JP6406569B2 - 積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法 - Google Patents
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この形成方法に依れば、金属粒子が焼結する際とセラミックス粉体が焼結する際に空隙が形成されるが、圧縮応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して空隙を埋めるため、内部電極の剥離と、脆性の性質を持つセラミックス多結晶体のクラックが起こらない。
いっぽう、従来の積層セラミックス電子部品における内部電極の形成は、金属粒子の集まりを有機物のビヒクル中に分散した導電性ペーストを、セラミックスのグリーンシートに印刷し、このグリーンシートを互いに重ね合わせて圧縮荷重を加えて熱処理し、内部電極を形成していた。このため、金属粒子が焼結する際とセラミックス粉体が焼結する際に空隙が形成され、この空隙によって、内部電極がセラミックス多結晶体から剥離し、あるいは、脆性の性質を持つセラミックスの多結晶体にクラックが入る問題を持っていた。
しかしながら、セラミックス多結晶体を生成する温度が、硫黄で処理したニッケル粉末の焼結開始温度より200℃以上は高く、この温度に一定時間保持してセラミックス粉体の焼結を行う。このため、ニッケル粉末の焼結によってニッケル粉末が占有していた体積が収縮し、また、セラミックス粉体が焼結する際に体積が収縮し、内部電極と多結晶体との間に空隙が形成される。この空隙よって、内部電極が多結晶体から剥離し、脆性の性質を持つセラミックス多結晶体にクラックが入る。さらに、硫化ニッケルないしは硫酸ニッケルの熱分解によって生成された硫化物が内部に残留し、この積層セラミックス電子部品を実装した電子回路を長期間使用した際に、残留物が電子回路を腐食する要因となる。
しかしながら、扁平形状のニッケル微粒子であっても、グリーンシートの焼成時にニッケルの焼結が進行し、ニッケル粒子が占有していた体積が収縮する。また、セラミックス粉体が焼結する際にも体積が収縮する。これによって、内部電極と多結晶体との間に空隙が形成され、内部電極の剥離現象とセラミックス多結晶体のクラック現象とをもたらす。また、ニッケル微粒子を扁平方向に揃えて有機物に分散させることは困難であり、印刷膜においては、ニッケル微粒子は扁平方向に揃って配向せず、ランダムに配向する。このため、導電性ペーストをグリーンシートに印刷し、焼結によって内部電極を形成する製法においては、扁平形状の金属微粒子を用いることによる内部電極の薄肉効果は得られない。
しかしながら、ニッケル粉末の焼結開始温度が200℃程度高められたところで、セラミックスの焼成温度はさらに400℃以上高く、この温度に一定時間保持してセラミックスの焼結を行う。このため、ニッケル粉末の焼結が進行してニッケル粉末が占有していた体積が収縮し、また、セラミックス粉体が焼結する際に体積が収縮し、内部電極と多結晶体との間に空隙が形成される。これによって、内部電極が多結晶体から剥離し、また、脆性の性質を持つセラミックス多結晶体にクラックが入る。さらに、セラミックスの焼成後においても二酸化チタンが内部電極に残存し、熱膨張係数がニッケルと異なる二酸化チタンが焼結したニッケル相に介在するため、内部電極に新たな剥離をもたらす要因になる。
しかしながら、ニッケル粉末の焼結開始温度が170℃程度高められても、セラミックスの焼成温度はさらに400℃以上高く、この温度に一定時間保持してセラミックスの焼結を行う。このため、ニッケル粉末の焼結が進行して体積が収縮し、また、セラミックス粉体が焼結する際に体積が収縮し、内部電極と多結晶体との間に空隙が形成され、内部電極が多結晶体から剥離し、セラミックス多結晶体にクラックが入る。さらに、セラミックスの焼成後においても酸化アルミニウムが残存し、熱膨張係数がニッケルと異なる酸化アルミニウムが焼結したニッケル相に介在するため、新たな剥離をもたらす要因になる。
しかしながら、従来技術の問題点で説明したように、セラミックスの多結晶体を生成する温度が、ニッケル粉末の焼結開始温度より著しく高く、この温度に一定時間保持してセラミックス粉体の焼結を進めるため、ニッケル粉末の体積が収縮する。また、セラミックスの多結晶体を生成する際にも体積が収縮し、内部電極と多結晶体との間に空隙が形成される。いっぽう、気体の圧力は、体積に反比例し、絶対温度に比例するとのボイルシャルルの法則が成り立つため、例えば、温度が100℃上昇すると、気体の体積は1.4倍に増大する。従って、空隙は温度変化に応じて体積変化を繰り返し、積層セラミック電子部品を構成する内部電極とセラミックスの多結晶体とに、圧縮応力ないしは引張応力が繰り返し加えられる。この結果、内部電極が多結晶体から剥離する、あるいは、脆性の性質を持つセラミックスの多結晶体にクラックが入るという、電子部品の不具合が発生する。また、ニッケル粉末に金属酸化物や硫化物の被膜を形成して焼結開始温度を高めても、セラミックス粉体の焼結温度とのかい離が依然として大きく、ニッケル粉末の焼結が進行して体積が収縮し、内部電極はセラミックス多結晶体から剥離する、また、セラミックスの多結晶体にクラックが入る。さらに、セラミックス粉体の焼結後においても、金属酸化物や硫化物が内部電極に残留し、内部電極の剥離や腐食をもたらす要因になる。
従って、ニッケルに限らず他の金属の粉体や粒子を用いて内部電極を形成する際に、金属の粉体ないしは粒子の焼結に伴う体積の収縮が起こらなければよい。しかしながら、体積の収縮は金属の固相拡散に基づく固有の現象であり、金属の粉体や粒子の焼結に依って内部電極を形成する上では避けられない。このため、金属の粉体ないしは粒子が焼結する際に収縮した体積を埋める物質が存在すれば、内部電極とセラミックス多結晶体との間に空隙が形成されない。従って、内部電極の形成方法に係わる第一の課題は、金属の粉体ないしは粒子が焼結する際に収縮した体積を埋める微細な物質が存在することにある。
また、セラミックスのグリーンシートを構成する粉体を焼結し、セラミックスの多結晶体を生成する際にも体積が収縮して空隙が生成される。このため、セラミックス粉体を焼結する際にも、収縮した体積を埋める物質が存在すれば、内部電極とセラミックス多結晶体との間に空隙が形成されない。従って、内部電極の形成方法に係わる第二の課題は、セラミックスの粉体が焼結する際に、収縮した体積を埋める微細な物質が存在することである。
さらに、セラミックスの表面は、焼成前と焼成後の双方において、ミクロンレベルからなるランダムな凹凸をもつ。この表面の凹凸によって、セラミックス多結晶体と内部電極との間に空隙が形成され、内部電極の厚みを薄くすればするほど、この空隙が内部電極の剥離とセラミックス多結晶体のクラック発生の要因になる。このため、グリーンシートが焼成される以前に、内部電極の原料と、金属粒子が焼結の際に収縮した体積を埋める物質の双方が、グリーンシートの表面の凹部を埋めればよい。従って、内部電極の形成方法に係わる第三の課題は、内部電極の原料と、金属粒子が燒結する際に収縮した体積を埋める物質の双方が、グリーンシートの表面の凹部を埋めることにある。
また、グリーンシートの焼成後において、セラミックス多結晶体の表面の凹部に、内部電極の一部と、金属の粒子が焼結の際に収縮した体積を埋める微細な物質との双方が入り込めば、セラミックス多結晶体の表面の凹部に空隙が形成されない。このため、内部電極の形成方法に係わる第四の課題は、内部電極の一部と、金属粒子が燒結する際に収縮した体積を埋める微細な物質とが、セラミックス多結晶体の表面の凹部を埋めることにある。
さらに、内部電極の形成に係わる第五の課題は、積層チップバリスタの製造は、大気雰囲気でグリーンシートの焼成が行われるため、内部電極を形成する材料が、大気雰囲気におけるグリーンシートが焼成される高温でも酸化しにくい性質を持つことにある。これによって、内部電極を形成する原料が汎用性を持つ。
こうした課題の全てが同時に解決できれば、内部電極の材料がニッケルに制約されることはなく、ニッケルより自己拡散定数が若干大きいが、導電性がニッケルより優れた銅や銀によって、さらには、導電性と耐酸化性と耐食性に優れた合金によって内部電極が形成できるという付随する効果が得られる。
本発明が解決しようとする課題は、内部電極を形成するに際し、7段落で説明した5つの課題が同時に解決される全く新たな内部電極の形成方法を実現することにある。
つまり、2種類の有機金属化合物のアルコール分散液に、有機化合物を溶解ないしは混和させると、2種類の有機金属化合物のアルコール分散液より粘度が高まり、液状ペーストのグリーンシートへの印刷が可能になる。いっぽう、従来技術では、有機物のビヒクル中に密度が大きい金属の粉末ないしは粒子を分散した導電性ペーストを印刷するため、金属の粉末ないしは粒子がビヒクルと一体となって印刷されるための粘度が必要になる。さらに、ビヒクルが気化した後に、金属の粉末ないしは粒子が互いに近接することで、金属の粉末同士ないしは粒子同士の燒結が進むため、ビヒクル中の金属の粉末ないしは粒子の分散割合が高く、導電性ペーストの粘度が高まる。本内部電極の形成方法で用いる液状ペーストは、金属の粉末ないしは粒子を含まない液状物質で構成されるため、従来技術における導電性ペーストより粘度は著しく低く、グリーンシート表面の微細な凹部にも液状ペーストが入り込む。
次に、液状ペーストが印刷されたグリーンシートを互いに重ね合わせ、この重ね合わされたグリーンシートに圧縮荷重を加えると、グリーンシートの表面の凸部が互いに接近して重なり合う。この際、液状ペーストの薄い膜にも荷重が加わるため、液状ペーストはさらにグリーンシートの表面の凹部に入り込み、表面の凹凸と微細な間隙は液状ペーストで充填される。
この後、圧縮荷重を加えた状態で、重ね合わされたグリーンシートを、グリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する熱処理を行なう。なお、重ね合わされたグリーンシートに加える圧縮荷重は、2種類の有機金属化合物の双方が熱分解された後に加える圧縮荷重が、双方が熱分解される前に加える圧縮荷重より大きな圧縮荷重として加える。
