JP6403536B2 - 注出器 - Google Patents
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Description
このペーストの漏れ出しは、ペーストの注出量の定量性を損なう他、必要外の箇所で落滴して周囲を汚す原因にもなり改善が望まれていた。
特許文献1の注出器は、弾性シールリングのよれに起因するペーストの漏れ出しを課題とし、注出器のプランジャの先端近傍に環状凹溝を形成しており、該環状凹溝には、外周縁がシリンダ部材の内周壁と当接し、且つ後壁面に複数の突部が周方向に形成された弾性を有する弾性シールリングが装着されている。
このように、弾性シールリングの後壁面の突部が、環状凹溝の後側壁面に圧接されると、該弾性シールリングは、上記後壁面の中央付近で、突部により部分的に支持された状態になる。したがって、ペーストの内圧のさらなる高まりにより、弾性シールリングの外周縁がシリンダの後端開口部側へよっても、そのよりの程度が適度に抑制されることによって、よりに起因する空気の巻き込みが抑制される。
しかしながら、特許文献1の注出器は、シリンダ内へのペーストを充填する際に、一般の弾性シールリングと同様に空気が抜け辛く、シリンダ内に空気が残ったような場合は、押出し停止後にシリンダ先端部からペーストが漏れだすおそれがある。
特許文献2の注出器は、弾性シールリングがよれたような場合に、エア抜き溝より先端部側に弾性シールリングが位置する状態を想定すると、エア抜き溝による空気の流通が閉ざされ、エア抜き溝が効果を発揮せず、シリンダ内に空気が残る。シリンダ内に空気が残ることによって、押出し停止後にシリンダ先端部からペーストが漏れだすおそれがある。
このように、特許文献1や特許文献2の注出器にもそれぞれ、今なお、改善の余地がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、上述の特許文献1及び特許文献2のペースト漏れ防止の技術をさらに改善して、より好適にペーストの充填室から空気抜きを促進するとともにペーストの漏れを防止する注出器を提供することを目的とする。
前端に流体の注出口が形成され、後端に開口部が形成されているシリンダと、
該シリンダの前記開口部から挿嵌され、流体の充填室を前記シリンダとともに形成するプランジャと、
該プランジャに装着され、前記充填室側と前記開口部側への流体の流通を阻止する弾性シールリングとを備え、
前記プランジャには、前記プランジャの前進時に流体を押圧する押圧部と、該押圧部の後側に隣接し、前記弾性シールリングを装着する環状凹溝とを備えた注出器において、
前記弾性シールリングには、前記シリンダの軸方向に一端側から他端側へ抜ける開閉溝若しくは開閉孔が形成され、
前記充填室への流体の注入時に、前記開閉溝若しくは開閉孔が空気の流通を許容し、前記流体の注出時には、前記弾性シールリングの弾性変形によって、前記開閉溝若しくは開閉孔が閉塞し、前記流体の流通を阻止するようにした注出器が提供される。
前記注出器の前記環状凹溝のシリンダ軸方向における溝幅の長さは、弾性シールリングのシリンダ軸方向における幅よりも大きく形成されていることが好ましい。
前記注出器の弾性シールリングは、横断面が四角形であり、前記シリンダの軸方向における前端側及び後端側は平面であるのが好適である。
前記注出器の前記弾性シールリングの後端側には、前記環状凹溝の後端面側に突出する突起を形成することが好ましい。
前記注出器の前記弾性シールリングのショア硬度が30〜95の範囲であることが好ましい。前記注出器は、前記流体が歯科用のペースト材であることが好ましい。
図1は、ペースト注出器1の代表的態様の断面図、図2はペースト注出器1のシリンダ2の断面図、図3はペースト注出器1のプランジャ3の断面図である。
これらの図を参照にして、ペースト注出器1は、シリンダ2とプランジャ3とを備えている。シリンダ2は、断面が円形でかつ内部が中空であり、先端(前端)にはペーストの注出口5がノズル状に突出している。注出口5には外部からペーストを注入した後、目的部へペーストを注出するためのノズル本体4が装着されている。通常、ノズル本体4はチップ状の別部材として、シリンダ2の本体部に装着して使用する構造としている。
また、シリンダ2の後部には後端開口部6が設けられ、後端開口部6にはプランジャ3が挿嵌されている。
ペースト注出器1の材質は、特に制限されるものではなく、金属やガラス等であっても良いが、通常は、プラスチック、例えばポリプロピレン、ナイロン、テフロン(登録商標)等が採用される。先端のノズル本体4については、プラスチックや金属製であっても良い。
