次に、吸収性物品の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では、吸収性物品として使い捨ておむつを例に挙げて説明する。しかしながら、本発明の吸収性物品は、使い捨ておむつに限定されない。
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
(1)使い捨ておむつの概略全体構成
図1は、一実施形態に係る使い捨ておむつ10の展開平面図である。図2は、図1に示したF1−F1線に沿った使い捨ておむつ10の断面図である。図1に示す展開図は、使い捨ておむつを構成するトップシート50、サイドフラップ70等の皺がなくなる状態まで、レッグ伸縮部75及びレッグサイド伸縮部80の弾性部材を伸長させた状態の図である。
使い捨ておむつ10は、前胴周り域20と、股下域25と、後胴周り域30と、を有する。前胴周り域20は、着用者の前胴周り部(腹部分)と接する部分である。また、後胴周り域30は、着用者の後胴周り部(背部分)と接する部分である。股下域25は、前胴周り域20と後胴周り域30との間に位置する。
使い捨ておむつ10は、一対のレッグ開口部35を有する。レッグ開口部35は、使い捨ておむつの幅方向Wにおける外側縁に設けられている。レッグ開口部35は、使い捨ておむつ10が着用者に着用された状態で、着用者の脚周りに沿って配置される部分である。
なお、本実施形態では、前胴周り域20から後胴周り域30に向かう方向を長手方向Lと呼ぶ。また、長手方向Lと直交する方向を幅方向Wと呼ぶ。
使い捨ておむつ10、吸収体40を有する。吸収体40は、吸収コア40aとコアラップ40bとを有していてよい。吸収コア40aは、少なくとも股下域25に設けられている。吸収コア40aは、股下域25から前胴周り域20及び後胴周り域30のうち少なくともいずれか一方に向かって延びていてよい。
吸収コア40aは、粉砕パルプや高吸収ポリマーなどの材料を用いて適宜構成することができる。吸収コア40aは、シート状のコアラップ40bによって包まれていてよい。
使い捨ておむつ10は、トップシート50、バックシート60a及び外装シート60を有していてよい。トップシート50は、吸収体40の表面側(肌対向面側)に設けられる。トップシート50は、液透過性を有していてよい。バックシート60aは、吸収体40の裏面側(非肌対向面側)に設けられる。バックシート60aは、液不透過性を有していてよい。外装シート60は、バックシート60aの裏面側に設けられる。
使い捨ておむつ10は、幅方向Wにおける吸収体40の両外側縁に、サイドフラップ70を有していてよい。サイドフラップ70は、長手方向Lにおいて前胴周り域20から後胴周り域30まで延びている。サイドフラップ70は、幅方向Wにおいて吸収体40よりも外側に配置される。サイドフラップ70は、1枚又は複数枚重ねられた不織布によって構成されている。サイドフラップ70は、吸収コア40aよりも肌対向面側に位置し、吸収コア40aよりも幅方向Wの外側に延びていてよい。サイドフラップ70の内側縁(幅方向Wの内側端)は、吸収コア40aの一部を覆っていてよい。サイドフラップ70の外側縁は、吸収コア40aよりも幅方向Wの外側に配置されていてよい。
サイドフラップ70には、レッグ開口部35よりも幅方向Wの内側に配置され、長手方向Lに伸縮可能な一対のレッグ伸縮部75が備えられていてよい。レッグ伸縮部75は、レッグ開口部35を長手方向に伸縮できるように構成されていればよい。一対のレッグ伸縮部75の幅方向Wの内側には、長手方向Lに沿って延びる一対のレッグサイド伸縮部80が設けられていてよい。レッグサイド伸縮部80は、幅方向Wにおけるサイドフラップ70の内側端部に設けられている。レッグサイド伸縮部80は、起立性の伸縮ギャザーを構成していてよい。
使い捨ておむつ10は、一対のファスニングテープ90を備えている。ファスニングテープ90は、前胴周り域20及び後胴周り域30のいずれか一方に接合された接合部94aを有する。本実施形態では、ファスニングテープ90は、後胴周り域30に接合されている。ファスニングテープ90は、前胴周り域20と後胴周り域30とを止着する。前胴周り域20と後胴周り域30とが互いに止着されることにより、ファスニングテープ90は、使い捨ておむつ10を着用者の身体に保持する。ターゲット部900は、前胴周り域20又は後胴周り域30の外装シート60の非肌対向側の面に設けられている。ターゲット部900は、ファスニングテープ90が引っ掛かるように構成されている。ターゲット部900としては、例えば、エアースルー不織布を用いることができる。
ターゲット部900は、幅方向Wに互いに離間して2つ設けられていてもよい。これにより、使用者は、一方のファスニングテープ90をそれぞれどのターゲット部900に係合すればよいかを視覚的に視認し易くなる。
なお、使い捨ておむつ10は、ターゲット部900を有していなくてもよい。この場合、ファスニングテープ90が前胴周り域20又は後胴周り域30の外装シート60に直接止着できるように構成されていればよい。
