以下、本発明の詳細を説明する。
(導電性粒子)
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置されており、かつニッケルを含む導電層とを備える。
本発明に係る導電性粒子では、上記ニッケルを含む導電層は、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である第1の領域と、ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である第2の領域とを有する。本明細書において、第1の領域とは、ニッケルを含む導電層において、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である領域を意味する。本明細書において、第2の領域とは、ニッケルを含む導電層において、ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である領域を意味する。
本発明に係る導電性粒子では、上記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、上記第1の領域の内側端部分が上記第2の領域の全体よりも上記基材粒子側に位置している。さらに、本発明に係る導電性粒子では、上記第2の領域の外側端部分が上記第1の領域の全体よりも上記基材粒子側とは反対側に位置している。
本発明に係る導電性粒子における上述した構成の採用により、本発明に係る導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、電極間の接続抵抗を低くし、かつ酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗を低く維持することができる。この理由の1つとして、ニッケルを含む導電層が特定の上記第1の領域を有するため、またニッケルを含む導電層の全体が、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である上記第2の領域ではないために、電極間の接続時にニッケルを含む導電層が割れたときに、ニッケルの溶出が効果的に抑えられることが挙げられる。
上記第2の領域は、電極間の接続抵抗を低くすることに寄与する。上記第2の領域の外側端部分が上記第1の領域の全体よりも上記基材粒子側とは反対側に位置しているので、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。また、上記第1の領域は、上記第2の領域よりも、耐酸性に優れているので、酸の存在下での電極間の接続抵抗を低く維持することに寄与する。
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、一部が重複していてもよい。ニッケルとリンとボロンとを含み、リンの含有量が5.0重量%以上であり、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である領域は、上記第1の領域と上記第2の領域との双方に相当する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、ニッケルを含む導電層3とを有する。導電層3は、基材粒子2の表面上に配置されている。第1の実施形態では、導電層3は、基材粒子2の表面に接している。導電性粒子1は、基材粒子2の表面が導電層3により被覆された被覆粒子である。
導電性粒子1では、ニッケルを含む導電層3は、単層の導電層である。導電性粒子1では、ニッケルを含む導電層3が、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である第1の領域R1と、ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である第2の領域R2とを有する。第1,第2の領域R1,R2全体で、導電層3が形成されている。図1では、破線部分が、第1の領域R1と第2の領域R2との境界である。
第1の領域R1と第2の領域R2とは重複していない。第1の領域R1と第2の領域R2とは接している。第1の領域R1が基材粒子2に接するように、基材粒子2側に位置しており、第2の領域R2が基材粒子2側とは反対側に位置している。従って、導電層3の厚み方向において、第1の領域R1の内側端部分(詳細には全体)が第2の領域R2の全体よりも基材粒子2側に位置しており、第2の領域R2の外側端部分(詳細には全体)が第1の領域R1の全体よりも基材粒子2側とは反対側に位置している。
導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、芯物質を有さない。導電性粒子1は導電性の表面に突起を有さない。導電性粒子1は球状である。導電層3は外表面に突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は導電性の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、絶縁性物質を有さない。但し、導電性粒子1は、導電層3の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。
導電性粒子1では、基材粒子2とニッケルを含む導電層3とが接している。基材粒子とニッケルを含む導電層との間には、ニッケルを含まない導電層が配置されていてもよく、ニッケルを含む導電層の外表面上に、ニッケルを含まない導電層が配置されていてもよい。
図4(a)〜(d)に、ニッケルを含む導電層における第1の領域R1と第2の領域R2の位置関係の変形例を模式図に示す。なお、図4(a)〜(d)において、第1,第2の領域R1,R2の厚みは適宜変更可能である。
図4(a)は、ニッケルを含む導電層X1の厚み方向中央において、第1の領域R1と第2の領域R2とは一部が重複している。図4(a)では、破線の内側部分が第1の領域R1であり、一点鎖線の外側部分が第2の領域R2である。このように、第1の領域R1と第2の領域R2とは一部が重複していてもよい。
図4(b)では、ニッケルを含む導電層X2において、第1の領域R1と第2の領域R2とは接していない。導電層X2において、第1の領域R1と第2の領域R2との間には、第1の領域R1と第2の領域R2とのいずれにも相当しない他の領域R3が配置されている。
図4(c)では、ニッケルを含む導電層X3において、第1の領域R1よりも基材粒子Y側に、また基材粒子Yと第1の領域R1との間に、第1の領域R1と第2の領域R2とのいずれにも相当しない他の領域R3が配置されている。第1の領域R1の基材粒子Y側とは反対側に、第2の領域R2が配置されている。
図4(d)では、ニッケルを含む導電層X4において、第2の領域R2の基材粒子Y側とは反対側に、第1の領域R1と第2の領域R2とのいずれにも相当しない他の領域R3が配置されている。第2の領域R2の基材粒子Y側に、第1の領域R1が配置されている。