シリンダ2の内口径は5〜10mmであるのが一般的であり、シリンダ2の先端近くは、ペーストが定量的に注出できるように、テーパ面7を経て縮径されているのが好ましい。すなわち、シリンダ2の先端近くは、細い円柱筒状、或いはゆるやかなテーパを有する逆円錐形状をしているのが好ましい。なお、テーパ面7は、シリンダ2の軸方向に対して断面形状が直角に形成されていても良いが、充填されるペーストがなだらかに流動し易いようにテーパ状であるのが好ましい。
ペースト注出器1において、ノズル本体4の先端部にはノズル10が形成され、ノズル10の内口径は0.1〜2.0mm、より好適には0.3〜1.5mmの場合において本発明の効果が良好に発揮され易く好ましい。ノズル10の長さは1〜30mmが一般的であり、この長さにおいて、図1に示すようにノズル10の先端は途中で屈曲させてあってもよい。
本実施形態では、環状凹溝14のシリンダ軸方向に対する長さは、弾性シールリング15のシリンダ軸方向に対する長さよりも少し長く形成されている。
このような基本構造のペースト注出器1において、そのシリンダ2のテーパ面7とプランジャ3の先端部との間に形成される充填室9には、ペーストが充填される。
図4を参照にして、環状凹溝14は、前面14aと後面14cとが、底面14bの前後を隔てて、底面14bから直角方向に立ち上がるように形成されている。環状凹溝14の底面14bの直径は、一般的に2〜9mmである。また、環状凹溝14の幅(前面14aから後面14cまでの長さ)は、一般的に0.5〜10mmである。
弾性シールリング15は、横断面(環状の周方向軸に直交する断面)が円形、四角形又はその他の異形のものが使用できるが、本実施形態では、弾性シールリング15は、リング状主部15aとこのリング状主部15aから後方側に突出する突起15bとから構成されている。リング状主部15aは、横断面(環状の周方向軸に対して直交する断面)が四角形状であり、シリンダ軸に対して前端側と後端側が平面で形成されている。突起15bは、本実施形態では、ほぼ半球形状であり、リング状主部15aの後端面から後方側へ突出する。また、突起15bは、周方向に間隔をあけて8個が形成されているが、これ以外の数であってもよい。また、突起15bは、高さの異なる2種の突起を1つ置きに配置してもよい。
弾性シールリング15の厚さ(プランジャ3の軸方向における長さ)は、環状凹溝14の前後方向の幅よりも小さく、弾性シールリング15は、環状凹溝14を前後方向に移動することができる。
本実施形態では、弾性シールリング15の内周面に、シリンダ2の軸方向に直線状に延び、かつ内周面を貫通する開閉溝21が形成されている。開閉溝21の大きさは弾性シールリング15が環状凹溝14に装着されたとき、ペーストを充填していない状態では空気が流通する。弾性シールリング15にシリンダ2の軸方向へ所定以上の外力が負荷したときに、弾性シールリング15の圧縮変形によって、弾性シールリング15が半径方向に膨張するように作用するが、環状凹溝14の底面側に押されて、開閉溝21が閉塞されることが重要である。
このような、弾性シールリング15については、シリンダ2の軸方向に所定以上の外力が負荷したときに、弾性シールリング15の半径方向に広がろうとする圧縮変形によって、開閉孔23の隙間が逃げ場となって閉塞される。開閉孔23については、突起15bの間に形成しているが、突起15bの中心先端からずらした突起内の部分に形成してもよい。
これらの開閉溝21,22及び開閉孔23は、各々1個形成したが、複数形成することも可能である。開閉溝21,22の形状については、断面が四角形の他、半円形、半楕円形などがある。開閉孔23の形状については、円形、楕円形、多角形やスリット状の孔も可能である。また、開閉溝21,22及び開閉孔23については、シリンダ2の軸方向へ直線状に形成したが、傾斜させたり直線以外の形状についても可能である。
[ペースト充填剤]
本発明のペースト注出器1に充填するペーストとしては、歯牙修復材ペーストであるのが好ましい。これら歯牙修復材ペーストの具体例としては、コンポジットレジンと呼ばれる欠損した歯牙の充填修復材料、歯髄保護のための裏層材料、および小窩裂溝封鎖に適した充填修復材料などが挙げられる。これらは、化学重合により硬化するタイプであっても良いし、光重合により硬化するタイプであっても良いが、後者の方がより好ましい。
本実施形態において、ペースト注出器1に充填するペーストは、特に制限されるものではないが、ペースト注出口からのペーストの切れを良くする本発明の効果を顕著に発揮される観点からは、低粘度のものが好ましく、粘度が10〜10,000ポイズ、より好適には50〜5,000ポイズであることが好ましい。
