ところが、特許文献1に記載された粒餡煮練り装置の構成では、撹拌軸(14)が釜本体(2)を水平に貫通横架しており、その軸方向と直交する円弧状アーム(15)の先端部に、複数の撹拌羽根(16)が取り付け固定されている。そして、その撹拌羽根(16)がアーム(15)と一緒に、釜本体(2) 内の上部へ退避した停止状態において、その釜本体(2)に対する小豆の出し入れや引き続く粒餡の掻き出しを行うようになっている。
そのため、釜本体(2)の内部に存在する撹拌軸(14)と円弧状アーム(15)並びに複数の撹拌羽根(16)が、上記小豆の出し入れや粒餡の掻き出し、洗浄などの言わば邪魔物となり、これらの諸作業を容易に洩れなく行うことができない。
また、上記撹拌軸(14)は釜本体(2)を水平に貫通横架しているため、その水密用の軸封シールが不可欠となり、たとえ釜本体(2)の内部を美しく洗浄できたとしても、その軸封シール部分に原料の細かい破片や煮汁が侵入・残留しやすく、食中毒菌や雑菌の繁殖を招くおそれがある。
更に、上記撹拌軸(14)の軸方向と直交する円弧状アーム(15)の先端部に固定された複数の撹拌羽根(16)は、その水平な撹拌軸(14)の軸線廻りに回転作用して、釜本体(2)内の底部から上方へ小豆を掻き上げ落下させることになるため、練り込み過ぎるおそれがあり、折角腹割れのない状態に煮炊きできた小豆の粒を、その後の撹拌作用によって潰してしまう問題もある。
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では据付フレームのベース盤から一体的に垂立する軸受ボックス同士の向かい合う左右相互間へ、一対の水平な煮釜チルト作動支点軸を介して吊持された断面U字形の煮釜と、
その煮釜の開口上面を開閉する釜蓋並びに煮釜から一体的に吊り下げられた水平な配管ベースと、
上記煮釜の胴面を包囲する上段蒸気ジャケット並びに底面を包囲する下段蒸気ジャケットと、
上記煮釜チルト作動支点軸の中空内部と連通する接続状態として、上記配管ベース上に固定配管された上段蒸気ジャケット用蒸気供給路と下段蒸気ジャケット用蒸気供給路とから成る蒸気流通経路と、
上記軸受ボックスの何れか一方へ1本の脚柱によって片持ち状態に軸支された基端部から、上記煮釜の真上位置までほぼ水平に張り出し延長された撹拌機用駆動ケースと、
上記駆動ケースの張り出し先端部から上記煮釜の中心部に向かって垂下し、その駆動ケース内の駆動モーターにより回転されるセンター主軸と、
上記センター主軸と遊星ギヤー機構を介して伝動連結されることにより、そのセンター主軸の周囲を公転運動すると同時に自転運動する偏心撹拌軸と、
その偏心撹拌軸の下端部へ着脱自在として、且つ一体回転し得るように連結使用される撹拌羽根と、
その撹拌羽根を上記煮釜の上方から抜き差し自在に差し込めるように、上記駆動ケースの脚柱をその作動モーターにより昇降させるべく、上記一方の軸受ボックスに内蔵設置された撹拌機用昇降機構と、
同じく撹拌羽根を煮釜から上方へ抜き出し退避し得るように、上記駆動ケースを作動モーターによって、その脚柱の垂直軸線廻りに旋回させるべく、同じ一方の上記軸受ボックスに内蔵設置された撹拌機用旋回機構と、
上記煮釜のチルト作動支点軸をその作動モーターにより前後方向へ傾動させるべく、上記撹拌機用駆動ケースを軸支していない他方の軸受ボックスに内蔵設置された煮釜チルト作動機構と、
上記釜蓋を一体的に吊り下げている水平な釜蓋開閉支点軸を、その作動モーターによって前後方向又は横方向へ開閉させるべく、同じ他方の上記軸受ボックスに内蔵設置された釜蓋開閉機構とを備え、
上記煮釜の内部へ直かに投入した小豆の煮炊き作用工程では、その煮釜から撹拌羽根を上方へ抜き出して退避させて、その開口上面を釜蓋での閉鎖状態に保つと共に、煮釜の上段蒸気ジャケットと下段蒸気ジャケットへ蒸気を供給し、
その煮炊きし終えた後には、上記煮釜をそのチルト作動機構により後傾姿勢状態に作動させて、その煮釜から後下方への排水だけを行い、
引き続き煮釜の内部へ砂糖も投入して、その上記小豆との煮練り作用工程では、煮釜の釜蓋を開放して、その上方から上記撹拌羽根を定位置に差し込み使用すると共に、
上記煮釜の下段蒸気ジャケットに対してのみ蒸気を、その供給量の多く又は少なく自動的に調整制御しながら供給して、
その煮練りし終えた後には、上記煮釜を同じくチルト作動機構により前傾姿勢状態に作動させて、その煮釜から前下方へ粒餡を取り出すように定めたことを特徴とする。
また、請求項2では煮釜における円形な開口縁部の後半部へ、パンチングメタル又は金網から成る半円形の渋切り板を係脱自在に係止使用して、
