JP6595201B2 - 診断装置 - Google Patents

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Description

本発明は、診断対象部を打撃して診断対象部に振動を与える加振装置を用いた診断装置に関する。
従来、診断対象部としての例えばコンクリート構造物にひび割れや空隙などの非健全部があるか否かを診断する方法として、加振装置によりコンクリート構造物を打撃して加振したときに発生する音をマイクロフォンで採取し、採取された音を解析することによって、診断対象部に非健全部があるか否かを診断する診断装置が知られている。前記加振装置は、支軸部を有した多段伸縮式の操作棹と、支軸部の先端に回転可能に支持された転打子(打撃部材)とを備えた構成である(例えば、特許文献1参照)。
また、上記マイクロフォンとして、図16に示すように、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置し、第5のマイクロフォンM5をマイクロフォンM1〜M4の作る正方形を底面とする四角錐の頂点の位置に配置して成る音採取手段10Zにより、音源から伝播する音の音圧信号を検出し、対となる2つのマイクロフォン(Mi,Mj)間の位相差に相当する到達時間差Dijから音源の方向である水平角θと仰角φとを推定する音源方向推定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2007−132720号公報 特開2011−238985号公報
しかしながら、従来の診断装置では、操作棹の長さを変更して診断対象部の多数の位置を打撃することによって診断対象部の広い範囲を詳細に診断したい場合には、操作棹を持って作業を行う作業者が操作棹の長さを逐一変更しなければならないため、診断対象部を打撃する作業効率が悪かった。
本発明は、診断対象部を打撃する作業を効率的に行えるようにした診断装置を提供する。
本発明に係る診断装置は、診断対象部を打撃して加振する加振部材を備えた加振装置であって、前記加振部材は、打撃部材と、当該打撃部材を支持する支持装置とを備え、前記支持装置は、先端側に前記打撃部材を備えた伸縮機構と、制御手段からの制御信号に基づいて前記伸縮機構を伸縮させる伸縮駆動手段とを備えた構成の加振装置と、当該加振装置で加振された音源から伝播される音の音圧信号及び音源の画像データに基づいて診断対象部を診断するための診断用画像を作成する診断用画像作成装置とを備えた診断装置であって、前記診断用画像作成装置は、加振された音源から伝播される音の音圧信号を採取するための少なくとも3個のマイクロフォンと、音源の画像を撮像するための撮像手段と、当該各マイクロフォン及び撮像手段を所定の状態に設置するための設置手段と、を備えて構成された音・映像採取装置と、前記各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と前記マイクロフォンの位置座標と音速とから周波数毎に音源方向を推定する音源方向推定手段と、前記音源方向推定手段で推定された音源方向のデータと前記撮像された音源の画像データとに基づいて音源推定用画像を加振された音源毎に作成する音源推定用画像作成手段と、前記音源推定用画像作成手段により作成された複数の音源推定用画像を合成した画像である診断用画像を作成する診断用画像作成手段とを備え、前記少なくとも3個のマイクロフォンは、一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、前記設置手段に設置され、前記加振装置及び前記音・映像採取装置がそれぞれ移動体を備えて移動可能に構成されたことを特徴とするので、診断対象部を打撃する作業を効率的に行える。また、伸縮機構の伸びる方向における打撃部材の位置を正確に調整することが可能となるため、診断対象部の広い範囲を打撃できて、診断対象部の広い範囲を詳細かつ正確に診断できるようになる。さらに、人が手動で伸縮機構の長さを逐一変更しなくても良いため、人が立ち入れない場所や人が作業した場合に危険な場所に存在する診断対象部を診断することが可能となる。また、直接音と反射音とを区別するための演算処理を必要とせずに、狭い空間であっても音源の方向を簡単かつ精度よく推定できるとともに、診断対象部の広範囲の状態を把握することが可能となる。
また、前記伸縮機構は、多節パンタグラフ機構により構成されたので、伸縮機構の伸びる方向における打撃部材の位置をより正確にかつ細かく調整することが可能となるため、診断対象部の広い範囲を所望の間隔で打撃できて、診断対象部の広い範囲をより詳細かつより正確に診断できるようになる。
た、前記設置手段が平面板を備え、前記少なくとも3個のマイクロフォンは、平面板の板面間を貫通するように形成されたマイクロフォン固定孔に固定されることによって平面板に設置されたので、平面板の一方の板面側から音圧信号を入力して当該一方の板面側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性効果が向上した音採取手段を構成することが可能となり、反射音の影響をより少なくできて、音源方向の推定精度を向上させることができる。
診断装置を示すブロック構成図。 (a)は音・映像採取装置を示す斜視図、(b)はマイクロフォン設置手段を示す断面図。 音・映像採取ユニットを支持する雲台を示す斜視図。 加振装置を示す斜視図。 音源推定用画像の一例を示す図である。 3個のマイクロフォンの配置例を示す図である。 音源推定用画像の具体例を示す図である。 音源推定用画像の具体例を示す図である。 音源推定用画像の具体例を示す図である。 音源推定用画像の具体例を示す図である。 音響座標系XYZと光学座標系xyzとの関係を示す図である。 3個のマイクロフォンの配置例を示す図である。 5個のマイクロフォンの配置例を示す図である。 5個のマイクロフォンの配置例を示す図である。 4個のマイクロフォンの配置例を示す図である。 従来の音採取手段を構成するマイクロフォンの配置例を示す図である。
実施形態1
図1に示すように、診断装置1は、診断用画像作成装置1Aと、加振制御装置1Bと、を備えて構成される。
診断用画像作成装置1Aは、音・映像採取装置2Aと、音・映像採取装置2Aを制御する制御手段3Aと、情報処理手段4と、音源方向推定手段5と、音源推定用画像作成手段6と、診断用画像作成手段56と、表示手段7と、を備えて構成される。
尚、音・映像採取装置2Aと、音・映像採取装置2Aを制御する制御手段3Aと、情報処理手段4と、音源方向推定手段5とにより、音源方向推定装置が構成される。
図2(a)に示すように、音・映像採取装置2Aは、音・映像採取ユニット10と、移動ユニット20Aと、音・映像採取ユニット10を移動ユニット20Aに連結するとともに音・映像採取ユニット10の向きを変更可能なように音・映像採取ユニット10を支持する可動支持体としての雲台30と、を備えて構成される。
即ち、移動ユニット20Aと制御手段3Aとにより移動手段が構成され、音・映像採取装置2Aは、移動ユニット20Aと移動ユニット20Aを制御する制御手段3Aとによって、移動及び停止可能に構成されている。
音・映像採取ユニット10は、音源から伝播される音の音圧信号を採取するための少なくとも3個のマイクロフォンM,…(M1,M2,M3…Mx)と、音源を撮像する撮像手段としてのCCDカメラ(以下、カメラという)12と、当該少なくとも3個のマイクロフォンM,…及び当該カメラ12を所定の状態に設置するための設置手段13と、設置手段13に設置されたマイクロフォンM,…の前端部の前方以外からの音を吸収してマイクロフォンM,…に採取されないようにするための側方吸音材14と、を備えて構成される。
当該少なくとも3個のマイクロフォンM,…によって音源からの音圧信号が採取され、当該カメラ12によって音源の映像信号が採取される。
尚、図2及び図3では、設置手段13に、マイクロフォンM,…として、5個のマイクロフォンM1,M2,M3,M4,M5が設置された音・映像採取ユニット10を例示している。
各マイクロフォンM,…は、同一形状、同じ大きさ、同じ性能のマイクロフォンが用いられる。
各マイクロフォンM,…は、無指向性のマイクロフォン、単一指向性のマイクロフォンのいずれでもよい。
また、マイクロフォンM,…は、一般に使用されている小型のマイクロフォンでもよいし、サーフェイスマイクロフォンのような薄型のマイクロフォンでもよい。
図2(a)に示すように、設置手段13は、マイクロフォン設置手段130と、カメラ設置手段140とを備える。
図2(b)に示すように、マイクロフォン設置手段130は、収納体131と、マイクロフォン取付部材132と、防風スクリーン133と、収納体131の内側における後述するマイクロフォン取付部材132の周囲に充填された内部吸音材134とを備えて構成される。