最初に、グリーンシートから水分が気化し、次に、液状ペーストからアルコールと有機化合物が気化する。さらに、グリーンシートからバインダーが気化する。液状ペーストからアルコールと有機化合物とが気化すると、液状ペーストの体積が縮小するが、グリーシートには圧縮荷重が加えられているため、グリーンシートの表面の凸部がさらに接近し、表面の凹部と微細な間隙に、より微細な2種類の有機金属化合物の粉体の集まりが残留する。
さらに温度を上げると、熱分解温度が相対的に低い有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属ないしは金属酸化物に分解する。さらに昇温し有機酸を短時間で気化させると、10−100nmの大きさに入る金属微粒子ないしは金属酸化物微粒子の集まりが析出する。
さらに温度を上げると、熱分解温度が相対的に高い有機金属化合物の熱分解が始まる。つまり、有機金属化合物を構成する有機酸の沸点を超えると、有機金属化合物は有機酸と金属酸化物ないしは金属に分解する。さらに昇温し有機酸を短時間で気化させると、10−100nmの大きさに入る金属酸化物微粒子ないしは金属微粒子の集まりが析出する。
つまり、第一の有機金属化合物の熱分解が始まると、有機酸と金属(分子クラスターの状態にある)ないしは金属酸化物(分子クラスターの状態にある)とに分離し、比重が大きい金属ないしは金属酸化物は留まり、比重が小さい有機酸は金属ないしは金属酸化物の上に移動する。さらに温度が上がると気化熱を奪って有機酸が気化し、第二の有機金属化合物の微細な粉体の集まりを貫通して蒸発する。有機酸の気化が完了すると、金属ないしは金属酸化物は熱エネルギーを得て粒状の微粒子を形成して安定化し、熱分解を終える。さらに温度が上がると、第二の有機金属化合物の熱分解が始まり、有機酸と金属酸化物ないしは金属とに分離し、有機酸が気化熱を奪って気化し、有機酸の気化が完了すると、金属酸化物ないしは金属は熱エネルギーを得て金属微粒子の集まりないしは金属酸化物微粒子の集まりの上に、粒状の微粒子を形成して安定化し、熱分解を終える。このように、2種類の有機金属化合物の熱分解温度が異なるため、金属微粒子と金属酸化物微粒子とは混在せず、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとは分離した状態で析出する。こうして、グリーンシート表面の凹部と2枚のグリーシート同士の微細な間隙とに、10−100nmの大きさからなる微粒子の集まりの2重構造が形成される。
なお、熱分解で析出する金属微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状の微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子の集まりを形成する。いっぽう、金属酸化物の微粒子同士は金属結合ないしは共有結合しないため、金属酸化物の微粒子同士は結合しない。このため、金属酸化物微粒子に応力が加わると、金属酸化物微粒子は容易に移動する。従って、グリーンシートには常時圧縮荷重が加えられているため、グリーンシートの表面の凹部と微細な間隙とに空隙が形成されると、この空隙を埋めるように、10−100nmの大きさからなる金属酸化物微粒子が移動する。この結果、表面の凹部と微細な間隙は、2種類の微粒子からなる2重構造で充填される。
また、金属微粒子と金属酸化物微粒子との界面において、金属微粒子と金属酸化物微粒子との間で、合金ないしは金属間化合物を形成しないため、金属微粒子と金属酸化物の微粒子とは金属結合ないしは共有結合しない。また、金属酸化物は熱的に安定な不働態であり、金属酸化物の微粒子同士が、互いに金属結合ないしは共有結合しない。
なお、金属微粒子の集まりが内部電極を形成し、金属酸化物微粒子の集まりは内部電極が形成される際と、セラミックス粉体が燒結される際とに発生する空隙を埋める役割を担う。従って、金属酸化物微粒子は空隙を埋めるのに十分な量であればよく、金属微粒子の量に比べれば過小になる。このため、液状ペーストにおける金属が析出する有機金属化合物の量を、金属酸化物が析出する有機金属化合物の量より過多とすればよい。なお、絶縁性の金属酸化物微粒子の集まりが一定の体積を占有しても、金属微粒子と金属酸化物微粒子とは混在せず、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりとは分離した状態で析出し、さらに、金属微粒子の集まりが内部電極を形成するため、金属酸化物微粒子の集まりが存在しても、内部電極の形成の障害にならない。
さらに昇温して、一定の時間この高い温度に保持し、セラミックス粉体を焼結する。つまり、グリーンシートを構成する誘電体の粉末粒子間の界面拡散反応が始まる温度に昇温し、この温度に保持することで界面拡散が進行し、粉末粒子間の気孔が減少する。さらにこの温度に保持すると、粉末粒子間の気孔が消滅し、結晶粒が成長して誘電体セラミックスの多結晶体が生成される。この後、室温まで徐冷する。
なお、重ね合わされたグリーンシートには、2種類の有機金属化合物の双方が熱分解された後に加える圧縮荷重が、双方が熱分解される前に加える圧縮荷重より大きな圧縮荷重が加えられる。つまり、2種類の有機金属化合物の双方が熱分解される前に加える圧縮荷重に比べ、熱分解された後に加える圧縮荷重の大きさを大きくすると、熱分解で生成された金属酸化物微粒子の集まりに、より大きな圧縮応力が加わるため、金属酸化物微粒子が移動しやすくなり、グリーンシートの間隙および表面の凹部に空隙が形成されると、金属酸化物微粒子が容易に移動し、空隙が金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。これによって、グリーンシートが焼成された後において、セラミックス多結晶体と内部電極との間に空隙が形成されず、内部電極がセラミックス多結晶体から剥離せず、また、セラミックスの多結晶体にクラックが入らない。また、グリーンシートからバインダーが気化する以前は圧縮荷重が小さいため、グリーンシートが圧縮応力で変形することがない。
いっぽう、誘電体セラミックスの多結晶体が生成される昇温過程において、金属微粒子は熱エネルギーを得て粒子の粗大化を進める。粒子の粗大化が進むと、金属結合で結合された金属粒子の集まりに微小な空隙が形成されるが、この際、圧縮応力が加えられた金属酸化物微粒子がこの空隙を埋めるように移動する。さらに昇温されると、金属の拡散現象が起こり、粗大化された金属粒子同士が焼結して内部電極を形成する。この際も、金属粒子間の気孔の減少と消滅とによって空隙が形成されるが、圧縮応力が加えられた金属酸化物微粒子がこの空隙を埋めるように移動する。さらに、セラミックス粉体同士の焼結が進むと、粉末粒子間の気孔の減少と消滅とによって空隙が形成されるが、この際も金属酸化物微粒子がこの空隙を埋めるように移動する。この結果、セラミックスの多結晶体同士が向き合う間隙と表面の凹部は、内部電極と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされ、セラミックスの多結晶体同士が向き合う間隙に、1μm以下のごく薄い内部電極の形成が可能になる。
なお、金属微粒子の集まりは、金属の焼結が始まる以前の温度においては、互いに複数の接触点における金属結合で結合され、この結合力より大きな圧縮応力を受けると、金属微粒子の集まりが変形する。いっぽう、金属酸化物微粒子同士は互いに結合していないため、金属酸化物微粒子は圧縮応力を受けると容易に移動する。このため、グリーンシートの間隙および表面の凹部に空隙が形成されると、金属酸化物微粒子が優先して移動し、金属酸化物微粒子が空隙を埋める。いっぽう、金属の焼結が始まると、金属粒子の集まりは変形しにくくなるが、この温度領域でも、金属酸化物微粒子同士は結合せず、金属酸化物微粒子が優先して移動する。また、セラミックス粉体の焼結が進むと、微小な間隙が形成されるが、この際にも金属酸化物微粒子が移動する。こうして、金属酸化物微粒子の移動によって、セラミックス多結晶体の表面と内部電極とに空隙が形成されない。なおニッケルは、600℃付近から自己拡散定数が大きくなって焼結が進行する。また、誘電体セラミックスの焼結温度は、銀の融点である961℃より低い900℃に近い温度である。
以上に説明したように、重ね合わされたグリーンシートに加える圧縮荷重を、2種類の有機金属化合物の双方が熱分解された後に加える圧縮荷重が、熱分解される前に加える圧縮荷重より大きな圧縮荷重として加えると、セラミックス多結晶体の表面と内部電極とに空隙が形成されず、内部電極の剥離とセラミックス多結晶体のクラックが起こらない。
なお、金属微粒子が粗大化し、さらに、金属の固相拡散で粗大化した金属粒子同士が焼結して内部電極が形成されるため、内部電極の形状は平板状の単純な形状ではなく、金属微粒子の集まりの形状が反映され、一部がセラミックス多結晶体の凹部に入り込んだ3次元的な複雑な形状になるが、金属粒子同士の焼結によって連続した導電経路を形成する。
いっぽう、金属酸化物微粒子が形成された後においては、空隙が形成されると金属酸化物微粒子が移動して空隙を埋めるため、内部電極は金属酸化物微粒子の集まりで囲まれ、雰囲気ガスの供給が制限されるため、内部電極の酸化が進行しない。このため、積層バリスタの製造のように、大気雰囲気での焼成であっても、内部電極の酸化は進行しない。
以上に説明したように、本内部電極の形成方法に依れば、内部電極の形成とセラミックス多結晶体の生成に際して空隙が形成されるが、より微細な金属酸化物微粒子が移動して空隙を常に埋め尽くす。また、セラミックス多結晶体同士の間隙と表面の凹部とは、内部電極と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。このため、内部電極がセラミックス多結晶体から剥離せず、脆性のセラミックス多結晶体にクラックが入ることはない。従って、内部電極はニッケルに制限されず、ニッケルより自己拡散定数が大きいが導電性に優れた銅や銀で構成できる。さらに、内部電極が金属酸化物微粒子の集まりで囲まれ、雰囲気ガスの供給が制限され、大気雰囲気での焼成でも内部電極の酸化は進行しない。また、金属酸化物は化学的にも安定な物質で、金属酸化物微粒子が内部電極に混在せず、内部電極と分離した状態で存在するため、金属酸化物微粒子が内部電極の剥離や腐食をもたらさない。従って、本内部電極の形成方法に依れば、7段落で説明した5つの課題が同時に解決される。
