まず図1を参照して、本発明の一実施の形態における部品実装装置の全体構成を説明する。部品実装装置1は、異方性導電フィルムをテープ状にしたACFテープ等を介して部品を基板に圧着して実装基板を製造する機能を有する。部品の一例としては、フィルム状の部分を有するFPC(Flexible Printed Circuits)が挙げられる。以後、基板搬送方向をX方向とし、X方向と水平面内において直交する方向をY方向とする。さらに、XY平面に対して垂直な方向をZ方向とする。
図2(a)において、基板2はガラス等の透明な材質によって製作され、縁部2aには部品5と接続される複数の電極部3が形成されている。図2(b)において、基板2には電極部3を両側から挟むようにして一対の基板マークMA(MA1,MA2)がピッチPTで形成されている。また、部品5の端部には、基板マークMA1,MA2と同じピッチPTで部品マークMB(MB1,MB2)が形成されている。これらは、基板2と部品5を位置合わせする際の位置認識用のマークである。部品5は、基板マークMA1,MA2の中心Aと、部品マークMB1,MB2の中心Bを上下方向に一致させた状態で基板2に実装される。
図1において、部品実装装置1はX方向に基台1a,1b,1cを整列させ、基台1aに基板搬入部6、基台1bにテープ貼付け部10、部品搭載部30、第1の部品圧着部50A、第2の部品圧着部50B、基台1cに基板搬出部60の各作業部を配設し、且つ各作業部よりも前方側(Y1方向側)の領域に基板移送機構部62を配設して構成される。以下、基板搬入部6の配設側を上流側(紙面左側)とし、基板搬出部60の配設側を下流側(紙面右側)とする。
図1において、基板搬入部6はX方向に並列した複数(ここでは2つ)の基板保持ステージ7を備えている。基板保持ステージ7は、部品実装装置1よりもさらに上流側の設備から搬入された基板2を受け取って保持する。基板保持ステージ7に保持された基板2は、基板移送機構部62によってテープ貼付け部10に移送される。
テープ貼付け部10は、基板搬入部6から移送された基板2の電極部3に対して、ACFテープを所定の長さに切断した個片テープ4(図3(a))を貼付ける作業部である。このテープ貼付け部10は、ステージ移動機構11と複数(ここでは2つ)のテープ貼付け機構12を含んで構成される。
ステージ移動機構11はX軸テーブル13とY軸テーブル14を段積みして構成される。Y軸テーブル14には基板保持ステージ15が装着されている。X軸テーブル13及びY軸テーブル14を駆動することで、基板保持ステージ15はXY方向に移動する。基板保持ステージ15には、基板2を載置可能な複数(ここでは2つ)の基板載置部16がX方向に並列して設けられている。基板載置部16に基板2が載置されることで、基板保持ステージ15は基板2を保持する。
テープ貼付け機構12はステージ移動機構11の上方に配設されている。テープ貼付け機構12は、ステージ移動機構11によってテープ貼付け位置に位置決めされた基板2の上方に個片テープ4を送給し、圧着ツールによって個片テープ4を電極部3に押付ける。これにより、基板2に個片テープ4が貼付けられる。
部品搭載部30はテープ貼付け部10よりも下流であって、且つ第1の部品圧着部50Aと第2の部品圧着部50Bとの間に位置している。すなわち、基台1bには上流側から順に第1の部品圧着部50A、部品搭載部30、第2の部品圧着部50Bが配設されている。部品搭載部30は、テープ貼付け後の基板2に部品5を搭載(仮圧着)する作業部である。部品圧着部50A,50Bは、基板2に搭載された部品5を圧着(本圧着)する作業部である。これら3つの作業部には、共通のステージ移動機構20を介して基板2が移送される。
次に図1及び図3を参照して、ステージ移動機構20について説明する。ステージ移動機構20はリニア駆動機構を備えたX軸テーブル21を有している。図1に示すように、X軸テーブル21は、基台1b上において第1の部品圧着部50A、部品搭載部30、第2の部品圧着部50Bの前方側の領域に亘ってX方向に延びて配設されている。このX軸テーブル21には、同様にリニア駆動機構を備えた複数(ここでは2つ)のY軸テーブル22A,22BがX方向に移動自在に配設されている。Y軸テーブル22A,22Bには、それぞれ基板保持部としての基板保持ステージ23A,23BがY方向に移動自在に装着されている。