図4(a)〜(d)では、ニッケルを含む導電層X1〜X4の厚み方向において、第1の領域R1の内側端部分が第2の領域R2の全体よりも基材粒子Y側に位置しており、第2の領域R2の外側端部分が第1の領域R1の全体よりも基材粒子Y側とは反対側に位置している。上記ニッケルを含む導電層の厚み方向において、上記第1の領域の内側端部分が上記第2の領域の全体よりも上記基材粒子側に位置しており、上記第2の領域の外側端部分が上記第1の領域の全体よりも上記基材粒子側とは反対側に位置していればよく、ニッケルを含む導電層の構成は適宜変更することができる。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、ニッケルを含む導電層12と、複数の芯物質13と、複数の絶縁性物質14とを有する。導電層12は、基材粒子2の表面上に基材粒子2に接するように配置されている。
導電性粒子11では、ニッケルを含む導電層12は、単層の導電層である。導電性粒子11では、ニッケルを含む導電層12が、第1の領域R1と、第2の領域R2とを有する。第1,第2の領域R1,R2全体で、導電層12が形成されている。図2では、破線部分が、第1の領域R1と第2の領域R2との境界である。
導電性粒子11は導電性の表面に、複数の突起11aを有する。導電層12は外表面に、複数の突起12aを有する。複数の芯物質13が、基材粒子2の表面上に配置されている。複数の芯物質13は導電層12内に埋め込まれている。芯物質13は、突起11a,12aの内側に配置されている。導電層12は、複数の芯物質13を被覆している。複数の芯物質13により導電層12の外表面が隆起されており、突起11a,12aが形成されている。
導電性粒子11は、導電層12の外表面上に配置された絶縁性物質14を有する。導電層12の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質14により被覆されている。絶縁性物質14は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図3に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、ニッケルを含む導電層22と、複数の芯物質13と、複数の絶縁性物質14とを有する。ニッケルを含む導電層22は全体で、基材粒子2側に第1の導電層22Aと、基材粒子2側とは反対側に第2の導電層22Bとを有する。
導電性粒子11と導電性粒子21とでは、導電層のみが異なっている。すなわち、導電性粒子11では、1層構造の導電層が形成されているのに対し、導電性粒子21では、2層構造の第1の導電層22A及び第2の導電層22Bが形成されている。第1の導電層22Aと第2の導電層22Bとは別の導電層として形成されている。
第1の導電層22Aは、基材粒子2の表面上に配置されている。基材粒子2と第2の導電層22Bとの間に、第1の導電層22Aが配置されている。第1の導電層22Aは、基材粒子2に接している。従って、基材粒子2の表面上に第1の導電層22Aが配置されており、第1の導電層22Aの表面上に第2の導電層22Bが配置されている。導電性粒子21は導電性の表面に、複数の突起21aを有する。導電層22は外表面に、複数の突起22aを有する。第1の導電層22Aは外表面に、複数の突起22Aaを有する。第2の導電層22Bは外表面に、複数の突起22Baを有する。
導電性粒子21では、ニッケルを含む導電層22は、2層の導電層である。導電性粒子21では、ニッケルを含む導電層22が、第1の領域R1と、第2の領域R2とを有する。第1の導電層22Aが第1の領域R1である。第2の領域22Bが第2の領域R2である。
以下、導電性粒子の他の詳細について説明する。
[基材粒子]
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。なかでも、金属粒子を除く基材粒子が好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子がより好ましい。
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。上記導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、上記導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより上記導電性粒子を圧縮させる。上記基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に上記導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性が高くなる。
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が用いられる。エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させることにより、導電材料に適した任意の圧縮時の物性を有する樹脂粒子を設計及び合成することができる。
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合に、上記基材粒子の材料無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上持つケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは300μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは5μm以下である。上記基材粒子の粒子径が上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに基材粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。上記基材粒子の粒子径が上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗がより一層低くなり、更に電極間の間隔が小さくなる。上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
上記基材粒子の粒子径は、2μm以上、5μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が2〜5μmの範囲内であると、電極間の間隔が小さくなり、かつ導電層の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子が得られる。
[導電層]
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子の表面上に配置されたニッケルを含む導電層(以下、[導電層]の欄において、ニッケルを含む導電層を導電層Xと記載することがある)を備える。上記導電層Xは、ニッケルとリンとを含み、かつリンの含有量が5.0重量%以上である第1の領域と、ニッケルとボロンとを含み、かつボロンの含有量が0.5重量%以上である第2の領域とを有する。
酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗をより一層上昇し難くする観点からは、上記第1の領域の厚みが、上記第2の領域の厚みよりも厚いことが好ましい。但し、上記第1の領域の厚みは、上記第2の領域の厚みと等しいか又は上記第2の領域の厚みよりも薄くてもよい。上記第1の領域の厚みが、上記第2の領域の厚みの1倍を超えることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、5.0倍以上であることが更に好ましい。上記第1の領域の厚みが、上記第2の領域の厚みの20倍以下であってもよく、10倍以下であってもよい。
酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗をより一層上昇し難くする観点からは、上記第1の領域の厚みが、上記導電層X全体の厚みの1/5以上であることが好ましい。但し、上記第1の領域の厚みが、上記導電層X全体の厚みの1/5未満であってもよい。上記第1の領域の厚みが、上記導電層X全体の厚みの1/4以上であることが好ましく、1/3以上であることがより好ましい。上記第1の領域の厚みが、上記導電層X全体の厚みの9/10以下であってもよく、4/5以下であってもよい。
上記導電層X全体の厚みは、好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。上記導電層X全体の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、充分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が充分に変形する。
上記導電層X全体の厚みは、0.05μm以上、0.3μm以下であることが特に好ましい。さらに、上記基材粒子の粒子径が2μm以上、5μm以下であり、かつ、上記導電層X全体の厚みが0.05μm以上、0.3μm以下であることが特に好ましい。この場合には、導電性粒子を大きな電流が流れる用途により好適に用いることができる。さらに、導電性粒子を圧縮して電極間を接続した場合に、電極が損傷するのをより一層抑制できる。
酸の存在下に晒されても電極間の接続抵抗をより一層上昇し難くする観点からは、上記第1の領域の厚みは、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上、特に好ましくは80nm以上、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。
電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記第2の領域の厚みは、好ましくは2nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは20nm以下である。
上記導電層Xの厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
上記導電層Xは全体で、ニッケルに加えて、リンとボロンとを含む。上記第1の領域は、ニッケルとリンとを含む。上記第1の領域は、ボロンを含まないか又は含む。上記第2の領域は、ニッケルとボロンとを含む。上記第2の領域は、リンを含まないか又は含む。
上記導電層Xは、ニッケル以外の金属を含んでいてもよい。上記導電層Xにおけるニッケル以外の金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、パラジウム、クロム、シーボーギウム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン、モリブデン、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。これらの金属は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記導電層Xにおいて、複数の金属が含まれる場合に、複数の金属は合金化していてもよい。導電層及び突起が効果的に硬くなるので、上記ニッケル層はタングステンを含むことが好ましい。導電層及び突起が硬くなると、酸化被膜が効果的に排除されやすくなる。
接続抵抗をより一層良好にする観点からは、上記導電層Xは、少なくとも一部においてタングステン又はモリブデンを含むことが好ましい。上記導電層Xは、タングステンを含むことが好ましく、モリブデンを含むことが好ましい。接続抵抗をより一層良好にする観点からは、上記第1の領域は、少なくとも一部においてタングステン又はモリブデンを含むことが好ましい。接続抵抗をより一層良好にする観点からは、上記第2の領域は、少なくとも一部においてタングステン又はモリブデンを含むことが好ましい。
電極間の初期の接続抵抗を効果的に低くする観点からは、上記導電層Xの全体100重量%中の上記ニッケルの平均含有量は多いほどよい。従って、上記導電層Xの全体100重量%中、上記ニッケルの平均含有量は好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より一層好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、更に一層好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。上記導電層Xの全体100重量%中のニッケルの平均含有量は97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。
ニッケルの平均含有量の上限は、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンなどの含有量により適宜変更できる。上記導電層Xの全体100重量%中のニッケルの平均含有量は好ましくは99.85重量%以下、より好ましくは99.7重量%以下、更に好ましくは99.45重量%未満である。上記ニッケルの平均含有量が上記下限以上であると、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、電極や導電層の表面における酸化被膜が少ない場合には、上記ニッケルの平均含有量が多いほど電極間の接続抵抗が低くなる傾向がある。
上記導電層X全体でのリンの平均含有量は、好ましくは5.0重量%以上、より好ましくは6.0重量%以上、好ましくは20.0重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。上記導電層X全体でのボロンの平均含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下である。上記導電層X全体でのタングステン及びモリブデンの平均含有量(タングステンとモリブデンとの合計)は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
上記導電層X全体でのニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗の低減効果と、酸の存在下での接続抵抗の上昇の抑制効果とがより一層良好に発揮される。上記導電層X全体でのタングステン及びモリブデンの平均含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続抵抗がより一層良好になる。
