以下、本発明の詳細を説明する。
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層と、該導電層の外表面上に配置された複数の金属材とを備える。
本発明に係る導電性粒子では、上記金属材の融点が300℃以上である。このため、上記金属材は、一般にはんだと呼ばれる金属材とは異なる。上記金属材の融点の上限は特に限定されない。
本発明に係る導電性粒子では、複数の上記金属材は全体で、上記導電層の外表面上の全体の領域ではなく一部の領域に配置されている。言い換えれば、複数の上記金属材は全体で、上記導電層の外表面全体を覆っておらず、上記導電層の外表面の一部を覆っている。
また、本発明に係る導電性粒子では、上記金属材の主金属のイオン化傾向は、上記導電層の主金属のイオン化傾向よりも小さい。
本発明に係る導電性粒子における上述した構成の採用により、導電層の腐食を生じ難くすることができる。特に、酸の存在下で導電層の腐食を生じ難くすることができる。導電性粒子が酸の存在下に晒されても、導電層の腐食が生じ難いことから、導電性粒子の性能を高く維持することができる。
また、本発明に係る導電性粒子により電極間を電気的に接続して接続構造体を得た場合に、電極間の接続前の導電性粒子が酸の存在下に晒されていたり又は接続構造体が酸の存在下に晒されたりしても、接続抵抗を低く維持することができる。特に、導電性粒子を電極間の電気的な接続に用いる場合に、導電性粒子は一般的に圧縮される。導電性粒子が圧縮されることによって、導電層に割れが生じることがある。導電層に割れが生じたとしても、導電層における腐食が抑えられる結果、接続抵抗を効果的に低く維持できる。
また、導電層及び電極の表面には酸化膜が形成されていることが多い。従来の導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続した場合には、導電性粒子が酸化膜を十分に突き破らずに、導電層と電極とが十分に接触しないことがある。この結果、電極間の接続抵抗が高くなることがある。これに対して、本発明に係る導電性粒子における上述した構成の採用により、導電性粒子が酸化膜を十分に突き破りやすくなり、導電性粒子と電極とが十分に接触させることができ、結果として接続抵抗を低くすることができる。特に、導電性粒子が導電層の表面に突起を有する場合には、突起によって導電層及び電極の表面の酸化膜をより一層効果的に貫通することができ、接続抵抗をより一層効果的に低くすることができる。
また、上記金属材がはんだではないために、電極間の接続時に上記金属材が溶融し難い。このため、上記金属材は、酸化膜を効果的に貫通する。
本発明に係る導電性粒子は、電極の電気的な接続に好適に用いられる。本発明に係る導電性粒子では、上記金属材の主金属のイオン化傾向が、上記導電層の主金属のイオン化傾向よりも小さく、上記金属材の主金属のイオン化傾向が、上記電極の外表面の主金属のイオン化傾向よりも大きいことが好ましい。この場合には、酸の影響による接続抵抗の上昇をより一層効果的に抑えることができる。これは、導電層と電極との電位差を金属材が緩和するように作用するためであると考えられる。
上記金属材の主金属よりもイオン化傾向が大きい主金属を含む導電層は、最外層の導電層である。導電層は、1層の構造又は2層以上の積層構造を有する。上記導電層が1層の構造を有する場合には、この導電層の主金属のイオン化傾向が、上記金属材の主金属のイオン化傾向よりも大きい。上記導電層が2層の積層構造を有する場合には、最外層の導電層の主金属のイオン化傾向が、上記金属材の主金属のイオン化傾向よりも大きい。
電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記金属材の主金属の標準酸化還元電位(標準電極電位)と、上記導電層の主金属の標準酸化還元電位(標準電極電位)との差の絶対値は好ましくは0.1V以上、より好ましくは0.5V以上、好ましくは2.0V以下、より好ましくは1.5V以下である。
電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記金属材の主金属の標準酸化還元電位(標準電極電位)と、電極の外表面の主金属の標準酸化還元電位(標準電極電位)との差の絶対値は好ましくは0.3V以上、より好ましくは0.5V以上、好ましくは2.0V以下、より好ましくは1.5V以下である。
電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記導電層の外表面の表面積100%中、上記金属材が配置されている表面積の占める割合Xは好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、好ましくは100%未満、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。なお、後述する実施例及び参考例で得られた導電性粒子の上記割合Xは40%以上、60%以下の範囲内である。
上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。接続構造体の接続信頼性をより一層高める観点からは、導電性粒子の粒子径は、1μm以上、10μm以下であることが特に好ましく、1μm以上、5μm以下であることがより好ましく、1μm以上、4μm以下であることが更に好ましい。導電性粒子の粒子径は、4μm以上であってもよい。
導電性粒子の粒子径は、導電性粒子の形状が真球状である場合には、直径を示し、導電性粒子の形状が真球状以外である場合には、最大径を示す。また、複数の導電性粒子に関しては、導電性粒子の粒子径の平均を、導電性粒子の粒子径とする。例えば、複数の導電性粒子の粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、導電層3と、複数の金属材4とを備える。導電層3は、基材粒子2の表面上に配置されている。第1の実施形態では、導電層3は、基材粒子2の表面に接している。導電性粒子1は、基材粒子2の表面が導電層3により被覆された被覆粒子である。導電性粒子1では、導電層3は、単層の導電層である。
複数の金属材4は、導電層3の外表面上に配置されている。第1の実施形態では、複数の金属材4は、導電層3の表面に接している。具体的には、複数の金属材4は、導電層3の表面に、点接触ではなく、面接触している。
導電性粒子1では、複数の金属材4は全体で、導電層3の外表面上の全体の領域ではなく一部の領域に配置されている。金属材4の主金属のイオン化傾向は、導電層3の主金属のイオン化傾向よりも小さい。
