以下では、本実施形態の赤外線センサ100について、図1、2A、2B、2C、3〜6、7A、7B、8〜16、17A、17B、17C、18、19及び20に基づいて説明する。
赤外線センサ100は、筐体1と、筐体1内に収納され、赤外線検出素子2を有するセンサ本体20と、赤外線検出素子2に赤外線を集光する複数のレンズ4を有するレンズ部品5と、筐体1の開口部10を塞いでレンズ部品5を覆うレンズカバー6と、を備える。レンズカバー6は、レンズカバー本体60の背面から突出するリブ62が、センサ本体20とレンズ部品5とで決まる赤外線受光経路61(図14参照)を避けて形成されている。よって、赤外線センサ100は、感度の低下を抑制しながらもレンズカバー6の機械的強度を向上させることが可能となる。
赤外線センサ100は、更に、回路基板7を備え、センサ本体20が回路基板7に実装されているのが好ましい。回路基板7は、プリント基板により構成されている。
赤外線センサ100の各構成要素については、以下に、より詳細に説明する。
筐体1は、合成樹脂製のボディ11と、合成樹脂製のカバー12と、を2本のねじ13で結合して構成されている。ここで、筐体1は、ボディ11の下壁11aから上方へ突出した2つの円筒状の第1ボス11dが形成されている。ボディ11の下壁11aには、2つの第1ボス11dそれぞれに対応する位置に、ねじ13を通す挿通孔11aaが形成されている。また、筐体1は、カバー12の上壁12aから下方へ突出した2つの円柱状の第2ボス12dが形成されている。第2ボス12dには、第1ボス11dに挿通されたねじの軸部が嵌め合されるねじ孔12eが形成されている。筐体1は、各第1ボス11dの上面から突出したねじ13を、カバー12の各第2ボス12dのねじ孔12eに嵌め合せることによって、ボディ11とカバー12とが結合されている。筐体1は、ボディ11とカバー12とを結合した状態で筐体1の正面壁1bに開口部10が形成される。筐体1の開口部10は、レンズカバー6により塞がれる。レンズカバー6は、筐体1の内側から開口部10を塞ぐように配置されている。
ボディ11及びカバー12の樹脂材料としては、例えば、ASA(アクリロニトリルスチレンアクリート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等を採用することができる。また、ボディ11及びカバー12は、樹脂材料に黒色顔料や白色顔料を添加した材料の成形品により構成されているのが好ましい。黒色顔料及び白色顔料としては、無機顔料が好ましい。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック等を採用することができる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン、亜鉛華(酸化亜鉛)等を採用することができる。筐体1は、ボディ11とカバー12とが同じ材料により形成されているのが好ましい。
センサ本体20は、赤外線検出素子2を収納したパッケージ21を備えている。パッケージ21は、台座27と、台座27に固着されるキャップ28と、を備え、キャップ28における赤外線検出素子2の前方に窓孔28dが形成された構成とすることができる。窓孔28dは、赤外線を透過する赤外線透過部材29により閉塞されている。赤外線透過部材29としては、例えば、シリコン基板やゲルマニウム基板等を用いることができる。赤外線透過部材29は、適宜の光学フィルタ膜、反射防止膜等を備えているのが好ましい。
台座27は、金属製であるのが好ましい。台座27は、円板状に形成されている。台座27の周部には、台座27の中央部に比べて薄いフランジ27bが形成されている。キャップ28は、金属製であるのが好ましい。キャップ28は、筒体28aと、第1フランジ28bと、第2フランジ28eと、を備えているのが好ましい。筒体28aは、円筒状に形成されている。第1フランジ28bは、筒体28aにおける台座27に近い側の第1端部から外方へ突出している。第2フランジ28eは、筒体28aにおける第1端部とは反対の第2端部から内方へ突出している。キャップ28は、第2フランジ28eの内周面が窓孔28dの内周面を構成している。キャップ28は、全体として、有底円筒状の形状である。
