以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
〔失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る失禁パッド1は、図1〜図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、尿などを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2、3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体を囲繞するクレープ紙や不織布等からなる被包シート5と、前記吸収体4の略側縁部を起立基端とし、かつ少なくとも尿排出部位Hを含むように長手方向に所定の区間内において肌側に突出して設けられた左右一対の立体ギャザーBS、BSを形成するサイド不織布7、7とから主に構成され、かつ前記吸収体4の周囲においては、その長手方向端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール等の接着手段によって接合されている。なお、必要に応じて、前記透液性表面シート3と吸収体4との間に、親水性のセカンドシートを配置することができる。
以下、さらに前記失禁パッド1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3は、通常の表面が平坦な平板状のものでもよいし、後段で詳述するように、凹凸状に形成されたもの、断面波状に形成されたもの、多数の開口を有するものなど種々の形態で形成することができる。
前記吸収体4は、たとえば綿状パルプ等の吸収性繊維と高吸水性ポリマー8とにより構成され、図示例では平面形状がパッド長手方向に長い縦長の略小判形とされている。前記高吸水性ポリマー8は例えば粒状粉とされ、吸収体4を構成するパルプ中に分散混入されている。
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。本失禁パッド1では、吸収体4を被包シート5で囲繞するため、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって尿を速やかに拡散させるとともに、これら尿等の逆戻りを防止するようになる。前記パルプの目付は、100g/m2〜600g/m2、好ましくは200g/m2〜500g/m2とするのがよい。
前記高吸水性ポリマー8としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、尿に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
前記目付けの測定は、試料から20mm×40mm(±2mm)の寸法をロールカッターで切り取って重量を測定し、1m2あたりの重さに換算し、目付けとする。また、パルプ重量及びポリマー重量の測定は、吸収体4からパルプ繊維又はポリマーのみを取り出し、その重量を計量器によって測定する。また、厚みは株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、ダイヤルシックネスゲージ大型タイプ、型式J−B(測定範囲0〜35mm)を用い、試料と厚み測定器を水平にして測定する。
前記被包シート5は、ティシュー等の紙材あるいは不織布等の透液性のシートを用いることができる。特に、資材の破壊(破れ)が生じにくい不織布を用いるのが好ましい。このような不織布としては、薄さと強度のバランスに優れたスパンボンド法やSMS法により加工された不織布、熱可塑性エラストマー樹脂などからなる弾性繊維をスパンボンド法、メルトブロー法など紡糸工程に直結してウェブを形成する方法により加工された不織布、ラテックス、ウレタン、オレフィン系の繊維など伸縮性を有する素材を主成分とする不織布が好適である。なお、被包シート5は、少なくとも吸収体4の肌当接面側(表面側)の面が撥水性でなければシートの親水度は特に問わない。
本失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ失禁パッド1の全長に亘ってサイド不織布7,7が設けられ、このサイド不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたサイド不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して、前記吸収体4の両側部にそれぞれ吸収体4の存在しないサイドフラップ部が形成されている。
