以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
図1は本発明の精製されたカルボン酸(酢酸など)の製造方法(精製方法)又は製造装置の一例を説明するためのフロー図である。
図1の例において、精製カルボン酸の製造装置は、不純物を含む酢酸流(酢酸のストリーム)から少なくとも酢酸を気化させるための第1のフラッシュ系(ニッケル合金製のフラッシュ蒸発槽又は蒸留塔)1と、このフラッシュ蒸留塔1で気化した留分(酢酸を含む留分)から、主に酢酸を含むストリームと、低沸不純物(又は高揮発性不純物)を含む留分とを分離するための蒸留系(非フラッシュ蒸留系又は蒸留塔)5と、この蒸留塔5で分離され、かつ主に酢酸を含むストリームから精製された酢酸を得るための第2のフラッシュ系(フラッシュ蒸発器)10とを備えている。
そして、このような装置では、不純物を含む酢酸のストリームが、フラッシュ蒸留塔(又は蒸発槽)1による気化に供され、気化された留分が蒸留塔5に供されて、主に酢酸を含むストリームが分離され、この分離されたストリームがさらにフラッシュ蒸留器10に供給されて、酢酸が気化され、金属含有不純物の含量が少ない高度に精製された酢酸を回収することができる。
より詳細には、酢酸のストリームは、酢酸の製造過程で使用された金属触媒(ロジウム触媒など)及び/又は金属含有触媒安定剤(ヨウ化リチウムなどのアルカリ金属ハライドなど)などの金属含有成分、酢酸の製造過程などで金属製反応器や金属製ラインなどの金属製要素(又はユニット)の腐食などにより生じた金属含有成分(例えば、金属ハロゲン化物、無機酸金属塩(硫酸金属塩など)、有機酸金属塩(カルボン酸金属塩など)などの金属含有不純物)を含む。金属含有成分に含まれる金属元素には、鉄、ニッケルなどの遷移金属元素、典型金属元素(アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムなど)などの各種金属元素などが挙げられる。このような金属含有不純物を含む酢酸のストリームは、供給ライン2を通じて、フラッシュ蒸留塔1に供給される。供給ライン2は、耐食性金属、例えば、ニッケル合金、ジルコニウム製などであってもよい。そして、このフラッシュ蒸留塔1では、ストリーム中に含まれる揮発性成分[又は高揮発性成分(低沸成分)、例えば、主生成物である酢酸の他、水、製造過程で使用された各種成分(例えば、原料メタノール、助触媒としてのヨウ化メチルなど)、製造過程で使用された成分の反応物(もしくは重合物又は分解物など。例えば、ギ酸、プロピオン酸、クロトン酸及びこれらのメチルエステル;ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化アルキル;アセトアルデヒド、クロトンアルデヒドなどのアルデヒド類など)など]を気化させ、上記金属含有不純物(特に、ロジウム触媒などの金属触媒、ヨウ化リチウムなどの金属含有触媒安定剤など)などの低揮発性成分[又は高沸成分(不揮発性成分も含む)]と分離する。低揮発性成分は、流出ライン4を通じて、フラッシュ系外に流出され、この流出ライン4から流出された流分は、適宜、酢酸の製造工程(図示せず)にリサイクルできる。流出ライン4から流出された流分は、必ずしも酢酸の製造工程にリサイクルしなくてもよいが、前記金属含有不純物の他、気化又は蒸発せずに残存した成分(例えば、触媒、助触媒、触媒安定剤、ヨウ化メチル、酢酸メチル、ヨウ化水素、水及び酢酸など)などの酢酸製造工程に有用な成分を、通常含有するため、製造工程にリサイクルするのが有利である。フラッシュ蒸留塔1で気化された酢酸を含むストリーム(留分)は、留出ライン又は供給ライン3を通じて、フラッシュ系外に留出し、蒸留塔(非フラッシュ蒸留塔)5に供給される。留出ライン又は供給ライン3および流出ライン4は、通常、耐食性の高い金属製、例えば、ニッケル合金製、ジルコニウム製及び/又はステンレス製などである。
蒸留塔5は耐食性金属製(例えば、ニッケル合金製、ジルコニウム製など)であり、蒸留塔5では、供給された酢酸を含むストリームから、低沸不純物(水、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、酢酸よりも低沸点のカルボニル不純物(ギ酸、酢酸メチルなどのエステル、アセトアルデヒドなどのアルデヒドなど)など)を含む留分を分離し、より精製された酢酸を含むストリームを回収する。すなわち、この精製された酢酸を含むストリームは、蒸留塔5の下部からライン7を通じて流出され、低沸不純物を含む留分は、蒸留塔5の塔頂から留出ライン6を通じて留出させる。留出ライン6及びライン7は、耐食性金属製、例えば、ニッケル合金製などの高級材質製及び/又はステンレス製などである。
蒸留塔5の塔頂から得られる留分は、留出ライン6を通じて、熱交換器(コンデンサー又は凝縮器)8に供給され、このコンデンサー8で凝縮(液化)されてもよい。コンデンサー8で凝縮された留分(凝縮液)の一部は、還流ライン9aを通じて、蒸留塔5の上部に還流され(戻され)、凝縮液の残部は、流出ライン(留出ライン)9bを通じて流出される。凝縮液の還流は必ずしも行う必要はなく、凝縮液の全てを流出してもよい(すなわち、還流比は0であってもよい)が、凝縮液を蒸留塔5の上部に還流させる(戻す)と、凝縮液と蒸留塔5内の気体成分との向流接触が効率よく行われるため、高い精留効果が得られ、低沸不純物と酢酸とを効果的に分離できる。熱交換器(コンデンサー又は凝縮器)8は、耐食性金属製、例えば、ニッケル合金製などの高級材質製及び/又はステンレス製などであってもよく、還流ライン9a及び流出ライン(留出ライン)9bは、耐食性金属製、例えば、ステンレス製などであってもよい。
凝縮液流出ライン9bを通じて流出された凝縮液は、適宜、酢酸の製造工程にリサイクルでき(図示せず)、必要により、製造工程で反応を阻害する成分(例えば、アセトアルデヒドなど)を除去した後、製造工程にリサイクルしてもよい。なお、凝縮液からアセトアルデヒドを除去して酢酸製造過程[反応系(カルボニル化反応系など)など]に戻す(リサイクルする)と、反応系におけるプロピオン酸、過マンガン酸カリウム試験悪化物質、ヨウ化アルキル類などの副生量を低減することができ、後続の蒸留系における酢酸の精製が容易になる。
また、コンデンサー8は必ずしも設ける必要はなく、蒸留塔及び/又はコンデンサーからの気体状の留分を、系外に排出又は回収してもよい。コンデンサー8から得られる凝縮液は、さらにステンレス製デカンター(図示せず)に供給し、上相(水相)と下相(有機相)とに分液(又は分相)してもよい。また、デカンターで分液した下相及び/又は上相の一部又は全部を蒸留塔5に還流させてもよく、残部をカルボン酸の製造過程にリサイクルしてもよい。
蒸留塔5の下部から回収したストリームには、酢酸が多く含まれるが、他の不純物、特に、飛沫により混入した低揮発性成分(又は高沸成分)、例えば、ニッケル合金製などの耐食性金属製蒸留塔5、金属製(例えば、ステンレス製など)のライン(例えば、留出ライン3及び6、還流ライン9a、供給ライン7など)、金属製(例えば、ステンレス製など)の周辺ユニット(例えば、コンデンサー8、デカンター、リボイラー(図示せず)など)などの各種金属製ユニットの腐食により生じた高沸成分(例えば、鉄分、硫酸金属塩、金属ハライドなどの金属含有不純物など)が含まれている。そのため、本発明では、蒸留塔5の下部から回収した酢酸を含むストリームを、ライン(又は供給ライン)7を通じて、さらにフラッシュ蒸発器10に供給し、高沸成分を分離する。すなわち、フラッシュ蒸発器10に供給された酢酸を含むストリームは、フラッシュ蒸発器10内で、フラッシュ現象により、酢酸を含む成分(低沸成分)が気化し、高沸成分がフラッシュ蒸発器10の底部に溜まる。フラッシュ蒸発器10内で気化した酢酸を含む成分(低沸成分)は、ライン(留出ライン)11を通じて、フラッシュ蒸発器10の頭部(又は頂部)から流出され、製品酢酸として回収される。フラッシュ蒸発器10及びライン(留出ライン)11は、通常、ニッケル合金製などの高級材質製及び/又はステンレス製などの耐食性金属製である。得られた製品酢酸は、金属含有不純物などの高沸成分(低揮発成分)が高度に除去され、着色もなく、過マンガン酸カリウム試験も製品規格の120分以上(特に、160分以上)であり、高い純度を有している。また、フラッシュ蒸留器10を利用することにより、低沸成分の線速度を低減しつつ、飛沫同伴を抑制でき、高価で複雑な構造のデミスターを用いることなく、精製カルボン酸の品質を向上できる。
なお、フラッシュ蒸発器10の頭部から流出された酢酸のストリームは、必要により、さらに、イオン交換樹脂などにより処理して(図示せず)、高沸不純物[又は低揮発性不純物、例えば、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化アルキル(酢酸よりも低揮発性又は高沸点のヨウ化アルキルなど)など]の除去率をさらに高めてもよい。
本発明の製造方法(又は精製方法)は、金属含有不純物を含むカルボン酸のストリームから精製されたカルボン酸を製造する系に適用でき、金属含有不純物の他、アルカノール又はその誘導体(エステルなど)のカルボニル化反応などにより得られる各種成分を含む反応液(反応粗液)の分離などに有用である。なお、本明細書では、アルカノールに加え、アルカノールの誘導体(カルボニル化可能なアルカノールの誘導体)も含めて、単に「アルカノール」と称する場合がある。
図2は、本発明の精製されたカルボン酸(酢酸など)の製造方法又は製造装置の他の例を示すフロー図である。図2の装置は、図1の例において、さらにアルカノールと一酸化炭素とを反応させてカルボン酸(酢酸など)を生成又は製造するための反応系(反応器)21を備えた例を示しており、反応器21からの反応液が、供給ライン2を通じて、フラッシュ蒸留塔(又は蒸発槽)1に供給される。反応系(反応器)21及び供給ライン2は、通常、ニッケル合金製、ジルコニウム製などの耐食性金属製である。図2の例において、フラッシュ蒸留塔1以降の工程は、図1の例と同様であり、フラッシュ蒸発器10の頭部から精製された酢酸を回収する。すなわち、図2の装置は、前記フラッシュ蒸留塔1と、蒸留塔5と、フラッシュ蒸発器10とに加え、前記フラッシュ蒸留塔1に、金属含有不純物(例えば、ロジウム触媒などの金属触媒、触媒安定剤としてのヨウ化リチウムなどの金属ハライドなど)及び目的カルボン酸に比較して高沸点又は低沸点のカルボニル不純物を含むカルボン酸(酢酸など)のストリームを供給するための反応器21とを有している。
図2の例では、反応器21は、触媒系(ロジウム触媒、触媒安定剤としてのヨウ化リチウム、助触媒としてのヨウ化メチルなど)を反応器内部に含有しており、酢酸の原料となるメタノール及び一酸化炭素が、それぞれ、供給ライン22及び23を通じて反応器21に供給される。そして、反応器21内では、前記触媒系の存在下、メタノールと、一酸化炭素とが反応して酢酸が生成し、酢酸を含む反応液(反応粗液)が得られる。反応液には、酢酸の他、水、他のカルボン酸[ギ酸、プロピオン酸、クロトン酸などの酢酸よりも低次又は高次のカルボン酸(飽和又は不飽和カルボン酸)など]、これらの他のカルボン酸又は酢酸のエステル(原料メタノールとのエステルなど)、アルデヒド類(アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどの飽和又は不飽和アルデヒドなど)、原料メタノール、上記触媒系、アルキルハライド(ヨウ化アルキル、例えば、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C2−15アルキル(好ましくはヨウ化C2−12アルキル)など)などが含まれている。そのため、反応液を、流出(又は供給)ラインを通じて、フラッシュ蒸留塔(蒸発槽)1に供給し、ロジウム触媒、ヨウ化リチウムなどの低揮発性成分をフラッシュ蒸留塔1の塔底から分離する。フラッシュ蒸留塔1の塔底から流出されたストリームは、触媒系(ロジウム触媒、ヨウ化リチウムなど)などの反応系に有用な成分を含むため、リサイクルライン14を通じて、反応器1の下部(又は塔底)にリサイクルされる。リサイクルライン14もニッケル合金製などの耐食性金属で形成されている。
なお、前記反応器21には、触媒活性を高めるため、必要により水素を供給してもよい。水素は、一酸化炭素とともに供給ライン23を通じて供給してもよく、別途、別の供給ライン(図示せず)を通じて供給してもよい。
