JP6413194B2 - 有機系脱酸素剤 - Google Patents

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Description

本件発明は、有機系脱酸素剤に関し、詳しくは、金属探知機に検知されず、安全性が高く、優れた脱酸素性能を備える有機系脱酸素剤に関する。
流通過程において、食品等の酸化等を防止するため、食品等を脱酸素剤と共に包装容器(包装袋含む)内に封入することが行われている。脱酸素剤を用いることにより、包装容器内の酸素を吸収して、食品等を無酸素雰囲気中で保存することが可能になる。このため、食品業界等では、食品等の酸化等による品質低下を防止して、長期に渡って良好な状態で食品等を流通するために酸素吸収剤が広く用いられている。
脱酸素剤には、鉄粉を主剤とする鉄系脱酸素剤と、有機系の易酸化物質を主剤とする有機系脱酸素剤とがある。従来、安価であり、且つ、安定した酸素吸収能を有することから、鉄系脱酸素剤が広く使用されてきた。しかしながら、近年では、食品等の流通過程において金属探知器による金属製異物混入検査が行われる場合があることから、金属探知器に検知されない有機系脱酸素剤の需要が伸びている。
このような状況に鑑み、本件出願人は、特許文献1、2に示すようにフェノール性水酸基を1個以上含有するベンゼン環が化学構造式中に2個以上含まれる複合化合物(以下、ポリフェノール化合物)を主剤とする有機系脱酸素剤を提案してきた。特に、本件出願人は、ポリフェノール化合物として、植物から抽出されたタンニン又はタンニン酸を用いることを提案している。これらを主剤とする有機系脱酸素剤は、植物由来の成分を用いるため、安全性が高く、安価であり、常温で使用された場合、十分な脱酸性性能を発揮する。
特開2007−74962号公報 特開2007−268326号公報
しかしながら、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤は、低温下における酸素吸収速度が遅く、低温下で使用した場合、常温時と比較するとその脱酸素性能が低下するという問題があった。そこで、本件発明の課題は、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤において、低温下においても十分な脱酸素性能を発揮することができ、製造効率の良い有機系脱酸素剤を提供することにある。
そこで、本件発明者等は、アミン系添加剤を添加することにより、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤の低温特性を改善することを見出し、上記課題を達成するに到った。
本件発明に係る有機系脱酸素剤は、タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤であって、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で含有することを特徴とする。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、前記主剤は縮合型タンニンであることが好ましい。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、主剤100質量部に対して、アルカリ剤を1質量部以上200質量部以下、水を10質量部以上200質量部以下含むことが好ましい。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、前記アルカリ剤は、水酸化カルシウムであり、主剤100質量部に対して、水酸化カルシウムを30質量部以上60質量部以下、水を100質量部以上135質量部以下含むことが好ましい。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、主剤100質量部に対して、活性炭を0.1質量部以上20質量部以下の範囲で含有することが好ましい。
本件発明に係る有機系脱酸素剤の製造方法は、タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤の製造方法であって、当該主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で用い、主剤、トリエタノールアミン及び水を混練した後、アルカリ剤を添加して、これらを混練することを特徴とする。
本件発明に係る有機系脱酸素剤は、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で含有させることにより、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤において、低温下においても十分な脱酸素性能を発揮させることができる。また、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤において、トリエタノールアミンを配合することにより、造粒効果が得られ、充填包装機により充填する際における粉立ちを抑制し、流動性も良好であるため包装袋への充填封入が容易になり、製造効率を向上させることができる。また、造粒効果が得られるためか、包装材に有機系脱酸素剤を封入した場合にも、この包装材の表面に液が染み出したように色が濃く見える、いわゆる「染み出し」を抑制することができる。