導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、芯物質を有さない。導電性粒子1は表面に突起を有さない。導電性粒子1は球状である。導電層3は外表面に突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は導電性の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、絶縁性物質を有さない。但し、導電性粒子1は、導電層3の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。この場合に、導電層3と絶縁性物質との間に、金属材が配置されていてもよい。
導電性粒子1では、基材粒子2と導電層3とが接している。基材粒子と導電層との間には、他の導電層が配置されていてもよい。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、導電層12と、複数の金属材13と、複数の芯物質14と、複数の絶縁性物質15とを有する。導電層12は、基材粒子2の表面上に基材粒子2に接するように配置されている。導電性粒子11では、導電層12は、単層の導電層である。複数の金属材13は、導電層12の外表面上に導電層12に接するように配置されている。複数の金属材13は、導電層12に面接触している。
導電性粒子11では、複数の金属材13は全体で、導電層12の外表面上の全体の領域ではなく一部の領域に配置されている。金属材13の主金属のイオン化傾向は、導電層12の主金属のイオン化傾向よりも小さい。
導電性粒子11は導電性の表面に、複数の突起11aを有する。導電層12は外表面に、複数の突起12aを有する。複数の芯物質14が、基材粒子2の表面上に配置されている。複数の芯物質14は導電層12内に埋め込まれている。芯物質14は、突起11a,12aの内側に配置されている。導電層12は、複数の芯物質14を被覆している。複数の芯物質14により導電層12の外表面が隆起されており、突起11a,12aが形成されている。
導電性粒子11は、導電層12の外表面上に配置された絶縁性物質15を有する。導電層12の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質15により被覆されている。絶縁性物質15は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図3に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、ニッケルを含む導電層22と、複数の金属材13と、複数の芯物質14と、複数の絶縁性物質15とを有する。ニッケルを含む導電層22は全体で、基材粒子2側に第1の導電層22Aと、基材粒子2側とは反対側に第2の導電層22Bとを有する。
導電性粒子11と導電性粒子21とでは、導電層のみが異なっている。すなわち、導電性粒子11では、1層構造の導電層が形成されているのに対し、導電性粒子21では、2層構造の第1の導電層22A及び第2の導電層22Bが形成されている。第1の導電層22Aと第2の導電層22Bとは別の導電層として形成されている。
第1の導電層22Aは、基材粒子2の表面上に配置されている。基材粒子2と第2の導電層22Bとの間に、第1の導電層22Aが配置されている。第1の導電層22Aは、基材粒子2に接している。第2の導電層22Bは、第1の導電層22Aに接している。従って、基材粒子2の表面上に第1の導電層22Aが配置されており、第1の導電層22Aの表面上に第2の導電層22Bが配置されている。導電性粒子21は導電性の表面に、複数の突起21aを有する。導電層22は外表面に突起22aを有する。第1の導電層22Aは外表面に、突起22Aaを有する。第2の導電層22Bは外表面に、複数の突起22Baを有する。
導電性粒子21では、ニッケルを含む導電層22は、2層の導電層である。導電性粒子21では、複数の金属材13は全体で、第2の導電層22Bの外表面上の全体の領域ではなく一部の領域に配置されている。金属材13の主金属のイオン化傾向は、第2の導電層22Bの主金属のイオン化傾向よりも小さい。導電性粒子21では、金属材13の主金属のイオン化傾向よりも小さい主金属を含む導電層は、第2の導電層22Bである。金属材13の主金属のイオン化傾向は、第1の導電層22Aの主金属のイオン化傾向と同等以上であってもよいが、小さいことが好ましい。
以下、導電性粒子の他の詳細について説明する。
[基材粒子]
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。上記コアは有機コアであってもよく、上記シェルは無機シェルであってもよい。なかでも、金属粒子を除く基材粒子が好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子がより好ましい。
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。上記導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、上記導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより上記導電性粒子を圧縮させる。上記基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に上記導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性が高くなる。
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。基材粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
上記基材粒子が金属を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は、金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましく、銅粒子ではないことが好ましい。
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは300μm以下、更に好ましくは50μm以下、更に一層好ましくは30μm以下、特に好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下である。上記基材粒子の粒子径が上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに、基材粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。上記基材粒子の粒子径が上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗がより一層低くなり、更に電極間の間隔が小さくなる。