また、本内部電極の形成方法に依れば、極めて簡単な3つの工程を連続して実施することで、積層セラミックス電子部品における内部電極が形成されるため、内部電極は極めて安価な費用で製造できる。
すなわち、第一の工程は、2種類の有機金属化合物の各々をアルコールに分散して分散液を作成し、2種類のアルコール分散液を有機化合物に混合するだけの処理である。第二の工程は、第一の工程で製造した液状ペーストを、セラミックスのグリーンシートに印刷し、このグリーンシートを重ね合わせるだけの処理である。第三の工程は、重ね合わされたグリーンシートに圧縮荷重を加えて熱処理するだけである。このように、いずれの工程も極めて簡単な処理であるため、内部電極は極めて安価な費用で製造できる。
すなわち、カルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンと共有結合するカルボン酸金属化合物においては、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断されて、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の沸点に応じた290−400℃の温度で、全てのカルボン酸が気化して金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などの飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物がある。なお、窒素雰囲気での熱分解は、大気雰囲気に比べて40℃程度高温側で熱分解が完了する。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物が析出する。例えばオレイン酸銅は、酸化銅Cu2Oと酸化銅CuOとが同時に析出し、銅に還元するための処理費用を要する。中でも酸化銅Cu2Oは、大気雰囲気より酸素ガスがリッチな雰囲気で一度酸化銅CuOに酸化させた後に、再度、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、還元処理の費用がかさむ。
さらに、カルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。また原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であり、カルボン酸の沸点に応じた大気雰囲気の290−400℃の温度領域で金属が析出する。
従って、このようなカルボン酸金属化合物を、熱分解で金属を析出する液状ペーストの原料に用い、この液状ペーストを印刷したグリーンシートを熱処理すると、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属微粒子の集まりが析出する。
以上に説明したように、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合し、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成されるカルボン酸金属化合物は、熱分解で金属微粒子の集まりを析出する液状ペーストの安価な原料になる。
すなわち、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を熱処理すると、カルボン酸の沸点において、複数種類のカルボン酸金属化合物は同時にカルボン酸と複数種類の金属とに分離され、更に昇温すると、カルボン酸の気化が完了した後に、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成されるとともに、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金が生成される。
このような性質を持つ複数種類のカルボン酸金属化合物を、液状ペーストの原料に用いると、13段落で説明した金属微粒子に代わって合金微粒子が析出し、この合金で内部電極が形成される。従って、金属に近い導電性を持ち、金属より酸化しにくく腐食しにくい合金によって内部電極が形成され、例えば、積層チップバリスタのように、大気雰囲気でグリーンシートの焼成を行うような積層セラミックス電子部品の製造における内部電極の形成に適する。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオンである金属イオンに酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンに配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属酸化物が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。
従って、このようなカルボン酸金属化合物を、熱分解で金属酸化物を析出する液状ペーストの原料として用い、この液状ペーストを印刷したグリーンシートを熱処理すると、大きさが10−100nmの範囲に入る粒状の金属酸化物微粒子の集まりが析出する。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、汎用的なカルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させることで、カルボン酸金属化合物が合成される。また原料となるカルボン酸は、有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気においては400℃程度の熱処理で金属酸化物が析出する。なお、窒素雰囲気での熱分解は、大気雰囲気に比べて40℃程度高温側で熱分解が完了する。
以上に説明したように、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、熱分解で金属酸化物微粒子の集まりを析出する液状ペーストの安価な原料になる。
従って、2種類の有機金属化合物のアルコール分散液に、前記したいずれか1種類の有機化合物を混合すると、アルコール分散液より高い粘度を有する液状物質となって液状ペーストが製造できる。この液状ペーストをグリーンシートに印刷し、このグリーンシートを互いに重ね合わせて圧縮荷重を加えて熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、2種類の有機金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりを析出し、グリーンシート同士の間隙とグリーンシートの表面の凹部とが微粒子の集まりで埋め尽くされる。従って、前記した有機化合物は、液状ペーストの原料になる。
本実施形態は、熱処理で金属を析出するカルボン酸金属化合物に関わる実施形態である。本発明における内部電極の原料となる液状ペーストは、2種類の有機金属化合物のアルコール分散液に、2種類の有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い有機化合物の集まりを混合して液状ペーストを製造する。このため、有機金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に有機金属化合物が昇温された際に、グリーンシートの表面で熱分解し、金属微粒子集まりを析出するこれら2つの性質を兼備しなければならない。
最初に、金属微粒子の原料となる金属化合物について、アルコールに分散する金属化合物を説明する。ここでは金属をニッケルとし、ニッケル化合物を例として説明する。硫酸ニッケルと塩化ニッケルは水に溶け、ニッケルイオンが溶解し、多くのニッケルイオンがニッケルの析出に参加できなくなる。また、水酸化ニッケルと酸化ニッケルはアルコールに分散しない。このため、無機ニッケル化合物は液状ペーストの原料として適切でない。従って、液状ペーストの原料として有機ニッケル化合物が望ましい。
有機ニッケル化合物は、グリーンシートの表面でニッケル微粒子の集まりを析出する性質を持たなければならない。つまり、ニッケル微粒子が生成される化学反応が、グリーンシートの表面で起こる。有機ニッケル化合物からニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり有機ニッケル化合物を昇温するだけで、熱分解によってニッケルが析出する。さらに、有機ニッケル化合物の合成が容易でれば、有機ニッケル化合物が安価に製造できる。これらの性質を兼備する有機ニッケル化合物にカルボン酸ニッケル化合物がある。
つまり、カルボン酸ニッケル化合物の組成式は、RCOO−Ni−COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnは整数)。カルボン酸ニッケル化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置するニッケルイオンNi2+が最も大きい物質になる。従って、ニッケルイオンNi2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO―とが共有結合する場合は、ニッケルイオンNi2+と酸素イオンO―との距離が最大になる。この理由は、ニッケルの共有結合半径は110pmであり、酸素の単結合の共有結合半径は63pmであり、炭素の二重結合の共有結合半径は67pmであることによる。このため、ニッケルイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸ニッケル化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長いニッケルイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、ニッケルとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にニッケルが析出する。こうしたカルボン酸ニッケル化合物として、オクチル酸ニッケル、ラウリン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどがある。
