JP5586155B2 - 歯科材料用シリンジ - Google Patents
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Description
図7のA及びBは、従来の歯科材料を収容するシリンジを示す。
シリンジ51は、容器52と蓋部材53とからなり、容器52は、容器本体54、押出ネジ55、ナット56及び押出部材57とから構成されている。容器本体54の基端側(図面左側)には、ナット56が取付けられ、ナット56には、押出ネジ55が螺着し押出ネジ55の先端側には、押出部材57が取付けられている。容器本体54の内部には、歯科材料が収容されている。容器本体54の先端側には開口59が設けられ、開口59部には、蓋部材53が着脱可能に設けられている。蓋部材53の内周面と容器本体54の先端外周面はほぼ同径であって、蓋部材53は容器本体54の外周面を摺動するようにして開閉がなされる。
下記の特許文献1には、容器内の歯科材料を押出棒(ネジ部材)によって押出して用いるシリンジが開示されている。
特許文献2には、蓋部材に、所定のリード角を螺旋方向に有する複数の雌側螺状突部を形成し、容器の先端開口部の外周面には、雌側螺状突部と係合し、該雌側螺状突部とは異なるリード角を螺旋方向に有する複数の雄側螺状突部を形成したものが開示されている。
非特許文献1には、歯科材料を収容するシリンジと、蓋部材を外したシリンジ開口部よりペースト状の歯科材料を取り出し具によって取り出している様子が開示されている。
しかしながら、上述したように、歯科用の容器は密閉性を必要とし、一般に密閉性と開閉性は必ずしも両立しない。例えば、密閉性を良くするため、蓋部材53と容器の開口59部との接続部分を長くする方法がとられる。すると、蓋部材53の内周面と容器本体54の先端外周面はほぼ同径であるので、図8のAに示すように開放状態にあった開口59が、図8のBに示すように、蓋部材53のほぼ容積分に相当する空気が容器本体54内に入り込むことになる。これによって、容器本体54内の空間部分の内圧が上昇し、内部に収容されている歯科材料に悪影響を及ぼすことがある。歯科材料が粘性のある材料であるような場合は、粘性材料が内圧によって押圧されることによって、収容される先端部分が固くなり、押出しの操作性や取り出したペーストの操作性を低下させる。また、該収容される粘性材料の先端表面では液の染み出しが生じることがある。この液の染み出しによって、組成部の割合の変動が生じたり内容物が変化、変性したりすることがある。
なお、現在使用されている蓋部材のサイズの一例として、奥行き深さが10mm、口径が8.5mmのものが使用され、奥行き深さ/口径の比は、1.2程度のものが使用されている。
また、本発明の歯科材料用シリンジは、上記目的を達成するために、ペーストである粘性材料を収容し押出しするためのシリンダ状の容器本体を備え、該容器本体の先端開口部を閉塞する蓋部材が天面壁と該天面壁の周囲から下方に延びる周壁とを備え、前記蓋部材が装着される容器本体への装着部には、該容器本体を縮径する段差面と前記蓋部材の内周面が嵌合する装着面とを形成し、前記蓋部材の閉塞時には該蓋部材の周壁の下端面が前記段差面と当接する歯科材料用シリンジにおいて、前記蓋部材の内周面が接触する前記装着面の部分に、前記段差面側の一端部から前記容器本体の軸方向へ向かって前記装着面の他端側端部まで延び、前記蓋部材を装着する際に該蓋部材内部の空気を抜くための溝を形成し、該溝の形状は、蓋部材の下端面側における内周部の円周長さπD(Dが内周部の内径)を100%とした場合に、溝の周方向長さL1は、0.5%〜4.5%πDの範囲で、溝の深さL2は、蓋部材の当接面部における肉厚tの10〜50%tの範囲で、溝の軸方向長さL3は、装着面の高さをHとした場合、100〜200%Hの範囲に形成し、溝22の容積Vは蓋部材の内容積cVに対して0.01%cV以上に形成し、前記蓋部材の閉塞時には前記下端面と前記段差面との当接によって前記蓋部材の気密性を維持させた。
上記歯科材料用シリンジは、前記装着面に形成した前記溝から該装着面の周方向へ間隔を空けて1以上の溝を形成することができる。
また、上記歯科材料用シリンジは、前記溝を複数形成することによって、容器本体に蓋部材を被せるときに、蓋部材を傾けて装着したような場合に、1つの溝を塞いでしまって