上記第1の領域全体でのニッケルの平均含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記第1の領域全体でのリンの平均含有量は、好ましくは5.0重量%以上、より好ましくは6.0重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%未満、更に好ましくは10重量%以下である。上記第1の領域全体でのボロンの平均含有量は、0重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下である。上記第1の領域全体でのタングステン及びモリブデンの平均含有量は、0重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記第1の領域全体でのボロン、並びにタングステン及びモリブデンの平均含有量は0重量%(未含有)であってもよい。
上記第1の領域全体でのニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗の低減効果と、酸の存在下での接続抵抗の上昇の抑制効果とがより一層良好に発揮される。上記第1の領域全体でのタングステン及びモリブデンの平均含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続抵抗がより一層良好になる。
上記第2の領域全体でのニッケルの平均含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。上記第2の領域全体でのリンの平均含有量は、0重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下、更に好ましくは2.0重量%以下である。上記第2の領域全体でのボロンの平均含有量は、0重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下である。上記第2の領域全体でのタングステン及びモリブデンの平均含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記第1の領域全体でのリン、並びにタングステン及びモリブデンの平均含有量は0重量%(未含有)であってもよい。
上記第2の領域全体でのニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗の低減効果と、酸の存在下での接続抵抗の上昇の抑制効果とがより一層良好に発揮される。上記第2の領域全体でのタングステン及びモリブデンの平均含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続抵抗がより一層良好になる。
上記導電層Xにおけるニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量の測定方法は、既知の種々の分析法を用いることができ、特に限定されない。この測定方法として、吸光分析法又はスペクトル分析法等が挙げられる。上記吸光分析法では、フレーム吸光光度計及び電気加熱炉吸光光度計等を用いることができる。上記スペクトル分析法としては、プラズマ発光分析法及びプラズマイオン源質量分析法等が挙げられる。
上記導電層Xにおけるニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量を測定する際には、ICP発光分析装置を用いることが好ましい。ICP発光分析装置の市販品としては、HORIBA社製のICP発光分析装置等が挙げられる。
上記導電層Xの厚み方向におけるニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各含有量及び各平均含有量を測定する際には、FE−TEM装置を用いることが好ましい。上記FE−TEM装置の市販品としては、日本電子社製「JEM−2010」等が挙げられる。
上記基材粒子の表面上に導電層を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子又は他の導電層の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下である。導電性粒子の粒子径が上記下限以上及び上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。上記導電性粒子の粒子径は、3μm以下であることも好ましい。
上記導電性粒子の粒子径は、導電性粒子が真球状である場合には、直径を示し、導電性粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
上記導電層Xは、1つの層により形成されていてもよく、複数の層により形成されていてもよい。すなわち、上記導電層Xは、2層以上の積層構造を有していてもよい。上記導電性粒子は、上記導電層X以外に、最外層などとして、金層、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は錫と銀とを含む合金層を備えていてもよい。
上記導電層X、上記第1の領域及び上記第2の領域におけるニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各含有量及び各平均含有量を制御する方法としては、例えば、無電解ニッケルめっきにより導電層Xを形成する際に、ニッケルめっき液のpHを制御する方法、無電解ニッケルめっきにより導電層Xを形成する際に、ボロン含有還元剤の濃度を調整する方法、無電解ニッケルめっきにより導電層Xを形成する際に、リン含有還元剤の濃度を調整する方法、ニッケルめっき液中のタングステン濃度又はモリブデン濃度を調整する方法並びにニッケルめっき液中のニッケル濃度を調整する方法等が挙げられる。
無電解めっきにより形成する方法では、一般的に、触媒化工程と、無電解めっき工程とが行われる。以下、無電解めっきにより、樹脂粒子の表面に、ニッケルとリンとボロンとを含む合金めっき層を形成する方法の一例を説明する。
上記触媒化工程では、無電解めっきによりめっき層を形成するための起点となる触媒を、樹脂粒子の表面に形成させる。
上記触媒を樹脂粒子の表面に形成させる方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとを含む溶液に、樹脂粒子を添加した後、酸溶液又はアルカリ溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法、並びに硫酸パラジウムとアミノピリジンとを含有する溶液に、樹脂粒子を添加した後、還元剤を含む溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法等が挙げられる。上記還元剤として、ボロン含有還元剤が好適に用いられる。また、上記還元剤として、リン含有還元剤を用いることで、リンを含む導電層Xを形成できる。
上記無電解めっき工程では、ニッケル含有化合物及び上記ボロン含有還元剤を含むニッケルめっき浴が好適に用いられる。ニッケルめっき浴中に樹脂粒子を浸漬することにより、触媒が表面に形成された樹脂粒子の表面に、ニッケルを析出させることができ、ニッケルとボロンとを含む導電層Xを形成できる。また、上記無電解めっき工程では、ニッケル含有化合物及び上記リン含有還元剤を含むニッケルめっき浴が好適に用いられる。
上記ニッケル含有化合物としては、硫酸ニッケル及び塩化ニッケル等が挙げられる。上記ニッケル含有化合物は、ニッケル塩であることが好ましい。