台座27には、第1リードピン29a、第2リードピン29b及び第3リードピン29cが、台座27の厚さ方向に貫通して設けられる。台座27は、第1リードピン29a、第2リードピン29b及び第3リードピン29cを保持している。第1リードピン29aは、センサ本体20の出力信号の取り出し用の端子を構成している。また、第2リードピン29bは、センサ本体20の給電用の端子を構成している。また、第3リードピン29cは、センサ本体20のグラウンド用の端子を構成している。
上述のパッケージ21は、台座27のフランジ27bと、キャップ28の第1フランジ28bとを、溶接により、気密性が確保できるように接合してある。台座27は、フランジ27bの外周縁の1箇所から外方に突出する突片27c(図5参照)が設けられている。また、キャップ28は、第1フランジ28bの外周縁の1箇所から外方に突出する突片28c(図5参照)が設けられている。台座27とキャップ28とは、互いの突片27c、28c同士が重なるように位置決めして溶接されている。
赤外線検出素子2は、例えば、図7A、7B及び8に示すように、1枚の焦電体基板23に4個の検出部24が形成されたクワッドタイプの焦電素子により構成することができる。
赤外線検出素子2は、1枚の焦電体基板23に、4個の検出部24が2×2のアレイ状に配列されている。赤外線検出素子2は、各検出部24の平面視形状を正方形状とすることができる。赤外線検出素子2は、焦電体基板23の中央部において焦電体基板23の外周線23dよりも内側の仮想正方形VR1(図8参照)の4つの角それぞれに検出部24の中心が位置するように配置されている。
焦電体基板23は、焦電性を有する基板である。焦電体基板23は、例えば単結晶のLiTaO3基板により構成されている。
各検出部24は、焦電体基板23の表面23aに形成された表面電極25と、焦電体基板23の裏面23bに形成された裏面電極26と、焦電体基板23において表面電極25と裏面電極26とで挟まれた部分23cと、で構成されるコンデンサである。図7Aでは、各検出部24においてレンズアレイ40側に位置する表面電極25の極性を、“+”、“−”の符号で示してある。検出部24の受光面24aは、表面電極25の表面である。赤外線検出素子2は、4個の検出部24のうち、仮想正方形VR1の一方の対角線上にある同極性の2個の検出部24同士が並列接続され、他方の対角線上にある同極性の2個の検出部24同士が並列接続されている。要するに、赤外線検出素子2は、図7Aの左右方向に沿って並んで形成されている2個の検出部24同士が逆並列に接続され、且つ、図7Aの上下方向に沿って並んで形成されている2個の検出部24同士が逆並列に接続されている。
赤外線検出素子2が複数個の検出部24を備えている場合、赤外線検出素子2の受光面2aは、複数の検出部24の各々の受光面24aを内包する最小の凸多角形VR2(図8参照)の外周線で囲まれた領域の表面を意味する。したがって、図8の例では、最小の凸多角形VR2は、上述の仮想正方形VR1よりも大きな正方形となる。
検出部24は、平面形状が正方形状であり、一辺の長さを0.6mmに設定してある。要するに、検出部24は、表面電極25の平面形状を、0.6mm×0.6mmの正方形状としてある。検出部24は、一辺の長さを0.5mm〜0.7mm程度の範囲で設定するのが好ましい。
赤外線検出素子2は、仮想正方形VR1の一方の対角線上にある同極性の2個の検出部24が、左右方向に並ぶように配置されている(図12参照)のが好ましい。つまり、赤外線検出素子2は、上述の仮想正方形の1つの対角線に沿った方向を左右方向として配置されているのが好ましい。この場合、赤外線センサ100は、図7A及び8に示した赤外線検出素子2が、正面視で45°だけ回転させた状態で赤外線透過部材29に臨んでいる(図12参照)。これにより、赤外線センサ100は、左右方向において隣り合う2つの赤外線受光経路61を人が横切るときに、当該2つの赤外線受光経路61それぞれに対応する検出部24同士の出力が相殺されるのを抑制することが可能となる。
センサ本体20は、図9に示すように、赤外線検出素子2の他に、増幅回路201と、帯域フィルタ202と、比較回路203と、出力回路205と、を備えている。
センサ本体20は、増幅回路201と、帯域フィルタ202と、比較回路203と、出力回路205と、が1つのIC素子206に集積化されているのが好ましい。そして、センサ本体20は、赤外線検出素子2とIC素子206とが実装された基板(図示せず)が、パッケージ21内に収納されているのが好ましい。
