JP6416032B2 - 診断装置 - Google Patents
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Description
そこで、ハンマーとマイクロフォンとを一体に構成し、加振したときに発生する音をマイクロフォンで採取し、採取された音の周波数スペクトルと予め記憶しておいた健全部の周波数スペクトルである基準周波数スペクトルを比較することで、コンクリート構造物の剥離の有無を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、加振による検査を定期的に行うとともに、加振したときに発生する音をマイクロフォンで採取し、採取された音の周波数特性を比較することで、コンクリート構造物の非健全部分を検出する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、上記マイクロフォンとして、図16に示すように、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置し、第5のマイクロフォンM5をマイクロフォンM1〜M4の作る正方形を底面とする四角錐の頂点の位置に配置して成る音採取手段10Zにより、音源から伝播する音の音圧信号を検出し、対となる2つのマイクロフォン(Mi,Mj)間の位相差に相当する到達時間差Dijから音源の方向である水平角θと仰角φとを推定する音源方向推定装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、従来の音源方向推定装置では、音源方向と到来した音の大きさを周波数毎に計測できるので、音源の情報を確実に把握することができるが、室内などの狭い空間では壁などからの反射音の影響が大きいので、直接音と反射音とを区別するための演算処理が必要であった。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、直接音と反射音とを区別するための演算処理を必要とせずに、狭い空間であっても音源の方向を簡単かつ精度よく推定できるとともに、診断対象部の広範囲の状態を把握することが可能な診断装置を提供することを目的とする。
また、前記設置手段が平面板を備え、前記少なくとも3個のマイクロフォンは、平面板の板面間を貫通するように形成されたマイクロフォン固定孔に固定されることによって平面板に設置されたので、平面板の一方の板面側から音圧信号を入力して当該一方の板面側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性効果が向上した音採取手段を構成することが可能となり、反射音の影響をより少なくできて、音源方向の推定精度を向上させることができる。
また、前記設置手段は雲台を介して向きを変更可能なよう前記移動手段に連結されているため、マイクロフォンの向きを調整することが可能となり、音源方向の推定精度をより向上させることができる。
また、前記少なくとも3個のマイクロフォンとして、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された第1及び第2のマイクロフォン対を備え、前記音源方向推定手段は、前記第1のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記第2のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォンの位置座標と音速とから音源の方向を推定するので、音源の推定精度を更に向上させることができる。
また、前記少なくとも3個のマイクロフォンとして、各マイクロフォンの振動板の中心が四角形の各頂点に配置される第1〜第4のマイクロフォンと、前記第1〜第4のマイクロフォンの位置を頂点とする四角形の対角線の交点に配置される第5のマイクロフォンとを備え、前記音源方向推定手段は、前記5つのマイクロフォンから選択される、互いに一直線上にない、2つのマイクロフォン対のそれぞれについて、前記2つのマイクロフォン対のうちの一方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、他方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォンの位置座標と音速とから前記音源の方向を推定することを特徴とするので、低い周波数の音を発生する音源方向については、マイクロフォン間隔の長い(L=LL)2組のマイクロフォン対のデータを用いて推定し、高い周波数の音を発生する音源方向については、マイクロフォン間隔の短い(L=LS)2組のマイクロフォン対のデータを用いて推定すれば、測定できる周波数の上限を下げることなく、音源の方向を精度よく推定することができる。
