JP7062907B2 - シート及び吸収性物品 - Google Patents
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以下の実施形態では、吸収性物品としてパンツ型の紙おむつを例示し、紙おむつ用のシートについて説明する。
また、紙おむつが着用された状態(以下「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
また、シートについても、長手方向、厚み方向および幅方向等の用語の定義はこれに倣うものとする。
[1.シート]
図1及び図2に示すように、シート30は、紙おむつ1において、吸収体10に対して着用者の肌面側に配置され、シート30の表面が着用者に対向する。図3及び図4に示すように、シート30の表面には、第一凸部30a及び第二凸部30bが形成される。また、シート30は表面と裏面とを貫通する複数の孔30c(以下において「孔30c」を「貫通孔30c」と記載する。)を有する。なお、貫通孔30cは、図4~8に示すような目視できる開口部に限定されず、多数の微細な孔(多孔質)であってもよい。
なお、溝状構造は一方向に延在していれば、平面視において直線状であっても曲線状であってもよい。
また、シート30の表面の溝状構造により通気性が向上する。
さらに、シート30自体は液不透過性材料によって構成されるため、吸収体10に吸収された水分が肌面側に逆戻りする液戻り(ウェットバック)が抑制される。
その結果、紙おむつ1の着用者の快適性が向上する。
シート30の厚み寸法H3は特に限定されない。紙おむつ1の柔軟性や着用者のフィット性を向上させる観点からは、通常160μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下である。一方、シート30の耐久性を向上させる観点からは、通常35μm以上、好ましくは40μm以上である。
さらに、図3に示すように、第一凸部30aの幅寸法W1、第二凸部30bの幅寸法W2、第一溝30dの幅寸法W3、及び、第二溝30eの幅寸法W4は特に限定されない。例えば、W1は10~50μmであり、W2は10~50μmであり、W3は150~300μmであり、W4は10~50μmである。なお、並設される第一凸部30aの幅寸法W1は同じであっても、互いに異なっていてもよい。幅寸法W2、W3、及びW4も同様である。
なお、幅方向Wに複数の貫通孔30cが配置される場合には、貫通孔30cの幅方向Wの長さ寸法の合計が、シート30の幅方向Wの長さ寸法に対して上記範囲であればよい。
貫通孔30cの長手方向Lの長さ寸法は特に限定されない。吸収体10の吸収性、紙おむつ1の柔軟性及び着用者のフィット性を高める観点から、貫通孔30cの長手方向Lの長さ寸法は、シート30の長手方向Lの長さ寸法に対して、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。一方、シート30の耐久性を高め、製造時の取扱性を容易にする観点から、通常95%以下、好ましくは90%以下である。なお、長手方向Lに複数の貫通孔30cが配置される場合には、貫通孔30cの長手方向Lの長さ寸法の合計が、シート30の長手方向Lの長さ寸法に対して上記範囲であればよい。
図4~図8に示すように、第一の態様としては、第一凸部30a及び第二凸部30bの延在する方向が、シート30の長手方向Lに沿った態様を挙げることができる。具体的には、第一の態様では、第一凸部30aが延在する一方向は長手方向Lに一致しており、第二凸部30bが延在する方向も長手方向Lに一致している。
また、シート30は、着用者の姿勢によっては、前身頃1Aや後身頃1Cに対応する部分が垂直方向上方(重力方向上方)等に向けて屈曲されうる。このような場合であっても、上記構成のシート30によれば、高さ寸法の異なる複数の凸部30a,30bに起因した毛細管現象により、溝状構造に沿って排泄水分を垂直方向上方(重力方向上方)等にも吸い上げ、拡散することができる。
したがって、本態様のシート30によれば、着用者の姿勢に関わらず、排泄水分の拡散性に優れ、前身頃1Aや後身頃1Cに位置する吸収体10の吸収性を有効に利用できる。
また、以下に示す第二の態様、第三の態様及び第四の態様では、第一の態様と同様に、溝状構造の方向が長手方向Lに沿った例を示すが、これらの態様における溝状構造の方向は特に限定されない。また、シート30の原反(例えば、貫通孔30cの形成や裁断等の後加工をする前の状態のもの)の長手方向と、紙おむつ1の長手方向Lとは異なっていてもよい。
