JP6416688B2 - 複層皮膜形成方法 - Google Patents

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本発明は、化成処理後に水洗工程の一部又は全部を省略したとしても、化成処理後の金属被塗物に付着及び/又は堆積した溶液の影響を受けずに電着塗装が可能で、仕上がり性や防食性に優れた塗装物品が得られる複層皮膜形成方法及び該複層皮膜形成方法を用いた塗装物品に関する。
従来、工業用の金属被塗物には、下地処理として防食性や付着性の向上を目的に化成処理が行われている。しかしながら、化成処理液は各種イオン成分を多量に含有しており、かつ形成される化成処理皮膜の性能を向上させるために、亜鉛、ニッケル、マンガン等の重金属成分も多量に含有している。
上記化成処理を行った後、そのままカチオン電着塗料を用いて電着塗装をすると、金属被塗物に付着・堆積した余分な化成処理液が、電着塗装性、仕上がり性、防食性などに悪影響を及ぼすことがわかっている。
そのため、通常の塗装ラインにおいては、下記図1で示す「脱脂〜化成処理〜第一水洗〜第二水洗〜純水水洗〜電着塗装〜第一水洗〜第二水洗〜純水水洗〜焼付乾燥」のように、水洗工程に多くの工数及び時間を要しており、更に水洗工程で出た排水の回収、濾過、処理、廃棄などにも多大な設備や費用が必要となっている。
特許文献1には、化成処理の後に水洗を施すことなく電着塗装を行うことで、省工程化・省スペース化が可能となる複層皮膜形成方法が開示されており、夾雑物として化成処理液が次工程である電着塗料中に持ち込まれても、電着塗装性や塗膜特性に影響を及ぼさず、仕上がり性と防食性に優れる塗装物品が得られると記載がある。しかし、仮に水洗を行わずに一定量以上の電導度を有する溶液が被塗物に付着及び/又は堆積していた場合、十分な防食性や仕上がり性が確保できない可能性があった。
特許文献2には、酸性リン酸亜鉛水溶液を用いて浸漬処理で化成処理する方法において、促進剤として使用する亜硝酸亜鉛水溶液のナトリウムイオン濃度が規定されている。明細書の段落〔0016〕で、化成処理槽内のナトリウムイオン濃度が重量基準で10000ppmであれば良好な化成処理皮膜が得られると記載されているが、このようにナトリウムイオン濃度が高い状態では電導度も高くなり、水洗工程を省略することができず、省工程化・省スペース化は困難である。
特許文献3には、高品質の化成皮膜が得られる化成処理方法において、明細書の段落〔0063〕で、化成処理液の電導度を10〜200mS/cm(10,000〜200,000μS/cm)程度に管理することが記載されているが、このように高い電導度の化成処理液の場合、十分な水洗工程が必須となり、水洗工程を省略することができず、省工程化・省スペース化は困難である。
特開2009−149974号公報 特開2001−323384号公報 特開平6−2157号公報
本発明の課題は、省工程化・省スペース化が可能となる複層皮膜形成方法を提供することであって、化成処理後に水洗工程の一部又は全部を省略したとしても、電着塗装性に影響を及ぼさず、仕上がり性と防食性に優れる塗装物品を提供することである。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、金属被塗物に化成処理皮膜を形成し、次いで、電着塗装することを特徴とする複層皮膜形成方法において、電着塗装前の金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度を一定の範囲内とすることで、省工程化・省スペース化と塗膜性能とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の複層皮膜形成方法及び塗装物品を提供するものである。項1.金属被塗物に化成処理皮膜と電着塗装皮膜を形成する以下の工程、
工程1:金属被塗物を化成処理液に浸漬して化成処理皮膜を形成する工程、
工程2:カチオン電着塗料を用いて上記金属被塗物を電着塗装して電着塗装皮膜を形成する工程
を含む複層皮膜形成方法において、
上記工程2の電着塗装時において、金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、10,000μS/cm未満であることを特徴とする複層皮膜形成方法。
項2.工程2において、電着塗装の前の水洗工程の一部又は全部が省略されている、項1に記載の複層皮膜形成方法。
項3.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のナトリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1又は2に記載の複層皮膜形成方法。
項4.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1〜3のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項5.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカルシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1〜4のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項6.金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のマグネシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする前記項1〜5のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項7.化成処理液が、ジルコニウム、チタン、コバルト、アルミニウム、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀及びランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属化合物からなる少なくとも1種の金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm含有することを特徴とする前記項1〜6のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項8.化成処理液が、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)を0.01〜40質量%含有することを特徴とする前記項1〜7のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項9.カチオン電着塗料が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート(B)を含有し、樹脂固形分の総量を基準にして、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)40〜90質量%、ブロック化ポリイソシアネート(B)10〜60質量%を含有することを特徴とする前記項1〜8のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項10.工程2の電着塗装を施す前に、金属被塗物に対し、エアーブロー、揺動、回転から選ばれる少なくとも1種を行うことを特徴とする前記項1〜9のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
項11.前記項1〜10のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法を用いて複層皮膜を形成した塗装物品。