また、前記少なくとも3個のマイクロフォンとして、各マイクロフォンの振動板の中心が四角形の各頂点に配置される第1〜第4のマイクロフォンを備え、前記音源方向推定手段は、前記4つのマイクロフォンから選択される、互いに一直線上にない、2つのマイクロフォン対のそれぞれについて、前記2つのマイクロフォン対の内の一方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、他方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォンの位置座標と音速とから前記音源の方向を推定することを特徴とするので、4個のマイクロフォンM1〜M4から、異なるマイクロフォン間隔La,Lb(Lb=La/√2)を有する、互いに一直線上にない2つのマイクロフォン対を構成することができ、測定できる周波数の上限を下げることなく、音源の方向を精度よく推定することができる。
図1に示すように、診断装置1は、診断用画像作成装置1Aと、加振制御装置1Bと、を備えて構成される。
尚、音・映像採取装置2Aと、音・映像採取装置2Aを制御する制御手段3Aと、情報処理手段4と、音源方向推定手段5とにより、音源方向推定装置が構成される。
即ち、移動ユニット20Aと制御手段3Aとにより移動手段が構成され、音・映像採取装置2Aは、移動ユニット20Aと移動ユニット20Aを制御する制御手段3Aとによって、移動及び停止可能に構成されている。
当該少なくとも3個のマイクロフォンM,…によって音源からの音圧信号が採取され、当該カメラ12によって音源の映像信号が採取される。
尚、図2乃至図4では、設置手段13に、マイクロフォンM,…として、5個のマイクロフォンM1,M2,M3,M4,M5が設置された音・映像採取ユニット10を例示している。
各マイクロフォンM,…は、無指向性のマイクロフォン、単一指向性のマイクロフォンのいずれでもよい。
また、マイクロフォンM,…は、一般に使用されている小型のマイクロフォンでもよいし、サーフェイスマイクロフォンのような薄型のマイクロフォンでもよい。
図3に示すように、マイクロフォン設置手段130は、収納体131と、マイクロフォン取付部材132と、防風スクリーン133と、収納体131の内側における後述するマイクロフォン取付部材132の周囲に充填された内部吸音材134とを備えて構成される。
そして、図2,図4に示すように、収納体131の円筒外周面を取り囲むように筒状に形成された側方吸音材14が取付けられる。
内部吸音材134及び側方吸音材14としては、例えば、グラスウールやウレタンスポンジなどの多孔質体を用いればよい。
マイクロフォン取付部材132は、例えば、収納体131の底板136から前側に立ち上がるように設けられた例えば断面十字形状の設置台137と、設置台137の前面137tに設置される設置板138とを備えて構成される。設置台137の前面137tは十字状の平面に形成される。設置板138は、例えば、前面138t及び当該前面138tと平行な後面とが十字状の平面に形成された十字状平面板により形成される。
設置台137は、例えば、十字の中央部と十字の4つの端部とに前後に貫通するマイクロフォン位置決め孔137hを備え、また、中央部のマイクロフォン位置決め孔137hと端部のマイクロフォン位置決め孔137hとの間には、設置板取付支柱141を貫通させるための支柱通し孔141hを備える。
設置板138は、例えば、十字の中央部と十字の4つの端部とに前後に貫通してマイクロフォンを固定するためのマイクロフォン固定孔138aを備え、また、中央部のマイクロフォン固定孔138aと端部のマイクロフォン固定孔138aとの間には、設置板取付支柱141の前端部を固定するための支柱固定孔141aを備える。
尚、設置板138としては、剛性が高く、音を全反射する材料を用いることが好ましい。
また、上記では、断面十字形状の設置台137及び設置板138を例示したが、設置台137及び設置板138の形状は別段どのような形状であってもよい。
そして、マイクロフォンM,…がマイクロフォン固定孔138a及びマイクロフォン位置決め孔137h内に挿入された状態で図外の取付ねじなどでマイクロフォン固定孔138aに固定される。
さらに、収納体131の底板136の後面142には、雲台30のアーム36に連結される連結板143が取り付けられる。
例えば、設置板138の前面138tは、マイクロフォン固定孔138aに固定されたマイクロフォンMの中心を通って前後に延長するマイクロフォンMの中心線と直交する平面により形成され、各マイクロフォン固定孔138a,…に固定された各マイクロフォンM,…の前端は、例えば、設置板138の前面138tと同一平面上又は前面138tと平行な平面上に位置される。
言い換えれば、少なくとも3個のマイクロフォンM,…は、各マイクロフォンM,…の音圧検出部としての振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置され、前記一平面の一方の面に面した一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、マイクロフォン設置手段130に設置されている。
