JP6417998B2 - 軸受 - Google Patents
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断面扇形状のセラミック部材と、前記セラミック部材の外周面を支持する円弧状溝を有する金属製ホルダーとを有し、
前記ロール軸の回転により前記セラミック部材が前記ホルダーの前記円弧状溝内を移動して、前記セラミック部材の周方向一端面が前記ホルダーの対向斜面に当接したとき、前記セラミック部材の周方向他端面と前記ホルダーの対向斜面とのクリアランスδが、K=(r1+t’)δ/t=1〜20[ただし、r1は前記セラミック部材の内周面の周方向端面に形成した面取りの半径方向長さ(mm)であり、t’は前記セラミック部材の周方向端面の半径方向長さ(mm)であり、tは前記セラミック部材の半径方向厚さ(mm)である。]の条件を満たし、
前記セラミック部材の内周面のスキューネスRskが−0.4〜+0.1であり、
前記セラミック部材の内周面の気孔面積率が外周面の気孔面積率より高く、
前記セラミック部材の内周面の気孔面積率が2〜6%であることを特徴とする。
図1及び図2に示すように、本発明の軸受10は、断面扇形のセラミック部材12と、セラミック部材12を支持する金属製ホルダー14とを備えている。ホルダー14はステンレス鋼製であるのが好ましい。セラミック部材12は、円弧状外周面12a及び円弧状内周面12bと、周方向両端面12c,12c’と、平坦な軸方向両端面12d,12dとを有する。ホルダー14は、内周にセラミック部材12を支持する円弧状溝14aを有するとともに、溝(内周面)14aの両端にセラミック部材12の周方向両端面12c,12c’が当接する斜面14b,14b’を有し、各斜面14b,14b’の下に脚部14c,14c’が延在している。両斜面14b,14b’の間隔は、ロール軸(たとえばシンクロール軸)104aの回転によりセラミック部材12が周方向に移動し得るが、セラミック部材12が移動しても円弧状溝14aから脱落しないような距離に設定されている。セラミック部材12の外周面12aとホルダー14の内周面14aとの間に、スペーサ、緩衝部材、アタッチメント等を介在させても良い。
連続溶融金属めっき装置では、図3に示すように軸受10のセラミック部材12はロール軸(たとえばシンクロール軸)104aにより押し上げられる。ロール軸104aが回転してセラミック部材12の内周面12bに対して摺動すると、セラミック部材12の周方向一端面12c’はホルダー14の対向斜面14b’に当接し、図5に示すようにセラミック部材12の周方向他端面12cとホルダー14の対向斜面14bとの間に最大のクリアランスδ(mm)が生じる。
さらに本発明の軸受10では、セラミックス12の内周面12bの面粗さを表すスキューネスRskが−0.4〜+0.1である必要がある。Rskが−0.4未満であると、セラミックス12の内周面12bの凹部が深すぎ、破壊の起点となるおそれがある。また、Rskが+0.1を超えると、セラミックス12の内周面12bの凸部に荷重が集中し、凸部にひっかかりながらロール軸104aが回転するために振動が生じやすい。Rskは−0.3〜0が好ましく、−0.3〜−0.1がより好ましい。
セラミック部材12の外周面12aは緻密でできるだけ気孔が少ない方が良いが、内周面12bは溶融金属を保持してロール軸104aとの摺動性を増すために、比較的多くの気孔を有するのが好ましい。摺動面における気孔の量は「気孔面積率」により表される。気孔面積率はセラミック部材12の表面の顕微鏡写真から求めることができる。
セラミック部材12は、溶融金属めっき浴に対して良好な耐食性及び耐熱衝撃性を有する必要があり、例えばジルコニア等の酸化物セラミックス、炭化珪素セラミックス、又は窒化珪素質セラミックス等からなるのが好ましい。特に、窒化ケイ素質セラミックス(窒化ケイ素、サイアロン等)は、20℃から500℃までの間の平均熱膨張係数が約3×10-6/℃と小さく耐熱衝撃性に優れ、高温で高強度を有するので好ましい。
(1) セラミック部材