前記サイド不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、尿の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができる。
前記サイド不織布7、7は、適宜に折り畳まれて、前記吸収体4の略側縁近傍位置を起立基端として肌側に起立する左右一対の内側立体ギャザー10、10と、相対的に前記内側立体ギャザー10より外側に位置するとともに、前記吸収体4よりも側方に延出する前記サイドフラップ部であって、不透液性裏面シート2及びサイド不織布7によって形成された肌側に起立する左右一対の外側立体ギャザー11、11とからなる2重ギャザー構造の立体ギャザーBSを構成している。なお、前記立体ギャザーBSは、少なくとも前記サイドフラップ部に形成される外側立体ギャザー11を含んでいればよい。
前記内側立体ギャザー10および外側立体ギャザー11の構造についてさらに詳しく説明すると、前記サイド不織布7は、図2に示されるように、幅方向両側端をそれぞれパッド裏面側に折り返して幅方向内側及び幅方向外側にそれぞれ二重シート部分7a、7bを形成するとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7a内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では1本の糸状弾性伸縮部材12が配設されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7b内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1本または複数本の、図示例では2本の糸状弾性伸縮部材13、13が配設され、前記幅方向内側の二重シート部分7aの基端部が吸収体4の側部に配設される透液性表面シート3の上面にホットメルト接着剤等により接着されるとともに、幅方向外側の二重シート部分7bの基端部が前記吸収体4よりも側方に延出する不透液性裏面シート2の側端部にホットメルト接着剤等により接着されることにより、前記幅方向内側の二重シート部分7aによって肌側に起立する内側立体ギャザー10が形成されるとともに、前記幅方向外側の二重シート部分7bによって肌側に起立する外側立体ギャザー11が形成されている。なお、前記サイド不織布7は、パッド長手方向の両端部では、図3に示されるように、前記糸状弾性伸縮部材12、13が配設されないとともに、前記幅方向内側の二重シート部分7aがホットメルト接着剤等によって吸収体4側に接合されている。
〔凹溝22について〕
本失禁パッド1では、肌側に長手方向に沿って尿流入用の凹溝22が形成されている。前記凹溝22は、透液性表面シート3の表面に排出された尿を受け止めて、尿を一時貯留するとともに、前後方向への尿の拡散を誘導し、且つ吸収体4への尿の吸収速度を速め、横漏れを防止するためのものである。
前記吸収体4は、前記凹溝22の形成予定部分に、予め、失禁パッド1の長手方向に沿うとともに尿排出部位Hを含む長手方向範囲に亘って、肌面から非肌面にかけて厚み方向に貫通する吸収体貫通部20を備えている。前記吸収体貫通部20は、吸収体を構成するパルプやポリマーが介在しない部分であり、吸収体が厚み方向に開口した部分である。
前記吸収体貫通部20は、図1に示されるように、吸収体4に対して、尿排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、失禁パッド1の幅方向に離間して複数条で形成したり、パッド長手方向に離間する不連続線状に形成するなど、種々の形態で形成することができる(図20〜図22参照)。なお、複数の吸収体貫通部20を設ける場合は、それぞれの吸収体貫通部20に対して透液性表面シート3の表面側からエンボスを施すことにより凹溝22を設けるのが好ましい。
前記吸収体貫通部20の平面寸法は、パッド長手方向の長さが100〜180mm、溝幅が5〜30mmとするのがよい。
前記吸収体貫通部20を備えた吸収体4に前記透液性表面シート3を積層した状態で、前記透液性表面シート3の表面側から前記吸収体貫通部20に対し、前記吸収体貫通部20に沿ってエンボス部21を施すことにより、パッド長手方向に沿って前記凹溝22が形成されている。前記エンボス部21は、吸収体貫通部20の形成範囲内であって、周囲の吸収体4を圧搾しない範囲に施されている。