具体的には、各マイクロフォンM,…の前端が平面板としての設置板138の例えば一方の板面である前面138tと平行な平面上に位置され、設置板138の前面138t側である前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外、即ち、設置板138の側方、及び、設置板138の後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が設置板138に設置された構成の音・映像採取ユニット10を備える。このような音・映像採取ユニット10を備えたことにより、設置板138の前面138t側である前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性効果が向上するため、反射音の影響をより少なくできて、音源方向の推定精度を向上させることができる。
即ち、少なくとも3個のマイクロフォンM,…は、一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、マイクロフォン設置手段130に設置された構成であればよい。
好ましくは、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が、平面板により形成された設置板138の板面間を貫通するように形成されたマイクロフォン固定孔138a,…に固定されることによって、少なくとも3個のマイクロフォンM,…の振動板の中心が設置板138の一方の板面である前面138tと平行な一平面上に位置され、さらに、これら少なくとも3個のマイクロフォンM,…の前部以外、即ち、マイクロフォンM,…の側部、及び、後部側が吸音材で覆われるように構成されたことで、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が、一方(前方)側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように構成されていればよい。
防風スクリーン133としては、例えば、ウレタンフォームなどの網体が挙げられる。
なお、防風スクリーン133は、防風スクリーン133の周縁部を収納体131の開口135側の外周面に接着するか、円環状のバンドなどで固定すればよい。
従って、カメラ12を有した音・映像採取ユニット10を備えていることにより、音源の画像を採取でき、音源の確認が容易となる。
尚、側方吸音材14は、収納体131の円筒外周側のカメラ設置手段140及びカメラ12が位置される円筒の一部分が除去された断面C字形状に形成されたものを用いている。
部材取付部21Aは、例えば、板材により形成された台により構成される。
移動体22Aは、例えば、部材取付部21Aに連結された車輪支持脚23Aと、車輪支持脚23Aの先端側に設けられた車輪24Aとにより構成される。
移動体駆動手段は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としての伝達歯車機構を介して車輪24Aに伝達されることで、車輪24Aが回転し、移動ユニット20Aが移動するように構成されている。
音・映像採取装置2Aは、診断対象部上で図2(a)のF方向に移動させることが可能である。
支柱31の一端には取付部33が設けられ、当該取付部33が図外のねじ等の取付手段により移動ユニット20Aの部材取付部21Aに取付けられる(図2参照)。
アーム回転駆動機構32は、支柱31の他端と連結された支持台34と、中心線34Cが支柱31の中心線31Cと直交するように配置されて当該中心線34Cを回転中心として回転可能なように支持台34に支持されたアーム回転中心軸体35と、一端部がアーム回転中心軸体35の両端に連結された一対のアーム36とを備えて構成され、一対のアーム36の他端がマイクロフォン設置手段130の連結板143に連結された構成である。
アーム回転駆動手段は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
支柱伸縮駆動手段は、例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としてのピニオンラックを介して小径支柱31Bに伝達されて、支柱31が伸縮運動を行う構成とされている。これにより、設置手段13が支柱31の中心線に沿った方向に移動可能となり、マイクロフォンM,…及びカメラ12が支柱31の中心線31Cに沿った方向Fに移動可能に構成される。
即ち、移動体制御手段が移動体駆動手段を制御することによって、移動ユニット20Aの移動及び停止が制御され、かつ、雲台制御手段が支柱駆動手段及びアーム駆動手段を制御することによって、音・映像採取ユニット10の向きを調整できるように構成されている。
以上のように、音・映像採取ユニット10の向きを変更可能なように設置手段13を支持して移動ユニット20Aの部材取付部21Aに連結される雲台30を備えていることにより、音・映像採取ユニット10の向きを調整することが可能となり、音源方向の推定精度をより向上させることができる。