上記煮釜をチルト作動機構により後傾姿勢状態に作動させた時には、その煮釜から小豆が後下方へ脱落せず、その後下方へ排水だけが行われる一方、
同じく煮釜をチルト作動機構により逆な前傾姿勢状態に作動させた時には、その煮釜から前下方へ粒餡を取り出すことができるように定めたことを特徴とする。
請求項3では蒸気流通経路における下段蒸気ジャケット用蒸気供給路の途中を、オリフィスが大小相違する複数の蒸気供給分岐管から全体的な並列接続回路として形成し、
その各蒸気供給分岐管に任意な1個又は複数個の組合せとして、電気的に開閉制御される電磁弁を介挿設置したことを特徴とする。
請求項4では煮釜チルト作動機構によって作動される煮釜の前傾限度位置と後傾限度位置並びに垂直な姿勢状態の中立位置との合計3個所を、その煮釜チルト作動用の限度位置検知センサーにより検知して、
上記合計3個所の各位置を検知した出力信号に基いて、そのチルト作動モーターの回転を停止させるべく、自動制御するように定めたことを特徴とする。
請求項5では煮釜チルト作動機構によって煮釜が垂直な姿勢状態の中立位置から前後方向へ、一定角度づつ寸動する傾斜角度をその傾斜角度検知センサーにより検知して、
上記検知出力信号に基いてチルト作動モーターを自動的に正逆回転させるように定めたことを特徴とする。
請求項6では撹拌機用昇降機構によって昇降される撹拌機の上昇限度位置と下降限度位置とを、その上下一対の昇降検知センサーにより検知して、
その検知出力信号に基いて昇降作動モーターの回転を停止させるべく、自動制御するように定めたことを特徴とする。
更に、請求項7では撹拌機用旋回機構によって撹拌機が煮釜に差し込み使用される定位置と、同じく煮釜から抜き出し退避される旋回位置とを、その一対の位置検知センサーにより検知して、
その検知出力信号に基いて旋回作動モーターの回転を停止させるべく、自動制御するように定めたことを特徴とする。
他方、請求項8では粒餡製造装置の使用方法として、撹拌機を具備することにより煮練り作用できる粒餡製造装置と、撹拌機だけがない別個な煮炊き装置とを、その粒餡製造装置側の軸受ボックスに対して撹拌機用駆動ケースを軸支する脚柱が垂直中心線となる左右対称に並列設置して、
上記撹拌機をその粒餡製造装置側の煮釜と煮炊き装置側の煮釜へ、上方から差し替え使用することを特徴とする。
請求項1の構成では、煮釜の胴面と底面を上段蒸気ジャケットと下段蒸気ジャケットによって各々包囲しており、小豆の煮炊き作用をその上段蒸気ジャケットと下段蒸気ジャケットへ供給される蒸気によって行う一方、その後の煮練り作用を下段蒸気ジャケットへ供給される蒸気によって、しかもその蒸気供給量を多く又は少なく(加熱力を強く又は弱く)自動的に調整制御しながら行うようになっているため、上記小豆が別個な煮篭に収容されておらず、煮釜の内部へ直かでのバラ状態に収容されていることとも相俟って、上記煮炊き作用を小豆の全体的に効率良く行え、引き続く煮練り作用も粒餡の焦げ付くおそれなく、やはり効率良く円滑に行える効果がある。
また、撹拌機はその駆動ケースから煮釜の中心に向かって垂下するセンター主軸と、その周囲を公転運動しながら自転運動する偏心撹拌軸と、その下端部へ一体回転し得るように連結使用される撹拌羽根とを備え、上記駆動ケース内のモーターによって回転駆動されるようになっているため、その撹拌羽根によって粒餡を煮釜の全体的に万遍なく対流・撹拌することができ、掻き上げ落下させることはない結果、粒を潰すおそれがなく、高品質の粒餡を得られるのである。
更に、上記撹拌機はその昇降機構と旋回機構によって、煮釜の内部から上方へ抜き出し退避することできるようになっているため、その撹拌機の就中撹拌羽根に言わば邪魔されることなく、煮釜に対する原料(小豆と砂糖)の投入や煮釜の内部洗浄などを円滑に洩れなく行うことができ、利便性と衛生効果に優れる。
特に、請求項2の構成を採用するならば、円形な開口縁部の後半部に半円形の渋切り板が係止された煮釜を、小豆の煮炊き作用後にはそのチルト作動機構により後傾姿勢状態として、その煮釜から後下方へ排水(煮汁の排出)だけをすばやく行え、引き続く煮練り作用後には上記煮釜を前傾姿勢状態に作動させて、その煮釜から前下方へ粒餡を洩れなく安楽に取り出すことができ、その作業性に優れる。
請求項3の構成を採用するならば、煮練り作用工程において下段蒸気ジャケットへ供給する蒸気供給量の多少(加熱力の強弱)を、その並列接続状態の蒸気供給分岐管に介在する電磁弁の任意な1個又は任意に組み合わされる複数個の開閉制御によって、自動的に調整することができ、実益大である。
