JP6392656B2 - 音源方向推定方法 - Google Patents
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そこで、複数のマイクロフォンを平面板に設置して、マイクロフォンに入力する音圧信号をカメラの撮影方向である前方の180°のみに限定すれば、後方あるいは側方の壁などからの反射音の影響を大幅に低減できるので、音源方向の推定精度を大幅に向上させることが期待できる。また、マイクロフォンとカメラとを同一平面内に配置できるので、音・映像採取手段を小型化することができる。
これにより、音の入射方向による音響中心のずれを考慮した音源方向の推定ができるので、音源方向を精度よく推定することができる。
また、本発明は、前記2組のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンを、互いに交わる2つの直線の交点を中心とした正方形の各頂点にそれぞれ配置するとともに、前記計測ステップでは、前記正方形の一方の対角線上にある第1のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記正方形の他方の対角線上にある第2のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差を計測することを特徴とする。
このように、マイクロフォンを4個とすれば、同じマイクロフォンの音圧信号を、到達時間差の計算に重複して用いる必要がないので、音源方向の推定精度を更に向上させることができる。
計測データ記憶手段23〜音源推定用画像作成手段25の各手段は、例えば、パーソナルコンピュータのソフトウェアとメモリーとにより構成され、表示手段26は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置により構成される。
音・映像採取ユニット10は、4個のマイクロフォンM1〜M4を備えた音採取手段11と、撮影手段としてのCCDカメラ(以下、カメラという)12と、マイクロフォンM1〜M4とカメラ12とが装着される平面板13と、平面板13を支持する支持台14と、支持台14を支持する支持脚(三脚)15とを備える。
本例では、図2(a)に示すように、平面板13を円盤状とし、その中心にカメラ12を装着するとともに、マイクロフォンM1〜M4を、カメラ12を中心とする正方形の各頂点に配置した。また、図2(b)に示すように、マイクロフォンM1〜M4を、振動膜面が平面板13の一方の面(以下、前面13aという)とほぼ同じ位置になるように装着した。なお、平面板13の他方の面を後面13b、(b)図の矢印で示す、平面板13の後面13bから前面13aに向かう方向を前方向という。カメラ12は、撮影方向が前方向となるように平面板13に装着される。
物理座標におけるマイクロフォンM1の位置P1の座標は(0,L/2,0)で、マイクロフォンM2の位置P2の座標は(L/2,0,0)ある。また、マイクロフォンM3の位置P3の座標は(0,−L/2,0)で、マイクロフォンM4の位置P4の座標は(−L/2,0,0)である。
このように、本例では、マイクロフォンM1〜M4を、正面(前面側)から見て、右回りにM1〜M4の順に配置するとともに、マイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1とマイクロフォンM3との距離、及び、マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2とマイクロフォンM4との距離をいずれもLとした。
なお、カメラ12からみた座標を光学座標(実空間座標)とすると、鉛直方向である物理座標のyp軸が光学座標のz軸となり、撮影方向である物理座標のzp軸が光学座標のy軸となり、物理座標の−xp軸が光学座標のx軸となる。
ここで、マイクロフォンM1〜M4としては、無指向性、単一指向性のいずれのマイクロフォンを用いてもよい。また、マイクロフォンM1〜M4は、一般に使用されている小型のマイクロフォンでもよいし、サーフェイスマイクロフォンのような薄型のマイクロフォンでもよい。
また、平面板13としては、剛性が高く、音を全反射する材料を用いることが好ましい。また、前面13aを、凹凸をなくした平坦な面とすることが好ましい。
増幅器21aは、ローパスフィルタを備え、マイクロフォンM1〜M4で採取した音の音圧信号から高周波ノイズ成分を除去するとともに、各音圧信号を増幅してA/D変換器21bに出力する。
A/D変換器21bは、音圧信号をA/D変換するとともに、A/D変換された音圧信号を音圧波形データとして計測データ記憶手段23に送る。