図2(b)に示すように、加振装置2Bは、移動ユニット20Bと、加振部材100とを備える。
即ち、移動ユニット20Bと制御手段3Bとにより移動手段が構成され、加振装置2Bは、移動ユニット20Bと移動ユニット20Bを制御する制御手段3Bとによって、移動及び停止可能に構成されている。
部材取付部21Bは、例えば、板材により形成された台により構成される。
移動体22Bは、例えば、部材取付部21Bに連結された車輪支持脚23Bと、車輪支持脚23Bの先端側に設けられた車輪24Bとにより構成される。
移動体駆動手段は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としての伝達歯車機構を介して車輪24Bに伝達されることで、車輪24Bが回転し、移動ユニット20Bが移動するように構成されている。
加振装置2Bは、診断対象部上で図2(b)のF方向に移動させることが可能である。
回転打撃部材103の中心軸102周りの外周面は一定周期で凹凸が繰り返される凹部104及び凸部105に形成されている。従って、回転打撃部材103の凸部105が診断対象部に接触した状態で回転打撃部材103が中心軸102を回転中心として回転することによって、回転打撃部材103の中心軸102周りの各凸部105が周期的に診断対象部を打撃して診断対象部を加振する。診断対象部は、例えば、橋梁のコンクリート構造部やトンネルの内壁などのコンクリート構造物である。
即ち、回転打撃部材103の回転中心軸(中心軸102)と車輪24Bの回転中心軸とが平行かつ同一方向に延長するように設けられており、車輪24Bが診断対象部を走行することにより、回転打撃部材103の中心軸102周りの各凸部105が周期的に診断対象部を打撃して診断対象部を加振するように構成されている。
また、情報処理手段4は、例えば、音・映像採取装置2から入力した映像信号(画像データ)を音源推定用画像作成手段6に出力する(尚、音・映像採取ユニット10から入力した映像信号がアナログ信号であればデジタル信号に変換して出力する)。
また、情報処理手段4は、例えば、音圧波形データ及び画像データを選択的に出力するマルチプレクサ(MUX)を備えている。
加振点Fk毎に作成された音源推定用画像Gkは、順次、診断用画像作成手段56に送られる。
画像合成部56Aは、n個の音源推定用画像Gk(k=1〜n)を合成した、診断用画像を作成する。
バンド別画像作成部56Bは、合成画像である診断用画像から、オクターブバンド毎の診断用画像であるバンド画像、もしくは、隣接する2つ以上のバンド画像を重ね合わせた重合バンド画像を作成する。
具体的には、オクターブバンドとして、1/3オクターブバンドを用い、中心周波数fp(p=1〜18)を、例えば、160Hz,200Hz,250Hz,……,……,3150Hz,4000Hz,5000Hz,6300Hz,8000Hzとすると、バンド画像はp=18枚となる。
また、重合バンド画像としては、例えば中心周波数が200Hz〜2500Hzまでのバンド画像を重ね合わせて作成した重合バンド画像や、中心周波数が1250Hz〜6300Hzまでのバンド画像を重ね合わせて作成した重合バンド画像などを用いることができる。
また、オクターブバンドとして、1オクターブバンドを用いてもよい。さらに、オクターブバンドに限らず,任意の周波数範囲を設定してもよい。
また、マイクロフォンM,…、及び、カメラ12と情報処理手段4との通信媒体は、有線又は無線のいずれでもよい。
さらに、情報処理手段4と音源方向推定手段5及び音源推定用画像作成手段6との通信媒体、音・映像採取装置2Aと制御手段3Aとの通信媒体、加振装置2Bと制御手段3Bとの通信媒体も、有線又は無線のいずれでもよい。
尚、情報処理手段4と音源方向推定手段5及び音源推定用画像作成手段6との通信媒体、音・映像採取装置2Aと制御手段との通信媒体、加振装置2Bと制御手段3Bとの通信媒体を、無線で行う構成とすれば、人が出入りできないような場所においても音・映像採取装置2及び加振装置2Bを動作させることが可能となり、好ましい。
例えば、診断対象部が壁であって、当該壁に「ひび割れによる浮き」がある場合には、3150Hz〜4000Hz帯域の打撃音が発生し、当該壁に「空隙」がある部分では、4000Hz〜5000Hz帯域の打撃音が発生することが分かっている。
そこで、この場合、上述したような18枚のバンド画像から、中心周波数が3150Hzのバンド画像と4000Hzのバンド画像とを重ね合わせて作成した重合バンド画像である浮き診断用画像として表示手段7の表示画面7aに表示したり、中心周波数が1000Hz〜5000Hzまでのバンド画像を重ね合わせて作成した重合バンド画像である空隙診断用画像として表示手段7の表示画面7aに表示するようにし、診断者が、これら浮き診断用画像や空隙診断用画像を見て、壁に「ひび割れによる浮き」がある場所、壁に「空隙」がある場所を診断できるようになる。
また、実施形態1の診断装置1は、音・映像採取装置2A及び加振装置2Bが移動可能に構成されたことによって、複数の加振点(音源)を診断できるので、診断対象部の広範囲の状態を把握できるようになった。