なお、窒素雰囲気でのカルボン酸ニッケル化合物の熱分解は、大気雰囲気での熱分解より40℃程度高温側で完了する。また、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸ニッケル化合物が熱分解すると、ニッケルの酸化物が析出する。
またカルボン酸ニッケル化合物は合成が容易で、安価な有機ニッケル化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸ニッケルなどの無機ニッケル化合物と反応させると、カルボン酸ニッケル化合物が生成される。
従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンがニッケルイオンに共有結合する第一の特徴と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸ニッケル化合物は、熱分解でニッケルを析出する安価な工業用薬品である。
なお、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を熱処理すると、カルボン酸の沸点において、複数種類のカルボン酸金属化合物は同時にカルボン酸と金属とに分離され、更に昇温すると、カルボン酸の気化が完了した後に、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じて複数種類の金属が析出し、これらの金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属から構成されるとともに、カルボン酸金属化合物のモル濃度に応じた組成割合からなる合金が生成される。このため、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物は、熱分解で合金を析出する安価な工業用薬品である。
本実施形態は、熱処理で金属酸化物を析出する原料に係わる実施形態である。以下の説明では、酸化ニッケルNiOを析出する原料を例として説明する。
酸化ニッケルを析出する原料も、25段落で説明したニッケルの原料と同様に、アルコールに分散する有機ニッケル化合物が望ましい。
さらに、有機ニッケル化合物は、熱分解によって酸化ニッケルを析出する性質をもたなければならない。有機ニッケル化合物から酸化ニッケルが生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機ニッケル化合物を昇温するだけで、熱分解によって酸化ニッケルが析出する。さらに、有機ニッケル化合物の合成が容易でれば、有機ニッケル化合物が安価に製造できる。これらの性質を兼備する有機ニッケル化合物にカルボン酸ニッケル化合物がある。
つまり25段落で説明したように、カルボン酸ニッケル化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質はニッケルイオンNi2+である。いっぽう、ニッケルイオンNi2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO―とが共有結合するカルボン酸ニッケル化合物は、ニッケルイオンと酸素イオンとの距離が最大になるため、25段落で説明したように熱分解でニッケルを析出する。従って、熱分解で酸化ニッケルNiOを析出するカルボン酸ニッケルは、ニッケルイオンNi2+と結合する酸素イオンO―との距離が短く、酸素イオンO―がニッケルイオンNi2+の反対側で結合するイオンと結合する距離が長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、酸素イオンO―がニッケルイオンNi2+の反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、ニッケルイオンと結合した酸素イオン、つまり、酸化ニッケルNiOと有機酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸ニッケルとして、カルボキシル基を構成する酸素イオンO―が配位子になってニッケルイオンNi2+に近づいて配位結合するカルボン酸ニッケル化合物がある。
また、有機ニッケル化合物の中でカルボン酸ニッケル化合物は、25段落で説明したように合成が容易で、有機酸の沸点が低いため熱分解温度が相対的に低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸ニッケル化合物は、安価な化学薬品であり、熱処理費用も安価で済む。こうしたカルボン酸ニッケル化合物として、酢酸ニッケル、カプリル酸ニッケル、安息香酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
従って、カルボキシル基を構成する酸素イオンがニッケルイオンに配位結合したカルボン酸ニッケル化合物は、熱分解で酸化ニッケルを析出する安価な工業用薬品である。
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコール溶解液ないしはアルコール混和液が、アルコールより高い粘度を有し、第三にカルボン酸金属化合物の熱分解温度より低い沸点を有する有機化合物に関する実施形態である
このような有機化合物として、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類などのエステル類、グリコール類、ないしは、スチレンモノマーなどの液状モノマーに、前記した3つの性質を兼備するものがある。
カルボン酸ビニルエステル類は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピパリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニルなど様々なカルボン酸ビニルがある。
例えば、酢酸ビニルは化学式がCH3COO―CH=CH2で示され、メタノールに溶解し、メタノールより高い粘性を持ち、沸点がメタノールより高い72.7℃である。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、この分散液に酢酸ビニルを混合すると、混合した酢酸ビニルの量に応じて混合液の粘度が増大する。このような混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、メタノールが気化した後に酢酸ビニルが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子の集まりと金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、酢酸ビニルは、酢酸とビニルアルコールとを反応させたエステルで、ポリ酢酸ビニルの合成に用いる原料であって、安価な有機化合物である。
また、モノクロロ酢酸ビニルは化学式がCl―CH2COO―CH=CH2で示され、n−ブタノールに溶解し、沸点がn−ブタノールより高い136℃である。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にモノクロロ酢酸ビニルを混合すると、混合したモノクロロ酢酸ビニルの量に応じて混合液の粘度が増大する。このような混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にモノクロロ酢酸ビニルが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解され、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、モノクロロ酢酸ビニルは、アクリルゴムの架橋サイトとして用いられている安価な有機化合物である。
さらに、アクリル酸エステル類は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシルなどの様々なアクリル酸エステルがある。
例えば、アクリル酸メチルは化学式がCH2=CH―COOCH3で示され、メタノールに溶解し、沸点がメタノールより高い80℃である。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、この分散液にアクリル酸メチルを混合すると、混合したアクリル酸メチルの量に応じて混合液の粘度が増大する。この混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、メタノールが気化した後にアクリル酸メチルが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、アクリル酸メチルは、アクリル樹脂の原料であって、安価な有機化合物である。
また、アクリル酸ブチルは化学式がCH2=CH−COOC4H9で示され、n−ブタノールに溶解し、沸点がn−ブタノールより高い148℃である。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にアクリル酸ブチルを混合すると、混合したアクリル酸ブチルの量に応じて混合液の粘度が増大する。この混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にアクリル酸ブチルが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、アクリル酸ブチルは、アクリル酸とn−ブタノールを反応させたエステルで、繊維処理剤、粘接着剤、塗料、合成樹脂、アクリルゴム、エマルションの原料として使用される安価な有機化合物である。