また、図2の例では、蒸発塔5の塔頂から留出した留分は、図1の例と同様に、留出ライン6を通じて、コンデンサー8に供給され凝縮され、得られた凝縮液の一部を、還流ライン9aを通じて、蒸留塔5の上部に戻す。また、凝縮液は、反応系で使用される有用な成分(ヨウ化水素、ヨウ化メチルなど)を含んでいるため、凝縮液の残部を、流出ライン9b及びリサイクルライン20を通じて、反応器21の上部(塔頂などの頂部を含む)にリサイクルする。反応器21へのリサイクルに先立って、必要により、反応を阻害する成分(例えば、アセトアルデヒドなど)を凝縮液から除去してもよい。留出ライン6、コンデンサー8はニッケル合金製などの耐食性金属、還流ライン9a、流出ライン9b及びリサイクルライン20も、ステンレス製などの耐食性金属で形成してもよい。
図3は、本発明の精製されたカルボン酸(酢酸など)の製造方法又は製造装置のさらに他の例を示すフロー図である。図3の装置は、図2の例において、蒸留塔5に代えて、2つの非フラッシュ蒸留塔、すなわち、第1の蒸留系(第1の蒸留塔(又は低沸分離塔))25及び第2の蒸留系(第2の蒸留塔(又は脱水塔))35を有している。
すなわち、図3の装置は、メタノールと一酸化炭素とを反応させて酢酸を生成又は製造するための反応系(反応器)21と、反応器21から供給される反応液(反応粗液)を気化させて酢酸を含む留分(ストリーム)と低揮発性(不揮発性)成分とを分離するためのフラッシュ蒸留塔1と、このフラッシュ蒸留塔1より供給される酢酸を含むストリームから、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、低沸カルボニル不純物(酢酸メチル、アセトアルデヒドなど)などの低沸不純物と、主に酢酸(及び水)を含むストリームとを分離するための第1の蒸留塔25と、この第1の蒸留塔25より供給される酢酸を含むストリームから、水を含むストリームと酢酸を含むストリームとを分離するための第2の蒸留塔35と、この第2の蒸留塔35から供給される酢酸を含むストリームを気化させ、精製された酢酸と、金属含有不純物などの不揮発成分とを分離するためのフラッシュ蒸発器10とを有している。第1の蒸留塔25、第2の蒸留塔35及びフラッシュ蒸発器10は、通常、耐食性金属製、例えば、ニッケル合金製などの高級材質製及び/又はステンレス製などである。
そして、図3の例では、図2の例と同様に、反応器21から反応液を、ライン2を通じてフラッシュ蒸留塔1に供給し、フラッシュ蒸留塔1で気化された酢酸を含むストリームを塔頂から留出ライン3を通じて留出させるとともに、高沸成分[金属含有不純物、例えば、ロジウム触媒、ヨウ化リチウムなどの金属含有触媒成分、ニッケル合金製反応器21、リサイクルライン14などの本発明の装置を構成する種々の金属製ユニット(又は要素)の腐食により生じた金属含有成分など]を、塔底からリサイクルライン14を通じて、反応器21にリサイクルする。ライン2、留出ライン3及びリサイクルライン14は、例えば、ニッケル合金などの高級材質及び/又はステンレスなどの耐食性金属で形成できる。
図3の例では、ニッケル合金製などのフラッシュ蒸留塔(蒸発槽)1から留出させた酢酸を含むストリームは、まず、ニッケル合金製などの第1の蒸留塔(低沸分離塔)25に供給され、低沸不純物(ヨウ化水素、ヨウ化メチルなどのハロゲン化物、低沸カルボニル不純物(酢酸メチル、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類など)など)、水の一部、酢酸の一部などが塔頂から留出ライン26を通じて、塔外に流出される。そして、第1の蒸留塔25の中段からサイドカットにより酢酸(及び水)を含むストリームを、ニッケル合金製などのライン27を通じて塔外に流出する。第1の蒸留塔25からサイドカットにより回収された酢酸を含むストリームは、さらにニッケル合金製などの第2の蒸留塔35の中段に供給され、酢酸と水との沸点差を利用して、水を含む留分と、酢酸を含むストリームとに分離され、水を含む留分は塔頂からニッケル合金製などの留出ライン36を通じて塔外に流出され、酢酸を含むストリームは、塔底からニッケル合金製などの高級材質製及び/又はステンレス製などの缶出ライン37を通じて塔外に流出される。そして、この第2の蒸留塔35の塔底から得られる酢酸を含むストリームは、缶出(又は供給)ライン37を通じて、ニッケル合金製などの高級材質製及び/又はステンレス製などのフラッシュ蒸発器10に供給され、図1及び図2の例と同様に、金属含有不純物などの高沸成分[例えば、反応器21、フラッシュ蒸留塔1、第1の蒸留塔25、第2の蒸留塔35、コンデンサー28及び38などのユニットの他、これらの各ユニットを互いに連結するラインなどの各種金属製ユニット(又は要素)の腐食により生じた金属含有成分など]と、酢酸とが分離され、精製された酢酸は、蒸発器10の頭部からライン11を通じて回収される。なお、フラッシュ蒸発器10の頭部から流出された酢酸のストリームの後処理などは、図1の場合と同様に行ってもよい。
第1の蒸留塔25及び第2の蒸留塔35の塔頂から、それぞれ、ニッケル合金製などの留出ライン26及び36を通じて留出させた留分は、ニッケル合金製などのコンデンサー(又は凝縮器)28及び38にそれぞれ供給されて凝縮される。コンデンサー28及び38で凝縮された凝縮液は、図2の蒸留器5を用いた場合と同様に、それぞれ、凝縮液の一部を、ステンレス製の還流ライン29a又は39aを通じて、第1の蒸留塔25又は第2の蒸留塔35の上部(塔頂など)に還流させるとともに、残部をステンレス製の流出ライン29b又は39bを通じて流出する。そして、流出ライン29b及び39bを通じて流出された凝縮液は、それぞれ、ステンレス製のリサイクルライン20に供され、リサイクルライン20を通じて、反応器21の上部(頭部又は頂部など)にリサイクルされる。
図3の例においても、図1及び図2の場合と同様に、反応系(反応器21)への凝縮液のリサイクルに先だって、必要により、反応を阻害する成分(例えば、アセトアルデヒドなど)を凝縮液から除去してもよい。図3の例において、凝縮液からアセトアルデヒドを除去して反応器21にリサイクルすると、反応器21でのプロピオン酸、過マンガン酸カリウム試験悪化物質、ヨウ化アルキルなどの副生量低減に伴い、第1の蒸留塔25から第2の蒸留塔35に供給される酢酸を含むストリーム中に含まれるプロピオン酸の濃度を極めて低く(例えば、酢酸製品の規格内に)できるため、第2の蒸留塔35以降の工程でプロピオン酸の除去に配慮する必要がなくなる。
なお、図3では、蒸留系(非フラッシュ蒸留系)が、低沸分離塔25と後続の脱水塔35とで構成される場合を例示したが、この順序は逆であってもよい。
以下に、本発明の製造方法(又は装置)を構成する各要素(又はユニット)について、詳細に説明する。
[反応系又は反応工程]
反応系では、金属触媒の存在下、アルカノール(又はその誘導体)と一酸化炭素とを反応させ、アルカノール又はその誘導体を一酸化炭素でカルボニル化することにより、対応するカルボン酸を生成させる。
(アルカノール又はその誘導体)
カルボニル化反応に用いるアルカノールとしては、炭素数nのアルカノール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのC1−10アルカノールなどが例示できる。炭素数nは、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4、特に1〜3程度である。
アルカノール誘導体としては、エステル、エーテル、ハロゲン化物などの反応性誘導体が挙げられる。これらの誘導体のうち、エステルとしては、生成するカルボン酸と原料アルコールとのエステル、例えば、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどのC2−6カルボン酸−C1−6アルキルエステルなどが例示できる。エーテルとしては、原料アルコールに対応するエーテル、例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテルなどのジC1−6アルキルエーテルなどが例示できる。また、ハロゲン化物としては、ヨウ化メチルなどのアルコールに対応するハライド(ヨウ化アルキルなどのアルキルハライドなど)などが使用できる。
前記アルカノール又はその誘導体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい液相反応系では、液体反応成分として炭素数nのアルカノール、好ましくはC1−4アルカノール又はその誘導体(例えば、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテルなど)を用いて、炭素数n+1のカルボン酸又はその誘導体(カルボン酸無水物など)を得てもよい。特に、カルボニル化触媒系の存在下、メタノール、酢酸メチル、及びジメチルエーテルから選択された少なくとも一種(特に、メタノール)と一酸化炭素とを液相反応系で反応させ、酢酸又はその誘導体を生成させる反応系などが好ましい。
なお、アルカノール又はその誘導体は、フレッシュな原料を直接又は間接的に反応系へ供給してもよく、また、蒸留工程から留出するアルカノール又はその誘導体を、リサイクルすることにより、反応系に供給してもよい。
また、反応系には、カルボン酸エステル(特に、酢酸メチルなどのカルボン酸とアルカノールとのエステル)を液相反応系全体に対して、0.1〜35重量%、好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、0.5〜6重量%)程度の割合で含有させてもよい。なお、反応液中には原料のアルカノールと生成物のカルボン酸との平衡により、通常、カルボン酸エステルが存在している場合が多い。
(触媒)
反応は、カルボニル化触媒の存在下で行われ、カルボニル化触媒としては、通常、高沸点の触媒、例えば、金属触媒が使用される。金属触媒としては、遷移金属触媒、特に、周期表第8族金属を含む金属触媒、例えば、コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒などが例示できる。触媒は、金属単体であってもよく、また、金属酸化物(複合酸化物を含む)、水酸化物、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、カルボン酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、錯体などの形態でも使用できる。さらに、触媒は、担体に触媒成分が担持された担持型触媒であってもよい。このような金属触媒は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
好ましい金属触媒は、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)である。また、金属触媒は反応液中で可溶な形態で使用するのが好ましい。なお、ロジウムは、通常、反応液中で錯体として存在しているため、ロジウム触媒を用いる場合には、触媒は、反応液中で錯体に変化可能である限り、特に制限されず、種々の形態で使用できる。このようなロジウム触媒としては、特に、ロジウムのハロゲン化物(臭化物、ヨウ化物など)が好ましい。また、触媒は、ハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)及び/又は水を添加することにより反応液中で安定化させることができる。
触媒の濃度は、例えば、液相系全体に対して重量基準で10〜5,000ppm、好ましくは200〜3,000ppm、さらに好ましくは300〜2,000ppm、特に500〜1,500ppm程度である。
前記カルボニル化触媒は、通常、触媒安定剤(又は反応促進剤)及び/又は助触媒と併用し、触媒系として用いてもよい。
