JP6416688B2 - 複層皮膜形成方法 - Google Patents
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Description
工程1:金属被塗物を化成処理液に浸漬して化成処理皮膜を形成する工程、
工程2:カチオン電着塗料を用いて上記金属被塗物を電着塗装して電着塗装皮膜を形成する工程
を含む複層皮膜形成方法において、
上記工程2の電着塗装時において、金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、10,000μS/cm未満であることを特徴とする複層皮膜形成方法。
項2.工程2において、電着塗装の前の水洗工程の一部又は全部が省略されている、項1に記載の複層皮膜形成方法。
項3.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のナトリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1又は2に記載の複層皮膜形成方法。
項4.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1〜3のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項5.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカルシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1〜4のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項6.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のマグネシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1〜5のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項7.化成処理液が、ジルコニウム、チタン、コバルト、アルミニウム、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀及びランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属化合物からなる少なくとも1種の金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm含有することを特徴とする前記項1〜6のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項8.化成処理液が、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)を0.01〜40質量%含有することを特徴とする前記項1〜7のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項9.カチオン電着塗料が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート(B)を含有し、樹脂固形分の総量を基準にして、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)40〜90質量%、ブロック化ポリイソシアネート(B)10〜60質量%を含有することを特徴とする前記項1〜8のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項10.工程2の電着塗装を施す前に、金属被塗物に対し、エアーブロー、揺動、回転から選ばれる少なくとも1種を行うことを特徴とする前記項1〜9のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項11.前記項1〜10のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法を用いて複層皮膜を形成した塗装物品。
化成処理槽と電着塗料槽とを具備する複層皮膜形成設備において、化成処理液を満たした化成処理槽に金属被塗物を浸漬し、通電を行わずに又は通電して、金属被塗物上に化成処理皮膜を形成する。次いで、水洗工程の一部又は全部を省略し、該金属被塗物上に付着及び/又は堆積した溶液の電導度を適正範囲内に抑え、カチオン電着塗料を満たした電着塗料槽に浸漬して電着塗装する複層皮膜形成方法に関する。
以下、詳細に述べる。
本発明の複層皮膜形成方法で用いる金属被塗物としては、電着塗装が可能な金属被塗物によるものであれば特に制限はなく、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材などの金属被塗物が挙げられ、これらは1種を単独で、若しくは2種以上の金属の合金又は2種以上の金属が組み合わさった被塗物でも好適に用いることができる。
また、上記金属被塗物は任意選択で脱脂、表面調整、水洗等を施したものであっても良い。
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液の組成としては、以下の金属化合物成分(M)と、任意選択で水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)などが含有される。
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液は、防食性及び仕上がり性の観点から、金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm含有することが好ましい。
亜鉛イオンを生じる化合物としては、例えば、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられる。
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液は、任意選択で水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)0.01〜40質量%を含有することができる。
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液の調製は、特に限定されないが、例えば、以下に述べる(1)〜(3)の方法により行うことができる。
(1)脱イオン水並びに/若しくは水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)に、金属化合物成分(M)を加え、適宜に中和剤を添加し、さらに脱イオン水を加えて調整する方法。(2)金属化合物成分(M)に、脱イオン水並びに/若しくは水分散化又は水溶化した樹脂組成物(P)を添加して調整する方法。