映像入出力手段22は、カメラ12で連続的に撮影された映像信号を入力してA/D変換するとともに、A/D変換された映像信号を画像データとして計測データ記憶手段23に送る。
計測データ記憶手段23は、音圧波形データと画像データとを保存する。
音源方向推定手段24は、仮想座標記憶部24aと、仮想音源方向算出部24bと、音源方向変換部24cと、音源方向推定部24dとを備え、計測データ記憶手段23に保存された音圧信号を用いて、平面板13から見た時の音源方向である水平角θpと仰角φpとを周波数毎に推定するとともに、音源から伝播される音の音圧レベルを計測する。
仮想座標記憶部24aは、マイクロフォンM1〜M4の音響中心P1’〜P4’を仮想水平面(x’y’平面)とする仮想座標を記憶する。
仮想音源方向算出部24bは、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との音の到達時間差M13とマイクロフォンM2とマイクロフォンM4との音の到達時間差M24とを用いて、仮想座標における音源方向(水平角θ’、仰角φ’)を算出する。
音源方向変換部24cは、仮想座標の各座標軸を回転させることで、仮想座標における音源方向を物理座標における音源方向(水平角θp、仰角φp)に変換する。
仮想座標、仮想座標における音源方向、及び、物理座標における音源方向は、入射仰角φin毎に設定もしくは求められる。
音源方向推定部24は、入射仰角φin毎に求められた仰角φpと、条件角度としての入射仰角φinとを比較することで、最も確からしい音源方向を選択し、これを推定音源方向(水平角θp、仰角φp)とする。
なお、水平角θp及び仰角φpの推定方法の詳細については後述する。
なお、図3の下側の図は、音圧レベルの分布を示す図で、横軸が水平角θで、縦軸は音圧レベル(dB)である。
なお、音源を推定するには、画像上に音源方向と周波数と音の大きさを表示した円Cが表示されていればよいので、座標変換の必要はない。
通常、マイクロフォンMiの音響中心は、マイクロフォンMiの中央かつ振動膜の位置Piとして考えられていたが、実際は、マイクロフォン付近の反射や回折の影響を受けることから、音の入射角度により見かけ上変化する。
図4に示すように、マイクロフォンMiの中央かつ振動膜の位置Piをマイクロフォンの幾何学的中心、実際の音響中心の位置を音響中心Pi’とすると、実際に計測したマイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1とマイクロフォンM3との間の到達時間差M13と、マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2とマイクロフォンM4とのとの間の到達時間差M24とは、マイクロフォンMi(i=1〜4)の音響中心Pi’に音が入射したときの到達時間差である。
到達時間差Mijは、一対のマイクロフォンMi及びマイクロフォンMjに入力される信号のクロススペクトルKij(f)を求め、更に、対象とする周波数fの位相角情報Ψ(rad)を用いて、以下の式[数1]により算出される。
なお、仮想座標を設定するための到達時間差を、実際に計測した到達時間差M13及び到達時間差M24と区別するため、それぞれ、P13及びP24とした。
まず、図5に示すように、平面板13上に音源としてスピーカ30を設置するとともに、マイクロフォンM1〜M4にてスピーカー30の発生する音の音圧信号を採取して、マイクロフォンM1,M3間の到達時間差P13と、マイクロフォンM2,M4間の到達時間差P24を予め計測する。
具体的には、入射水平角θinを0°に固定し、入射仰角φinを10°ピッチで0°〜180°まで変化させて、到達時間差P13を計測し、入射水平角θinを90°に固定し、入射仰角φinを10°ピッチで0°〜180°まで変化させて、到達時間差P24を計測する。
入射水平角θinを0°と90°に限定したのは、マイクロフォンMiの音響中心は、入射水平角θinには依らず、入射仰角φinのみに依存することがわかったからである。また、マイクロフォン対を結んだ方向と入射水平角θinとが直交している場合には、位相差もしくは到達時間差の特定が困難であるからである。但し、より詳細な情報を得るために、他の入射水平角θinについても計測してもよい。
図6に示すように、第1軸ベクトルP13’の各成分(x1,y1,z1)は、音の入射角度が(0°,φin)のときの、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との間の到達時間差P13’と、入射角度が(0°,180°−φin)のときの到達時間差の実測値RP13’と、入射仰角φinを用いて、以下の式[数2]のように表せる。
そして、マイクロフォンM3の音響中心P3’からマイクロフォンM1の音響中心P1’へ向かう方向をy’軸とし、x’y’平面内でy’軸に垂直な方向をx’軸とする。