請求項4の構成を採用するならば、煮釜の前傾限度位置と後傾限度位置並びに垂直な姿勢状態の中立位置との合計3個所について、その目標となる設定値を入力しておくことにより、その煮釜を自づと正しく位置決め停止させることができ、自動化に役立つ。
請求項5の構成を採用するならば、煮釜をその中立位置から前後方向へ例えば約12度の一定角度づつ傾動させ、その角度範囲内において正逆回転するモーターにより、煮釜を往復振動させて、渋切り後の小豆が煮釜の角隅部に残留することを防ぐため均平化したり、その煮釜を原料(小豆と砂糖)の投入しやすい姿勢状態に傾斜させたりすることができ、著しく便利である。
請求項6並びに請求項7の構成を採用するならば、撹拌機の上昇限度位置と下降限度位置や、撹拌機が煮釜に差し込み使用される定位置と煮釜から抜き出し退避される旋回位置について、各々目標となる設定値を入力しておくことにより、撹拌機を自づと正しく位置決め停止させることができ、やはり自動化に役立つ。
更に、請求項8の構成によれば、粒餡製造装置と煮炊き装置との並列する相互間において、その粒餡製造装置が具備する撹拌機を、両者の煮釜へ抜き差し自在に差し替え使用することにより、小豆の煮炊き作用工程から砂糖の煮練り作用工程までの連続的な粒餡製造工程を、短時間での効率良く遂行することができ、生産性が著しく向上する。
以下、図面に基いて本発明の好適な実施形態を詳述すると、図1〜5はその粒餡製造装置(M)の概略全体を示しており、(A)は作業床への据付フレームであって、一定間隔を保って垂立する左右一対の軸受ボックス(1L)(1R)と、その下端部同士を連結する水平なベース盤(2)とから枠組み一体化されている。(3)はの据付高さと水平度を調整できる複数のネジ脚である。
その場合、両軸受ボックス(1L)(1R)の何れか一方(図例では正面から見て左側)には、撹拌機用の昇降機構(B)と旋回機構(C)とが内蔵設置されており、残る他方(同じく右側)には煮釜(4)のチルト作動機構(D)と釜蓋(5)の開閉機構(E)とが内蔵設置されている。
上記煮釜(4)はステンレス鋼から断面U字形に造形されており、例えば約400リットルの容量を有し、その胴面が上段蒸気ジャケット(6)によって包囲されていると共に、底面が下段蒸気ジャケット(7)によって包囲されている。その上段蒸気ジャケット(6)と下段蒸気ジャケット(7)との境界部は気密状態に仕切られている。
(8)(8)は上記煮釜(4)の胴面における就中上段蒸気ジャケット(6)に付属一体化された左右一対の軸受座であり、ここには各々フランジ継手(9)(9)を介して、一対の水平な煮釜チルト作動支点軸(10)(10)が相反する横方向への張り出し状態に取り付け固定されている。
そして、その煮釜チルト作動支点軸(10)(10)の途中が上記据付フレーム(A)の軸受ボックス(1L)(1R)へ、各々ハブフランジ(11)(11)を介して回動自在に枢支されている。つまり、上記煮釜(4)は両軸受ボックス(1L)(1R)の向かい合う左右相互間に介在し、そのチルト作動支点軸(10)(10)の水平軸線を中心として、前後方向へチルト作動(傾動)されるようになっているのである。
(12)は上記煮釜(4)の下段蒸気ジャケット(7)から複数のハンガーステー(13)を介して吊り下げられた配管ベースであり、その配管ベース(12)の周縁部には前後2つ割り形態の煮釜包囲カバー(14)が取り付け固定されている。(15)はその煮釜包囲カバー(14)の上端部と煮釜(4)の開口縁部に取り付け固定されたトップガイドプレートであって、前後一対の凹状落下シュート(16)(16)を備えており、ここから排水(煮汁の排出)や煮練りし終えた粒餡の取り出しを行えるようになっている。
(17)は煮釜(4)の開口縁部へ係脱自在に係止使用される把手付きの渋切り板であって、パンチングメタルや金網などから図6のような半円形に形成されており、渋切り時には小豆が上記煮釜(4)におけるトップガイドプレート(15)の落下シュート(16)(16)から脱落することを防ぎ、排水(煮汁の排出)だけを行えるようになっている。半円形をなすため、煮釜(4)に残る半円形の開口部から煮練りし終えた粒餡を取り出せることは言うまでもない。
上記左右一対の煮釜チルト作動支点軸(10)(10)は図5のように、各々張り出し先端部から穿孔された中空軸として、その張り出し先端部には何れもスイベルジョイント(旋回継手)(18)(18)とニップル(19)(19)とが連通配管されている。
また、上記煮釜チルト作動支点軸(10)(10)の何れか一方(図例では正面から見て右側)から張り出し垂下された蒸気導入管(20)と、残る他方(同じく左側)から張り出し垂下された蒸気導出管(21)とが、上記煮釜(4)から一体的に吊り下げられた配管ベース(12)上に配管された蒸気流通経路(P)を介して、連通接続されている。