(3)あらかじめ作製した化成処理液に、金属化合物成分(M)並びに/若しくは水分散化又は水溶化した樹脂組成物(P)を添加し、さらに脱イオン水を加えて調整する方法。
上記化成処理皮膜の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、金属被塗物を、化成処理液を満たした化成処理槽に、通常10〜360秒間、好ましくは50〜300秒間、さらに好ましくは70〜240秒間浸漬して、金属被塗物上に化成処理皮膜を形成する方法(1)、金属被塗物を、化成処理液を満たした化成処理槽に浸漬し、金属被塗物を陰極として、通常1〜50Vで10〜360秒間、好ましくは2〜30Vで30〜180秒間通電する方法(2)、金属被塗物を、化成処理液を満たした化成処理槽に一定時間浸漬し、その後更に通電する方法であって、通常10〜180秒間、好ましくは5〜120秒間浸漬し、続いて、通常1〜100Vで10〜360秒間、好ましくは2〜60Vで30〜180秒間通電する方法(3)などが挙げられる。本発明の方法においては、通電を行わない方法(1)でも外観ムラの抑制及び高い防食性を有する複層皮膜をえることができる。
本発明の複層皮膜形成方法(工程2)で用いるカチオン電着塗料は、従来、公知のものが特に制限なく使用可能であり、特にアミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート(B)を含有するものが好ましい。また、本発明で使用するカチオン電着塗料は、樹脂固形分の総量を基準にして、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を通常40〜90質量%、好ましくは55〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%の範囲内、ブロック化ポリイソシアネート(B)を通常10〜60質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲内で含有することが好適である。
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a1)と、アミン化合物(a2)と、さらに任意選択で変性剤とを反応せしめて得ることができ、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級アミン化合物、第2級アミン化合物又は第1、2級混合アミン化合物との付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化されたアミン化合物との付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等のアミノ基含有エポキシ樹脂を挙げることがでる。
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるエポキシ樹脂(a1)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は一般に少なくとも300、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂が好ましい。
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料であるアミン化合物(a2)としては、上記エポキシ樹脂(a1)との反応性を有するアミン化合物であれば特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−アルキルアミン又はジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N−ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3−メチルアミン−1,2−プロパンジオール、3−tert−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N−メチルグルカミン、N−オクチルグルカミンなどのアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ビス(4−アミノブチル)アミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサアミンなどのアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1−メチルピペラジン、3−ピロリジノール、3−ピぺリジノール、4−ピロリジノールなどの複素環を有するポリアミン;上記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1〜30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;上記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;上記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;などを挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、任意選択で、変性剤により変性されたものであってよい。このような変性剤は、エポキシ樹脂(a1)との反応性を有する樹脂や化合物であれば特に限定されず、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、オレイン酸、グリコール酸、乳酸、安息香酸、没食子酸、脂肪酸、二塩基酸などの酸性化合物、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールなどの一価アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリイソシアネート化合物、γ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンなどのラクトン類、ε−カプロラクトンなどのラクトン類とポリイソシアネート化合物を反応させた化合物、アクリルモノマー、アクリルモノマーを重合反応させた化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物などが挙げられ、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