幅方向Wにおける一対のファスニングテープ90間には、幅方向Wに伸縮可能な腰周り伸縮部85が設けられていてよい。腰周り伸縮部85は、ファスニングテープ90間の領域を幅方向Wに収縮する。腰周り伸縮部85は、伸縮性シートによって構成されていてよい。
腰周り伸縮部85の後端縁は、使い捨ておむつ10の後端縁よりも前側に位置していてもよい。その代わりに、腰周り伸縮部85の後端縁は、使い捨ておむつ10の後端縁に一致していてもよい。腰周り伸縮部85の前端縁は、吸収コア40aの後端縁よりも前側、かつコアラップ40bの後端縁よりも前側、かつレッグ伸縮部75の後端縁よりも後側に位置していてよい。よって、腰周り伸縮部85の少なくとも一部は、使い捨ておむつの平面視において吸収コア40aに重なっていてよい。これにより、使用者が、一対のファスニングテープ90を幅方向W外側へ引っ張ったときに、吸収体40の後端部が幅方向外側へ引っ張られる。この状態で、ファスニングテープ90をターゲット部900に止着することにより、吸収体40が着用者の身体の丸みに合わせて身体にフィットした形状になり易くなる。
腰周り伸縮部85は、吸収コア40aの後端縁及びコアラップ40bの後端縁を跨ぎ、吸収コア40aの後端縁及びコアラップ40bの後端縁よりも後側に延出していてもよい。腰周り伸縮部85の外側縁は、ファスニングテープ90の内側縁(幅方向Wの内側端)よりも幅方向の内側に位置していてよい。腰周り伸縮部85とファスニングテープ90とは、幅方向Wにおいて離間している。この代わりに、腰周り伸縮部85とファスニングテープ90とは、幅方向Wにおいて互いに離間せずに重なり合っていてもよい。
腰周り伸縮部85は、幅方向Wにおける吸収コア40aの側縁を長手方向Lに延長した仮想線40eと接合部94aとの間に存在する。もっとも、腰周り伸縮部85は、仮想線40eよりも幅方向内側に存在していてもよい。前胴周り域20及び後胴周り域30のうち、ファスニングテープ90が接合されている方の胴周り域は、接合部94aと係合シート92との間の領域において、非伸縮性を有することが好ましい。
(2)ファスニングテープの構成
以下、ファスニングテープ90の構成について説明する。ファスニングテープ90は、幅方向Wにおける後胴周り域30の端部に設けられていてよい。具体的には、ファスニングテープ90は、後胴周り域30に対応するサイドフラップ70の領域に取り付けられていてよい。この実施形態の代わりに、ファスニングテープ90は、前胴周り域20に設けられていてもよい。この場合、ファスニングテープ90は、後前胴周り域30に設けられるターゲット部又は外装シートに止着するように構成されていてよい。
ファスニングテープ90は、使用前において、展開可能に折り畳まれている。図3は、折り畳まれたファスニングテープ90を示している。図4は、展開されたファスニングテープ90を示している。図5は、図3のF2−F2線に沿った折り畳まれたファスニングテープ90の断面図である。図6は、図4のF3−F3線に沿った展開されたファスニングテープ90の断面図である。図3及び図5に示すように、ファスニングテープ90は、少なくとも1つの第1折り目95を基点に展開可能に折り畳まれている。ファスニングテープ90は、第1折り目95及び第2折り目96を起点に展開可能に折り畳まれていてもよい。
ファスニングテープ90は、基材91及び係合シート92を有する。係合シート92は、接着剤を介して基材91に接着されている。係合シート92は、前胴周り域20及び後胴周り域30の少なくとも一方と係合可能となっている。具体的には、係合シート92の一面(係合面)には、前胴周り域20又は後胴周り域30に係合可能な複数の係合部材としての係合フック99が設けられている(図7も参照)。
基材91は、自由端部93から固定端部94へ延びる。基材91の固定端部9 4は、サイドフラップ70に固定されている。基材91の自由端部93、すなわちファスニングテープ90の自由端部は、ファスニングテープ90を展開する際にユーザによって掴まれる部分である。基材91の自由端部93は、1枚又は複数枚の不織布から構成されていてよい。好ましくは、基材91全体が1枚又は複数枚の不織布から構成されている。好ましくは、基材91が複数枚の不織布から構成されており、複数枚の不織布は長手方向Lに連続する接合部にて接合されていることが好ましい。ファスニングテープ90は、吸収性物品の幅方向外側に向かって引き出されて使用されるため、複数枚の不織布を長手方向Lに連続する接合部にて互いに接合されることによって、第1折り目95及び第2折り目96を安定的に設け、かつファスニングテープ90を引っ張る際の強度を維持しつつ、柔軟なファスニングテープ90を提供することができる。なお、例えば、ある目付量の不織布1枚から構成するよりも、その目付量の半分の目付量の不織布2枚を重ねて構成する方が、より高い柔軟性を得ることができることに留意されたい。