基板保持ステージ23A,23Bには、基板2を載置可能な複数の基板載置部24がX方向に並列して設けられている。基板載置部24に基板2が載置されることにより、基板保持ステージ23A,23Bは基板2を保持する。図3(a)に示すように、基板載置部24には、後方側(Y2方向側)においてX方向に延びた当接部25aを有する枠状部材25が設けられている。枠状部材25は、部品搭載時に部品5のフィルム状部分5a(図3(b))を当接部25aに当接させて下方から支持する。
X軸テーブル21及びY軸テーブル22A,22Bを駆動することにより、基板保持ステージ23A,23BはXY方向に移動する。これにより、基板保持ステージ23Aに保持された基板2を部品搭載部30、第1の部品圧着部50Aにおける所定の位置まで移送・位置決めすることができる。同様に、基板保持ステージ23Bに保持された基板2を部品搭載部30、第2の部品圧着部50Bにおける所定の位置まで移送・位置決めすることができる。このように、本実施の形態においては、基板保持ステージ23A,23Bから基板2を取り出す動作、若しくは基板保持ステージ23A,23Bへ基板2を受け渡す動作(「ハンドリング操作」と称する)を行わずに、部品搭載部30と部品圧着部50A,50Bとの間で基板2を移送することが可能となっている。ステージ移動機構20は、基板保持ステージ23A,23Bを水平方向に移動させ所定の位置に基板2を位置決めする水平移動手段となっている。
次に図1及び図3を参照して、部品搭載部30について説明する。図1において、部品搭載部30は一対のY軸テーブル31を備えており、Y軸テーブル31にはX軸テーブル32がY方向に移動自在に架設されている。図3(a)において、X軸テーブル32には搭載ヘッド33がX方向に移動自在に装着されている。Y軸テーブル31及びX軸テーブル32は、搭載ヘッド33をXY方向に水平移動させるヘッド移動機構を構成する。
搭載ヘッド33の下方には搭載ツール34が装着されている。図3(b)において、搭載ツール34は、基板2の電極部3と接続される部品5の接続部位5bが当接する当接部34aと、当接部34aの下面と同一高さに設定された吸着面を有する吸着ノズル34bを有する。搭載ツール34は、接続部位5bを当接部34aに当接させた状態で吸着ノズル34bによって部品5を吸着する。搭載ヘッド33の上方にはツール昇降機構35が配設されており、ツール昇降機構35が有するロッド35aに搭載ツール34が結合している。ツール昇降機構35を駆動することでロッド35aは突没し、これにより搭載ツール34が昇降する。
図1において、部品搭載部30の後方側には、搭載ヘッド33に部品5を供給する部品供給部としてのトレイフィーダ36が配設されている。トレイフィーダ36は、複数の部品5を格納したトレイ37を段積みして収納するトレイマガジン38を備えている。トレイマガジン38から一対のY軸テーブル31の間にかけてはY軸テーブル39が配設されており、Y軸テーブル39にはトレイ37を保持するためのトレイ保持テーブル(図示省略)がY方向に移動自在に装着されている。Y軸テーブル39を駆動することにより、トレイ保持テーブルは搭載ヘッド33の移動領域内に移動する。これにより、トレイ保持テーブル上のトレイ37に格納された部品5を搭載ヘッド33に供給することができる。
図1及び図3(a)において、ステージ移動機構20よりも後方側であって、搭載ヘッド33の移動領域内における所定の位置には、X方向に延びた水平面を有するバックアップステージ40が配設されている。バックアップステージ40は「門」形状のフレーム部材を主体とし、略中央部分を切り抜いた箇所に透明な下受け部材40aを装着して構成される。
基板保持ステージ23A,23Bに保持された基板2の縁部2aをバックアップステージ40によって下受けすることにより、基板2は部品搭載作業が行われる部品搭載位置に位置決めされる。このように位置決めされた基板2に対して部品5を保持した搭載ツール34が昇降することにより、基板2に部品5が搭載される。このように、部品搭載部30はステージ移動機構20によって部品搭載位置まで移送された基板2に対して部品5を搭載する。また、バックアップステージ40は部品搭載位置において基板保持ステージ23A,23B上の基板2を下方から下受けする(第1の)バックアップ部となっている。