上記ブロック化ポリイソシアネート(B)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応による生成物である。ブロック化ポリイソシアネート(B)で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを特に制限無く使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]などの芳香族ポリイソシアネート化合物;ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せが挙げられる。
上記カチオン電着塗料は、上記成分(A)及び(B)以外に、任意選択で、エポキシ樹脂と多価アルコールとを反応せしめて得られるアミノ基を実質的に有さない変性エポキシ樹脂、多塩基酸と多価アルコールとを反応せしめて得られるポリエステル樹脂などを含有することができる。上記カチオン電着塗料に変性エポキシ樹脂及び/又はポリエステル樹脂を含有する場合、含有量としては、(A)成分及び(B)成分の固形分合計100質量部を基準にして、通常3〜50質量部、好ましくは10〜45質量%の範囲内である。
本発明の複層皮膜形成方法(工程2)で用いるカチオン電着塗料は、化成処理皮膜を形成せしめた金属被塗物に、水洗工程の一部又は全部を省略し、電着塗装することができる。上記電着塗装は、一般的には、カチオン電着塗料を脱イオン水等で希釈して、固形分濃度が約5〜40質量%、好ましくは8〜25質量%、pHが1.0〜9.0、好ましくは3.0〜7.0の範囲内の塗料浴を準備し、さらに浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行うことができる。
製造例1
脱イオン水をディスパーで強撹拌しながら、ヘキサフルオロジルコニウム酸、並びにあらかじめ脱イオン水で希釈した硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム及び硝酸カリウムを配合した。
下記表1で示す組成とする以外は、製造例1と同様に配合を行い、化成処理液X−2〜31を得た。
(注1)P−1:PAA−01(商品名、日東紡績社製、ポリアリルアミン、重量平均分子量1,600)
(注2)P−2:マンニッヒ変性アミノ化フェノール樹脂〔撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、マルカリンカーS−2P(商品名、丸善石油化学社製、ポリ−4−ビニルフェノール)120部、エチレングリコールモノブチルエーテル120部を加えて90℃に昇温し、ポリ−4−ビニルフェノールを溶解させた。次いで、モノメチルエタールアミン35部、37%のホルマリン40部、エチレングリコールモノブチルエーテル10部を加え、90℃で4時間反応させた後、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、固形分40%に調整した。〕。
亜鉛イオン:1,500ppm
ニッケルイオン:500ppm
リン酸イオン:13,500ppm
フッ素イオン:500ppm
硝酸イオン:6,000ppm
亜硝酸イオン:100ppm
ナトリウムイオン:85ppm
カルシウムイオン:85ppm
カリウムイオン:85ppm
マグネシウムイオン:85ppm
上記組成の化成処理液X−32を調整した。
亜鉛イオン:1,500ppm
ニッケルイオン:500ppm
リン酸イオン:13,500ppm
フッ素イオン:500ppm
硝酸イオン:6,000ppm
亜硝酸イオン:100ppm
ナトリウムイオン:300ppm
カルシウムイオン:300ppm
カリウムイオン:300ppm
マグネシウムイオン:300ppm
上記組成の化成処理液X−33を調整した。
製造例34
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量350)1200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。
製造例35
反応容器中に、コスモネートM−200(商品名、三井化学社製、クルードMDI、NCO基含有率 31.3%)270部、及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネートB−1を得た。
製造例36
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、商品名、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。
製造例37
製造例36で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
製造例38
製造例34で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂A−1 87.5部(固形分70部)、製造例35で得られたブロック化ポリイソシアネートB−1 37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下して固形分34%のエマルションを得た。
次に、上記エマルション294部(固形分100部)、製造例37で得た55%の顔料分散ペースト52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水350部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料Y−1を製造した。
実施例1
以下の工程1−1〜工程2−3によって、試験板Z−1を作製した。
工程1−1:2.0質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃の温度に調整し、冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を120秒間浸漬して脱脂処理を行った。
工程1−2:常温の「プレパレン4040N」(日本パーカライジング(株)製、表面調整剤)の0.15%水溶液に、上記鋼板を30秒間浸漬して表面調整を行い、次いで、純水を用いて30秒間スプレー水洗した。
工程1−3:製造例1で得られた化成処理液X−1を43℃の温度に調整し、上記鋼板を120秒間浸漬して化成処理を行った。
工程2−1:工程1で得られた化成処理皮膜を形成した鋼板を、純水に30秒間浸漬して水洗を行った。(後述する水洗工程IIに相当)
工程2−2:製造例38で得られたカチオン電着塗料Y−1を28℃の温度に調整し、上記鋼板を該カチオン電着塗料の浴に浸漬し、250V、180秒間(30秒にて昇電圧)の条件で電着塗装を行った。
工程2−3:上記鋼板を、上水を用いて1回、純水を用いて1回、それぞれ120秒間浸漬して水洗を行い、次いで、電気乾燥機によって170℃で20分間焼き付け乾燥をして、乾燥膜厚22μmの複層皮膜を形成した試験板Z−1を得た。