前記エンボス部21を透液性表面シート3の表面側から施すことにより、少なくとも透液性表面シート3及び不透液性裏面シート2が一体化されている。本例のように、吸収体4が被包シート5によって囲繞される場合には、吸収体貫通部20において透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に被包シート5が介在するため、前記エンボス部21を施すことにより、透液性表面シート3、被包シート5及び不透液性裏面シート2が一体化されている。また、透液性表面シート3と吸収体4との間に親水性のセカンドシートを介在させた場合や、透液性表面シート3と吸収体4との間又は吸収体4と不透液性裏面シート2との間に液拡散性の拡散用シートを介在させた場合には、前記エンボス部21を施すことにより、前記透液性表面シート3、被包シート5及び不透液性裏面シート2に加えて、前記セカンドシートや拡散用シートも一体化されるようになる。前記エンボス部21は、圧搾した状態で加熱することにより各構成部材を熱融着させてもよいし、加熱せずに圧力を加え透液性表面シート3の非肌側面をホットメルト接着剤などの接合手段で接合することによって透液性表面シート3の凹凸状、波状などに形成された形状を維持するようにしてもよい。
前記凹溝22の底面において少なくとも透液性表面シート3及び不透液性裏面シート2を一体化するには、エンボスによる圧着又は接着剤による接着を、凹溝22の底面に対し所定のパターンで施すことにより成すことができる。前記圧着又は接着のパターンとしては、図1に示されるように、凹溝22に沿うとともに凹溝22の両側縁を往復するように幅方向両側に凹凸を繰り返すパターンで形成された波状エンボス25と、前記波状エンボス25が幅方向外側に突出する凸部と反対側の側縁部に、凹溝22に沿って形成された線状エンボス26とから構成されたパターンとすることができる。また、図示しないが、格子状、菱格子状などのように多数の領域に区画されたパターンで設けてもよい。この他に、透液性表面シート3の表面側から吸収体貫通部20に対し、多数のピン状エンボス21a、21a…又はドット状エンボスを施したり(図13及び図14参照。)、吸収体貫通部20の幅より小さなエンボス幅でエンボスを施したり、先端が平坦なエンボス凸部24でエンボスを施したり(図15〜図17参照。)することにより成すこともできる。
以上の構成からなる凹溝22を備えることによって、本失禁パッド1では、図4に示されるように、凹溝22の底部に吸収体が介在しないため、前記凹溝22を可撓軸として失禁パッド1の幅方向両側が肌側に突出する変形が生じやすくなる。このため、装着時に、失禁パッド1の肌側の両側部に形成された立体ギャザーBSが肌面に密着しやすくなり、この立体ギャザーBSによって尿が確実に堰き止められるため、尿の横漏れが防止できるようになる。
また、前記凹溝22では、吸収体貫通部20の内面に沿って透液性表面シート3が配設されるため、従来の吸収体の開口部の上面を跨ぐように表面シートを配設した吸収性物品のように、吸収体の開口部を可撓軸として吸収性物品が幅方向に折れ曲がったときに表面シートがだぶつくようなことがなくなる。すなわち、本失禁パッド1では、透液性表面シート3が吸収体貫通部20の内面に沿って配置されているため、前記凹溝22を可撓軸として失禁パッド1が幅方向に折れ曲がったときでも、尿が凹溝22に速やかに流れ込むことができ、尿の吸収性能が低下するのが防止できる。
また、凹溝22の底部において、少なくとも透液性表面シート3及び不透液性裏面シート2が所定のパターンで一体化されているので、装着時に幅方向両側から脚圧が作用したときでも、吸収体貫通部20の開口が閉じるような変形が抑制され、凹溝形状が維持しやすくなる。
ここで、図2に示されるように、前記凹溝22(吸収体貫通部20)の両側面を吸収体4の上面(平面)に対し垂直又はこれと10°程度までの角度差で形成した場合には、図4に示されるように、凹溝22を可撓時として失禁パッド1が幅方向に折れ曲がったとき、凹溝22の両側面の肌側端部同士の間隔が狭まって、肌側への開口が狭くなる問題が生じる。そこで、図5(A)に示されるように、凹溝22の両側面を予め、肌側に向けて外側に傾斜する傾斜状に形成することにより、同図5(B)に示されるように、失禁パッド1の折れ曲がり時でも凹溝22の開口が狭くならないようにすることができる。前記凹溝22(吸収体貫通部20)の両側面の傾斜角αは、15°〜30°程度が好ましい。
次に、前記透液性表面シート3の形態例について説明する。前記透液性表面シート3は、尿の浸透性・拡散性を高める、肌との接触面積を減らして肌ざわり感を改善するなどの目的に応じて、種々の形態で形成することが可能である。