上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
上記基材粒子の粒子径は、2μm以上、5μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が2〜5μmの範囲内であると、電極間の間隔が小さくなり、かつ導電層の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子が得られる。
[導電層]
上記導電層を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、銀、パラジウム、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素及びこれらの合金、並びに錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。電極間の接続抵抗がより一層低くなるので、上記導電層の主金属は、銀、銅、ニッケル、パラジウム又は錫を含有する金属であることが好ましい。初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮されることから、上記導電層の主金属は、ニッケルであることが好ましい。
但し、上記金属材の主金属のイオン化傾向が、上記導電層の主金属のイオン化傾向よりも小さくなるように、上記導電層の主金属が選ばれる。
なお、上記導電層の上記主金属は、上記導電層に含まれる金属のうち、最も含有量が多い金属を意味する。上記導電層に含まれる全ての金属100重量%中、上記主金属の含有量は好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。上記導電層に1種のみの金属が含まれていてもよく、2種以上の金属が含まれていてもよい。
上記導電層の厚みは、好ましくは50nm以上、より好ましくは75nm以上、好ましくは500nm以下である。上記導電層の厚みが上記下限以上であると、導電層が適度に硬くなり、電極間の導通性がより一層高くなる。上記導電層の厚みが上記上限以下であると、導電層が硬くなりすぎず、導電性粒子と電極との接触面積がより一層大きくなる。上記導電層の厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
上記基材粒子の表面に上記導電層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子表面にコーティングする方法等が挙げられる。上記物理的蒸着による方法としては、イオンプレーティング及びイオンスパッタリングによる方法が挙げられる。無電解めっきによる方法が好ましい。
無電解めっきにより形成する方法では、一般的にエッチング工程と、触媒化工程と、無電解めっき工程とが行われる。上記エッチング工程は、基材粒子の表面に微小な凹凸を形成する工程であり、めっきにより形成されるニッケルを主金属とする層などの密着をよくするために行われる。上記エッチングを行う方法としては特に限定されず、例えば、濃塩酸、濃硫酸、クロム酸、硫酸一クロム酸混液、過マンガン酸溶液、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液等を用いる方法等が挙げられる。
上記触媒化工程は、エッチング工程でエッチングされた基材粒子の表面に無電解めっきによりめっき層を形成するための起点になる触媒を基材粒子の表面に形成させる。
上記触媒を樹脂粒子の表面に形成させる方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとを含む溶液に、樹脂粒子を添加した後、酸溶液又はアルカリ溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法、並びに硫酸パラジウムとアミノピリジンとを含有する溶液に、樹脂粒子を添加した後、還元剤を含む溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法等が挙げられる。
上記無電解めっき工程は、触媒化工程において触媒が付与された基材粒子を、還元剤の存在下で金属イオンを含有する溶液中に浸漬し、触媒を起点として樹脂粒子の表面に金属を析出させる工程である。
上記還元剤として、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム及び次亜酸アンモニウム等のリン含有還元剤;ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウム等のボロン含有還元剤等が用いられる。
上記無電解めっき工程では、金属塩及び還元剤を含む金属めっき浴が用いられる。金属めっき浴中に基材粒子を浸漬することにより、触媒が表面に形成された樹脂粒子の表面に、金属を析出させることができる。
[金属材]
上記金属材は、上記導電層の外表面上に配置されている。上記導電層は、上記金属材と接していることが好ましい。上記金属材の主金属としては、錫、鉛、アンチモン、ビスマス、銅、銀、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、イリジウム、白金及び金等が挙げられる。
但し、上記金属材の主金属のイオン化傾向が、上記導電層の主金属のイオン化傾向よりも小さくなるように、上記金属材の主金属が選ばれる。
なお、上記金属材の上記主金属は、上記金属材に含まれる金属のうち、最も含有量が多い金属を意味する。上記金属材に含まれている全ての金属100重量%中、上記主金属の含有量は好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。上記金属材に1種のみの金属が含まれていてもよく、2種以上の金属が含まれていてもよい。
初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮されることから、複数の上記金属材が上記導電層の外表面上に点在していることが好ましい。なお、点在とは、複数の上記金属材が上記導電層の外表面上に複数箇所に離れて配置されていることを意味する。
初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮されることから、複数の上記金属材が、上記導電層の外表面と面接触していることが好ましい。
初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮されることから、上記金属材の主金属は、白金、パラジウム、銀、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、又は銅であることが好ましい。