次に図1及び図4を参照して、部品圧着部50A,50Bについて説明するが、各部は配設位置以外の構造が同一であるため第1の部品圧着部50Aに限定して説明する。第1の部品圧着部50Aは、X方向に並列した状態でプレート部材51に取り付けられた複数(ここでは2つ)の圧着ヘッド52を備えている。圧着ヘッド52の下方には圧着ツール53が装着されている。圧着ヘッド52の上方にはツール昇降機構54が配設されており、ツール昇降機構54が有するロッド54aに圧着ツール53が結合している。ツール昇降機構54を駆動することでロッド54aは突没し、これにより圧着ツール53が昇降する。
複数の圧着ツール53の下方の位置には、X方向に延びた水平面を有するバックアップステージ55がそれぞれ配設されている。基板保持ステージ23Aに保持された基板2の縁部2aをバックアップステージ55によって下受けすることにより、基板2は部品圧着作業が行われる部品圧着位置に位置決めされる。このとき、図4(b)に示すように、基板保持ステージ23Aに保持された複数の基板2を各圧着ツール53による部品圧着位置に同時に位置決めすることができる。
部品圧着位置に位置決めされた基板2に対して圧着ツール53が昇降することにより、基板2に部品5が圧着される。このように、部品圧着部50A,50Bは、ステージ移動機構20によって部品圧着位置まで移送された部品搭載後の基板2に搭載された部品5を基板2に圧着する。また、バックアップステージ55は、部品圧着位置において基板保持ステージ23A,23B上の基板2を下方から下受けする(第2の)バックアップ部となっている。
上述したように、基板2は基板保持ステージ23A,23Bから取り出されることなく、ステージ移動機構20によって部品搭載部30における部品搭載位置及び部品圧着部50A,50Bにおける部品圧着位置まで移送・位置決めされる。すなわち、ハンドリング操作なしで部品圧着後の基板2を部品搭載部30に再び移送することができる。このように、ステージ移動機構20は、基板保持ステージ23A,23Bを部品搭載部30と部品圧着部50A,50Bとの間で水平方向に移動させ、所定の位置(部品搭載位置、部品圧着位置)に基板2を位置決めする。
次に図5を参照して、部品搭載部30のバックアップステージ40の下方に配設された撮像ユニット42について説明する。撮像ユニット42は、撮像面を互いに向き合わせた姿勢で配設された一対の認識カメラ43A,43Bを備えている。バックアップステージ40は基板保持ステージ23A,23Bによって保持された基板2の縁部2aを下受けするものであるため、認識カメラ43A,43Bはステージ移動機構20による基板2の移動領域内に位置することとなる。
下受け部材40aの下方であって、認識カメラ43Aの光軸a1上には、反射面をXY平面に対して所定角度だけ傾斜させた姿勢でミラー部材44Aが配設されている。同様に、下受け部材40aの下方であって、認識カメラ43Bの光軸a2上には、反射面をXY平面に対して所定角度だけ傾斜させた姿勢でミラー部材44Bが配設されている。本実施の形態では、角度は45度である。
ミラー部材44A,44Bは、下受け部材40aの上方に存在する撮像対象からの光b1,b2を認識カメラ43A,43Bに反射する。これにより、認識カメラ43A,43Bは撮像対象を撮像する。撮像対象としては、基板2を部品搭載位置に位置決めした状態において、下受け部材40aの上方に存在する基板マークMAや、搭載ヘッド33に保持された部品5の部品マークMBがある。なお、基板2は透明部材によって製作されているため、電極部3に搭載された部品5を下方から撮像することができる。このように、認識カメラ43A,43Bは、バックアップ部の下方であって、部品搭載位置に位置決めされた基板2上の部品5を撮像可能な位置に設けられる撮像手段となっている。また、撮像手段は、部品搭載位置に位置決めされた基板2の基板マークMAを撮像する。
さらに本実施の形態においては、部品圧着後の基板2をバックアップステージ40によって下受けすることにより、基板マークMAと部品マークMBの位置を通じて部品5の圧着状態を認識カメラ43A,43Bによって撮像することができる。すなわち撮像手段は、ステージ移動機構20による基板2の移動領域内で、基板2上の圧着後の部品5の圧着状態を撮像する。認識カメラ43A,43Bによって取得した撮像データは、部品実装装置1が備える制御部70(図8)に出力され、認識処理部77によって認識される(詳細は後述する)。