溶融金属めっき浴に対して優れた耐食性、耐熱衝撃性及び高温高強度を有するサイアロンセラミックスによりセラミック部材12を以下の工程により製造した。まず、平均粒径0.8μmのα-Si3N4粉末:87質量%、平均粒径0.5μmのAl2O3粉末:5質量%、平均粒径0.5μmのAlN固溶体粉末:3質量%、平均粒径1.0μmのY2O3粉末:5質量%を配合し、得られた原料粉末100質量部にバインダーとして0.5質量部のポリビニルブチラールを添加し、得られた混合物を造粒して、1000 kgf/cm2の圧力でCIP(Cold Isostatic Press)成形し、円筒状の成形体を得た。この成形体を常圧の窒素雰囲気下、1750℃で5時間焼結して円筒状のサイアロンセラミックス焼結体を得た。
溝14aの内周面が120°の中心角θ2及び101.5 mmの曲率半径(セラミック部材12の外周面の曲率半径と同じ)となるように、ホルダー14をステンレス鋼により製造した。
セラミック部材12及びホルダー14を、図1に示す構造の軸受10に組み立てた。ホルダー14の溝14aの内周面にセラミック部材12の外周面を接触させた状態で、セラミック部材12の周方向一端面12c’とホルダー14の斜面14b’を接触させたとき、セラミック部材12の周方向他端面12cとホルダー14の斜面14bとのクリアランスδが3 mmとなるように、セラミック部材12及びホルダー14の寸法を決定した。従って、実施例1の軸受10では、K=(r1+t’)δ/t=(3+15.5)×3/21.5=2.6 mmであった。
図7に示す支持機構に軸受10を取り付けた。シンクロール104及びその軸104aはステンレス鋼からなり、表面にWC-Co膜が溶射されている。ついで、図7に示す支持機構を図8に示す連続溶融亜鉛めっき装置に使用し、140 rpmと高速のロール回転数で薄い鋼板の亜鉛めっきを行った。得られた亜鉛めっき鋼板を連続的に目視検査し、振動模様の有無を判定した。鋼板のめっき終了後、めっき浴から軸受10を引き上げ、酸で洗浄してからセラミック部材12の内周面12bの摺動部を目視観察し、以下の基準で評価した。
〇:摺動部にスクラッチ傷が認められなかった。
△:摺動部にスクラッチ傷が僅かに認められた。
(1) セラミック部材
実施例1と同じ造粒粉を500 kgf/cm2の圧力でCIP成形し、円筒状の成形体を得た。この成形体を常圧、窒素雰囲気下、1680℃で5時間焼結して円筒状のサイアロンセラミックス焼結体を得た。円筒状サイアロンセラミックス焼結体の内周面、外周面及び端面を研削加工した。その際、内周の焼結肌を深さ1 mmまで研削し、内周面12bとした。研削加工後のサイアロンセラミックス焼結体は、内周面12bの曲率半径が80 mm、外周面の曲率半径が105 mm、半径方向厚さが25 mm、軸方向長さが100 mmであった。セラミック部材12の外周面の輪郭度は100μm以下であった。
溝14aの内周面が120°の中心角θ2及び105 mmの曲率半径(セラミック部材12の外周面の曲率半径と同じ)となるように、ホルダー14をステンレス鋼により製造した。
クリアランスδが12.7 mmとなるように、セラミック部材12及びホルダー14を図1に示す構造の軸受10に組み立てた。従って、実施例2の軸受では、K=(r1+t’)δ/t=(13+7)×12.7/25=10.2 mmであった。
得られた軸受10を実施例1と同様にして薄い鋼板の連続溶融亜鉛めっきに用いたところ、軸受の振動は抑制され、鋼板に振動模様が形成されなかった。
表1に示すようにt、r1、r2、t’、δ、K及びRskを変え、表2に示すようにCIP圧を300〜950 kgf/cm2間で調整した以外実施例1と同様にして、セラミック部材12及びホルダー14を作製し、軸受10に組み立てた。セラミック部材12の内周面12bのRskは、内周の焼結肌を深さ2 mmまで研削した後ブラスト処理を施すことにより、表1に示すように調整した。軸受10とシンクロール104を図7の構造のように配置し、図8の装置に使用した。