触媒安定剤としては、アルカリ金属ハライド[例えば、アルカリ金属ヨウ化物(ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなど)、アルカリ金属臭化物(臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウムなど)などの他、これらのヨウ化物又は臭化物に対応する塩化物、フッ化物など]、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)の第4級アンモニウム塩又は第4級ホスホニウム塩、反応系においてヨウ化物塩を形成可能な化合物などが挙げられる。これらの触媒安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
なお、触媒安定剤は、金属触媒が不安定化したり、反応速度が低下するのを防ぐなどの作用を有している。これらの成分のうち、溶解性や触媒(例えば、ロジウム触媒など)の安定性などの点から、アルカリ金属ヨウ化物、特にヨウ化リチウムを用いるのが好ましい。
また、ヨウ化リチウムなどの触媒安定剤の割合は、液相反応系全体に対して、例えば、0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜35重量%、さらに好ましくは1〜30重量%程度であってもよい。特に、液相反応系中のイオン性ハロゲン化物(ヨウ化物など)濃度を、例えば、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%程度に維持できる程度の割合で、触媒安定剤を液相反応系に含有させる場合が多い。
助触媒としては、ハロゲン化水素(ヨウ化水素、臭化水素など)、アルキルハライド[原料アルカノールに対応するアルキルハライド(C1−10アルキルハライド、好ましくはC1−4アルキルハライド)、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルなどのヨウ化C1−10アルキル(ヨウ化C1−4アルキルなど)、これらのヨウ化アルキルに対応する臭化物(臭化メチル、臭化プロピルなど)や塩化物(塩化メチルなど)など]などが使用できる。助触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。上記助触媒のうち、ヨウ化メチルなどのヨウ化アルキル(ヨウ化C1−3アルキルなど)が好ましく、ヨウ化アルキルとヨウ化水素とを組み合わせて用いてもよい。
助触媒の含有量は、液相反応系全体に対して、例えば、0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜25重量%(例えば、3〜20重量%)程度であってもよい。より具体的には、前記アルカノールのカルボニル化反応によるカルボン酸の製造では、ヨウ化メチルなどのアルキルハライドの含有量は、液相系全体に対して、例えば、1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは6〜16重量%程度であってもよい。なお、アルキルハライドの濃度が高いほど、反応は促進される傾向がある。
好ましい触媒系としては、ロジウム触媒と、触媒安定剤としての金属ハライド(アルカリ金属ヨウ化物など)と、アルキルハライド(ヨウ化C1−3アルキルなど)及びハロゲン化水素(ヨウ化水素など)から選択された少なくとも一種の助触媒(特に、ヨウ化メチルなど)とを組み合わせた触媒系などが挙げられる。
好ましい反応系では、前記触媒系及び水の存在下、メタノールなどのC1−4アルカノールと一酸化炭素とを反応系で反応させ、金属含有不純物を含むカルボン酸流(カルボン酸のストリーム)を得てもよい。
(一酸化炭素)
反応系に供給する一酸化炭素は、純粋なガスとして使用してもよく、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、二酸化炭素など)で稀釈して使用してもよい。また、後続の工程(フラッシュ系、蒸留工程(蒸留塔)、コンデンサーなど)から一酸化炭素を含む排ガス成分を分離することもできるため、この一酸化炭素を含む排ガス成分を反応系にリサイクルすることにより、反応系に一酸化炭素を供給してもよい。
なお、一酸化炭素の供給方法は、特に制限されず、例えば、反応系(反応器)の気相部に供給してもよいが、通常、反応系(反応器)の液相部に供給するのが好ましい。例えば、反応器の液相にバブリングさせつつ供給してもよく、反応器の下部(又は塔底)からスパージングにより供給してもよい。
反応系の一酸化炭素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.8〜3MPa(例えば、0.9〜2MPa)、好ましくは1〜2.5MPa(例えば、1.15〜2.5MPa)、さらに好ましくは1.15〜2MPa(例えば、1.18〜2MPa)程度であってもよい。
(その他)
反応系に含まれる水濃度は、特に制限されず、低濃度であってもよい。反応系の水濃度は、反応系の液相全体に対して、例えば、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜7重量%(特に、1〜5重量%)程度である。
前記カルボニル化反応では、通常、一酸化炭素と水との反応によりシフト反応が起こり、水素が発生するが、反応系に水素を供給してもよい。反応系に供給する水素は、原料となる一酸化炭素と共に混合ガスとして反応系に供給することもできる。また、後続の蒸留工程(蒸留塔)やコンデンサーから気体成分(水素、一酸化炭素などを含む)を回収することもできるが、このような気体成分を、必要により適宜精製して反応系にリサイクルすることにより、水素を供給してもよい。
反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.5〜200kPa、好ましくは1〜120kPa、さらに好ましくは5〜100kPa程度であってもよい。
なお、反応系の一酸化炭素分圧や水素分圧は、例えば、反応系への一酸化炭素及び水素の供給量又はこれらの成分の反応系へのリサイクル量、反応系への原料基質(メタノールなど)の供給量、反応温度や反応圧力などを適宜調整することにより調整することができる。
カルボニル化反応において、反応温度は、例えば、100〜250℃、好ましくは150〜220℃、さらに好ましくは170〜200℃程度であってもよい。また、反応圧力は、ゲージ圧力で、1〜5MPa、好ましくは1.5〜4MPa、さらに好ましくは2〜3.5MPa程度であってもよい。
反応は溶媒の存在下又は非存在下で行ってもよい。反応溶媒としては、反応性や、分離又は精製効率を低下させない限り特に制限されず、種々の溶媒を使用できるが、通常、生成物であるカルボン酸(酢酸など)を用いる場合が多い。
前記カルボニル化反応系では、炭素数nのアルカノール(メタノールなど)に対応する炭素数n+1のカルボン酸(酢酸など)が生成するとともに、目的カルボン酸以外のカルボン酸の他、カルボン酸のエステル、アルデヒド、ケトンなどのカルボニル不純物、ヨウ化アルキルなどのハロゲン化物なども生成する。より具体的に、副生成物としては、生成したカルボン酸と原料アルカノールとのエステル(酢酸メチルなど)、エステル化反応に伴って水、さらには前記アルカノールに対応する炭素数n+1のアルデヒド(アセトアルデヒドなど)及び炭素数n+2のカルボン酸(プロピオン酸など)などが生成する他、反応系に含まれる各種成分の反応物、重合物、分解物[例えば、他のカルボン酸(ギ酸、クロトン酸など)、他のアルデヒド(クロトン酸アルデヒドなど)、他のエステル(プロピオン酸メチル、クロトン酸メチルなど)、ヨウ化物(ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C2−15アルキル(特にヨウ化C2−12アルキル)など)]などが生成する。
なお、反応系では、後続の工程(蒸留系など)からのリサイクル流中のアルデヒド(アセトアルデヒドなど)を除去したり、反応条件、例えば、ヨウ化アルキルなどの助触媒の割合及び/又は水素分圧を低減することなどにより、アルデヒドの生成を抑制してもよい。また、水濃度を調整することにより、反応系内での水素の発生を抑制してもよい。
反応装置(又は反応器)の種類は、特に制限されず、慣用のカルボニル化反応器、例えば、撹拌槽型反応器(連続式、回分式、又は半回分式の撹拌槽型反応器など)、管型反応器、塔型反応器、固定床式反応器、流動層式反応器などが使用できる。
また、反応系(反応装置又は反応器)及び反応系の周辺ユニット(反応系に通じる各種ライン、例えば、供給ライン、ストリームの抜き取り又は流出ラインなどの反応系と他のユニットとを連結するラインなど)としては、慣用の材質、例えば、ガラス製、金属製[金属又は金属合金製、例えば、ステンレス製などの鉄合金製(Fe−Cr系(SUS410など)、Fe−Cr−Ni系析出硬化型(SUS630など)などのマルテンサイト系ステンレス鋼製;Fe−Cr系(SUS430など)などのフェライト系ステンレス鋼製;Fe−Cr−Ni系(SUS304、SUS316Lなど)などのオーステナイト系ステンレス鋼製;Fe−Cr−Ni系析出硬化型(SUS631など)などのセミオーステナイト系ステンレス鋼製;Fe−Cr−Ni系(SUS329J1など)などのオーステナイト・フェライトステンレス鋼製など);ニッケル、ジルコニウム、チタン、クロム、タンタル、モリブデン、マンガン、コバルト、タングステンなどの金属製又はこれらの金属を複数種含む合金製(例えば、Ni200、Ni201、モネル(登録商標)400、モネル(登録商標)K−500などの純ニッケル又はニッケル合金製など)など]、セラミック製などの要素又はユニットが使用できる。これらの材質のうち、反応系及び/又はその周辺ユニットは、耐腐食性(例えば、酸に対して耐腐食性、酸化性雰囲気に対して耐腐食性)の金属又は金属合金製、例えば、耐食性ステンレス(例えば、日本冶金(株)製、NAS254N、NAS354N、NAS185N及びNAS155N;カーペンター20cb3などのニッケル含有ステンレス、Fe−Cr−Ni系オーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS316Lなど)など)、高級材質、例えば、ニッケル合金(ニッケルと、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、タンタル及びタングステンなどから選択された少なくとも一種を含有するニッケル合金など)などの他、金属ジルコニウム(Zr)、ジルコニウム合金、金属チタン(Ti)、チタン合金製などであるのが好ましい。
前記ニッケル合金の具体例としては、例えば、Ni−Mo系合金(例えば、Haynes International社製,ハステロイ(登録商標)Bシリーズ(ハステロイB−2(登録商標)など))、Ni−Cr−Mo系合金(例えば、Haynes International社製,ハステロイ(登録商標)Cシリーズ(ハステロイC−276(登録商標)、ハステロイC−2(登録商標));三菱マテリアル(株)製、MAT21;Inco Alloys International社製、インコネル(登録商標)625など)、Ni−Cr系又はNi−Cr−Fe系合金(例えば、三菱マテリアル(株)製、MA276、MA625、MA600、MA−B2、MA−22、MAプラストハードS及びMAプラストハードB−2など;Inco Alloys International社製、インコネル(登録商標)600及び690、並びにインコロイ800及び825など)などが例示できる。
上記のような金属製ユニットが反応混合物やカルボン酸を含むストリームなどに接触すると、ユニットを構成する金属成分(例えば、Zr以外の金属など)が腐食により溶出し、溶出した金属成分が製品カルボン酸中に混入する。なお、Zrは、実質的に腐食されない場合が多いが、Tiは、腐食により溶出する場合が多い。なお、例えば、Tiは、塔型の固定床式反応器又は流動層式反応器で使用される場合がある。
前記反応器は、ニッケル合金製(例えば、上記耐食性ニッケル合金製、特に酸又は酸化性雰囲気などに対して高い耐食性を有するニッケル合金製)、金属ジルコニウム製、ジルコニウム合金製、金属チタン製又はチタン合金製などである場合が多い。これら金属又は合金のうち、特に、耐食ニッケル合金製、金属ジルコニウム製などが好ましい。特に、工業的スケールでは、金属ジルコニウム、金属チタンなどの高級な金属製の反応器を用いる場合もある。