も、他の溝によって内部の空気を確実に抜くことができる。
シリンジ1は、容器2と蓋部材3とからなり、容器2は、容器本体4、押出ネジ5、ナット6及び押出部材7とからなる。
本実施形態では、容器本体4は合成樹脂で形成されている円形の筒状部材であり、基端側(ナット6と連結されている側)から先端側に向けて同一断面形状であり、先端部には蓋部材3の装着部8を形成している。
装着部8のさらに先端側には、吐出部14が形成され、吐出部14は装着部8の半径方向内側に縮径して先端側に突出させたノズル14aを形成し、その先端部には円錐台形状のテーパ部が形成され、その端部に吐出開口14bが設けられている。吐出部14の大きさは、一般に口径が5.0mm〜10.0mmのものが使用されている。
容器本体4の内径は、ほぼ同一径であり、装着部8にて縮径されている(図示せず)。
押出ネジ5は、基端側にほぼ平板形状の把持部11が形成され、把持部11には、上述したボルト形状の雄ネジ12が形成されている。また、雄ネジ12の先端側は、容器本体4の内孔9まで突出し、その先端部には押出部材7が連結されている。
押出部材7は、雄ネジ12を回転させることによって、内孔9の内周部を軸方向へ進退移動させることが可能である。押出部材7は、円柱形状に形成され、押出部材7の外径は、内孔9の内径にほぼ等しく形成されている。その結果、押出部材7は内孔9の内周面を隙間無く摺動できる。
当接面21aと装着面8bとの接触部は密接状態に接し、蓋部材3の弾性力で密接させたり、摩擦係合などで密接させてもよい。
具体的な抜き溝22の形状は、蓋部材3の下端面21b側における内周部の長さπD(Dが内周部の内径)を100%とした場合に、抜き溝22の周方向長さL1は、0.3%〜5.0%πD(πは円周率)の範囲が好ましく、0.5%〜4.5%πDの範囲がより好ましい。抜き溝22の深さL2は、蓋部材3の当接面21a部における肉厚tの10〜50%tが好ましく、15〜45%tがより好ましい(図4)。抜き溝22の軸方向長さL3は、装着面8bの高さをHとした場合、100〜200%Hの範囲が好ましい(図3)。
また、蓋部材3の内径Dと装着面8bの高さHの関係は、H/Dは、0.10〜0.50である(図3,図4)。
このような条件を必要とするのは、蓋部材3の一般的な材料(ポリプロピレンなどのポリオレフィン)では抜き溝22の深さを大きくしたり、長くすると蓋部材3の弱化が生じたり、蓋部材3の閉塞時における係止力の強弱に悪い影響を及ぼすからである。なお、蓋部材3を装着部8に被せた際における、蓋部材内部の空気の排出性を十分にする観点からは、該抜き溝22の容積Vは蓋部材の内容積cVに対して0.005%以上あるのが、好ましく0.01%以上あるのがより好ましい。
なお、蓋部材3、容器本体4及び押出部材7の材質は、容器本体4に収容する歯科材料に影響のない材質によって形成する必要がある。
容器本体4から蓋部材3を外した後は、容器本体4の吐出開口14bから歯科材料を図示しないインストルメントなどで取り出すことができる。歯科材料が容器本体4の開口から深い位置にあるような場合は、把持部11で掴み押出ネジ5を回転させて、歯科材料を吐出開口14bの付近まで上昇させればよい。患者の治療が終了した後は、蓋部材3を装着部8に被せて開口14を閉塞する。
蓋部材3を装着部8に押し込んだ後は、蓋部材3の下端面21bが装着部8の段差面8aと密着して、空気の気密性が維持できる。
また、蓋部材3を装着部8に装着した後は、蓋部材3の下端面21bが装着部8の段差面8aと密着によって、外部からの異物混入の抑制や、歯科材料の漏れを防ぐことができる。
図5に示すように、本実施形態では、蓋部材3の当接面21aに空気の抜き溝23を2個所に形成した。抜き溝23の個数は3以上であってもよく、近接した部分に集中して設けるよりも、周方向へ等間隔に設けることが好ましく、同じ形状とすることが好ましい。
このように前記抜き溝22から蓋部材の内周面の周方向へ間隔を空けて1以上の溝を形成した場合において、個々の抜き溝の周方向長さL1は、前記抜き溝を1本設けた時と同様に、蓋部材3の下端面21b側における内周部の長さπD(Dが内周部の内径)を100%とした場合に対して0.3%πD以上が好ましく、0.5%πD以上であるのがより好ましい。他方、各抜き溝の周方向長さL1の合計長さが、該内周部の長さπDに対して、5.0%πD以下が好ましく、4.5%πD以下であるのがより好ましい。さらに、個々の抜き溝の容積Vは、蓋部材の内容積cVに対して0.005%以上あるのが、好ましく0.01%以上あるのがより好ましい。なお、個々の抜き溝22の深さL2は、前記抜き溝を1本設けた時と同様に、蓋部材3の当接面21a部における肉厚tの10〜50%tが好ましく、15〜45%tがより好ましい。