本発明の複層皮膜形成方法は、化成処理後に水洗工程の一部又は全部を省略したとしても、電着塗装性に影響を及ぼさず、仕上がり性や防食性に優れた塗装物品が得られる方法である。本発明の複層皮膜形成方法は、水洗工程の一部又は全部を省略することができる為、省工程化・省スペース化が可能となり、また、排水処理の各種設備や廃棄物を削減することができる。
本発明において、水洗工程の省略(一部又は全部を省略して省工程化・省スペース化)と仕上がり性及び防食性とを両立できる理由としては、確かなことはわかっていないが、以下の理由が考えられる。
まず、主な理由として、水洗工程の一部又は全部を省略した場合、金属被塗物に付着・堆積している溶液の電導度が高い状態(金属被塗物の表面に高濃度で付着・堆積している状態)でカチオン電着塗料を用いて電着塗装すると、電着塗料の塗着、成膜化を阻害することになり、また、電導度の高い成分が複層皮膜に残ることから、仕上がり性及び/又は防食性が劣る結果になると考えられる。特にナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及び/又はマグネシウムイオンなどのイオン成分が特定の濃度以上で含まれるとその傾向がより著しい。また、上記以外の理由としては、被塗物に付着、堆積した余分な化成処理液(ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどを含む)が電着塗料槽内へ持ち込まれた場合、夾雑物として電着塗装を阻害し、仕上がり性、防食性が悪化する可能性も考えられる。
そのため、本発明の複層皮膜形成方法としては、水洗工程の一部又は全部を省略する場合、金属被塗物に付着・堆積している溶液の電導度をコントロールし、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及び/又はマグネシウムイオンなどの濃度を抑えることで、余分な化成処理液を高濃度で被塗物に付着・堆積させないことが重要であると考えられる。
図1は、従来からの複層皮膜形成方法を示した概略図である。
本発明の1つの好ましい実施形態は以下の通りである。
化成処理槽と電着塗料槽とを具備する複層皮膜形成設備において、化成処理液を満たした化成処理槽に金属被塗物を浸漬し、通電を行わずに又は通電して、金属被塗物上に化成処理皮膜を形成する。次いで、水洗工程の一部又は全部を省略し、該金属被塗物上に付着及び/又は堆積した溶液の電導度を適正範囲内に抑え、カチオン電着塗料を満たした電着塗料槽に浸漬して電着塗装する複層皮膜形成方法に関する。
以下、詳細に述べる。
被塗物
本発明の複層皮膜形成方法で用いる金属被塗物としては、電着塗装が可能な金属被塗物によるものであれば特に制限はなく、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材などの金属被塗物が挙げられ、これらは1種を単独で、若しくは2種以上の金属の合金又は2種以上の金属が組み合わさった被塗物でも好適に用いることができる。
また、上記金属被塗物は任意選択で脱脂、表面調整、水洗等を施したものであっても良い。
化成処理液
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液の組成としては、以下の金属化合物成分(M)と、任意選択で水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)などが含有される。
金属化合物成分(M)
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液は、防食性及び仕上がり性の観点から、金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm含有することが好ましい。
上記金属化合物成分(M)としては、例えば、ジルコニウム化合物、チタン、コバルト、アルミニウム、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀及びランタノイド金属(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
金属化合物成分(M)において使用されるジルコニウム化合物は、ジルコニウムイオン、オキシジルコニウムイオン、フルオロジルコニウムイオンなどのジルコニウム含有イオンを生じる化合物であり、ジルコニウムイオンを生じる化合物として、例えば、オキシジルコニウムイオンを生じる化合物としては、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニル、硫酸ジルコニルなど;フルオロジルコニウムイオンを生じる化合物としては、ジルコニウムフッ化水素酸、フッ化ジルコニウムナトリウム、フッ化ジルコニウムカリウム、フッ化ジルコニウムリチウム、フッ化ジルコニウムアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、硝酸ジルコニル、フッ化ジルコニウムアンモニウムが好適である。
チタンイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化チタン、硫酸チタン、フルオロチタンイオンを生じる化合物としては、例えば、チタンフッ化水素酸、フッ化チタンナトリウム、フッ化チタンカリウム、フッ化チタンリチウム、フッ化チタンアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、チタンフッ化アンモニウムが好適である。
コバルトイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルトアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、硝酸コバルトが好適である。
アルミニウムイオンを生じる化合物としては、例えば、リン酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、蟻酸アルミニウム、シュウ酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、マロン酸アルミニウム、酒石酸アルミニウム、アスコルビン酸アルミニウムなどが挙げられる。これらのうち、特に、硫酸アルミニウムが好適である。
バナジウムイオンを生じる化合物としては、例えば、オルソバナジン酸リチウム、オルソバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸リチウム、メタバナジン酸カリウム、メタバナジン酸ナトリウム、メタバナジン酸アンモニウム、ピロバナジン酸ナトリウム、塩化バナジル、硫酸バナジルなどが挙げられる。これらの中でも、特にメタバナジン酸アンモニウムが好適である。
タングステンイオンを生じる化合物としては、例えば、タングステン酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸ナトリウム、ペンタタングステン酸アンモニウム、ヘプタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、ホウタングステン酸バリウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に、タングステン酸アンモニウムなどが好適である。
モリブデンイオンを生じる化合物としては、例えば、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸バリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸亜鉛などが挙げられる。