複数の上記金属材の平均径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下である。上記金属材の径は、最大径を意味する。複数の上記金属材の平均径は、複数の金属材の最大径を平均することにより求められる。上記金属材の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子及び接続構造体が長期間保管されても、電極間の接続抵抗をより一層低く維持することができる。
上記導電層の外表面上に複数の金属材を配置する方法としては、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された導電層とを備える導電性粒子本体の表面に、複数の金属コロイドを吸着させることにより、複数の上記金属コロイドに由来して複数の金属材を形成する工程を行う方法が挙げられる。このような方法により得られる導電性粒子では、初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮される。
上記導電性粒子本体の表面に吸着される前の上記金属コロイドの平均粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、好ましくは40nm以下、より好ましくは35nm以下である。上記金属コロイドの粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子及び接続構造体が長期間保管されても、電極間の接続抵抗をより一層低く維持することができる。
上記金属コロイドの径は、最大径を意味する。複数の上記金属コロイドの平均径は、複数の金属コロイドの最大径を平均することにより求められる。
上記金属材の平均径の、上記導電層の厚みに対する比(平均粒子径/厚み)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。上記比(平均径/厚み)が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子及び接続構造体が長期間保管されても、電極間の接続抵抗をより一層低く維持することができる。
上記金属コロイドの平均径の、上記導電層の厚みに対する比(平均粒子径/厚み)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。上記比(平均径/厚み)が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子及び接続構造体が長期間保管されても、電極間の接続抵抗をより一層低く維持することができる。
上記導電層の表面積100%中、上記金属材により被覆されている面積の割合(被覆割合)は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。上記被覆割合が上記下限以上及び上記上限以下であると、導電性粒子及び接続構造体が長期間保管されても、電極間の接続抵抗をより一層低く維持することができる。なお、後述する実施例及び参考例では、上記被覆割合は50%以上、80%以下の範囲内であった。
[芯物質]
上記導電性粒子は導電性の表面に突起を有することが好ましい。上記導電層は外表面に突起を有することが好ましい。上記突起は複数であることが好ましい。上記導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化膜が形成されていることが多い。さらに、上記導電性粒子の導電層の表面には、酸化膜が形成されていることが多い。上記突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、上記導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記芯物質が上記導電層中に埋め込まれていることによって、上記導電層が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。但し、導電性粒子及び導電層の外表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよく、芯物質を用いないことが好ましく、上記導電性粒子は、上記導電層の外表面を隆起させるための芯物質を有さないことが好ましい。但し、上記導電性粒子は、上記導電層の外表面を隆起させている芯物質を有していてもよい。上記芯物質が用いられる場合に、上記芯物質は、上記導電層の内側又は内部に配置されることが好ましい。
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上に、第1の導電層を形成した後、該第1の導電層上に芯物質を配置し、次に第2の導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面上に導電層を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。
上記芯物質の材料としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができ、更に接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。上記芯物質の材料である金属としては、上記導電材料の材料として挙げた金属を適宜使用可能である。
上記芯物質の材料の具体例としては、チタン酸バリウム(モース硬度4.5)、ニッケル(モース硬度5)、シリカ(二酸化珪素、モース硬度6〜7)、酸化チタン(モース硬度7)、ジルコニア(モース硬度8〜9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。上記無機粒子は、ニッケル、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが好ましく、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがより好ましく、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが更に好ましく、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが特に好ましい。上記芯物質の材料のモース硬度は好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、特に好ましくは7.5以上である。
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