以下、本件発明に係る有機系脱酸素剤の好ましい実施の形態を説明する。
1.有機系脱酸素剤
本件発明に係る有機系脱酸素剤は、タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤であって、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で含有することを特徴としている。以下、各成分について説明する。
(1)主剤
タンニン又はタンニン酸は、フェノール性水酸基を1個以上含有するベンゼン環が化学構造式中に2個以上含まれる複合化合物(ポリフェノール化合物)であり、空気中の酸素により容易に酸化される易酸化性有機物質である。タンニン又はタンニン酸は、化学的合成により製造されたもの、植物の果実、葉や花、樹皮等より抽出されたもののいずれでも良い。植物より抽出されたタンニン又はタンニン酸としては、例えば、ケブラチョ、ワットル(ミモザ)、栗材、ミロバラン、ガンビール、ヘムロック、オーク等から抽出したものが挙げられる。安全性が高く、所望の脱酸素性能が得られるという観点から、特に植物より抽出されたタンニン又はタンニン酸を用いることが好ましい。
また、入手の容易さや安価であること、主剤として十分な脱酸素性能を発揮するという観点から、特に、縮合型タンニン又は加水分解型タンニンを用いることがより好ましい。
ここで、縮合型タンニンは、フラバノール骨格を有する化合物が重合したもので、その構造は多種多様で複雑である。数百種類以上に及ぶ縮合型タンニンが存在するが、本件発明ではそのいずれの種類の縮合型タンニンを用いてもよい。代表的な化合物として、以下の構造式で示される縮合型タンニンが挙げられる。
Figure 0006413194
加水分解型タンニンは、没食子酸やエラグ酸等の芳香族化合物とエステル結合を形成したもので、その構造は多種多様で複雑である。加水分解型タンニンについても、数百種類以上に及ぶが、本件発明ではそのいずれの種類の加水分解型タンニンを用いてもよい。代表的な化合物として、以下の構造式で示される加水分解型タンニンが挙げられる。
Figure 0006413194
本件発明において、縮合型タンニン又は加水分解型タンニンのいずれも主剤として好ましく用いることができるが、本件発明では主剤として縮合型タンニンを用いることが特に好ましい。縮合型タンニンは、アルカリ剤や環境の変化に対して主骨格の化学構造が変化しづらく、同時に脱酸素反応に関わる官能基が保持されるため、保存品の長期保存のために用いる脱酸素剤の用途において、脱酸素性能力を安定して維持できるためである。
(2)アルカリ剤
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、アルカリ剤は脱酸素反応を進めるために必須の成分である。本発明に係る有機系脱酸素剤では、アルカリ剤として、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の有機系脱酸素剤において従来用いられてきた公知のアルカリ剤はいずれも用いることができる。これらのいずれの物質をアルカリ剤として用いてもよいが、本件発明では、特に、水酸化カルシウムをアルカリ剤として用いることが好ましい。水酸化カルシウムは、従来の有機系脱酸素剤に使われてきた他のアルカリ剤と比べて、主剤であるタンニン又はタンニン酸に対して加水分解等の反応を引き起こすことも少なく、タンニン又はタンニン酸の脱酸素反応に関わる官能基を保持することができると考えられる。また、水との相互作用により脱酸素反応を生じさせるためのpHを安定化することができ、安定した脱酸素反応を行わせることができると考えられるためである。
当該有機系脱酸素剤において、アルカリ剤の含有量は、主剤100質量部に対して、所望の脱酸素性能を得るために1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上120質量部以下であることがさらに好ましい。当該有機系脱酸素剤において、他の成分の配合量と、アルカリ剤の強度に応じて、適宜、所望の脱酸素性能を発揮する上で適切な量に調整することが好ましい。特に、アルカリ剤として、水酸化カルシウムを用いる場合、所望の脱酸素性能を得ると共にトリエタノールアミンを添加した際の低温特性をさらに向上させるという観点から、当該水酸化カルシウムの含有量は主剤100質量部に対して15質量部以上80質量部以下の範囲内であることが好ましく、30質量部以上60質量部以下の範囲内であることがより好ましい。
(3)水
