。
動物は隔日に体重測定した。摂食量は週に1回測定した。試験全体を通して約週に1回、グルコース及びインスリンを含む血清化学の評価のために血液試料を取った。第48日に、全てのラットに、4時間の絶食経口耐糖能試験(OGTT)を受けさせた。動物に、8mL/kg 25%グルコース(2g/kg)を経口(per os、PO)投与した。第68日に、肉眼所見を得て体組成を決定した。
図11は、各群について、試験日に対する体重の変化を示す。Q4D及びQ7Dのポリマー複合体投与群の両方に、体重の有意な減少が見られた。3mg/kg(Q4D)又は6mg/kg(Q7D)の化合物16での治療は、標準chowへの変更より大きい体重減少を示した。試験の終わりに、Q4Dスケジュールに基づく3mg/kgでの化合物16は、賦形剤対照より22.1%低い体重、標準chow食に基づくラットより6.2%低い体重を示した。約10週後、Q7Dスケジュールに基づく6mg/kgの化合物16での治療は、Q4Dスケジュールに基づく3mg/kg用量での治療に類似の体重を示した。Q4Dスケジュールに基づいて1mg/kgで投与される化合物1及び1.15mg/kgで投与されるCDK−732は、賦形剤より3.9%又は3.2%低い体重を示した。Q4Dスケジュールに基づいて3mg/kgで投与される化合物1は、賦形剤より8.9%低い体重を示した。ポリマー複合体は、重量で活性フマギロール誘導体の約1/6である。
図12は、フマギロール曝露平均日量の関数として、全ての群の第68日の最終体重を示す。賦形剤及び標準食餌の両方ともフマギロール曝露はなかった。化合物16は、このポリマー複合体と同じスケジュールに基づく化合物1又はCKD−732に比べて有意に低いフマギロール曝露で、より大きい体重減少を示す。全ての群には、Q7Dで投与した6mg/kgの化合物16を除いて、Q4Dスケジュールに基づいて投与した。
図13は、q4d(3mg/kg)及びq7d(6mg/kg)スケジュールで60%脂肪食を維持し本発明の化合物を投与された雄性Levin DIOラットの場合の血清インスリンレベルの減少を、標準食餌介入及び賦形剤群の場合と比較して示す。
表12は、各群の絶食時インスリンレベルの変化を示す。全ての群(賦形剤対照群は除く)がインスリンレベルの減少を示し、本発明の化合物が頻度の少ない投薬スケジュールに基づいてインスリンレベルを低下させることを例証した。
図14は、q4d及びq7dスケジュールに基づいて本発明の化合物で治療したラットのインスリンレベルに関する経口耐糖能試験(OGTT)の結果を、標準食餌介入及び賦形剤群の場合と比較して示す。標準食餌介入もまた、インスリンレベルがより低いという結果であった。賦形剤に比較して、インスリンレベルは、異常に高いグルコースレベルの存在下で減少したままであり、血糖を減少させるのに必要なインスリンのレベルがより低くて(図15参照)、インスリン感受性の改善/回復を示唆することを示す。
図15は、経口グルコースチャレンジに続く異なる治療での減少したグルコースレベルを対時間で示す。
図16は、雄性Levin DIOラットにおいて、インスリン感受性の通常認められている指数であるグルコース(mM/L)×インスリン(uU/ml)/22.5による積を示す(Matthewsら、Diabetologia (1985)28,412±419;Pickavanceら、British Journal of Pharmacology(1999) 128,1570±1576)。
脂肪細胞ホルモンのレプチンは公知の食欲抑制因子である。レプチン抵抗性(摂食量とは関係のない異常に高いレベル)は、食事性肥満をもった患者や動物に生じることが知られている(Levinら、Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol.2002 Oct;283(4):R941−8)。低レベルのレプチンは過食症に結びつけられてきた(Sindelarら、1999,Enrioriら、2006)。摂食量を週に1回測定した。血清レプチンレベルを、第29日に測定し、第29日を含む週の摂食量に対してプロットした。標準chow食に基づく動物は食欲過剰であり、本発明の化合物が示したより、レプチンレベルに対して有意に大きい摂食量を示した。化合物1での治療は、レプチンレベルの有意な減少という結果にはならなかった。図17は、各群について1週間の摂食量をグラムで示す。標準chow群は、高脂肪食から標準食への切り替え後に摂食量の有意な増加を示した。過食症は、カロリー摂取を維持するために起こることが知られている。
図18は、高脂肪食を維持し、本発明の複合体又は標準chow介入で治療された雄性Levin DIOラットにおける、レプチンレベルのベースラインからの変化を示す。化合物16について、レプチンレベルのベースラインからの変化に用量依存反応を観察した。
実施例 DIOマウスのin vivo試験−体重変化、摂食量、スケジュール−用量反応