第1形態例に係る透液性表面シート3Aとしては、図6及び図7に示されるように、相対的に目付が高く形成されるとともに、肌側に突出する多数のドーム状の凸部3a、3a…と、前記凸部3aの周囲に沿ってそれぞれ形成されるとともに、前記凸部3aと比較して相対的に目付が低く、且つ前記凸部3aより肌側に窪む凹部3bとから構成されたものとすることができる。
このような凹凸形状をなす透液性表面シート3Aとしては、特開2004-466号公報及び特開2003-250836号公報に開示されたものを使用することができる。これらの公報では、厚み方向に圧密化された所定パターンの多数の接合部14、14…で部分的に接合され、この接合部14、14…以外の部分が肌側に突出する多数のドーム状の凸部3a、3a…をなしたものが記載されている。前記接合部14、14…は、千鳥状の平面パターンで配置され、前記凸部3a、3a…が千鳥状の平面パターンで配置されるようになっている。
また、同公報にも開示されるように、前記透液性表面シート3Aは、図6及び図7に示されるように、肌側に配設される上層3αと、吸収体4側に配設される下層3βとの積層構造で構成するのが好ましい。前記上層3αと下層3βとは、前記多数の接合部14、14…で部分的に接合されている。
前記下層3βは、熱可塑性を示す熱収縮性繊維を含む不織布で構成するのが好ましい。つまり、前記下層3βを熱収縮性繊維を含む不織布で構成することにより、前記上層3αと下層3βを接合部14で接合した後、前記下層3βを熱収縮させることにより、上層3αの接合部14で囲まれた部分が肌側に突出する凸状をなすようにしている。
前記透液性表面シート3Aの製造方法は、図8(A)に示されるように、上層3αと下層3βとを積層した状態で、同図8(B)に示されるように、上層3αの外面側からの圧搾により上層3αと下層3βとを所定パターンの多数の接合部14、14…で部分的に接合した後、同図8(C)に示されるように、下層3βに含まれる熱収縮性繊維が熱収縮を開始する温度以上の温風を当てるなどの熱処理をして下層3βを収縮させることにより行う。前記下層3βが熱収縮することにより、隣り合う接合部14、14間が狭まるため、この間の上層3αの繊維が寄り集まって相対的に目付が高くなるとともに、接合部14、14…で囲まれた領域の中央側にいくほど目付が高く、ドーム状に肌側に突出する凸部3aを形成するようになる。
また、同公報に示されるように、上層3αの繊維密度より下層3βの繊維密度が高くなるように設定してもよい。かかる透液性表面シート3Aでは、繊維密度勾配によって、繊維密度が相対的に低い上層3αから、繊維密度が相対的に高い下層3βに向けて尿が素早く移行するようになる。
本第1形態例に係る透液性表面シート3Aでは、前記凹溝22を形成した状態で、凹溝22の内部(凹溝22の周面)で透液性表面シート3Aの凹凸状が維持されるようにしている。これにより、凹凸状の透液性表面シート3Aに備えられた各種の機能が凹溝22の内部でも維持できるようになる。
前記透液性表面シート3Aの凹凸状が維持されるように凹溝22を形成するには、図12に示されるように、エンボス凸部24の先端が不透液性裏面シート2側に圧着しない程度にエンボスを施し、透液性表面シート3Aの非肌面側をホットメルト接着剤などの接合手段で接合したり、図13及び図14に示されるように、透液性表面シート3の表面側から吸収体貫通部20に対し、多数のピン状エンボス21a、21a…又はドット状エンボスを施すことにより成すことができる。
前記透液性表面シート3Aを凹凸状のシートで構成することと、前記凹溝22を吸収体貫通部20に形成することとの組み合わせにより、以下の効果が奏される。
(1)凹溝22の底部では透液性表面シート3Aの非肌側に吸収体4が介在しないため、凹溝22内の尿は、透液性表面シート3Aの内部を拡散するとともに、凹凸状の凹部3bに沿って流れることにより、溝長手方向に素早く拡散するようになる。これにより吸収体4の広い範囲で尿が吸収できるため、尿を素早く吸収できるようになる。
(2)透液性表面シート3Aが凹凸状に形成されるため、凹溝22周辺の肌面に接する部分では、凸部3aを構成する繊維の空隙や凹部3bと肌面との間の隙間を空気が流れて通気性が良好となる。また、前記凸部3aの繊維の空隙や凹部3bの隙間を流れて凹溝22に達した空気は、凹溝22内に流れ込み、この凹溝22内でも透液性表面シート3Aの凹凸状が維持されているため、凹溝22内においても空気の流れが良好となる。更に、前記不透液性裏面シート2として、前述の遮水・透湿性シート材を用いた場合、凹溝22の底部では透液性表面シート3Aと不透液性裏面シート2との間には吸収体4が介在していないため、凹溝22内の湿気及び失禁パッド1内部の湿気が外部に放出しやすくなっている。
