JP6407134B2 - 積層複合木質材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、単板積層材からなる積層複合木質材及びその製造方法に関するものである。

従来、積層複合木質材として本願出願人によって特許文献1が提案されている。特許文献1に係る発明は、南方産の木質材を使用することにより、所望の曲げ強度などの諸特性を備えた積層複合木質材およびその製造方法を提供することを目的とするもので、絶乾比重0.6以上の薄板材と絶乾比重0.4以下の薄板材とを交互に少なくとも3層以上積層一体化したことを特徴とする。特に絶乾比重0.6以上の薄板材であるラバーウッドと、絶乾比重0.4以下の薄板材であるファルカタとが使用されるものである。
他方、戦後大量に植林されたスギなど国産針葉樹は地域環境の観点からも間伐・主伐を必要としているが、曲げヤング係数が低いという物性と節が多いなどの表面性の問題で充分な需要開発が進んでいない。
コナラ、アベマキ、クヌギ、センダン、シラカバなどの国産広葉樹は、スギ、ヒノキ、カラマツなど針葉樹伐採時に森林に混入しているものが副次的に伐採されて単一樹種での供給が不可能なため、特殊な銘木類を除いてパルプ用と燃料用のチップとして消費されている。
そのため、内装建材用として、従来は、ラワン材など南方産広葉樹や、ポプラやユーカリなどの中国からの輸入木材やその加工品が利用されてきた。ところが、ポプラなど柔らかい木の単板だけで生産した単板積層材は吸放湿性が高く膨張収縮は小さくても環境変化で容易に反りが発生しやすい。ユーカリなど堅い木の単板だけで生産した単板積層材は生産工程のボードで反り・捻じれ・カップなどが出やすく、サンダー工程での押さえ装置が十分に機能しないために厚さを特定の精度以内で仕上げることが極めて困難であった。
また特許文献1などの積層複合木質材にあっては、平滑性向上を図り得ると共に、所定の厚さ精度で仕上げることが容易になるが、熱帯林保護の観点から供給量が大幅に削減されているといった課題などが存在する。
この従来のファルカタ・ラバーウッドや、中国産のポプラ・ユーカリのような積層複合木質材では、品質の安定などの理由により、低比重材と高比重材の各1樹種ずつ選択して積層することを原則としていた。
特許4012881号公報
上記の事情に鑑み、本発明は、地球環境と原料産地に社会的な貢献をする国産材などを主原料として、エンジニアードウッド製品供給を可能とする新たな積層複合木質材とその製造方法の開発を試みたものである。
本発明は、複数枚の薄板材が上下に積層された積層複合木質材において、用いる単板の樹種を、2分していた従来の積層複合木質材ではなく、気乾比重0.5以上0.6未満の複数枚の中質薄板材と、気乾比重0.4以下の複数枚の柔質薄板材と、気乾比重0.7以上の堅質薄板材との3種に分けたものであり、特に中質薄板材については、複数の樹種の薄板材が混在させた積層複合木質材を提供する。
なお本発明において、樹種によって気乾比重に幅がある場合には、その幅の下方の値を気乾比重とする。
前記中質薄板材と前記柔質薄板材とは、前記積層複合木質材の積層中心から上下に略対称に配置する。
また、前記堅質薄板材は、前記積層複合木質材の上下両方の表面側に配置する。前記堅質薄板材を表面側に配置する場合は、同じ厚さの単板を同じ枚数を表裏の両面に配置することが重要である。片面にだけ前記堅質薄板材を貼った場合には、反りやカップの原因になる。
本発明の実施に際しては、中質薄板材に複数の樹種を混在させる方が、積層複合木質材の特性が安定することが知見された。一般的に、また特許文献1の実施に際しても、積層使用する単板の樹種は、単一であるほうが積層複合木質材の特性が安定すると考えられているが、中質薄板材にあっては、異なる樹種を混在させても、特性が安定するという結果を得たものである。この新たな知見は、長年木材産業やその研究に携わってきた発明者にとっても、驚くべき新たな知見であった。
具体的な前記柔質薄板材は、スギ・トドマツ・アカマツなどのマツ目マツ科とマツ目ヒノキ科とからなる群に属する樹種から選択された少なくとも1種を含むものとすることができる。