図5に示すように、第二の態様としては、複数の貫通孔30cが、平面視したときの幅方向Wの中心を通る長手方向Lに沿った対称軸に対して、線対称に配置される態様が挙げられる。つまり、第二の態様では、複数の貫通孔30cが中心線CLに対して線対称に配置されている。
なお、図5では、同形状の貫通孔30cが、長手方向Lに同間隔で配置された例を示すが、上述した線対称に配置されれば、貫通孔30cの形状や配置間隔は特に限定されない。
図6に示すように、第三の態様としては、貫通孔30cは、平面視したときの長手方向Lの中心から長手方向Lに沿って、面積が次第に大きくなる態様が挙げられる。つまり、第三の態様では、シート30の長手方向Lの中心から、シート30の端部に向かうにつれて、貫通孔30cの面積が大きくなる。したがって、シート30の中央領域に配置される貫通孔30cの面積が最小であり、長手方向Lにおける前身頃1Aの端部又は後身頃1Cの端部において、貫通孔30cの面積が最大になる。ここで、シート30の中央領域とは、例えば、紙おむつ1の股下部1Bに対応する領域であり、特にシート30の中心を含む領域又は中心近傍の領域をいう。
なお、図6では、矩形状の貫通孔30cを配置した例を示すが、貫通孔30cの形状は特に限定されない。
従来の紙おむつでは、股下部1Bにおける排泄水分の吸収量が多くなる結果、紙おむつが所定の着用位置(当初の着用状態の位置)からズレてしまうことがあった(特に重力方向下方へのズレ)。紙おむつが所定の着用位置からズレると、フィット感の低下や尿漏れ等の問題が発生し、紙おむつの諸機能が発揮しにくくなることがあった。本実施形態のシート30によれば、吸収体10の全域に排泄水分をバランスよく拡散できるため、上記問題を解消又は軽減することができる。
図7に示すように、第四の態様としては、隣接する貫通孔30c同士の間隔が、平面視したときの長手方向Lの中心から長手方向Lに沿って、次第に小さくなる態様が挙げられる。つまり、第四の態様では、シート30の長手方向Lの中心から、シート30の端部に向かうにつれて、貫通孔30c同士の間隔が小さくなる。したがって、シート30の中央領域に配置される貫通孔30c同士の間隔が最大であり、シート30の長手方向Lの端部領域において貫通孔30c同士の間隔が最小になる。ここで、シート30の端部領域とは、例えば、紙おむつ1の前身頃1A又は後身頃1Cに対応する領域であり、特にシート30の長手方向Lにおける端部を含む領域をいう。
なお、図7では、矩形状の貫通孔30cを配置した例を示すが、貫通孔30cの形状は特に限定されない。
他の態様のシート30としては、例えば、図8に示すように、上記第一の態様から第四の態様のうちの2以上を組み合わせた態様等が挙げられる。
この態様では、貫通孔30cの形状が砂時計形状である。また、第一凸部30a及び第二凸部30bの延在する方向が長手方向Lに沿っている。また、複数の貫通孔30cは、中心線CLに対して、線対称に配置されている。さらに、長手方向Lの中心から長手方向Lに沿って、貫通孔30cの面積が次第に大きくなっている。
したがって、シート30における貫通孔30cの形状や配置等を上記のように変えることで、中心線CLを含む領域における排泄水分の吸収体10へ吸収量を抑制し、排泄水分の幅方向Wへの拡散性を向上させ、排泄水分を吸収体10全域で吸収できるようになる。
また、熱・超音波等により凸部を溶解し、凸部間に堰状部を設けてもよい。さらに、予め堰状部が形成されるように第一凸部30a及び第二凸部30bを形成してもよい。シート30が凸部間に堰状部を備えると、排泄水分が溝状構造に沿って濡れ広がりにくくなり、排泄水分は第一凸部30aを乗り越え、幅方向Wに濡れ広がる。したがって、堰状部の配置によって、長手方向L及び幅方向Wにバランスよく排泄水分を分散させることが可能になる。
以下、図1および図2を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。
ここでは、紙おむつ1は幅方向の中心線CLを基準として対称に構成されている。この紙おむつ1は、長手方向Lに沿って前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cの三つの領域に大別される。
はじめに、紙おむつ1のシート類について述べる。