本実施形態では、さらに、蓋部材3の抜き溝23の部分を段差面8aに当接させながら蓋部材3を斜めにして取付けられようとした場合、抜き溝23が段差面8aに閉塞されて、抜き溝23の機能が失われるが、他の抜き溝23側から空気が抜けるので、蓋部材3の内部圧力の上昇を抑制できる。
本実施形態では、蓋部材3の当接面21aに形成した空気の抜き溝22,23が形成されておらず、装着部8の装着面8bに空気の抜き溝24が形成されている。すなわち、図6に示すように、容器本体4の装着部8には、蓋部材3の当接面21aと接触する部分に、段差面8aから装着面8bの上端部まで延びる空気の抜き溝24を形成している。抜き溝24の数は複数形成してもよく、抜き溝24の形状については、1個所に形成する場合は、上記第1の実施形態と同様に形成し、複数の場合は第2の実施形態と同様に形成する。
したがって、上記第1の実施形態と同様に、容器本体4の内部に収容されている歯科材料が残留空気による内圧の負荷を抑制し、粘性材料の内圧の負荷よって生じる液の染み出しによる内容物の変質や、液の染み出しによる変性を防止でき、蓋部材3の下端面21bが装着部8の段差面8aとの密着によって、外部からの異物混入の抑制や、歯科材料の漏れを防ぐことができる。
[実施例1〜6,比較例1]
歯科材料の保存安定性を調べるために週単位毎の保存期間と、蓋部材の開閉性(キャップ性)を調べた。
試料として、
容器本体の排出開口の径:4mm
装着部の嵌合部の高さH:2mm
蓋部材の下端面側における内周部の内径:8mm
装着部の嵌合部の高さ(H)/蓋部材の内径(D):0.25
蓋部材の内容積:460mm3
を条件とし、以下の表1に示す溝幅、溝の容積を有する蓋部材を種々準備(実施例1〜6)し、抜き溝を形成しない蓋部材(比較例1)を有するシリンジを用意した。それぞれの蓋部材のシリンジへの装着は、蓋部材の抜き溝の部分が、シリンジの装着部における段差面に当接しないよう、蓋部材の軸方向に沿って装着部に押し込まれる態様で各実施した。
保存安定性を評価するために、市販の歯科材料用の光重合型コンポジットレジン(エステライトΣ,シェード;A3,粘度;2200Pas(23℃)、トクヤマデンタル社製)が填入されたシリンジを用いた。このペースト材(粘性材料)をシリンジに填入された状態で30℃に設定したインキュベーター内に保管し、一定期間毎に蓋部材を外しペーストの状態を目視で判定を行った。
判定結果は以下に示した2段階で評価を行った。
○:液の滲みがなく均一なペースト性状を有している。
×:ペーストの表面に液が滲み出ている。
結果を表1に示す
キャップ性の評価に用いた歯科用材料は、市販の光重合型コンポジットレジン(エステライトΣ,シェード;A3,粘度;2200Pas(23℃)、トクヤマデンタル社製)填入されたシリンジを用いた。このシリンジ内にペースト量が2ml填入し、シリンジを水平状態に保ち、50cmの高さから落下させた状態の結果によって、蓋部材の外れ易さについて評価した。
判定結果は以下に示した3段階で評価した。
◎:5回繰り返しても外れない。
○:3回繰り返した時に外れる
×:1回目で外れる。
結果を上記表1に示す。
すなわち、実施例1のように、溝幅が小さい場合は、長期間保存後において、液の滲み出しが起こることが分かるが、抜き溝を形成していない比較例1と比べれば、ペーストの保存安定性は良好である。
実施例6のように、溝の幅(周方向長さ)を大きくした場合、保存安定性は良好であるが、溝の幅を大きくするとキャップが外れやすくなるのが確認できた。実施例2〜5のように、適切なサイズの抜き溝を形成した蓋部材を用いた場合、液の滲み出す現象が無く、ペーストの保存安定性が良好であることが分かった。
まず、実施例3において、蓋部材のシリンジへの装着を、蓋部材の抜き溝の部分が、シリンジの装着部における段差面に当接され閉塞されるように、蓋部材を斜めにして実施する態様で同様に実施した。その結果は、上記保存安定性の評価が比較例1と同じく、12週目でペーストの表面に液の滲み出しが確認され×であった。