(3)本失禁パッド1では、前述の通り、凹溝22の底部に吸収体4が介在しないため、凹溝22を可撓軸として失禁パッド1の幅方向両側が肌側に突出する変形が生じやすくなっており、凹溝22より幅方向両側の領域が肌面に密着しやすくなっている。この肌面に密着する凹溝22より幅方向両側の領域の透液性表面シート3Aも、当然ながら凹凸状に形成されているため、透液性表面シート3Aと肌面とが凹凸状の凸部3aの頂部で点状に接触するので、肌との接触による負担が軽減されるようになる。
(4)本透液性表面シート3Aを用いることにより、パッド幅方向両側からの脚圧により凹溝22の開口が閉じるような変形が生じた場合でも、凹溝22の両側面においても透液性表面シート3Aの凹凸状が維持されているため、両側の透液性表面シート3A、3Aの凹凸状の表面同士が突き合わされた際の隙間によって、凹溝22内への通液性や通気性が確保されるようになる。
次いで、第2形態例に係る透液性表面シート3Bとしては、図9に示されるように、失禁パッド1の長手方向に延びる凸部3cと凹部3dとがパッド幅方向に交互に繰り返し形成された断面波状の不織布によって構成されている。前記凸部3c及び凹部3dは、失禁パッド1の長手方向に略平行に直線的に延びている。前記凸部3cと凹部3dとはパッド幅方向に連続的に連なっており、平面部を有しないように交互に配置されている。前記凸部3cは肌側に凸状に湾曲し、前記凹部3dは非肌側に凸状に湾曲している。前記凸部3cはパッド長手方向に沿って延びており、畝部を形成している。また、前記凹部3dもパッド長手方向に沿って延びており、溝部を形成している。
前記透液性表面シート3Bは、図10に示されるように、前記吸収体4の肌側面に積層され、該透液性表面シート3Bの表面側(肌面側)からエンボス凸部24によりエンボス部21が施されることによって、前記凹溝22が形成されている。この凹溝22を形成した状態で、少なくとも前記凹溝22の形成領域に設けられた透液性表面シート3Bの凸部3c及び凹部3dがそれぞれ、パッド幅方向に伸長されるようになっている。パッド幅方向に伸長されるとは、エンボスにより透液性表面シート3Bが凹溝22の深さ分だけ引き伸ばされて、凸部3c及び凹部3dの凸状に湾曲した状態が解除若しくは低減され、透液性表面シート3Bがパッド幅方向に引き伸ばされた状態のことである。
これによって、前記凹溝22の加工において、透液性表面シート3Bの波状加工がバッファとなって引張応力が軽減され、透液性表面シート3Bが過度に引っ張られることがなくなるため、透液性表面シート3Bの強度が低減することなく、装着中の破れが防止できるようになる。
また、図10に示されるように、凹溝22を形成した状態でも、透液性表面シート3Bが完全に伸びきらず、凹凸形状が残るので、通常の平坦なものに比べて透液性表面シート3Bと尿との接触面積が増加するため、尿の吸収効率を高めることができるようになる。
一方で、波状断面の透液性表面シート3Bでは、前記凸部3cで肌面と接触することとなるため、肌との接触面積が低減して、肌に優しく、柔らかな感触を与えるようになる。
本第2形態例に係る透液性表面シート3Bでは、前記凹溝22を形成した状態で、凹溝22の内部(凹溝22の周面)で透液性表面シート3Bの断面波状が維持されるようにしている。これにより、断面波状にした透液性表面シート3Bの機能を損なうことなく、凹溝22が形成でき、尿を素早く吸収体4に移行できるようになる。断面波状を維持するには、上記第1形態例に係る透液性表面シート3Aと同様の方法により成すことができる。
また、透液性表面シート3Bを断面波状のシートで構成することと、前記凹溝22を吸収体貫通部20に形成することとの組み合わせにより、以下の効果が奏される。
(1)凹溝22の底部において透液性表面シート3Bの非肌側に吸収体4が介在しないため、凹溝22内の尿は、透液性表面シート3Bの内部を拡散するとともに、透液性表面シート3Bの凹部3dに沿って流れ、且つ透液性表面シート3Bの凸部3cと非肌側のシート(被包シート5)との間にできた空間を流れることにより、溝長手方向に素早く拡散するようになる。溝長手方向に素早く拡散した尿は、凹溝22の両側面から吸収体4に吸収されるため、吸収体4の広い範囲で素早く尿を吸収できるようになる。