このような操作を、条件角度(φink)毎に行うことで、条件角度φinkの全てについて、仮想座標を求めることができる。本例では、入射仰角φinを、10°ピッチで、0°〜180°まで変化させているので、k=1〜19である。
なお、マイクロフォンM4の音響中心P4’からマイクロフォンM2へ向かう方向と、y’軸との成す角度である軸角度γは、ベクトルP13’の成分とベクトルP24’の成分とを用いて、以下の式[数4]のように表せる。
上記の仮想座標の設定は、音源からの音の音圧信号を採取する前に予め行なう。設定された仮想座標は、仮想座標記憶部24aに記憶される。
なお、到達時間差M13及び到達時間差M24は、計測データ記憶手段23に記憶されていたマイクロフォンM1〜M4の音圧波形データをFFTにて周波数解析して求められる。到達時間差M13及び到達時間差M24は、各周波数f毎に求められる。
すなわち、図8に示すように、水平角θ’、仰角φ’から音が入射したとすると、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との音の到達時間差M13と、ベクトルP13’との関係、及び、マイクロフォンM2とマイクロフォンM4との音の到達時間差M24とベクトルP24’との関係は、以下の式[数5]のように表せる。
仮想座標における音の入射方向を長さが1の単位ベクトルの座標(x’3,y’3,z’3)で表すと、以下のようになる。
x’3=sinθ’・cosφ’
y’3=cosθ’・cosφ’
z’3=sinφ’
このベクトルを、仮想座標における音の入射方向ベクトルとする。
次に、上記の仮想座標における音の入射方向ベクトル(x’3,y’3,z’3)を物理座標における音の入射方向ベクトル(x3,y3,z3)に変換する手順について説明する。
まず、仮想座標における第1軸ベクトルP13’の座標(0,L13,0)と第2軸ベクトルP24’の座標(L24・sinγ,L24・cosγ,0)とを、それぞれ、物理座標における第1軸ベクトルP13’の座標(x1,y1,z1)と第2軸ベクトルP24’の座標(x2,y2,z2)に変換する。
(x1,y1,z1)を(0,L13,0)に変換するためには、図9(a)に示すように、物理座標のx軸とy軸とをz軸周りにηだけ回転させ、(x1,y1,z1)を(0,(x12+y12)1/2,z1)に変換する。ここで、η=tan-1(x1/y1)である。このとき、(x2,y2,z2)は、(xa2,ya2,za2)に変換される。
次に、図9(b)に示すように、x軸をεだけ回転させて、(0,(x12+y12)1/2,z1)を(0,L13,0)に変換する。ここで、ε=tan-1{z1/(x12+y12)1/2}である。このとき、(xa2,ya2,za2)は、(xb2,yb2,zb2)に変換される。
次に、図9(c)に示すように、y軸をδだけ回転させて、(xb2,yb2,zb2)を(L24・sinγ,L24・cosγ,0)に変換する。ここで、δ=tan-1(zb2/xb2)である。
仮想座標における音の入射方向ベクトル(x’3,y’3,z’3)を物理座標における音の入射方向ベクトル(x3,y3,z3)に変換するには、上記と逆の変換を行えばよい。
すなわち、最初に、y’軸を−δだけ回転させて、(x’3,y’3,z’3)を(xa3,ya3,za3)に変換する。
(xa3,ya3,za3)は、以下の式[数7]のようになる。
(xb3,yb3,zb3)は、以下の式[数8]のようになる。
(x3,y3,z3)は、以下の式[数9]のようになる。
算出された仰角φinkの値が条件角度φinkに近いほど、水平角θinkと仰角φinkとは実際の水平角θと仰角φに近いはずである。したがって、算出された仰角φinkと条件角度φinとの差の絶対値|φink−φin|を条件角度φin毎に求め、求められた絶対値|φink−φin|が最も小さいときの水平角θinkと仰角φinkとを、音の到来方向(水平角θp,仰角φp)とすれば、音源方向を精度よく推定することができる。
図10(a)は、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との音の到達時間差M13と、マイクロフォンM2とマイクロフォンM4との音の到達時間差M24とから、以下の式[数11]を用いて求めた音源方向を描画した音源推定用画像である。
図10から明らかなように、本発明の音源方向推定方法により推定した音源方向は、従来の5個のマイクロフォンM1〜M5を用いて推定した音源方向と略同じであり、かつ、音圧レベルの分布も同等である。