上記芯物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。芯物質の平均径は、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記導電性粒子1個当たりの上記の突起の数は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。上記突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。
複数の上記突起の平均高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記突起の平均高さが上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
[絶縁性物質]
上記導電性粒子は、上記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。上記絶縁性物質は、複数の金属材を介して、上記導電層の外表面上に配置されていてもよい。絶縁性物質を備える導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡をより一層防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。上記導電性粒子が導電層の外表面に複数の突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。
上記絶縁性物質の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。なかでも、水溶性樹脂が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。
上記導電層の外表面上に絶縁性物質を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。なかでも、絶縁性物質が脱離し難いことから、上記導電層の表面に、化学結合を介して上記絶縁性物質を配置する方法が好ましい。
上記導電層の外表面、及び絶縁性粒子の表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。導電層の外表面と絶縁性粒子の表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。導電層の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミンなどの高分子電解質を介して絶縁性粒子の表面の官能基と化学結合していても構わない。
上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は、導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。上記絶縁性物質の平均径が上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電層同士が接触し難くなる。上記絶縁性粒子の平均径が上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性物質を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
上記絶縁性物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。絶縁性物質の平均径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電性粒子及び上記導電材料はそれぞれ、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電材料は、回路接続用導電材料であることが好ましい。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分又は熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分を含んでいてもよく、熱硬化性成分を含んでいてもよい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、加熱により硬化可能な硬化性化合物と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記熱硬化剤は、熱カチオン硬化開始剤であることが好ましい。上記加熱により硬化可能な硬化性化合物と上記熱硬化剤とは、上記バインダー樹脂が硬化するように適宜の配合比で用いられる。上記バインダー樹脂が熱カチオン硬化開始剤を含むと、硬化物中に酸が含まれやすい。しかし、本発明に係る導電性粒子の使用により、電極間の接続抵抗を低く維持することができる。
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
上記導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。上記導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が本発明の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
図4に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
図4に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図4では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,21等を用いてもよい。
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。上記接続構造体の製造方法の一例としては、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104〜4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮されることから、上記金属材の主金属のイオン化傾向が、上記電極の外表面の主金属のイオン化傾向よりも大きいことが好ましく、上記第1の電極及び上記第2の電極の内の少なくとも一方の外表面の主金属のイオン化傾向よりも大きいことが好ましく、上記第1の電極及び上記第2の電極の双方の外表面の主金属のイオン化傾向よりも大きいことが好ましい。初期の電極間の接続抵抗がより一層低くなり、かつ長期間保管に伴う電極間の接続抵抗の上昇抑制効果がより効果的に発揮されることから、上記電極は金であることが好ましく、上記第1の電極及び第2の電極の内の少なくとも一方の外表面の主金属が金であることが好ましく、上記第1の電極及び第2の電極の双方の外表面の主金属が金であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(標準電極電位)