(2)前記透液性表面シート3Bが断面波状に形成されるため、凹溝22周辺の肌に接する部分では、凸部3cを構成する繊維の空隙や凹部3dと肌面との間の隙間を空気が流れて通気性が良好となる。また、凸部3cの繊維の空隙や凹部3dと肌面との隙間を流れた空気は、凹溝22に達すると、凹溝22内に流れ込み、凹溝22内でも透液性表面シート3Bの断面波状が維持されているため、凹溝22内においても空気の流れが良好になる。また、前記不透液性裏面シート2として前述の遮水・透湿性シート材を用いた場合、凹溝22の底部において透液性表面シート3Bと不透液性裏面シート2との間に吸収体が介在しないため、凹溝22内の湿気及び失禁パッド1内部の湿気が外部に放出しやすくなる。
(3)本失禁パッド1では、前記凹溝22を可撓軸としてパッド両側が肌側に突出する変形が生じやすく、凹溝22より幅方向外側の領域が肌面に密着しやすい構造となっているが、この凹溝22より幅方向外側の領域も当然ながら断面波状の透液性表面シート3Bで構成されているため、透液性表面シート3Bと肌面とが接触することによる肌への負担が軽減されている。
(4)本失禁パッド1では、パッド幅方向両側からの脚圧により凹溝22の開口が閉じるような変形が生じた場合でも、凹溝22の両側面に断面波状の透液性表面シート3Bが設けられているため、この断面波状の透液性表面シート3B、3B同士が合わさって凹溝22の開口が完全に閉じるのが防止され、断面波状の透液性表面シート3B、3B同士の隙間から凹溝22内への通液性や通気性が確保されるようになる。
次に、第3形態例に係る透液性表面シート3Cとしては、図11(A)に示されるように、多数の開孔15、15…を備えた不織布によって構成されている。前記開孔15は、透液性表面シート3Cの一方側面から他方側面まで貫通して、不織布繊維が存在しない部分のことである。平面形状としては、円形でもよいが、パッド長手方向に長い平面形状とするのが好ましく、図示例の楕円形の他、長円形、長方形、菱形、多角形などが好ましい。
前記透液性表面シート3Cに多数の開孔15、15…を施すには、穿孔により形成したり、流体を噴きあてることにより形成したり、加熱したピンを突き刺すことにより形成したりするなど、公知の手段を採用することができる。また、特開2008-18537号公報に記載された多孔シートの製造装置を用いて開孔処理を行うこととしてもよい。
前記多数の開孔15、15…を有する透液性表面シート3Cとしては、例えば、特開2011-135979号公報、特開2008-25083号公報、特開2009-185408号公報、特開2010-84317号公報、特開2014-68954号公報などに開示されたものを使用できる。
前記開孔15、15…は、透液性表面シート3Cの全面に亘って、パッド幅方向及び長手方向にそれぞれ所定の間隔で多数配置されている。前記開孔15…の配置は、図11(A)に示されるように、パッド幅方向及び長手方向に対し、直線上に配置した格子状としてもよいし、一列置きにパッド幅方向への配置をずらした千鳥状としてもよい。
前記透液性表面シート3Cは、透液性表面シート3Cの表面側(肌面側)からのエンボスにより前記凹溝22を形成した状態で、図11(B)に示されるように、少なくとも凹溝22の形成領域に設けられた開孔15、15…が、パッド幅方向に拡孔されている。すなわち、吸収体貫通部20が形成された吸収体4の表面側に透液性表面シート3Cを積層した状態で、透液性表面シート3Cの表面側から吸収体貫通部20の底面に、前記吸収体貫通部20の幅より小さなエンボス幅のエンボス凸部24によりエンボス部21を施すと、吸収体貫通部20の断面形状の分だけ透液性表面シート3Cが引き伸ばされ、このときの引張力が前記開孔15、15…に集中して開孔15…をパッド幅方向に拡孔させるようになる。
このように、前記透液性表面シート3Cを用いた本失禁パッド1では、透液性表面シート3Cの表面側からエンボス部21を施すことによって凹溝22を形成した状態で、少なくとも凹溝22の形成領域に設けられた開孔15、15…がパッド幅方向に拡孔するため、拡孔した開孔15、15…を通って凹溝22に一時貯留された尿が吸収体4に移行しやすくなる。このように、凹溝内の尿が透液性表面シート3を透過して吸収体4に素早く移行されるので、凹溝内の尿が表面に溢れ出るのが抑えられ、尿が表面に残らず、表面のさらさら感が続くようになる。また、前記開孔15、15…が変形することにより、エンボス圧搾時の透液性表面シート3Cにかかる引張力が吸収されるため、過度に透液性表面シート3Cが引っ張られることがなくなり、凹溝22周辺の吸収体4が圧縮されたりすることがなく、吸収体の尿吸収性及び装着性が維持できるようになる。