まず、マイクロフォンが3本の場合について説明する。
マイクロフォンが3本の場合、各マイクロフォンM1,M2,M3の振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置され、設置板138の前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号、即ち、設置板138の側方、及び、後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように構成されている。尚、ここでは、設置板138の前方から各マイクロフォンM1,M2,M3を見た場合に、各マイクロフォンM1,M2,M3の振動板の中心が、正三角形の各頂点に配置された構成を例にして説明する。
この場合、音源方向推定手段5は、音圧波形データを用いて、各マイクロフォンM1,M2,M3の前端から見た時の音源方向を推定する。すなわち、設置板138の前面138tを水平面と仮定した場合において、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との中点を音響中心Oとしたときの水平角θpと仰角φpとを周波数毎に算出するとともに、音源から伝播される音の音圧レベルを計測する。
なお、水平角θpと仰角φpの算出方法については後述する。
音源方向の計算は、マイクロフォンM1,M2,M3には、XY平面の前方(+Z方向)から伝播される音の音圧信号のみが入力されるものとし、マイクロフォンM1,M2,M3の音圧波形データをFFTにて周波数解析し、周波数毎にマイクロフォンM1〜M3間の位相差を求め、この求められた位相差と、図外の温度センサーにより計測された温度を用いて算出した音速cとから音源の方向を周波数毎に算出する。
水平角θp及び仰角φpは以下の式[数1]で表わせる。
ここで、到達時間差Dijは、マイクロフォンMiに到達する音圧信号とマイクロフォンMjに到達する音圧信号との時間差で、対となる2つのマイクロフォンMi及びマイクロフォンMjに入力される信号のクロススペクトルPij(f)を求め、更に、対象とする周波数fの位相角情報Ψ(rad)を用いて、以下の式[数2]により算出される。
音源方向と音圧レベルとは周波数毎に計測する。
なお、音圧信号の大きさとしては、マイクロフォンM1,M2,M3のうちのいずれかに入力される信号の大きさとしてもよいし、マイクロフォンM1,M2,M3に入力される信号の大きさの平均値を用いてもよい。
例えば、図5に示すように、円の位置が音源方向(θpk,φpk)を表し、円の径が音圧レベルaf(θpk,φpk)を表し、円の模様もしくは色が音圧信号の周波数を表すようにした。
図7(a),(b)は、音源推定用画像の具体例を示す図で、四方が壁に囲まれた居室内に設置されたスピーカー84を音源として用いた例である。図7(a)は、スピーカー84から出力されるピンクノイズを、本発明による3個のマイクロフォンM1,M2,M3を設置板138に設置した構成の音・映像採取ユニット10を用いて作成した音源推定用画像G0で、図7(b)は従来のマイクロフォンを5個立体配置した構成の音・映像採取ユニット10Zを用いた場合の音源推定用画像Gz0である。なお、ピンクノイズは、スピーカー84の音響特性測定に使用される、パワーが周波数に反比例する雑音である。
各図において、楕円で囲った箇所が音源であるスピーカー84の位置である。
図7(a)と図7(b)とを比較して分かるように、従来法による音源推定用画像Gz0に比較して、本発明による音源推定用画像G0の方が、スピーカー84の位置のバラつきが少ないことが分かる。
いずれの場合も、本発明による音源推定用画像Gkの方が、スピーカー84の位置のバラつきが少ないことが分かる。
このように、マイクロフォンM1,M2,M3とカメラ12とを設置板138に設置して、マイクロフォンM1,M2,M3に入力する音圧信号をカメラ12の撮像方向である前方の180°のみに限定すれば、後方あるいは側方の壁などからの反射音の影響を大幅に低減できることが分かる。
しかし、水平角θに対する音圧レベルの分布を調べるときなどは、音源方向(θp,φp)を音源方向(θ,φ)に座標変換した方が、視覚的に分かりやすい。そこで、本例では、前記の図7〜図10に示した音源推定用画像G,Gzについても、横軸を水平角θ、縦軸を仰角φとした画像として表示した。
したがって、光学座標系における水平角θ及び仰角φは、音響座標系の水平角θp及び仰角φpを用いて、以下の式[数3]のように表せる。
なお、音響座標系の音源方向(θp,φp)を光学座標系の音源方向(θ,φ)に座標変換した音源推定用画像Gを作成し、これを表示画面7aに表示してもよい。
実施形態2では、マイクロフォンM1,M2,M3を、1辺の長さがLの正三角形の各頂点に配置したが、本発明はこれに限るものではなく、互いに一直線上にない3点、すなわち、三角形の各頂点に配置してもよい。