ファスニングテープ90は、前胴周り域20から後胴周り域30に向かう長手方向Lに沿った第1折り目95を基点に折られている。ファスニングテープ90は、第1折り目95に平行な第2折り目96を基点にさらに折られている(図2及び図5参照)。第2折り目96は、ファスニングテープ90が展開された状態において、第1折り目95よりも幅方向Wの内側に位置する(図5及び図6参照)。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、基材91の自由端部93は幅方向Wの外側に向かって延びている。第2折り目96は、第1領域92aと固定端部94との間に設けられている。ファスニングテープ90は、固定端部94と自由端部93が互いに反対方向を向くように、第1折り目95及び第2折り目96を基点に展開可能に折り畳まれている。
後胴周り域20は、折り畳まれた状態のファスニングテープ90の、少なくとも係合シート92が存在する領域を収容する収容部72を有する。収容部72は、サイドフラップ70を形成するサイドシートと外装シートとの間の空間により形成されていてよい。好ましくは、ファスニングテープ90は、折り畳まれた状態で、自由端部93を除いて収容部72に収容されている。この場合、ファスニングテープ90の自由端部93のみが、収容部72から外部に突出することになる。これにより、ファスニングテープ90を隠蔽し、吸収性物品を構成する要素のうち不織布のみを吸収性物品の表面に露出さした状態にすることができる。したがって、使用者に異物感を与えない吸収性物品を提供することができる。
基材91の固定端部94は、後胴周り域30を構成するシートに接合されていてよい。ファスニングテープ90は、収容部72を形成する一対のシート50,60のうちの肌面側のシート(本実施形態ではサイドフラップ70)に固定されていてよい。この場合、ファスニングテープ90は、肌面側のシートとは反対側に折り畳まれる。ファスニングテープ90が展開された状態において、係合シート92の係合面は肌面側に向く。
係合シート92は、ファスニングテープ90が折り曲げられる折り目95,96上には設けられていなくてもよい(図4及び図6参照)。これにより、ファスニングテープ90を折り曲げた状態を安定的に維持することができる。特に、折り目95,96が、係合シート92の係合フック99が存在しない領域、すなわち比較的剛性が低い領域に位置するため、ファスニングテープ90は折り畳まれた形状で安定化し易い。これにより、吸収性物品の使用前にファスニングテープの形状が損なわれ難くなる。さらに、折り目95,96が係合シート92上を通っていないので、ファスニングテープ90の製造時にファスニングテープ90を容易に折り畳むことができる。
上記実施形態の代わりに、係合シート92は、ファスニングテープ90が折り曲げられる折り目95,96上に設けられていてもよい。具体的一例として、係合シート92は、第1折り目95を跨って第1折り目95の両側へ延びていてよい。この場合には、基材91と係合シートの間の複数の接合部が、吸収性物品の長手方向Lに延び、かつ幅方向Wには互いに離間しており、かつ接合部どうしの間の非接合部が第1折り目95と重なる位置にあることが好ましい。これにより、第1折り目95をより安定的に形成することができる。
図7は、第1の実施例に係る折り畳まれたファスニングテープの拡大断面である。係合シート92は、第1折り目95と第2折り目96との間に配置され、係合シート92から突出した複数の係合フック99を有する第1領域92aと、第1折り目95よりも自由端部93側に配置され、係合シートから突出した複数の係合フック99を有する第2領域92bと、を有する。
ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、係合シートの第1領域92aが係合シートの第2領域92bと向かい合っている。第1領域92aの係合シートから突出する係合フック99のすべてが、第2領域92bの係合シートに向かい合っていることが好ましい。さらに、第2領域92bの係合シートから突出する係合フック99のすべてが、第1領域92aの係合シートに向かい合っていることが好ましい。特にファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1折り目95と第2折り目96との間のみに係合フック99が存在し、かつ第2折り目96よりも幅方向Wの外側に係合フック99が存在しないことが好ましい。これにより、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、すべての係合フック99が露出することがないため、係合フック99が人、特に乳幼児の皮膚に与える影響を抑制することができる。
係合シート92を基材91に接着する接着剤は、第1接着領域100及び第2接着領域102を構成する。第1接着領域100は、係合シート92の第1領域92aを基材91に接着する領域である。第2接着領域102は、係合シート92の第2領域92bを基材91に接着する領域である。
ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1接着領域100の、第1折り目95から遠い方の第1側縁100eは、第2領域92bにおける係合フック99に隣接する第1領域92aの係合フック99のうちの最も第1折り目95から遠い係合フック99ae(以下、「第1基準フック99ae」と称することがある。)の位置に達している。また、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第2接着領域102の、第1折り目95から遠い方の第2側縁102eは、第1基準フック99aeの第1折り目95側に隣接する、第2領域92bにおける係合フック99be(以下、「第2基準フック99be」と称することがある。)の位置に達している。
第1接着領域100の第1折り目95に近い方の側縁の位置は、任意ではあるが、第1領域92aの最も第1折り目95に近い係合フックにまで達していてよい。また、第2接着領域102の第1折り目95に近い方の側縁の位置は、任意ではあるが、第2領域92bの最も第1折り目95に近い係合フックにまで達していてよい。
図7に示すように、ファスニングテープ90は、折り畳まれた状態で仮止めするための仮止め部200を有する。仮止め部200は、剥離可能な接着剤から構成することができる。好ましくは、仮止め部200は、剥離可能で再接着不能な接着剤によって構成される。この代わりに、仮止め部200は、折り畳まれたファスニングテープ90を熱圧着したエンボス部から構成されていてもよい。
図7に示す実施形態では、仮止め部200は、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、基材91どうしが直接対向する領域に設けられている。仮止め部200は、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合している領域よりも、第1折り目95から遠い領域に設けられている。より具体的には、仮止め部200は、第2折り目96付近で、基材91どうしを接合している。
ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合していてもよい。この場合、第1領域92aの係合フックの最大径は、第2領域92bにおける係合フック間の距離よりも大きく、第2領域92bの係合フックの最大径は、第1領域92aにおける係合フック間の距離よりも大きくてもよい。
ファスニングテープ90の自由端部93を幅方向Wに引っ張ったときに、仮止め部200の剥離強度は、係合シートの第1領域92aと係合シートの第2領域92bとの係合を外す剥離強度よりも小さいことが好ましい。
図7に示す実施形態の代わりに、仮止め部200は、第1領域92の係合フックと第2領域の係合フックとが互いに係合した係合領域と重複した領域に設けられていてもよい。
図8は、第2の実施例に係る折り畳まれたファスニングテープの拡大断面である。図8に示すように、ファスニングテープ90は、折り畳まれた状態で仮止めするための仮止め部200を有する。仮止め部200は、剥離可能な接着剤、好ましくは剥離可能で再接着不能な接着剤によって構成されていてよい。
仮止め部200は、第1領域92の係合フックと第2領域の係合フックとが互いに係合した係合領域と重複した領域に設けられている。より具体的には、仮止め部200は、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックの少なくとも一方に設けられた接着材から構成される。なお、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとは、互いにメカニカル係合していてもよく、互いにメカニカル係合していなくてもよい。
係合フック99に設けられた接着材の幅は、係合フックの先端部の径よりも小さいことが好ましい。最も、係合フック99に設けられた接着材の幅は、係合フックの先端部の径よりも大きくてもよい。
図9は、第3の実施例に係る折り畳まれたファスニングテープの拡大断面である。ファスニングテープ90は、折り畳まれた状態で仮止めするための仮止め部200を有する。仮止め部200は、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、基材91どうしが直接対向する領域に設けられている。仮止め部200は、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合している領域よりも、第1折り目95に近い領域に設けられている。
なお、第3の実施例では、係合フック99の先端部99bの径は該係合フックの根元部99aの径よりも大きい。第1領域92aと第2領域92bの少なくとも一方の係合フック99の先端部99bは、ファスニングテープ90が展開された状態で、自由端部93の方に向けて偏っている。第1領域92aと第2領域92bの両方の係合フック99の先端部99bが、ファスニングテープ90が展開された状態で、自由端部93の方に向けて偏っていてもよい。具体的には、係合フックの先端部99bは、ファスニングテープ90が展開された状態で、固定端部94側よりも自由端部93側の方へより突出している。この代わりに、係合フックの形状は、第1実施例で示したものであってもよい。