また、メタクリル酸エステル類は、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリルなど様々なメタクリル酸エステルがある。
例えば、メタクリル酸エチルは、化学式がH2C=C(CH3)COOC2H5で示され、メタノールに溶解し、沸点がメタノールより高い117℃である。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、この分散液にメタクリル酸エチルを混合すると、混合したメタクリル酸エチルの量に応じて混合液の粘度が増大する。この混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、メタノールが気化した後にメタクリル酸エチルが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、メタクリル酸エチルは、顔料、塗料、接着剤、繊維処理剤、成形材料、歯科用材料の原料として用いられている安価な有機化合物である。
さらにメタクリル酸nブチルは、化学式がCH2C(CH3)COO(CH2)3CH3で示され、n−ブタノールに溶解し、沸点がn−ブタノールより高い164℃である。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にメタクリル酸nブチルを混合すると、混合したメタクリル酸nブチルの量に応じて混合液の粘度が増大する。この混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にメタクリル酸nブチルが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、メタクリル酸nブチルは、塗料、分散剤、繊維処理剤の原料として用いられている安価な有機化合物である。
さらに、スチレンモノマーは化学式がC6H5CH=CH2で示され、n−ブタノールと混和し、沸点がn−ブタノールより高い145℃の液状モノマーである。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にスチレンモノマーを混合すると、混合したスチレンモノマーの量に応じて混合液の粘度が増大する。この混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にスチレンモノマーが気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。なお、スチレンモノマーは、ポリスチレンを始めとして、発泡ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、不飽和ポリエステルなどの合成樹脂材料の原料となる安価な有機化合物である。
また、化学式がC2H4(OH)2で示されるエチレングリコールは、n−ブタノールと混和し、沸点が197℃の液状モノマーである。さらに、化学式がO(CH2CH2OH)2で示されるジエチレングリコールは、n−ブタノールと混和し、沸点が244℃の液状モノマーである。さらに、化学式がC3H6(OH)2で示されるプロピレングリコールは、n−ブタノールと混和し、沸点が188℃の液状モノマーである。さらに、ジプロピレングリコールは、化学式が(C3H6OH)2Oで示され、n−ブタノールと混和し、沸点が232℃の液状モノマーである。また、トリプロピレングリコールは、化学式がH(OC3H6)3OCH3で示され、n−ブタノールと混和し、沸点が265℃の液状モノマーである。従って、2種類のカルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にグリコール類のいずれかを混合すると、混合したグリコール類の量に応じて混合液の粘度が増大する。この混合液で液状ペーストを構成し、この液状ペーストをグリーンシートに印刷する。その後、グリーンシートを重ね合わせ、圧縮荷重を加えて熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にグリコール類が気化し、この後、2種類のカルボン酸金属化合物が熱分解し、金属微粒子と金属酸化物微粒子の集まりからなる微粒子の集まりの2重構造が、グリーシート同士の間隙に形成される。また、グリコール類は、樹脂の中間原料として用いるほか、溶剤としての性質に優れ、さらに湿潤作用、保湿作用、保存作用、乳化作用、高沸点、低凝固点などの特長を活かして、食品、医薬品、化粧品、熱媒、冷媒、不凍液などに幅広く用いられる安価な有機化合物である。
本実施例は液状ペーストの製造に係わる第一の実施例で、本液状ペーストを熱処理すると、最初に酸化ニッケル微粒子の集まりが析出し、この後、ニッケル微粒子の集まりが酸化ニッケルの5倍の量として析出する液状ペーストを製造する実施例である。
酸化ニッケルの原料として、オクタン酸ニッケル(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品で、化学式がNi(C7H15COO)2で示され、別名がカプリル酸ニッケルである)を用いた。また、ニッケルの原料としてステアリン酸ニッケル(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品で、化学式がNi(C18H35COO)2で示される)を用いた。なお、オクタン酸の沸点は240℃で、ステアリン酸の沸点は383℃である。また、有機化合物は、沸点が145℃のスチレンモノマー(例えば、NSスチレンモノマー株式会社の製品で、化学式がC6H5CH=CH2で示される)を用いた。アルコールは試薬1級のn−ブタノールを用いた。
本実施例における液状ペーストの製造は、最初に、ステアリン酸ニッケルの0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。次に、オクタン酸ニッケルの0.013モルを1リットルのn−ブタノールに分散する。さらに、1リットルのステアリン酸ニッケルのn−ブタノール分散液に、0.2リットルのオクタン酸ニッケルのn−ブタノール分散液を混合し、この混合液にスチレンモノマーの0.09モルを混合して液状ペーストを製造した。
本実施例は液状ペーストの製造に係わる第二の実施例で、本液状ペーストを熱処理すると、最初にニッケル微粒子の集まりが析出し、この後、酸化ニッケル微粒子の集まりが、ニッケル微粒子の1/5の量として析出する液状ペーストを製造する。
ニッケルの原料として、オクチル酸ニッケル(例えば、日本化学産業株式会社の製品で化学式がNi(C7H15COO)2で示され、別名が2エチルヘキサン酸ニッケルである)を用いた。また、酸化ニッケルの原料として、ナフテン酸ニッケル(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品で、代表する化学式がNi(CnH2n−1COO)2で示される)を用いた。なお、オクチル酸の沸点は228℃である。ナフテン酸は、主成分が飽和の炭素五員環を持つカルボン酸CnH2n−1COOHであり、分子量が180−350に及び、沸点が140−370℃に及ぶ飽和脂肪酸の混合物である。有機化合物は、実施例1と同様にスチレンモノマーを用いた。またアルコールは、試薬1級のn−ブタノールを用いた。
本実施例における液状ペーストの製造は、最初に、オクチル酸ニッケルの0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。次に、ナフテン酸ニッケルの0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。さらに、1リットルのオクチル酸ニッケルのn−ブタノール分散液に、0.2リットルのナフテン酸ニッケルのn−ブタノール分散液を混合し、この混合液にスチレンモノマーの0.09モルを混合して、液状ペーストを製造した。
本実施例は液状ペーストの製造に係わる第三の実施例で、本液状ペーストを熱処理すると、最初に銅微粒子の集まりが析出し、この後、酸化ニッケル微粒子の集まりが、銅微粒子の1/5の量として析出する液状ペーストを製造する実施例である。
銅の原料としてラウリン酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品で、化学式がCu(C11H23COO)2で示される)を用いた。また、酸化ニッケルの原料として、実施例1のナフテン酸ニッケルを用いた。有機化合物は、実施例1と同様にスチレンモノマーを用いた。またアルコールは、試薬1級のn−ブタノールを用いた。
本実施例における液状ペーストの製造は、最初に、ラウリン酸銅の0.013モルを1リットルのn−ブタノールに分散する。次に、ナフテン酸ニッケルの0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。さらに、1リットルのオクチル酸銅のn−ブタノール分散液に、0.2リットルのナフテン酸ニッケルを混合し、この混合液にスチレンモノマーの0.09モルを混合して、液状ペーストを製造した。
本実施例は液状ペーストの製造に係わる第四の実施例で、本液状ペーストを熱処理すると、最初に銀−銅合金の微粒子の集まりが析出し、この後、酸化コバルト微粒子の集まりが、銀−銅合金の微粒子の1/5の量として析出する液状ペーストを製造する。なお、本実施例における銀−銅合金は、銀と銅とが9対1からなる組成割合の銀−銅合金とした。このような組成割合からなる銀−銅合金は、金属の中で最も導電率が高い銀の導電率を25%程度低下させるが、引張強度を60%近く増大させ、銀のマイグレーションが起こりにくい。しかしながら、使用するカルボン酸銀化合物とカルボン酸銅化合物とのモル濃度に応じて、銀−銅合金における組成割合が決まるため、合金の性質に応じた組成割合からなる銀−銅合金で内部電極が形成できるため、銀−銅合金の組成割合は、9対1の割合に限定されない。