弾性シールリング15を装着したペースト注出器1において、シリンダ2の充填室9にペーストを注入するときには、図7に全体を図示せず先端の充填ノズル25と本体の一部のみを示すペースト充填器26にセットする。そして、充填ノズル25を注出口5に差し込むときは、充填ノズル25と押し込み部材12が干渉しないように、プランジャ3を注出口5から離した位置に配置する。
なお、当初から開閉溝21を開状態にしたいのであれば、ペーストの注入前にプランジャ3を少し前進させれば、弾性シールリング15と環状凹溝14の前面14aとの密着は解除され、開閉溝21は開状態となり、ペーストが弾性シールリング15の位置まで充填される間に残留空気を抜くことができる。充填室9内の空気は、開閉溝21を通って円板16とシリンダ2の内周面の隙間からシリンダ2の後端側へ抜ける。
ペーストの充填時には、弾性シールリング15の前面にペーストが満たされるが、充填室9の内圧は小さく、開閉溝21の大きさを、空気を通すが粘性の大きなペーストを通さない大きさ若しくは形状に形成することによって、ペースト漏れは防止できる。
このような開閉溝21,22又は開閉孔23を有するペースト注出器1は、充填室9にペーストが所定量充填されたならば、充填器26の充填を停止し、充填作業が終了する。充填作業が終了した状態では、弾性シールリング15の開閉溝21は前方側がペーストに閉塞され、実質的に閉状態となっている。よって、充填室9への空気の流入は防止される。
充填作業が終了した後、シリンダ2にノズル本体4がセットされる。
ペースト注出器1によって、患者の患部にペーストを注出するときには、弾性シールリング15は突起15bが環状凹溝14の後面に接した後退位置にある。
プランジャ3の押圧時では、ノズル10の面積と比べて、十分に面積の大きな充填室9からノズル10にペーストが流出される。したがって、充填器26によって充填されるときよりも、ペースト注出時のほうが内部圧力は増大する。よって、弾性シールリング15には充填時よりも大きな圧力が負荷する。プランジャ3を前方に押圧すると、弾性シールリング15は、ペーストの内部圧力により、後面側に押圧される。ペーストは、ノズル10から注出され、開閉溝21からも流出されようとするが、弾性シールリング15は、ペーストと環状凹溝14の後面(円板16)との間で圧縮力を受ける。弾性シールリング15の突起15bが後面側に押されて、突起15bの高さが小さくなる一方、その分だけ広がる。
しかしながら、弾性シールリング15は、プランジャ3の前方への移動によって、プランジャ3とともに前方へ摺動されるが、シリンダ2の内面との密着力によって、もとの位置に留まろうとする摺動反力を有し、加えて、弾性シールリング15は、弾性変形をもとの形状に戻す復元力を有する。
したがって、プランジャ3の停止後は、弾性シールリング15はプランジャ3を後方側へ押し返す力が働き、実際に、プランジャ3が後方へ押し戻される。すなわち、弾性シールリング15は、摺動反力及び復元力によってプランジャ3を押し戻し、リング状主部15a及び突起15bは弾性変形した反力によって、もとの形状に戻ろうとする。特に、本実施形態における弾性シールリング15は、突起15bの部分の弾性変形が大きいので、効果的にプランジャ3を後方へ押し戻す。
詳しくは、ペーストの注出後において、注出口5側を上方に向けてペースト注出器1を静置したが、ノズル10からのペーストの漏れ出しは認められなかった。
なお、シリンダ2内から空気を排除することによって、ペースト注出器1の本来の目的であるペースト注出器1の操作者が、シリンダ2の先端方向に所望程度に押すと、その充填室9に充填されるペーストの内圧が高まり、それに応じて、必要量のペーストを注出口11から押し出すための操作性の効果を、より高めることができる。
図1〜3に示された構造であり、さらに、シリンダ2が透明で内部の様子が観察可能なシリンジ型のペースト注出器1を使用して、以下の試験を行った。
試験に使用したペーストは、また、シリンジ型のペースト注出器に充填するペーストとしては、温度23℃の条件にて、
測定装置;ボーリン社製CVO120型レオメーター
測定治具;φ20mm、角度0°のプレート
クリアランス;500μm
剪断速度;10秒−1、で測定した粘度が730ポイズである光硬化型の歯牙修復材ペーストを使用した。
プランジャ3は、環状凹溝14の幅が1.8mm(弾性シールリングの無負荷状態における全体の厚みに対して1.1倍の長さ)、深さが1.2mm(シリンダ2の内径の20%の長さ)のものを使用した。
上述したペースト注出器1に以下の弾性シールリングを試験に用いた。