図10は、第4の実施例に係る折り畳まれたファスニングテープの拡大断面である。本実施例では、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1領域92aの係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92aeは、第2領域92bの係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92beよりも第1折り目95から遠くに位置する。この場合であっても、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1接着領域100の、第1折り目95から遠い方の第1側縁100eは、第1基準フック99aeよりも第1折り目95から遠くに位置する。好ましくは、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1接着領域100の第1側縁100eは、第2領域92bの第1折り目95から遠い方の端部92beよりも第1折り目95から遠くに位置する。好ましくは、第1接着領域100は、第1領域92aの係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92aeまで達していない。これにより、第1接着領域100の接着剤が係合シートからはみ出ることを抑制することができる。したがって、第1接着領域100の接着剤からはみ出した接着剤によってファスニングテープ90が折り畳まれた状態で接着されてしまうことを抑制することができ、容易に展開することができるファスニングテープ90を提供することができる。
第1領域92の係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92aeと、第1基準フック99aeとの間の距離は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上である。これにより、ファスニングテープが圧着された後にも、第1接着領域100の接着剤が係合シートからはみ出ることを抑制することができる。接着剤がはみ出ないようにすることで、吸収性物品を取り扱うユーザの皮膚へのトラブルを抑制することができる。第1領域92の係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92aeと、第1基準フック99aeとの間の領域は、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下である。このように係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92ae付近の非接着領域の長さを短くすることで、係合シート92が基材91から大きく浮いてしまうことを防止できる。これにより、ファスニングテープ90を取り扱うユーザの皮膚に係合シート92の縁92aeが不意に接触することを抑制できる。
図11は、第5の実施例に係る折り畳まれたファスニングテープの拡大断面である。仮止め部200は、第1接着領域100から連続して延び、係合シート92からはみ出した接着剤によって構成されている。この代わりに、仮止め部200は、第2接着領域102から連続して延び、係合シート92からはみ出した接着剤によって構成されていてもよい。
(3)ファスニングテープの展開
図12及び図13は、それぞれ第1実施例及び第3実施例に係るファスニングテープ90を展開する様子を示す模式図である。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1接着領域100の第1側縁100eは第1基準フック99aeの位置に達しており、第2接着領域102の第2側縁102eは第2基準フック99beの位置に達していることが好ましい。図12及び図13に示すように、基材91の自由端部93を幅方向W外側へ引っ張ると、係合シートの第1領域92aが図中の矢印F2の方へ移動し、係合シートの第2領域92bが図中の矢印F1の方へ移動する。これにより、仮止め部200が剥離される。
基材91の自由端部93を幅方向W外側へより引っ張ると、第1領域92aの係合シート92の、第1折り目95から遠い方の端部領域が、接着剤100を介して基材91に引っ張られ、これにより図12中の上方へ曲げられる。したがって、図12に示すように、第1基準フック99aeが、係合シート92の湾曲に引きずられ、第2領域92bの係合シートの第2基準フック99beから離れる方向に傾斜する。これにより、第1基準フック99aeと第2基準フック99beとの係合がスムーズに解除される。基材91の自由端部93をさらに引っ張ると、第1基準フック99ae及び第2基準フック99beよりも第1折り目95に近い方の係合フック99どうしの係合もスムーズに解除されていく。よって、上記のように接着剤100,102の位置を設定することで、ファスニングテープ90を展開し易くすることができる。