上記ボロン含有還元剤としては、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。上記リン含有還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明に係る導電性粒子は、導電性の表面に突起を有することが好ましい。上記導電層Xは、外表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。導電性の表面に突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性物質又は樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記突起は複数であることが好ましい。上記導電性粒子1個当たりの上記導電層Xの外表面の突起は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。
接続抵抗を効果的に低くし、高温高湿下での電極間の接続信頼性を効果的に高める観点からは、上記導電層Xの外表面の全表面積100%中、上記突起がある部分の表面積は好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。上記導電層Xの外表面の全表面積100%中、上記突起がある部分の表面積の占める割合の上限は特に限定されない。上記導電層Xの外表面の全表面積100%中、上記突起がある部分の表面積は好ましくは99%以下、より好ましくは95%以下である。
[芯物質]
上記導電性粒子は導電性の表面に突起を有することが好ましい。上記導電層は外表面に突起を有することが好ましい。上記突起は複数であることが好ましい。上記導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、上記導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。上記突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、上記導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記芯物質が上記導電層中に埋め込まれていることによって、上記導電層が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。但し、導電性粒子及び導電層の外表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよく、芯物質を用いないことが好ましい。上記導電性粒子は、上記導電層の外表面を隆起させるための芯物質を有さないことが好ましい。但し、上記導電性粒子は、上記導電層の外表面を隆起させている芯物質を有していてもよい。上記芯物質が用いられる場合に、上記芯物質は、上記導電層の内側又は内部に配置されることが好ましい。
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上に、第1の導電層(ニッケル層等)を形成した後、該第1の導電層上に芯物質を配置し、次に第2の導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面上に導電層を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。
上記芯物質の材料としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができ、更に接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。上記芯物質の材料である金属としては、上記導電材料の材料として挙げた金属を適宜使用可能である。
上記芯物質の材料の具体例としては、チタン酸バリウム(モース硬度4.5)、ニッケル(モース硬度5)、シリカ(二酸化珪素、モース硬度6〜7)、酸化チタン(モース硬度7)、ジルコニア(モース硬度8〜9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。上記無機粒子は、ニッケル、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが好ましく、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがより好ましく、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが更に好ましく、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが特に好ましい。上記芯物質の材料のモース硬度は好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、特に好ましくは7.5以上である。
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
上記芯物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。芯物質の平均径は、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
上記導電性粒子1個当たりの上記の突起の数は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。上記突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。
複数の上記突起の平均高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記突起の平均高さが上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
[絶縁性物質]
上記導電性粒子は、上記導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡をより一層防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。上記導電性粒子が導電層の外表面に複数の突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質をより一層容易に排除できる。
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。
上記絶縁性物質の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。なかでも、水溶性樹脂が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。
上記導電層の外表面上に絶縁性物質を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。なかでも、絶縁性物質が脱離し難いことから、上記導電層の表面に、化学結合を介して上記絶縁性物質を配置する方法が好ましい。
上記導電層の外表面、及び絶縁性粒子の表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。導電層の外表面と絶縁性粒子の表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。導電層の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミンなどの高分子電解質を介して絶縁性粒子の表面の官能基と化学結合していても構わない。