また前記中質薄板材は、アベマキ・センダン・シラカバなどのニレブナ目カバノキ科、バラ目ニレ科及びムクロジ目センダン科からなる群に属する樹種から選択された少なくとも1種を含むものとすることができる。
前記堅質薄板材は、コナラなどのナラ、クヌギ、カシなど、ブナ目ブナ科からなる群に属する樹種から選択された少なくとも1種を含むものとすることができる。
表1にこれらをまとめて表示するが、記載した具体的な目科属種以外であっても木乾比重の条件を満たすものであれば使用してもかまわないし、その産地についても限定して理解されるべきではない。
本発明は、地球環境と原料産地に社会的な貢献をする国産材などを主原料として、エンジニアードウッド製品供給を可能とする新たな積層複合木質材とその製造方法を提供することができたものである。
本発明の実施の形態に係る積層複合木質材の層構造を示す説明図。 本発明の他の実施の形態に係る積層複合木質材12の層構造を示す説明図。 図1の積層複合木質材の曲げヤング係数のヒストグラム。 図1の積層複合木質材の曲げ強度のヒストグラム。 本発明の実施の形態に係る積層複合木質材の製造方法の説明図。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、前述のとおり、地球環境と原料産地に社会的な貢献をする国産材などを主原料として、エンジニアードウッド製品供給を可能とする新たな積層複合木質材とその製造方法を提供する。
本発明の実施の形態に係る積層複合木質材12の層構造を図1に示す。
この実施の形態に係る積層複合木質材12は、気乾比重0.5以上0.6未満の複数枚の中質単板14と、気乾比重0.4以下の複数枚の柔質単板13とが、積層複合木質材12の厚み方向の積層中心から上下(表裏)に略対称に配置されている。各単板11同士は単板積層用の周知の接着剤により接着されている。
この例では、積層中心に複数枚の柔質単板13を配置し、図中の番号の5〜13の9枚の単板11と、14〜22との9枚の単板11とが、柔質単板13(図中の白地)と中質単板14(図中の灰色地)とを交互に配置された状態で、上下に対称にとなっている。そして、図中の番号の1〜4の4枚の単板11と、23〜26の4枚の単板11とが、中質単板14のみで構成された状態で、上下に対称にとなっている。なお、単板は、原木をかつら剥きにした板材が一般的であるが、他の製法による板材であってもよい。
柔質単板13には、スギ(気乾比重0.36〜0.40)、トドマツ(気乾比重0.36〜0.40)、エゾマツ(気乾比重0.40〜0.43)などのマツ目マツ科及びマツ目ヒノキ科の樹種を用いることができ、中質単板14には、ニレ(気乾比重0.59)・センダン(気乾比重0.55〜0.65)・シラカバ(気乾比重0.57〜0.63)などのブナ目カバノキ科、バラ目ニレ科及びムクロジ目センダン科の樹種を用いることができるが、中質単板14にあっては、複数の樹種を混在させることが適当である。これらは国産材を好適に用いることができるが、輸入材を用いることもできる。
なお、この配置は略対称であることを条件に適宜変更することができ、例えば、積層中心には複数枚の柔質単板13を重ねて配置することもできる。言いかえれば、積層中心付近を単板11の数(積層厚み)が、中質単板14よりも柔質単板13の方が多い柔質部とし、上下(表裏)寄りを単板11の数(積層厚み)が柔質単板13よりも中質単板14の方が多い中質部とし、両者の間を中質単板14と柔質単板13とが混在している混在部とすることができる。なお対称であるとは、数学的な意味での正確な対称であることを意味するのではなく、単板11の厚みや枚数に若干の違いを許容するもので、上記のように柔質部、混在部、堅質部との配置構成であったり、柔質部のない、混在部と堅質部との配置構成であったり、混在部のみの配置構成であったりするものであればよい。なお混在部は、柔質単板13と中質単板14とを1枚ずつ交互に配置することもでき、2枚以上ずつ交互に配置することもできる。
単板11の少なくとも1枚を、その繊維方向が他の単板の繊維方向に略直交するように配置することにより、繊維方向に直交する方向における曲げ強度を高め、積層複合木質材の方向性を低減することができる。