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、水は必須成分である。水は、脱酸素剤を構成する組成物を馴染ませ、反応の場を提供するものであり、主剤を100質量部としたとき、水を10質量部以上200質量部以下含むものが好ましい。特に、トリエタノールアミンを添加したときの低温特性をさらに向上させるという観点から、主剤を100質量部としたときの水の含有量は、50質量部以上150質量部以下の範囲内であることがより好ましく、100質量部以上135質量部以下の範囲内であることが好ましい。本件発明に係る有機系脱酸素剤では、トリエタノールアミンを添加することにより、後述するとおり造粒効果を得ることができ、主剤に対する水分の含有量を高くしても、実用上許容される流動性を保つことができる。主剤を100質量部としたとき、水の含有量が10質量部未満であると、有機系脱酸素剤の組成物が馴染みにくく、反応の場が十分に提供されないため、脱酸素性能が低下する。なお、本件発明に係る有機系脱酸素剤は、通気性を有する包装材に封入した状態で使用するので、当該有機系脱酸素剤の水分が不足する場合は、保存品に含まれる水分を吸収して脱酸素性能力を発揮することも可能である。この点を考慮しても水の含有量の下限値は、主剤100質量部に対して10質量部となる。一方、主剤を100質量部としたとき、水を200質量部より多く含むと、流動性が低下して包装材への自動充填包装に適さない。
(4)トリエタノールアミン
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、主剤100質量部に対してトリエタノールアミンを0.5質量部以上55質量部以下含有することにより、タンニン又はタンニン酸を主剤としたときの脱酸素反応を促進させることができる。また、当該範囲で用いた場合、造粒効果が見られ、製造効率を向上することができる。
トリエタノールアミンを配合することにより低温特性が向上する理由は現時点では定かではないが、アルカリ剤共存下において、トリエタノールアミンを添加することにより、トリエタノールアミンが反応促進剤としての効果を発揮し、常温下における脱酸素反応を良好にすることができる。また、トリエタノールアミンを添加することにより、低温下においてもタンニン又はタンニン酸が雰囲気中の酸素と速やかに反応し、低温下においても十分な脱酸素性能を発現させることができる。トリエタノールアミンの含有量が上記範囲外である場合は、トリエタノールアミンを添加しても、トリエタノールアミンを添加しない場合と比較しても低温下における有意な脱酸素速度の向上効果を得ることができない。
また、有機系脱酸素剤を主剤であるタンニン又はタンニン酸、アルカリ剤及び水から構成し、トリエタノールアミンを含まない場合、これら有機系脱酸素剤原料を充填包装機により充填包装する際に、粉立ちが生じたり、ブロッキングして流動性が低下したり、混練状態にムラが生じたり、包装材への封入時にシール部に粉体が噛み込んでシールが不完全となり、外観を損ねたり、粉漏れ等により不良品が発生するなどの不具合が生じる場合があった。一方、トリエタノールアミンを主剤、アルカリ剤及び水と共に有機系脱酸素剤の原料として用いることにより、混練/混合時にこれらの原料粉体同士が互いに接触して凝集成長することにより粒状になる造粒効果が発現し、上述した各課題が解消される。このため、包装材への封入時における有機系脱酸素剤供給速度を従来に比して速くすることができ、シール部への噛み込みも防ぐことができることから、製造効率が向上し、且つ、歩留まりも向上する。さらに、造粒効果が得られるためか、包装材表面に液が染み出したように色が濃く見える、いわゆる「染み出し」を抑制することができ、外観の良好な製品を得ることができる。
ここで、トリエタノールアミンの添加量が多い程、得られる粒子の径が大きくなる傾向にある。上記範囲を超えてトリエタノールアミンを使用した場合、混練時に原料が大きく成長し、包装材への充填が困難になる。また、原料が塊状になると空気との接触面積が減少し、本来の脱酸素性能を発揮することができなくなる恐れもあり、好ましくない。一方、トリエタノールアミンの添加量が上記下限値未満になると、得られる粒子の径が小さくなり、粉立ち等を抑制することが困難になる場合がある。上記範囲でトリエタノールアミンを使用することにより、製品の製造に良好であり、且つ、脱酸素性能を発揮する上でも良好な0.1mm〜3mm程度の径の粒子状にすることができる。これらの観点から、トリエタノールアミンの添加量は、主剤100質量部に対して、48質量部以下であることが好ましく、42質量部以下であることがより好ましく、37質量部以下であることがさらに好ましい。また、製品の製造により良好な径の粒子状の原料を得ることができるという観点から、トリエタノールアミンの添加量は、主剤100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。