また、透液性表面シート3Cを多数の開孔15、15…を備えたシートで構成することと、前記凹溝22を吸収体貫通部20に形成することとの組み合わせにより、以下の効果が奏される。
(1)凹溝22の底部には吸収体4が介在しないため、開孔15を通じて流れ込んだ尿が溝長手方向に沿って素早く拡散するようになる。溝長手方向への尿拡散が促進されることによって、両側面から吸収体4への尿吸収が素早く行われるようになる。
(2)前記不透液性裏面シート2として前述の遮水・透湿性シート材を用いた場合には、凹溝22の底部に設けられた開孔15を通じて通気性がより一層良好となる。
第4形態例に係る透液性表面シート3Dとしては、図6及び図7に示される前記第1形態例に係る透液性表面シート3Aと同様の凹凸状に形成されたものが用いられる。第4形態例に係る透液性表面シート3Dは、図15及び図16に示されるように、前記凹溝22を形成した状態で、凹溝22の底部に、凹凸状の凸部3aが圧縮された多数の高圧縮部16、16…と、凹凸状の凹部3bが圧縮され、前記高圧縮部16より密度が低い低圧縮部17とが形成されている点で、前記第1形態例に係る透液性表面シート3Aと相違する。
第4形態例に係る透液性表面シート3Dでは、前記凹溝22の底面に高圧搾部16と低圧搾部17とを形成することによって、この繊維の密度差により、透液性表面シート3に吸収された尿の移行性・拡散性が向上するようになる。また、凹溝22の底面に多数の高圧縮部16が形成されるため、凹溝22の剛性が増し、脚圧などの外力に対する変形が防止でき凹溝22の形状が維持しやすくなる。更に、透液性表面シート3Dの表面側から1回のエンボスを施すだけで高圧縮部16と低圧縮部17が同時に形成できるため、従来のように凹溝の底面より更に圧搾した高圧搾部を設けたものに比べ、表面材に過度の引張応力が作用せず、表面材の破れが防止できるようになる。また、透液性表面シート3Dの表面側から先端がフラットなエンボス凸部24を施すことにより前記高圧縮部16及び低圧縮部17を形成しているので、エンボスロールの目詰まりなどがなく、製造の操業性が安定化する。
また、前記凹溝22の底部に多数の高圧縮部16及び低圧縮部17を形成することと、前記凹溝22を吸収体貫通部20に形成することとの組み合わせにより、以下の効果が奏される。
(1)前述の通り高圧縮部16及び低圧縮部17の繊維の密度差による尿の拡散性が高まる効果と、透液性表面シート3Dの非肌側に吸収体が介在しないために尿の拡散性が高まる効果とが合わさって、より一層尿の拡散性が高まるようになる。
(2)凹溝22の底部に吸収体が介在しないため凹溝22の剛性が低下するが、多数の高圧縮部16、16…を設けているため、凹溝22が補強されるようになる。
第5形態例に係る透液性表面シート3Eとしては、図9に示される前記第2形態例に係る透液性表面シート3Bと同様の断面波状に形成されたものが用いられる。第5形態例に係る透液性表面シート3Eでは、図17に示されるように、凹溝22を形成した状態で、凹溝22の底部に、断面波状の凸部3cが圧縮された高繊維密度部18と、断面波状の凹部3dが圧縮された低繊維密度部19とが溝幅方向に対して交互に溝長手方向に沿って形成されている点で、前記第2形態例に係る透液性表面シート3Bと相違する。
第5形態例に係る透液性表面シート3Eでは、波状断面の凸部3cにおいて、圧搾時に繊維が寄り集まり繊維密度の高い高繊維密度部18が、溝方向に沿って形成されるようになる。この高繊維密度部18は、凹溝22に沿って尿の拡散性を向上するとともに、凹溝22が脚圧などによって潰されないように形状を保持するように作用する。
また、凹溝22の底部に前記高繊維密度部18及び低繊維密度部19を形成することと、前記凹溝22を吸収体貫通部20に形成することとの組み合わせにより、高繊維密度部18を設けることによる溝長手方向に沿う尿の拡散性が向上する効果と、凹溝22の底部に吸収体4を介在させないことによる尿の拡散性が向上する効果とが合わさって、より一層溝長手方向に沿う尿の拡散性が向上するようになる。
次に、凹溝22における尿の拡散性を向上させた失禁パッド1について説明する。本失禁パッド1では、凹溝22の底面に吸収体が介在しないため、凹溝22に一時貯留された尿が吸収体4に移行しにくくなるというおそれがある。そこで、本失禁パッド1では、図18及び図19に示されるように、吸収体4と不透液性裏面シート2との間に、前記凹溝22を幅方向両側に跨るように、パッド幅方向への尿の拡散を促進した拡散用シート30を介在させることができる。前記拡散用シート30は、凹溝22の底面から拡散用シート30に浸透した尿が、パッド幅方向に拡散しやすいように構成された不織布や紙などからなるシートである。