そして、図2(a),図3に示すように、収納体131の円筒外周面を取り囲むように筒状に形成された側方吸音材14が取付けられる。
内部吸音材134及び側方吸音材14としては、例えば、グラスウールやウレタンスポンジなどの多孔質体を用いればよい。
図2(b)に示すように、収納体131は、例えば、一端開口他端有底の円筒状箱体により形成される。尚、以下、収納体131の開口135側を前側、収納体131の底板136側を後側と定義して説明する。
マイクロフォン取付部材132は、例えば、収納体131の底板136から前側に立ち上がるように設けられた例えば断面十字形状の設置台137と、設置台137の前面137tに設置される設置板138とを備えて構成される。設置台137の前面137tは十字状の平面に形成される。設置板138は、例えば、前面138t及び当該前面138tと平行な後面とが十字状の平面に形成された十字状平面板により形成される。
設置台137は、例えば、十字の中央部と十字の4つの端部とに前後に貫通するマイクロフォン位置決め孔137hを備え、また、中央部のマイクロフォン位置決め孔137hと端部のマイクロフォン位置決め孔137hとの間には、設置板取付支柱141を貫通させるための支柱通し孔141hを備える。
設置板138は、例えば、十字の中央部と十字の4つの端部とに前後に貫通してマイクロフォンを固定するためのマイクロフォン固定孔138aを備え、また、中央部のマイクロフォン固定孔138aと端部のマイクロフォン固定孔138aとの間には、設置板取付支柱141の前端部を固定するための支柱固定孔141aを備える。
尚、設置板138としては、剛性が高く、音を全反射する材料を用いることが好ましい。
また、上記では、断面十字形状の設置台137及び設置板138を例示したが、設置台137及び設置板138の形状は別段どのような形状であってもよい。
設置台137に形成された各孔の中心線と設置板138に形成された各孔の中心線とが一致するように設置板138が設置台137の前面137tに位置決めされた状態で、支柱通し孔141hに設置板取付支柱141を通し、当該設置板取付支柱141の前端部を支柱固定孔141aに図外の取付ねじなどで固定するとともに、設置板取付支柱141の後端部に形成されたねじ部を収納体131の底板136よりも後方に突出させ、このねじ部にナット139を螺着して設置板取付支柱141の後端部を収納体131の底板136の後面142に締結することにより、設置板138が設置台137の前面137tに固定状態に設置される。
そして、マイクロフォンM,…がマイクロフォン固定孔138a及びマイクロフォン位置決め孔137h内に挿入された状態で図外の取付ねじなどでマイクロフォン固定孔138aに固定される。
さらに、収納体131の底板136の後面142には、雲台30のアーム36に連結される連結板143が取り付けられる。
尚、設置台137の前面137tに設置された設置板138の前面138tは、収納体131の開口135の前端面131tよりも若干後方、又は、前端面131tと同一平面上、又は、前端面131tよりも若干前方に位置される。
例えば、設置板138の前面138tは、マイクロフォン固定孔138aに固定されたマイクロフォンMの中心を通って前後に延長するマイクロフォンMの中心線と直交する平面により形成され、各マイクロフォン固定孔138a,…に固定された各マイクロフォンM,…の前端は、例えば、設置板138の前面138tと同一平面上又は前面138tと平行な平面上に位置される。
即ち、各マイクロフォンM,…は、収納体131の前側の開口135を介して各マイクロフォンM,…に伝播される音を採取する。つまり、各マイクロフォンM,…は、収納体131の前方に位置する音源からの音を採取しやすく、収納体131の前方以外に位置する音源からの音は採取しにくいように、マイクロフォン設置手段130によって所定の状態に設置されている。
言い換えれば、少なくとも3個のマイクロフォンM,…は、各マイクロフォンM,…の音圧検出部としての振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置され、前記一平面の一方の面に面した一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、マイクロフォン設置手段130に設置されている。
具体的には、各マイクロフォンM,…の前端が平面板としての設置板138の例えば一方の板面である前面138tと平行な平面上に位置され、設置板138の前面138t側である前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外、即ち、設置板138の側方、及び、設置板138の後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が設置板138に設置された構成の音・映像採取ユニット10を備える。このような音・映像採取ユニット10を備えたことにより、設置板138の前面138t側である前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性効果が向上するため、反射音の影響をより少なくできて、音源方向の推定精度を向上させることができる。
即ち、少なくとも3個のマイクロフォンM,…は、一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、マイクロフォン設置手段130に設置された構成であればよい。
好ましくは、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が、平面板により形成された設置板138の板面間を貫通するように形成されたマイクロフォン固定孔138a,…に固定されることによって、少なくとも3個のマイクロフォンM,…の振動板の中心が設置板138の一方の板面である前面138tと平行な一平面上に位置され、さらに、これら少なくとも3個のマイクロフォンM,…の前部以外、即ち、マイクロフォンM,…の側部、及び、後部側が吸音材で覆われるように構成されたことで、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が、一方(前方)側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように構成されていればよい。
防風スクリーン133は、収納体131の前側の開口135を覆うように取付けられて、各マイクロフォンM,…に入射する風雑音を低減する。なお、防風スクリーン133とマイクロフォンM,…の前端との間には、若干の隙間があることが好ましいが、防風スクリーン133とマイクロフォンM,…の先端とが接触していても、特に、問題はない。
防風スクリーン133としては、例えば、ウレタンフォームなどの網体が挙げられる。
なお、防風スクリーン133は、防風スクリーン133の周縁部を収納体131の開口135側の外周面に接着するか、円環状のバンドなどで固定すればよい。
カメラ設置手段140は、収納体131の外周面より筒の径方向外側に延長するように設けられた取付部材により構成される。カメラ12は、収納体131の前方となる音源を撮像できるように、カメラ設置手段140に固定状態に取付けられる。
従って、カメラ12を有した音・映像採取ユニット10を備えていることにより、音源の画像を採取でき、音源の確認が容易となる。
尚、側方吸音材14は、収納体131の円筒外周側のカメラ設置手段140及びカメラ12が位置される円筒の一部分が除去された断面C字形状に形成されたものを用いている。
また、図外の温度センサーが、例えば収納体131の外面や雲台30に装着され、当該温度センサーにより、音・映像採取ユニット10の周囲の温度が計測されて、この計測された温度データが音源方向推定手段5に送られる。
尚、マイクロフォンM,…の前端とカメラ12の前端とを同一平面上に配置(マイクロフォンの音採取点とカメラの撮像点とを同一平面上に配置)することで、音響中心(音源方向を計算するときの原点)と映像中心とを容易に一致させることができる。
図2(a)に示すように、音・映像採取装置2Aの移動ユニット20Aは、部材取付部21Aと、部材取付部21Aに取付けられた移動体22Aと、制御手段3Aからの制御信号に基づいて移動体22Aを駆動させる図外の移動体駆動手段と、を備える。つまり、音・映像採取装置2Aが移動体22Aを備えて移動可能に構成されている。
部材取付部21Aは、例えば、板材により形成された台により構成される。
移動体22Aは、例えば、部材取付部21Aに連結された車輪支持脚23Aと、車輪支持脚23Aの先端側に設けられた車輪24Aとにより構成される。
移動体駆動手段は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としての伝達歯車機構を介して車輪24Aに伝達されることで、車輪24Aが回転し、移動ユニット20Aが移動するように構成されている。