下記表2で示す化成処理液及び/又は水洗工程とする以外は、実施例1と同様にして、試験板Z−2〜37を得た。また、得られた試験板に対して、仕上がり性として外観ムラ性、及び防食性の評価試験を行ったので、その評価結果もあわせて下記表2に記載する。尚、実施例及び比較例で用いた水洗工程の詳細、イオン濃度測定方法、電導度測定方法、並びに外観ムラ性及び防食性の評価方法を以下に示す。
実施例及び比較例で用いた水洗工程(工程2−1)を示す。工程短縮の観点から、工程は短いほうが好ましく、また、環境面及び経済的な観点から、使用する洗浄水がより少ない工程である事がさらに好ましい。尚、下記水洗工程II〜Vは、従来型の水洗工程Iよりも水洗工程の一部又は全部を省略している。
水洗工程I:化成処理後、被塗物に対して、上水を用いて30秒間の浸漬式水洗を1回行い、次いで純水を用いて30秒間の浸漬式水洗を1回行う従来型の水洗工程(浸漬式水洗2回以上)であり、工程は最も長い。
水洗工程II:化成処理後、被塗物に対して、純水を用いて30秒間の浸漬式水洗を1回行う工程で、従来型の水洗工程(浸漬式水洗2回以上)よりも水洗工程を一部省略している。
水洗工程III:化成処理後、被塗物に対して、純水を用いて3秒間の噴霧式のスプレー水洗を行う工程で、従来型の水洗工程(浸漬式水洗2回以上)よりも工程を一部省略していて、水洗工程IIの浸漬式水洗1回よりも工程がやや短い。
水洗工程IV:化成処理後、水洗工程はなく、次いで被塗物に対して、10秒間のエアーブロー(室温、被塗物表面でのエアー圧力:0.2MPa)を行う工程であり、工程は短く、洗浄水の廃水が出ない。
水洗工程V:化成処理後、水洗工程はなく、工程は最も短く、洗浄水の廃水が出ない。
上記実施例及び比較例において、電着塗装を行う直前の試験板を別に用意して垂直の状態で容器に入れ、蓋をして1時間放置した。次いで試験板を取り出し、容器の下部に溜まっている溶液のイオン濃度を測定した。イオン濃度の測定は原子吸光分析装置(商品名:ゼーマン原子吸光光度計、HITACHI社製)を用いた。尚、試験板1枚で電導度の測定に必要な量が確保できない場合は複数の試験板を用いて必要量を確保した。
上記イオン濃度と同様の試料を用いて、電導度(μS/cm)を測定した。電導度の測定はCONDACTIVITY METER DS−12(堀場製作所社製)を用いた。
得られた試験板の外観を観察し、複層皮膜の仕上がり性として外観ムラ性を評価した。評価については、A(非常に良好)からE(不良)までの以下の基準で評価した。
A:極めて均一な外観を有している。
B:均一な外観を有している。
C:ややムラがあると視認される部分があるものの、ほぼ均一な外観を有している。
D:ムラが視認され、やや不良である。
E:外観が明らかに不均一であり、不良である。
試験板の素地に達するように、複層皮膜上にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの傷、フクレ幅を測定した。評価については、A(非常に良好)からE(不良)までの以下の基準で評価した。
A:錆、フクレの最大幅がカット部より2.0mm以下(片側)で防食性が非常に良好である。
B:錆、フクレの最大幅がカット部より2.0を超え、かつ2.5mm以下(片側)で、防食性が良好である。
C:錆、フクレの最大幅がカット部より2.5を超え、かつ3.0mm以下(片側)で、防食性がやや良好である。
D:錆、フクレの最大幅がカット部より3.0mmを超え、かつ3.5mm以下(片側)で、防食性がやや不良である。
E:錆、フクレの最大幅がカット部より3.5mmを超え(片側)、防食性が不良である。
Claims (11)
- 金属被塗物に化成処理皮膜と電着塗装皮膜を形成する以下の工程、
工程1:金属被塗物をジルコニウム化合物を含む化成処理液に浸漬して化成処理皮膜を形成する工程、
工程2:カチオン電着塗料を用いて上記金属被塗物を電着塗装して電着塗装皮膜を形成する工程
を含む複層皮膜形成方法において、
上記工程2の電着塗装時において、金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、10,000μS/cm未満であり、上記工程1と上記工程2の間の水洗工程が噴霧式水洗のみにより行われることを特徴とする複層皮膜形成方法。 - 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、60μS/cmより高く、かつ7000μS/cm未満である、請求項1に記載の方法。
- 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のナトリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカルシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のマグネシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記化成処理液が、ジルコニウム、チタン、コバルト、アルミニウム、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀及びランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属化合物からなる少なくとも1種の金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記化成処理液が、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)を0.01〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記カチオン電着塗料が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート(B)を含有し、樹脂固形分の総量を基準にして、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)40〜90質量%、ブロック化ポリイソシアネート(B)10〜60質量%を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 上記工程2の電着塗装を施す前に、金属被塗物に対し、エアーブロー、揺動、回転から選ばれる少なくとも1種を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法を用いて複層皮膜を形成する工程を含む、塗装物品の製造方法。
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