上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は、導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。上記絶縁性物質の平均径が上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電層同士が接触し難くなる。上記絶縁性粒子の平均径が上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性物質を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
上記絶縁性物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。絶縁性物質の平均径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電性粒子及び上記導電材料はそれぞれ、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電性粒子及び導電材料はそれぞれ、回路接続材料であることが好ましい。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分又は熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱可塑性成分を含んでいてもよく、熱硬化性成分を含んでいてもよい。上記導電材料及び上記バインダー樹脂は、熱硬化性成分を含むことが好ましい。上記熱硬化性成分は、加熱により硬化可能な硬化性化合物と熱硬化剤とを含むことが好ましい。上記熱硬化剤は、熱カチオン硬化開始剤であることが好ましい。上記加熱により硬化可能な硬化性化合物と上記熱硬化剤とは、上記バインダー樹脂が硬化するように適宜の配合比で用いられる。上記バインダー樹脂が熱カチオン硬化開始剤を含むと、硬化物中に酸が含まれやすい。しかし、本発明に係る導電性粒子の使用により、電極間の接続抵抗を低く維持することができる。
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
本発明に係る導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が本発明の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
図5に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
図5に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図5では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,21等を用いてもよい。
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。上記接続構造体の製造方法の一例としては、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104〜4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(1)ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子A(基材粒子、積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、硫酸ニッケル0.25mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH7.0)を用意した。
得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上にニッケル−リン導電層(厚み0.09μm)が配置された導電性粒子を得た。
(2)ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成
硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
また、得られた導電性粒子を蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例2)
ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成時に、ニッケルめっき液にタングステン酸ナトリウム濃度を0.35mol/Lを追加したこと、それによって各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン−タングステン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例3)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成時に、ニッケルめっき液のpHを6.0に変更したこと、それによって各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル−リン導電層(厚み0.09μm)が配置された導電性粒子を得た。その後、実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例4)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成時に、ニッケルめっき液のpHを5.5に変更したこと、それによって各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル−リン導電層(厚み0.09μm)配置された導電性粒子を得た。その後、実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例5)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の厚みを0.08μmに変更したこと、ニッケルを含む導電層の第2の領域の厚みを0.02μmに変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性粒子を得た。
(実施例6)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の厚みを0.07μmに変更したこと、ニッケルを含む導電層の第2の領域の厚みを0.03μmに変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したことと以外は実施例3と同様にして導電性粒子を得た。
(実施例7)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の厚みを0.06μmに変更したこと、ニッケルを含む導電層の第2の領域の厚みを0.04μmに変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性粒子を得た。
(実施例8)