従って、音・映像採取装置2Aは、診断対象部上で図2(a)のF方向に移動することが可能である。
雲台30は、上述したようにマイクロフォンM,…及びカメラ12が所定の状態に設置された設置手段13(以下、単に「設置手段13」という)を移動ユニット20Aの部材取付部21Aに連結するとともに、設置手段13の向きを変更可能なように設置手段13を支持することにより、音・映像採取ユニット10の向きを変更可能とする装置である。
図3に示すように、雲台30は、支柱31と、図外の支柱駆動手段と、アーム回転駆動機構32と、図外のアーム回転駆動手段と、を備える。即ち、制御手段3Aからの制御信号に基づいて雲台30を駆動させる図外の支柱駆動手段及びアーム回転駆動手段を備える。
支柱31の一端には取付部33が設けられ、当該取付部33が図外のねじ等の取付手段により移動ユニット20Aの部材取付部21Aに取付けられる(図2参照)。
アーム回転駆動機構32は、支柱31の他端と連結された支持台34と、中心線34Cが支柱31の中心線31Cと直交するように配置されて当該中心線34Cを回転中心として回転可能なように支持台34に支持されたアーム回転中心軸体35と、一端部がアーム回転中心軸体35の両端に連結された一対のアーム36とを備えて構成され、一対のアーム36の他端がマイクロフォン設置手段130の連結板143に連結された構成である。
支柱駆動手段は、支柱回転駆動手段と支柱伸縮駆動手段とを備える。支柱回転駆動手段及び支柱伸縮駆動手段は、共に、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
アーム回転駆動手段は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
支柱回転駆動手段は、例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としての伝達歯車機構を介して支柱31に伝達されることで、支柱31が支柱31の中心線31Cを回転中心として回転運動を行うように構成されている。これにより、設置手段13が支柱31の中心線31Cを回転中心として回転運動し、マイクロフォンM,…及びカメラ12が支柱31の中心線31Cを回転中心として回転する。
例えば、支柱31は径の異なる大径支柱31Aと小径支柱31Bとが同軸(中心線が一致する状態)に設けられた構成とされて、小径支柱31Bが大径支柱31Aに対し大径支柱31Aの中心線31Cに沿った方向Fに移動可能となるように構成されている。
支柱伸縮駆動手段は、例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としてのピニオンラックを介して小径支柱31Bに伝達されて、支柱31が伸縮運動を行う構成とされている。これにより、設置手段13が支柱31の中心線に沿った方向に移動可能となり、マイクロフォンM,…及びカメラ12が支柱31の中心線31Cに沿った方向Fに移動可能に構成される。
アーム回転駆動手段は、例えば、駆動源としてのモータの回転力が駆動力伝達機構としての伝達歯車機構を介してアーム回転中心軸体35に伝達されることで、アーム回転中心軸体35がアーム回転中心軸体35の中心線を回転中心として回転運動を行うように構成されている。これにより、設置手段13が支柱31の中心線と直交するアーム回転中心軸体35の中心線34Cを回転中心として回転運動し、マイクロフォンM,…及びカメラ12がアーム回転中心軸体35の中心線34Cを回転中心として回転する。
制御手段3Aは、移動体22Aを制御する移動体制御手段と、雲台30を制御する雲台制御手段とを備える。即ち、診断用画像作成装置1Aは、移動体駆動手段、支柱駆動手段、アーム回転駆動手段の駆動源を制御する制御手段3Aを備えている。
つまり、移動体制御手段が移動体駆動手段を制御することによって、移動ユニット20Aの移動及び停止が制御され、かつ、雲台制御手段が支柱駆動手段及びアーム回転駆動手段を制御することによって、音・映像採取ユニット10の向きを調整できるように構成されている。
以上のように、音・映像採取ユニット10の向きを変更可能なように設置手段13を支持して移動ユニット20Aの部材取付部21Aに連結される雲台30を備えていることにより、音・映像採取ユニット10の向きを調整することが可能となり、音源方向の推定精度をより向上させることができる。
図1に示すように、加振制御装置1Bは、加振装置2Bと、制御手段3Bとを備える。
図4に示すように、加振装置2Bは、移動ユニット20Bと、加振部材100とを備える。
即ち、移動ユニット20Bと制御手段3Bとにより移動手段が構成され、加振装置2Bは、移動ユニット20Bと移動ユニット20Bを制御する制御手段3Bとによって、移動及び停止可能に構成されている。
加振装置2Bの移動ユニット20Bは、部材取付部21Bと、部材取付部21Bに取付けられた移動体22Bと、制御手段3Bからの制御信号に基づいて移動体22Bを駆動させる図外の移動体駆動手段と、を備える。
つまり、加振装置2Bは、加振部材100を移動させるための移動体22Bを備えて移動可能に構成され、当該移動体22Bを駆動させる図外の移動体駆動手段を備えている。
部材取付部21Bは、例えば、板材により形成された台により構成される。
移動体22Bは、例えば、部材取付部21Bに連結された車輪支持脚23Bと、車輪支持脚23Bの先端側に設けられた車輪24Bとにより構成される。即ち、移動体22Bは、前記移動体22Aと同じ構成である。
移動体駆動手段は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
例えば、駆動源としての図外のモータの回転力が駆動力伝達機構としての図外の伝達歯車機構を介して車輪24Bに伝達されることで、車輪24Bが回転し、移動ユニット20Bが移動するように構成されている。
従って、加振装置2Bは、診断対象部上で図4のF方向に移動することが可能である。
加振部材100は、打撃部材101と、打撃部材101を支持する支持装置110とを備える。
支持装置110は、伸縮装置120と、支持棒150とを備える。
伸縮装置120は、伸縮機構121と、制御手段3Bからの制御信号に基づいて伸縮機構121を伸縮させる伸縮駆動手段160とを備える。即ち、加振制御装置1Bは、当該伸縮駆動手段160の駆動源、及び、移動体22Bを駆動させる移動体駆動手段の駆動源を制御する制御手段3Bを備えている。
図4に基づいて伸縮機構121の構造を説明する。尚、図4では、縮み動作時の伸縮機構121を実線で示し、伸び動作時の伸縮機構121を二点鎖線(想像線)で示した。
例えば図4の想像線で示すように、伸縮機構121は、一対のリンク123,124となる一対の棒状部材を互いに交差させた状態で当該一対の棒状部材の交差部分を節となる中心ピン125により結合して各棒状部材が中心ピン125を回転中心として回転可能に形成された伸縮リンクユニット122が複数段組み合わされて形成され、全体として伸縮可能となった多節リンク機構としての多節パンタグラフ機構により構成される。
即ち、複数段組み合わされた互いに隣り合う各伸縮リンクユニット122,122…は、互いに隣り合う一方の伸縮リンクユニット122の一方のリンク123の一端部123aと他方の伸縮リンクユニット122の他方のリンク124の他端部124bとが節となる端部ピン126により結合されて各リンク123,124が当該端部ピン126を回転中心として回転可能に構成されるとともに、一方の伸縮リンクユニット122の他方のリンク124の一端部124aと他方の伸縮リンクユニット122の一方のリンク123の他端部123bとが節となる端部ピン127により結合されて各リンク123,124が当該端部ピン127を回転中心として回転可能に構成されている。
従って、当該構成を備えた伸縮機構121は、互いに隣り合う各伸縮リンクユニット122,122…の中心ピン125が離れるように動作する伸び動作と、互いに隣り合う各伸縮リンクユニット122,122…の中心ピン125が近づくように動作する縮み動作とが可能となった構成であり、伸縮リンクユニット122の数が増えるほど、伸縮機構121の最大伸び長さが長くなる。
伸縮機構121の他端に位置される伸縮リンクユニット122の他端部は、中心ピン125で連結される各棒状部材の他端部同士が中心ピン125で結合された構成となっており、当該伸縮リンクユニット122の他端部が伸縮機構121の先端部121tとなっている。当該伸縮機構121の先端部121tに支持棒150の一端部が固定されて、支持棒150が伸縮機構121の伸びる方向に延長するように設けられている。
伸縮駆動手段160は、駆動源と駆動力伝達機構とを備える。
駆動源は例えば図外のモータである。