本実施形態では、着用補助者(例えば親等)が、着用者(赤ちゃん等)へ吸収性物品を取り付ける作業をより簡便に実施できる。具体的には、着用補助者は、まず吸収性物品を着用者の体の下に敷き、それから着用者の腹側へ吸収性物品の前胴回り域を当てる。その後、着用補助者は、吸収性物品の後胴回り域から幅方向外側に向かって突出するファスニングテープ90の自由端部93を持つ。それから、着用補助者は、自由端部93を吸収性物品の幅方向外側に向かって引っ張る。着用補助者がファスニングテープ90を引っ張ると同時にファスニングテープ90が展開されるので、着用補助者は、ファスニングテープ90を掴んだまま、ファスニングテープ90を前胴回り域へ止着することができる。
ここで、通常の市販の使い捨ておむつでは、ファスニングテープの掴み部(自由端部)が幅方向の中心側へ向かうように、ファスニングテープが折り畳まれている。そのため、吸収性物品を着用者の体の下に敷く前、又は着用者の腹側へ吸収性物品の前胴回り域を当てる前に、着用補助者は、ファスニングテープを展開しておく必要がある。ファスニングテープの展開後に、着用者の腹側へ使い捨ておむつの前胴回り域を当てる。この際に、ファスニングテープが展開されているので、ファスニングテープの係合フックが、意図せず、吸収性物品を構成する資材や着用者の服に係合してしまったり、着用者の肌に当たってしまったりすることがある。
本実施形態に係る吸収性物品では、上述したように、着用補助者は、ファスニングテープの展開からファスニングテープの止着までの一連の動作を、ファスニングテープを掴んだ状態のまま行うことができるので、上記の不都合を解消することができる。
また、図10に示す実施形態では、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1接着領域100の第1側縁100eは、第2領域92bの係合シートの、第1折り目95から遠い方の縁92aeよりも第1折り目95から遠くに位置する。これにより、図12及び図13に示すように、ファスニングテープ90の自由端部93を引っ張ると、係合フック99どうしが係合している領域よりも外側で、係合シートの第1領域92aが接着剤100を介して基材91に引っ張られ始める。したがって、係合フック99どうしの係合をよりスムーズに解除することができる。
(4)作用・効果
一実施形態に係る吸収性物品は、前胴周り域20と、後胴周り域30と、前胴周り域20と後胴周り域30とを止着するファスニングテープ90と、を有する。ファスニングテープ90は、前胴周り域20及び後胴周り域30の少なくとも一方と係合可能な係合シート92を含む。ファスニングテープ90は展開可能に折り畳まれている。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、係合シートの第1領域92aが係合シートの第2領域92bと向かい合っている。ファスニングテープ90は、折り畳まれた状態で仮止めするための仮止め部200を有する。本実施形態では、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、係合シートの第1領域92aが係合シートの第2領域92bと向かい合っているので、係合フック99の少なくとも一部、好ましくは係合フック99の全部が、係合シート92に向けて突出する。これにより、係合フック99の少なくとも一部が、比較的剛性の高い係合シートで覆われる。これにより、係合フック99が人、特に乳幼児の肌に与える影響を緩和することができる。
また、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、係合シート92が基材91によって覆われる。これにより、視覚的にユーザに与える違和感及び不安感を軽減することができる。なお、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、係合シート92は、サイドフラップ70及び外装シート60に覆い隠されていてもよい。この場合、視覚的にユーザに与える違和感及び不安感をより軽減することができる。
ここで、折り畳まれたファスニングテープ90が自然に展開されてしまった場合、ファスニングテープ90の係合シート92が吸収性物品の他の部分に意図せず止着されることがある。また、使い捨ておむつのような吸収性物品の上に乳幼児を置いたときに、意図せず自然に展開されたファスニングテープ90の係合シート92が、乳幼児の肌に刺激を与える可能性がある。本実施形態では、ファスニングテープ90は、折り畳まれた状態で仮止めするための仮止め部200を有するため、ファスニングテープ90が意図せず自然に展開されることを抑制することができる。
一実施形態によれば、仮止め部200は、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、基材91どうしが直接対向する領域に設けられている(図7,9,10,11参照)。係合シートの第1領域92aが係合シートの第2領域92bと向かい合っている箇所では、第1領域92aの第2領域92bの係合シートどうしが係合するので、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態に維持され易い。本実施形態では、仮止め部200は、基材91どうしが直接対向する領域、すなわち折り畳まれたファスニングテープ90が自然に開き易い領域に設けられている。したがって、ファスニングテープ90が意図せず自然に展開されることをより抑制することができる。