銅イオンを生じる化合物としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅(II)三水和物、硫酸銅(II)アンモニウム六水和物、酸化第二銅、リン酸銅などが挙げられる。
亜鉛イオンを生じる化合物としては、例えば、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられる。
インジウムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸インジウムアンモニウムなどが挙げられる。
ビスマスイオンを生じる化合物としては、例えば、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、臭化ビスマス、ケイ酸ビスマス、水酸化ビスマス、三酸化ビスマス、硝酸ビスマス、亜硝酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等の無機系ビスマス含有化合物;乳酸ビスマス、トリフェニルビスマス、没食子酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、酢酸ビスマス、蟻酸ビスマス、2,2−ジメチロールプロピオン酸ビスマスなどが挙げられる。
イットリウムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、蟻酸イットリウムなどが挙げられる。
鉄イオンを生じる化合物としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、クエン酸鉄(III)アンモニウム、シュウ酸鉄(III)アンモニウム、硝酸鉄(III)、フッ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III) などが挙げられる。
ニッケルイオンを生じる化合物としては、塩化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、クエン酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、スルファミン酸ニッケル(II)、炭酸ニッケル(II)、硫酸ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II) などが挙げられる。マンガンイオンを生じる化合物としては、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、シュウ酸マンガン(II)、硝酸マンガン(II)、炭酸マンガン(II)、硫酸マンガン(II)、硫酸マンガン(II)アンモニウムなどが挙げられる。
ガリウムイオンを生じる化合物としては、硝酸ガリウムが挙げられる。
銀イオンを生じる化合物としては、酢酸銀(I)、塩化銀(I)、硝酸銀(I)、硫酸銀(I)が挙げられる。
また、ランタノイド金属化合物において、ランタンイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ランタン、フッ化ランタン、酢酸ランタン、ホウ化ランタン、リン酸ランタン、炭酸ランタンなど;セリウムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、シュウ酸セリウム(III)、硝酸アンモニウムセリウム(III)、硝酸二アンモニウムセリウム(IV)など;プラセオジムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸プラセオジム、硫酸プラセオジム、シュウ酸プラセオジムなど;ネオジムイオンを生じる化合物としては、例えば、硝酸ネオジム、酸化ネオジウムなどが挙げられる。
さらに、上記金属化合物成分(M)は、任意選択で、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)及びアルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)から選ばれる少なくとも1種の金属の化合物を含有することもできる。
本発明で用いられる金属化合物成分(M)としては、少なくとも1種のジルコニウム化合物及び硝酸アルミニウムを含有することが好ましく、少なくとも1種のジルコニウム化合物を含有することがさらに好ましい。
水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液は、任意選択で水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)0.01〜40質量%を含有することができる。
該水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)としては、例えば、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などの水性媒体中でカチオン化可能なカチオン性樹脂組成物が挙げられる。
また、分子中にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの水性媒体中でアニオン化可能な基を有するアニオン性樹脂組成物が挙げられる。該樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリブタジエン樹脂系、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系などが挙げられる。
これらの官能基の中でも、分子中にアミノ基を有するカチオン性樹脂組成物であることが、夾雑物としてカチオン電着塗料中に混入しても影響を及ぼすことがなく、かつ化成処理液が被覆された金属被塗物が、カチオン電着塗料槽に移送される間に発錆を抑制することや、得られた塗装物品の防食性向上の為にも好ましい。上記アミノ基を有するカチオン性樹脂組成物としては、特に制限はないが、アミノ基含有エポキシ樹脂、ポリアリルアミン、マンニッヒ変性アミノ化フェノール樹脂などが好適であり、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。上記樹脂のアミン価としては、30〜150mgKOH/g樹脂固形分の範囲であることが好ましく、60〜130mgKOH/g樹脂固形分の範囲であることが更に好ましい。
上記水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)は、適宜に中和剤を加え、脱イオン水によって水分散してエマルションとすることによって、化成処理液の調製に用いることができる。
化成処理液の成分として、上記樹脂の他に、分子中に非イオン性且つ高極性の官能基として水酸基及びオキシエチレン鎖などを含み、かつ水性媒体中で水分散又は水溶化可能な樹脂や化合物を用いることができる。このような樹脂や化合物として、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリオキシプロピレン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
化成処理液が樹脂組成物(P)を含有することで、電着塗料槽までの移送間において被塗物上の発錆を抑制できる。
化成処理液の調整
本発明の複層皮膜形成方法で用いる化成処理液の調製は、特に限定されないが、例えば、以下に述べる(1)〜(3)の方法により行うことができる。
(1)脱イオン水並びに/若しくは水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)に、金属化合物成分(M)を加え、適宜に中和剤を添加し、さらに脱イオン水を加えて調整する方法。(2)金属化合物成分(M)に、脱イオン水並びに/若しくは水分散化又は水溶化した樹脂組成物(P)を添加して調整する方法。