駆動力伝達機構は、基台163と、基台163に両端部が回転可能に取付けられた送りねじ部材164と、基台163に両端部が固定されたガイド棒165と、伸縮機構121の一端部が取付けられるとともに送りねじ部材164及びガイド棒165に取付けられて送りねじ部材164の延長方向に移動自在となるように構成された一対のスライダ168,169と、駆動源としてのモータの回転力を送りねじ部材164に伝達する図外の伝達歯車機構等の回転力伝達機構と、を備えた構成である。
基台163は、部材取付部21Bに取付けられる基部163aと、基部163aの両端より伸縮機構121の伸びる方向に延長するように設けられた左右一対の支持部163b,163bとを備える。各支持部163b,163bには、送りねじ部材164の両端部を回転可能に支持するための軸受161、及び、ガイド棒165の両端部が固定される固定孔162が形成されている。基台163は、例えば、図外の取付ブラケットや溶接等の取付手段によって部材取付部21Bの側面に取付けられている。
送りねじ部材164は、円形棒の一端側から中央側にかけて円形棒の周面に左ねじが形成された左ねじ部164aと、円形棒の他端側から中央側にかけて円形棒の周面に右ねじが形成された右ねじ部164bとを備えたねじ棒である。当該送りねじ部材164は、円形棒の中心軸を回転中心として回転可能となるように、両端部が基台163の軸受161に支持されている。
ガイド棒165は、例えば円形棒又は角棒により形成され、基台163の左右の固定孔162に両端部が固定されている。
各スライダ168,169は、送りねじ部材164が貫通して螺着される螺着孔166と、ガイド棒165が貫通する貫通孔167とを備え、送りねじ部材164の回転によるねじ送りによって、送りねじ部材164の円形棒の延長方向に移動自在となるように構成されている。
一対のスライダ168;169は、送りねじ部材164の左ねじ部164aに螺着される螺着孔166とガイド棒165が貫通する貫通孔167とを備えた左側スライダ168、及び、送りねじ部材164の右ねじ部164bに螺着される図外の螺着孔(螺着孔166と同じ)とガイド棒165が貫通する図外の貫通孔(貫通孔167と同じ)とを備えた右側スライダ169である。
伸縮機構121の一端に位置される伸縮リンクユニット122の一方のリンク123の一端部123aと右側スライダ169とが基端ピン129により連結されてリンク123が当該基端ピン129を回転中心として回転可能に構成されるとともに、伸縮機構121の一端に位置される伸縮リンクユニット122の他方のリンク124の一端部124aと左側スライダ168とが基端ピン128により連結されて当該リンク124が当該基端ピン128を回転中心として回転可能に構成される。
以上のように構成された伸縮装置120によれば、制御手段3Bからの制御信号に基づいてモータの回転方向を制御して送りねじ部材164を一方方向に回転させた場合は、左側スライダ168と右側スライダ169とがねじ送りにより互いに近づく方向に移動することによって、伸縮機構121が伸びるように動作し、かつ、制御手段3Bからの制御信号に基づいてモータの回転方向を制御して送りねじ部材164を一方方向とは逆方向に回転させた場合は、左側スライダ168と右側スライダ169とがねじ送りにより互いに離れる方向に移動することによって、伸縮機構121が縮むように動作する。
支持棒150は、例えば丸棒により形成され、一端部が伸縮機構121の先端部121tに固定される。
伸縮機構121の伸びる方向に延長するように設けられた支持棒150の他端部には、打撃部材101が支持棒150の中心軸102を回転中心として矢印Rの如く回転可能なように設けられている。即ち、加振装置2Bは、先端側に打撃部材101を備えた伸縮機構121を備えた構成である。
打撃部材101の中心軸102周りの外周面は一定周期で凹凸が繰り返される凹部104及び凸部105に形成されている。
従って、打撃部材101の凸部105が診断対象部に接触した状態で打撃部材101が中心軸102を回転中心として回転することによって、打撃部材101の中心軸102周りの各凸部105が周期的に診断対象部を打撃して診断対象部を加振する。
診断対象部は、例えば、橋梁のコンクリート構造部やトンネルの内壁などのコンクリート構造物である。
即ち、打撃部材101の回転中心軸(中心軸102)と車輪24Bの回転中心軸とが平行かつ同一方向に延長するように設けられており、車輪24Bが診断対象部を走行することにより、打撃部材101の中心軸102周りの各凸部105が周期的に診断対象部を打撃して診断対象部を加振するように構成されている。
従って、伸縮機構121を伸縮させ、加振装置2Bを診断対象部上で図4のF方向に移動させることで打撃部材101を診断対象部上で回転させて凸部105が周期的に診断対象部を打撃するように、制御手段3Bによって、移動ユニット20Bの移動及び停止を制御するとともに、加振装置2Bの伸縮機構121の伸縮動作を制御し、さらに、打撃部材101が診断対象部を打撃する毎に発生する音源としての加振点からの音圧波形データと加振点を含む診断対象部の画像データとが音・映像採取装置2Aで採取されるように制御手段3Aで音・映像採取装置2Aの位置を制御する。
実施形態1の加振装置2Bによれば、制御手段3Bからの制御信号に基づいて多節パンタグラフ機構により構成された伸縮機構121を伸縮させることによって、伸縮機構121の伸びる方向における打撃部材101の位置を調整することが可能となるため、診断対象部の広い範囲を打撃できて、診断対象部の広い範囲を詳細かつ正確に診断できるようになる。また、制御手段3Bからの制御信号により、診断対象部を打撃する作業を効率的に行える。また、人が手動で伸縮機構121の長さを逐一変更しなくても良いため、人が立ち入れない場所や人が作業した場合に危険な場所に存在する診断対象部を診断することが可能となる。
また、伸縮機構121を、多節パンタグラフ機構により構成したので、伸縮機構121の伸びる方向における打撃部材101の位置をより正確にかつ細かく調整することが可能となるため、診断対象部の広い範囲を所望の間隔で打撃できて、診断対象部の広い範囲をより詳細かつより正確に診断できるようになる。
また、加振部材100を移動させるための移動体22Bと、制御手段3Bからの制御信号に基づいて移動体22Bを駆動させる移動体駆動手段とを備えているので、診断対象部の広い範囲を打撃できて、診断対象部の広い範囲を診断できるようになり、さらに、人が立ち入れない場所や人が作業した場合に危険な場所に存在する診断対象部を診断することが容易となる。
図1に示すように、情報処理手段4は、例えば、音・映像採取装置2Aから入力した音圧信号から高周波ノイズ成分を除去するとともに、各音圧信号を増幅し、かつ、デジタル信号(音圧波形データ)に変換して音源方向推定手段5に出力する。
また、情報処理手段4は、例えば、音・映像採取装置2Aから入力した映像信号(画像データ)を音源推定用画像作成手段6に出力する(尚、音・映像採取ユニット10から入力した映像信号がアナログ信号であればデジタル信号に変換して出力する)。
また、情報処理手段4は、例えば、音圧波形データ及び画像データを選択的に出力するマルチプレクサ(MUX)を備えている。
音源方向推定手段5は、情報処理手段4からの音圧波形データを加振点(診断対象部上を回転移動する打撃部材101の凸部105が診断対象部を打撃した複数の打撃点(音源))Fk(k=1〜n)毎に記憶し、当該音圧波形データを用いて、周波数毎の音源(加振点)方向のデータ(水平角θpと仰角φp)及び音圧レベルを求める。尚、音源方向推定手段5による音源(加振点)方向のデータ(水平角θpと仰角φp)の算出方法の詳細については後述する。
音源推定用画像作成手段6は、情報処理手段4からの診断対象部の画像データを記憶し、加振点毎に、音源方向推定手段5で算出された周波数毎の音源方向のデータ(水平角θと仰角φ)及び音圧レベルと診断対象部の画像データとを合成し、図5(a),(b)に示すような、画像中に音源の方向を示す図形(ここでは、円とした。尚、円の径が音圧レベルを表し、円の模様もしくは色が音圧信号の周波数を表す。)が周波数毎に描画された音源推定用画像Gk(k=1〜n)を作成する。なお、図5(a)は、ひび割れによる浮きが存在する箇所Pを含む音源推定用画像G4で、図5(b)は、内部に空隙が存在する箇所Qを含む音源推定用画像G14である。
加振点Fk毎に作成された音源推定用画像Gkは、順次、診断用画像作成手段56に送られる。
図1に示すように、診断用画像作成手段56は、画像合成部56Aと、バンド別画像作成部56Bとを備える。
画像合成部56Aは、n個の音源推定用画像Gk(k=1〜n)を合成した、診断用画像を作成する。
バンド別画像作成部56Bは、合成画像である診断用画像から、オクターブバンド毎の診断用画像であるバンド画像、もしくは、隣接する2つ以上のバンド画像を重ね合わせた重合バンド画像を作成する。