一方、上記低温特性の向上を図る上で、トリエタノールアミンの含有量は0.5質量部以上であればよく、上限値は上記造粒効果が十分に得られる値であることが好ましく、さらに、主剤100質量部に対して25質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましい。このとき、主剤に対するトリエタノールアミンの含有量を調整とすると共に、主剤に対する水及びアルカリ剤の含有量についても調整することにより、低温下における脱酸素性能のより高い有機系脱酸素剤を得ることができる。
(5)活性炭
さらに、本件発明に係る有機系脱酸素剤は、その構成成分として活性炭を含有してもよい。この場合、活性炭に水分を担持させることができるため、上記染み出しをさらに抑制することができる。活性炭の含有量は、主剤100質量部に対して50質量部以下が好ましく、35質量部以下であることが好ましい。活性炭の含有量が50質量部を超えると脱酸素反応速度が低下することがあり、好ましくない。特に、主剤100質量部に対して活性炭を0.1質量部以上20質量部以下の範囲内で含む場合、低温下における有機系脱酸素剤の脱酸素速度がより向上するため好ましい。
(6)反応触媒
本件発明に係る有機系脱酸素剤では、トリエタノールアミン自体が脱酸素反応を促進する反応促進剤としての機能を有するため、反応速度を高めるための反応触媒を用いなくとも、常温下は勿論、低温下においても脱酸素速度の速い有機系脱酸素剤を得ることができる。しかしながら、必要に応じて有機系脱酸素剤の反応触媒として用いられる他の有機系触媒、無機系触媒などを含有させても良い。このような有機系触媒としては、ナフトヒドロキノン、フロログリシン、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、5−メチルレゾルシン等が挙げられる。また、無機系触媒としては、鉄、ニッケル、銅、マンガン等の遷移金属の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、又は複塩等が挙げられる。これらの中でも、反応触媒を添加する場合は、有機系触媒がより好ましい。有機系触媒を用いることにより、反応触媒が金属探知機に検知されるのを防止することができるためである。反応触媒を添加する場合、主剤を100質量部としたとき15質量部以下の含有量とすることが好ましい。
(7)pH
これらの各成分を混合した後の有機系脱酸素剤のpHは、9〜12であることが好ましい。本件発明に係る有機系脱酸素剤は、タンニン又はタンニン酸を主剤として用いており、pHがこの範囲であると、タンニン又はタンニン酸が安定して存在し、脱酸素性能を安定させることができる。また、トリエタノールアミンはpH調整剤としての役割も担い、トリエタノールアミンを添加することでタンニンの脱酸素反応を安定化させることができる。
2.有機系脱酸素剤の製造方法
次に、上記有機系脱酸素剤の製造方法について説明する。本件発明に係る有機系脱酸素剤は、主剤、トリエタノールアミン及び水を混練した後、アルカリ剤を添加してこれらを混練する。このとき、必要に応じて反応触媒も加えて混練する。本件発明に係る有機系脱酸素剤の場合、上述したとおり、トリエタノールアミンにより造粒効果が発現されるため、これらの原料を混練する過程で各粉体同士が接触し、凝集成長して上述のとおり0.1mm〜3mm程度の径の粒子状になる。その後、袋状にした通気性包材に充填包装機等により充填包装することにより、製品としての有機系脱酸素剤包装体が得られる。但し、活性炭を添加する場合は、主剤、水及びトリエタノールアミン等の混練物に対して、アルカリ剤を添加した後、活性炭を添加してこれら全ての有機脱酸素剤原料を混練してもよいし、通気性包材に充填包装する際に、活性炭を除く他の有機得脱酸素剤原料を混練したものと、活性炭とを混合した上で、或いは混合せずに、これらを充填してもよい。活性炭は、活性炭を除く他の有機系脱酸素剤原料と、通気性包材内で同時に存在していればよく、その混合の態様等については特に限定されるものではない。
通気性包装材は、酸素透過性を有するシート状、或いはフィルム状の包装材であればどのようなものであってもよく、有孔樹脂フィルム、紙、不織布などの適度な通気性を有するものであればいずれも使用することができる。特に、通気性に加えて、ヒートシール性を兼ね備えた包装材が好適であり、例えば、有孔(ポリエステル/ポリエチレン)フィルム、紙、有孔ポリエチレンフィルムの順にラミネートした積層体や、紙又は不織布と、有孔ポリエチレンフィルムとをラミネートした積層体等であることが好ましい。その他、ポリエチレン不織布等も使用することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