また、反応器の周辺ユニットは、ニッケル合金製、ジルコニウム又はその合金製、チタン又はその合金製などであってもよいが、通常、ステンレス製などの鉄合金製(特に、酸又は酸化性雰囲気に対して高耐食性の鉄合金製(日本冶金(株)製、NAS254N、NAS354N、NAS185N及びNAS155N;Fe−Cr−Ni系オーステナイト系ステンレス(SUS304、SUS316Lなど)など)を用いる場合が多い。
また、反応系及びその周辺ユニットなどの内壁は、必要により、ライニング加工(例えば、グラスライニング、フッ素樹脂ライニングなど)、上記例示のニッケル合金、金属ジルコニウム又はその合金、金属チタン又はその合金、金属タンタル又はその合金(タンタルを含む金属合金など)などで内張されていてもよい。
また、カルボニル化反応系は、発熱を伴う発熱反応系であるため、反応器には、反応温度を制御するための除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケットなど)などを装備してもよい。
反応系におけるカルボン酸を含むストリーム(反応粗液)の抜き取り位置は、特に制限されず、反応系の種類などに応じて、液状の反応混合物を抜き取り可能な位置であればよい。金属含有不純物などの混入を低減するためには、反応系の液相上部(例えば、上半分)に位置する抜き取り口から抜き取る場合が多いが、抜き取られるカルボン酸のストリームには、金属含有不純物が不可避的に混入する。このようにして反応系で得られる金属含有不純物を含むカルボン酸のストリームは、後続の第1のフラッシュ系に供給される。
反応系における目的カルボン酸の空時収量(STY)は、例えば、5〜50mol/L・h、好ましくは10〜40mol/L・h、さらに好ましくは12〜35mol/L・h程度であってもよい。
[第1のフラッシュ系又は工程]
反応系から抜き取ったカルボン酸を含むストリーム(反応粗液)は、第1のフラッシュ系に供給され、気化により、揮発性(高揮発性)の成分(低沸成分)と、低揮発性又は不揮発性の成分(高沸成分)とを分離する。すなわち、第1のフラッシュ系では、反応粗液の気液平衡を利用して、高揮発性の成分(低沸成分)の蒸気と、金属含有不純物を含む低揮発性又は不揮発性の成分(高沸成分)の液体とに分離し、液体成分に含まれる金属含有不純物は、主に、金属触媒、アルカリ金属ハライドなどの金属含有触媒安定剤などの他、反応器や各種ライン、周辺設備などの要素又はユニットのうち金属製のユニットの腐食により生成した金属含有成分などを含む。
第1のフラッシュ系は、主に、金属触媒及び/又はアルカリ金属ハライドなどの触媒系を構成する金属成分を分離することを目的としたユニットである。そのため、第1のフラッシュ系は、このような金属成分(金属含有不純物)を分離可能であればよく、撹拌槽(ジャケット付き撹拌槽など)又は蒸発器(自然循環式、強制循環式、外部加熱管型、垂直長管型、撹拌膜型、コイル型又はプレート型などの各種蒸発器など)などの一般的な蒸発装置を利用してもよく、フラッシュ現象(フラッシュ蒸発)を利用する慣用のフラッシュ機器(又は装置)、例えば、フラッシュ蒸留塔、フラッシュ蒸発器などであってもよい。なお、フラッシュ蒸発の方式としては、例えば、開水路内液流動方式、蒸気相放出液噴流(スプレーフラッシュ蒸発)方式などが例示できる。フラッシュ蒸留塔及び蒸発器のうち、分離した金属成分の反応系へのリサイクル性の観点からは、フラッシュ蒸留塔を用いる場合が多い。また、第1のフラッシュ系は、リボイラーやジャケットを備えていてもよく、慣用の加熱管(例えば、外部循環式加熱管など)などを備えていてもよい。
第1のフラッシュ系では、加熱してもよく、加熱することなく蒸気成分と液体成分とを分離してもよい。例えば、断熱フラッシュにおいては、加熱することなく減圧することにより反応混合物を蒸気成分と液体成分とに分離でき、恒温フラッシュでは、反応混合物を加熱し減圧することにより反応混合物を蒸気成分と液体成分とに分離でき、これらのフラッシュ条件を組み合わせて、反応粗液(反応系から供給されたカルボン酸を含むストリーム)を蒸気と液体とに分離してもよい。
第1のフラッシュ系における上記反応粗液(反応系から供給されるカルボン酸のストリーム)の供給位置は、特に制限されず、第1のフラッシュ系の種類などに応じて、適宜選択できる。例えば、フラッシュ蒸留塔を利用する場合には、フラッシュ蒸留塔の中央より上(上部)に供給する場合が多い。
第1のフラッシュ系(工程)は、単一のフラッシュ工程であってもよく、複数のフラッシュ工程を組み合わせてもよい。
なお、第1のフラッシュ系に供給されるカルボン酸を含むストリームは、前記反応系から抜き取った反応粗液に限らず、金属含有不純物を含むカルボン酸のストリームであればよく、金属含有不純物と、カルボン酸と、他の不純物とを含むストリーム(混合物)であってもよい。
第1のフラッシュ系又は工程(フラッシュ蒸留など)の温度は、例えば、30〜250℃、好ましくは50〜220℃(例えば、60〜200℃)、さらに好ましくは80〜180℃程度であってもよい。また、圧力は、絶対圧力で、5〜3,000kPa(例えば、10〜2,000kPa)、好ましくは20〜1,500kPa(例えば、30〜1200kPa)、さらに好ましくは40〜1,000kPa(例えば、50〜800kPa)程度であってもよい。
第1のフラッシュ系(工程)の温度と、圧力とは、減圧フラッシュ、恒温フラッシュのどちらを行うかに応じて、上記の範囲からそれぞれ適宜組み合わせることができる。例えば、メタノールと一酸化炭素との反応により生成された酢酸を含むカルボン酸のストリームを第1のフラッシュ蒸留系に供する場合、例えば、70〜200℃(好ましくは75〜190℃)程度の温度と、80〜400kPa(好ましくは100〜200kPa)程度の圧力(絶対圧力)とを組み合わせてもよい。
第1のフラッシュ系(フラッシュ蒸留塔又は蒸発器など)の材質、及び第1のフラッシュ系の周辺ユニット(第1のフラッシュ系に通じる各種ライン、例えば、供給ライン、ストリームの抜き取り又は流出(留出)ラインなどの第1のフラッシュ系と他のユニットとを連結するラインなど)の材質としては、慣用の材質、例えば、ガラス製、金属製、セラミック製などの要素又はユニットが使用できるが、通常、金属製、例えば、前記例示の金属又は合金製、例えば、ステンレス製などの鉄合金製、ニッケル又はニッケル合金製、ジルコニウム又はジルコニウム合金製、チタン又はチタン合金製などが挙げられ、耐食性金属又は合金製(例えば、耐食性鉄合金製、ハステロイB−2(登録商標)などのニッケル合金、金属ジルコニウム又はその合金、金属チタン又はその合金など)などである場合が多い。
第1のフラッシュ系で分離された高沸成分(触媒系を構成する金属成分などの金属含有不純物など)を含む液体は、そのまま回収し、廃棄してもよく、他の用途に再利用してもよいが、通常、反応系にリサイクルされる。また、前記液体は、反応系へのリサイクルに先だって、必要により、有効成分(触媒系の構成成分など)を分離するための分離処理に供してもよい。また、リサイクルされる液体は、必要により、加熱又は冷却した後、反応系に供給してもよい。
第1のフラッシュ系において、金属含有不純物を含む液体の抜き取り位置は、特に制限されないが、通常、フラッシュ系の下部、特に底部から抜き出す場合が多い。例えば、フラッシュ蒸留塔では、通常、塔底から抜き出される。
第1のフラッシュ系で気化された留分(分離されたカルボン酸などの揮発性成分(低沸成分)を含む留分)には、目的とするカルボン酸(酢酸などの炭素数nのアルカノール(メタノールなど)に対応する炭素数n+1のカルボン酸)の他に、助触媒(ヨウ化水素、ヨウ化メチルなど)、原料アルカノールと生成物カルボン酸とのエステル(酢酸メチルなど)、水、微量の副生成物[ギ酸などの炭素数nのカルボン酸、プロピオン酸、クロトン酸などの炭素数n+2以上のカルボン酸などのカルボン酸;これらのカルボン酸と原料アルカノールとのエステル(プロピオン酸メチル、クロトン酸メチルなど);アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどの炭素数n+1以上のアルデヒド;ヨウ化物(ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのヨウ化C2−15アルキル(特にヨウ化C2−12アルキル)など)など]、又は他の不純物(反応系、フラッシュ系、及びこれらのユニットを連結するラインから選択された少なくとも一種の腐食などにより生成した高沸不純物(金属含有不純物、高沸カルボニル不純物など))などを含んでいる。そのため、第1のフラッシュ系で気化した留分を、さらに蒸留系に供して、目的とするカルボン酸をさらに精製する。
なお、第1のフラッシュ系では、目的カルボン酸への飛沫同伴に伴う不純物(高沸不純物など)の混入を防止するため、線速度を小さく保つ(すなわち、フラッシュ系の気体が通過する部分の径を大きくする)のが好ましく、また、デミスター又は気液分離器などを設置してもよい。尚、線速度は、0.1〜3m/s、好ましくは0.2〜2m/s、さらに好ましくは0.3〜1.5m/s程度であってもよい。
[蒸留系(非フラッシュ蒸留系)又は蒸留工程]
第1のフラッシュ系で気化した留分は、さらに蒸留系に供給され、この蒸留系において、不純物と、主にカルボン酸(目的とするカルボン酸)を含むストリームとに分離される。
蒸留系は、少なくとも1つの蒸留装置(蒸留塔など)又は蒸留工程を含んでいればよく、単一の蒸留系(1つの蒸留装置又は蒸留工程)、もしくは複数の蒸留系を組み合わせた蒸留系(多段蒸留)であってもよい。工業的又はコストの点からは、通常、蒸留系を構成する蒸留装置又は工程の数は少ない方が好ましく、通常、1〜3つの蒸留装置又は工程、さらに好ましくは1又は2つの蒸留装置又は工程で構成してもよい。
蒸留系は、蒸留系に供給されるストリーム中の目的カルボン酸の濃度(純度)に比較して、蒸留系から得られるカルボン酸のストリーム中に含まれる目的カルボン酸の濃度(純度)を、向上可能である限り特に制限されず、慣用の非フラッシュ系の蒸留装置(例えば、蒸留器又は蒸留塔)などを備えている。蒸留系では、目的カルボン酸の沸点に比較して、低沸点の不純物(低沸不純物(共沸により沸点が目的カルボン酸に比較して低下する不純物も含む))と目的カルボン酸とを分離できればよく、低沸不純物及び目的カルボン酸の沸点に比較して高沸点の不純物と、目的カルボン酸とを分離してもよい。
このような非フラッシュ系の蒸留装置としては、例えば、蒸留缶(又は蒸留フラスコ)などの蒸留器、棚段塔(多孔板塔、泡鐘塔、キッテルトレイ塔、ユニフラックストレイ塔、リップルトレイ塔など)、充填塔などの蒸留塔などが例示できる。蒸留系が複数の蒸留装置を含む場合、同種の蒸留装置を組み合わせてもよく(例えば、泡鐘塔と泡鐘塔との組み合わせなど)、異種の蒸留装置を組み合わせてもよい(例えば、泡鐘塔と多孔板塔との組み合わせなどの異種の棚段塔の組み合わせ、泡鐘塔などの棚段塔と充填塔との組み合わせなど)。これらの蒸留装置のうち、蒸留塔を用いる場合が多い。
蒸留系における蒸留温度及び圧力は、目的とするカルボン酸並びに蒸留装置の種類や、第1のフラッシュ系から供給されるストリームの組成に応じて低沸不純物及び高沸不純物のいずれを重点的に除去するかなどの条件に応じて適宜選択できる。例えば、酢酸の精製を蒸留塔で行う場合、塔内圧力(通常、塔頂圧力)は、ゲージ圧力で、0.01〜1MPa、好ましくは0.02〜0.7MPa、さらに好ましくは0.05〜0.5MPa程度であってもよい。また、蒸留温度(蒸留塔では、塔内温度(通常、塔頂温度))は、装置内の圧力(塔内圧力など)を調整することにより調整でき、例えば、20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは100〜160℃程度であってもよい。
また、蒸留系が棚段塔や充填塔である場合、理論段は、特に制限されず、分離成分の種類に応じて、2〜80段、好ましくは5〜60段、さらに好ましくは7〜50段(例えば、10〜40段)程度であってもよい。
蒸留系において、還流比は、例えば、0.01〜3,000(例えば、0.05〜1000)、好ましくは0.07〜500(例えば、0.1〜100)、さらに好ましくは0.2〜50(例えば、0.25〜10)、特に0.3〜5(例えば、0.35〜2)程度から選択してもよい。なお、棚段塔や充填塔の場合、理論段数を多くして、還流比を低減してもよい。