これにより、本発明の音源方向推定方法を用いれば、音の入射方向による音響中心のずれを考慮した音源方向の推定ができるので、平板型の音採取手段11であっても音源方向を精度よく推定することができることが確認された。
防風スクリーン31としては、例えば、ウレタンフォームなどの網材を用いることができる。また、吸音材32としては、不織布を環状にしたものなどを用いればよい。なお、防風スクリーン31を不織布から構成してもよい。
また、前記実施の形態では、平面板13に配置された4個のマイクロフォンM1〜M4を備えた音採取手段11を用いて音源方向を推定したが、音採取手段を、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された3個のマイクロフォンM1〜M3から構成してもよい。マイクロフォンM1,M2,M3は、図12(a)に示すように、1辺の長さがLの正三角形の各頂点に配置してもよいし、図12(b)に示すように、二等辺三角形の各頂点に配置してもよい。
10 音・映像採取ユニット、11 音採取手段、12 撮影手段(カメラ)、
13 平面板、13a 平面板の前面、13b 平面板の後面、14 支持台、
15 支持脚、
21 音データ入出力手段、21a 増幅器、21b A/D変換器、
22 映像入出力手段、23 計測データ記憶手段、24 音源方向推定手段、
24a 仮想座標記憶部、24b 仮想音源方向算出部、24c 音源方向変換部、
24d 音源方向推定部、25 音源推定用画像作成手段、
26 表示手段、26M 表示画面、
M1〜M4 マイクロフォン。
Claims (3)
- 平面板に設置されて前記平面板を含む平面の一方の側である前方の音源から伝播される音の音圧信号のみを採取する、互いに一直線上にない少なくとも3個のマイクロフォンに入力された音圧信号の到達時間差から前記音源の方向を推定する方法であって、
前記少なくとも3個のマイクロフォンのうちの、互いに交差する2本の直線上に配置された2組のマイクロフォン対を構成する3個もしくは4個のマイクロフォンの音響中心を含む面を仮想水平面とする仮想座標を、複数の入射仰角についてそれぞれ設定する仮想座標設定ステップと、
前記2組のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と温度もしくは音速を計測するステップと、
前記複数の入射仰角毎に設定された仮想座標において、前記計測された到達時間差と温度もしくは音速とを用いて、前記仮想座標における音の入射方向である仮想水平角と仮想仰角とをそれぞれ算出する仮想方向算出ステップと、
前記入射仰角毎に、前記仮想座標を回転させて前記仮想座標を実際の座標系である物理座標に戻すことで、前記仮想水平角と仮想仰角とを、物理座標の水平角と仰角とにそれぞれ変換するステップと、
前記変換された仰角と、前記入射仰角とを比較して、音源方向を推定する音源方向推定ステップとを備え、
前記仮想座標設定ステップでは、
前記平面板への入射仰角を所定角度毎に変化させながら、前記2組のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差を計測した後、
前記計測された到達時間差から、前記2組のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンの音響中心同士を結ぶ軸ベクトルをそれぞれ算出し、
前記算出された2つの軸ベクトルから2組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォンの音響中心を含む面を仮想水平面とする仮想座標を設定することを特徴とする音源方向推定方法。 - 前記仮想座標設定ステップを前記計測ステップの前に行って、前記設定された仮想座標を記憶手段に記憶しておき、
音源方向の推定時には、
前記記憶手段から取出した仮想座標を用いて、前記仮想水平角と仮想仰角とをそれぞれ算出することを特徴とする請求項1に記載の音源方向推定方法。 - 前記2組のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンは、
互いに交わる2つの直線の交点を中心とした正方形の各頂点にそれぞれ配置され、
前記計測ステップでは、
前記正方形の一方の対角線上にある第1のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、前記正方形の他方の対角線上にある第2のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差を計測することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音源方向推定方法。
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