(3)あらかじめ作製した化成処理液に、金属化合物成分(M)並びに/若しくは水分散化又は水溶化した樹脂組成物(P)を添加し、さらに脱イオン水を加えて調整する方法。
上記化成処理液は、金属化合物成分(M)を、合計金属量(質量換算)で、通常30〜20,000ppm、好ましくは50〜10,000ppm、さらに好ましくは100〜5,000ppm、さらに特に好ましくは150〜2,000ppm含有し、さらに、化成処理液の質量に対し、任意選択で水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)を、通常0.01〜40質量%、好ましくは0.02〜10質量%、さらに好ましくは0.03〜1質量%含有することができる。なお、pHは、1.0〜8.0、好ましくは3.0〜7.0の範囲内が好適である。
また、本発明の複層皮膜形成方法(工程1)で用いる化成処理液としては、該化成処理液中に含有されるナトリウムイオン濃度が、質量基準で通常2,000ppm未満であることが好適である。ナトリウムイオン濃度が2,000ppmよりも高くなると、水洗工程の一部又は全部を省略したときに、電着塗装での塗装性や塗膜の仕上がり性、防食性が劣る結果となることがある。化成処理液中に含有されるナトリウムイオン濃度は、質量基準で、通常2,000ppm未満であり、好ましくは1,000ppm未満であり、より好ましくは500ppm未満であり、更に好ましくは100ppm未満であることが好適である。
ナトリウムイオンが化成処理液中に含有される経路としては、例えば、原料である水、促進剤(亜硝酸ナトリウムなど)、前述の金属化合物成分(M)、中和剤、前工程で使用する脱脂液や洗浄水から持ち込まれるものなどが考えられる。
上記と同様の理由で、化成処理液中に含有されるカリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、及びマグネシウムイオン濃度についても、質量基準で、それぞれ通常2,000ppm未満であり、好ましくは1,000ppm未満であり、より好ましくは500ppm未満であり、更に好ましくは100ppm未満であることが好適である。
尚、化成処理液中のナトリウムイオン濃度、カリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度及びマグネシウムイオン濃度については、原子吸光分析装置(商品名:ゼーマン原子吸光光度計、HITACHI社製)を用いて原子吸光分析法により求めることができる。
化成処理皮膜の形成方法
上記化成処理皮膜の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、金属被塗物を、化成処理液を満たした化成処理槽に、通常10〜360秒間、好ましくは50〜300秒間、さらに好ましくは70〜240秒間浸漬して、金属被塗物上に化成処理皮膜を形成する方法(1)、金属被塗物を、化成処理液を満たした化成処理槽に浸漬し、金属被塗物を陰極として、通常1〜50Vで10〜360秒間、好ましくは2〜30Vで30〜180秒間通電する方法(2)、金属被塗物を、化成処理液を満たした化成処理槽に一定時間浸漬し、その後更に通電する方法であって、通常10〜180秒間、好ましくは5〜120秒間浸漬し、続いて、通常1〜100Vで10〜360秒間、好ましくは2〜60Vで30〜180秒間通電する方法(3)などが挙げられる。本発明の方法においては、通電を行わない方法(1)でも外観ムラの抑制及び高い防食性を有する複層皮膜をえることができる。
なお、化成処理皮膜の析出機構としては、浸漬又は通電によって、金属被塗物近傍のpH上昇により加水分解反応が起こり、化成処理液中の金属イオン種が難溶性の化成処理皮膜(金属酸化物及び/又は樹脂組成物(P)の一部)として金属被塗物上へ析出することにより、金属化合物成分(M)及び/又は樹脂組成物(P)を含んでなる化成処理皮膜が形成される。
また、該化成処理皮膜を形成した金属被塗物は、電着塗装前に適宜セッティングを施し、次いでカチオン電着塗料を満たしたカチオン電着塗料槽に浸漬して電着塗装することによって、該化成処理皮膜上に電着塗装塗膜を形成することができる。その際、本発明においては、電着塗装の前に従来行われていた水洗工程の一部又は全部を省略することができる。
なお、本明細書において「水洗工程の一部又は全部を省略」とは、工業用水洗及び/又は上水水洗、並びに純水工程からなる少なくとも1種の水洗工程を省略することが可能であることを意味し、要求される塗膜性能に応じて適宜対応することができる。例えば、工業用水洗、上水水洗を省略し、純水水洗のみを行うことは「水洗工程の一部又は全部を省略」に該当する。従って、「水洗工程の一部又は全部を省略」するとは、例えば、(i)工業用水洗及び/又は上水水洗による水洗、ならびに(ii)純水による水洗の一方のみによる水洗を行うか、又は(i)(ii)のいずれも行わないことを示す。また、本発明においては、上記(i)及び(ii)の工程を共に行うものの、各工程の水の使用量を低減することにより、水の使用量の合計が上記(i)及び(ii)の工程の少なくとも一方を省略するのと同等になるような方法も、水使用量の観点からは実質的に上記(i)及び(ii)の工程の少なくとも一方を省略するのと同様であるため、「水洗工程の一部又は全部を省略」した方法に包含される。
上記水洗方法としては、浸漬式と噴霧式(スプレー噴霧式、シャワー噴霧式)があり、本発明では、いずれの方法も好適に用いることができるが、省工程化・省スペース化、排水処理や廃棄物を削減する観点から、噴霧式水洗のみを行うことが好ましい。噴霧式水洗は、化成処理を施した被塗物表面に、水を通常1〜120秒間、好ましくは2〜60秒間噴霧することで、余分な化成処理液を取り除くことができるものである。従って、「水洗工程の一部又は全部を省略」するとしては、例えば、水を120秒間以下の時間、好ましくは60秒間以下の時間噴霧する工程を含む方法が挙げられる。上記方法には水洗を行わない方法も含まれる。上記噴霧式水洗としては、被塗物の形状が複雑な場合(例えば、自動車フレームなど)、全ての表面に直接噴霧することができないため、仕上がり外観が最も重要となる外面のみに噴霧することができる。
また、さらなる省工程化・省スペース化、排水処理や廃棄物を削減する観点から、浸漬式と噴霧式を含む、工業用水洗、上水水洗及び純水水洗などの全ての水洗工程を省略することが、更に特に好ましい。
前記の電着塗装前に行うセッティングの条件としては、通常0〜80℃、好ましくは5〜50℃、さらに好ましくは10〜40℃の温度で、通常10秒間〜30分間、好ましくは20秒間〜20分間、さらに好ましくは30秒間〜15分間のセッティング時間を施すことによって、金属被塗物上に付着した余分な化成処理液を除去することができ、その結果、電着塗装性が良好で、仕上がり性及び/又は防食性の優れた複層皮膜を形成することができる。
さらにセッティング中に、金属被塗物に対し、エアーブロー、揺動、回転から選ばれる少なくとも1種を適宜行うことにより、金属被塗物上に付着、堆積した余分な化成処理液を極力除去することができる。
上記エアーブローとしては、被塗物表面でのエアー圧として、通常、0.01〜1.0MPa、好ましくは0.05〜0.5MPa、通常1秒〜10分間、好ましくは2秒〜3分間、通常0〜80℃、好ましくは10〜60℃の温度で、空気を噴霧することで、被塗物上の余分な化成処理液を除くことができる。