蒸留塔などの蒸留装置を用いる場合には、塔頂などの蒸留装置の上部から低沸不純物を含むストリームが留出するため、目的カルボン酸を含むストリームは、蒸留塔からサイドカットにより側流(サイドストリーム)として抜き取ってもよく、塔底から抜き取ってもよい。なお、塔底などの蒸留塔の下部には高沸不純物が貯留し易いため、高沸不純物との分離効率の点からは、カルボン酸を含むストリームをサイドカットにより抜き取るのが有利である。また、蒸留装置の下部(底部など)から高沸不純物を含むストリーム(缶出液など)を回収してもよい。蒸留塔を用いる場合、第1のフラッシュ系から蒸留塔に供給されるストリームの供給位置(蒸留塔における供給口の位置(高さ))は、特に制限されないが、低沸不純物及び高沸不純物と、目的カルボン酸との分離効率の点からは、低沸不純物を含むストリームの留出口よりも下部(又は下段)であり、高沸不純物を含むストリームの抜き取り口(回収口)よりも上部(又は上段)である場合が多い。
蒸留装置(蒸留塔など)の下部から回収した高沸不純物を含むストリームは、そのまま廃棄してもよく、反応系又は第1のフラッシュ系にリサイクルしてもよい。また、リサイクルに先立って、不要な成分(目的カルボン酸の品質を低下させる成分など)、例えば、目的カルボン酸に対して高沸点又は低沸点を有するカルボニル不純物(炭素数n+2以上のカルボン酸(目的カルボン酸が酢酸である場合、プロピオン酸、クロトン酸など);アセトンなどのケトン;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどのアルデヒド;酢酸メチル、プロピオン酸メチル、クロトン酸メチルなどのエステル(原料アルコールと、生成又は副生するカルボン酸とのエステルなど)などを除去してもよい。
蒸留装置の上部から留出する低沸不純物を含むストリームは、そのまま回収してもよく、反応系又は蒸留装置にリサイクルしてもよい。リサイクルに際して、低沸不純物を含むストリームは、コンデンサーなどにより凝縮してもよく、凝縮後、デカンターなどにより複数相に分離してもよい。また、デカンターによる分離後、各相の構成成分の種類に応じて、反応系又は蒸留装置にリサイクルする成分を選択又は調整してもよい。例えば、デカンターにより有機相と水相とに分離した場合、水相の一部を蒸留塔に戻し、水相の残部及び有機相を反応系にリサイクルしてもよい。また、有機相の一部を蒸留塔に戻し、有機相の残部及び水相を反応系にリサイクルしてもよい。なお、蒸留系で分離された低沸不純物を含むストリーム(留分)は、リサイクルに先立って、不要な成分(例えば、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類など)を分離してもよく、不要な成分を分離することなくそのままリサイクルしてもよい。上記低沸不純物を含むストリームは、必要によりコンデンサーによる凝縮及び/又はデカンターによる分相後、低沸不純物に含まれるアルデヒドを分離又は除去するためのアルデヒド分離系に供するのが好ましい。
低沸不純物を含むストリームを蒸留装置(蒸留塔など)にリサイクルする場合、低沸不純物の分離効果を高めるため、精留作用を利用するのが好ましい。そのため、蒸留装置にリサイクルされる上記ストリームは、液状(すなわち、少なくとも凝縮された状態)であるのが好ましく、特に、蒸留装置内を上昇する気体成分との向流接触の効率を高める点から、蒸留装置の上部に液状のストリームを戻す(還流させる)のが好ましい。
蒸留系及びその周辺ユニットなどの蒸留系に関連する要素又はユニット(コンデンサー、デカンターなどのユニットの他、各ユニットを連結するラインなどの蒸留系に通じる各種ラインなど)の材質は、特に制限されず、慣用の材質、例えば、ガラス製、金属製、セラミック製のユニットなどが使用できる。本発明では、上記蒸留系及び要素又はユニットの材質は、金属製[前記例示の鉄合金製(ステンレス製など)、ニッケル又はハステロイB−2(登録商標)などのニッケル合金製、金属ジルコニウム又はその合金製、金属チタン又はその合金製など]である場合が多い。このような金属製蒸留系及び/又はユニットの腐食により金属含有不純物が生成する場合であっても、金属含有不純物を効率よく分離でき、純度の高い製品カルボン酸を製造することができる。
上記のように、蒸留系から得られる不純物を含むストリームのうち、低沸不純物を含むストリームには、目的カルボン酸よりも低沸点の不純物が含まれ、高沸不純物を含むストリームには、目的カルボン酸よりも高沸点の不純物が含まれる。例えば、目的カルボン酸が酢酸である場合、低沸不純物には、例えば、助触媒(ヨウ化水素、ヨウ化メチルなど)、微量のヨウ化アルキル(例えば、ヨウ化C2−3アルキルなど)などの他、低沸カルボニル不純物[ギ酸、カルボン酸エステル(ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチルなど)、水、アルデヒド(アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒドなど)など]が含まれ、高沸不純物には、例えば、ヨウ化アルキル(例えば、ヨウ化C4−15アルキルなど)、本発明の製造装置を構成する各種ユニット[金属製ユニット(例えば、反応系、フラッシュ系、蒸留系、コンデンサー、デカンター、及びこれらのユニットを連結するラインから選択された少なくとも一種のユニットなど)など]の腐食などにより生成した高沸不純物(金属含有不純物など)、高沸カルボニル不純物(例えば、プロピオン酸、クロトン酸などの酢酸より高次のカルボン酸など)などが含まれる。
本発明では、蒸留系は、上記のように、低沸不純物(及び高沸不純物)と、目的カルボン酸とを有効に分離できればよく、少なくとも1つの蒸留装置(蒸留塔など)を有している。また、蒸留系は、複数の蒸留装置(蒸留塔など)を有していてもよい。例えば、1つの蒸留装置(蒸留塔など)を含む蒸留系により前記不純物と目的カルボン酸との分離を行ってもよいが、フラッシュ系から供給されるストリームの組成に応じて、2つの蒸留装置[第1の蒸留装置(第1の蒸留塔など)と第2の蒸留装置(第2の蒸留塔など)との2つの蒸留装置(蒸留塔など)]を含む蒸留系により前記不純物と目的カルボン酸との分離を行ってもよい。好ましい態様では、蒸留系は少なくとも1つの蒸留塔を含んでおり、第1の蒸留塔と第2の蒸留塔との2つの蒸留塔を含んでいてもよい。
なお、蒸留系が、1つの蒸留塔を含む場合、低沸不純物と目的カルボン酸との分離効率の点から、目的カルボン酸の抜き取り位置(抜き取り口の高さ)は、上記供給口の位置よりも下部(又は下段)であるのが好ましい。
また、2つの蒸留装置を用いて前記不純物と目的カルボン酸とを分離する場合、第1の蒸留装置(蒸留塔など)で、上記と同様に、低沸不純物を含むストリームと、高沸不純物を含むストリームと、目的カルボン酸を含むストリームとを分離した後、第1の蒸留装置から得られる目的カルボン酸を含むストリームをさらに第2の蒸留装置(蒸留塔など)に供給し、この第2の蒸留装置において、第1の蒸留装置からのストリームに不可避的に含まれる不純物[特に、目的カルボン酸の沸点と近い沸点を有する不純物(例えば、目的カルボン酸が酢酸である場合、水、クロトンアルデヒドなど)など]を分離して、目的カルボン酸の純度をさらに向上させてもよい。
2つの蒸留装置を用いる場合であっても、各蒸留装置の条件や、ストリームの供給位置、回収又は抜き出し位置、回収したストリームや成分のリサイクルなどは、上記と同様に適宜選択(又は行うことが)できる。
2つの蒸留装置を用いる場合のうち、第1の蒸留装置(第1の蒸留塔)で、上記のように、低沸不純物及び高沸不純物と、カルボン酸を含むストリームとを分離した後、このカルボン酸を含むストリームを第2の蒸留装置(第2の蒸留塔)に供給し、この第2の蒸留装置で、低沸不純物を含むストリームと、目的カルボン酸を含むストリームとを分離するのが好ましい。このような場合、第2の蒸留装置では、低沸不純物は塔頂などの蒸留装置の上部から留出させてもよく、目的カルボン酸を含むストリームは、塔底などの蒸留装置の下部から回収してもよく、サイドカットにより側流として回収してもよい。
2つの蒸留塔を用いる場合、各蒸留塔における目的カルボン酸を含むストリームの供給位置及び抜き取り位置(回収位置)の関係は、各蒸留塔に供給されるストリームの組成や各蒸留塔の分離目的に応じて、適宜選択できる。例えば、第2の蒸留塔では、第1の蒸留塔からのストリームの供給口よりも下に位置する回収口(又は抜き取り口)から目的カルボン酸のストリームを回収してもよい。また、例えば、第1の蒸留塔において、第1のフラッシュ系からのストリームの供給口の位置よりも下に位置する回収口(抜き取り口)から目的カルボン酸を含むストリームを回収して(抜き取って)第2の蒸留塔に供給する場合、第2の蒸留塔における目的カルボン酸の回収口(抜き取り口)は、第2の蒸留塔におけるストリームの供給口の位置よりも下で、高沸不純物の回収口(抜き取り口)よりも上に位置していてもよい。また、第1の蒸留塔におけるストリームの供給口の位置よりも上に位置する回収口(抜き取り口)から目的カルボン酸を含むストリームを回収して(抜き取って)第2の蒸留塔に供給する場合、第2の蒸留塔における目的カルボン酸の回収口(抜き取り口)は、第2の蒸留塔におけるストリームの供給口よりも下に位置していればよく、塔底であってもよい(すなわち、第2の蒸留塔において高沸不純物の分離を行わなくてもよい)。
第2の蒸留塔が、主に低沸不純物の除去を目的とする場合も、第2の蒸留塔の温度、圧力、理論段、還流比などは、前記例示の範囲から選択でき、第1の蒸留塔における条件と同様であってもよいが、第2の蒸留塔に供給されるストリームの組成及び第2の蒸留塔から回収される目的カルボン酸の目標純度などに応じて、第1の蒸留塔における条件と第2の蒸留塔における条件とを適宜相違させてもよい。
例えば、酢酸の精製を棚段塔で行う場合、第1及び第2の蒸留塔の塔内圧力(通常、塔頂圧力)は、上記蒸留塔の塔内圧力と同様の範囲から適宜選択できる。第1の蒸留塔の塔内圧力は、例えば、ゲージ圧力で、0.07〜0.4MPa、好ましくは0.08〜0.3MPa、さらに好ましくは0.09〜0.2MPa程度であってもよく、第2の蒸留塔の塔内圧力(通常、塔頂圧力)は、ゲージ圧力で、0.07〜0.4MPa、好ましくは0.09〜0.3MPa、さらに好ましくは0.1〜0.25MPa程度であってもよい。また、蒸留塔の塔内温度(通常、塔頂温度))は、塔内圧力を調整することにより調整でき、第1の蒸留塔では、例えば、30〜180℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは100〜130℃程度であってもよく、第2の蒸留塔では、例えば、70〜200℃、好ましくは100〜180℃、さらに好ましくは110〜160℃程度であってもよい。
また、第1及び第2の蒸留塔が棚段塔又は充填塔である場合、第1及び第2の蒸留塔の理論段は、前記蒸留系の理論段で例示の範囲などから選択でき、第1の蒸留塔の理論段は、例えば、2〜30段、好ましくは3〜20段、さらに好ましくは5〜15段程度であってもよく、第2の蒸留塔の理論段は、例えば、5〜50段、好ましくは10〜40段、さらに好ましくは15〜35段程度であってもよい。
また、還流比は、第1及び第2の蒸留塔において、上記蒸留系の還流比で例示の範囲から適宜選択でき、第1の蒸留塔の還流比は、例えば、0.01〜10、好ましくは0.05〜5(例えば、0.07〜3)、さらに好ましくは0.1〜1.5程度から選択してもよく、第2の蒸留塔の還流比は、例えば、0.01〜30、好ましくは0.05〜20、さらに好ましくは0.1〜10(例えば、0.5〜7)程度から選択してもよい。
第2の蒸留装置の上部から留出する低沸不純物を含むストリームは、上記と同様に、そのまま回収してもよく、反応系及び/又は蒸留装置にリサイクルしてもよい。反応系にリサイクルする場合、第1の蒸留装置から得られる低沸不純物を含むストリームと、第2の蒸留装置から得られる低沸不純物を含むストリームとは、合流させてもよく、合流させることなく、別々に反応系にリサイクルしてもよい。第2の蒸留装置から得られる低沸不純物を含むストリームは、上記と同様に、反応系へのリサイクルに先立って、不要成分(アセトアルデヒドなどのアルデヒド類など)を分離してもよい。第1及び第2の蒸留装置からの低沸不純物を含むストリームを合流させる場合、合流前に、それぞれのストリームから不要成分を分離してもよく、合流後に不要成分の分離を行ってもよい。