図12は、3個のマイクロフォンM0,M1,M2を二等辺三角形の各頂点に配置した例で、マイクロフォンM0の座標を(0,0,0)、マイクロフォンM1の座標を(L/2,0,0)、マイクロフォンM2の座標を(0,L/2,0)とし、音響中心をマイクロフォンM0の位置とし、映像中心を(L/3,L/3,0)とした。なお、Lは、音源と音・映像採取ユニット10との距離に比べて十分小さいので、映像中心と音響中心とが一致しているとして音源推定用画像Gを作成しても問題はない。すなわち、映像中心は音響中心の近くに設定することが好ましく、例えば、(L/4,L/4,0)などのように、三角形の内部もしくは辺上にあれば更に好ましい。
マイクロフォンM0,M1,M2を、図12のように配置したときの水平角θp及び仰角φpは以下の式[数4]で表わせる。
次に、マイクロフォンが5本の場合について説明する。
マイクロフォンを5本用いる場合、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4,M5の振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置され、設置板138の前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号、即ち、設置板138の側方、及び、後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4,M5が設置板138に設置される。この場合は、例えば、図13に示すように、設置板138の前方から各マイクロフォンM1〜M5を見た場合において、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3とを縦方向に所定の間隔LLだけ離れた位置に配置し、第2のマイクロフォンM2と第4のマイクロフォンM4とを横方向に上記と同じ所定の間隔LLだけ離れた位置に配置するとともに、第5のマイクロフォンM5を、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3とを結ぶ線分と、第2のマイクロフォンM2と第4のマイクロフォンM4とを結ぶ線分との交点(ここでは、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との間を1:3に内分する内分点)に配置する。
本例では、第1のマイクロフォンM1の位置の座標を(0,LS,0)、マイクロフォンM2の位置の座標を(LM,0,0)、マイクロフォンM3の位置の座標を(0,−LM,0)、マイクロフォンM4の位置の座標を(−LS,0,0)とした。
なお、LS,LM,LLの関係は、LL=LS+LMで、かつ、LS<LM<LLである。
ここで、マイクロフォン対(M1,M3)を第1のマイクロフォン対とし、マイクロフォン対(M2,M4)を第2のマイクロフォン対とすると、本例のマイクロフォンM1〜M5の配置は、マイクロフォンM1〜M4の作る四角形が、2つの対角線が直交している四角形であり、かつ、第2のマイクロフォン対(M2,M4)は、第1のマイクロフォン対(M1,M3)を、第5のマイクロフォンを中心にして、反時計回りに90°回転させた位置に配置されていることになる。
すなわち、第1及び第2のマイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)が、最も長いマイクロフォン間隔LLを有するマイクロフォン対で、マイクロフォン対(M1,M5),(M5,M4)が、最も短いマイクロフォン間隔LSを有するマイクロフォン対(以下、第5及び第6のマイクロフォン対という)である。また、マイクロフォン対(M5,M3),(M2,M5)が、中間のマイクロフォン間隔LMを有するマイクロフォン対(以下、第3及び第4のマイクロフォン対という)である。
すなわち、音源方向である水平角θと仰角φとは、周波数毎に算出されるので、算出する全ての周波数について、第1〜第5のマイクロフォン対の到達時間差を求める必要はない。
つまり、低域用抽出部は、最も長いマイクロフォン間隔LLを有するマイクロフォン対を構成するマイクロフォンM1,M2,M3,M4の音圧信号から音圧波形データを抽出して、音源方向推定手段5に送る。
また、中域用抽出部は、中間のマイクロフォン間隔LMを有するマイクロフォン対を構成するマイクロフォンM2,M3,M5の音圧信号から音圧波形データを抽出して、音源方向推定手段5に送る。
さらに、高域用抽出部は、最も短いマイクロフォン間隔LSを有するマイクロフォン対を構成するマイクロフォンM1,M4,M5の音圧信号から音圧波形データを抽出して、音源方向推定手段5に送る。
具体的には、低周波領域(例えば、LL=100mm、c=340m/sとしたときには、周波数が1700Hz以下の領域)の音の水平角θ及び仰角φは、低域用抽出部により抽出された第1のマイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1,M3間の到達時間差D13と、第2のマイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4間の到達時間差D24と、音速c、及び、マイクロフォン間隔LLとを用いて、以下の式[数5]により算出される。