増幅回路201は、赤外線検出素子2の出力信号を増幅する回路である。増幅回路201は、例えば、電流電圧変換回路と、電圧増幅回路と、で構成することができる。電流電圧変換回路は、赤外線検出素子2から出力される出力信号である電流信号を電圧信号に変換して出力する回路である。電圧増幅回路は、電流電圧変換回路により変換された電圧信号のうち所定の周波数帯域の電圧信号を増幅して出力する回路である。
帯域フィルタ202は、増幅回路201で増幅された電圧信号から、雑音となる不要な周波数成分を除去するフィルタである。
比較回路203は、増幅回路201で増幅された電圧信号と予め設定された閾値とを比較し電圧信号が閾値を超えたか否かを判断する回路である。比較回路203は、例えば、コンパレータ等を用いて構成することができる。
出力回路205は、比較回路203において電圧信号が閾値を超えたと判断されたときに検知信号を出力信号として出す回路である。
回路基板7は、外周形状を六角形状の形状としてある。赤外線センサ100は、回路基板7の厚さ方向が、センサ本体20とレンズ部品5とレンズカバー6とが並ぶ方向に沿った方向となるように、筐体1内に配置されている。ここで、ボディ11には、回路基板7の略下半分における両側部それぞれを位置決めする一対の第1ガイド部11fが、下壁11aから上方へ突出して形成されている。第1ガイド部11fは、筐体1の上下方向に直交する断面がU字状の形状に形成されている。また、ボディ11には、回路基板7の下端縁に当接する第1突起11gが、下壁11aから上方へ突出して形成されている。また、カバー12には、回路基板7の略上半分における両側部それぞれを位置決めする一対の第2ガイド部12fが形成されている。また、カバー12には、回路基板7の上端縁に当接する第2突起12gが、上壁12aから下方へ突出して形成されている。よって、赤外線センサ100は、筐体1に対する回路基板7の位置精度を向上させることが可能となる。これにより、赤外線センサ100は、筐体1内におけるセンサ本体20の位置精度を向上させることが可能となる。第2突起12gは、回路基板7の厚さ方向に沿った方向の厚さを、回路基板7よりも厚く設定してある。これにより、筐体1は、回路基板7をより安定して位置決めすることが可能となる。
筐体1の背壁1cには、回路基板7に電気的に接続される電線が通る孔16が形成されている。
レンズ部品5の各レンズ4は、集光レンズであり、凸レンズにより構成されている。
レンズ部品5は、各レンズ4それぞれの赤外線検出素子2側での焦点が同一位置となるように設計してあるのが好ましい。レンズ4の焦点距離は、約10mmに設定してある。
レンズ部品5は、複数のレンズ4がアレイ状に配置されている。要するに、レンズ部品5は、複数のレンズ4により構成されるレンズアレイ40が一体に形成されている。より詳細には、レンズ部品5は、複数のレンズ4が、上段、中段及び下段の3列に分けて配置されている。レンズ部品5は、上段の列の一群のレンズ4が、レンズ部品本体50の上下方向における略中央に配置されている。レンズ部品5は、ドーム状に形成されたレンズ部品本体50の一部がレンズアレイ40を構成している。より詳細には、レンズ部品5は、上段の列、中段の列及び下段の列に、それぞれ、7個、6個及び4個のレンズ4が設けられている。要するに、レンズ部品5は、17個のレンズ4を備えている。レンズアレイ40は、赤外線が入射する第1面41が、各レンズ4の光入射面の一群により構成され、赤外線が出射する第2面42が、各レンズ4の光出射面の一群により構成されている。ここで、レンズアレイ40は、第1面41が半球面の一部により構成され、第2面42が凹凸を有している。これにより、レンズアレイ40は、第1面41が凹凸を有している場合に比べて、外観を向上させることが可能となる。
レンズアレイ40は、隣り合うレンズ4の光出射面同士の境界が線状であるのが好ましい。これにより、レンズアレイ40は、隣り合うレンズ4間の隙間を低減することが可能となる。よって、赤外線センサ100は、高感度化を図ることが可能となる。