これに対して、以下の表2に示す溝幅、溝の容積の抜き溝を、当接面の周方向に等間隔になる様に対向させて2本形成した蓋部材を準備し、該蓋部材のシリンジへの装着を、蓋部材の抜き溝の1本が、シリンジの装着部における段差面に当接され閉塞されるように、蓋部材を斜めにして実施する態様で、同様に実施した。その結果は、蓋部材の装着時に、1本の抜き溝は上記の如くに閉塞されているものの、これに対向する当接面反対側の抜き溝が開口しているため、ここから空気が抜け、保存安定性の評価は実施例3と同じく32週目に至っても液の滲みがなく均一なペースト性状であり○であった。
実施例3において、蓋部材に設けていた抜き溝を、同じ形状でシリンジの装着部の装着面に形成する以外同様に実施した。その結果は、その結果は、実施例3と同じく保存安定性の評価もキャップ性の評価も優れたものであった。
例えば、上記実施形態では、容器本体4の段差面8aと蓋部材3の下端面21bと直接密着させたが、段差面8aにパッキンを配設し、さらに気密性を保持するようにしてもよい。
2 容器
3 蓋部材
4 容器本体
5 押出ネジ
8 装着部
8a 段差面
8b 装着面
21 周壁
21a 当接面
22〜24 抜き溝(溝)
21b 下端面
Claims (4)
- ペーストである粘性材料を収容し押出しするためのシリンダ状の容器本体を備え、該容器本体の先端開口部を閉塞する蓋部材が天面壁と該天面壁の周囲から下方に延びる周壁とを備え、
前記蓋部材が装着される容器本体への装着部には、該容器本体を縮径する段差面と前記蓋部材の内周面が嵌合する装着面とを形成し、前記蓋部材の閉塞時には該蓋部材の周壁の下端面が前記段差面と当接する歯科材料用シリンジにおいて、
前記蓋部材の内周面が前記装着面に接触する当接部に、前記周壁の下端面側から蓋部材の軸方向へ向かって天面壁側へ延び、前記蓋部材を装着する際に該蓋部材内部の空気を抜くための溝を形成し、
該溝の形状は、
蓋部材の下端面側における内周部の円周長さπD(Dが内周部の内径)を100%とした場合に、溝の周方向長さL1は、0.5%〜4.5%πDの範囲で、溝の深さL2は、蓋部材の当接面部における肉厚tの10〜50%tの範囲で、溝の軸方向長さL3は、装着面の高さをHとした場合、100〜200%Hの範囲に形成し、溝22の容積Vは蓋部材の内容積cVに対して0.01%cV以上に形成し、
前記蓋部材の閉塞時には前記下端面と前記段差面との当接によって前記蓋部材の気密性を維持させたことを特徴とする歯科材料用シリンジ。 - 前記内周面に形成した前記溝から該内周面の周方向へ間隔を空けて1以上の溝を形成したことを特徴とする請求項1記載の歯科材料用シリンジ。
- ペーストである粘性材料を収容し押出しするためのシリンダ状の容器本体を備え、該容器本体の先端開口部を閉塞する蓋部材が天面壁と該天面壁の周囲から下方に延びる周壁とを備え、
前記蓋部材が装着される容器本体への装着部には、該容器本体を縮径する段差面と前記蓋部材の内周面が嵌合する装着面とを形成し、前記蓋部材の閉塞時には該蓋部材の周壁の下端面が前記段差面と当接する歯科材料用シリンジにおいて、
前記蓋部材の内周面が接触する前記装着面の部分に、前記段差面側の一端部から前記容器本体の軸方向へ向かって前記装着面の他端側端部まで延び、前記蓋部材を装着する際に該蓋部材内部の空気を抜くための溝を形成し、
該溝の形状は、
蓋部材の下端面側における内周部の円周長さπD(Dが内周部の内径)を100%とした場合に、溝の周方向長さL1は、0.5%〜4.5%πDの範囲で、溝の深さL2は、蓋部材の当接面部における肉厚tの10〜50%tの範囲で、溝の軸方向長さL3は、装着面の高さをHとした場合、100〜200%Hの範囲に形成し、溝22の容積Vは蓋部材の内容積cVに対して0.01%cV以上に形成し、
前記蓋部材の閉塞時には前記下端面と前記段差面との当接によって前記蓋部材の気密性を維持させたことを特徴とする歯科材料用シリンジ。 - 前記装着面に形成した前記溝から該装着面の周方向へ間隔を空けて1以上の溝を形成したことを特徴とする請求項3に記載の歯科材料用シリンジ。
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