図1を参照すると、燃料電池システムAは燃料電池スタック10を備える。燃料電池スタック10は積層方向に互いに積層された複数の燃料電池単セルを備える。各燃料電池単セルは膜電極接合体20を含む。膜電極接合体20は膜状の電解質膜と、電解質膜の一側に形成されたアノード極と、電解質膜の他側に形成されたカソード極とを備える。アノード極及びカソード極は白金や白金合金の微粒子を担持したカーボン粒子を含む電極触媒から形成される。白金合金としては例えばPtCoやPtRuが挙げられ、カーボン粒子としては例えばカーボンブラックが挙げられる。
燃料電池単セルのアノード極は一側に隣接する他の燃料電池単セルのカソード極に、カソード極は他側に隣接する他の燃料電池単セルのアノード極にそれぞれセパレータを介して電気的に接続される。複数の燃料電池単セルが積層された積層体における一端側の燃料電池単セルのアノード極と他端側の燃料電池単セルのカソード極とは燃料電池スタック10の電極を構成する。燃料電池スタック10の電極はDC/DCコンバータ11を介してインバータ12に電気的に接続され、インバータ12はモータジェネレータ13に電気的に接続される。また、燃料電池システムAは蓄電装置14を備えており、この蓄電装置14はDC/DCコンバータ15を介してインバータ12に電気的に接続される。DC/DCコンバータ11は燃料電池スタック10が出力する出力電流・出力電圧の大きさを制御すると共に、出力された出力電流・出力電圧の大きさを変換してインバータ12に供給するためのものである。インバータ12はDC/DCコンバータ11又は蓄電装置14からの直流電流を交流電流に変換するためのものである。DC/DCコンバータ15は燃料電池スタック10又はモータジェネレータ13から蓄電装置14への電圧を低くし、又は蓄電装置14からモータジェネレータ13への電圧を高くするためのものである。図1に示される燃料電池システムAでは蓄電装置14はバッテリから構成される。燃料電池スタック10のカソード極及びアノード極には、アノード極に対するカソード極の電位差であるセル電圧を検出するセル電圧センサ16が電気的に接続される。
また、燃料電池単セル内には、アノード極に水素ガスを供給するための水素ガス流通路と、カソード極に空気を供給するための空気流通路と、燃料電池単セルに冷却水を供給するための冷却水流通路とがそれぞれ形成される。複数の燃料電池単セルの水素ガス流通路を並列に接続し、複数の燃料電池単セルの空気流通路を並列に接続し、及び、複数の燃料電池単セルの冷却水流通路を並列に接続することにより、燃料電池スタック10には水素ガス通路30、空気通路40、及び冷却水通路50がそれぞれ形成される。
水素ガス通路30の入口には水素ガス供給路31が連結され、水素ガス供給路31は水素ガス源である水素タンク32に連結される。水素ガス供給路31内には上流側から順に、主止弁33と、レギュレータ34と、水素ガスインジェクタ35と、が配置される。以下では、主止弁33とレギュレータ34との間の水素ガス供給路31を高圧通路31aと称し、レギュレータ34と水素ガスインジェクタ35との間の水素ガス供給路31を中圧通路31bと称し、及び、水素ガスインジェクタ35と水素ガス通路30の入口との間の水素ガス供給路31を低圧通路31cと称する。主止弁33は、水素タンク32から高圧通路31aへの水素ガスの流出を遮断するための電磁式の遮断弁である。レギュレータ34は、高圧通路31a内の水素ガスの圧力を減圧して中圧通路31bに供給するための電磁式の減圧弁であり、図1の実施例ではダイヤフラム弁である。レギュレータ34は、燃料電池スタック10が発電中か発電停止中かに関わらず、中圧通路31b内の水素ガスの圧力を予め定められた設定圧力に維持する。レギュレータ34の設定圧力は可変であり、燃料電池スタック10の発電時と発電停止時とで互いに異なる値に設定される。レギュレータ34は、高圧通路31aから中圧通路31bに水素ガスの圧力を調整して供給することから水素ガス調圧弁ということができる。水素ガスインジェクタ35は、中圧通路31bの水素ガスを、低圧通路31cを介して水素ガス通路30に供給する水素ガス供給弁である。水素ガスインジェクタ35は、燃料電池スタック10のアノード極に供給される水素ガス量を調整可能である。図1の実施例では、水素ガスインジェクタ35は、電磁式のニードル弁である。高圧通路31aの水素ガスの圧力P1、中圧通路31bの水素ガスの圧力P2及び低圧通路31cの水素ガスの圧力P3は、P1≧P2≧P3の関係を有する。図示しない別の実施例では、レギュレータ34として電磁式のニードル弁が用いられる。ニードル弁は高圧通路31a内の圧力と中圧通路31b内の圧力とに基づいて開弁時間を制御することで、高圧通路31a内の水素ガスの圧力を減圧して中圧通路31bに供給すことができ、よって減圧弁と見ることができる。一方、水素ガス通路30の出口にはアノードオフガス通路36が連結される。主止弁33が開弁され、水素ガスインジェクタ35が開弁されると、水素タンク32内の水素ガスが水素ガス供給路31を介して燃料電池スタック10内の水素ガス通路30内に供給される。このとき水素ガス通路30から流出するガス、すなわちアノードオフガスはアノードオフガス通路36内に流入する。アノードオフガス通路36内には電磁式のアノードオフガス排出弁37が配置される。アノードオフガス排出弁37は、燃料電池スタック10の発電中において、通常は閉弁され、アノードオフガスを排出すべきときに一時的に開弁され、発電停止中は閉弁に維持される。