図15は、本実施形態の赤外線センサ100におけるレンズ部品5と赤外線検出素子2とで形成可能な検知エリアと、比較例の赤外線センサにおける赤外線検出素子とレンズ部品とで形成可能な検知エリアと、の比較説明図である。図15では、赤外線センサ100の検知エリアを決める赤外線受光経路61を模式的に記載し、比較例の赤外線センサの検知エリアを決める赤外線受光経路161を模式的に記載してある。赤外線受光経路61は、赤外線検出素子2と、赤外線検出素子2の受光面2aの中心2bから正面方向において一定距離(例えば、5m)だけ離れ且つ正面方向に直交する仮想平面と、の間に形成される。赤外線受光経路61は、レンズ4を通して検出部24に入射する赤外線束を赤外線の進む方向と反対の方向に延長したときに形成される3次元領域である。言い換えれば、赤外線受光経路61は、赤外線検出素子2の検出部24の受光面24a上に像をつくるために使われる赤外線束が通ることができる赤外線通過領域を意味する。更に言えば、赤外線受光経路61は、検知対象の物体(人体)からの赤外線を検出する有効領域である。比較例の赤外線センサの赤外線受光経路161は、赤外線センサ100の赤外線受光経路61と同様に定義される。
比較例の赤外線センサは、赤外線検出素子が、デュアルタイプの焦電素子であり、2つの検出部が横並びで配置されている。検出部は、平面形状が長方形状であり、長辺の長さを1.0mmに設定してある。このため、比較例の赤外線センサにおけるレンズ部品では、レンズの焦点距離を、赤外線センサ100におけるレンズ部品5のレンズ4の焦点距離よりも長い16mmに設定してある。赤外線センサ100は、検出部24のサイズが1mm×1mm程度であり且つレンズ部品5の焦点距離が16mm程度である比較例に比べて、レンズ部品5の小型化を図ることが可能となる。また、比較例の赤外線センサにおけるレンズ部品は、12個のレンズを備えている。より詳細には、比較例の赤外線センサにおけるレンズ部品は、上段の列、下段の列に、それぞれ、8個、4個のレンズが設けられている。
比較例の赤外線センサの検知エリアは、赤外線検出素子とレンズ部品とで決めることが可能である。この場合、比較例の赤外線センサの検知エリアには、各レンズごとに、検出部の数の赤外線受光経路61が形成される。
比較例の赤外線センサは、レンズ部品におけるレンズの数が12個であり、赤外線検出素子における検出部の数が2個なので、12×2=24個の赤外線受光経路161が形成される。
赤外線センサ100の検知エリアは、赤外線検出素子2とレンズ部品5とで決めることが可能である。この場合、赤外線センサ100の検知エリアには、各レンズ4ごとに、検出部24の数の赤外線受光経路61が形成される。なお、赤外線センサ100は、赤外線検出素子2とレンズカバー6との距離が1.5mm程度であり、赤外線検出素子2とレンズカバー6との距離が仮想平面までの距離に比べて非常に短い。このため、図14では各レンズ4ごとに形成される4個の赤外線受光経路61が繋がって1個に見えている。
赤外線センサ100は、レンズ部品5におけるレンズ4の数が17個であり、赤外線検出素子2における検出部24の数が4個なので、17×4=68個の赤外線受光経路61が形成される。
本実施形態の赤外線センサ100は、複数のレンズ4が上段、中段及び下段の3列に分けて配置されていることにより、比較例の赤外線センサに比べて、上下方向における検知エリアを広くすることが可能となる。なお、赤外線受光経路61のサイズは、赤外線検出素子2の周波数特性、想定している人体の移動速度等に基づいて、適宜設計するのが好ましい。
レンズ部品5の材料としては、例えば、ポリエチレンを採用するのが好ましい。レンズ部品5は、例えば、成形法により形成することができる。成形法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法等を採用することができる。
レンズ部品5は、複数のレンズ4を有するレンズ部品本体50における複数のレンズ4以外の部位の厚さが、各レンズ4の厚さよりも厚いのが好ましい。これにより、赤外線センサ100は、複数のレンズ4以外の部位の厚さが各レンズ4の厚さ以下の場合に比べて、不要な方向からの赤外線を減衰させることが可能となる。要するに、赤外線センサ100は、検知エリア以外の不要な方向からレンズ部品5に入射する赤外線の透過率を低下させることが可能となる。よって、赤外線センサ100は、不要な方向からレンズ部品5へ入射した後に赤外線検出素子2へ入射する赤外線の入射量を低減することが可能となり、赤外線検出素子2の誤検知による出力を抑制することが可能となる。レンズ部品5において、各レンズ4よりも厚くする厚肉部分52は、レンズ部品本体50におけるレンズアレイ40以外の一部に設けてあるが、レンズ部品本体50におけるレンズアレイ40以外の全体に設けてもよい。