その蒸気流通経路(P)は図7〜9に抽出して示す如く、上記煮釜(4)の上段蒸気ジャケット(6)に対する上段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P1)と、同じく下段蒸気ジャケット(7)に対する下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)とから成る。
そして、ボイラー(図示省略)からの蒸気が元バルブ(22)の位置(入口)から図7〜9の矢印で示すように、上記蒸気導入管(20)と下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)を経て、その途中の蒸気供給分配管(23)により上段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P1)へ供給されると共に、その両蒸気供給路(P1)(P2)の蒸気排出合流管(24)と上記蒸気導出管(21)を経て、ドレン管(25)の位置(出口)から排出されるようになっている。
その場合、煮釜(4)の上段蒸気ジャケット(6)は小豆の煮炊き作用に使用され、引き続く煮練り作用には使用されないものとして、その上段蒸気ジャケット(6)と下段蒸気ジャケット(7)に対する蒸気供給量を多く又は少なく(加熱力を強く又は弱く)調整せず、その上段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P1)の途中に介在する電磁弁(26)と、下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)の途中に介在する後述の電磁弁(33)又は電磁弁(34)とを開放状態に維持制御している。(27)は下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)の途中に介在する逆流防止弁、(28)は蒸気ドレン集中排出管、(29)は減圧弁、(30)はスチームトラップである。
上記煮釜(4)の下段蒸気ジャケット(7)は小豆の煮炊き作用のみならず、引き続く煮練り作用にも使用され、その煮練り作用時の蒸気供給量を多く又は少なく(加熱力を強く又は弱く)調整する必要があるため、その下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)の途中を、図9のようなオリフィス(口径)が大小相違する複数の蒸気供給分岐管(31)(32)から全体的な並列接続回路として形成している。
しかも、その各蒸気供給分岐管(31)(32)に任意な1個又は複数個の組合せとして、電気的に開閉制御される電磁弁(33)(34)を介挿設置している。(35)はそのオリフィス(口径)の小さな蒸気供給分岐管(32)における電磁弁(34)の上流側に介挿設置された手動式の流量調整バルブであり、所謂トロ火での煮練り作用に使われる。
尚、上記煮釜(4)から吊り下げられた配管ベース(12)上には蒸気流通経路(P)のみならず、給水経路(36)も図9のように配管されており、その水道からの給水経路(36)が上記煮釜(4)における胴面の上端部(開口縁部)付近に開口する給水口(37)と連通接続されることになる。(38)(39)(40)はその給水経路(36)の途中に各々介在する開閉用電磁弁と流量計並びに逆流防止弁である。
両軸受ボックス(1L)(1R)の何れか一方(図例では正面から見て右側)に内蔵された煮釜(4)のチルト作動機構(D)を説明すると、図10、11から明白なように、その軸受ボックス(1R)の内部へ張り出す水平な上記煮釜チルト作動支点軸(10)の途上には、平歯車(41)とウォームホイール(42)とが並列状態に嵌め付け一体化されているほか、同じく張り出し先端部には煮釜チルト作動用の限度位置検知プレート(センサードグ)(43)が取り付け一体化されている。
その限度位置検知プレート(43)には後述の対応的な限度位置検知センサーによる検知点として、煮釜(4)の前傾限度位置と後傾限度位置並びに垂直な姿勢状態の中立位置との合計3個所(図示省略)が設定されている。その煮釜(4)の中立位置にある垂直な姿勢状態において、小豆の煮炊き作用と煮練り作用を行い、その中立位置から約100度の後傾限度位置にある煮釜(4)から後下方へ排水(煮汁の排出)を、同じく中立位置から約100度の前傾限度位置にある煮釜(4)から前下方へ、煮練りし終えた粒餡の取り出しを各々行うようになっている。