続いて、得られた化成処理皮膜を形成した金属被塗物を、カチオン電着塗料を満たしたカチオン電着槽に浸漬し、通電することによって、化成処理皮膜上に電着塗装を行う。本発明では、電着塗装をする直前の金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、10,000μS/cm未満の範囲であることを特徴とする。また、より好ましくは、60μS/cmより高く、かつ7,000μS/cmより低い範囲であり、さらに好ましくは、60μS/cmより高く、かつ5,000μS/cmより低い範囲であり、さらに特に好ましくは、60μS/cmより高く、かつ2,000μS/cmより低い範囲であることが好適である。本発明において、「電着塗装時において」とは、「電着塗装をする直前において」を意味する。そして、「電着塗装をする直前」とは、前述の化成処理を行い、任意選択で水洗を行った後、かつ化成処理皮膜を形成した金属被塗物をカチオン電着槽に浸漬する前を意味する。
電導度を低くするためには十分な水洗工程が必要となり、省工程化・省スペース化が難しい。また、上記の範囲を超えて電導度が高い場合には得られる複層皮膜の仕上がり性及び防食性が劣ることとなる。
また、電着塗装をする直前の金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のナトリウムイオン濃度としては、該溶液の質量基準で、通常500ppm未満であり、好ましくは200ppm未満であり、より好ましくは100ppm未満であり、更に好ましくは50ppm未満であり、更に特に好ましくは10ppm未満であることが好適である。
同様に電着塗装をする直前の金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカリウムイオン濃度、カルシウムイオン濃度、及びマグネシウムイオン濃度についても、質量基準で、それぞれ通常500ppm未満であり、好ましくは200ppm未満であり、より好ましくは100ppm未満であり、更に好ましくは50ppm未満であり、更に特に好ましくは10ppm未満であることが好適である。
カチオン電着塗料
本発明の複層皮膜形成方法(工程2)で用いるカチオン電着塗料は、従来、公知のものが特に制限なく使用可能であり、特にアミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート(B)を含有するものが好ましい。また、本発明で使用するカチオン電着塗料は、樹脂固形分の総量を基準にして、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)を通常40〜90質量%、好ましくは55〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%の範囲内、ブロック化ポリイソシアネート(B)を通常10〜60質量%、好ましくは15〜45質量%、さらに好ましくは20〜40質量%の範囲内で含有することが好適である。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂(a1)と、アミン化合物(a2)と、さらに任意選択で変性剤とを反応せしめて得ることができ、例えば、(1)エポキシ樹脂と第1級アミン化合物、第2級アミン化合物又は第1、2級混合アミン化合物との付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)エポキシ樹脂とケチミン化されたアミン化合物との付加物(例えば、米国特許第4,017,438号 明細書参照);(3)エポキシ樹脂とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等のアミノ基含有エポキシ樹脂を挙げることがでる。
エポキシ樹脂(a1)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造に使用されるエポキシ樹脂(a1)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であり、その分子量は一般に少なくとも300、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂が好ましい。
該エポキシ樹脂(a1)の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(a1)としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
Figure 0006416688
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
かかるエポキシ樹脂(a1)の市販品としては、例えば、三菱化学(株)から、jER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
また、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、任意選択でアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、任意選択でアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
アミン化合物(a2)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料であるアミン化合物(a2)としては、上記エポキシ樹脂(a1)との反応性を有するアミン化合物であれば特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−アルキルアミン又はジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N−ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3−メチルアミン−1,2−プロパンジオール、3−tert−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N−メチルグルカミン、N−オクチルグルカミンなどのアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ビス(4−アミノブチル)アミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサアミンなどのアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1−メチルピペラジン、3−ピロリジノール、3−ピぺリジノール、4−ピロリジノールなどの複素環を有するポリアミン;上記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1〜30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;上記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;上記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;などを挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)のアミン価としては、40〜80mgKOH/g、好ましくは45〜65mgKOH/gとすることが、塗膜の耐乾きムラ性と防食性の点から好ましい。
変性剤
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、任意選択で、変性剤により変性されたものであってよい。このような変性剤は、エポキシ樹脂(a1)との反応性を有する樹脂や化合物であれば特に限定されず、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、アクリル酸、オレイン酸、グリコール酸、乳酸、安息香酸、没食子酸、脂肪酸、二塩基酸などの酸性化合物、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールなどの一価アルコール、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリイソシアネート化合物、γ−ブチロラクトンやε−カプロラクトンなどのラクトン類、ε−カプロラクトンなどのラクトン類とポリイソシアネート化合物を反応させた化合物、アクリルモノマー、アクリルモノマーを重合反応させた化合物、キシレンホルムアルデヒド化合物などが挙げられ、これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