また、図2に示す例では、積層複合木質材12の上下の表裏両面に、気乾比重0.7以上の堅質単板15を配置したものであり、これによって、表面硬度の高い積層複合木質材12を得ることができる。堅質単板15としては、コナラ(気乾比重0.82)、アベマキ(気乾比重0.98)、クヌギ(気乾比重0.89)、カシ(気乾比重0.90)などのブナ目ブナ科を好適に用いることができるが、輸入材を用いることもできる。
例えば柔質単板13のスギは、国産材資源として大量の蓄積があるが、強度が弱い、曲げヤング係数が小さい、製材品での乾燥のバラツキが大きいなど材質上の問題のため需要量が少ない。また、スギの生産は間伐が必要な林業で、間伐材の需要開発が喫緊の課題となっている。さらに主伐材の供給圧力が増加してスギが柱材適用直径を超えた原木(中目材)が安い価格で取引されて、林業の採算性を著しく損ねている。その気乾比重は、0.35〜0.40程度で比重が低く吸放湿による膨張収縮が少ないので、昔から造作材や指物家具材料として使われてきたもので、スギ林として栽培され、単一樹種で安定的に供給されるため、柔質単板13には単一樹種で実施することが可能となる。なお特に限定するものではないが、原木長さを1m以上、直径20cmm以上の通直材の条件で選別して用いることが適当である。
ところがスギなど柔質単板13だけで生産した単板積層材は、曲げ強度や曲げヤング係数が低いことはもちろん、吸放湿性が高く膨張収縮は小さくても環境変化で容易に反りが発生しやすい。
これに対して、中質単板14は、曲げ強度や曲げヤング係数が比較的高く、吸放湿性が低くて環境変化での反りが発生しにくい反面、生産工程のボードで反り、捻じれ、カップなどが出やすく、サンダー工程での押さえ装置が十分に機能しないために厚さを要求される精度以内で仕上げることが極めて困難であった。
この実施の形態に係る積層複合木質材12は、柔質単板13と中質単板14とを層方向に略対称に積層したことによって、両者の物性を均質化することができた。
これにより、単一樹種の単板積層材と比較して、曲げ強度、曲げヤング係数などのバラツキが小さくなると共に、特に反りに関しては、中質単板14の膨張収取の寸法変化を柔質単板13が吸収して寸法安定性を維持することができる。また、柔質単板13と中質単板14を積層した積層複合木質材12は、柔質単板13のみを積層ボードと同様にホットプレス後の平滑性向上と、研磨時のサンダーの押さえが効いて、所定の厚さ精度で仕上げることが容易になる。
特に、極端に材質の異なる柔質単板13と堅質単板15とではなく、柔質単板13と中質単板14とを、交互に用いるなど積層中心から上下に略対称に配置することによって、比較的近い材質の単板11を中心の群として積層することによって、両者の補完関係を無理なく実現させることができる。
さらに、中質単板14については、異なる複数の樹種を混在させるほうが、特性が安定するという結果を得たものである。
樹木の髄から辺材部における材質(例えば、曲げヤング係数、容積密度)の変化については、単一樹種でも部位により物性に大きな相違があることが、既に知られている。これに対して、図1に示す実施の形態に係る積層複合木質材12にあっては、曲げヤング係数が平準化されていると共に標準偏差も0.5014と小さくなっており(図3参照)、曲げ強度も平準化されているものである(図4参照)。これは、積層複合木質材12の積層構造と、樹種の多様化が物性の平準化につながったものと、本発明者は考えている。
図5は積層複合木質材の製造方法を示すもので、この製造方法は、単板製造ステップ21と単板輸送ステップ22と積層ステップ23との各ステップを備える。
単板製造ステップ21は、山林20などの原料木材の産地ごとに、産地付近に設けられた産地製造所24にて、山林20から伐採した木材を加工して各単板11を製造する工程である。単板輸送ステップ22は、原料木材の産地から遠い積層製造所25へ、産地製造所24で製造された単板11をトラックや船や鉄道などで輸送する工程である。積層ステップ23は、積層製造所25で、単板11を積層して積層複合木質材12を製造する工程である。