(44)は上記煮釜チルト作動支点軸(10)と直交して前後方向へ延在するウォームギヤ軸であって、上記軸受ボックス(1R)内の中段架台(45)へ回動自在に支持されており、そのウォームギヤ軸(44)上のウォーム(46)が上記ウォームホイール(42)に下方から噛合している。
(47)は同じく軸受ボックス(1R)内の下段架台(48)に据付けられた煮釜チルト作動源のギヤードモーターであり、その出力スプロケット(49)と上記ウォームギヤ軸(44)上の伝動スプロケット(50)とが、無端な伝動チエン(51)を介して連結されている。
そのため、上記ウォームギヤ軸(44)上のウォーム(46)をギヤードモーター(47)によって回動させれば、上記煮釜(4)が図2から図12、13のように、その両煮釜チルト作動支点軸(10)(10)の水平軸線廻りに前後方向へ一定角度(α)(先に例示した約100度づつ)だけ傾斜することとなる。その結果、上記煮釜(4)におけるトップガイドプレート(15)の落下シュート(16)(16)から後下方へ排水(煮汁の排出)を、同じく前下方へ粒餡の取り出しを各々便利良く行うことができる。
また、(52)は上記煮釜チルト作動支点軸(10)上の煮釜チルト作動用限度位置検知プレート(センサードグ)(43)と向かい合う煮釜チルト作動用の限度位置検知センサーであって、近接センサーから成り、上記軸受ボックス(1R)の内壁面へ支持ブラケット(53)を介して取り付け固定されている。これによって、煮釜(4)の上記前傾限度位置と後傾限度位置並びに垂直な姿勢状態の中立位置を検知し、その検知出力信号に基いて上記ギヤードモーター(47)の回転を停止させるべく、自動制御するようになっている。
(54)は上記軸受ボックス(1R)の内壁面へ軸受ブラケット(55)を介して回動自在に取り付けられたギヤ軸であって、煮釜チルト作動支点軸(10)と平行に横架しており、そのギヤ軸(54)に嵌め付け一体化された平歯車(56)が、上記煮釜チルト作動支点軸(10)上の平歯車(41)に上方から噛合して、その両平歯車(41)(56)が同速回転するようになっている。
(57)は上記ギヤ軸(54)の先端部に取り付け一体化された煮釜チルト作動用の傾斜角度検知センサーであって、ロータリエンコーダーから成り、これによって煮釜(4)が中立位置から前後方向へ一定角度(例えば約12度)づつ傾動する角度(寸動する傾斜角度)を検知し、その検知出力信号に基いて、上記煮釜チルト作動源のギヤードモーター(47)を自動的に正逆回転させることにより、渋切り後の小豆が煮釜(4)の角隅部に残留することを防ぐべく、全体的な水平状態に均したり、煮釜(4)を上記一定角度だけ前傾又は後傾させて、小豆や砂糖などの原料を投入しやすく保ったりすることができる。
更に、正面から見て右側の上記軸受ボックス(1R)に内蔵された釜蓋開閉機構(E)を、やはり図10、11に基いて説明すると、(58)は上記軸受ボックス(1R)内の上段架台(59)に据付けられた直交軸型のウォーム減速機であり、その前向きのウォームギヤ軸(60)上には伝動スプロケット(61)が、同じく左右方向へ延在する水平な釜蓋開閉支点軸(62)上には、釜蓋開閉検知アーム(センサードグ)(63)が取り付け一体化されている。
(64)はその釜蓋開閉支点軸(62)上の検知アーム(63)と向かい合う釜蓋開閉検知センサーであって、フォトセンサーや近接センサーから成り、上記ウォーム減速機(58)の上段架台(59)に付属固定されている。(65)はその上段架台(59)の下方に位置しつつ、上記軸受ボックス(1R)の内壁面へ支持ブラケット(66)を介して取り付けられた釜蓋開閉作動源のギヤードモーターであり、その出力スプロケット(67)と上記ウォーム減速機(58)の伝動スプロケット(61)とが、無端な伝動チエン(68)を介して連結されている。
そのため、上記ウォーム減速機(58)のウォームギヤ軸(60)をギヤードモーター(65)によって回動させれば、水平な釜蓋開閉支点軸(62)がゆっくり減速回転し、その開閉支点軸(62)の途中から一体的に吊持された円形の釜蓋(5)が、上記煮釜(4)の開口上面を開閉することになる。
その場合、釜蓋開閉支点軸(62)の上記釜蓋開閉検知アーム(63)を備えた基端部は、図5や図10のように正面から見て右側の軸受ボックス(1R)内にあり、その軸受ボックス(1R)の壁面へハブフランジ(69)を介して回動自在に軸受けされているが、同じく釜蓋開閉支点軸(62)の先端部は残る左側の軸受ボックス(1L)から上向き一体的に垂立する軸受マスト(70)へ、やはりハブフランジ(71)を介して回動自在に軸受けされている。