縮合型タンニン(ケブラチョ抽出タンニン)100質量部、トリエタノールアミン7質量部、水114質量部を混練した後、水酸化カルシウム47質量部を添加し、これらを混練して有機系脱酸素剤原料とした。得られた有機系脱酸素剤原料を活性炭2質量部と共に、外寸65mm×55mmの三方をシールした通気性包装材袋(シール幅5mm)に充填し、開口部を熱ラミネートによりシールして封入し、有機系脱酸素剤包装体とした。但し、上記において各成分の添加量は、それぞれ主剤であるタンニンの量を100質量部としたときの値であり、以下の実施例においても同様とする。また、一つの有機系脱酸素剤包装体には、上記有機系脱酸素剤原料と、活性炭との混合物、すなわち本件発明にいう有機系脱酸素剤を3.8g充填した。さらに、通気性包装材として、有孔(ポリエステル/ポリエチレン)/紙/有孔ポリエチレンの4層ラミネート構造で、ガーレ式透気度が6000〜10000秒/100mlを示すものを用いた。
実施例2では、トリエタノールアミンの添加量を主剤100質量部に対して、0.7質量部にしたことを除いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
[参考例]
[参考例1]
参考例1として、トリエタノールアミンの添加量を主剤100質量部に対して、20質量部にしたことを除いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
参考例2として、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてグリセリンを主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。さらに、トリエタノールアミンの代わりに、主剤100質量部に対して、0.5質量部以上55質量部の範囲でグリセリンの量を変化させた以外は実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。
比較例
[比較例1]
比較例1では、トリエタノールアミンを含まないことを除いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様に有機系脱酸素剤包装体を製造した。
[比較例2]
比較例2では、トリエタノールアミンの添加量を主剤100質量部に対して、60質量部にしたことを除いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様に有機系脱酸素剤包装体を製造した。
[比較例3]
比較例3では、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてゼラチンを主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
[比較例4]
比較例4では、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてポリアクリル酸(PA)を主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
[比較例5]
比較例5では、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてポリビニルアルコール(PVA)を主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
〈評価〉
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例5で製造した各有機系脱酸素剤包装体を用いて、本件発明に係る有機系脱酸素剤の脱酸素性能を評価した。また、これらを製造する際に用いたトリエタノールアミン等の造粒効果についても評価した。評価方法及び評価結果はそれぞれ以下のとおりである。
1.評価方法
1−1.脱酸素性能
各有機系脱酸素剤の脱酸素性能は次のようにして評価した。この有機系脱酸素剤包装体を、ポリ塩化ビニリデンコート/ポリエチレンラミネートフィルムのガスバリア性の袋(220×300mm)に入れ、空気500mlを充填して密封した密封袋を複数個作製した。
得られた有機系脱酸素剤包装体の室温における脱酸素性能を評価するため、各密封袋を25℃に保持し、4時間後及び8時間後の各袋内の酸素濃度(%)を東レエンジニアリング株式会社製ジルコニア式酸素濃度計LC−700Fを用いて測定した。そして、低温下における脱酸素性能を評価するため、5℃に保持した密封袋についても、24時間後及び48時間後の各袋内の酸素濃度(%)を上記と同様に測定した。
さらに、各有機系脱酸素剤包装体1包当たりの酸素吸収量を測定するために、上記と同様にして各有機系脱酸素剤包装体を空気1500mlを充填して密封した密封袋を作製し、これを25℃に保持し、7日経過後の酸素吸収量を測定した。
1−2.造粒効果
各実施例及び各比較例において、得られた有機系脱酸素剤原料を株式会社トパック製の充填包装機(R−35型)を用いて通気性包装材袋に充填包装するときの粉立ちの有無、流動性等を観察した。また、活性炭と共に当該有機系脱酸素剤原料を通気性包装材袋に封入する際に、シール部への粉体の噛み込みの有無を確認した。
2.評価結果
