JP2016055225A - 有機系脱酸素剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上記課題を解決するために、タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤であって、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上55質量部以下の範囲で含有することを特徴とする有機系脱酸素剤とする。
【選択図】なし
Description
本件発明に係る有機系脱酸素剤は、タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤であって、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上55質量部以下の範囲で含有することを特徴としている。以下、各成分について説明する。
タンニン又はタンニン酸は、フェノール性水酸基を1個以上含有するベンゼン環が化学構造式中に2個以上含まれる複合化合物(ポリフェノール化合物)であり、空気中の酸素により容易に酸化される易酸化性有機物質である。タンニン又はタンニン酸は、化学的合成により製造されたもの、植物の果実、葉や花、樹皮等より抽出されたもののいずれでも良い。植物より抽出されたタンニン又はタンニン酸としては、例えば、ケブラチョ、ワットル(ミモザ)、栗材、ミロバラン、ガンビール、ヘムロック、オーク等から抽出したものが挙げられる。安全性が高く、所望の脱酸素性能が得られるという観点から、特に植物より抽出されたタンニン又はタンニン酸を用いることが好ましい。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、アルカリ剤は脱酸素反応を進めるために必須の成分である。本発明に係る有機系脱酸素剤では、アルカリ剤として、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の有機系脱酸素剤において従来用いられてきた公知のアルカリ剤はいずれも用いることができる。これらのいずれの物質をアルカリ剤として用いてもよいが、本件発明では、特に、水酸化カルシウムをアルカリ剤として用いることが好ましい。水酸化カルシウムは、従来の有機系脱酸素剤に使われてきた他のアルカリ剤と比べて、主剤であるタンニン又はタンニン酸に対して加水分解等の反応を引き起こすことも少なく、タンニン又はタンニン酸の脱酸素反応に関わる官能基を保持することができると考えられる。また、水との相互作用により脱酸素反応を生じさせるためのpHを安定化することができ、安定した脱酸素反応を行わせることができると考えられるためである。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、水は必須成分である。水は、脱酸素剤を構成する組成物を馴染ませ、反応の場を提供するものであり、主剤を100質量部としたとき、水を10質量部以上200質量部以下含むものが好ましい。特に、トリエタノールアミンを添加したときの低温特性をさらに向上させるという観点から、主剤を100質量部としたときの水の含有量は、50質量部以上150質量部以下の範囲内であることがより好ましく、100質量部以上135質量部以下の範囲内であることが好ましい。本件発明に係る有機系脱酸素剤では、トリエタノールアミンを添加することにより、後述するとおり造粒効果を得ることができ、主剤に対する水分の含有量を高くしても、実用上許容される流動性を保つことができる。主剤を100質量部としたとき、水の含有量が10質量部未満であると、有機系脱酸素剤の組成物が馴染みにくく、反応の場が十分に提供されないため、脱酸素性能が低下する。なお、本件発明に係る有機系脱酸素剤は、通気性を有する包装材に封入した状態で使用するので、当該有機系脱酸素剤の水分が不足する場合は、保存品に含まれる水分を吸収して脱酸素性能力を発揮することも可能である。この点を考慮しても水の含有量の下限値は、主剤100質量部に対して10質量部となる。一方、主剤を100質量部としたとき、水を200質量部より多く含むと、流動性が低下して包装材への自動充填包装に適さない。
本件発明に係る有機系脱酸素剤において、主剤100質量部に対してトリエタノールアミンを0.5質量部以上55質量部以下含有することにより、タンニン又はタンニン酸を主剤としたときの脱酸素反応を促進させることができる。また、当該範囲で用いた場合、低温特性の向上や造粒効果が見られ、低温下でも十分な脱酸素性能を発現させることができると共に、製造効率を向上することができる。
さらに、本件発明に係る有機系脱酸素剤は、その構成成分として活性炭を含有してもよい。この場合、活性炭に水分を担持させることができるため、上記染み出しをさらに抑制することができる。活性炭の含有量は、主剤100質量部に対して50質量部以下が好ましく、35質量部以下であることが好ましい。活性炭の含有量が50質量部を超えると脱酸素反応速度が低下することがあり、好ましくない。特に、主剤100質量部に対して活性炭を0.1質量部以上20質量部以下の範囲内で含む場合、低温下における有機系脱酸素剤の脱酸素速度がより向上するため好ましい。