弾性シールリング15のリング状主部15aは、直径が6.4mm、環幅が2.0mm、前面から後面までの厚みが0.7mm、突起15bは、プランジャ3側に形成し、直径1.0mmの半円状で形成し、突起15bの高さは、0.5mm(弾性シールリング15の前面から後面までの厚みに対して71%の長さ)のものを用い、突起15bの形成個数は8個であり、それぞれは、外周が真円で、先端は上方に弧を描いた形状であった。また、突起15bのそれぞれの最高部は、弾性シールリング15の後面において、環幅の中央をとおる円周上に位置させた。弾性シールリング15の材質は、弾性体のフッ素系エラストマーを使用した。
このうち、フッ素系エラストマーからなる弾性シールリング15のショア硬度を変えて試験を行った。
実施例1としてショア硬度30、実施例2としてショア硬度40、実施例3としてショア硬度50、実施例4としてショア硬度60、実施例5としてショア硬度90、実施例6としてショア硬度95の弾性シールリングを用意した。
開閉溝は図4のAに示すように、全て弾性シールリングの内周面に形成している。
実施例7として図9のAに示すように、弾性シールリングのリング状主部のみを有し、突起を省略したものを用意した。弾性シールリングのショア硬度は50のものを用いた、開閉溝21は、弾性シールリングの内周面に形成した。
[実施例8]
実施例8として図9のBに示すように、断面が円形の一般的な弾性シールリングを準備した。開閉溝24は弾性シールリングの外周側に形成した。ショア硬度は50のものを用いた。
開閉溝21は、弾性シールリングの外周面に形成した。
[比較例1]
比較例1として、開閉溝を形成していないことを除き上記した実施例3と同じ弾性シールリングを用意した。
続いて、23℃の暗室内で、プランジャ3をシリンダ2の先端方向に押して、ノズル10より0.1mlのペーストを抽出させ、プランジャ3の押圧を停止した。その後、60秒間静置しノズル10からのペーストの漏れ出しを確認した(表2のバックサクション機能)。
また、これらの操作の後、透明なシリンダ2を透視して、弾性シールリング15より後端開口部6側の円板16の壁面に、プランジャ3の押し込み時のペーストの後方への流出による付着はないか観察した(表3のペースト漏れ)。
充填時における気泡混入の判定は、目視で行い気泡が確認されないものを○、品質等に影響はないが気泡が僅かにあるものを△、品質等に影響がある恐れがある程度の気泡があるものを×と判定した。
ペースト注出器のプランジャの押し出し停止後のバックサクションについては、ノズルから漏れが確認されないものを○、漏れが僅かにあるが先端部に留まる程度のものを△、漏れが生じたものを×と判定した。
プランジャ側へのペースト漏れは、漏れが確認されないものを○、品質等に影響はないが漏れが僅かにあるものを△、円板側に漏れるものを×と判定した。各△の判定は、実用に影響がないものである。
また、実施例6のように硬質(ショア硬度95)になると僅かに漏れが生じ、実施例1のように軟質になると充填時の気泡が僅かに残ることが確認できた。
2 シリンダ
3 プランジャ
4 ノズル本体
5 注出口
9 充填室
10 ノズル
13 円錐部(押圧部)
14 環状凹溝
15 弾性シールリング
15a リング状主部
15b 突起
16 円板
Claims (6)
- 前端に流体の注出口が形成され、後端に開口部が形成されているシリンダと、
該シリンダの前記開口部から挿嵌され、流体の充填室を前記シリンダとともに形成するプランジャと、
該プランジャに装着され、前記充填室側と前記開口部側への流体の流通を阻止する弾性シールリングとを備え、
前記プランジャには、前記プランジャの前進時に流体を押圧する押圧部と、該押圧部の後側に隣接し、前記弾性シールリングを装着する環状凹溝とを備えた注出器において、
前記弾性シールリングには、前記シリンダの軸方向に一端側から他端側へ抜ける開閉溝若しくは開閉孔が形成され、
前記充填室への流体の注入時に、前記開閉溝若しくは開閉孔が空気の流通を許容し、前記流体の注出時には、前記弾性シールリングの弾性変形によって、前記開閉溝若しくは開閉孔が閉塞し、前記流体の流通を阻止するようにした注出器。 - 前記環状凹溝の前記シリンダの軸方向における溝幅は、前記弾性シールリングの前記シリンダの軸方向における幅よりも大きく形成されている請求項1に記載の注出器。
- 前記弾性シールリングは、横断面が四角形であり、前記シリンダの軸方向における前端側及び後端側は平面である請求項1又は2に記載の注出器。
- 前記弾性シールリングの後端側には、前記環状凹溝の後端面側に突出する突起を形成した請求項3に記載の注出器。
- 前記弾性シールリングのショア硬度が30〜95の範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の注出器。
- 前記流体が歯科用のペースト材である請求項1〜5のいずれかに記載の注出器。
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