実施例1と同様の樹脂粒子A(基材粒子)を用意した。この基材粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に基材粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に基材粒子を添加し、パラジウムが付着された基材粒子を得た。
パラジウムが付着された基材粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を得た。
基材粒子を上記芯物質が付着された基材粒子に変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。
(実施例9)
実施例1と同様の樹脂粒子A(基材粒子)を用意した。この基材粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に基材粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に基材粒子を添加し、パラジウムが付着された基材粒子を得た。
パラジウムが付着された基材粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された基材粒子を得た。
基材粒子を上記芯物質が付着された基材粒子に変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子(絶縁性粒子を付着させる前の導電性粒子)を得た。
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
走査電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
(実施例10)
ニッケルを含む導電層を含む第1の領域の厚みを0.01μmに変更したこと、ニッケルを含む導電層の第2の領域の厚みを0.09μmに変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例3と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例1)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成時に、ニッケルめっき液のpHを9.0に変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル−リン導電層(厚み0.09μm)配置された導電性粒子を得た。その後、実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例11)
ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成時に、ニッケルめっき液にモリブデン酸ナトリウム0.35mol/Lを追加したこと、それによって各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン−モリブデン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例12)
ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成時に、ニッケルめっき液にタングステン酸ナトリウム0.50mol/Lを追加したこと、それによって各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン−タングステン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例13)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、粒子径が2.5μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子B(積水化学工業社製「ミクロパールSP−2025」)に変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例14)
ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、粒子径が10μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子C(積水化学工業社製「ミクロパールSP−210」)に変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例15)
撹拌機及び温度計が取り付けられた500mLの反応容器内に、0.13重量%のアンモニア水溶液300gを入れた。次に、反応容器内のアンモニア水溶液中に、メチルトリメトキシシラン4.1gと、ビニルトリメトキシシラン19.2gと、シリコーンアルコキシオリゴマー(信越化学工業社製「X−41−1053」)0.7gとの混合物をゆっくりと添加した。撹拌しながら、加水分解及び縮合反応を進行させた後、25重量%アンモニア水溶液2.4mLを添加した後、アンモニア水溶液中から粒子を単離して、得られた粒子を酸素分圧10−17atm、350℃で2時間焼成して、粒子径が3.0μmの有機無機ハイブリッド粒子Dを得た。ジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子Aを、得られた有機無機ハイブリッド粒子Dに変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例16)
(1)ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子A(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、硫酸ニッケル0.25mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH7.0)を用意した。
得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上にニッケル−リン導電層(厚み0.09μm)が配置された導電性粒子を得た。
(2)ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成
硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
また、得られた導電性粒子の全部を蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
その後、導電層に突起を形成するために、突起形成用めっき液を徐々に滴下し、突起を形成した。めっき液中に発生したNi突起核を超音波撹拌により分散しながらニッケルめっきを行った。上記ニッケルめっき液を用いて、無電解めっき処理することにより、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル層(ニッケル−ボロン合金層、厚み0.01μm)と析出突起とが形成された導電性粒子を得た。
(実施例17)