また、空気通路40の入口には空気供給路41が連結され、空気供給路41は空気源である大気42に連結される。空気供給路41内には上流側から順に、エアクリーナ43と、空気を圧送する空気供給器ないしコンプレッサ44と、コンプレッサ44から燃料電池スタック10に送られる空気を冷却するためのインタークーラ45と、が配置される。一方、空気通路40の出口にはカソードオフガス通路46が連結される。コンプレッサ44が駆動されると、空気が空気供給路41を介して燃料電池スタック10内の空気通路40内に供給される。このとき空気通路40から流出するガス、すなわちカソードオフガスはカソードオフガス通路46内に流入する。カソードオフガス通路46内にはカソードオフガス通路46内を流れるカソードオフガスの量を制御する電磁式のカソードオフガス排出弁47と、マフラー90とが配置される。アノードオフガス通路36はマフラー90の上流側のカソードオフガス通路46に連結される。図1に示す実施例では、カソードオフガス通路46のカソードオフガス排出弁47の下流側と、空気供給路41のインタークーラ45の下流側とは、空気バイパス通路49により互いに連結される。空気バイパス通路49の入口には空気バイパス制御弁48が配置される。空気バイパス制御弁48は、燃料電池スタック10を迂回して空気供給路41からカソードオフガス通路46へ流れる空気の量を制御する。図1に示される燃料電池システムAでは空気バイパス制御弁48は電磁式の三方弁から形成される。
図1に示される実施例では、コンプレッサ44の停止時に、わずかな空気がコンプレッサ44を通過可能になっている。また、空気バイパス制御弁48において、コンプレッサ44と空気バイパス制御弁48との間の空気供給路41、すなわちコンプレッサ側の空気供給路41を、空気バイパス通路49と連通させ、空気バイパス制御弁48と燃料電池スタック10との間の空気供給路41、すなわち燃料電池スタック10側の空気供給路41と連通させなかったとき、わずかな空気が空気バイパス制御弁48をコンプレッサ44側の空気供給路41から燃料電池スタック10側の空気供給路41に通過可能になっている。また、カソードオフガス排出弁47を閉弁したときに、すなわちカソードオフガス排出弁47の開度を最小にしたときに、わずかな空気がカソードオフガス排出弁47を通過可能になっている。言い換えると、コンプレッサ44が停止され、空気バイパス制御弁48においてコンプレッサ44側の空気供給路41が空気バイパス通路49と連通され、燃料電池スタック10側の空気供給路41と連通されなかったとき、かつ、カソードオフガス排出弁47が閉弁されているときであっても、燃料電池スタック10の空気通路40は完全には封止されておらず、すなわち空気通路40には大気42から空気が侵入可能になっている。このようなコンプレッサ44及びカソードオフガス排出弁47を用いると、安価な弁を採用できるので、燃料電池システムAのコストを大幅に低減することができる。
このような燃料電池システムAのコストを大幅に低減することができる、気体のリーク量が相対的に多いカソードオフガス排出弁47や空気バイパス制御弁48において、その気体のリーク量(1秒間に弁の一方から他方に漏れる空気の容積)は、例えば、30L/min@60kPa.gである。
図示しない別の実施例では、空気バイパス通路49は配置されず、空気バイパス制御弁48の代わりに空気供給路41内を流れる空気の供給を遮断する空気遮断弁が配置される。燃料電池スタック10の発電中に空気遮断弁は開弁される。このとき燃料電池スタック10の空気通路へ供給される空気の量はコンプレッサ44で制御され、燃料電池スタック10の発電停止時に空気遮断弁はカソードオフガス排出弁47と共に閉弁される。空気遮断弁はカソードオフガス排出弁47と同様の弁を用いることができる。したがって、空気遮断弁を閉弁したときに、すなわち空気遮断弁の開度を最小にしたときに、わずかな空気が空気遮断弁を通過可能になっている。この場合にも、燃料電池システムAのコストを大幅に低減することができる。
また、冷却水通路50の入口には冷却水供給管51の一端が連結され、冷却水供給管51の出口には冷却水供給管51の他端が連結される。冷却水供給管51内には冷却水を圧送する冷却水ポンプ52と、ラジエータ53とが配置される。ラジエータ53上流の冷却水供給管51と、ラジエータ53と冷却水ポンプ52間の冷却水供給管51とはラジエータバイパス管54により互いに連結される。また、ラジエータバイパス管54内を流れる冷却水量を制御するラジエータバイパス制御弁55が設けられる。図1に示す実施例ではラジエータバイパス制御弁55は電磁式の三方弁から形成され、ラジエータバイパス管54の入口に配置される。冷却水ポンプ52が駆動されると、冷却水ポンプ52から吐出された冷却水は冷却水供給管51を介して燃料電池スタック10内の冷却水通路50内に流入し、次いで冷却水通路50を通って冷却水供給管51内に流入し、ラジエータ53又はラジエータバイパス管54を介して冷却水ポンプ52に戻る。