銀の原料としてオクチル酸銀(東栄化工株式会社の試作品で、化学式がC7H15COOAgで示される)を用い、銅の原料としてオクチル酸銅(東栄化工株式会社の試作品で化学式がCu(C7H15COO)2で示される)を用いた。また、酸化コバルトの原料としてナフテン酸コバルト(例えば、東栄化工株式会社の製品で、代表する化学式がCo(CnH2n−1COO)2で示される)を用いた。有機化合物は、実施例1と同様にスチレンモノマーを用いた。またアルコールは、試薬1級のn−ブタノールを用いた。
本実施例における液状ペーストの製造は、最初に、オクチル酸銀の0.012モルとオクチル酸銅の0.001モルとを1リットルのn−ブラノールに分散する。次に、ナフテン酸コバルトの0.013モルを1リットルのn−ブラノールに分散する。さらに、1リットルのオクチル酸銅のn−ブタノール分散液に、0.2リットルのナフテン酸ニッケルを混合し、この混合液にスチレンモノマーの0.09モルを混合して、液状ペーストを製造した。
本実施例は内部電極を形成する第一の実施例で、内部電極の形成に実施例1の液状ペーストを用い、セラミックスのグリーンシートとして入手が容易なガラスセラミックスのグリーンシートを用いた。
なお内部電極の構造は、液状ペーストの構成で一義的に決まり、グリーンシートの材質に依存しない。また、積層セラミックスコンデンサ、積層チップインダクタ、積層チップバリスタ、積層誘電体フィルター、積層チップサーミスタ、積層圧電アクチュエータなどに用いる様々な誘電体セラミックスの多結晶体、例えば、BaO−Al2O3―SiO2―Bi2O3系、BaO−TiO2―ZnO系、BaO−Nd2O3―Bi2O3―TiO2系、BaO−R2O3―TiO2系などの誘電体セラミックスを形成するグリーンシートは、内部電極を銀で形成する場合を考慮し、銀の融点である961℃に焼成温度を近づけさせないため、焼成温度は、ガラスセラミックスのグリーンシートの焼成温度と同様に900℃以下である。このため、セラミックスのグリーンシートをガラスセラミックスのグリーンシートで代表させても支障はない。なお、誘電体セラミックスからなるグリーンシートは、製造メーカ固有のノウハウとして、ごく微量の添加物がセラミックスの粉体に含まれるため、入手が困難である。
ガラスセラミックスのグリーンシートは、山村フォトニクス株式会社が製造するグリーンシートである。このグリーンシートは、900℃以下の温度で焼成して電子回路の基板として用いられている。GCS71系と呼ばれる品名について、厚みが40μmからなるグリーンシートを100mm×50mmに切断した。また、実施例1で製造した液状ペーストをスクリーン印刷するに際に、メッシュ株式会社が製造する線径が11μmで、メッシュ数が840本/インチで、目開きが19μmのMSメッシュを用いた。
最初に実施例1の液状ペーストを、前記のメッシュを用いて、グリーンシートの表面の周囲に、2つの鉤括弧の形状を対抗させて印刷した。鉤括弧の形状は、縦の長さが90mmで横の長さが36mmで幅が2mmからなる。次に、グリーンシート同士を10枚重ね合わせ、1kgの重りを載せて大気雰囲気の焼成炉で焼成した。最初に、20℃/分の昇温速度でオクタン酸の沸点である240℃まで昇温し、この後、40℃/分の昇温速度で300℃まで昇温して30秒間保持した。さらに、20℃/分の昇温速度でナフテン酸の高沸点成分の沸点である370℃まで昇温し、この後、40℃/分の昇温速度で430℃まで昇温して30秒間保持した。この後、試料をいったん焼成炉から取り出し、5kgの重りに替えて再度大気雰囲気の焼成炉で20℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、900℃に30分放置した後、焼成炉から試料を取り出し室温まで徐冷した。
次に、430℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、さらに導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を有する。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、2枚のグリーンシートの間隙とグリーンシートの表面の凹部を満遍なく埋めていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。上層の微粒子の集まりは濃淡が認められなかったので同一の原子から構成され、下層の微粒子の集まりは濃淡が認められたため、異なる原子から構成されていることが分かった。従って、粒状微粒子の集まりは、微粒子の2重構造を形成している。また、微粒子の集まりは両者とも平坦ではなく、グリーンシートの表面の凹部に応じてうねった形状を呈していた。さらに、上層の微粒子の集まりの厚みは、下層の微粒子の集まりの5倍に近い厚みであり、上層の微粒子の集まりは平均で30個を超える微粒子の厚みを有していた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。下層の微粒子はニッケル原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化ニッケルの粒状微粒子である。上層の微粒子はニッケル原子のみからなるニッケル微粒子であった。
さらに、900℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、430℃での熱処理を行なった試料同様に、下側のグリーンシートの表面の凹部を埋めように析出していた。しかし、2枚のグリーンシートの間隙の多くと、上側のグリーンシートの表面の凹部は、はっきりした粒子の境界が消えていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、上側のグリーンシートの表面の凹部とは、濃淡が認められなかったので同一の原子から構成されている。下側のグリーンシートの表面の凹部は濃淡が認められたため、異なる原子から構成されていることが分かった。なお、2枚のグリーンシートの間隙は、430℃での熱処理を行なった試料に比べると、若干距離が短くなっていた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。下層の微粒子は、430℃での熱処理の試料と同様に、ニッケル原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化ニッケルの粒状微粒子であった。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、上側のグリーンシートの表面の凹部は、ニッケル原子のみからなるニッケル相であった。
以上の観察結果から、430℃での熱処理の試料では、先行して析出した酸化ニッケル微粒子の集まりが、下側のグリーンシートの表面の凹部を埋めるとともに、一部が2枚のグリーンシートの間隙に析出した。遅れて析出したニッケル微粒子の集まりが、2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋めた。また2枚のグリーンシートの間隙と表面の凹部とは、酸化ニッケル微粒子とニッケル微粒子で埋め尽くされた。この結果を図1に模式的に示す。1は下側のグリーンシートで、2は上側のグリーンシートで、3は酸化ニッケル微粒子であり、4はニッケル微粒子である。
さらに、900℃での熱処理の試料では、ニッケル微粒子が粗大化し、粗大化したニッケル粒子が燒結し、連続したニッケル相からなる内部電極が形成された。酸化ニッケルの微粒子の集まりは、内部電極の形成と、ガラスセラミックスの焼結によって生成した空隙を埋めるように移動した結果、2枚のグリーンシートの間隙の一部と下側のグリーンシートの表面の凹部とを埋め尽くした。この結果、2枚のガラスセラミックスの焼結板の間隙と、表面の凹部には空隙が形成されなかった。
本実施例は内部電極を形成する第二の実施例で、内部電極の形成に実施例2の液状ペーストを用いた。また、実施例1と同様にガラスセラミックスのグリーンシートを用い、厚みが40μmのグリーンシートを100mm×50mmの形状に切断し、このグリーンシートの表面の周囲に、2つの鉤括弧の形状を対抗させて印刷した。このグリーンシートを10枚重ね合わせ、1kgの重りを載せて大気雰囲気の焼成炉で焼成した。
最初に、20℃/分の昇温速度でオクチル酸の沸点である228℃まで昇温し、この後40℃/分の昇温速度で290℃まで昇温して30秒間保持した。さらに、20℃/分の昇温速度でナフテン酸の高沸点成分の沸点である370℃まで昇温し、この後、40℃/分の昇温速度で430℃まで昇温して30秒間保持した。この後、試料をいったん焼成炉から取り出し、5kgの重りに替えて再度大気雰囲気の焼成炉で20℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、900℃に30分放置した後、焼成炉から試料を取り出し室温まで徐冷した。
次に、430℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に、反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、2枚のグリーンシートの間隙とグリーンシートの表面の凹部を満遍なく埋めていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。下層の微粒子の集まりは濃淡が認められなかったので同一の原子から構成され、上層の微粒子の集まりは濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。従って、粒状微粒子の集まりは、微粒子の2重構造を形成している。また、微粒子の集まりは両者とも平坦ではなく、グリーンシートの表面の凹部に応じてうねった形状を呈していた。さらに、下層の微粒子の集まりの厚みは、上層の微粒子の集まりの5倍に近い厚みであり、下層の微粒子の集まりは平均で30個を超える微粒子の厚みを有していた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。上層の微粒子はニッケル原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化ニッケルの粒状微粒子である。下層の微粒子はニッケル原子のみからなるニッケル微粒子であった。