なお、第1の蒸留装置と第2の蒸留装置とを連結するラインやその他の周辺ユニットなどの第2の蒸留装置に関連する各種ユニットの材質も、上記と同様に、特に制限されず、慣用の材料が使用でき、ステンレス製などの鉄合金製、ニッケル又はハステロイB−2(登録商標)などのニッケル合金製、金属ジルコニウム又はその合金製、金属チタン又はその合金製などであってもよい。
(アルデヒド分離系)
蒸留系で分離された低沸不純物を、反応系にリサイクルする(戻す)場合、上記のように、低沸不純物を含むストリームを、アルデヒド分離系に供し、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類を除去した後、反応系にリサイクルしてもよい。
アルデヒド分離系としては、慣用の分離手段、例えば、慣用の蒸留装置(上記例示の蒸留装置など)又は慣用の吸収装置などが利用でき、特に、蒸留塔(例えば、棚段塔、充填塔、フラッシュ蒸留塔など)、吸収装置又は抽出装置(例えば、塔型、槽型など)を用いてもよい。なお、蒸留塔では、アルデヒドを吸収可能な溶媒(水など)やアルデヒドと効率よく分離する有機溶媒(エーテル類、例えば、ジメチルエーテル(DME)などのジアルキルエーテルなど)を塔の上部から加え、塔の下部から上昇するアルデヒドを含む気体状のストリームと前記溶媒とを向流接触させることにより、効率よくアルデヒドを除去できる。また、吸収装置又は抽出装置では、水などのアルデヒドを吸収可能な溶媒と、アルデヒドを含むストリームとを混合、接触できればよく、塔型(例えば、Karr塔、スプレー塔、充填塔、多孔板塔、邪魔板塔、脈動塔など)であってもよく、槽型(撹拌機付き吸収又は抽出槽など)などであってもよい。
アルデヒド分離系の温度及び圧力は、アルデヒドを、他の低沸不純物(特にヨウ化メチルなどのアルキルハライド)から分離可能であれば特に制限されず、アルデヒド及び他の低沸不純物、並びに分離系(蒸留塔など)の種類などに応じて選択できる。
例えば、酢酸の精製において、アルデヒド分離系が蒸留塔又は吸収塔(特に、棚段塔又は充填塔など)である場合、塔頂圧力は、絶対圧力で、10〜1,000kPa、好ましくは50〜700kPa、さらに好ましくは80〜500kPa(例えば、100〜300kPa)程度であってもよい。また、塔内温度(塔頂温度)は、例えば、10〜150℃、好ましくは20〜130℃、さらに好ましくは30〜100℃程度であってもよい。
アルデヒド分離系が蒸留塔又は吸収塔(例えば、棚段塔又は充填塔など)である場合、理論段は、例えば、5〜80段、好ましくは6〜70段、さらに好ましくは8〜65段(例えば、10〜60段)程度であってもよい。また、還流比は、前記理論段数に応じて、1〜1,000、好ましくは10〜800、さらに好ましくは50〜600(例えば、100〜600)程度から選択できる。
なお、アルデヒド分離系において、水などの溶媒とアルデヒドを含むストリームとを接触させる場合、分離系に供給される溶媒の温度は、特に制限されないが、例えば、0.1〜50℃、好ましくは1〜30℃、さらに好ましくは5〜20℃(特に、7〜15℃)程度であってもよい。
なお、蒸留系から反応系へのリサイクル流に含まれるアルデヒドを除去すると、反応系における炭素数n+2以上のカルボン酸の副生を抑制することができ、蒸留系に供給されるカルボン酸を含むストリーム中の炭素数n+2以上のカルボン酸の濃度を大幅に低減することができる。反応系が炭素数nのアルカノールと一酸化炭素との反応系である場合、炭素数n+1以上のアルデヒド(例えば、メタノールと一酸化炭素との反応系に対しては、アセトアルデヒドなどの炭素数2以上のアルデヒド)などを除去することが有用である。さらに、アルデヒドの除去は、目的カルボン酸よりも炭素数が多いカルボン酸(例えば、目的カルボン酸が酢酸の場合、プロピオン酸などの炭素数3以上のカルボン酸)の生成を有効に抑制する。そのため、蒸留系に供給されるストリームの段階であっても、炭素数n+2以上のカルボン酸濃度を、目的カルボン酸の製品規格内にまで低減することもできる。従って、蒸留系を複数の蒸留装置(蒸留塔など)で構成する場合、第2の蒸留装置では、炭素数n+2以上のカルボン酸を分離してもよいが、特に積極的に分離しなくても炭素数n+2以上のカルボン酸濃度は十分に低い。そのため、炭素数n+2以上のカルボン酸をさらに分離するために、さらなる蒸留装置(第3の蒸留装置など)を設けなくてもよい。また、炭素数n+2以上の不飽和アルデヒド(目的カルボン酸が酢酸である場合、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなど)の生成量を低減できるため、オゾン処理等の特別な処理を行うことなく、過マンガン酸カリウム試験値を大幅に改善でき、例えば、製品規格の120分以上にすることもできる。また、ヨウ化アルキル類の生成を低減することもできるため、さらにイオン交換樹脂による処理に供する場合であっても、イオン交換樹脂の負荷を低減することができる。
なお、アルデヒド分離系又はその周辺ユニット(アルデヒド分離系に通じるラインなど)の材質も、特に制限されず、慣用の材質、例えば、ガラス製、金属製[前記例示の金属又は金属合金製(耐食性金属又は合金製など)、例えば、ステンレス製などの鉄合金製、ハステロイB−2(登録商標)などのニッケル合金製、金属ジルコニウム製、ジルコニウム合金製、金属チタン製、又はチタン合金製など)など]、セラミック製などであってもよい。
アルデヒド分離系での工業的処理方法としては、例えば、以下の方法などが挙げられる。
(1)蒸留系(例えば、第1及び/又は第2蒸留系)から、コンデンサーを経て流出されるオフガスを、脱アルデヒド塔(アルデヒド吸収塔)の下部に供給し、塔内で水と接触させて、オフガス中に含まれるアルデヒド(アセトアルデヒドなど)を吸収させ、得られた水溶液をアルデヒド吸収塔の塔底から廃液として抜き取る方法;(2)蒸留塔(例えば、第1の蒸留系)からコンデンサーを経て得られる凝縮液(有機相及び/又は水性相)の一部を脱アルデヒド塔の下部に供給し、塔底からヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル及び水などを含むストリームを反応器にリサイクルし、脱アルデヒド塔の塔頂部から抜き取ったストリームを脱アルデヒド塔の上部で還流して循環するとともに、アルデヒドを塔頂から分離する方法;(3)上記方法(2)において、脱アルデヒド塔の塔底からのストリームを、反応器にリサイクルすることなく、抽出ユニット(例えば、アルデヒド抽出塔)に導入してアルデヒドを水抽出した後、蒸留塔に導入してアルデヒドを除去する方法などが挙げられる。上記方法(3)では、脱アルデヒド塔の塔頂部からのストリームを脱アルデヒド塔の上部で還流しつつ、アルデヒドを塔頂から分離する必要はない。また、別の方法として、(4)蒸留系(例えば、第1の蒸留系)からの留出液及び/又はアルデヒドを含むプロセス液を抽出ユニット(例えば、アルデヒド抽出塔の下部)に供給して、アルデヒド(アセトアルデヒドなど)を水で抽出し、抽出したアルデヒド水溶液を別の蒸留塔に供給し、塔頂からアセトアルデヒドなどのアルデヒドを分離除去し、塔底からの缶出液(抽残液)を反応器にリサイクルまたは廃棄する方法などが挙げられる。抽出ユニットとしては、抽出塔(充填塔、例えば、ラシヒリング、カスケードリングなどの一般的な不規則充填物やスルーザーパックなどの一般的な規則充填物などの充填物が充填された充填塔、バッフル塔、多孔板塔など)などが使用できる。抽出ユニットの理論段数は、例えば、1〜4段(好ましくは2〜3段)程度であってもよい。また、抽出ユニットは、ミキサー・セトラータイプの装置(例えば、1〜4組のミキサー及びセトラーを備えた抽出装置)などであってもよい。さらには、抽出蒸留塔を利用してアルデヒドの水抽出と蒸留とを行い、アルデヒドを分離してもよい。
[不純物(金属含有不純物、カルボニル不純物(高沸カルボニル不純物など)、高級ハロゲン化物など)の除去]
本発明では、上記蒸留系で分離された主にカルボン酸(目的カルボン酸)を含むストリームを、さらに第2のフラッシュ系又は吸着系に供給して、精製されたカルボン酸を回収することにより、高純度のカルボン酸を製造する。第2のフラッシュ系又は吸着系に供することにより、金属含有不純物、さらには、高沸カルボニル不純物及び/又は高級ヨウ化物などを効果的に除去することができ、製品カルボン酸の着色を抑制できるとともに、純度を顕著に向上させることができる。特に、酸化処理することなく吸着系に供給することにより、ヨウ素イオンの除去効率を高めることができる。また、過マンガン酸カリウム試験値及び/又は重クロム酸カリウム試験値を大きく改善することもできる。
前記金属含有不純物には、(i)金属触媒、触媒安定剤及びこれらの失活物から選択された少なくとも一種、及び/又は(ii)金属製ユニットの腐食により生成した金属含有成分(不純物)が含まれる。第2のフラッシュ系又は吸着系では、飛沫により混入した前者の金属含有不純物(i)を除去してもよいが、主に後者の金属含有不純物(ii)の分離を目的とする場合が多い。
なお、上記金属製ユニットには、本発明の製造装置を構成する各種要素又はユニットのうち、金属製の要素又はユニット、例えば、前記例示の各種ユニット、すなわち、反応系、第1のフラッシュ系、蒸留系、コンデンサー、デカンター、第2のフラッシュ系、吸着系などのユニットの他、これらのユニットに通じる又はこれらのユニットを連結するラインなどの各種ユニットから選択された少なくとも一種が含まれる。
これらのユニットのうち、反応系、第1のフラッシュ系、及び反応系と第1のフラッシュ系とを連結するライン(ストリームの供給ライン)から選択された少なくとも1つが金属製[前記例示の金属又は金属合金製(耐食性金属又は合金製など)、例えば、ステンレス製などの鉄合金製、ハステロイB−2(登録商標)などのニッケル合金製、金属ジルコニウム製、ジルコニウム合金製、金属チタン製、又はチタン合金製など)など]、好ましくはニッケル合金製、ジルコニウム又はその合金製、もしくはチタン又はその合金製などであってもよい。また、反応系、第1のフラッシュ系、蒸留系、反応系と第1のフラッシュ系とを連結するライン(ストリームの供給ライン)、第1のフラッシュ系と蒸留系とを連結するライン(ストリームの供給ライン)、及び蒸留系と第2のフラッシュ系又は吸着系とを連結するライン(ストリームの供給ライン)から選択された少なくとも1つが金属製(特に、ステンレス製、例えば、オーステナイト系ステンレス製など)であってもよい。
金属製ユニットの腐食により生成する不純物(金属含有不純物など)には、ユニットの材質やストリームの含有成分の種類などにもよるが、例えば、各種金属元素を含む化合物(酸化物、ヨウ化物、塩化物などのハロゲン化物など)、塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸塩、酢酸塩などの有機酸塩(カルボン酸塩など)など)などが含まれる。前記金属元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属;チタン、アルミニウムなどの軽金属類(主に比重5未満の金属など)の他、重金属類(主に比重5以上の金属など)、例えば、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、鉛などが挙げられる。金属元素としては、遷移金属元素(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4族金属元素;バナジウム、ニオブ、タンタルなどの周期表第5族金属元素;クロム、モリブデン、タングステンなどの周期表第6族金属元素;マンガンなどの周期表第7族金属元素;鉄、ルテニウムなどの周期表第8族金属元素;コバルト、ロジウムなどの周期表第9族金属元素;ニッケル、パラジウム、白金などの周期表第10族金属元素;銅、銀などの周期表第11族金属元素など)、典型金属元素(例えば、前記例示のアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素;亜鉛などの周期表第12族金属元素;アルミニウムなどの周期表第13族金属元素など)なども例示できる。金属含有不純物は、これらの金属元素のうち、1種の金属元素を含んでいてもよく、複数の金属元素を含んでいてもよい。