そして、上記釜蓋開閉支点軸(62)の中間部から一体的に垂下する左右一対のハンガーステー(72)(72)が、釜蓋(5)の中央部に付属している固定プレート(73)と、水平な補強棒(74)を介して連結一体化されている。釜蓋(5)は上記釜蓋開閉支点軸(62)又はそのハンガーステー(72)から取りはずすこともできる。(75)はその釜蓋(5)の把手である。
(76)は撹拌機(F)の駆動ケースであって、正面から見て左側の上記軸受ボックス(1L)上へ片持ち状態に軸支されており、その軸受ボックス(1L)から図4、5のように煮釜(4)の真上位置まで水平に張り出し延在している。(77)は撹拌機(F)の回転駆動源となる直交軸型のギヤードモーターであり、上記駆動ケース(76)の基端部に内蔵設置されている。
また、(78)は同じく駆動ケース(76)の張り出し先端部に軸受けされたセンター主軸であり、そのセンター主軸(78)に嵌め付けられた伝動スプロケット(79)と、上記ギヤードモーター(77)のウォームギヤ軸(80)に嵌め付けられた出力スプロケット(81)とが、無端な伝動チエン(82)によって連結されている。
その場合、撹拌機(F)のセンター主軸(78)は煮釜(4)の中心を指向する垂下状態にあり、その下端部には遊星ギヤー機構(83)を介して偏心撹拌軸(84)が伝動連結されている。その偏心撹拌軸(84)は上記センター主軸(78)の周囲を公転運動すると同時に、自転運動するようになっているのである。
(85)は上記偏心撹拌軸(84)へ下方から抜き差し自在に差し込み使用される撹拌羽根であって、伸縮可能なハンガー支柱(86)とその下端部に枢着された揺動アーム(87)とその揺動アーム(87)の両端部に枢着された一対の硬質な合成樹脂製羽根板片(スクレーパー)(88)(88)とから、正面視の全体的な擬似錨型をなしており、その羽根板片(スクレーパー)(88)(88)が煮釜(4)の内底面へ弾圧されながら、餡練り作用と掻き取り作用を行い、粒餡の焦げ付きを防ぐ。
次に、上記軸受ボックス(1L)に内蔵された撹拌機(F)の昇降機構(B)を、図14〜23に基いて説明すると、(89)はその軸受ボックス(1L)上へ撹拌機用駆動ケース(76)を片持ち状態に軸支するため、その駆動ケース(76)の基端部から一体的に垂下された中空の脚柱であり、上記軸受ボックス(1L)における天井軸受台(90)と水平な上段架台(91)との上下相互間に介挿固定された昇降ガイドフランジ(92)によって、昇降自在に軸受けされている。(93)はその昇降ガイドフランジ(92)に嵌め付けられた軸受ブッシュ、(94)は合成樹脂製の軸受スリーブである。
(95)は上記脚柱(89)の下端部を相対的な回動自在に軸受けする昇降スライダーであり、そのボールベアリング(96)の収容ケース(97)から一体的に張り出すフランジ(98)には、前後一対のリニアベアリング(99)(99)と1個のトラベリングナット(100)とが取り付けられている。
また、上記軸受ボックス(1L)内の上段架台(91)とベース盤(2)との上下相互間には、前後一対の昇降ガイドロッド(101)(101)と1本のボールネジ(102)とが平行に垂立されており、そのボールネジ(102)に上記昇降スライダー(95)のトラベリングナット(100)が螺合している一方、両昇降ガイドロッド(101)(101)に上記昇降スライダー(95)の両リニアベアリング(99)(99)が嵌合している。
上記ボールネジ(102)の下端部にはウォームホイール(図示省略)と、これと噛合するウォームギヤ軸(103)とが組み込みユニット化されているほか、そのウォームギヤ軸(103)には伝動スプロケット(104)が嵌め付け一体化されてもいる。(105)は撹拌機(F)の昇降作動源となるギヤードモーターであって、上記軸受ボックス(1L)内のベース盤(2)に据付け固定されており、その出力スプロケット(106)と上記ウォームギヤ軸(103)上の伝動スプロケット(104)とが、無端な伝動チエン(107)を介して連結されている。
つまり、上記撹拌機用昇降作動源のギヤードモーター(105)によってボールネジ(102)を回転させれば、これとの螺合締結状態にあるトラベリングナット(100)を介して、上記昇降スライダー(95)が図14〜19から図20〜23へ又はその逆方向へ、前後一対の昇降ガイドロッド(101)(101)に沿って安定良く昇降することになる。(108)は下降した上記駆動ケース(76)の基端部を受け止めるストッパーであり、軸受ボックス(1L)から上向き一体的に垂立されている。