上記のエポキシ樹脂(a1)、アミン化合物(a2)、さらに任意選択で使用される変性剤との反応は、通常、適当な有機溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度で行なうことができる。
上記の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの有機溶媒の混合物が挙げられる。
上記の変性剤の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、カチオン電着塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、仕上り性や防食性向上の点から、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の固形分質量を基準にして3〜50質量%、好ましくは5〜30質量%の範囲内が適当である。
また、本発明で用いるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)としては、特に制限はなく、上記以外に、オキサゾリドン環を含有したエポキシ樹脂に、アミノ基含有化合物を反応させてなるアミノ基含有エポキシ樹脂(例えば、特開平5−306327号公報);アルキレンオキサイド構造を有するエポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を反応させてなるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(例えば、特開2011−847723号公報);エポキシ樹脂に、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させてなるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂(例えば、特開2003−221547号公報)なども適宜任意選択で用いることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
ブロック化ポリイソシアネート(B)
上記ブロック化ポリイソシアネート(B)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応による生成物である。ブロック化ポリイソシアネート(B)で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを特に制限無く使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]などの芳香族ポリイソシアネート化合物;ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せが挙げられる。
防食性向上の観点から、特にトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4'−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、クルードMDI等の芳香族ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
一方、前記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、付加反応によって生成するブロック化ポリイソシアネート化合物は、常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生する。
ブロック化ポリイソシアネート(B)で使用されるイソシアネートブロック剤としては、公知のものを特に制限無く使用することができ、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
カチオン電着塗料のその他の成分
上記カチオン電着塗料は、上記成分(A)及び(B)以外に、任意選択で、エポキシ樹脂と多価アルコールとを反応せしめて得られるアミノ基を実質的に有さない変性エポキシ樹脂、多塩基酸と多価アルコールとを反応せしめて得られるポリエステル樹脂などを含有することができる。上記カチオン電着塗料に変性エポキシ樹脂及び/又はポリエステル樹脂を含有する場合、含有量としては、(A)成分及び(B)成分の固形分合計100質量部を基準にして、通常3〜50質量部、好ましくは10〜45質量%の範囲内である。
上記カチオン電着塗料は、さらに任意選択で、界面活性剤や表面調整剤等の各種添加剤、顔料分散ペースト、水や有機溶剤及び中和剤などを十分に混合して、水溶化又は水分散化して得ることができる。
上記中和剤としては、公知の有機酸及び無機酸を特に制限なく用いることができ、なかでもギ酸、乳酸、酢酸又はこれらの混合物が好適である。
上記顔料分散ペーストとしては、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤及び顔料類を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製できる。
上記顔料分散用樹脂としては、公知のものが使用でき、例えば水酸基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂、界面活性剤等、又は3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上記顔料類には、特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料;などが挙げられる。
さらに、腐食抑制などを目的として、ビスマス化合物を含有させることができる。上記ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、及び乳酸ビスマス、サリチル酸ビスマスなどの有機酸ビスマス等を用いることができる。
また、塗膜硬化性の向上を目的として、例えば、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイト゛等の有機錫化合物を用いることができる。
電着塗装
本発明の複層皮膜形成方法(工程2)で用いるカチオン電着塗料は、化成処理皮膜を形成せしめた金属被塗物に、水洗工程の一部又は全部を省略し、電着塗装することができる。上記電着塗装は、一般的には、カチオン電着塗料を脱イオン水等で希釈して、固形分濃度が約5〜40質量%、好ましくは8〜25質量%、pHが1.0〜9.0、好ましくは3.0〜7.0の範囲内の塗料浴を準備し、さらに浴温15〜35℃、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行うことができる。
電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を除去するために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗される。