金属含有不純物には、上記遷移金属元素及び/又は重金属元素が含まれる場合が多く、金属製ユニットの材料として、ステンレス鋼などが利用される場合、金属含有不純物には、鉄元素が含まれ、鉄元素と共に、チタン、ニオブ、タンタル、マンガン、クロム、モリブデン、ニッケル及び/又はアルミニウムが含まれていてもよい。また、金属製ユニットの材料として、ニッケル合金などが利用される場合、金属含有不純物には、ニッケルの他、クロム、モリブデン、鉄、タンタル、マンガン、アルミニウム、アルカリ金属、及び/又はアルカリ土類金属などが含まれている場合が多い。
なお、高沸カルボニル不純物としては、前記例示の高沸カルボニル不純物(特に、目的カルボン酸よりも高次のカルボン酸など)が例示できる。
また、高級ハライドとしては、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化デシルなどのC4−12アルキルハライド(特に、ヨウ化C4−12アルキルなど)などが挙げられる。
[第2のフラッシュ系(又は工程)]
第2のフラッシュ系では、前記蒸留系から供給された主にカルボン酸を含むストリームを、気化により、揮発性(高揮発性)の成分(すなわち、精製された目的カルボン酸のストリーム)と、低揮発性又は不揮発性の成分(特に、前記金属含有不純物、高沸カルボニル不純物、高級ハライドなどの高沸不純物など)とに分離する。
第2のフラッシュ系としては、特に制限されず、前記第1のフラッシュ系の項で例示の慣用のフラッシュ機器又は装置(フラッシュ蒸留塔、フラッシュ蒸発器など)が利用できる。また、第2のフラッシュ系は、リボイラーやジャケットを備えていてもよく、慣用の加熱管(例えば、外部循環式加熱管など)などを備えていてもよい。第2のフラッシュ系に供給されるカルボン酸のストリームでは、第1のフラッシュ系及び蒸留系により不純物(低沸(高揮発性)不純物及び高沸(低揮発性又は不揮発性)不純物など)、特に低沸不純物が高度に除去されている。そのため、第2のフラッシュ系では、少なくとも目的カルボン酸をフラッシュ蒸発させ、低揮発性又は不揮発性である金属含有不純物、高沸カルボニル不純物、高級ハライドなどを除去することができればよい。このような点からは、フラッシュ蒸発器などの簡易なフラッシュ装置を用いても、金属含有不純物を効果的に除去することができる。
第2のフラッシュ系では、第1のフラッシュ系と同様に、加熱してもよく、加熱することなく蒸気成分と液体成分とを分離してもよい。また、断熱フラッシュ、恒温フラッシュのいずれであってもよい。
第2のフラッシュ系におけるカルボン酸のストリームの供給位置(供給口の位置又は高さ)は特に制限されず、フラッシュ系(装置)の種類などに応じて適宜選択できる。
第2のフラッシュ系(フラッシュ蒸発器など)の温度は、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは80〜180℃程度であってもよい。また、圧力は、絶対圧力で、5〜1,000kPa、好ましくは10〜800kPa、さらに好ましくは20〜500kPa程度であってもよい。
第2のフラッシュ系の温度と、圧力とは、減圧フラッシュ、恒温フラッシュのどちらを行うかに応じて、上記の範囲からそれぞれ適宜組み合わせることができる。例えば、55〜220℃(好ましくは65〜190℃)程度の温度及び10〜1,000kPa(好ましくは20〜600kPa)程度の圧力(絶対圧力)の第2のフラッシュ系に、蒸留系からカルボン酸を含むストリームを供し、カルボン酸を気化させて、高沸(低揮発性又は不揮発性)不純物とカルボン酸とを分離してもよい。例えば、目的カルボン酸が酢酸である場合、例えば、70〜200℃(好ましくは75〜190℃)程度の温度と、20〜600kPa(好ましくは30〜600kPa)程度の圧力(絶対圧力)とを組み合わせてもよい。
第2のフラッシュ系で分離された低揮発性又は不揮発性成分(金属含有不純物など)は、フラッシュ蒸留塔や蒸発器などのフラッシュ系の下部(又は底部)からそのまま回収し、廃棄してもよく、他の用途に再利用してもよい。
このように第2のフラッシュ系では、金属含有不純物(特に、前記金属製ユニットの腐食などにより生じた金属含有不純物など)、高沸カルボニル不純物、高級ハライドなどが高度に除去され、精製された目的カルボン酸を第2のフラッシュ系の上部(又は頂部)から得ることができる。
[吸着系(又は工程)]
吸着系では、前記蒸留系から供給された主にカルボン酸を含むストリームから、前記金属含有不純物、前記高沸カルボニル不純物、前記高級ハライドなどの高沸(低揮発性又は不揮発性)不純物を吸着剤に吸着させて、精製されたカルボン酸を得る。すなわち、蒸留系で分離された主にカルボン酸を含むストリームを、固体強酸化剤などの吸着剤で酸化処理することなく吸着剤と接触させることにより上記不純物を吸着剤に吸着させ、不純物とカルボン酸とを分離する。なお、吸着は、イオン交換樹脂を用いるイオン交換とは分離原理が相違するため、本発明における吸着系には、イオン交換樹脂を用いる分離系(装置又は工程)は含まれない。
前記吸着剤としては、慣用の吸着剤が使用でき、蒸留系から供給されるカルボン酸ストリーム中に含まれる不純物の種類に応じて、吸着剤の種類を適宜選択できる。吸着剤としては、多孔質固体、例えば、活性炭、ゼオライトなどの他、シリカ、アルミナ、チタニアなどの金属酸化物なども例示できる。吸着剤は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、臭素酸カリウムなどの固体強酸化剤を吸着剤として用いると、カルボン酸を含むストリーム中のヨウ素イオンを、吸着には適さないヨウ素(I2)に酸化するためか、カルボン酸流のヨウ素イオンを除去するためには有効ではない。そのため、本発明での吸着剤又は吸着系は、特許文献3及び4と異なり、酸化処理することなく吸着処理し、固体強酸化剤又は固体強酸化剤を用いた吸着塔を含まない。
なお、有機溶剤類の吸着には、強い親和性を持ち、水分の存在下でも高い吸着性能を持つ活性炭を使用するのが一般的である。活性炭は、硫黄化合物や金属化合物の吸着にも有効であり、工業的に広く利用されている。また、前記シリカゲルやゼオライトは、特に、極性の強い溶剤の吸着に有効である。吸着剤としての多孔質固体では、一般に、比表面積、細孔容積が大きいものが高い吸着性能を有する。
吸着剤の形状は、特に制限されず、粉末状、粒状(ビーズ状など)、フレーク状、繊維状、成形体状(ハニカム状など)などが例示できる。
吸着系に使用される吸着ユニット(吸着装置又は吸着器)は、特に制限されず、慣用の吸着装置が使用でき、例えば、接触ろ過装置、固定層吸着装置、移動層吸着装置などが例示できる。精製されたカルボン酸を連続的に製造する点からは、固定層又は移動層吸着装置(特に、移動層吸着装置)を利用するのが有利である。
吸着系に供給されるカルボン酸を含むストリームは、液体であってもよく、気体であってもよい。吸着系の温度の下限は、目的とする炭素数n+1のカルボン酸の凝固点(酢酸の場合、17℃)である。また、上限は、吸着系の耐熱温度であるが、一般に、200℃以下の温度で処理すればよい。連続流通式の吸着系では、吸着系を通過するストリームの流速及び/又は1時間(毎時)当たりの床容積を適宜調整し、境膜拡散抵抗の影響を小さくするのが一般的であるが、使用される吸着剤の特性、除去される不純物の種類、特性及び濃度などに応じて、適宜、経済的に有利な条件を採用することもできる。
[他の不純物の分離]
第2のフラッシュ系又は吸着系から得られる精製されたカルボン酸のストリームは、そのまま製品カルボン酸として利用してもよく、さらに、微量の不純物を分離又は除去するための分離系(分離工程)に供してもよい。このような分離系としては、除去する不純物の種類などに応じて、慣用の手段、例えば、蒸留手段、吸収手段、吸着手段、イオン交換手段などが利用できる。
特に、第2のフラッシュ系又は吸着系から得られる精製されたカルボン酸のストリームには、目的カルボン酸の沸点に比較して、高沸点又は近沸点を有するアルキルハライドなどのハロゲン化物(例えば、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化アルキル(例えば、ヨウ化C2−15アルキルなど)など)が含まれる場合がある。そのため、このようなハロゲン化物を分離するため、イオン交換処理を行ってもよい。
(イオン交換系又は工程)
イオン交換系では、上記第2のフラッシュ系又は吸着系から回収されたカルボン酸を含むストリームを、イオン交換樹脂で処理して、不純物(主に上記ハロゲン化物)を分離する。
前記イオン交換樹脂としては、ハロゲン化物除去能を有する限り、特に制限されず、慣用のイオン交換樹脂が使用でき、少なくとも一部の活性部位(通常、スルホン基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、ホスホン基などの酸性基など)を、金属で置換又は交換したイオン交換樹脂(通常、カチオン交換樹脂)を使用してもよい。
前記金属としては、例えば、銀、水銀及び銅から選択された少なくとも一種などが使用できる。ベースとなるカチオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂及び弱酸性カチオン交換樹脂のいずれであってもよいが、強酸性カチオン交換樹脂(例えば、マクロレティキュラー型イオン交換樹脂など)が好ましい。
前記イオン交換樹脂において、例えば、活性部位の10〜80モル%、好ましくは25〜75モル%、さらに好ましくは30〜70モル%程度が、前記金属で交換されていてもよい。
イオン交換系を用いたイオン交換手段(又は装置)としては、イオン交換樹脂を内部に有する慣用のイオン交換装置などが使用でき、例えば、イオン交換樹脂を内部に充填した充填塔、イオン交換樹脂の床(例えば、粒状の形態の樹脂を有する床)(ガードベッド)などを備えた塔などが例示できる。
イオン交換系では、カルボン酸のストリームと前記イオン交換樹脂とを接触できればよいが、イオン交換樹脂として少なくとも上記の金属交換イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。また、上記の金属交換イオン交換樹脂以外の他のイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、ノニオン交換樹脂など)と、上記金属交換イオン交換樹脂とを組み合わせて用いてもよい。両イオン交換樹脂を組み合わせる場合、両樹脂の混合物を用いてもよく、各樹脂の層を内部に有するイオン交換系(塔など)を用いてもよく、金属交換イオン交換樹脂を備えたユニット(塔など)と、他のイオン交換樹脂を備えたユニット(塔など)とを含むイオン交換系を用いてもよい。
第2のフラッシュ系又は吸着系から供給されるカルボン酸のストリームは、気体又は液体状で、イオン交換樹脂に少なくとも接触させればよいが、液体状のストリームをイオン交換樹脂に接触させるのが好ましい。特に、第2のフラッシュ系又は吸着系からのカルボン酸のストリームは、コンデンサーなどにより凝縮して液化し、液体状のストリームをイオン交換樹脂に通液するのが好ましい。
カルボン酸のストリームとイオン交換樹脂との接触(又は通液)において、必要に応じて、昇温下でカルボン酸のストリームをイオン交換樹脂で処理してもよい。また、イオン交換系の温度は、段階的に昇温してもよい。昇温することにより、金属交換イオン交換樹脂を用いる場合であっても、前記金属の流出を防止しつつ、ハロゲン化物[特に、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ネオペンチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C4−15アルキル(好ましくはヨウ化C5−10アルキルなど)]を効率よく除去できる。