電子制御ユニット60はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス61によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)62、RAM(ランダムアクセスメモリ)63、CPU(マイクロプロセッサ)64、入力ポート65及び出力ポート66を具備する。高圧通路31a内、中圧通路31b内及び低圧通路31c内には、それぞれ通路内の圧力を検出する圧力センサ81、圧力センサ82及び圧力センサ83が配置される。セル電圧センサ16の出力信号、圧力センサ81、圧力センサ82及び圧力センサ83の出力信号は対応するAD変換器67を介して入力ポート65に入力される。一方、出力ポート66は対応する駆動回路68を介してDC/DCコンバータ11、インバータ12、モータジェネレータ13、DC/DCコンバータ15、主止弁33、レギュレータ34、水素ガスインジェクタ35、アノードオフガス排出弁37、コンプレッサ44、カソードオフガス排出弁47、空気バイパス制御弁48、冷却水ポンプ52及びラジエータバイパス制御弁55に電気的に接続される。なお、図1に示される燃料電池システムAでは、電子制御ユニット60は、スイッチ回路71を介して電源72に接続され、スイッチ回路71のオンにより起動される。車両操作者により操作されるイグニッションスイッチ70は電子制御ユニット60の入力ポート65に電気的に接続される。スイッチ回路71は、一方ではイグニッションスイッチ70によりオン/オフを制御され、他方では電子制御ユニット60の消勢時に一定時間間隔で一時的にオンになり、電子制御ユニット60を一時的に起動する。車両操作者によりイグニッションスイッチ70がオフに操作されると、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号がイグニッションスイッチ70から出力され、入力ポート65を介して電子制御ユニット60に入力される。その信号が入力にされると、電子制御ユニット60により発電を停止するための(後述する)発電停止シーケンス制御が実行される。発電停止シーケンス制御が終了されると、スイッチ回路71により電子制御ユニット60と電源72との接続が切断される。一方、車両操作者によりイグニッションスイッチ70がオンに操作されると、燃料電池スタック10での発電を開始すべき信号がイグニッションスイッチ70から発せられ、スイッチ回路71に入力される。その信号が入力されると、スイッチ回路71により電子制御ユニット60と電源72とが接続され、電子制御ユニット60が起動する。
さて、燃料電池スタック10を発電すべきときには、レギュレータ34の設定圧力が発電時の設定圧力に設定されると共に、主止弁33、水素ガスインジェクタ35及びアノードオフガス排出弁37が開弁され、したがって水素ガスが燃料電池スタック10に供給される。また、コンプレッサ44が駆動され、空気バイパス制御弁48によりコンプレッサ44と燃料電池スタック10とが連通され、カソードオフガス排出弁47が開弁され、したがって空気が燃料電池スタック10に供給される。その結果、燃料電池単セルにおいて電気化学反応(アノード極:H2→2H++2e-、カソード極:(1/2)O2+2H++2e-→H2O)が起こり、電気エネルギが発生される。この発生された電気エネルギはモータジェネレータ13に送られる。その結果、モータジェネレータ13が車両駆動用の電気モータとして作動され、車両が駆動される。一方、例えば車両制動時にはモータジェネレータ13が回生装置として作動し、このとき回生された電気エネルギは蓄電装置14に蓄えられる。
これに対し、燃料電池スタック10の発電を停止すべきときには、発電停止シーケンス制御が実行される。すなわち、主止弁33、水素ガスインジェクタ35及びアノードオフガス排出弁37が閉弁され、したがって燃料電池スタック10への水素ガスの供給が停止され、水素ガスが水素ガス通路30に閉じ込められる。また、コンプレッサ44が停止され、カソードオフガス排出弁47が閉弁され、したがって燃料電池スタック10への酸素ガスの供給が停止され、酸素ガスが空気通路40に閉じ込められる。
図2は、図1に示される燃料電池システムAにおいて、燃料電池スタック10の発電が停止される前後のセル電圧CVを示している。なお、図1に示される燃料電池システムAでは、アノード極の電位はゼロに保持されているので、セル電圧CVはカソード極の電位を示している。