具体的には、オクターブバンドとして、1/3オクターブバンドを用い、中心周波数fp(p=1〜18)を、例えば、160Hz,200Hz,250Hz,……,……,3150Hz,4000Hz,5000Hz,6300Hz,8000Hzとすると、バンド画像はp=18枚となる。
また、重合バンド画像としては、例えば中心周波数が200Hz〜2500Hzまでのバンド画像を重ね合わせて作成した重合バンド画像や、中心周波数が1250Hz〜6300Hzまでのバンド画像を重ね合わせて作成した重合バンド画像などを用いることができる。
また、オクターブバンドとして、1オクターブバンドを用いてもよい。さらに、オクターブバンドに限らず,任意の周波数範囲を設定してもよい。
図1に示すように、表示手段7は、液晶ディスプレイ等の表示画面7aを備え、診断用画像作成手段56で作成されたバンド画像もしくは重合バンド画像を表示画面7aに表示する。
尚、音源方向推定手段5、音源推定用画像作成手段6、診断用画像作成手段56の各手段は、例えば、パーソナルコンピュータのソフトウェアとメモリーとにより構成され、表示手段7は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置により構成される。
また、マイクロフォンM,…、及び、カメラ12と情報処理手段4との通信媒体は、有線又は無線のいずれでもよい。
さらに、情報処理手段4と音源方向推定手段5及び音源推定用画像作成手段6との通信媒体、音・映像採取装置2Aと制御手段3Aとの通信媒体、加振装置2Bと制御手段3Bとの通信媒体も、有線又は無線のいずれでもよい。
尚、情報処理手段4と音源方向推定手段5及び音源推定用画像作成手段6との通信媒体、音・映像採取装置2Aと制御手段との通信媒体、加振装置2Bと制御手段3Bとの通信媒体を、無線で行う構成とすれば、人が出入りできないような場所においても音・映像採取装置2及び加振装置2Bを動作させることが可能となり、好ましい。
実施形態1によれば、診断対象部の診断用画像が表示手段7の表示画面7aに表示されるので、診断者が当該診断対象部の劣化等を診断できるようになる。
例えば、診断対象部が壁であって、当該壁に「ひび割れによる浮き」がある場合には、3150Hz〜4000Hz帯域の打撃音が発生し、当該壁に「空隙」がある部分では、4000Hz〜5000Hz帯域の打撃音が発生することが分かっている。
そこで、この場合、上述したような18枚のバンド画像から、中心周波数が3150Hzのバンド画像と4000Hzのバンド画像とを重ね合わせて作成した重合バンド画像である浮き診断用画像として表示手段7の表示画面7aに表示したり、中心周波数が1000Hz〜5000Hzまでのバンド画像を重ね合わせて作成した重合バンド画像である空隙診断用画像として表示手段7の表示画面7aに表示するようにし、診断者が、これら浮き診断用画像や空隙診断用画像を見て、壁に「ひび割れによる浮き」がある場所、壁に「空隙」がある場所を診断できるようになる。
特に、実施形態1の音源方向推定装置は、少なくとも3個のマイクロフォンM,…が設置板138の前面138t側である前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を持つように構成された音・映像採取ユニット10を備えていることにより、特別な演算処理を行うことなく反射音の影響をより少なくできて、狭い空間であっても音源方向の推定精度が向上するようになった。
また、実施形態1の診断装置1は、音・映像採取装置2A及び加振装置2Bが移動可能に構成されたことによって、複数の加振点(音源)を診断できるので、診断対象部の広範囲の状態を把握できるようになった。
以下、マイクロフォンが3本の場合、マイクロフォンが5本の場合、マイクロフォンが4本の場合について、それぞれ説明する。
実施形態2
まず、マイクロフォンが3本の場合について説明する。
マイクロフォンが3本の場合、各マイクロフォンM1,M2,M3の振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置され、設置板138の前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号、即ち、設置板138の側方、及び、後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように構成されている。尚、ここでは、設置板138の前方から各マイクロフォンM1,M2,M3を見た場合に、各マイクロフォンM1,M2,M3の振動板の中心が、正三角形の各頂点に配置された構成を例にして説明する。
この場合、音源方向推定手段5は、音圧波形データを用いて、各マイクロフォンM1,M2,M3の前端から見た時の音源方向を推定する。すなわち、設置板138の前面138tを水平面と仮定した場合において、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との中点を音響中心Oとしたときの水平角θpと仰角φpとを周波数毎に算出するとともに、音源から伝播される音の音圧レベルを計測する。
なお、水平角θpと仰角φpの算出方法については後述する。
図6は、マイクロフォンM1とマイクロフォンM3との中点である音響中心Oを原点、マイクロフォンM3からマイクロフォンM1に向かう方向をX軸方向、原点からマイクロフォンM2に向かう方向をY軸方向、マイクロフォン設置手段130の前方(カメラ12の撮像方向)をZ軸とした座標系におけるマイクロフォンM1,M2,M3の位置と、音の入射方向とを示す図で、マイクロフォンM1,M2,M3は、1辺がLの正三角形の各頂点に配置される。このようなマイクロフォンM1,M2,M3の作る平面をXY平面とし、カメラ12の撮像方向をZ軸としたXYZ座標系を、以下、音響座標系という。
音源方向の計算は、マイクロフォンM1,M2,M3には、XY平面の前方(+Z方向)から伝播される音の音圧信号のみが入力されるものとし、マイクロフォンM1,M2,M3の音圧波形データをFFTにて周波数解析し、周波数毎にマイクロフォンM1〜M3間の位相差を求め、この求められた位相差と、図外の温度センサーにより計測された温度を用いて算出した音速cとから音源の方向を周波数毎に算出する。
水平角θp及び仰角φpは以下の式[数1]で表わせる。
ここで、到達時間差Dijは、マイクロフォンMiに到達する音圧信号とマイクロフォンMjに到達する音圧信号との時間差で、対となる2つのマイクロフォンMi及びマイクロフォンMjに入力される信号のクロススペクトルPij(f)を求め、更に、対象とする周波数fの位相角情報Ψ(rad)を用いて、以下の式[数2]により算出される。
音源方向と音圧レベルとは周波数毎に計測する。
なお、音圧信号の大きさとしては、マイクロフォンM1,M2,M3のうちのいずれかに入力される信号の大きさとしてもよいし、マイクロフォンM1,M2,M3に入力される信号の大きさの平均値を用いてもよい。
次に、音源方向のデータと音圧レベルと、カメラ12で撮像して得られた画像データとを合成し、音源方向(θpk,φpk)と音圧信号の大きさaf(θpk,φpk)と周波数とを表示した円が表示された音源推定用画像Gk(k=1〜n)を作成し、作成された音源推定用画像Gkを、表示手段7の表示画面7aに表示する。
例えば、図5に示すように、円の位置が音源方向(θpk,φpk)を表し、円の径が音圧レベルaf(θpk,φpk)を表し、円の模様もしくは色が音圧信号の周波数を表すようにした。
図7(a),(b)は、音源推定用画像の具体例を示す図で、四方が壁に囲まれた居室内に設置されたスピーカー84を音源として用いた例である。図7(a)は、スピーカー84から出力されるピンクノイズを、本発明による3個のマイクロフォンM1,M2,M3を設置板138に設置した構成の音・映像採取ユニット10を用いて作成した音源推定用画像G0で、図7(b)は従来のマイクロフォンを5個立体配置した構成の音・映像採取ユニット10Zを用いた場合の音源推定用画像Gz0である。なお、ピンクノイズは、スピーカー84の音響特性測定に使用される、パワーが周波数に反比例する雑音である。
各図において、楕円で囲った箇所が音源であるスピーカー84の位置である。
図7(a)と図7(b)とを比較して分かるように、従来法による音源推定用画像Gz0に比較して、本発明による音源推定用画像G0の方が、スピーカー84の位置のバラつきが少ないことが分かる。
また、図8(a),(b)は、スピーカー84と音・映像採取ユニット10,10Zの側面に反射板85を設置して計測したときの音源推定用画像G1,Gz1を示す図で、図9(a),(b)は、音・映像採取ユニット10,10Zの後方45°の位置に反射板85を設置して計測したときの音源推定用画像G2,Gz2を示す図である。また、図10(a),(b)は、音・映像採取ユニット10,10Zの背面に反射板85を設置して計測したときの音源推定用画像G3,Gz3 を示す図である。