ミラー部材44A,44Bは、図示しない直動機構によって個別にX方向に移動する(矢印c)。これにより、基板マークMA、部品マークMBのピッチPTに合わせてミラー部材44A,44Bの位置を調整することができる。なお、撮像面を上方に向けた姿勢で認識カメラ43A,43Bを下受け部材40aの下方に配設し、認識対象物からの光を直接受光するようにしてもよい。
図1において、基板搬出部60はX方向に並列した複数(ここでは2つ)の基板保持ステージ61を備えている。複数の基板保持ステージ61は、部品5が圧着された基板2を受け取って保持する。基板保持ステージ61に保持された基板2は、部品実装装置1よりも下流側に配設された設備に搬出される。
図1及び図6において、基板移送機構部62は作業部間での基板2の移送(受け渡し)を行う移送作業部であり、基台1a,1b,1cの前方側の領域に亘ってX方向に伸びたX軸テーブル63を有する。X軸テーブル63には、上流側から順に第1の基板移送機構64A、第2の基板移送機構64B、第3の基板移送機構64CがX方向に移動自在に設けられている。X軸テーブル63を駆動することにより、基板移送機構64A〜64CはX方向に移動する。
図6において、基板移送機構64A〜64Cは、X軸テーブル63に対してX方向に移動自在に装着された基部65と、基部65上においてX方向に並列して設けられた複数(ここでは2つ)のアームユニット66を有する。アームユニット66は、基部65に固定されたアームベース67と、アームベース67から後方側に伸びた一対のアーム68を備えている。アーム68には吸着面を下方に向けた複数(ここでは2つ)の吸着パッド69が設けられており、一対のアーム68の計4個の吸着パッド69によって一枚の基板2が吸着される。
図7において、第1の基板移送機構64Aは、基板搬入部6の前方側である第1の位置P1と、テープ貼付け部10の前方側である第2の位置P2の間を移動することで、基板搬入部6の基板保持ステージ7(受け渡し位置Q1)と、テープ貼付け部10の前方の基板受け渡し位置(受け渡し位置Q2)に位置した基板保持ステージ15との間で基板2を移送する。第2の基板移送機構64Bは、第2の位置P2と、部品搭載部30の前方側である第3の位置P3の間を移動することで、テープ貼付け部10の前方の基板受け渡し位置(受け渡し位置Q2)に位置した基板保持ステージ15と、部品搭載部30の前方の受け渡し位置(受け渡し位置Q3)に位置した基板保持ステージ23A,23Bとの間で基板2を移送する。第3の基板移送機構64Cは、第3の位置P3と、基板搬出部60の前方側である第4の位置P4の間を移動することで、部品搭載部30の前方の受け渡し位置(受け渡し位置Q3)に位置した基板保持ステージ23A,23Bと、基板搬出部60の基板保持ステージ61(受け渡し位置Q4)との間で基板2を移送する。このように、部品搭載部30と部品圧着部50A,50Bとの間を除き、作業部間での基板2の移送はハンドリング操作によって行われる。
次に図8を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。部品実装装置1に備えられた制御部70は、記憶部71、ステージ移動制御部72、テープ貼付け制御部73、部品搭載制御部74、部品圧着制御部75、基板移送制御部76、認識処理部77及びフィードバック部78から構成される。また、制御部70はテープ貼付け部10、ステージ移動機構11,20、部品搭載部30、部品圧着部50A,50B及び基板移送機構部62と接続されている。
記憶部71は、各作業部において基板2に所定の作業を行うためのプログラムの他、第1の撮像データ71a、第2の撮像データ71bを記憶する。第1の撮像データ71aは、認識カメラ43A,43Bによって部品圧着後の基板2を撮像して取得したデータである。第2の撮像データ71bは、認識カメラ43A,43Bによって部品搭載後の基板2を撮像して取得したデータである。
ステージ移動制御部72は、ステージ移動機構11を制御することにより基板保持ステージ15を移動させ、基板2を所定のテープ貼り付け位置に位置決めする。また、ステージ移動機構20を制御することにより基板保持ステージ23A,23Bを移動させ、基板2を所定の部品搭載位置、部品圧着位置に位置決めする。