レンズ4で制御する制御対象の赤外線は、例えば、5μm〜25μmの波長域の赤外線が挙げられる。レンズ4は、レンズ4の厚さが厚いほど制御対象の赤外線の透過率が低下する。レンズ4は、厚さが0.1mm厚くなると、垂直入射する制御対象の赤外線の透過率が概ね10%程度、低下する。垂直入射するとは、レンズ4の光入射面の任意の点に、この任意の点の法線に沿って入射することを意味する。また、レンズ4は、光入射面の任意の点に斜め入射する制御対象の赤外線の光路長が、この任意の点に対応するレンズ4の厚さよりも長くなって透過率が低くなりすぎる懸念がある。斜め入射するとは、レンズ4の光入射面の任意の点に、この任意の点の法線に対して傾いた方向から入射することを意味する。
レンズ部品5は、レンズ4の厚さを0.7mm〜0.8mm、隣り合うレンズ4同士の境界の厚さを0.25mm、厚肉部分52の厚さを1mmに設定してある。厚肉部分52の厚さは、レンズ部品5の成形性の観点から、レンズ4の厚さの2倍以下が好ましい。
また、レンズ部品5は、複数のレンズ4を有するレンズ部品本体50における複数のレンズ4以外の部位の表面を粗面としてあるのが好ましい。これにより、赤外線センサ100は、不要な方向からの赤外線を粗面により散乱させることが可能となるから、複数のレンズ4以外の部位の表面を粗面としていない場合に比べて、不要な方向からの赤外線の透過率をより低下させることが可能となる。よって、赤外線センサ100は、赤外線検出素子2の誤検知による出力を抑制することが可能となる。レンズ部品5において粗面とする表面は、例えば、レンズ部品本体50の背面が好ましい。
本明細書における粗面は、例えば、JIS B 0601−2001やISO 4287−1997等で規定されている算術平均粗さRaが、検出対象の赤外線の下限波長以上であるのが好ましい。人体から放射される赤外線は、5μm〜25μm程度なので、検出対象の赤外線の下限波長は、5μmに設定することができる。よって、粗面は、算術平均粗さRaが5μm以上であるのが好ましい。
レンズ部品5の粗面は、例えば、レンズ部品本体50の背面側に形成されているのが好ましい。レンズ部品5の粗面は、例えば、レンズ部品本体50にシボ加工を施すことにより形成することができる。
レンズ部品5は、複数のレンズ4以外の部位の厚さをレンズ4の厚さ以下として、複数のレンズ4以外の部位の表面を粗面としてもよい。この場合、赤外線センサ100は、複数のレンズ4以外の部位の表面を粗面としていない場合に比べて、不要な方向からの赤外線の透過率を低下させることが可能となる。
赤外線センサ100は、センサ本体20とレンズ部品5とを連結する合成樹脂製のアダプタ8を備えているのが好ましい。
アダプタ8は、センサ本体20が取り付けられる第1取付部81と、レンズ部品5が取り付けられる第2取付部82と、第1取付部81と第2取付部82とを連結する連結部83と、を一体に備えている。
第1取付部81は、センサ本体20を囲む円筒状の筒体部81aを備える。連結部83は、筒体部81aの第1端縁から全周に亘って外方へ突出する形状に形成されている。連結部83は、筒体部81aの内部空間に連通する円形状の開口部83a(図6参照)を有する。連結部83の外周形状は、円形状に形成されている。
第1取付部81は、筒体部81aの第1端縁とは反対側の第2端縁に第1凹部81bが形成されている。第1凹部81bは、筒体部81aの第2端縁側および内側面側が開放されている。また、第1取付部81は、第1凹部81bの底面との間にキャップ28の第1フランジ28b及び台座27のフランジ27bを保持する複数の突起81dが、第1凹部81bの底面よりも第2端縁側において内方へ突出して形成されている。突起81dは、半球状の形状に形成されている。筒体部81aは、成形性の観点から、連結部83から離れるにつれて内径が徐々に大きくなるテーパ円筒状に形成されているのが好ましい。
第1取付部81は、筒体部81aの第2端縁側に、センサ本体20におけるキャップ28の突片28cと台座27の突片27cとを位置決めする第2凹部81c(図5参照)が形成されている。
赤外線センサ100は、第1取付部81とセンサ本体20とが、嵌め合わされている。したがって、赤外線センサ100は、第1取付部81とセンサ本体20との相対的な位置精度を向上させることが可能となる。