カチオン電着塗料を塗装して得られた電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5〜40μm、好ましくは10〜30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で110〜200℃、好ましくは140〜180℃にて、時間としては10〜180分間、好ましくは20〜60分間、電着塗膜を加熱して行うことができる。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%、「ppm」は質量ppmを示す。
化成処理液の製造
製造例1
脱イオン水をディスパーで強撹拌しながら、ヘキサフルオロジルコニウム酸、並びにあらかじめ脱イオン水で希釈した硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム及び硝酸カリウムを配合した。
更に上水及び/又は脱イオン水を用いて希釈を行い、硝酸、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、フッ化水素酸、アンモニア及び/又は水酸化ナトリウムを配合し、最終的に、pHが3.8、金属元素としてジルコニウムイオンが500ppm、アルミニウムイオンが100ppm、ナトリウムイオンが85ppm、カリウムイオンが85ppm、カルシウムイオンが85ppm、マグネシウムイオンが85ppmとなるように調整して、化成処理液X−1を得た。
製造例2〜31
下記表1で示す組成とする以外は、製造例1と同様に配合を行い、化成処理液X−2〜31を得た。
Figure 0006416688
尚、表中の配合量は全て質量単位の固形分濃度(ppm)である。
(注1)P−1:PAA−01(商品名、日東紡績社製、ポリアリルアミン、重量平均分子量1,600)
(注2)P−2:マンニッヒ変性アミノ化フェノール樹脂〔撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、マルカリンカーS−2P(商品名、丸善石油化学社製、ポリ−4−ビニルフェノール)120部、エチレングリコールモノブチルエーテル120部を加えて90℃に昇温し、ポリ−4−ビニルフェノールを溶解させた。次いで、モノメチルエタールアミン35部、37%のホルマリン40部、エチレングリコールモノブチルエーテル10部を加え、90℃で4時間反応させた後、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、固形分40%に調整した。〕。
製造例32
亜鉛イオン:1,500ppm
ニッケルイオン:500ppm
リン酸イオン:13,500ppm
フッ素イオン:500ppm
硝酸イオン:6,000ppm
亜硝酸イオン:100ppm
ナトリウムイオン:85ppm
カルシウムイオン:85ppm
カリウムイオン:85ppm
マグネシウムイオン:85ppm
上記組成の化成処理液X−32を調整した。
製造例33
亜鉛イオン:1,500ppm
ニッケルイオン:500ppm
リン酸イオン:13,500ppm
フッ素イオン:500ppm
硝酸イオン:6,000ppm
亜硝酸イオン:100ppm
ナトリウムイオン:300ppm
カルシウムイオン:300ppm
カリウムイオン:300ppm
マグネシウムイオン:300ppm
上記組成の化成処理液X−33を調整した。
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造
製造例34
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(商品名、ジャパンエポキシレジン社製エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量350)1200部に、ビスフェノールA 500部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量850になるまで反応させた。
次に、ジエタノールアミン160部及びジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとのケチミン化物65部を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテル480gを加え、固形分80%のアミノ基含有エポキシ樹脂A−1を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂A−1はアミン価59mgKOH/g、数平均分子量2,100であった。
ブロック化ポリイソシアネート(B)の製造
製造例35
反応容器中に、コスモネートM−200(商品名、三井化学社製、クルードMDI、NCO基含有率 31.3%)270部、及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後100℃に昇温し、この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネートB−1を得た。
顔料分散用樹脂の製造
製造例36
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、商品名、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、ジメチルエタノールアミン134部及び濃度90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。次いで、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。
顔料分散ペーストの製造
製造例37
製造例36で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部及び脱イオン水20.3部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分55%の顔料分散ペーストを得た。
カチオン電着塗料の製造
製造例38
製造例34で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂A−1 87.5部(固形分70部)、製造例35で得られたブロック化ポリイソシアネートB−1 37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下して固形分34%のエマルションを得た。
次に、上記エマルション294部(固形分100部)、製造例37で得た55%の顔料分散ペースト52.4部(固形分28.8部)、脱イオン水350部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料Y−1を製造した。
試験板の作製
実施例1
以下の工程1−1〜工程2−3によって、試験板Z−1を作製した。
工程1(脱脂〜表面調整〜化成処理)
工程1−1:2.0質量%の「ファインクリーナーL4460」(日本パーカライジング株式会社製、アルカリ脱脂剤)を43℃の温度に調整し、冷延鋼板(70mm×150mm×0.8mm)を120秒間浸漬して脱脂処理を行った。
工程1−2:常温の「プレパレン4040N」(日本パーカライジング(株)製、表面調整剤)の0.15%水溶液に、上記鋼板を30秒間浸漬して表面調整を行い、次いで、純水を用いて30秒間スプレー水洗した。
工程1−3:製造例1で得られた化成処理液X−1を43℃の温度に調整し、上記鋼板を120秒間浸漬して化成処理を行った。
工程2(水洗〜電着塗装〜焼き付け乾燥)
工程2−1:工程1で得られた化成処理皮膜を形成した鋼板を、純水に30秒間浸漬して水洗を行った。(後述する水洗工程IIに相当)
工程2−2:製造例38で得られたカチオン電着塗料Y−1を28℃の温度に調整し、上記鋼板を該カチオン電着塗料の浴に浸漬し、250V、180秒間(30秒にて昇電圧)の条件で電着塗装を行った。