テープ貼付け制御部73は、テープ貼付け機構12を制御することにより、テープ貼付け位置に位置決めされた基板2に個片テープ4を貼付ける。部品搭載制御部74は、部品搭載部30の各機構を制御することにより、部品搭載位置に位置決めされた基板2に部品5を搭載する。部品圧着制御部75は、部品圧着部50A,50Bの各機構を制御することにより、部品圧着位置に位置決めされた基板2に部品5を圧着する。基板移送制御部76は、基板移送機構64A〜64Cを制御することにより作業部間(部品搭載部30と部品圧着部50A,50Bとの間を除く)で基板2を移送する。
認識処理部77は、第1の撮像データ71a、第2の撮像データ71bに基づいて、基板2に搭載若しくは圧着された後の部品5の状態(部品状態)を認識する。ここでいう部品状態とは、部品5が基板2に対して正規位置からどの程度ずれて搭載若しくは圧着されているかを意味する。
ここで図9を参照して、部品状態の認識方法について説明する。まず、認識処理部77は第1の撮像データ71aに基づいて基板マークMA1,MA2と部品マークMB1,MB2を検出する。次いで、基板マークMA1,MA2を直線L1で結んだ際の中点Cと、部品マークMB1,MB2を直線L2で結んだ際の中点Dを特定する。そして直線L1,L2及び中点C,Dに基づいて、認識処理部77は基板2に対する部品5のX方向、Y方向、水平面内における角度のずれ量(Δx,Δy,θ)を求める。これにより、基板2に圧着されるべき正規位置からの部品5の位置ずれ状態を認識する。また、第2の撮像データ71bを同様の方法で認識することにより、基板2に搭載されるべき正規位置からの部品5の位置ずれ状態を認識する。
このように、認識処理部77は撮像手段により取得された第1の撮像データ71aに基づいて、部品5の圧着位置の正規位置に対する位置ずれ状態を認識する部品状態認識部として機能する。また、部品状態認識部は撮像手段により取得された第2の撮像データ71bに基づいて、部品5の搭載位置の正規位置に対する位置ずれ状態を認識する。さらに、認識処理部77及び撮像手段(認識カメラ43A,43B)は、部品搭載位置に位置決めされた基板2の基板マークMA1,MB1を認識するための認識手段として機能する。
フィードバック部78は、認識処理部77によって求められた部品5の圧着位置のずれ量(Δx,Δy,θ)に基づいて、次回以降の生産対象となる基板2をバックアップステージ40によって下受けする際の基板2の位置を修正するための情報(修正データ)を作成する。作成した修正データは部品搭載制御部74にフィードバックされる。部品搭載制御部74は、フィードバックされた修正データに基づいて、次回以降の生産対象となる基板2をバックアップステージ40によって下受けする際の基板2の位置を修正する。このように、フィードバック部78は、部品状態認識部において認識された位置ずれ状態に基づいて、部品搭載部30における基板2の位置決め位置を修正するための情報をフィードバックする。
本発明の部品実装装置1は以上のような構成から成り、次に図10のフローチャートを参照して部品搭載部30及び部品圧着部50A,50Bにおける部品実装動作について説明する。ここでは、第2の基板移送機構64Bから基板保持ステージ23Aに受け渡された基板2を実装対象として説明する。
まず、部品搭載部30において部品5の搭載を行う(ST1:部品搭載工程)。図11を参照してこの工程を詳しく説明する。まず、図11(a)に示すように、基板保持ステージ23Aは部品搭載部30まで移動し、基板2の縁部2aをバックアップステージ40によって下受けする。これにより、基板2は部品搭載位置に位置決めされる。次いで、認識カメラ43A,43Bは下受け部材40aを介して基板マークMA1,MA2をそれぞれ撮像する。認識処理部77は取得した撮像データを認識処理することにより、基板2の位置を検出する。
次いで図11(b)に示すように、基板保持ステージ23Aは前方側(紙面左側)へ移動し、基板2をバックアップステージ40から一旦退避させる。これとともに、搭載ツール34は部品5を保持した状態でバックアップステージ40に向かって下降し、認識カメラ43A、43Bによって部品5を撮像可能な高さ位置で停止する。次いで、認識カメラ43A,43Bは下受け部材40aを介して部品マークMB1,MB2をそれぞれ撮像する。認識処理部77は取得した撮像データを認識処理することにより、部品5の位置を検出する。