具体的に、前記拡散用シート30は、パッド幅方向に沿って繊維が配向されたシートとすることができる。つまり、前記拡散用シート30は、凹溝の長手方向に対し直交する方向に繊維配向性を持つように形成されている。これにより、凹溝22から拡散用シート30に浸透した尿は、パッド幅方向に配向された繊維方向に沿って拡散しやすく、凹溝22の両側の吸収体4に吸収されやすくなる。なお、パッド幅方向に沿って繊維が配向されるとは、パッド幅方向への繊維配向割合が概ね80%を超える場合をいうものとする。
また、前記拡散用シート30は、パッド幅方向に沿うとともに、パッド長手方向に間隔をあけて多数の高密度領域が形成されたシートとすることも可能である。前記高密度領域では、繊維が密に存在しているため、毛管作用により繊維が拡散しやすい状態にある。このため、凹溝22から拡散用シート30に浸透した尿は、パッド幅方向に沿って配向された高密度領域に沿って拡散しやすく、凹溝22の両側の吸収体4に吸収されやすくなる。
前記拡散用シート30は、少なくとも凹溝22を含む範囲に設けられている。好ましくは、図18に示されるように、吸収体貫通部20を含む範囲に設けられている。パッド幅方向の端縁は、吸収体4の幅方向端縁まで延びる位置まで形成してもよいが、両側からの尿の漏れを防止するため、吸収体4の幅方向中間部までとするのがよい。
前記拡散用シート30は、図19に示されるように、被包シート5と不透液性裏面シート2との間に配置してもよいし、図示しないが、吸収体4とこの吸収体4の非肌側を覆う被包シート5との間に配置してもよい。
本失禁パッド1では、吸収体貫通部20に凹溝22を設けているため、凹溝22の底部に吸収体が介在しないこととなり、その分、溝長手方向への拡散が早くなるという性質を有している。そこに、前記拡散用シート30を組み合わせることによって、溝長手方向に沿って拡散された尿を溝幅方向に拡散させやすくした場合には、吸収体4の広い範囲に尿が吸収され、吸収体4の吸収容量を最大限活用できるようになる。
前記凹溝22は、種々の形態で配置することができる。前記凹溝22は、図1に示されるように、尿排出部位Hに対応するパッド幅方向の中央部であって長手方向の中間部に、1条のみ形成するのが好ましいが、図20(A)、(B)に示されるように、パッド幅方向に離間して複数条形成してもよいし、同図20(C)に示されるように、パッド長手方向に離間して不連続線状に形成してもよい。複数条形成した場合には、多くの尿が一気にドッと出たときでも尿の拡散効果をより確実に高めることができるようになる。また、不連続線状に形成した場合には、凹溝22が幅方向両側から脚圧などの外力を受けたときの潰れがより確実に防止できる。パッド幅方向に離間して複数条形成する場合、同図20(A)に示す偶数条でもよいし、同図20(B)に示す奇数条でもよい。
また、前記凹溝22の平面形状は、図1に示されるように、パッド長手方向に沿って等幅で形成してもよいし、図21に示されるように、異なる溝幅で形成してもよい。図21(A)では、凹溝22のパッド長手方向の前側端部に、溝幅を拡大した拡幅部22aを設けている。前記拡幅部22aを設けることにより、尿の一時貯留空間が拡大でき、特に切迫性失禁などのように大量の尿が一度にドッと出た場合でも確実に凹溝22で尿を受け止めることが可能となる。前記拡幅部22aは、同図21(B)に示すようにパッド後側の端部に設けてもよいし、同図21(C)に示すように前後端部にそれぞれ設けてもよい。
前記凹溝22は、図22に示されるように、1又は複数の枝分かれ部22b、22cを設けてもよい。前記枝分かれ部22b、22cを設けることにより、凹溝22に一時貯留された尿が凹溝22に沿って吸収体4の広い範囲に拡散するようになり、吸収体4のより広い範囲で尿を吸収できるようになる。図22(A)〜(C)に示される例では、前記枝分かれ部22bとして、パッド長手方向の前側、後側又は前側及び後側のそれぞれに、凹溝22の両側縁から外側に延びるとともに、パッド長手方向の端部側に傾斜する複数、図示例では左右それぞれ3本ずつ設けられている。また、図22(D)〜(F)に示される例では、前記枝分かれ部22cとして、パッド長手方向の前端、後端又は前端及び後端のそれぞれに、凹溝22が放射状に複数に、図示例では5本に枝分かれしたものが設けられている。
なお、予め吸収体4の凹溝22の形成予定部分に前記吸収体凹部20を設ける場合、上記凹溝22の形状に沿って吸収体凹部20を設けるようにする。