本件発明に係る有機系脱酸素剤では、トリエタノールアミン自体が脱酸素反応を促進する反応促進剤としての機能を有するため、反応速度を高めるための反応触媒を用いなくとも、常温下は勿論、低温下においても脱酸素速度の速い有機系脱酸素剤を得ることができる。しかしながら、必要に応じて有機系脱酸素剤の反応触媒として用いられる他の有機系触媒、無機系触媒などを含有させても良い。このような有機系触媒としては、ナフトヒドロキノン、フロログリシン、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、5−メチルレゾルシン等が挙げられる。また、無機系触媒としては、鉄、ニッケル、銅、マンガン等の遷移金属の塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、又は複塩等が挙げられる。これらの中でも、反応触媒を添加する場合は、有機系触媒がより好ましい。有機系触媒を用いることにより、反応触媒が金属探知機に検知されるのを防止することができるためである。反応触媒を添加する場合、主剤を100質量部としたとき15質量部以下の含有量とすることが好ましい。
これらの各成分を混合した後の有機系脱酸素剤のpHは、9〜12であることが好ましい。本件発明に係る有機系脱酸素剤は、タンニン又はタンニン酸を主剤として用いており、pHがこの範囲であると、タンニン又はタンニン酸が安定して存在し、脱酸素性能を安定させることができる。また、トリエタノールアミンはpH調整剤としての役割も担い、トリエタノールアミンを添加することでタンニンの脱酸素反応を安定化させることができる。
次に、上記有機系脱酸素剤の製造方法について説明する。本件発明に係る有機系脱酸素剤は、主剤、トリエタノールアミン及び水を混練した後、アルカリ剤を添加してこれらを混練する。このとき、必要に応じて反応触媒も加えて混練する。本件発明に係る有機系脱酸素剤の場合、上述したとおり、トリエタノールアミンにより造粒効果が発現されるため、これらの原料を混練する過程で各粉体同士が接触し、凝集成長して上述のとおり0.1mm〜3mm程度の径の粒子状になる。その後、袋状にした通気性包材に充填包装機等により充填包装することにより、製品としての有機系脱酸素剤包装体が得られる。但し、活性炭を添加する場合は、主剤、水及びトリエタノールアミン等の混練物に対して、アルカリ剤を添加した後、活性炭を添加してこれら全ての有機脱酸素剤原料を混練してもよいし、通気性包材に充填包装する際に、活性炭を除く他の有機得脱酸素剤原料を混練したものと、活性炭とを混合した上で、或いは混合せずに、これらを充填してもよい。活性炭は、活性炭を除く他の有機系脱酸素剤原料と、通気性包材内で同時に存在していればよく、その混合の態様等については特に限定されるものではない。
参考例として、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてグリセリンを主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。さらに、トリエタノールアミンの代わりに、主剤100質量部に対して、0.5質量部以上55質量部の範囲でグリセリンの量を変化させた以外は実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。
比較例1では、トリエタノールアミンを含まないことを除いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様に有機系脱酸素剤包装体を製造した。
比較例2では、トリエタノールアミンの添加量を主剤100質量部に対して、60質量部にしたことを除いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様に有機系脱酸素剤包装体を製造した。
比較例3では、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてゼラチンを主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
比較例4では、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてポリアクリル酸(PA)を主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
比較例5では、トリエタノールアミンの代わりに、反応促進剤又は造粒剤としてポリビニルアルコール(PVA)を主剤100質量部に対して、7質量部用いた以外は、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤を得た。得られた有機系脱酸素剤を用いて、実施例1と同様にして有機系脱酸素剤包装体を製造した。
実施例1〜実施例3、比較例1〜比較例5で製造した各有機系脱酸素剤包装体を用いて、本件発明に係る有機系脱酸素剤の脱酸素性能を評価した。また、これらを製造する際に用いたトリエタノールアミン等の造粒効果についても評価した。評価方法及び評価結果はそれぞれ以下のとおりである。
1−1.脱酸素性能
各有機系脱酸素剤の脱酸素性能は次のようにして評価した。この有機系脱酸素剤包装体を、ポリ塩化ビニリデンコート/ポリエチレンラミネートフィルムのガスバリア性の袋(220×300mm)に入れ、空気500mlを充填して密封した密封袋を複数個作製した。
各実施例及び各比較例において、得られた有機系脱酸素剤原料を株式会社トパック製の充填包装機(R−35型)を用いて通気性包装材袋に充填包装するときの粉立ちの有無、流動性等を観察した。また、活性炭と共に当該有機系脱酸素剤原料を通気性包装材袋に封入する際に、シール部への粉体の噛み込みの有無を確認した。