いずれの場合も、本発明による音源推定用画像Gkの方が、スピーカー84の位置のバラつきが少ないことが分かる。
このように、マイクロフォンM1,M2,M3とカメラ12とを設置板138に設置して、マイクロフォンM1,M2,M3に入力する音圧信号をカメラ12の撮像方向である前方の180°のみに限定すれば、後方あるいは側方の壁などからの反射音の影響を大幅に低減できることが分かる。
ところで、音響座標系(XYZ座標系)は、従来の5本のマイクロフォンを四角錐状に配置したときの座標系とは異なるので、水平角θpと仰角φpとは、画像上、すなわち、カメラ12が水平面上にあるとしたときの水平角θと仰角φとは異なる。具体的には、図11(a)に示すように、水平角θpと仰角φpとを画像上に表示すると、水平角θpは同図の一点鎖線で示す円上にあり、仰角φpは前記円の半径に相当する。音源を推定するには、画像上に前記の音源方向と周波数と音の大きさを表示した円Cが表示されていればよいので、図11(b)に示すように、音源方向(θp,φp)をカメラ12が水平面(xy平面)上にあるとしたときの座標系である光学座標系における音源方向(θ,φ)に座標変換する必要はない。
しかし、水平角θに対する音圧レベルの分布を調べるときなどは、音源方向(θp,φp)を音源方向(θ,φ)に座標変換した方が、視覚的に分かりやすい。そこで、本例では、前記の図7〜図10に示した音源推定用画像G,Gzについても、横軸を水平角θ、縦軸を仰角φとした画像として表示した。
図11(b)に示すように、光学座標系を、カメラ12がxy平面上にあり、かつ、x軸をカメラ12の撮像方向(白い矢印)とすると、光学座標系のx軸は音響座標系のZ軸、光学座標系のy軸は音響座標系の−X軸、光学座標系z軸は音響座標系のY軸となる。
したがって、光学座標系における水平角θ及び仰角φは、音響座標系の水平角θp及び仰角φpを用いて、以下の式[数3]のように表せる。
したがって、音響座標系から光学座標系への座標変換を行うことにより、例えば、図7(a)の音源推定用画像G0の下の段に示すように、水平角θを横軸に音圧レベルを縦軸にした音圧レベルの分布図を作成して表示することができる。
なお、音響座標系の音源方向(θp,φp)を光学座標系の音源方向(θ,φ)に座標変換した音源推定用画像Gを作成し、これを表示画面7aに表示してもよい。
このように、マイクロフォンが3本の場合では、音源から伝播される音の音圧信号を採取するマイクロフォンM1,M2,M3を設置板138に三角形状に設置して、設置板138の前方であるカメラ12の撮像方向から伝播される音の音圧信号のみを採取するとともに、音源方向推定手段5にて、マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差とマイクロフォンの位置座標と音速とから音源の方向を推定し、音源推定用画像作成手段6にて、推定された音源の方向のデータとカメラ12で撮像された音源の方向の映像信号である画像データとを合成して、推定された音源方向を示す図形が描画された画像である音源推定用画像Gを作成するようにしたので、反射音の影響を大幅に低減することができる。したがって、狭い空間であっても、音源の方向を精度よく推定することのできる音源推定用画像Gを作成することができる。
実施形態3
実施形態2では、マイクロフォンM1,M2,M3を、1辺の長さがLの正三角形の各頂点に配置したが、本発明はこれに限るものではなく、互いに一直線上にない3点、すなわち、三角形の各頂点に配置してもよい。
図12は、3個のマイクロフォンM0,M1,M2を二等辺三角形の各頂点に配置した例で、マイクロフォンM0の座標を(0,0,0)、マイクロフォンM1の座標を(L/2,0,0)、マイクロフォンM2の座標を(0,L/2,0)とし、音響中心をマイクロフォンM0の位置とし、映像中心を(L/3,L/3,0)とした。なお、Lは、音源と音・映像採取ユニット10との距離に比べて十分小さいので、映像中心と音響中心とが一致しているとして音源推定用画像Gを作成しても問題はない。すなわち、映像中心は音響中心の近くに設定することが好ましく、例えば、(L/4,L/4,0)などのように、三角形の内部もしくは辺上にあれば更に好ましい。
マイクロフォンM0,M1,M2を、図12のように配置したときの水平角θp及び仰角φpは以下の式[数4]で表わせる。
実施形態4
次に、マイクロフォンが5本の場合について説明する。
マイクロフォンを5本用いる場合、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4,M5の振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置され、設置板138の前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号、即ち、設置板138の側方、及び、後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4,M5が設置板138に設置される。この場合は、例えば、図13に示すように、設置板138の前方から各マイクロフォンM1〜M5を見た場合において、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3とを縦方向に所定の間隔LLだけ離れた位置に配置し、第2のマイクロフォンM2と第4のマイクロフォンM4とを横方向に上記と同じ所定の間隔LLだけ離れた位置に配置するとともに、第5のマイクロフォンM5を、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3とを結ぶ線分と、第2のマイクロフォンM2と第4のマイクロフォンM4とを結ぶ線分との交点(ここでは、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との間を1:3に内分する内分点)に配置する。
以下、第5のマイクロフォンM5の位置を原点(0,0,0)とし、設置板138の横方向をx軸方向、縦方向をy軸方向、設置板138の前面138tに垂直な方向をz軸方向とする。また、水平角θは、y軸上をθ=0としy軸から時計回りに計測し、仰角φはxy平面上をφ=0として計測する。
本例では、第1のマイクロフォンM1の位置の座標を(0,LS,0)、マイクロフォンM2の位置の座標を(LM,0,0)、マイクロフォンM3の位置の座標を(0,−LM,0)、マイクロフォンM4の位置の座標を(−LS,0,0)とした。
なお、LS,LM,LLの関係は、LL=LS+LMで、かつ、LS<LM<LLである。
ここで、マイクロフォン対(M1,M3)を第1のマイクロフォン対とし、マイクロフォン対(M2,M4)を第2のマイクロフォン対とすると、本例のマイクロフォンM1〜M5の配置は、マイクロフォンM1〜M4の作る四角形が、2つの対角線が直交している四角形であり、かつ、第2のマイクロフォン対(M2,M4)は、第1のマイクロフォン対(M1,M3)を、第5のマイクロフォンを中心にして、反時計回りに90°回転させた位置に配置されていることになる。
このように、マイクロフォンM1〜M5を、図13に示すように配置することで、5つのマイクロフォンM1〜M5から、異なるマイクロフォン間隔LS,LM,LL(LS<LM<LL)を有する、互いに一直線上にない3つのマイクロフォン対を構成することができる。
すなわち、第1及び第2のマイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)が、最も長いマイクロフォン間隔LLを有するマイクロフォン対で、マイクロフォン対(M1,M5),(M5,M4)が、最も短いマイクロフォン間隔LSを有するマイクロフォン対(以下、第5及び第6のマイクロフォン対という)である。また、マイクロフォン対(M5,M3),(M2,M5)が、中間のマイクロフォン間隔LMを有するマイクロフォン対(以下、第3及び第4のマイクロフォン対という)である。
尚、マイクロフォンを5本備えた音源方向推定装置の場合、情報処理手段4が、図外の低域用抽出部と中域用抽出部と高域用抽出部とを備え、マイクロフォンM1〜M5が採取した音圧信号から、各マイクロフォン対の音圧信号を抽出する。
すなわち、音源方向である水平角θと仰角φとは、周波数毎に算出されるので、算出する全ての周波数について、第1〜第5のマイクロフォン対の到達時間差を求める必要はない。
つまり、低域用抽出部は、最も長いマイクロフォン間隔LLを有するマイクロフォン対を構成するマイクロフォンM1,M2,M3,M4の音圧信号から音圧波形データを抽出して、音源方向推定手段5に送る。