実施形態4では、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との間隔をLL=100mmとし、第5のマイクロフォンM5を、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との間を1:3に内分する内分点に配置したが、マイクロフォン間隔LL及び第5のマイクロフォンM5の位置は、計測する周波数範囲により適宜決定すればよい。
図14は、第5のマイクロフォンM5を、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との中点に配置した例を示す図で、この場合、マイクロフォンM1〜M4の作る四角形は正方形となり、第5のマイクロフォンM5は正方形の中心に位置する。
この場合も、最も長いマイクロフォン間隔LLを有するマイクロフォン対は、前記実施の形態1と同じく、第1及び第2のマイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)である。
一方、最も短いマイクロフォン間隔(L=LL/2)を有するマイクロフォン対は、マイクロフォン対(M1,M5),(M5,M4)の他に、マイクロフォン対(M1,M5),(M2,M5)と、マイクロフォン対(M5,M3),(M5,M4)と、マイクロフォン対(M5,M3),(M2,M5)とがある。
また、中間のマイクロフォン間隔(L=LL/√2)を有するマイクロフォン対は、マイクロフォン対(M1,M4),(M2,M1)と、マイクロフォン対(M1,M4),(M3,M4)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M2,M1)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M3,M4)とがある。
低周波領域(例えば、LL=50mm、c=340m/sとしたときには、周波数が3400Hz以下の領域)の音の水平角θ及び仰角φは、上述した式[数5]により算出する。
このように、正方形の頂点と中心とに、それぞれマイクロフォンM1〜M5を配置すれば、測定できる周波数の上限を下げることなく、音源の方向を一層精度よく推定することができる。
次に、マイクロフォンが4本の場合について説明する。
尚、マイクロフォンが4本の場合、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4の振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置されるとともに、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4の振動板の中心が一直線上に位置されないように配置され、かつ、設置板138の前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号、即ち、設置板138の側方、及び、後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4が設置板138に設置される。この場合は、設置板138の前方から各マイクロフォンM1,M2,M3,M4を見た場合に、例えば、図15に示すように、一辺がLmの正方形の頂点に配置された4つマイクロフォンM1〜M4を用いて、異なるマイクロフォン間隔(L1=√2Lm,L2=Lm)を有する、互いに一直線上にない2つのマイクロフォン対を構成することができる。
マイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)が、長い方のマイクロフォン間隔L1を有するマイクロフォン対で、マイクロフォン対(M1,M4),(M2,M1)とマイクロフォン対(M1,M4),(M3,M4)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M2,M1)、マイクロフォン対(M2,M3),(M3,M4)とが、短い方のマイクロフォン間隔L2を有するマイクロフォン対である。
マイクロフォンM1〜M4に入力される音の音圧信号から、水平角θ及び仰角φとを算出する方法は、上述した、正方形とその中心にマイクロフォンM1〜M5を配置した構成の場合と同じであるので、その説明を省略する。
この場合、例えば、診断対象部としての鋼製橋梁の主桁上を加振装置2Bの車輪24Bで吸着走行させながら、加振装置2Bの加振部材100によって、鋼製橋梁の主桁や構成部材、コンクリート床版等を打撃して加振させるとともに、当該鋼製橋梁の主桁上を音・映像採取装置2Aの車輪24Aで吸着走行させながら、この複数の加振点である音源方向の音圧データ及び画像データを音・映像採取装置2Aで採取できるようになるので、鋼製橋梁の損傷個所特定検査を効率的かつ高精度に行えるようになる。