工程2−3:上記鋼板を、上水を用いて1回、純水を用いて1回、それぞれ120秒間浸漬して水洗を行い、次いで、電気乾燥機によって170℃で20分間焼き付け乾燥をして、乾燥膜厚22μmの複層皮膜を形成した試験板Z−1を得た。
実施例2〜33、比較例1〜4
下記表2で示す化成処理液及び/又は水洗工程とする以外は、実施例1と同様にして、試験板Z−2〜37を得た。また、得られた試験板に対して、仕上がり性として外観ムラ性、及び防食性の評価試験を行ったので、その評価結果もあわせて下記表2に記載する。尚、実施例及び比較例で用いた水洗工程の詳細、イオン濃度測定方法、電導度測定方法、並びに外観ムラ性及び防食性の評価方法を以下に示す。
<水洗工程>
実施例及び比較例で用いた水洗工程(工程2−1)を示す。工程短縮の観点から、工程は短いほうが好ましく、また、環境面及び経済的な観点から、使用する洗浄水がより少ない工程である事がさらに好ましい。尚、下記水洗工程II〜Vは、従来型の水洗工程Iよりも水洗工程の一部又は全部を省略している。
水洗工程I:化成処理後、被塗物に対して、上水を用いて30秒間の浸漬式水洗を1回行い、次いで純水を用いて30秒間の浸漬式水洗を1回行う従来型の水洗工程(浸漬式水洗2回以上)であり、工程は最も長い。
水洗工程II:化成処理後、被塗物に対して、純水を用いて30秒間の浸漬式水洗を1回行う工程で、従来型の水洗工程(浸漬式水洗2回以上)よりも水洗工程を一部省略している。
水洗工程III:化成処理後、被塗物に対して、純水を用いて3秒間の噴霧式のスプレー水洗を行う工程で、従来型の水洗工程(浸漬式水洗2回以上)よりも工程を一部省略していて、水洗工程IIの浸漬式水洗1回よりも工程がやや短い。
水洗工程IV:化成処理後、水洗工程はなく、次いで被塗物に対して、10秒間のエアーブロー(室温、被塗物表面でのエアー圧力:0.2MPa)を行う工程であり、工程は短く、洗浄水の廃水が出ない。
水洗工程V:化成処理後、水洗工程はなく、工程は最も短く、洗浄水の廃水が出ない。
<イオン濃度>
上記実施例及び比較例において、電着塗装を行う直前の試験板を別に用意して垂直の状態で容器に入れ、蓋をして1時間放置した。次いで試験板を取り出し、容器の下部に溜まっている溶液のイオン濃度を測定した。イオン濃度の測定は原子吸光分析装置(商品名:ゼーマン原子吸光光度計、HITACHI社製)を用いた。尚、試験板1枚で電導度の測定に必要な量が確保できない場合は複数の試験板を用いて必要量を確保した。
<電導度>
上記イオン濃度と同様の試料を用いて、電導度(μS/cm)を測定した。電導度の測定はCONDACTIVITY METER DS−12(堀場製作所社製)を用いた。
<外観ムラ性>
得られた試験板の外観を観察し、複層皮膜の仕上がり性として外観ムラ性を評価した。評価については、A(非常に良好)からE(不良)までの以下の基準で評価した。
A:極めて均一な外観を有している。
B:均一な外観を有している。
C:ややムラがあると視認される部分があるものの、ほぼ均一な外観を有している。
D:ムラが視認され、やや不良である。
E:外観が明らかに不均一であり、不良である。
<防食性>
試験板の素地に達するように、複層皮膜上にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの傷、フクレ幅を測定した。評価については、A(非常に良好)からE(不良)までの以下の基準で評価した。
A:錆、フクレの最大幅がカット部より2.0mm以下(片側)で防食性が非常に良好である。
B:錆、フクレの最大幅がカット部より2.0を超え、かつ2.5mm以下(片側)で、防食性が良好である。
C:錆、フクレの最大幅がカット部より2.5を超え、かつ3.0mm以下(片側)で、防食性がやや良好である。
D:錆、フクレの最大幅がカット部より3.0mmを超え、かつ3.5mm以下(片側)で、防食性がやや不良である。
E:錆、フクレの最大幅がカット部より3.5mmを超え(片側)、防食性が不良である。
Figure 0006416688

Claims (11)

  1. 金属被塗物に化成処理皮膜と電着塗装皮膜を形成する以下の工程、
    工程1:金属被塗物をジルコニウム化合物を含む化成処理液に浸漬して化成処理皮膜を形成する工程、
    工程2:カチオン電着塗料を用いて上記金属被塗物を電着塗装して電着塗装皮膜を形成する工程
    を含む複層皮膜形成方法において、
    上記工程2の電着塗装時において、金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、10,000μS/cm未満であり、上記工程1と上記工程2の間の水洗工程が噴霧式水洗のみにより行われることを特徴とする複層皮膜形成方法。
  2. 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液の電導度が、60μS/cmより高く、かつ7000μS/cm未満である、請求項1に記載の方法。
  3. 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のナトリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層皮膜形成方法。
  4. 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカリウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  5. 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のカルシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  6. 上記金属被塗物に付着及び/又は滞積している溶液のマグネシウムイオン濃度が、該溶液の質量基準で、500ppm未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  7. 上記化成処理液が、ジルコニウム、チタン、コバルト、アルミニウム、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、亜鉛、インジウム、ビスマス、イットリウム、鉄、ニッケル、マンガン、ガリウム、銀及びランタノイド金属から選ばれる少なくとも1種の金属化合物からなる少なくとも1種の金属化合物成分(M)を合計金属量(質量換算)で30〜20,000ppm含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  8. 上記化成処理液が、水分散性又は水溶性の樹脂組成物(P)を0.01〜40質量%含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  9. 上記カチオン電着塗料が、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)とブロック化ポリイソシアネート(B)を含有し、樹脂固形分の総量を基準にして、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)40〜90質量%、ブロック化ポリイソシアネート(B)10〜60質量%を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  10. 上記工程2の電着塗装を施す前に、金属被塗物に対し、エアーブロー、揺動、回転から選ばれる少なくとも1種を行うことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の複層皮膜形成方法を用いて複層皮膜を形成する工程を含む、塗装物品の製造方法。
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