さらに、900℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、430℃での熱処理の試料と同様に、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋めように析出していた。しかし、2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部は、はっきりした粒子の境界が消えていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部とは、濃淡が認められなかったので同一の原子から構成されていた。上側のグリーンシートの表面の凹部は濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。なお、2枚のグリーンシートの間隙は、430℃までの熱処理を行なった試料に比べると、若干距離が短くなっていた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。上層の微粒子はニッケル原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化ニッケルの粒状微粒子である。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部とは、ニッケル原子のみからなるニッケル相であった。
以上の観察結果から、430℃での熱処理の試料では、先行して析出したニッケル微粒子の集まりが、下側のグリーンシートの表面の凹部を埋めるとともに、2枚のグリーンシートの間隙の多くを占有した。遅れて析出した酸化ニッケル微粒子の集まりが、2枚のグリーンシートの間隙の一部と、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋めた。また、2枚のグリーンシートの間隙と表面の凹部とは、ニッケル微粒子と酸化ニッケル微粒子で埋め尽くされた。この結果を図2に模式的に示す。1は下側のグリーンシートで、2は上側のグリーンシートである。3は、酸化ニッケル微粒子であり、4はニッケル微粒子である。
さらに、900℃での熱処理を行なった試料では、ニッケル微粒子が粗大化し、粗大化したニッケル粒子が燒結し、連続したニッケル相からなる内部電極が形成された。酸化ニッケルの微粒子の集まりは、内部電極の形成と、ガラスセラミックスの焼結によって発生した空隙を埋めるように移動した結果、2枚のグリーンシートの間隙の一部と上側のグリーンシートの表面の凹部とを埋め尽くした。この結果、2枚のガラスセラミックスの焼結板の間隙と、表面の凹部には空隙が形成されなかった。
本実施例は内部電極を形成する第三の実施例で、内部電極の形成に実施例3の液状ペーストを用いた。また、実施例1と同様にガラスセラミックスのグリーンシートを用い、厚みが40μmのグリーンシートを100mm×50mmの形状に切断し、このグリーンシートの表面の周囲に、2つの鉤括弧の形状を対抗させて印刷した。このグリーンシートを10枚重ね合わせ、1kgの重りを載せて大気雰囲気の焼成炉で焼成した。
最初に、20℃/分の昇温速度でラウリン酸の沸点である225℃まで昇温し、この後40℃/分の昇温速度で285℃まで昇温して30秒間保持した。さらに、20℃/分の昇温速度でナフテン酸の高沸点成分の沸点である370℃まで昇温し、この後、40℃/分の昇温速度で430℃まで昇温して30秒間保持した。この後、試料をいったん焼成炉から取り出し、5kgの重りに替えて再度大気雰囲気の焼成炉で20℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、900℃に10分放置した後、焼成炉から試料を取り出し室温まで徐冷した。
次に、430℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、2枚のグリーンシートの間隙とグリーンシートの表面の凹部を満遍なく埋め尽くしていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。下層の微粒子の集まりは濃淡が認められなかったので同一の原子から構成され、上層の微粒子の集まりは濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。従って、粒状微粒子の集まりは、微粒子の2重構造を形成している。また、微粒子の集まりは両者とも平坦ではなく、グリーンシートの表面の凹部に応じてうねった形状を呈していた。さらに、下層の微粒子の集まりの厚みは、上層の微粒子の集まりの5倍に近い厚みであり、下層の微粒子の集まりは平均で30個を超える微粒子の厚みを有していた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。上層の微粒子はニッケル原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化ニッケルの粒状微粒子である。下層の微粒子は銅原子のみからなる銅微粒子であった。
さらに、900℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、430℃での熱処理の試料同様に、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋めように析出していた。しかし、2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部は、はっきりとした粒子の境界が消えていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部とは、濃淡が認められなかったので同一の原子から構成されていた。上側のグリーンシートの表面の凹部は濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。なお、2枚のグリーンシートの間隙は、430℃での熱処理を行なった試料に比べると、若干距離が短くなっていた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。上層の微粒子はニッケル原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化ニッケルの粒状微粒子である。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部とは、銅原子のみからなる銅相であった。
以上の観察結果から、430℃での熱処理の試料では、先行して析出した銅微粒子の集まりが、下側のグリーンシートの表面の凹部を埋めるとともに、2枚のグリーンシートの間隙の多くを占有した。遅れて析出した酸化ニッケル微粒子の集まりが、2枚のグリーンシートの間隙の一部と、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋めた。また、2枚のグリーンシートの間隙と表面の凹部とは、銅微粒子と酸化ニッケル微粒子で埋め尽くされた。
さらに、900℃での熱処理を行なった試料では、銅微粒子が粗大化し、粗大化した銅粒子が燒結し、連続した銅の相からなる内部電極が形成された。酸化ニッケルの微粒子の集まりは、内部電極の形成と、ガラスセラミックスの焼結によって発生した空隙を埋めるように移動した結果、2枚のグリーンシートの間隙の一部と上側のグリーンシートの表面の凹部とを埋め尽くした。この結果、2枚のガラスセラミックスの焼結板の間隙と、表面の凹部には空隙が形成されなかった。この結果は実施例6に類似し、すでに図2で図示しているため図示しない。
本実施例は内部電極を形成する第四の実施例で、内部電極の形成に実施例4の液状ペーストを用いた。また、実施例1と同様にガラスセラミックスのグリーンシートを用い、厚みが40μmのグリーンシートを100mm×50mmの形状に切断し、このグリーンシートの表面の周囲に、2つの鉤括弧の形状を対抗させて印刷した。このグリーンシートを10枚重ね合わせ、1kgの重りを載せて大気雰囲気の焼成炉で焼成した。
最初に、20℃/分の昇温速度でオクチル酸の沸点である228℃まで昇温し、この後40℃/分の昇温速度で290℃まで昇温して30秒間保持した。さらに、20℃/分の昇温速度でナフテン酸の高沸点成分の沸点である370℃まで昇温し、この後、40℃/分の昇温速度で430℃まで昇温して30秒間保持した。この後、試料をいったん焼成炉から取り出し、5kgの重りに替えて再度大気雰囲気の焼成炉で20℃/分の昇温速度で900℃まで昇温し、900℃に10分放置した後、焼成炉から試料を取り出し室温まで徐冷した。
次に、430℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を実施例1と同様に電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子が、2枚のグリーンシートの間隙とグリーンシートの表面の凹部を満遍なく埋め尽くしていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。下層の微粒子の集まりは濃淡がわずかに認められたので大部分が同一の原子から構成され、上層の微粒子の集まりは濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。従って、粒状微粒子の集まりは、微粒子の2重構造を形成している。また、微粒子の集まりは両者とも平坦ではなく、グリーンシートの表面の凹部に応じてうねった形状を呈していた。さらに、下層の微粒子の集まりの厚みは、上層の微粒子の集まりの5倍に近い厚みであり、下層の微粒子の集まりは平均で30個を超える微粒子の厚みを有していた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。上層の微粒子はコバルト原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化コバルトの粒状微粒子である。下層の微粒子は銀原子に対しわずかな分量の銅原子が均等に分散していたため、銀―銅合金からなり銀がリッチな成分からなる合金微粒子であった。