図2においてX1で示されるタイミングでは、燃料電池スタック10は発電中である。この場合、電解質膜の一側にあるアノード極には水素ガスが供給されており、電解質膜の他側にあるカソード極には空気が供給されており、燃料電池スタック10では上述した電気化学反応が行われている。その結果、セル電圧CVはCV1(例示:燃料電池単セル1個当たり1.0V)となる。
次いで、図2においてX2で示されるように燃料電池スタック10の発電を停止すべき信号が発せられると、燃料電池スタック10への水素ガス及び空気の供給が停止され、カソード極に残存する酸素ガスがアノード極から電解質膜を透過したプロトンと反応し、次第に減少するので、図2にX3で示されるようにセル電圧CVは次第に低下する。次いで、カソード極の残存酸素ガスがほとんどすべて消費されると、電気化学反応が停止し、したがって図2にX4で示されるようにセル電圧がゼロとなる。このとき、アノード極には水素ガスが残存している。そのため、水素ガスがアノード極から電解質膜を透過してカソード極へ拡散し、カソード極に水素ガスが存在するようになる。
燃料電池スタック10のカソード極に酸素ガスがほとんど残存していないと、図2においてX5で示されるように、セル電圧CVはゼロに維持される。ところが、上述したように、図1に示される燃料電池スタック10では、燃料電池スタック10の発電停止時に燃料電池スタック10の空気通路40内に空気が侵入し、したがってカソード極に空気が到達しうる。そのとき、カソード極に存在する水素ガス量(モル数)がカソード極に存在する酸素ガス量(モル数)の2倍(水素酸素比:2)以上のときには、カソード極で水が生成することにより、侵入した酸素ガスを消費できる(2H2+O2→2H2O)。この際には、カソード極の電位は上昇せず、したがってセル電圧はゼロに維持される。
ところが、アノード極に残存する水素ガス量が次第に少なくなって、アノード極からカソード極に透過する水素ガス量が減少し、カソード極での水素酸素比が2よりも小さくなると、カソード極内に存在する酸素ガスの量が増大し、酸素ガスが電解質膜を透過してアノード極に到るようになる。その結果、アノード極には水素ガスと酸素ガスとが存在し、カソード極には酸素ガスが存在することになる。このような状態では、カソード極の電極触媒においてカーボンが好ましくなく酸化され、したがってカソード極の電極触媒が劣化するおそれがある。一方、カソード極の残存酸素ガス量が増加するにつれて、カソード極の電位が次第に上昇し、したがって図2においてX6で示されるようにセル電圧CVが次第に上昇する。
このように、燃料電池スタック10の発電停止時におけるセル電圧CVはカソード極の残存酸素ガス量を示している。そして、セル電圧CVが増加すると、すなわちカソード極の残存酸素ガス量が増加すると、その一部がアノード極に移動し、アノード極に水素ガスと酸素ガスとが存在することになり、カソード極の電極触媒が劣化するおそれが出てくる。そこで図1に示される燃料電池システムAでは、燃料電池スタック10の発電停止中にセル電圧CVが予め設定された上限電圧よりも大きくなったときには、カソード極の電極触媒が劣化する予兆として捉え、カソード極を保護するカソード極保護制御を行うようにしている。次に、図3を参照しながらカソード極保護制御を説明する。
すなわち、図3の時間t1においてセル電圧CVが上限電圧CVUL(例示:燃料電池単セル1個当たり0.05V)よりも大きくなると、水素ガスインジェクタ35が開弁時間Δt1(時間t1からt2まで)だけ一時的に開弁され、セル電圧CVを下限電圧CVLLまで低下させるのに必要な一定量、すなわち電圧低下水素ガス量の水素ガスがアノード極に供給される。この場合、アノードオフガス排出弁37は閉弁状態に保持される。その結果、アノード極に供給された水素ガスの一部は、電解質膜を透過してカソード極に移動し、カソード極に存在する酸素ガスと反応し水が生成することにより、カソード極における酸素分圧が低下するため、セル電圧CVが低下する。カソード極内の酸素分圧が低下することにより、カソード極内の酸素ガスが電解質膜を透過してアノード極に移動することを抑制できる。したがって、カソード極の劣化が抑制される。また、カソード極の酸素分圧の低下に伴い、セル電圧CVは次第に低下して、時間t3においてセル電圧CVが下限電圧CVLL(例示:燃料電池単セル1個当たり0.01V)よりも小さくなる。なお、もし水素ガスインジェクタ35の閉弁後の予め設定された猶予時間Δt2(時間t2からt4まで)経過後においてセル電圧CVが下限電圧CVLLよりも小さくならなければ、再度水素ガスインジェクタ35が一時的に開弁され電圧低下水素ガス量の水素ガスがアノードに供給される。
このとき水素ガスインジェクタ35によりアノード極に供給される水素ガス量が多過ぎると、水素ガスの一部分はセル電圧CVを下限電圧CVLL以下に低下させるが、セル電圧CVの低下に寄与しなかった水素ガスの余剰部分の少なくとも一部は、カソード極に移動した後、カソードオフガス排出弁47などを介して外部へ拡散してしまい、有効に利用できない。したがって、水素ガスの無駄をなくすためには、上述された電圧低下水素ガス量の水素ガスをアノードに供給するべく、アノード極に供給される水素ガス量を水素ガスインジェクタ35により微細に制御する必要がある。