次いで図11(c)に示すように、搭載ツール34は所定の高さ位置まで上昇し、その後に基板保持ステージ23Aは後方側(紙面右側)へ移動して基板2を部品搭載位置に再び位置決めする。このとき、部品搭載制御部74は基板2と部品5の位置検出結果に基づいて算出した位置ずれ量を加味したうえで基板2の位置を補正する。次いで図11(d)に示すように、搭載ツール34が基板2に向けて下降することにより、個片テープ4を介して部品5が基板2に搭載される。このとき、部品5のフィルム状部分5aは、枠状部材25が有する当接部25aによって下方から支持される。このように部品搭載工程では、所定の部品搭載位置において基板保持ステージ23A,23B上の基板2に部品5を搭載する。
次いで、部品5の搭載状態(部品搭載後の基板2)を撮像する(ST2:部品搭載状態撮像工程)。すなわち、後述する部品圧着工程(ST5)よりも前に、部品搭載工程(ST1)によって部品5の搭載が行われた基板2上の部品5の搭載状態を認識カメラ43A,43Bによって撮像する。これにより、第2の撮像データ71bが取得される。この工程は、部品搭載後の基板2を部品搭載位置に位置決めした状態のまま行うことができる。
次いで、部品5の搭載状態の認識を行う(ST3:部品搭載状態認識工程)。すなわち、認識処理部77は第2の撮像データ71bに基づいて部品5の搭載位置のずれ量(Δx,Δy,θ)を求めることにより、部品5が基板2に対してどの程度ずれて搭載されているかを認識する。そしてこの認識結果に基づき、部品搭載制御部74は搭載不良の有無を含む基板2の検査を行う。このように、部品搭載状態認識工程(ST3)では、部品搭載状態撮像工程(ST2)によって得られた第2の撮像データ71bに基づいて、部品5の搭載位置の正規位置に対する位置ずれ状態を認識する。
次いで、部品搭載後の基板2を第1の部品圧着部50Aへ移送する(ST4:第1の基板移送工程)。すなわち、図12(a)に示すように、基板保持ステージ23Aは基板2を保持した状態のまま第1の部品圧着部50Aまで移動し、基板2の縁部2aをバックアップステージ55によって下受けする。これにより、基板2は部品圧着位置に位置決めされる。部品圧着位置への位置決めは、部品搭載位置への位置決めのために認識カメラ43A,43Bにより認識され、検出された基板2の位置の情報に基づいてなされる。このように、第1の基板移送工程(ST4)では、基板保持ステージ23A上に保持された部品搭載後の基板2を部品搭載位置から部品圧着位置へ移送する。
次いで、第1の部品圧着部50Aにおいて部品5の圧着を行う(ST5:部品圧着工程)。すなわち、図12(b)に示すように、圧着ツール53は基板2に搭載された部品5に向けて下降し、部品5を所定時間だけ押圧する。このように、部品圧着工程(ST5)では、部品圧着位置において基板2に搭載された部品5を基板2に圧着する。その後、図12(c)に示すように、圧着ツール53は上昇する。
次いで、部品圧着後の基板2を部品搭載部30へ再び移送する(ST6:第2の基板移送工程)。すなわち、図13(a),(b)に示すように、基板保持ステージ23Aは基板2を保持した状態のまま第1の部品圧着部50Aから部品搭載部30へ移動する(矢印d)。そして、基板保持ステージ23Aはバックアップステージ40の配設方向へ移動し(矢印e)、複数の基板載置部24に載置された基板2のうち一の基板2(ここでは紙面左側)の縁部2aをバックアップステージ40によって下受けする。これにより、基板2は部品搭載位置に再び位置決めされる。このときの位置決めは、部品搭載位置への位置決めのために認識カメラ43A,43Bにより認識され、検出された基板2の位置の情報に基づいてなされる。このように第2の基板移送工程(ST6)では、基板保持ステージ23A上に保持された部品圧着後の基板2を部品圧着位置から部品搭載位置へ移送する。
次いで、部品5の圧着状態(部品圧着後の基板2)を撮像する(ST7:部品圧着状態撮像工程)。すなわち、部品5が圧着された基板2を基板保持ステージ23Aの移動領域内の所定の位置(ここでは部品搭載位置)に移動させ、基板2上の圧着後の部品5の圧着状態を認識カメラ43A,43Bによって撮像する。これにより、第1の撮像データ71aが取得される。なお、一の基板2を撮像したならば、基板保持ステージ23AをX方向にスライドさせて他方の基板2(ここでは紙面右側)の縁部2aをバックアップステージ40によって下受けする。この状態で、他方の基板2を撮像する。