図1に示すように、紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cに亘って長手方向Lに延びる吸収体10(太破線で示す)が内蔵されている。ここでは、展開状態の平面視において、前身頃1Aおよび後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向寸法の小さい砂時計形状の吸収体10を例示する。ただし、吸収体10の平面視形状は、上記したような砂時計形状に限らず、平面視で矩形(すなわち幅方向寸法が一定)であってもよいし、それぞれ円形の前身頃1A及び後身頃1Cを結ぶダンベル形状であってもよい。
まず、吸収体10に対して肌面側にはシート30が積層される。シート30の表面が着用者の肌面側に対向し、シート30の裏面が吸収体10に対向して配置される。シート30の幅方向寸法及び長手方向寸法は、吸収体10と略同一である。吸収体10とシート30とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって、全面又は一部が貼合(固定)される。
吸収体10に対して、シート30よりも肌面側にはトップシート11が積層される。トップシート11は、最も肌面側に配置されるシート状の部材である。このトップシート11は、吸収体10やシート30よりも幅方向寸法が大きく、吸収体10及びシート30を肌面側から被覆する。また、トップシート11は、紙おむつ1を着用した状態において、着用者の肌に接触して、排泄水分を透過させ、排泄水分をシート30に到達させる。このため、トップシート11は少なくとも一部又は全部が透水性をもつ材料で構成される。また、トップシート11は、着用時のフィット性のため、柔軟性が高い材料で構成されることが好ましい。また、着用状態での蒸れを抑えるため、通気性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
バックシート12は、吸収体10に対して非肌面側に配置されるシート状の部材である。バックシート12は、吸収体10から非肌面側に排泄物が漏れることを防ぐため、非透水性をもつ材料で構成される。また、バックシート12は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
紙おむつ1は、トップシート11、シート30、吸収体10及びバックシート12を含む積層体に対して積層されるサイドシート13及びカバーシート14をさらに備えている。サイドシート13は、上記積層体の幅方向側方に配置される。また、カバーシート14は上記積層体の非肌面側に配置される。サイドシート13とカバーシート14と上記積層体とは、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤によって、全面又は一部が貼合される。
また、「目付量」とは、シートの厚みあるいは積層度合いに対応するパラメータであり、単位面積あたりの重量で表される。例えば、一平米あたりのグラム数が「目付量」として用いられる。
第二カバーシート142及び第三カバーシート143は、前身頃1A及び後身頃1C(図1参照)で第一カバーシート141よりも幅方向寸法が大きく設定され、着用状態で着用者の臀部や腰、腹などのまわりに配置される。第三カバーシート143は、紙おむつ1において最も非肌面側に配置される。このことから、第三カバーシート143は「アウターカバーシート」とも称され、第二カバーシート142は「インナーカバーシート」とも称される。
次に、図1及び図2を参照して、紙おむつ1のギャザー15について述べる。
ギャザー15は、ゴムやポリウレタン、伸縮フィルムといった伸縮性をもつ部材(伸縮性部材)を伸張状態で不織布等のシートの間に挟んでホットメルト等で固定することによって伸縮性をもたせたシート複合体から構成される。このシート複合体は、伸縮性部材が伸張状態から元の状態(自然長の状態)に戻ろうとする力(復元力、弾性力)で不織布等のシートに細かな皺が寄った状態となる。ここでは、伸縮性部材として糸状のゴム部材(以下「糸ゴム」と略称する)20を例示する。
その他、上述したギャザー16,17,18に加えてまたは替えて、着用者の脚部の付け根に対する追従性を高めるためのレッグギャザーを設けてもよい。
本実施形態の紙おむつ1は、上述したように構成されるため、下記の作用及び効果を得ることができる。
その結果、着用者の快適性が向上する。
次に、紙おむつの第二実施形態を述べる。