図4は水素ガスインジェクタ35の一例を示している。水素ガスインジェクタ35はケーシング84を備える。ケーシング84内には互いに連通するプランジャ収容孔85と水素ガス流出孔86とが形成される。プランジャ収容孔85は水素ガス供給路31の中圧通路31bに連結され、水素ガス流出孔86は水素ガス供給路31の低圧通路31cに連結される。水素ガス流出孔86の開口部周りのプランジャ収容孔85内壁面には弁座87が形成される。また、プランジャ収容孔85内にはプランジャ88が軸線方向に移動可能に収容される。プランジャ88は底端においてゴム製シール89を備える。シール89は環状の凸部を有する。
プランジャ88はソレノイド(図示されず)により軸線方向に移動される。プランジャ88が弁座87から離れる方向に移動されると、プランジャ収容孔85と水素ガス流出孔86とが互いに連通され、すなわち水素ガスインジェクタ35が開弁される。その結果、水素ガスインジェクタ35から水素ガスが供給される。これに対し、プランジャ88が弁座87に近づく方向に移動されてシール89が弁座87に着座すると、プランジャ収容孔85と水素ガス流出孔86との連通が遮断され、すなわち水素ガスインジェクタ35が閉弁される。その結果、水素ガスインジェクタ35からの水素ガス供給が停止される。このような水素ガスインジェクタ35はニードル弁の一種と見ることができる。
図4に示すような構成を有する水素ガスインジェクタ35を用いた場合、アノード極へ供給される水素ガスの量は、中圧通路31b内の圧力と低圧通路31c内の圧力との差圧、及び、開弁時間によって決まる。ただし、水素ガスインジェクタ35で制御され得る最も短い開弁時間が決まっているため、水素ガスインジェクタ35が供給し得る水素ガスの最少量は中圧通路31b内の圧力と低圧通路31c内の圧力との差圧で決まることになる。すなわち、差圧が小さい場合にはアノード極に供給し得る水素ガスの最少量は少なくなり、水素ガス量の微細な制御が可能となる。しかし、差圧が大きい場合にはアノード極に供給し得る水素ガスの最少量は大きくなり、水素ガス量の微細な制御は困難となる。
ところが、燃料電池スタック10の発電中のレギュレータ34の設定圧力は発電時の最大出力時の水素ガス消費量などから決まり、図1の実施例では設定圧力は大気圧の数倍の圧力、例えば700〜1000kPaの圧力範囲内の圧力に設定される。したがって、中圧通路31b内の圧力もその設定圧力とほぼ同じになる。一方、低圧通路31cの圧力は燃料電池スタック10の運転条件から、例えば110〜250kPaの圧力範囲で制御される。したがって、これらの圧力条件下で図3に示すカソード極保護制御を行うと、中圧通路31b内の圧力と低圧通路31c内の圧力との差圧が大きく、アノード極に供給し得る水素ガスの最少量は大きくなる。そのため、水素ガス量の微細な制御ができず、過剰な水素ガスをアノード極に供給してしまい、水素ガスの無駄が発生するおそれがある。
そこで、本実施例では、燃料電池スタック10の発電停止中にカソード極保護制御を行うにあたり、発電停止シーケンス制御において、燃料電池スタック10の発電停止中のレギュレータ34の設定圧力を、上記の燃料電池スタック10の発電中の設定圧力と比較して低い圧力に設定する。その低い圧力は、例えば150〜200kPaの圧力範囲内の圧力である。以下、図5を参照しながら発電停止シーケンス制御及びカソード極保護制御について説明する。
図5は、発電停止シーケンス制御及びカソード極保護制御を説明するタイムチャートであり、(a)は主止弁33の開閉を示し、(b)は高圧通路31aの圧力P1を示し、(c)はレギュレータ34の設定圧力PSを示し、(d)は中圧通路31bの圧力P2を示し、(e)は水素ガスインジェクタ35の開閉を示し、(f)はアノードオフガス排出弁37の開閉を示し、(g)はコンプレッサ44のオン/オフを示し、(h)はカソードオフガス排出弁47の開閉を示し、(i)は燃料電池スタック10のセル電圧CVを示す。
燃料電池スタック10で発電が行われているときには(時間t11より前)、主止弁33は開弁され、高圧通路31aの圧力P1はP1H(例示:約70MPa)である。レギュレータ34の設定圧力PSは燃料電池スタック10での発電中の発電時圧力PSH(例示:700kPa)に設定され、したがって中圧通路31bの圧力P2はPSHである。水素ガスインジェクタ35は間欠的な開弁を繰り返して低圧通路31cに水素ガスを供給し、アノードオフガス排出弁37は通常閉弁されており、アノード極に水素ガスが供給される。一方、コンプレッサ44は作動し、カソードオフガス排出弁47は開弁されて、カソード極に空気が供給される。それにより、燃料電池スタック10では発電が行われ、セル電圧CVはCV1となる。
燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられると(時間t11)、発電停止シーケンス制御が実行される。発電停止シーケンス制御では、主止弁33は閉弁され、レギュレータ34の設定圧力PSは発電時圧力PSHよりも低い停止時圧力PSL(例示:150kPa)に設定される。ただし、中圧通路31bの圧力P2は直ちに停止時圧力PSLには下がらないため、中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下するように、水素ガスインジェクタ35により水素ガスがアノード極に供給される。このとき、水素ガスが無駄にならないように、コンプレッサ44により空気がカソードに供給され、燃料電池スタック10により発電が行われ、発電された電力が蓄電装置14に蓄えられる。図5の実施例では、セル電圧CVは時間t11までと同様にCV1である。
中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下すると(時間t12)、アノードオフガス排出弁37が閉弁されたまま、水素ガスインジェクタ35は閉弁され、水素ガスインジェクタ35による水素ガスの供給が停止され、かつ、コンプレッサ44による空気の供給が停止されると共にカソードオフガス排出弁47が閉弁される。それにより、燃料電池スタック10への水素ガス及び空気の供給が停止されて、発電が停止される。すなわち、燃料電池スタック10が発電停止状態となる。以上により、発電停止シーケンス制御が終了する。
燃料電池スタック10が発電停止状態になると、カソード極保護制御が実行される。燃料電池スタック10が発電を停止し、セル電圧CVがゼロになった(時間t13)後、時間経過と共に、燃料電池スタック10の空気通路40内に空気が侵入し、上述された機構により、セル電圧CVが次第に上昇し始める。そこで、セル電圧CVが上限電圧CVULよりも大きくなったときには(時間t14)、水素ガスインジェクタ35が開弁時間Δt1(時間t14〜t15)だけ一時的に開弁され、電圧低下水素ガス量の水素ガスがアノード極に供給される。その結果、アノード極から電解質膜を透過してカソード極に移動した水素ガスが、カソード極内の酸素ガスと反応し、酸素ガスが消費されるため、セル電圧CVが下降して下限電圧CVLLよりも小さくなる(時間t16)。ここで、水素ガスインジェクタ35により水素ガスがアノード極へ供給されるとき、水素ガスインジェクタ35の一次側の圧力、すなわち中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低くされているので、水素ガスインジェクタ35は水素ガス量を微細に制御できる。そのため水素ガスインジェクタ35の電圧低下水素ガス量を少なく設定でき、したがって水素ガスインジェクタ35を開弁した時には微少な電圧低下水素ガス量の水素ガスをアノード極へ供給することができる。その結果、過剰な量の水素ガスをアノード極に供給して水素ガスの無駄が発生することを抑制できる。なお、燃料電池スタック10が発電停止状態になって以降、水素ガスのカソード極への拡散やアノード極に拡散してきた酸素ガスと水素ガスとの水生成反応で水素ガスが減少することにより、水素通路30内の圧力は徐々に低下し、セル電圧CVが上限電圧CVULになる時までには概ね大気圧程度(約101kPa)になっている。その状態で水素ガスインジェクタ35により水素ガスが電圧低下水素ガス量だけアノード極へ供給されると(時間t14)、水素通路30内の圧力は例えば約110〜120kPaの圧力まで高められる。その後の水素通路30内の圧力については、上記の水素ガス量の減少により徐々に大気圧程度に低下する変化と、水素ガスがアノード極へ供給されて約110〜120kPaの圧力まで上昇する変化とが繰り返される。
ここで、水素ガスインジェクタ35が水素ガスをアノード極に供給すると、中圧通路31b内の圧力P2が、レギュレータ34の停止時圧力PSLよりも低下するため、レギュレータ34は一次側の高圧通路31aの水素ガスを二次側の中圧通路31bへ供給することにより、中圧通路31bの圧力P2を停止時圧力PSLに維持する。その際、主止弁33は閉弁しているので、高圧通路31aの圧力P1は減少する。図5の実施例では、高圧通路31aの圧力P1がP1HからΔP1だけ減少する(時間t14〜t15)。
その後、更に、燃料電池スタック10の空気通路40内に空気が侵入し、カソード極の電位が上限電圧CVULよりも大きくなったときには(時間t17)、再び水素ガスインジェクタ35が開弁時間Δt1(時間t17〜t18)だけ一時的に閉弁され、水素ガスのアノード極への供給が行われ、セル電圧CVが下限電圧CVLLよりも小さくされる(時間t19)。この場合にも、水素ガスインジェクタ35が水素ガスを供給することにより、高圧通路31aの圧力P1は更にΔP1だけ減少する(時間t17〜t18)。
以下、同様に、カソード極の電位が上限電圧CVULよりも大きくなったときには、再び水素ガスインジェクタ35が開弁時間Δt1だけ一時的に開弁され、水素ガスのアノード極への供給が行われ、セル電圧CVが下限電圧CVLLよりも小さくされる。