一実施形態によれば、係合シートの第1領域92a及び第2領域92bは、係合シートから突出した複数の係合フック99を有する。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合している。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合しているので、意図せずファスニングテープ90が展開されることをより抑制することができる。
一実施形態によれば、ファスニングテープ90は、固定端部94から自由端部93へ沿って延びる基材91と、基材91に接着された係合シート92と、を有する。ファスニングテープ90は、固定端部94と自由端部93とが互いに反対方向を向くように、展開可能に折り畳むための第1折り目95及び第2折り目96を有する。ファスニングテープ90が展開された状態で、第1折り目95は第2折り目96よりも自由端部93側に設けられている。係合シートの第1領域92aは、第1折り目95と第2折り目96との間に配置されている。係合シートの第2領域92bは、第1折り目95よりも自由端部93側に配置されている。これにより、ファスニングテープ90は、係合シートの第1領域92aと第2領域92bを互いに向かい合わせた状態で、3つ折りにされる。さらに、ファスニングテープ90は、固定端部94から自由端部93の方向に引っ張ることにより展開される(図12参照)。
一実施形態によれば、仮止め部200は、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合している領域よりも、第1折り目95から遠い領域に設けられている(図7,10,11参照)。仮止め部200が、係合フックどうしが互いに係合した領域(係合領域)からずれて配置されているので、ファスニングテープ90を引っ張る力は、仮止め部200と係合領域とに独立にかかり易い。これにより、仮止め部200と係合領域とが重複している場合と比較すると、比較的小さい力でファスニングテープ90を展開することができる。
一実施形態によれば、仮止め部200は、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合した係合領域と重複した領域に設けられている。ファスニングテープ90の自由端部93を引っ張ったとき、仮止め部200は係合領域を反対方向に引っ張るように作用する。これにより、ファスニングテープ90の係合領域と仮止め部200の両方を剥離するような力をかけることができ、仮止め部200の解除と係合フックの展開を同時に行い易くすることができる。
一実施形態によれば、ファスニングテープ90が折り畳まれた状態において、係合シートの第1領域92aが係合シートの第2領域92bと係合しており、幅方向Wに沿った仮止め部200の剥離強度は、係合シートの第1領域92aと係合シートの第2領域92bとの係合を外す剥離強度よりも小さい。ファスニングテープ90の自由端部93を引っ張ったとき、係合シート92の係合よりも先に仮止め部200が剥離されるため、ファスニングテープ90が展開されたときに、仮止め部200が確実に剥離された状態になる。これにより、仮止め部200が接着されたままになることなく、またファスニングテープ90の展開に必要な力が過度に大きくなることを抑制することができる。
一実施形態によれば、仮止め部200は、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックの少なくとも一方に設けられた接着材から構成される(図8参照)。これにより、折り畳まれたファスニングテープ90の係合シート92の領域が意図せずに展開されることを抑制することができる。
一実施形態によれば、係合フック99に設けられた接着材の幅は、係合フックの先端部の径よりも小さい(図8参照)。第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いにメカニカル係合している場合に、係合フックに付着する接着剤の量を少なくすることで、係合シートを展開するための力が過度に大きくなることを抑制することができる。
一実施形態によれば、第1領域92aの係合フックの最大径は、第2領域92bにおける係合フック間の距離よりも大きく、第2領域92bの係合フックの最大径は、第1領域92aにおける係合フック間の距離よりも大きい。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合している。ファスニングテープ90が折り畳まれた状態で、第1領域92aの係合フックと第2領域92bの係合フックとが互いに係合されるので、意図せずファスニングテープ90が展開されることを抑制することができる。