第1取付部81は、台座27の背面よりも筒体部81aの第2端縁のほうが回路基板7に近くなるように、センサ本体20に対して位置決めされる。よって、赤外線センサ100は、台座27と回路基板7との間に隙間が形成される。これにより、赤外線センサ100は、回路基板7から台座27への熱伝導を抑制することが可能となり、赤外線センサ100の周囲の熱のゆらぎに起因した誤検知の発生を抑制することが可能となる。
レンズ部品5は、図10及び11に示すように、レンズ部品本体50の端縁50bから突出する2つのフック53を一体に備えている。これに対して、第2取付部82は、2つのフック53それぞれに対応する位置に貫通孔83c(図6参照)が形成されている。レンズ部品5は、各フック53を第2取付部82の貫通孔83cに挿通させて第2取付部82に引っ掛けることにより、第2取付部82に取り付けられている。よって、レンズ部品5は、第2取付部82に対して抜け止めされる。
また、レンズ部品5は、レンズ部品本体50の背面側に、逆組防止リブ54が設けられている。これに対し、アダプタ8は、逆組防止リブ54に対応する位置に穴83bが形成されている。これにより、赤外線センサ100は、組立時に、レンズ部品5の上下方向が逆となるようにアダプタ8に取り付けられるのを抑制することが可能となる。
赤外線センサ100は、センサ本体20とレンズ部品5とを連結するアダプタ8を備えていることにより、センサ本体20の赤外線検出素子2とレンズ部品5の各レンズ4との相対的な位置精度を向上させることが可能となる。よって、赤外線センサ100は、各レンズ4の焦点位置と赤外線検出素子2との相対的な位置精度を高めることが可能となり、製品ごとの感度のばらつきを低減することが可能となる。
レンズカバー6は、例えば、赤外線センサ100を見た人からレンズ部品5及びセンサ本体20が視認されるのを抑制するように構成されているのが好ましい。このため、レンズカバー6の材料としては、例えば、ポリエチレンを採用するのが好ましい。レンズカバー6は、例えば、成形法により形成することができる。成形法としては、例えば、射出成形法、圧縮成形法等を採用することができる。
レンズカバー6は、半円筒状の形状に形成されたレンズカバー本体60と、レンズカバー本体60の背面から突出したリブ62と、を備えている。本明細書における半円筒状とは、円筒を二等分した形状のみに限定されない。要するに、本明細書における半円筒状とは、円筒状の中心線を含む第1平面で切ったときの片側の部分の形状のみに限らず、例えば、第1平面に平行な第2平面で切ったときのいずれか一方の片側の部分の形状も含む。リブ62は、レンズカバー本体60の周方向に沿って形成されている。要するに、リブ62は、弧状に形成されている。リブ62は、レンズカバー本体60の周方向に直交する断面の形状を矩形(直角四辺形)状としてある。矩形状の形状としては、正方形状を採用しているが、これに限らず、長方形状でもよい。レンズカバー本体60の厚さ方向に沿ったリブ62の突出寸法は、レンズカバー本体60の厚さと同じに設定してある。ここで、レンズカバー6は、レンズカバー本体60の厚さを0.4mm、リブ62の突出寸法を0.4mmとしてある。レンズカバー6は、レンズカバー本体60とリブ62とを合わせた厚さが、レンズカバー本体60の厚さの2倍以下の厚さであるのが好ましい。これにより、レンズカバー6は、成形性をより向上させることが可能となる。
レンズカバー6は、図13に示すように、レンズカバー本体60の上端部からレンズ部品5側へ突出する第1位置決めリブ64と、レンズカバー本体60の下端部からレンズ部品5側へ突出する第2位置決めリブ65と、を備える。レンズカバー6は、第1位置決めリブ64と、第2位置決めリブ65と、を互いに異なる形状としてある。これにより、赤外線センサ100は、レンズカバー6が、筐体1に対して上下が逆に取り付けられるのを抑制するのが可能となる。なお、レンズカバー6は、図13に示すように、周方向の両端部66の厚さを、他の部位の厚さに比べて薄くしてあるのが好ましい。
レンズカバー6は、筐体1の正面側から見て左右対称の形状に形成されているのが好ましい。これにより、レンズカバー6は、正面側から押されたときの応力が分散されやすくなり、変形しにくくなる。言い換えれば、レンズカバー6は、正面側からの押圧力を受けたときに変形を起こす押圧力が大きくなる。要するに、レンズカバー6は、レンズカバー本体60の背面の曲率半径を小さくするほど、レンズカバー6の機械的強度を向上させることが可能となる。赤外線センサ100は、レンズカバー本体60の曲率半径を、レンズ部品5の各レンズ4の焦点距離と関係なく設定することが可能なので、レンズカバー本体60の曲率半径をより小さくするのが好ましい。