平均体重46.8gの21週齢の雄性C57B1/6マウス(N=9/群)に、Kcalの60%を脂肪から構成する高脂肪食を自由に摂食させた。動物に下の表17表のスケジュールに従って投与を行った。
化合物投与は投与の日の9〜10amに行った。群6及び7は合計17回の投与を受けた。q4d群(1、2、3、4、8、9)は合計9回の投与を受けた。q8d群(5)は合計5回の薬物投与を受けた。体重と摂食量を隔日に測定した。血糖を第−7、0、7、14、21、及び28日の9:00amに摂食状態で測定した(投与日の投与の前に血糖を測定した)。血糖を血糖計で測定した。腹腔内耐糖能試験(ipGTT、6時間絶食)を実施した。
試験は第34日に終了した。肝臓及び精巣上体白色脂肪組織(eWAT)を採取し、重量測定し、−80℃で保存した。血清を採取し、AST、ALT、ALP、CK、BUN、クレアチニン、カルシウム、カリウム、ナトリウム、クロライド、総タンパク質、アルブミン、総ビリルビン、グルコース、トリグリセリド、及びコレステロールを決定した。インスリン試料を、市販のキットを用いて測定した。
本実施例でポリマーと呼ばれるものはポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(6−アミノヘキシル)アセトアミドであり、フマギロールを含有しないポリマーである。ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(6−アミノヘキシル)アセトアミドの合成は国際公開第2011/150022号パンフレットに記載され、この文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(6−アミノヘキシル)アセトアミド]の構造
図19は、Q8Dスケジュールに基づく12mg/kg用量は、Q4Dスケジュールに基づく6mg/kg用量よりも大きい初期体重減少という結果になるという驚くべき予想外の発見を示す。試験終了により、Q8Dの群は体重減少が止んだが、6mg/kgの群は体重の減少が継続したようであった。フマギロールを含有しないポリマーは、賦形剤と同様の体重変化を示す。
図20は、Q2D(QOD)スケジュールに基づいて投与された小分子CKD−732(化合物B)が、Q4Dスケジュールに基づいて投与された同じ平均1日量よりも良好な反応を示したことを示す。予想通り、小分子は、より頻繁な投薬よりも良好な反応を示す。
図21は、本発明の化合物での摂食量の減少を示す。Q8Dスケジュールに基づく12mg/kgの群での、摂食量の初期の有意な減少、及び引き続く回復とその後の周期的な減少−回復パターンに留意されたい。
図22は、高脂肪食を維持した雄性C57B16マウスにおける、ipGTT中の有意に減少したインスリンレベルを示す。本発明の化合物は、高血糖の存在下でβ細胞が排出するインスリン量を大きく減少させ、抵抗性の減少とインスリン感受性の向上を示す。また、絶食時インスリンも全ての化合物16群のマウスで減少したことに留意されたい。
図23は、治療群の関数として、グルコースチャレンジの間高脂肪食を維持した雄性C57B16マウスにおける総インスリンAUCの変化を示す。
図24は、治療期間を通じて、賦形剤及びポリマー群に比べて血糖が低下していることを示す。
図25は、グルコース(mg/dl)とインスリン(μU/ml)の積/405(Akagiriら、A Mouse Model of Metabolic Syndrome,J.Clin.Biochem.Nutr.,42,150−157,March 2008)、すなわち、インスリン抵抗性の、認められた測定方法であり循環器疾患の予測方法であるHOMA−ir測定(Bonoraら、Diabetes Care.2002,25,1135−1141)を示す。
実施例 DIOマウスモデルにおける様々な化合物の有効性
C57B16雄性マウス(N=6)に、Kcalの60%を脂肪から構成する高脂肪食(ハーラン食)であるTD.06414を自由に摂食させた。試験第1日に動物を、各群のマウスの平均体重が47gとなるように無作為に群に分けた。マウスをリン酸緩衝食食塩水(賦形剤)か又は、賦形剤中に溶解させた表19に列記する化合物かのいずれかで治療した(背部、皮下投与)。治療を、下の表19に示す用量とスケジュールで26日間継続した。本実施例でポリマーと呼ばれるものはポリ[HPMA−co−MA−GFLG−N−(6−アミノヘキシル)アセトアミドであり、フマギロールを含有しないポリマーである。
化合物シス−16は、化合物16の図示にある通り、1,4−ジアミノシクロヘキサンがトランス立体配置ではなくはシス立体配置にある化合物16である。
化合物aaは、2KDa MW メトキシ末端PEGアミン及びp−ニトロフェニルフマギル−6−イルカーボネートの反応生成物である。
化合物bbは:
である。ポリ[HPMA−co−MA−GFLG−NH−2−[(2−(2−アミノエトキシ)エトキシ)エチル]カルバモイルフマギロール]の合成は国際公開第2011/150022号パンフレットに記載されており、この文献はその全体が参照により援用される。