2−1.脱酸素性能
(1)トリエタノールアミンと他の化合物(ゼラチン、PA及びPVA)
表1に、実施例1、比較例1及び比較例3〜比較例5で製造した各有機系脱酸素剤の常温(25℃)及び低温(5℃)における所定時間経過後の密封袋内の酸素濃度(%)及び各有機系脱酸素剤包装体1包当たりの酸素吸収量(ml)を示す。
実施例1、比較例1及び比較例3〜比較例5で製造した有機系脱酸素剤はいずれも主剤、アルカリ剤、水及び活性炭の配合量は同じである。一方、実施例1では反応促進剤及び造粒剤等として機能するトリエタノールアミンを主剤100質量部に対して7質量部用いたのに対して比較例1及び比較例3〜比較例5では、それぞれトリエタノールアミンに代えて、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールを同質量部用いた。また、比較例1では、トリエタノールアミン及び他の化合物を配合しなかった以外は、実施例1の有機系脱酸素剤と同じ組成を有する。
実施例1の有機系脱酸素剤と比較例1の有機系脱酸素剤とを比較すると、トリエタノールアミンを配合した実施例1の有機系脱酸素剤は、常温下及び低温下のいずれにおいても密封袋内の酸素濃度が低く脱酸素速度が速いことが分かる。また、常温で保持したときの1包当たりの酸素吸収量も多いことが分かる。また、トリエタノールアミンの代わりに、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールを配合した比較例3〜比較例5の有機系脱酸素剤は常温及び低温のいずれの場合も実施例1の有機系脱酸素剤と比較すると脱酸素速度が遅くなり、酸素吸収量も少なくなることが確認された。以上より、常温下において有機系脱酸素剤の脱酸素性能を向上する上では、水、主剤、アルカリ剤(及び活性炭)に加えて、トリエタノールアミン及びグリセリンを配合することが好ましく、トリエタノールアミンを配合すれば低温下においても十分な脱酸素性能を発揮させることができ、低温特性が向上することが確認された。
Figure 0006413194
(2)トリエタノールアミンの配合量
次に、表2に、実施例1〜実施例2、比較例1及び比較例2で製造した各有機系脱酸素剤の常温(25℃)及び低温(5℃)における所定時間経過後の密封袋内の酸素濃度(%)及び各有機系脱酸素剤包装体1包当たりの酸素吸収量(ml)を示す。実施例1〜実施例2、比較例1及び比較例2で製造した有機系脱酸素剤はいずれもトリエタノールアミンの配合量が異なることを除いて、他の成分(主剤、アルカリ剤、水及び活性炭)の配合量は同じである。
表2を参照すると、常温下においては、実施例1〜実施例2の有機系脱酸素剤は、トリエタノールアミンが配合されていない比較例1の有機系脱酸素剤と比較すると、脱酸素速度が速く、且つ、酸素吸収量が高いことが分かる。一方、実施例1及び実施例2の有機系脱酸素剤は、低温下においても比較例1の有機系脱酸素剤よりも脱酸素速度が速い。一方、比較例2の有機系脱酸素剤は、実施例1の有機系脱酸素剤と比較すると、常温下及び低温下のいずれにおいても脱酸素速度が遅く、1包当たりの酸素吸収量も低い。以上のことから、低温特性を向上するには、主剤100質量部に対して、他の成分の配合量が実施例1〜実施例2の場合、トリエタノールアミンを0.5質量部以上20質量部未満の範囲内で用いることが好ましいと考えられ、15質量部以下であることがより好ましいと推測される。
Figure 0006413194
2−2.造粒効果
(1)トリエタノールアミンと他の化合物
まず、実施例1と比較例3〜比較例5の各有機系脱酸素剤を対比する。これらの有機系脱酸素剤を製造した際に、上述のとおり、各成分を混練して有機系脱酸素剤原料を得た。このとき、トリエタノールアミンを用いた実施例1では、各成分を混練することにより、0.5mm〜3mm程度の径の粒子状に凝集し、いわゆる造粒効果が得られることが確認された。また、上記充填包装機で通気性包装材袋に充填包装したところ、粉立ちや流動性の低下が生じることなく、シール部に粉体が噛み込むこともなかった。さらに、通気性包装材袋の表面にいわゆる染み出しもなく、外観の良好な製品を得ることができた。また、グリセリンを用いた場合においても、これらの造粒効果が得られた。以上より、トリエタノールアミンとグリセリンについては造粒効果が確認された。
一方、トリエタノールアミン及び他の化合物を用いていない比較例1では、粉立ちが生じ、ブロッキングが生じて流動性が低下し、充填包装機により十分に充填包装することができなかった。また、通気性包装材袋に封入する際にシール部に粉体が噛み込み、完全にシールすることができないものがあり、良好な歩留まりを得ることができなかった。さらに、トリエタノールアミンの代わりに、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールを用いた比較例3〜比較例5は、充填包装の際の粉立ちや流動性の低下を抑制することができ、上記造粒効果が見られた。しかしながら、上述したとおり、実施例1と比較するとこれらの脱酸素能は低い。