(1)ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子A(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、硫酸ニッケル0.25mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、及びクエン酸ナトリウム0.15mol/Lを含むニッケルめっき液(pH7.0)を用意した。
得られた懸濁液を70℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上にニッケル−リン−ボロン導電層(厚み0.09μm)が配置された導電性粒子を得た。
(2)ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成
硫酸ニッケル0.23mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L及びクエン酸ナトリウム0.5mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
また、得られた導電性粒子の全部を蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、ニッケル−リン−ボロン導電層の表面上にニッケル−リン−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例2)
ニッケルを含む導電層を含む第1の領域と第2の領域との配置を逆に変更したこと、即ち実施例1における第1の領域を第2の領域と同様に形成し、実施例1における第2の領域を第1の領域と同様に形成したこと以外は実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
(比較例3)
ニッケルを含む導電層の第1の領域の形成時に、次亜リン酸ナトリウム0.25mol/Lを、次亜リン酸ナトリウム0.12mol/Lに変更したこと、並びに各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面にニッケル−リン導電層(厚み0.09μm)配置された導電性粒子を得た。その後、実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例4)
ニッケルを含む導電層の第2の領域の形成時に、ジメチルアミンボラン0.92mol/Lを、ジメチルアミンボラン0.20mol/Lに変更したこと、それによって各成分の含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、ニッケル−リン導電層の表面上にニッケル−ボロン導電層(厚み0.01μm)が配置された導電性粒子を得た。
(評価)
(1)ニッケルを含む導電層の全体100重量%中のニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量
60%硝酸5mLと37%塩酸10mLとの混合液に、導電性粒子5gを加え、導電層を完全に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用いて、ニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの含有量をICP−MS分析器(日立製作所社製)により分析した。
(2)ニッケルを含む導電層の厚み方向における、ニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの含有量
ニッケルを含む導電層の厚み方向における、ニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの含有量の分布を測定した。
集束イオンビームを用いて、得られた導電性粒子の薄膜切片を作製した。透過型電子顕微鏡FE−TEM(日本電子社製「JEM−2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、ニッケルを含む導電層の厚み方向におけるニッケル、リン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各含有量を測定した。この結果から、第1,第2の領域の有無、第1,第2の領域の各厚みと、第1,第2の領域全体でのリン、ボロン、タングステン及びモリブデンの各平均含有量を求めた。
(3)初期の接続抵抗A
接続構造体の作製:
マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「ノバキュアHX3941HP」)50重量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学社製「EP828」)14重量部、フェノキシ樹脂(新日鐵住金化学社製「YP50」)35重量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業社製「KBE403」)1重量部に、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)を有するガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じアルミニウム電極を有する2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。得られた接続構造体では、電極間を接続している導電性粒子の多くにおいて、導電層に割れが観察された。なお、ポリイミドフィルムにアルミニウム電極が直接形成されている2層フレキシブルプリント基板を用いた。
接続抵抗の測定:
得られた接続構造体の対向する電極間の接続抵抗Aを4端子法により測定した。また、初期の接続抵抗Aを下記の基準で判定した。
[初期の接続抵抗Aの評価基準]
○○○:接続抵抗が2.0Ω以下
○○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
○:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗が5.0Ωを超え、10Ω以下
×:接続抵抗が10Ωを超える
(4)酸の存在下に晒された後の接続抵抗B
上記(3)初期の接続抵抗Aの評価で得られた接続構造体を50℃で、500時間放置した。接続構造体を上記条件で放置したことによって、バインダー樹脂中に含まれる酸によって、接続構造体における電極間の接続部分が酸の存在下に一定期間晒された。放置後の接続構造体において、接続構造体の対向する電極間の接続抵抗Bを4端子法により測定した。また、酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bを下記の基準で判定した。
[酸の存在下に晒された後の接続抵抗Bの評価基準]
○○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍未満
○○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの2倍以上、5倍未満
○:接続抵抗Bが接続抵抗Aの5倍以上、10倍未満
△:接続抵抗Bが接続抵抗Aの10倍以上、20倍未満
×:接続抵抗Bが接続抵抗Aの20倍以上
結果を下記の表1に示す。また、実施例8,9,16において、導電層の外表面の全表面積100%中、突起がある部分の表面積が30%以上であった。