さらに、900℃での熱処理を行なった試料について、ペーストが印刷された箇所を切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。最初に反射電子線の900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行い、試料の断面を観察した。40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが、430℃での熱処理を行なった試料同様に、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋めていた。しかし、2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部は、はっきりとした粒子の境界が消えていた。
次に、反射電子線の900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部とは、濃淡がわずかに認められたので、大部分が同一の原子から構成される。上側のグリーンシートの表面の凹部は濃淡が認められたため、異なる原子から構成されている。なお、2枚のグリーンシートの間隙は、430℃での熱処理を行なった試料に比べると、若干距離が短くなっていた。
さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、粒状微粒子を構成する元素の種類とその分布状態を分析した。上層の微粒子はコバルト原子と酸素原子の双方が均等に存在し、特段に偏在する箇所が見られなかったため、酸化コバルトの粒状微粒子である。2枚のグリーンシートの間隙の多くの領域と、下側のグリーンシートの表面の凹部とは、銀原子に対しわずかな分量の銅原子が均等に分散していたため、銀―銅合金からなり銀がリッチな成分からなる合金の相であった。
以上の観察結果から、430℃までの熱処理を行なった試料では、先行して析出した銀−銅合金の微粒子の集まりが、下側のグリーンシートの表面の凹部を埋めるとともに、2枚のグリーンシートの間隙の多くを占有した。遅れて析出した酸化コバルトの微粒子の集まりが、2枚のグリーンシートの間隙の一部と、上側のグリーンシートの表面の凹部を埋め尽くした。また、2枚のグリーンシートの間隙と表面の凹部とは、銀−銅合金の微粒子と酸化コバルトの微粒子で埋め尽くされた。
さらに、900℃までの熱処理を行なった試料では、銀−銅合金の微粒子が粗大化し、粗大化した銀−銅合金の粒子が燒結し、連続した銀−銅合金の相からなる内部電極が形成された。酸化コバルトの微粒子の集まりは、内部電極の形成と、ガラスセラミックスの焼結によって発生した空隙を埋めるように移動した結果、2枚のグリーンシートの間隙の一部と上側のグリーンシートの表面の凹部とを埋め尽くした。この結果、2枚のガラスセラミックスの焼結板の間隙と、表面の凹部には空隙が形成されなかった。この結果も実施例6に類似し、すでに図2で図示しているため図示しない。
以上に、液状ペーストの製造に係わる4つの実施例と、これら4種類の液状ペーストを用いて内部電極を形成する4つの実施例を説明した。液状ペーストの原料となるカルボン酸金属化合物が様々なカルボン酸と様々な金属との化合物であるため、熱分解によって、ニッケルや銅の金属に限らず様々な金属を析出し、また、酸化ニッケルや酸化コバルトに限らず様々な金属酸化物を析出し、さらに、銀−銅合金に限らず様々な組成からなる合金を析出する。このため、液状ペーストは4つの実施例に限定されない。さらに、安価なカルボン酸金属化合物のアルコール分散液に、汎用的な有機化合物を混合して液状ペーストを製造するため、液状ペーストは安価に製造できる。また、内部電極の形成に係わる4つの実施例で説明したように、内部電極の形成時と、セラミックスの粉体の焼結時において空隙が形成されるが、圧縮応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して空隙を埋めるため、ガラスセラミックスのグリーンシートに限らず、様々な材質の誘電体セラミックスからなるグリーンシートであっても、セラミックス焼結体同士の微細な間隙と表面の凹部とが、内部電極と金属酸化物微粒子の集まりで埋め尽くされる。この結果、内部電極はセラミックスの多結晶体から剥離せず、また、セラミックス多結晶体にクラックが入らない。これによって、従来は原理的に解決が困難であった問題が、圧縮応力を受けた金属酸化物微粒子が移動して、空隙を埋め尽くすという極めて簡単な原理で解決できる。
3 酸化ニッケル微粒子の集まり 4 ニッケル微粒子の集まり
Claims (5)
- 積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法は、熱分解で金属を析出する第一の有機金属化合物をアルコールに分散した分散液と、熱分解で金属酸化物を析出する第一の性質と、熱分解温度が前記第一の有機金属化合物の熱分解温度と異なる第二の性質とを兼備する第二の有機金属化合物を、熱分解で析出する金属酸化物の量が、前記第一の有機金属化合物の熱分解で析出する金属の量より少ない量としてアルコールに分散したアルコール分散液と、前記2種類の有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い有機化合物とを混合し、これら3種類の液状物質の混合によって液状ペーストを製造し、セラミックスのグリーンシートの表面に、前記液状ペーストを内部電極の形状を反映した形状として印刷し、該グリーンシートを互いに重ね合わせ、さらに、該重ね合わされたグリーンシートに圧縮荷重を加え、該重ね合わされたグリーンシートを前記2種類の有機金属化合物が熱分解する温度に昇温する、さらに、該重ね合わされたグリーンシートに、前記圧縮荷重より大きな圧縮荷重を加え、該グリーンシートを構成するセラミック粉体同士が燒結する温度まで昇温する、これによって、前記第一の有機金属化合物の熱分解で析出した金属微粒子が粗大化し、該粗大化した金属粒子同士が燒結して内部電極を形成し、前記セラミック粉体同士が焼結する際と前記内部電極が形成される際に発生する空隙を、前記第二の有機金属化合物の熱分解で析出した金属酸化物微粒子の集まりが埋め尽くし、前記金属粒子同士が燒結した内部電極の層と、前記金属酸化物微粒子の集りからなる層とからなる2層からなる2重構造が、前記重ね合わされたグリーンシート同士の間隙に形成されることを特徴とする、積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法。
- 請求項1に記載した積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法において、前記第一の有機金属化合物が、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成される第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を第一の有機金属化合物として用い、請求項1に従って積層セラミックス電子部品の内部電極を形成することを特徴とする、請求項1に記載した積層セラミックス電子部品の内部電極の形成方法。
- 請求項2に記載した積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法において、前記カルボン酸金属化合物が、同一のカルボン酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物であり、該複数種類のカルボン酸金属化合物を請求項2におけるカルボン酸金属化合物として用い、請求項2に従って積層セラミックス電子部品の内部電極を形成することを特徴とする、請求項2に記載した積層セラミックス電子部品の内部電極の形成方法。
- 請求項1に記載した積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法において、前記第二の有機金属化合物が、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに配位結合したカルボン酸金属化合物であり、該カルボン酸金属化合物を第二の有機金属化合物として用い、請求項1に従って積層セラミックス電子部品の内部電極を形成することを特徴とする、請求項1に記載した積層セラミックス電子部品の内部電極の形成方法。
- 請求項1に記載した積層セラミックス電子部品における内部電極の形成方法において、前記有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類からなるいずれか1種類のエステル類、ないしはグリコール類、ないしは液状モノマーからなるいずれか1種類の有機化合物であって、さらに、該有機化合物は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコールに溶解した溶解液ないしはアルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有し、第三に請求項1における2種類の有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い、これら3つの性質を兼備する有機化合物であり、該有機化合物を請求項1における有機化合物として用い、請求項1に従って積層セラミックス電子部品の内部電極を形成することを特徴とする、請求項1に記載した積層セラミックス電子部品の内部電極の形成方法。
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