実施例、参考例及び比較例で使用する金属材に関して、該金属材に含まれる各種金属の標準電極電位は、次の通りである。また、金及びニッケルの標準電極電位も示した。
アルミニウム :−1.662(V)
鉄 :−0.440(V)
ニッケル :−0.257(V)
すず :−0.140(V)
ルテニウム :+0.300(V)
銅 :+0.337(V)
ロジウム :+0.758(V)
銀 :+0.799(V)
パラジウム :+0.990(V)
白金 :+1.188(V)
金 :+1.830(V)
(参考例1)
(1)導電層の形成
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(基材粒子A、積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル500g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、クエン酸ナトリウム150g/L、及びめっき安定剤6ml/Lの混合液を、アンモニアにてpH8に調整したニッケルめっき液を用意した。このニッケルめっき液500mlを徐々に上記懸濁液に滴下した。反応温度は、60℃に設定した。その後pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止するのを確認した。その後、懸濁液をろ過、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面にニッケルめっき導電層が配置された導電性粒子を得た。
(2)導電層の外表面上への金属材の配置
平均径が20nmであるパラジウムコロイド(金属材料)溶液1g/Lを用意した。純水1L中に上記で得られた導電性粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた。パラジウムコロイド溶液500mlを徐々に懸濁液に滴下した。反応温度は、25℃に設定した。滴下終了後、2時間攪拌した後、懸濁液をろ過、水洗した。
そして、Pdコロイドが吸着した導電性粒子を、温度200℃、時間30分で焼成することにより、ニッケルめっき導電層の外表面上にPd金属材が配置された導電性粒子を得た。
(3)防錆処理
純水1Lとエタノール1Lとの混合液中に、Pd金属材が配置された導電性粒子10重量部とリン酸モノヘキシルエステル0.5重量部とを入れ、50℃で1時間攪拌した。その後、ろ過し、真空乾燥機により100℃で8時間乾燥させ、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例2)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が19nmである白金コロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例3)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が20nmである銀コロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例4)
参考例1と同様にして樹脂粒子を分散した懸濁液を準備した。
銅めっき液として、硫酸銅500g/L、エチレンジアミン四酢酸150g/L、グルコン酸ナトリウム100g/L、及びホルムアルデヒド50g/Lの混合液を、アンモニアにてpH10.5に調整した銅めっき液を用意した。この銅めっき液500mlを徐々に懸濁液に滴下した。反応温度は、50℃に設定した。その後pHが安定するまで攪拌した。その後、懸濁液をろ過、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上に銅めっき導電層が配置された導電性粒子を得た。
その後、参考例1と同様にして、ニッケルめっき導電層の外表面上にPd金属材が配置された導電性粒子を得た。
純水1Lとエタノール1Lとの混合液中に、Pd金属材が配置された導電性粒子10重量部とベンゾトリアゾール0.5重量部とを入れ、50℃で1時間攪拌した。その後、ろ過し、真空乾燥機により100℃で8時間乾燥させ、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例5)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が19nmであるルテニウムコロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例6)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が20nmであるロジウムコロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例7)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が19nmであるイリジウムコロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(参考例8)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が19nmである銅コロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(実施例9)
参考例1と同様の基材粒子を用意した。この基材粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に基材粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に基材粒子を添加し、パラジウムが付着された基材粒子を得た。
パラジウムが付着された基材粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を得た。
基材粒子を上記芯物質が付着された基材粒子に変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(実施例10)
ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)をアルミナ粒子スラリー(平均粒子径100nm)に変更したこと以外は実施例9と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル導電層が配置されており、ニッケル−錫導電層の外表面上に複合Al2O3突起が配置された導電性粒子(金属材の配置後、防錆処理後)を得た。