(109)(110)は上記トラベリングナット(100)をセンサードグとして、撹拌機(F)の上昇限度位置と下降限度位置を検知する上下一対の昇降検知センサーであって、近接センサーから成り、その検知出力信号に基いて上記昇降作動源であるギヤードモーター(105)の回転を停止させるべく、自動制御するようになっている。尚、上記撹拌機(F)の昇降ストローク(S)は煮釜(4)の深さよりも相当大きな寸法として、例えば約800mmである。
更に、撹拌機(F)の旋回機構(C)について説明すると、図14〜23から明白なように、その旋回作動源となるギヤードモーター(111)も同じ上記軸受ボックス(1L)の内壁面へ、中段架台(112)を介して取り付け固定されている。(113)はそのギヤードモーター(111)の出力スプロケット、(114)は前後一対の上記昇降ガイドロッド(101)(101)に沿って昇降する撹拌機用駆動ケース(76)の脚柱(89)へ、その円周面に形成されたフラット面(図示省略)やキーなどを介して、一体的な回動(旋回)可能に嵌合されたウォームホイールであり、上記軸受ボックス(1L)内における天井軸受台(90)と上段架台(91)との上下相互間へ、昇降しない位置決め状態に介挿設置されている。
その脚柱(89)の中途高さ位置にあるウォームホイール(114)と噛合するウォーム(115)は、上記天井軸受台(90)と上段架台(91)との上下相互間を横架する水平なウォームギヤ軸(116)上に、嵌め付け一体化されている。(117)は同じくウォームギヤ軸(116)上に嵌め付け一体化された伝動スプロケットであり、上記ギヤードモーター(111)の出力スプロケット(113)と無端な伝動チエン(118)を介して連結されている。
そのため、上記旋回作動源のギヤードモーター(111)によってウォームギヤ軸(116)上のウォーム(115)を回動させれば、これと噛合しているウォームホイール(114)を介して、上記撹拌機(F)の駆動ケース(76)が図3や図18のように、その脚柱(89)の垂直軸線を中心として旋回することになる。
(119)は上記ウォームホイール(114)から一体的に張り出された旋回検知アーム(センサードグ)であり、これを上記撹拌羽根(85)が煮釜(4)に差し込み使用される定位置の検知センサー(120)と、同じく撹拌羽根(85)が煮釜(4)から抜き出し退避される旋回位置の検知センサー(121)によって検知し、その検知出力信号に基いて上記撹拌機(F)の旋回作動源であるギヤードモーター(111)の回転を停止させるべく、自動制御するようになっている。(β)はその旋回角度を示しており、例えば約90度である。
(122)は上記軸受ボックス(1L)における煮釜(4)と向かい合う外壁面から上向き一体的に垂立されたローラー支持マストであり、その上端部に枢着された一対の遊転ローラー(123)(123)が上記撹拌機用駆動ケース(76)の傾斜腹部から垂下する縦補強リブ(124)を挟み付けることによって、その撹拌機(F)を使用する定位置での振れ止め状態に固定維持し得るようになっている。
尚、図示の実施形態では粒餡製造装置(M)を作業床の壁面へ接近して据付けることができるように、その撹拌機(F)を煮釜(4)へ差し込み使用する定位置から前方へ、約90度の一定角度(β)だけ旋回させるようになっているが、その一定角度(β)を約180度として引き続き遠くまで旋回させても良い。
また、図示実施形態の場合比較的長い釜蓋開閉支点軸(62)を煮釜チルト作動支点軸(10)(10)と平行に横架させて、その釜蓋開閉支点軸(62)の水平軸線廻りに釜蓋(5)を煮釜(4)と同じ前後方向へ開閉しているが、比較的短い釜蓋開閉支点軸(62)を撹拌機(F)がない一方(正面から見て右側)の軸受ボックス(1R)へ、煮釜チルト作動支点軸(10)(10)と直交する関係状態に架設して、その釜蓋開閉支点軸(62)の水平軸線廻りに上記釜蓋(5)を横方向(サイド方向)へ開閉させるように構成してもさしつかえない。
更に、(125)は上記煮釜(4)の下段蒸気ジャケット(7)を貫通して、その底面へ下方から差し込み状態に取り付けられた加熱温度検知センサーであり、煮炊きされる小豆や煮練りされる粒餡の加熱温度(品温)をリアルタイムに検知(測定)する。(126)はその下段蒸気ジャケット(7)に差し込み固定された耐熱性のセンサー保護筒である。
その検知センサー(125)はサーミスターや測温抵抗箔、熱電対箔などの接触式温度センサーとして、無線送信器(G)の感温部に取り付けられており、これと対応する受信器が測定温度表示部(図示省略)との兼用タイプとして、上記軸受ボックス(1R)上の操作盤(127)に組み込み一体化されている。その操作盤(127)は上記測定温度表示部も含む表示部と、入力スイッチ部とを備えているのである。