レンズカバー本体60の大きさは、レンズ部品5を覆うことができる大きさであればよく、特に限定されない。要するに、レンズカバー本体60の曲率半径や面積は、特に限定されない。
筐体1は、正面壁1bのうち開口部10の上側にある第1遮光部11jがレンズカバー本体60の上側の第1端部63aに重なっている。また、筐体1は、正面壁1bのうち開口部10の上側にある第2遮光部11kがレンズカバー本体60の下側の第2端部63bに重なっている。第1遮光部11jは、レンズカバー6の第1端部63aの正面側を覆う弧状の形状に形成されている。第2遮光部11kは、レンズカバー6の第2端部63bの正面側を覆う弧状の形状に形成されている。第1端部63a及び第2端部63bは、レンズカバー本体60とリブ62とを合わせた厚さよりも、厚く形成されているのが好ましい。これにより、レンズカバー6は、機械的強度の更なる向上を図ることが可能となる。ボディ11には、レンズカバー6の第2端部63bの背面側でレンズカバー6を位置決めする弧状のリブ11mが形成されている。
第2遮光部11kは、レンズ部品5における下段の列に並んだ一群のレンズ4への赤外線の入射を抑制する機能を有するように形状を設計してある。これにより、赤外線センサ100は、レンズ部品5における下段の列のレンズ4が検知エリアの形成に寄与するのを抑制することが可能となる。よって、赤外線センサ100は、例えば、検知エリアを規定する赤外線受光経路61を図16に示す模式図のように設定することが可能となり、猫等の小動物を人と誤検知するのを抑制することが可能となる。赤外線センサ100は、例えば、第2遮光部11kの高さをより低く変更すれば、レンズ部品5における下段の列のレンズ4も検知エリアの形成に寄与させることも可能となる。また、赤外線センサ100は、例えば、第2遮光部11kの高さをより高く変更すれば、レンズ部品5における下段の列及び中段の列のレンズ4が検知エリアの形成に寄与するのを抑制することが可能となる。
赤外線センサ100は、筐体1の左右方向の両側面それぞれから円柱状の突部15が突出して形成されている。これにより、赤外線センサ100は、例えば、図17〜20に示すようなケース150に収納して使用するようにすれば、赤外線センサ100をケース150に対して回転させることが可能となり、検知エリアを上下方向において変更することが可能となる。ケース150の材料としては、例えば、樹脂を採用することができる。
ケース150は、正面側が開放された矩形箱状に形成されており、上壁151と、上壁151に対向する下壁153と、一対の側壁152と、背壁154と、下壁153と背壁154とを連結する傾斜壁155と、を備えている。ケース150は、各側壁152それぞれに、突部15が回転自在に挿通される円形状の孔157と、孔157に連通する直線状のスリット158と、が形成されている。スリット158は、一端がケース150の側壁152の正面側で開放され、他端が孔157に連通している。ケース150の上下方向におけるスリット158の開口幅は、孔157の内径よりも小さく設定してある。赤外線センサ100の突部15をスリット158から孔157へ入れるときには、ケース150の弾性を利用する。ケース150は、傾斜壁155における左右方向の中央部から内方へ突出する三角形状の突起156を一体に備えている。
これに対して、赤外線センサ100は、ボディ11の下壁11aにおける左右方向の中央部から下方に突出する扇状の突出片11hが一体に形成されており、突出片11hの周縁に、複数の溝11iが形成されている。溝11iは、V字状に形成されている。赤外線センサ100は、ケース150に対して回転させたときに、複数の溝11iのいずれか1つにケース150の突起156の先端部が入ることで、ケース150に対する角度を決めることができる。
第1変形例の赤外線センサは、赤外線センサ100と基本構成を同じとして、図21に示すように、レンズカバー6におけるリブ62の数を増やした構成としてもよい。
また、第2変形例の赤外線センサは、赤外線センサ100と基本構成を同じとして、図22に示すように、レンズカバー6におけるリブ62を蜂の巣状の形状としてもよい。
なお、レンズカバー6におけるリブ62の形状は、レンズアレイ40におけるレンズ4の配列に応じて適宜変更でき、例えば、格子状の形状とすることもできる。