一方、水素ガスインジェクタ35で水素ガスをアノード極へ供給する前又は後には、高圧通路31aの圧力P1が予め設定されたしきい値圧力P1L(≧停止時圧力PSL)未満であるか否かが判別される。高圧通路31aの圧力P1がしきい値圧力P1L未満に減少したと(P1<P1L)判別された場合(時間t23)、主止弁33を一時的に開弁して(時間t23〜t24)、高圧通路31a内に水素ガスを補給して、高圧通路31aの圧力P1をP1L以上の圧力、例えば発電中のP1Hより小さいP1Mに高める。それにより、高圧通路31aの水素ガスの圧力がP1Hよりも比較的低くなるため車両停止を含む発電停止中の安全性をより高めることができる。図示しない別の実施例では、高圧通路31aの圧力P1を発電中と同じP1Hに高める。それにより、主止弁33が開弁する回数が減るため発電停止中の電力消費を抑制できる。
本実施例では、カソード極保護制御(図3)を行うにあたり、すなわち燃料電池スタック10が発電を停止するときには、発電停止シーケンス制御によりレギュレータ34の設定圧力が、燃料電池スタック10の発電中の設定圧力と比較して低く設定される。それにより、中圧通路31b内の圧力P2が燃料電池スタック10の発電中よりも低くなるので、カソード極保護制御において、水素ガスインジェクタ35が微少な水素ガスを低圧通路31cに供給可能になり、過剰な水素ガスをアノード極に供給することを抑制できる。
図6は上述した発電停止シーケンス制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられたとき電子制御ユニット60により実行される。
図6を参照すると、ステップ100にて主止弁33が閉弁される。続くステップ101ではレギュレータ34の設定圧力PSが発電時圧力PSHよりも低い停止時圧力PSLに変更される。続くステップ102では中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下するように、水素ガスインジェクタ35が開弁され、中圧通路31b内の水素ガスがアノード極に供給される。このとき、水素ガスが無駄にならないように、コンプレッサ44により空気がカソードに供給され、燃料電池スタック10により発電が行われ、発電された電力が蓄電装置14に蓄えられる。続くステップ103では、中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSL以下か否かが判別される。P2>PSLのときにはステップ103からステップ102へ戻る。P2≦PSLのときにはステップ103からステップ104へ進み、水素ガスインジェクタ35及びアノードオフガス排出弁37が閉弁されて、コンプレッサ44の停止及びカソードオフガス排出弁47の閉弁が実行される。それにより、燃料電池スタック10への水素ガス及び空気の供給が停止されて、発電が停止される。
図7は上述したカソード極保護制御を実行するルーチンを示している。このルーチンは電子制御ユニット60が起動されるごとに電子制御ユニット60により1回だけ実行される。電子制御ユニット60は、発電停止中であっても、所定の時間ごとに、例えば4〜8時間に一度起動される。
図7を参照すると、ステップ200では燃料電池スタック10が発電停止中であるか否かが判別される。燃料電池スタック10が発電中のときには処理サイクルを終了する。燃料電池スタック10が発電停止中のときにはステップ200からステップ201に進み、高圧通路31aの圧力P1がしきい圧力P1L未満か否かが判別される。P1≧P1LのときにはステップS201からステップ203へ進む。P1<P1Lのときにはステップ201からステップ202に進み、主止弁33を一時的に開弁し、高圧通路31aの圧力P1をしきい圧力P1L以上にする。続くステップ203ではセル電圧CVが上限電圧CVULよりも高いか否かが判別される。CV≦CVULのときには処理サイクルを終了する。CV>CVULのときにはステップ203からステップ204に進み、電圧低下水素ガス量の水素ガスがアノード極に供給される。続くステップ205ではセル電圧CVが下限電圧CVLLよりも低いか否かが判別される。CV≧CVLLのときにはステップ204に戻る。CV<CVLLのときには処理サイクルが終了される。
このように発電停止シーケンス制御及びカソード極保護制御を実行する電子制御ユニット60は燃料電池システムAの制御器と見ることができる。
図5に示す実施例では、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後、中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下するまで、水素ガスインジェクタ35による水素ガスの供給の停止を遅延し、それにより燃料電池スタック10での発電の停止を遅延させる。図示しない別の実施例では、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後、中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下する前に、水素ガスインジェクタ35による水素ガスの供給の停止を実行する。