産地製造所24には、個別に安価なロータリーレースを設置して、厚さムラが少し許容される単板11を生産し、太陽熱による自然乾燥をして山村地域での付加価値を付与する。この単板11を単板輸送ステップ22で積層製造所25へ搬送することによって、従来のように山林20から伐採した原木を原木のまま遠い工場にまで搬送する場合に比して消費エネルギーを削減することができると共に、積層製造所25付近で集積することで、産地の異なる単板11を選択して積層製造所25で生産することを可能にする。積層製造所25には大型の積層加工装置を配置し、各種単板11から積層複合木質材12を製造する。その際、ワイドベルトサンダー加エ前の単板11は、単板製造ステップ21で適切な条件にまで加工されており、単板11のカップ・反り・捻じれなどの変形が小さくなるうえに、前述の積層構造によって、サンダーの押さえが効くように柔らかくなり、ボード厚さ精度が向上することで、積層複合木質材12の製品品質が安定するものである。
11単板
12積層複合木質材
13柔質単板
14中質単板
15堅質単板
24産地製造所
25積層製造所

Claims (8)

  1. 複数の樹種の単板が複数枚上下に積層された単板積層材からなる積層複合木質材において、
    前記複数の単板は、気乾比重0.5以上0.6未満の複数枚の中質薄板材と、気乾比重0.4以下の複数枚の柔質薄板材とを含み、
    前記中質薄板材と前記柔質薄板材とは、前記積層複合木質材の積層中心から上下に略対称に配置されており、
    前記積層の中心付近から表裏寄りに向けて、柔質部、混在部及び中質部の順に配置された各領域を備え、
    前記柔質部は、前記単板の積層厚みが前記中質薄板材よりも前記柔質薄板材の方が多い領域であり、
    前記混在部は、前記中質薄板材と前記柔質薄板材とが混在している領域であり、
    前記中質部は、前記単板の積層厚みが前記柔質薄板材よりも前記中質薄板材の方が多い領域であることを特徴とする積層複合木質材。
  2. 前記複数枚の中質薄板材は、複数の樹種の単板が混在しているのに対して、前記複数枚の柔質薄板材は、単一の樹種の単板のみで構成されていることを特徴とする請求項1記載の積層複合木質材。
  3. 前記積層複合木質材の上下両方の表面側に、気乾比重0.7以上の堅質薄板材が配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層複合木質材。
  4. 前記柔質薄板材は、マツ目マツ科とマツ目ヒノキ科とからなる群に属する樹種から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の積層複合木質材。
  5. 前記中質薄板材は、ブナ目カバノキ科、バラ目ニレ科及びムクロジ目センダン科からなる群に属する樹種から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の積層複合木質材。
  6. 前記堅質薄板材は、ブナ目ブナ科からなる群に属する樹種から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項3に記載の積層複合木質材。
  7. 前記単板の少なくとも1枚は、その繊維方向が他の単板の繊維方向に略直交するように配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の積層複合木質材。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の積層複合木質材を製造する方法であって、
    単板製造ステップと単板輸送ステップと積層ステップとを含み、
    前記単板製造ステップは、原料木材の産地に近い複数の産地製造所で、伐採した木材を加工して単板を製造する工程であり、
    前記単板輸送ステップは、原料木材の産地から遠い積層製造所へ、前記産地製造所で製造された単板を輸送する工程であり、
    前記積層ステップは、前記積層製造所で、前記単板を積層して積層複合木質材を製造する工程であることを特徴とする積層複合木質材の製造方法。

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