(実施例11)
パラジウム触媒液5重量%を含むアルカリ溶液100重量部に、上記基材粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子Aを取り出した。次いで、基材粒子Aをジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子Aの表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子Aを十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液(A)を得た。
前期工程用ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル150g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、クエン酸ナトリウム20g/L、及びめっき安定剤6ml/Lの混合液を、アンモニアにてpH8に調整しためっき液を用意した。
また、突起形成用めっき液として、次亜リン酸ナトリウム200g/L、水酸化ナトリウム10g/L、を含む突起形成めっき液(pH10.0)を用意した。
分散状態の懸濁液(A)に上記前期工程用ニッケルめっき液と突起形成用めっき液とを徐々に滴下し、突起形成を行った。前期工程用ニッケルめっき液300mlを20ml/分の添加速度で定量ポンプを通して懸濁液(A)に滴下した。反応温度は、60℃に設定した。上記前期工程用ニッケルめっき液の滴下と同時に、突起形成用めっき液を滴下した。突起形成用めっき液の滴下速度は2ml/分、滴下時間は50分間とした。突起形成めっき液の滴下中は、発生したNi突起核を超音波攪拌により分散しながらニッケルめっきを施した。
その後、導電層を狙いの厚みにするために、後期工程用ニッケルめっき液として、硫酸ニッケル100g/L、クエン酸ナトリウム20g/L、次亜リン酸ナトリウム150g/L、及びめっき安定剤6ml/Lの混合液を、アンモニアにてpH8.0に調整しためっき液を用意した。このめっき液500mlを10ml/分の添加速度で定量ポンプを通して懸濁液に滴下した。反応温度は、80℃に設定した。その後pHが安定するまで攪拌し、水素の発泡が停止するのを確認し、無電解めっき後期工程を行った。
その後、懸濁液をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面にニッケル導電層が配置されており、ニッケル導電層の外表面に析出突起が配置された導電性粒子を得た。
上記のめっき方法で導電層と析出突起を形成したこと以外は参考例1と同様にして、導電性粒子(金属材の配置後、防錆処理後)を得た。
(実施例12)
基材粒子Aを、基材粒子Aと粒子径のみが異なり、粒子径が2.5μmである基材粒子Bに変更したこと以外は実施例9と同様にして、導電性粒子を得た。このようにして、樹脂粒子の表面にニッケル導電層を配置が配置されており、ニッケル導電層の外表面に複合Ni突起が配置された導電性粒子(金属材の配置後、防錆処理後)を得た。
(実施例13)
基材粒子Aを、基材粒子Aと粒子径のみが異なり、粒子径が10.0μmである基材粒子Cに変更したこと以外は実施例9と同様にして、導電性粒子を得た。このようにして、樹脂粒子の表面にニッケル導電層が配置されており、ニッケル導電層の外表面に複合Ni突起が配置された導電性粒子(金属材の配置後、防錆処理後)を得た。
(実施例14)
粒子径が2.5μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−202」)の表面を、ゾルゲル反応による縮合反応を用いてシリカシェル(厚み250nm)により被覆したコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子(基材粒子D)を得た。上記基材粒子Aを上記基材粒子Dに変更したこと以外は実施例9と同様にして、導電性粒子を得た。このようにして、樹脂粒子の表面にニッケル導電層が配置されており、ニッケル導電層の外表面に複合Ni突起が配置された導電性粒子(金属材の配置後、防錆処理後)を得た。
(実施例15)
攪拌機及び温度計が取り付けられた500mLの反応容器内に、0.13重量%のアンモニア水溶液300gを入れた。次に、反応容器内のアンモニア水溶液中に、メチルトリメトキシシラン4.1gと、ビニルトリメトキシシラン19.2gと、シリコーンアルコキシオリゴマー(信越化学工業社製「X−41−1053」)0.7gとの混合物をゆっくりと添加した。撹拌しながら、加水分解及び縮合反応を進行させた後、25重量%アンモニア水溶液2.4mLを添加した後、アンモニア水溶液中から粒子を単離して、得られた粒子を酸素分圧10−17atm、350℃で2時間焼成して、粒子径が3.0μmの有機無機ハイブリッド粒子(基材粒子E)を得た。上記基材粒子Aを上記基材粒子Eに変更したこと以外は実施例9と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル導電層が配置されており、ニッケル導電層の外表面に複合Ni突起が配置された導電性粒子(金属材の配置後、防錆処理後)を得た。
(実施例16)
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
実施例9で得られた防錆処理された導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、防錆処理されておりかつ絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
(比較例1)
導電層の外表面上に金属材を配置しなかったこと以外は参考例1と同様にして、導電性粒子を得た。
(比較例2)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が18nmであるすずコロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(比較例3)
ニッケルめっき導電層の外表面上に金属材を形成するための材料を、平均径が20nmである鉄コロイドに変更したこと以外は参考例1と同様にして、防錆処理された導電性粒子を得た。
(評価)
(1)導電層全体における主金属の平均含有量及び金属材全体における主金属の含有量
導電層及び金属材の厚み方向における主金属の各含有量の分布を測定した。