(2)トリエタノールアミンの配合量
次に、実施例1〜実施例2、比較例1及び比較例2の各有機系脱酸素剤を対比する。これらの有機系脱酸素剤は、上述したとおり、トリエタノールアミンの配合量が異なる。トリエタノールアミンを含有しない比較例1については上述したとおりである。また、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.7質量部用いた実施例2においても上記造粒効果が確認され、充填包装機を用いて通気性包装材袋に充填包装する際の粉立ちや流動性の低下を抑制することができた。しかしながら、実施例1と比較すると小さな粒子にしか成長しなかった。このため、シール部に微粉が噛み込み、完全にシールすることのできないものが僅かに発生した。また、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを60質量部用いた比較例2では各成分を混練する際に、有機系脱酸素剤原料が塊状に凝集してしまい、充填包装に適した大きさの粒子状にすることができなかった。
2−3.まとめ
以上の評価結果から、主剤、アルカリ剤及び水と共にトリエタノールアミンを用いることにより、常温下及び低温下における脱酸素性能を向上させることができ、トリエタノールアミンを用いない場合と比較すると造粒効果が得られ、製造効率及び歩留まりを向上させることができ、染み出しを防止することが確認された。しかしながら、より良好な造粒効果を得る上では、トリエタノールアミンを主剤100質量部に対して、少なくとも1質量部以上用いることが好ましいと考えられ、3質量部以上用いることでより良好になると考えられる。一方、トリエタノールアミンに代えてグリセリンを用いた場合にも、常温下における脱酸素性能の向上や造粒効果が確認されており、製品に要求されるレベルの低温特性を満足していることが確認された。トリエタノールアミンに代えて、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールを用いれば、このような化合物を用いない場合と比較すると、充填包装時の粉立ち等を抑制することはできたが、常温下及び低温下のいずれにおいても脱酸素性能が低下した。
本件発明に係る有機系脱酸素剤は、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で含有させることにより、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤において、低温下においても十分な脱酸素性能を発揮させることができる。また、タンニン又はタンニン酸を主剤とする有機系脱酸素剤において、トリエタノールアミンを配合することにより、造粒効果が得られ、充填包装時における粉立ちを抑制し、流動性も良好であるため包装袋への充填包装が容易になり、製造効率を向上させることができる。また、造粒効果が得られるためか、包装材に有機系脱酸素剤を封入した場合にも、この包装材の表面に液が染み出したように色が濃く見える、いわゆる「染み出し」を抑制することができる。

Claims (6)

  1. タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤であって、
    当該主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で含有することを特徴とする有機系脱酸素剤。
  2. 前記主剤が縮合型タンニンである請求項1に記載の有機系脱酸素剤。
  3. 主剤100質量部に対して、アルカリ剤を1質量部以上200質量部以下、水を10質量部以上200質量部以下含む請求項1又は請求項2に記載の有機系脱酸素剤。
  4. 前記アルカリ剤が水酸化カルシウムであり、主剤100質量部に対して、水酸化カルシウムを30質量部以上60質量部以下、水を100質量部以上135質量部以下含む請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機系脱酸素剤。
  5. 主剤100質量部に対して、活性炭を0.1質量部以上20質量部以下の範囲で含有する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の有機系脱酸素剤。
  6. タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤の製造方法であって、
    当該主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上7質量部以下の範囲で用い、
    主剤、トリエタノールアミン及び水を混練した後、アルカリ剤を添加して、これらを混練することを特徴とする有機系脱酸素剤の製造方法。
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