2−1.脱酸素性能
(1)トリエタノールアミンと他の化合物(ゼラチン、PA及びPVA)
表1に、実施例1、比較例1及び比較例3〜比較例5で製造した各有機系脱酸素剤の常温(25℃)及び低温(5℃)における所定時間経過後の密封袋内の酸素濃度(%)及び各有機系脱酸素剤包装体1包当たりの酸素吸収量(ml)を示す。
次に、表2に、実施例1〜実施例3、比較例1及び比較例2で製造した各有機系脱酸素剤の常温(25℃)及び低温(5℃)における所定時間経過後の密封袋内の酸素濃度(%)及び各有機系脱酸素剤包装体1包当たりの酸素吸収量(ml)を示す。実施例1〜実施例3、比較例1及び比較例2で製造した有機系脱酸素剤はいずれもトリエタノールアミンの配合量が異なることを除いて、他の成分(主剤、アルカリ剤、水及び活性炭)の配合量は同じである。
(1)トリエタノールアミンと他の化合物
まず、実施例1と比較例3〜比較例5の各有機系脱酸素剤を対比する。これらの有機系脱酸素剤を製造した際に、上述のとおり、各成分を混練して有機系脱酸素剤原料を得た。このとき、トリエタノールアミンを用いた実施例1では、各成分を混練することにより、0.5mm〜3mm程度の径の粒子状に凝集し、いわゆる造粒効果が得られることが確認された。また、上記充填包装機で通気性包装材袋に充填包装したところ、粉立ちや流動性の低下が生じることなく、シール部に粉体が噛み込むこともなかった。さらに、通気性包装材袋の表面にいわゆる染み出しもなく、外観の良好な製品を得ることができた。また、グリセリンを用いた場合においても、これらの造粒効果が得られた。以上より、トリエタノールアミンとグリセリンについては造粒効果が確認された。
次に、実施例1〜実施例3、比較例1及び比較例2の各有機系脱酸素剤を対比する。これらの有機系脱酸素剤は、上述したとおり、トリエタノールアミンの配合量が異なる。トリエタノールアミンを含有しない比較例1については上述したとおりである。また、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.7質量部用いた実施例2においても上記造粒効果が確認され、充填包装機を用いて通気性包装材袋に充填包装する際の粉立ちや流動性の低下を抑制することができた。しかしながら、実施例1と比較すると小さな粒子にしか成長しなかった。このため、シール部に微粉が噛み込み、完全にシールすることのできないものが僅かに発生した。また、主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを60質量部用いた比較例2では各成分を混練する際に、有機系脱酸素剤原料が塊状に凝集してしまい、充填包装に適した大きさの粒子状にすることができなかった。
以上の評価結果から、主剤、アルカリ剤及び水と共にトリエタノールアミンを用いることにより、常温下及び低温下における脱酸素性能を向上させることができ、トリエタノールアミンを用いない場合と比較すると造粒効果が得られ、製造効率及び歩留まりを向上させることができ、染み出しを防止することが確認された。しかしながら、より良好な造粒効果を得る上では、トリエタノールアミンを主剤100質量部に対して、少なくとも1質量部以上用いることが好ましいと考えられ、3質量部以上用いることでより良好になると考えられる。一方、トリエタノールアミンに代えてグリセリンを用いた場合にも、常温下における脱酸素性能の向上や造粒効果が確認されており、製品に要求されるレベルの低温特性を満足していることが確認された。トリエタノールアミンに代えて、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールを用いれば、このような化合物を用いない場合と比較すると、充填包装時の粉立ち等を抑制することはできたが、常温下及び低温下のいずれにおいても脱酸素性能が低下した。
Claims (6)
- タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤であって、
当該主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上55質量部以下の範囲で含有することを特徴とする有機系脱酸素剤。 - 前記主剤が縮合型タンニンである請求項1に記載の有機系脱酸素剤。
- 主剤100質量部に対して、アルカリ剤を1質量部以上200質量部以下、水を10質量部以上200質量部以下含む請求項1又は請求項2に記載の有機系脱酸素剤。
- 前記アルカリ剤が水酸化カルシウムであり、主剤100質量部に対して、水酸化カルシウムを30質量部以上60質量部以下、水を100質量部以上135質量部以下含む請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機系脱酸素剤。
- 主剤100質量部に対して、活性炭を0.1質量部以上20質量部以下の範囲で含有する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の有機系脱酸素剤。
- タンニン又はタンニン酸を主剤とし、当該主剤とアルカリ剤と水とを含有する有機系脱酸素剤の製造方法であって、
当該主剤100質量部に対して、トリエタノールアミンを0.5質量部以上5質量部以下の範囲で用い、
主剤、トリエタノール及び水を混練した後、アルカリ剤を添加して、これらを混練することを特徴とする有機系脱酸素剤の製造方法。
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