2A 音・映像採取装置、2B 加振装置、
5 音源方向推定手段、6 音源推定用画像作成手段、12 カメラ(撮像手段)、
13 設置手段、20 移動ユニット、22A;22B 移動体、30 雲台、
56 診断用画像作成手段、100 加振部材、138 設置板(平面板)、
138a マイクロフォン固定孔、M マイクロフォン。
Claims (6)
- 診断対象部を打撃して加振する加振部材を備えた加振装置と、
加振された音源から伝播される音の音圧信号及び音源の画像データに基づいて診断対象部を診断するための診断用画像を作成する診断用画像作成装置と、
を備えた診断装置であって、
前記診断用画像作成装置は、
加振された音源から伝播される音の音圧信号を採取するための少なくとも3個のマイクロフォンと、音源の画像を撮像するための撮像手段と、当該各マイクロフォン及び撮像手段を所定の状態に設置するための設置手段と、を備えて構成された音・映像採取装置と、
前記各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と前記マイクロフォンの位置座標と音速とから周波数毎に音源方向を推定する音源方向推定手段と、
前記音源方向推定手段で推定された音源方向のデータと前記撮像された音源の画像データとに基づいて音源推定用画像を加振された音源毎に作成する音源推定用画像作成手段と、
前記音源推定用画像作成手段により作成された複数の音源推定用画像を合成した画像である診断用画像を作成する診断用画像作成手段と、
を備え、
前記少なくとも3個のマイクロフォンは、一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、前記設置手段に設置され、
前記加振装置及び前記音・映像採取装置がそれぞれ移動体を備えて移動可能に構成されたことを特徴とする診断装置。 - 前記設置手段が平面板を備え、前記少なくとも3個のマイクロフォンは、平面板の板面間を貫通するように形成されたマイクロフォン固定孔に固定されることによって平面板に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の診断装置。
- 前記設置手段は雲台を介して向きを変更可能なよう前記移動手段に連結されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の診断装置。
- 前記少なくとも3個のマイクロフォンとして、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された第1及び第2のマイクロフォン対を備え、
前記音源方向推定手段は、前記第1のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記第2のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォンの位置座標と音速とから音源の方向を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の診断装置。 - 前記少なくとも3個のマイクロフォンとして、各マイクロフォンの振動板の中心が四角形の各頂点に配置される第1〜第4のマイクロフォンと、前記第1〜第4のマイクロフォンの位置を頂点とする四角形の対角線の交点に配置される第5のマイクロフォンとを備え、
前記音源方向推定手段は、前記5つのマイクロフォンから選択される、互いに一直線上にない、2つのマイクロフォン対のそれぞれについて、前記2つのマイクロフォン対のうちの一方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、他方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォンの位置座標と音速とから前記音源の方向を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の診断装置。 - 前記少なくとも3個のマイクロフォンとして、各マイクロフォンの振動板の中心が四角形の各頂点に配置される第1〜第4のマイクロフォンを備え、
前記音源方向推定手段は、前記4つのマイクロフォンから選択される、互いに一直線上にない、2つのマイクロフォン対のそれぞれについて、前記2つのマイクロフォン対の内の一方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、他方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォンの位置座標と音速とから前記音源の方向を推定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の診断装置。
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