集束イオンビームを用いて、得られた導電性粒子の薄膜切片を作製した。透過型電子顕微鏡FE−TEM(日本電子社製「JEM−2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、導電層及び金属材の厚み方向における主金属の各含有量を測定した。この結果から、導電層の全体における主金属の平均含有量、並びに金属材の全体における主金属の平均含有量を求めた。
(2)導電性粒子の金属材の融点
得られた導電性粒子の金属材の融点を、示差走査熱量計(ヤマト科学社製「DSC−6300」)を用いて測定した。
(3)FOG実装の初期の接続抵抗A
接続構造体の作製:
マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「ノバキュアHX3941HP」)50重量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「EP828」)14重量部、フェノキシ樹脂(新日鐵住金化学社製「YP50」)35重量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBE403」)1重量部に、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有する最表面に金被覆されたアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)を有するガラス基板(幅3cm、長さ3cm)の最表面に金被覆されたアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じ最表面に金被覆されたアルミニウム電極を有する2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。得られた接続構造体では、電極間を接続している導電性粒子の多くにおいて、導電層に割れが観察された。なお、ポリイミドフィルムに最表面に金被覆されたアルミニウム電極が直接形成されている2層フレキシブルプリント基板を用いた。
接続抵抗の測定:
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗Aを4端子法により測定した。また、初期の接続抵抗Aを下記の基準で判定した。
[FOG実装の初期の接続抵抗Aの評価基準]
○○○:接続抵抗Aが2.0Ω以下
○○:接続抵抗Aが2.0Ωを超え、3.0Ω以下
○:接続抵抗Aが3.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗Aが5.0Ωを超え、10Ω以下
×:接続抵抗Aが10Ωを超える
(4)FOG実装の酸の存在下に晒された後の接続抵抗B
上記(3)FOG実装の初期の接続抵抗Aの評価で得られた接続構造体を50℃で、500時間放置した。接続構造体を上記条件で放置したことによって、バインダー樹脂中に浸入した水とバインダー樹脂中に含まれる酸の反応によって、接続構造体における電極間の接続部分が酸の存在下に一定期間晒された。放置後の接続構造体において、接続構造体の対向する電極間の接続抵抗Bを4端子法により測定した。また、酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bを下記の基準で判定した。
[FOG実装の酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bの評価基準]
○○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍未満
○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍以上、5倍未満
○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの5倍以上、10倍未満
△:接続抵抗Bが接続抵抗Aの10倍以上、20倍未満
×:接続抵抗Bが接続抵抗Aの20倍以上
なお、上記(3)初期の接続抵抗Aの評価では、接続抵抗が低い場合に、導電層と電極とが、より良好に接触していることを確認した。
(5)COG実装の初期の接続抵抗A
得られた導電性粒子を含有量が10重量%となるように、三井化学社製「ストラクトボンドXN−5A」に添加し、分散させて、異方性導電ペーストを作製した。
L/Sが25μm/25μmであるIZO電極パターンを上面に有する透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが25μm/25μmである金電極パターンを下面に有する半導体チップを用意した。
上記透明ガラス基板上に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、1MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で硬化させて、接続構造体を得た。
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗を、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。初期の接続抵抗Aを下記の基準で判定した。
[COG実装の初期の接続抵抗Aの判定基準]
○○○:接続抵抗Aが2.0Ω以下
○○:接続抵抗Aが2.0Ωを超え、3.0Ω以下
○:接続抵抗Aが3.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗Aが5.0Ωを超え、10Ω以下
×:接続抵抗Aが10Ωを超える
(6)COG実装の酸の存在下に晒された後の接続抵抗B(導通信頼性)
上記(5)COG実装の初期の接続抵抗Aの評価で得られた接続構造体を、85℃及び相対湿度85%の条件で150時間放置した。接続構造体を上記条件で放置したことによって、バインダー樹脂中に浸入した水とバインダー樹脂中に含まれる酸の反応によって、接続構造体における電極間の接続部分が酸の存在下に一定期間晒された。放置後の接続構造体において、接続構造体の対向する電極間の接続抵抗Bを4端子法により測定した。また、酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bを下記の基準で判定した。
[COG実装の酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bの判定基準]
○○:接続抵抗A(放置前)の平均値に比べ、接続抵抗B(放置後)の平均値が125%未満
○:接続抵抗A(放置前)の平均値に比べ、接続抵抗B(放置後)の平均値が125%以上、150%未満
△:接続抵抗A(放置前)の平均値に比べ、接続抵抗B(放置後)の平均値が150%以上、200%未満
×:接続抵抗A(放置前)の平均値に比べ、接続抵抗B(放置後)の平均値が200%以上
結果を下記の表1に示す。