本実施形態の紙おむつでは、ここで説明する点を除いては、第一実施形態と同様の構成である。これらの構成については、同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図9及び図10に示すように、離間配置されたシート30’間に、吸収体10が露出するため、離間配置したシート30’により、第一実施形態において詳述した貫通孔30cと同様の効果が奏される。つまり、シート30’の表面に形成された一方向に延在する凸部30a,30bにより、排泄水分を吸収体10全体に効率よく拡散し、吸収体10全域に排泄水分を吸収させることができる。また、シート30’の表面に形成された複数の凸部30a,30bにより通気性が向上する。さらに、シート30’自体は液不透過性フィルムであるため、ウェットバックが抑制される。
その結果、着用者の快適性が向上する。
上述した実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
さらに、凸部30a,30bをシート30,30’の表面側に加えて、裏面側(厚み方向Tの非肌面側)に突出させた構成としてもよい。裏面側に突出した凸部30a,30bによれば、貫通孔30cを通ってシート30,30’の裏面側に誘導された排泄水分を、裏面側の溝状構造(一方向に延在する凸部30a,30b)に沿って吸収体全域に拡散できる。
1A 前身頃
1B 股下部
1C 後身頃
10 吸収体
11 トップシート
12 バックシート
13 サイドシート
14 カバーシート
15 ギャザー
20 糸ゴム
30,30’ シート
30a 第一凸部
30b 第二凸部
30c 孔(貫通孔)
30d 第一溝
30e 第二溝
Claims (10)
- 吸収性物品用の液不透過性を有するシートであって、
平面視したときに一方向に沿って延在し、厚みを増大することで厚み方向に突出する複数の第一凸部と、
隣接する前記第一凸部同士の間に位置し、前記一方向に沿って延在し、厚みを増大することで前記厚み方向に突出する複数の第二凸部と、
隣接する前記第一凸部同士により区切られ、水分を濡れ広がらせる複数の第一溝と、
隣接する前記第二凸部同士、又は、隣接する前記第一凸部と前記第二凸部とにより区切られ、水分を濡れ広がらせる複数の第二溝と、
前記の濡れ広がった水分を前記シートの外部に通過させる複数の貫通孔と、を有し、
前記第一凸部の突出寸法H1が、前記第二凸部の突出寸法H2よりも大きく、
前記突出寸法H1は30μm以上150μm以下であり、前記突出寸法H2は10μm以上50μm以下である、
シート。 - 前記一方向が長手方向に一致する、請求項1に記載のシート。
- 前記複数の貫通孔が、平面視したときの幅方向の中心を通る長手方向に沿った対称軸に対して、線対称に配置される、請求項1又は2に記載のシート。
- 前記貫通孔は、平面視したときの形状が、多角形状、円形状、半円形状、砂時計形状及びレンズ形状から選択される少なくとも一つである、請求項1~3の何れか一項に記載のシート。
- 前記貫通孔は、平面視したときの長手方向の中心から前記長手方向に沿って、面積が次第に大きくなる、請求項1~4の何れか一項に記載のシート。
- 隣接する前記貫通孔同士の間隔は、平面視したときの長手方向の中心から前記長手方向に沿って、次第に小さくなる、請求項1~5の何れか一項に記載のシート。
- 請求項1~6の何れか一項に記載のシートと、
前記シートに対して着用者の非肌面側に配置された吸収体と、を備えた
吸収性物品。 - 複数のシートと、
前記複数のシートに対して着用者の非肌面側に配置された吸収体と、を備え、
前記シートが、
液不透過性を有し、
平面視したときに一方向に沿って延在し、厚みを増大することで厚み方向に突出する複数の第一凸部と、
隣接する前記第一凸部同士の間に位置し、前記一方向に沿って延在し、厚みを増大することで前記厚み方向に突出する複数の第二凸部と、
隣接する前記第一凸部同士により区切られ、水分を濡れ広がらせる複数の第一溝と、
隣接する前記第二凸部同士、又は、隣接する前記第一凸部と前記第二凸部とにより区切られ、水分を濡れ広がらせる複数の第二溝と、
前記の濡れ広がった水分を前記吸収体に通過させる複数の貫通孔と、を有し、
前記第一凸部の突出寸法H1が、前記第二凸部の突出寸法H2よりも大きく、
前記突出寸法H1は30μm以上150μm以下であり、前記突出寸法H2は10μm以上50μm以下である、
吸収性物品。 - 前記複数のシートは、長手方向及び/又は幅方向に沿って互いに離間配置される、請求項8に記載の吸収性物品。
- 前記シートが複数の貫通孔を有する、請求項8又は9に記載の吸収性物品。
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