すなわち、燃料電池スタック10の発電の停止を遅延させない。言い換えると、イグニッションスイッチ70がオフにされたら直ちに燃料電池スタック10の発電が停止される。したがって、燃料電池スタック10の動作が操作者の操作に合致する。この場合、当初の中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLより高いため、アノード極から電解質膜を透過してカソード極に移動する水素ガス量が増加し、カソード極に移動した水素ガスの一部は、カソードオフガス排出弁47などを介して無駄に排出されるかもしれない。しかし、数回のカソード極保護制御およびアノード極からカソード極への水素ガスの透過により、徐々に中圧通路31b内の圧力P2が低下して停止時圧力PSLに到達する。そのため、それ以降はカソード極保護制御での水素ガスインジェクタ35の供給する水素ガスの量は少なくなり、水素ガスの無駄が無くなる。
また、図5に示す実施例では、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後、中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下するまで、コンプレッサ44による空気の供給の停止及びカソードオフガス排出弁47の閉弁を遅延し、それにより燃料電池スタック10での発電の停止を遅延させる。すなわち中圧通路31b内の水素ガスが水素ガスインジェクタ35でアノード極に供給されて、発電に使用される。図示しない更に別の実施例では、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後、中圧通路31b内の圧力P2が停止時圧力PSLまで低下する前に、コンプレッサ44による空気の供給の停止及びカソードオフガス排出弁47の閉弁を実行し、それにより燃料電池スタック10での発電の停止を遅延させない。すなわち中圧通路31b内の水素ガスが水素ガスインジェクタ35でアノード極に供給されるが、発電に使用されず、例えばアノード極内の水分を除去する送気に使用される。すなわち水素ガスは有効に使用され、コンプレッサ44の電力消費が抑制される。
図5に示す実施例では、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後に燃料電池スタック10で発生された電力を蓄電装置14に蓄えている。図示しない更に別の実施例では、燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後に燃料電池スタック10で発生された電力を燃料電池システムA内の他の機器、例えばコンプレッサ44や、燃料電池システムAを搭載した車両内の機器、例えば車両補機に使用する。すなわち水素ガスは有効に使用される。
次に、図8を参照して別の実施例について説明する。図1に示される燃料電池システムAは、水素ガス通路30の出口に接続されたアノードオフガス通路36と水素ガス供給路31とが分離され、水素ガスを含むアノードオフガスが水素ガス供給路31へ循環されないシステム、すなわち水素ガス非循環式の燃料電池システムである。一方、図8に示される燃料電池システムAは、水素ガス通路30の出口と水素ガス供給路31とがアノードオフガス通路36及び水素ガス循環路38で接続され、水素ガスを含むアノードオフガスが水素ガス供給路31へ循環されるシステム、すなわち水素ガス循環式の燃料電池システムである。
アノードオフガス通路36内には上流側から順に、アノードオフガスを気液分離する気液分離器37aと、気液分離器37aに蓄積された液体の排出を制御する排出制御弁37bが配置される。気液分離器37aの上部には水素ガス循環路38の入口が連通され、水素ガス供給路31における低圧通路31cには水素ガス循環路38の出口が連通される。水素ガス循環路38内には、気液分離器37a内の気体、すなわち気液分離されたアノードオフガスを圧送する水素ガス循環ポンプ39が配置される。水素ガス循環ポンプ39が駆動されると、気液分離器37aに蓄積されたアノードオフガスが水素ガス供給路31へ循環される。アノード極に供給される水素ガス量は、水素ガスインジェクタ35及び水素ガス循環ポンプ39により制御される。アノード極での窒素ガス濃度が高まったときや液水量が多くなったときには、水素ガス循環ポンプ39が一時的に停止されると共に水素ガスインジェクタ35及び排出制御弁37bが一時的に開弁され、それによりアノード極内の窒素ガスが掃気される。
上述された燃料電池スタック10での発電を停止すべき信号が発せられた後、燃料電池スタック10の発電の停止が遅延されるときには、水素ガスインジェクタ35の開弁、排出制御弁37bの閉弁及び水素ガス循環ポンプ39の駆動によるアノード極への水素ガスの供給が継続されて、発電が継続される。その後、燃料電池スタック10の発電が停止されるときには、水素ガスインジェクタ35及び排出制御弁37bは閉弁され、水素ガス循環ポンプ39は停止される。
この場合にも、図1に示される実施例の燃料電池システムAと同様の効果を奏することができる。