また、中域用抽出部は、中間のマイクロフォン間隔LMを有するマイクロフォン対を構成するマイクロフォンM2,M3,M5の音圧信号から音圧波形データを抽出して、音源方向推定手段5に送る。
さらに、高域用抽出部は、最も短いマイクロフォン間隔LSを有するマイクロフォン対を構成するマイクロフォンM1,M4,M5の音圧信号から音圧波形データを抽出して、音源方向推定手段5に送る。
音源方向推定手段5では、低域用抽出部、中域用抽出部、高域用抽出部で抽出された音圧波形データをFFTにて周波数解析し、対となる2つのマイクロフォン(Mi, Mj)間の位相差に相当する到達時間差Dijを周波数毎に求め、求められた到達時間差Dijと、図外の温度センサーにより計測された温度を用いて算出した音速cとから音源の方向を周波数毎に算出する。
具体的には、低周波領域(例えば、LL=100mm、c=340m/sとしたときには、周波数が1700Hz以下の領域)の音の水平角θ及び仰角φは、低域用抽出部により抽出された第1のマイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1,M3間の到達時間差D13と、第2のマイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4間の到達時間差D24と、音速c、及び、マイクロフォン間隔LLとを用いて、以下の式[数5]により算出される。
ここで、到達時間差Dijは、対となる2つのマイクロフォンMi及びマイクロフォンMjに入力される信号のクロススペクトルPij(f)を求め、更に、対象とする周波数fの位相角情報Ψ(rad)を用いて、上述した式[数2]により算出される。
また、中間周波領域(例えば、LM=75mmとしたときには、1700Hz〜2266Hz)の音の水平角θ及び仰角φは、中域用抽出部により抽出された第3のマイクロフォン対(M5,M3)を構成するマイクロフォンM5,M3間の到達時間差D53と、第4のマイクロフォン対(M2,M5)を構成するマイクロフォンM2,M5間の到達時間差D25と、音速c、及び、マイクロフォン間隔LMとを用いて、以下の式[数6]により算出される。
同様に、高周波領域(例えば、LS=25mmとしたときには、2266Hz〜6800Hz)の音の水平角θ及び仰角φは、高域用抽出部により抽出された第5のマイクロフォン対(M1,M5)を構成するマイクロフォンM1,M5間の到達時間差D15と、第6のマイクロフォン対(M5,M4)を構成するマイクロフォンM5,M4間の到達時間差D54と、音速c、及び、マイクロフォン間隔LSとを用いて、以下の式[数7]により算出される。
このように、マイクロフォンを5本備えた音源方向推定装置では、設置板138に、互いに一直線上にない、第1〜第4のマイクロフォンM1〜M4を配置するとともに、第1〜第4のマイクロフォンM1〜M4の位置を頂点とする四角形の対角線の交点に第5のマイクロフォンM5を配置し、これら5つのマイクロフォンM1〜M5から選択される、異なるマイクロフォン間隔LS,LM,LL(LS<LM<LL)を有する、互いに一直線上にない、2つのマイクロフォン対のそれぞれについて、2つのマイクロフォン対のうちの一方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、他方のマイクロフォン対を構成する各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と、マイクロフォンM1〜M5の位置座標と音速cとから前記音源の方向を推定するようにしたので、低い周波数の音を発生する音源方向については、マイクロフォン間隔の長い(L=LL)マイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)のデータを用いて推定し、高い周波数の音を発生する音源方向については、マイクロフォン間隔の短い(L=LS)マイクロフォン対(M1,M5),(M5,M4)のデータを用いて推定し、中間の周波数の音を発生する音源方向については、中間のマイクロフォン間隔(L=LM)を有するマイクロフォン対(M5,M3),(M2,M5)のデータを用いて推定すれば、測定できる周波数の上限を下げることなく、音源の方向を精度よく推定することができる。
実施形態5
実施形態4では、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との間隔をLL=100mmとし、第5のマイクロフォンM5を、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との間を1:3に内分する内分点に配置したが、マイクロフォン間隔LL及び第5のマイクロフォンM5の位置は、計測する周波数範囲により適宜決定すればよい。
図14は、第5のマイクロフォンM5を、第1のマイクロフォンM1と第3のマイクロフォンM3との中点に配置した例を示す図で、この場合、マイクロフォンM1〜M4の作る四角形は正方形となり、第5のマイクロフォンM5は正方形の中心に位置する。
この場合も、最も長いマイクロフォン間隔LLを有するマイクロフォン対は、前記実施の形態1と同じく、第1及び第2のマイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)である。
一方、最も短いマイクロフォン間隔(L=LL/2)を有するマイクロフォン対は、マイクロフォン対(M1,M5),(M5,M4)の他に、マイクロフォン対(M1,M5),(M2,M5)と、マイクロフォン対(M5,M3),(M5,M4)と、マイクロフォン対(M5,M3),(M2,M5)とがある。
また、中間のマイクロフォン間隔(L=LL/√2)を有するマイクロフォン対は、マイクロフォン対(M1,M4),(M2,M1)と、マイクロフォン対(M1,M4),(M3,M4)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M2,M1)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M3,M4)とがある。
この場合も、音源方向推定手段5では、音圧信号抽出手段23で抽出された音圧波形データをFFTにて周波数解析し、対となる2つのマイクロフォン(Mi, Mj)間の位相差に相当する到達時間差Dijを周波数毎に求め、求められた到達時間差Dijと、温度センサー15により計測された温度を用いて算出した音速cとから音源の方向を周波数毎に算出する。
低周波領域(例えば、LL=50mm、c=340m/sとしたときには、周波数が3400Hz以下の領域)の音の水平角θ及び仰角φは、上述した式[数5]により算出する。
また、中間周波数領域(LL=50mmとしたときには、3400Hz〜4808Hz)の音の水平角θ及び仰角φは、マイクロフォン対(M1,M4),(M2,M1)、マイクロフォン対(M1,M4),(M3,M4)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M2,M1)、マイクロフォン対(M2,M3),(M3,M4)を、マイクロフォン対(Ma,Mb),(Mc,Md)としたとき、マイクロフォン対(Ma,Mb)を構成するマイクロフォンMa,Mb間の到達時間差Dabと、マイクロフォン対(Mc,Md)を構成するマイクロフォンMc,Md間の到達時間差Dcdと、音速c、及び、マイクロフォン間隔LLとを用いて、以下の式[数8]により算出する。
同様に、高周波領域(例えば、LL=50mmとしたときには、4808Hz〜6800Hz)の音の水平角θ及び仰角φは、マイクロフォン対(M1,M5),(M5,M4)の他に、マイクロフォン対(M1,M5),(M2,M5)と、マイクロフォン対(M5,M3),(M5,M4)と、マイクロフォン対(M5,M3),(M2,M5)とを、マイクロフォン対(Mp,Mq),(Mr,Ms)としたとき、マイクロフォン対(Mp,Mq)を構成するマイクロフォンMp,Mq間の到達時間差Dpqと、マイクロフォン対(Mr,Ms)を構成するマイクロフォンMr,Ms間の到達時間差Drsと、音速c、及び、マイクロフォン間隔LLとを用いて、以下の式[数9]により算出する。
上記のように、マイクロフォンM1〜M4の作る四角形を正方形とし、第5のマイクロフォンM5を正方形の中心に位置させた構成とすれば、中間周波領域の音の水平角θ及び仰角φと、高周波領域の音の水平角θ及び仰角φとを、それぞれ、4つずつ求めることができる。したがって、水平角θ及び仰角φととを、平均化処理すれば、中間周波領域及び高周波領域の音の水平角θと仰角φとの推定精度を大幅に向上させることができる。
このように、正方形の頂点と中心とに、それぞれマイクロフォンM1〜M5を配置すれば、測定できる周波数の上限を下げることなく、音源の方向を一層精度よく推定することができる。