表1に示すようにt、r1、r2、t’、δ及びKを変えた以外実施例1と同様にしてセラミック部材12及びホルダー14を作製し、軸受10に組み立てた。軸受10とシンクロール104を図7の構造のように配置し、図8の装置に使用した。
SiC粒子を用いたブラスト処理によりセラミック部材12の内周面12bのRskを−0.6とした以外実施例1と同様にして、軸受10を製造した。軸受10とシンクロール104を図7の構造のように配置し、図8の装置に使用した。実施例1と同じロール回転数で薄い鋼板の連続溶融亜鉛めっきを行ったところ、早期にセラミック部材12が割損した。
レーザー加工によりセラミック部材12の内周面12bのRskを+0.15とした以外実施例1と同様にして、軸受10を製造した。軸受10とシンクロール104を図7の構造のように配置し、軸受10とシンクロール104を図7の構造のように配置し、図8の装置に使用した。実施例1と同じロール回転数で薄い鋼板の連続溶融亜鉛めっきを行ったところ、軸受10の振動により鋼板に振動模様が形成された。
r2:セラミック部材の外周面の周方向端部に形成した面取りの半径方向長さ
t’:セラミック部材の周方向端面の半径方向長さ
δ:セラミック部材の周方向端面とホルダーの斜面とのクリアランス
t:セラミック部材の半径方向厚さ
10:軸受
12:セラミック部材
12a:外周面
12b:内周面
12c,12c’:周方向端面
12d:軸線方向端面
14:ホルダー
14a:ホルダーの溝
14b,14b’:ホルダーの斜面
14c,14c’:ホルダーの脚部
15:止め具
101:鋼板
102:スナウト
103:溶融金属めっき浴
104:シンクロール
104a:シンクロール軸
105:サポートロール
106:ガスワイピングノズル
108:ハンガー
Claims (7)
- 溶融金属めっき浴中に浸漬されるロール軸を回転自在に支持する軸受であって、
断面扇形状のセラミック部材と、前記セラミック部材の外周面を支持する円弧状溝を有する金属製ホルダーとを有し、
前記ロール軸の回転により前記セラミック部材が前記ホルダーの前記円弧状溝内を移動して、前記セラミック部材の周方向一端面が前記ホルダーの対向斜面に当接したとき、前記セラミック部材の周方向他端面と前記ホルダーの対向斜面とのクリアランスδが、K=(r1+t’)δ/t=1〜20[ただし、r1は前記セラミック部材の内周面の周方向端面に形成した面取りの半径方向長さ(mm)であり、t’は前記セラミック部材の周方向端面の半径方向長さ(mm)であり、tは前記セラミック部材の半径方向厚さ(mm)である。]の条件を満たし、
前記セラミック部材の内周面のスキューネスRskが−0.4〜+0.1であり、
前記セラミック部材の内周面の気孔面積率が外周面の気孔面積率より高く、
前記セラミック部材の内周面の気孔面積率が2〜6%であることを特徴とする軸受。 - 請求項1に記載の軸受において、前記セラミック部材の内周面における気孔の円換算孔径が15μm以下であることを特徴とする軸受。
- 請求項1又は2に記載の軸受において、前記セラミック部材の内周面での円換算孔径が3μm以上の気孔の合計面積が全気孔面積の40〜70%であることを特徴とする軸受。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の軸受において、前記面取りが曲面状又は平坦面状であることを特徴とする軸受。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の軸受において、前記セラミック部材の内周面の中心角θ1が90〜150°であることを特徴とする軸受。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の軸受において、前記セラミック部材が窒化珪素質セラミックスからなることを特徴とする軸受。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の軸受において、前記セラミック部材の外周面の輪郭度が100μm以下であることを特徴とする軸受。
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