イオン交換系の温度(塔内温度など)は、例えば、17〜100℃、好ましくは18〜80℃(例えば、20〜70℃)、さらに好ましくは30〜65℃(例えば、40〜60℃)程度であってもよい。なお、イオン交換系の温度は、連続的に、特に段階的に上昇させるのが好ましい。例えば、運転初期は、比較的低い温度(例えば、17〜35℃程度)でストリームとイオン交換樹脂とを接触させて、銀及び/又は水銀の流出量を少なく維持しつつ、イオン交換樹脂の有効利用率を高め、イオン交換樹脂床を最大限に利用するまでの間(すなわち、破過する(又は貫流点に到達する)までの間)、ハロゲン化物(ヨウ化物など)を除去するのが好ましい。次いで、イオン交換系の温度を、2段階目の温度(より高温、例えば、40〜45℃程度)に上昇させて、吸着帯長さを短縮させ、及び吸着帯移動速度を小さくする。すなわち、イオン交換効率の向上、破過までの時間である樹脂寿命の延命、使用率の向上を行うのが好ましい。なお、このような効果は、吸着系の温度が上がるにつれて、大きくなる。しかし、温度の上昇に伴って、銀及び/又は水銀の流出による損失(流出ロス)量も大きくなるため、2段階目の温度としては、初期温度に比較し、約10℃程度(例えば、5〜15℃、好ましくは7〜13℃、さらに好ましくは8〜12℃程度)上昇させるのが有利である。さらに、この2段階目の昇温と同様にして、第3段階目、第4段階目というように、段階的に、順次昇温を繰り返すことにより、イオン交換樹脂の劣化、並びに銀及び/又は水銀の流出を、低く抑制しつつ、ハロゲン化合物の除去効率、イオン交換樹脂、銀及び水銀の使用率(使用効率)を大幅に改善することができる。
カルボン酸のストリームを通液させる速度(通液速度)は特に制限されないが、例えば、ガードベッドを利用する塔では、例えば、3〜15床容積/h、好ましくは5〜12床容積/h、さらに好ましくは6〜10床容積/h程度であってもよい。
本発明の方法では、金属含有不純物、カルボニル不純物、ハロゲン化物などの不純物を高度に除去することができ、高純度の製品カルボン酸(酢酸など)を製造できる。このような高純度の製品カルボン酸は、過マンガン酸カリウム試験値及び/又は重クロム酸カリウム試験値が大きく改善されている。例えば、過マンガン酸カリウム試験値は、製品規格で要求される120分以上はもとより、160分以上(例えば、170〜500分程度)、好ましくは180分以上(例えば、190〜450分程度)、さらに好ましくは200分以上(例えば、210〜430分程度)に改善できる。また、重クロム酸カリウム試験値は、例えば、120分以上(例えば、130〜300分程度)、好ましくは140分以上(例えば、140〜250分程度)、さらに好ましくは145分以上(例えば、145〜200分程度)に改善できる。
製品カルボン酸は、上記の過マンガン酸カリウム試験値の範囲及び重クロム酸カリウム試験値の範囲の少なくともいずれか一方の範囲を充足するのが好ましく、特に、両方の試験値が、いずれも上記の範囲であるのが好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
比較例1
反応液量10Lの撹拌槽型反応器(攪拌機付きオートクレーブ;反応器の材質:Haynes International社製、ハステロイB−2(登録商標)、ニッケル合金)を用いて、反応圧力2.76MPaG、反応温度186.8℃にて、連続実験を行った。反応液の組成は、水濃度3.9重量%、酢酸メチル濃度2.5重量%、ヨウ化メチル濃度11.9重量%、LiI濃度14.8重量%、Rh濃度1670ppmであった。また、反応器気相部のH2分圧は0.050MPaであり、酢酸STY(空時収量)は27.8mol/L・hであった。
上記の反応器から得られる反応液を用い、図2のフローにおいて、第2のフラッシュ系(フラッシュ蒸発器)を使用せずに運転を行い、酢酸生成物の評価を行った。すなわち、前記反応液を、連続的に、第1のフラッシュ系(攪拌機なしのフラッシュ蒸発槽)の中央付近(高さ方向の中央部)に供給し、断熱フラッシュを行った。フラッシュ蒸発槽の頂部から、気化した酢酸を含む留分(ストリーム)を留出させ、蒸留系(蒸留塔:充填塔、ジルコニウム製充填物(三井物産(株)販売「テクノパック」)、理論段38段、塔頂圧力0.14MPaG(ゲージ圧)、塔頂温度115℃)の下から26段目に供給し、塔頂から不純物を分離するとともに、下から1段目から主に酢酸を含むストリームを回収した。蒸留塔の塔頂から分離された不純物を含む留分を、さらにコンデンサーに供給して凝縮(液化)し、凝縮液の一部を蒸留塔の上から1段目に還流させる(還流により蒸留塔に戻す)とともに、残部を反応器にリサイクルした。還流比は、0.7であった。前記蒸留塔の塔頂から分離された留分には、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などが、不純物として含まれていた。
なお、この比較例では、前記凝縮液の残部は、脱アセトアルデヒド(AD)処理することなく反応器にリサイクルした。また、蒸留塔から得られた酢酸を含むストリームは、イオン交換樹脂などの処理を行うことなく、そのまま製品酢酸として回収し、製品酢酸の評価を行った。
実施例1
比較例1と同様に、反応及び酢酸の精製処理を連続的に行った。ただし、この実施例では、図2のフローに示すように、蒸留塔から回収した酢酸を含むストリームを、フラッシュ蒸発器(外部循環式加熱管付きフラッシュ蒸発器(なお、図2中では、外部循環式加熱管は省略した)、常圧、温度118℃)の側部に形成された供給口から蒸発器内部に供給し、外部循環式加熱管により気化した酢酸を含むストリームを蒸発器の頂部から抜き取り、凝縮器で液化させた。液化された酢酸を含むストリームは、イオン交換樹脂などの処理を行うことなく、そのまま製品酢酸として回収し、製品酢酸の評価を行った。
比較例1及び実施例1の結果を表1に示す。
比較例2
反応温度を185.7℃に変更し、反応成分の割合を適宜変更する以外は、比較例1と同様に連続反応を行った。反応液の組成は、水濃度2.3重量%、酢酸メチル濃度5.4重量%、ヨウ化メチル濃度12.1重量%、LiI濃度21.0重量%、Rh濃度1900ppmであった。また、反応器気相部のH2分圧は、0.004MPaであり、酢酸STYは26.6mol/L・hであった。
上記の反応器から得られる反応液を用いる以外は、比較例1と同様に酢酸の精製処理を連続的に行った。
実施例2
比較例2と同様に、反応及び酢酸の精製処理を連続的に行った。ただし、この実施例では、図2のフローに示すように、蒸留塔から回収した酢酸を含むストリームを、フラッシュ蒸発器(外部循環式加熱管付きフラッシュ蒸発器(なお、図2中では、外部循環式加熱管は省略した)、常圧、温度118℃)の側部に形成された供給口から蒸発器内部に供給し、外部循環式加熱管により気化した酢酸を含むストリームを蒸発器の頂部から抜き取り、凝縮器で液化させた。液化された酢酸を含むストリームは、イオン交換樹脂などの処理を行うことなく、そのまま製品酢酸として回収し、製品酢酸の評価を行った。
比較例2及び実施例2の結果を表2に示す。
比較例3
反応温度を187.6℃に変更し、反応成分の割合を適宜変更する以外は、比較例1と同様に連続反応を行った。反応液の組成は、水濃度4.2重量%、酢酸メチル濃度2.1重量%、ヨウ化メチル濃度8.9重量%、LiI濃度10.2重量%、Rh濃度900ppmであった。また、反応器気相部のH2分圧は0.064MPaであり、酢酸STYは12.0mol/L・hであった。
上記反応器から得られる反応液を用い、図3のフローにおいて、第2のフラッシュ系(フラッシュ蒸発器)を使用せずに運転を行い、酢酸生成物の評価を行った。
すなわち、前記反応液を、連続的に、第1のフラッシュ系(攪拌機なしのフラッシュ蒸発槽)の中央付近(高さ方向の中央部)に供給し、断熱フラッシュを行った。フラッシュ蒸発槽の頂部から、気化した酢酸を含む留分(ストリーム)を流出させ、第1の蒸留系(第1の蒸留塔:棚段塔、理論段10段、塔頂圧力0.14MPaG(ゲージ圧)、塔頂温度115℃)の下から2段目に供給し、塔頂から不純物を分離するとともに、下から5段目から主に酢酸及び水を含むストリームを回収した。
第1の蒸留塔の塔頂から分離された不純物を含む留分を、さらにコンデンサーに供給して凝縮(液化)し、凝縮液の一部を蒸留塔の上から1段目に還流させる(還流により蒸留塔に戻す)とともに、残部を反応器にリサイクルした。第1の蒸留塔での還流比は、0.4であった。前記第1の蒸留塔の塔頂から分離された留分には、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒドなどが、不純物として含まれていた。
前記第1の蒸留塔から回収された酢酸及び水を含むストリームは、さらに第2の蒸留系(第2の蒸留塔:棚段塔、理論段25段、塔頂圧力0.18MPaG(ゲージ圧)、塔頂温度135℃)の下から16段目に供給し、塔頂から水を含む留分を分離するとともに、塔底から主に酢酸を含むストリームを回収した。
前記第2の蒸留塔の塔頂から分離された水を含む留分には、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒドなども微量に含まれていた。第2の蒸留塔の塔頂からの留分は、さらにコンデンサーに供給して凝縮(液化)し、凝縮液の一部を第2の蒸留塔の上から1段目に還流させる(還流により蒸留塔に戻す)とともに、残部を第1の蒸留塔からのリサイクルストリームと合流させて反応器にリサイクルした。第2の蒸留塔での還流比は、4であった。
なお、第2の蒸留塔から得られた酢酸を含むストリームは、イオン交換樹脂などの処理を行うことなく、そのまま製品酢酸として回収し、製品酢酸の評価を行った。
ただし、この比較例では、第1の蒸留塔から、コンデンサーを経て流出されるオフガス(図3では省略している)を、脱アセトアルデヒド塔(アルデヒド吸収塔:ステンレス(SUS316L)製、理論段数7段、塔頂圧力0.12MPaG(ゲージ圧))の下部に供給し、水(10℃)と向流接触させて、オフガス中に含まれるアルデヒド(アセトアルデヒドなど)を水に吸収させ、得られる水溶液を、アルデヒド吸収塔の塔底から、廃液として抜き取った。抜き取った廃液中に含まれるアセトアルデヒド量は、約2.6g/hであった。
実施例3
比較例3と同様に、反応及び酢酸の精製処理を連続的に行った。ただし、この実施例では、図3のフローに示すように、第2の蒸留塔から回収した酢酸を含むストリームを、フラッシュ蒸発器(外部循環式加熱管付きフラッシュ蒸発器(なお、図3中では、外部循環式加熱管は省略した)、常圧、温度118℃)の側部に形成された供給口から蒸発器内部に供給し、外部循環式加熱管により気化した酢酸を含むストリームを蒸発器の頂部から抜き取り、凝縮器で液化させた。液化された酢酸を含むストリームは、イオン交換樹脂などの処理を行うことなく、そのまま製品酢酸として回収し、製品酢酸の評価を行った。
比較例3及び実施例3の結果を表3に示す。
比較例4
反応温度を187.2℃に変更し、反応成分の割合を適宜変更する以外は、比較例3と同様に連続実験を行った。反応液の組成は、水濃度2.5重量%、酢酸メチル濃度2.0重量%、ヨウ化メチル濃度8.5重量%、LiI濃度13.5重量%、Rh濃度870ppmであった。また、反応器気相部のH2分圧は、0.063MPaであり、酢酸STYは12.0mol/L・hであった。
実施例4
比較例4と同様に、反応及び酢酸の精製処理を連続的に行った。ただし、この実施例では、図3のフローに示すように、第2の蒸留塔から回収した酢酸を含むストリームを、フラッシュ蒸発器(外部循環式加熱管付きフラッシュ蒸発器(なお、図3中では、外部循環式加熱管は省略した)、常圧、温度118℃)の側部に形成された供給口から蒸発器内部に供給し、外部循環式加熱管により気化した酢酸を含むストリームを蒸発器の頂部から抜き取り、凝縮器で液化させた。液化された酢酸を含むストリームは、イオン交換樹脂などの処理を行うことなく、そのまま製品酢酸として回収し、製品酢酸の評価を行った。
比較例4及び実施例4の結果を表4に示す。
実施例5
比較例2と同様に、図2のフローに準じて、反応及び酢酸の精製処理を連続的に行った。ただし、この実施例では、図2のフローにおいて、酢酸を含むストリームを蒸留塔の塔底から缶出液として取り出し、フラッシュ蒸発器を使用せずに、撹拌機付きガラス製フラスコ(容量1L)に回収した。フラスコに回収した缶出液0.5Lに対して、粉末状活性炭(クラレケミカル(株)製、クラレコール活性炭KW10−32)を10g投入し、温度25℃及び撹拌速度(回転速度)100rpmの条件下で、1時間撹拌した。次いで、撹拌を停止し、活性炭を沈降させ、速やかに上澄み液をサンプリングして、他の実施例及び比較例と同様に評価を行った。結果を比較例2のデータと対比させて、表5に示す。
なお、実施例及び比較例において、表1〜表5に記載の各特性は、JISに規定の方法に従って評価した。