一実施形態によれば、仮止め部200は、剥離可能な接着剤によって構成されている。仮止め部200が、例えば熱圧着(エンボス)ではなく、剥離可能な接着剤によって構成されていることにより、ファスニングテープ90を仮止めする際に係合フック99が潰れる虞を低減することができる。特に、仮止め部200が、係合シート92と重複する領域に設けられる場合であっても、係合フック99が潰されることを防止することができる。
一実施形態によれば、仮止め部200は、剥離可能で再接着不能な接着剤によって構成されている。ファスニングテープ90を一度展開すると接着剤は再接着不能であるため、使用者が吸収性物品を取り扱っているときに、接着剤が意図せず吸収性物品の他の領域に付着することが防止される。
一実施形態によれば、係合シートの第1領域92aが基材91に接着された第1接着領域100と、係合シートの第2領域92bが基材91に接着された第2接着領域102と、が設けられている。仮止め部200は、第1接着領域100又は第2接着領域102から連続して延び、係合シート92からはみ出した接着剤によって構成されている(図11参照)。これにより、基材91と係合シート92を接着する接着剤を、仮止め部200として利用することができる。したがって、ファスニングテープ90の製造工程の簡略化を図ることができる。
一実施形態によれば、前胴周り域20又は後胴周り域30は、折り畳まれた状態のファスニングテープ90の、少なくとも係合シートが存在する領域を収容する収容部72を有する。これにより、視覚的にも触覚的にもユーザが最も違和感を覚える係合シートが、収容部72内に収容される。したがって、ユーザの不快感をより軽減することができる。また、視覚的及び触覚的に異物と認識され易いファスニングテープが、自由端部93を除いて収容部72内に収容されるので、ユーザの不快感をより軽減することができる。
一実施形態によれば、吸収性物品は、長手方向Lと、長手方向Lと直交する幅方向Wと、前胴周り域と、股下域と、後胴周り域と、少なくとも股下域に設けられた吸収コア40aと、を有する。ファスニングテープ90は、前胴周り域及び後胴周り域のいずれか一方の、吸収性物品の幅方向の端部に一対設けられている。ファスニングテープ90は、前胴周り域及び後胴周り域のいずれか一方に接合された接合部94aを有する。吸収性物品は、一対のファスニングテープ90間に、少なくとも幅方向に伸縮可能な伸縮部85を有する。伸縮部85は、幅方向における吸収コア40aの側縁を長手方向Lに延長した仮想線40eと接合部94aとの間に存在する。上述したように、吸収性物品を装着する際に、補助者は、ファスニングテープを幅方向外側に引っ張って展開する。本実施形態によれば、ファスニングテープ90の展開と同時に伸縮部85が伸縮されるため、伸縮部が幅方向により伸びた状態で、吸収性物品を着用者に装着させることができる。したがって、吸収性物品のフィット性を高めることができる。さらに、伸縮部85が収縮しようとする力によりファスニングテープ90をより展開し易くすることもできる。
また、幅方向における吸収コア40aの側縁を長手方向Lに延長した仮想線40eよりも外側の領域は、着用者のお尻や背中に敷かれる部分よりも外側に位置するため、着用者の重みによって着用動作中に伸縮部85の伸縮が妨げられ難い。したがって、伸縮部85によって吸収性物品のフィット性とファスニングテープの展開性を高めることができる。
一実施形態によれば、前胴周り域及び後胴周り域のうち、ファスニングテープ90が接合されている方の胴周り域は、接合部94aと係合シート92との間の領域において、非伸縮性を有する。仮に、接合部94aと係合シート92との間の領域が伸縮性を有する場合、ファスニングテープの展開動作中に、接合部94aと係合シート92との間の領域が伸びる。これにより、伸縮部85を伸ばす力が緩和され、伸縮部85を十分に伸ばすことができなくなることがある。本実施形態では、接合部94aと係合シート92との間の領域が非伸縮性を有するため、ファスニングテープの展開動作中に伸縮部85が十分に伸ばされる。これにより、前述したように、吸収性物品のフィット性を向上させることができる。
一実施形態によれば、ファスニングテープ90は、幅方向Wにおける後胴周り域30の端部に一対設けられている。後胴周り域30は、一対のファスニングテープ90の間に、少なくとも幅方向に伸縮可能な腰周り伸縮部85をさらに有する。折り畳まれたファスニングテープ90を展開するために必要な幅方向Wの力は、後胴周り域30の皺が無くなるまで後胴周り域30を伸長させたときの後胴周り域30の収縮力よりも小さい。これにより、例えば乳幼児を吸収性物品の上に置いた状態で、一対のファスニングテープ90を幅方向Wに引っ張ると、後胴周り域30の皺が無くなるまで後胴周り域30が伸長する前に、腰周り伸縮部85の収縮力によって一対のファスニングテープ90が展開される。これにより、腰周り伸縮部85の収縮力を利用してファスニングテープ90を展開できるようになるという利点が得られる。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。