次いで、部品5の圧着状態の認識を行う(ST8:部品圧着状態認識工程)。すなわち、認識処理部77は第1の撮像データ71aに基づいて部品5の圧着位置のずれ量(Δx,Δy,θ)を求めることにより、部品5が基板2に対してどの程度ずれて圧着されているかを認識する。このときの、ずれ量(Δx,Δy,θ)の算出は、図9にて説明した方法と同様に行う。そしてこの認識結果に基づき、部品圧着制御部75は圧着不良の有無を含む基板2の検査を行う。このように、部品圧着状態認識工程(ST3)では、部品圧着状態撮像工程(ST7)によって得られた第1の撮像データ71aに基づいて、部品5の圧着位置の正規位置に対する位置ずれ状態を認識する。
次いで、修正データのフィードバックを行う(ST9:フィードバック工程)。すなわち、フィードバック部78は、部品圧着状態認識工程(ST8)において認識された位置ずれ状態に基づいて、部品搭載部30における基板2の位置決め位置を修正するための情報(修正データ)をフィードバックする。この修正データに基づいて、部品搭載部30における基板2の位置決め位置(部品搭載位置)を修正することにより、次回以降の生産対象となる基板2に圧着される部品5の位置ずれが抑制される。
その後、図13(d)に示すように、基板保持ステージ23Aは基板2の受け渡しが可能な第5の位置P5まで移動する(矢印f)。そして、第3の基板移送機構64Cは基板保持ステージ23Aから基板2を受け取り、基板搬出部60に移送する。基板搬出部60に移送された基板2は、その後に下流側の設備に搬出される。
なお、実装開始前の調整時に第2の撮像データ71bから認識される部品搭載後の部品5の正規位置に対する位置ずれを認識することで、部品圧着部の調整作業の指標とすることができ、より精度の高い部品の実装を実現できる。また、第1の撮像データ71aと第2の撮像データ71bとを比較することにより、部品搭載工程後の基板2に対する部品5の位置ずれ状態と部品圧着工程後の基板2に対する部品5の位置ずれ状態とを比較することができる。これにより、最終的な部品圧着工程後の部品5の位置ずれの要因がどの工程に起因するものなのかをより詳細に分析することが可能となる。すなわち、第1の撮像データ71aと第2の撮像データ71bとで部品5の位置ずれ状態に大きな違いがない場合は、部品の位置ずれは部品搭載工程以前の工程に起因するものと考えることができ、一方、第1の撮像データ71aと第2の撮像データ71bとで部品5の位置ずれ状態に大きな違いが有る場合は、部品5の位置ずれは部品搭載工程よりも後の工程に起因するものと考えることができる。これにより、位置ずれの要因の修正を行いやすくなり、より精度の高い部品5の実装を実現できる。
このように、本実施の形態における部品実装装置1においては、部品搭載部30に配設された認識カメラ43A,43Bを転用して部品5の圧着状態を認識するようにしている。したがって、部品5の圧着状態を検査するための専用の装置を独立して設ける必要がなく、装置をコンパクトにでき、装置コストを低くできる。また、基板2を検査用の装置に移動させるための移動機構を別途設ける必要もないため、装置コストをさらに抑えることができる。さらに、本実施の形態においては、部品圧着後の基板2をハンドリング操作なしで部品5の圧着状態を認識するための位置(部品搭載位置)まで移送することができる。したがって、ハンドリング操作時に発生する精度誤差に起因した基板2の位置ずれをなくすことができるので、部品状態を精度良く認識することができる。加えて、位置ずれの要因も特定しやすくなる。
本発明はこれまで説明した実施の形態に限定されるものではない。例えば、部品圧着後の基板2を撮像するための撮像手段は、ステージ移動機構20による基板2の移動領域内に設けられていればよい。つまり、部品搭載部30に設けられた撮像手段を転用して部品圧着後の基板2を撮像する構成は必須ではなく、撮像手段を所定の位置に別途設けるようにしてもよい。この場合、部品5が圧着された基板2を基板保持ステージ23A,23Bの移動領域内の所定の位置に移動させた後に、基板2上の圧着後の部品5の圧着状態を撮像手段によって撮像する。