なお、実施形態4,5では、マイクロフォンM1〜M4を、対角線が直交する四角形の頂点に配置したが、対角線が直交していない四角形であってもよい。但し、この場合には、水平角θ及び仰角φの計算が複雑になるので、マイクロフォンM1〜M4を、対角線が直交する四角形の頂点に配置することが好ましい。
実施形態6
次に、マイクロフォンが4本の場合について説明する。
尚、マイクロフォンが4本の場合、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4の振動板の中心が設置板138の前面138tと平行な一平面上に位置されるとともに、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4の振動板の中心が一直線上に位置されないように配置され、かつ、設置板138の前方側から音圧信号を入力して当該前方側以外からの音圧信号、即ち、設置板138の側方、及び、後方からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、各マイクロフォンM1,M2,M3,M4が設置板138に設置される。この場合は、設置板138の前方から各マイクロフォンM1,M2,M3,M4を見た場合に、例えば、図15に示すように、一辺がLmの正方形の頂点に配置された4つマイクロフォンM1〜M4を用いて、異なるマイクロフォン間隔(L1=√2Lm,L2=Lm)を有する、互いに一直線上にない2つのマイクロフォン対を構成することができる。
マイクロフォン対(M1,M3),(M2,M4)が、長い方のマイクロフォン間隔L1を有するマイクロフォン対で、マイクロフォン対(M1,M4),(M2,M1)とマイクロフォン対(M1,M4),(M3,M4)と、マイクロフォン対(M2,M3),(M2,M1)、マイクロフォン対(M2,M3),(M3,M4)とが、短い方のマイクロフォン間隔L2を有するマイクロフォン対である。
マイクロフォンM1〜M4に入力される音の音圧信号から、水平角θ及び仰角φとを算出する方法は、上述した、正方形とその中心にマイクロフォンM1〜M5を配置した構成の場合と同じであるので、その説明を省略する。
尚、同様に、n個(nは4以上の偶数)のマイクロフォンM1〜Mnを、n多角形の各頂点にそれぞれ配置すれば、互いに異なるマイクロフォン間隔を有する、互いに一直線上にない3つ以上のマイクロフォン対を構成することができる。
各実施形態の音源方向推定装置によれば、少なくとも3個のマイクロフォンM1,M2,M3…Mxが所定の状態に設置されて構成された音・映像採取ユニット10と、移動ユニット20Aと、雲台30と、を有した音・映像採取装置2Aを備えているので、移動ユニット20Aにより音・映像採取ユニット10を移動させることができ、かつ、雲台30により音・映像採取ユニット10の向きを調整できるため、音源の方向を一層精度よく推定することが可能となる。
実施形態7
移動体22A,22Bとして、脚の先端に磁石付きの車輪を備えた構成、あるいは、歩行可能に構成された脚の先端に磁石を備えた構成の移動体を用いれば、例えば、診断対象部としての鋼製の壁部や天井部に磁石を吸着させながら音・映像採取装置2A及び加振装置2Bを移動させることができるようになる。
この場合、例えば、診断対象部としての鋼製橋梁の主桁上を加振装置2Bの移動体で吸着移動させながら、加振装置2Bの加振部材100によって、鋼製橋梁の主桁や構成部材、コンクリート床版等を打撃して加振させるとともに、当該鋼製橋梁の主桁上を音・映像採取装置2Aの移動体で吸着移動させながら、この複数の加振点である音源方向の音圧データ及び画像データを音・映像採取装置2Aで採取できるようになるので、鋼製橋梁の損傷個所特定検査を効率的かつ高精度に行えるようになる。
実施形態8
移動体22Bを備えない構成の加振装置であってもよい。この場合、上述した部材取付部21B、あるいは、基台163を、診断対象部の近傍に固定して使用すればよい。
実施形態9
実施形態1の加振装置2B、実施形態7のように磁石付きの移動体を備えた加振装置、あるいは、実施形態8のように移動体を備えない構成の加振装置において、加振部材100だけ(即ち、部材取付部21B及び移動体22B以外の部分)を伸縮機構121の伸びる方向と直交する方向に移動させる移動手段を設けるようにすれば、様々な方向に打撃部材101を移動させることが可能となるので、様々な診断対象部に対応可能な加振装置となる。
実施形態10
打撃部材101は、回転する構成のものではなく、診断対象部に対して近づく方向及び離れる方向に往復運動するように構成されたもの、即ち、ハンマーのように叩いて打撃する構成のものであってもよい。
実施形態11
また、伸縮機構121として棒状の伸縮可能な構成の伸縮機構を用い、制御手段3Bからの制御信号に基づいて当該伸縮機構を伸縮させる伸縮駆動手段を備えた構成の加振装置としてもよい。当該加振装置であっても、伸縮機構の伸びる方向における打撃部材の位置を正確に調整することが可能となるため、診断対象部の広い範囲を打撃できて、診断対象部の広い範囲を詳細かつ正確に診断できるようになり、かつ、当該診断作業を効率的に行えるようになる。また、人が手動で伸縮機構の長さを逐一変更しなくても良いため、人が立ち入れない場所や人が作業した場合に危険な場所に存在する診断対象部を診断することが可能となる。
実施形態12
支持棒150の中心軸102と基台163の基部163aとが交差する点を回転中心として加振部材100だけを左右(図4の左右の支持部163b,163b側)に揺動させる揺動手段を備えた加振装置とすれば、診断対象部の広い範囲を扇状に打撃できて、診断対象部の広い範囲を扇状に詳細かつ正確に診断できるようになる。言い換えれば、打撃部材と診断対象部との接触状態、あるいは、打撃部材と診断対象部との距離を一定に維持した状態で、伸縮機構の一端側を回転中心として当該伸縮機構を揺動させる揺動手段を備えた加振装置としてもよい。
尚、本発明は、コンクリート構造物だけでなく、モルタルやタイルなどから成る構造物、金属、その他の診断対象部の診断にも適用できる。
1 診断装置、1A 診断用画像作成装置、
2A 音・映像採取装置、2B 加振装置、
5 音源方向推定手段、6 音源推定用画像作成手段、12 カメラ(撮像手段)、
13 設置手段、22A;22B 移動体、56 診断用画像作成手段、
100 加振部材、101 打撃部材、110 支持装置、121 伸縮機構、
138 設置板(平面板)、138a マイクロフォン固定孔、160 伸縮駆動手段、
M,… 少なくとも3個のマイクロフォン。

Claims (3)

  1. 診断対象部を打撃して加振する加振部材を備えた加振装置であって、
    前記加振部材は、打撃部材と、当該打撃部材を支持する支持装置とを備え、
    前記支持装置は、先端側に前記打撃部材を備えた伸縮機構と、制御手段からの制御信号に基づいて前記伸縮機構を伸縮させる伸縮駆動手段とを備えた構成の加振装置と、
    当該加振装置で加振された音源から伝播される音の音圧信号及び音源の画像データに基づいて診断対象部を診断するための診断用画像を作成する診断用画像作成装置とを備えた診断装置であって、
    前記診断用画像作成装置は、
    加振された音源から伝播される音の音圧信号を採取するための少なくとも3個のマイクロフォンと、音源の画像を撮像するための撮像手段と、当該各マイクロフォン及び撮像手段を所定の状態に設置するための設置手段と、を備えて構成された音・映像採取装置と、
    前記各マイクロフォンに入力する音圧信号の到達時間差と前記マイクロフォンの位置座標と音速とから周波数毎に音源方向を推定する音源方向推定手段と、
    前記音源方向推定手段で推定された音源方向のデータと前記撮像された音源の画像データとに基づいて音源推定用画像を加振された音源毎に作成する音源推定用画像作成手段と、
    前記音源推定用画像作成手段により作成された複数の音源推定用画像を合成した画像である診断用画像を作成する診断用画像作成手段とを備え、
    前記少なくとも3個のマイクロフォンは、一方側から音圧信号を入力して当該一方側以外からの音圧信号の入力を低減させる指向性を有するように、前記設置手段に設置され、
    前記加振装置及び前記音・映像採取装置がそれぞれ移動体を備えて移動可能に構成されたことを特徴とする診断装置
  2. 前記伸縮機構は、多節パンタグラフ機構により構成されたことを特徴とする請求項1に記載の診断装置。
  3. 前記設置手段が平面板を備え、前記少なくとも3個のマイクロフォンは、平面板の板面間を貫通するように形成されたマイクロフォン固定孔に固定されることによって平面板に設置されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の診断装置。
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