第3変形例の赤外線センサは、赤外線センサ100と基本構成を同じとして、レンズ部品5の上下を逆にしてアダプタ8に取り付けることができるようにしてもよい。第3変形例の赤外線センサは、レンズ部品5の上下を逆にしてアダプタ8に取り付けることにより、複数の赤外線受光経路61により規定される検知エリアを図23の模式図のように設定することが可能となる。
ところで、上述のケース150は、赤外線センサ100の上下方向を逆にして赤外線センサ100を取り付けることができるように構成してもよい。この場合、赤外線センサ100は、複数の赤外線受光経路61により規定される検知エリアを図23の模式図のように設定することが可能となる。
以下では、赤外線センサ100を備えた照明装置として、図24に示す照明装置300を例示する。
照明装置300は、例えば、住宅等の玄関先や庭先に設置できるように構成されている。ここで、照明装置300は、灯具301と、ポール302と、を備える。灯具301は、灯具本体311と、光源であるLED電球312が機械的且つ電気的に接続されるソケット313と、グローブ(globe)314と、グローブ314を保護する保護部材315と、を備える。赤外線センサ100は、灯具本体311の開口部311aから筐体1の正面側が露出している。
灯具本体311は、アルミダイキャスト法により形成されている。保護部材315は、アルミダイキャスト法により形成されている。
グローブ314は、ガラスにより形成されている。グローブ314は、透明又は拡散透過性の材料で形成されているのが好ましい。グローブ314の材料は、ガラスに限らず、例えば、アクリル樹脂等でもよい。グローブ314は、LED電球312を保護する機能を有する。
ポール302は、中空の円柱状に形成されている。ポール302は、ステンレス鋼板により形成されている。
ポール302は、地中やコンクリート等に埋め込まれる埋込部分302aの上下方向の中央部に、埋込棒303を取り付けることができるようになっている。埋込棒303は、亜鉛鋼板等により形成されている。
ポール302は、埋込部分302aに、ケーブル保護管304を通す孔322が形成されている。ケーブル保護管を通る電源ケーブル305は、灯具本体311内に配置されている端子台(図示せず)と電気的に接続される。LED電球312を点灯させる点灯装置(図示せず)及び赤外線センサ100は、端子台を介して給電される。点灯装置は、赤外線センサ100等の出力に基づいて、LED電球312を点灯させたり、調光したり、消灯させたりすることができるように構成されている。点灯装置は、赤外線センサ100の出力と、周囲の明るさを検知する明るさセンサの出力と、に基づいて、LED電球312を点灯させたり、調光したり、消灯させたりすることができるように構成されているのが、より好ましい。
ポール302は、地表面310よりも上側に露出する露出部分302bの下端部に、水抜き孔306が形成されている。灯具301は、ポール302の露出部分302bの上端部に結合されている。照明装置300は、ポール302の全長を1100mmに設定し、埋込部分302aの全長を400mm、露出部分302bの全長を700mmにそれぞれ設定してある。また、灯具301は、上下方向の全長を300mmに設定してある。
上述の実施形態等において説明した各図は、模式的な図であり、各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態等に記載した材料、数値等は、好ましい例を示しているだけであり、それに限定する主旨ではない。更に、本願発明は、その技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、構成に適宜変第1更を加えることが可能である。
例えば、各レンズ4の各々は、フレネルレンズにより構成してもよい。これにより、赤外線センサ100は、各レンズ4それぞれの厚さを、より薄くしたり、受光面積を増大させることが可能となる。
また、赤外線センサ100は、照明装置300に限らず、例えば、配線器具や機器等にも利用することができる。機器としては、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、空気調和機、加湿器、冷蔵庫、コピー機、デジタルサイネージ、デジタルフォトフレーム、小便器、自販機、券売機、現金自動預け払い機等を挙げることができる。