そして、無線送信器(G)から無線信号として送信される小豆や粒餡の現在温度データを、無線受信器が受信して、操作盤(127)上の測定温度表示部に出力表示すると共に、その現在温度データが予じめ設定された目標温度に到達した時、その受信器からの出力電気信号に基いて、上段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P1)の電磁弁(26)や下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)の電磁弁(33)(34)を開閉制御し、蒸気供給量を多く又は少なく(加熱力を強く又は弱く)調整したり、その加熱を自動停止したりするようになっている。
上記操作盤(127)は正面から見て右側の軸受ボックス(1R)へ、その正面(前方)からの全体的に見やすく設置されており、これには図24のような自動運転の制御要件を設定するタッチパネル(128)のほか、手動運転するための入力スイッチ部となる撹拌機使用定位置のスイッチボタン(129)や撹拌機退避旋回位置のスイッチボタン(130)、撹拌機正転スイッチボタン(131)、撹拌機逆転スイッチボタン(132)、煮釜(4)の垂直な中立位置のスイッチボタン(133)、煮釜(4)の前傾スイッチボタン(134)、煮釜(4)の後傾スイッチボタン(135)、釜蓋(5)の開放スイッチボタン(136)、釜蓋(5)の閉鎖スイッチボタン(137)、すべての起動スイッチボタン(138)、すべての非常(緊急)停止ボタン(139)が並列設置されている。(140)は電源スイッチ、(141)は電源パイロットランプ、(142)はタイマーブザーである。尚、操作盤(127)の制御回路(シーケンサー)には自動運転制御プログラムが、予じめ登録(記憶)されていることは言うまでもない。
本発明に係る粒餡の製造装置(M)は上記の構成を備えており、その使用による粒餡の製造方法を説明すると、予じめ煮釜(4)の釜蓋(5)を開放すると共に、その煮釜(4)から撹拌機(F)を完全に抜き出し退避させた待機状態において、流水での洗浄後一晩水に浸漬した生小豆の一定量(例えば約60kg)を、煮釜(4)の内部へ所謂バラ状態での直かに投入し、必要量(同じく約100リットル)の給水も行い、これと相前後して、その煮釜(4)における円形な開口縁部の就中後半部へ、対応的な半円形の渋切り板(17)を取り付けセットする。
その際、煮釜(4)をチルト作動機構(D)によって、一定角度(先に例示した約12度)だけ前傾姿勢状態に保つならば、その開口上面が作業者との関係上背高い位置にあっても、煮釜(4)の前方(正面)から上記小豆を、渋切り板(17)に邪魔されることなく、すばやく円滑に投入作業することができる。
他方、自動運転の制御要件となる上段蒸気ジャケット(6)並びに下段蒸気ジャケット(7)への蒸気供給量(加熱力)や加熱温度、所要時間、撹拌速度などの各種設定値を、上記操作盤(127)におけるタッチパネル(128)のタッチ操作によって入力しておく。
そして、起動スイッチボタン(138)の操作により、粒餡製造装置(M)の自動運転を開始し、その制御プログラムに基づく小豆の煮炊き作用を行えば良い。
即ち、先ず小豆の前炊き作用工程として、上記小豆を約25〜30分の一定時間内に沸騰させ、その沸騰後約5〜10分だけ弱火にして、追加給水(所謂ビックリ水)を施し、小豆の加熱温度(品温)を約50℃まで低下させ、約10〜20分だけ静置する(蒸らす)ことにより、煮えムラをなくし、小豆の吸水を促進させるのである。
それから再度沸騰させた後、渋切り(排水)を少なくとも1回行って、無駄なタンニン・サポニンを洗い流す。その渋切りを行うに当っては、上記煮釜(4)を垂直な姿勢状態の中立位置から煮釜チルト作動機構(D)により、その後傾限度位置まで一定角度(α)(先に例示した約100度)だけ傾動させるのである。そうすれば、小豆が煮釜(4)から後下方へ脱落することを、上記渋切り板(17)によって防止しながら、その渋切り板(17)を通じて煮釜(4)から後下方へ、排水(煮汁の排出)だけを自づと確実に行うことができる。
尚、図示符号(143)は側面視のほぼL字形をなす排水拡散防止板であり、上記煮釜(4)から後下方への排水を受け止めて、横方向(サイド方向)へ流し、追って粒餡を取出し作業する煮釜(4)の前方に排水が溜まり、汚損しないようになっている。
次に、上記小豆の本炊き作用工程として、煮釜(4)へやはり一定量(先に例示した約100リットル)の給水を行い、沸騰するまで加熱し、その沸騰後は弱火にして、小豆をゆっくりと約20〜30分だけ炊き上げる。
そうすれば、小豆が指先で摘まむと、簡単に潰れる程度まで膨軟状態になるので、加熱を止めて、約5〜10分だけ蒸らし、その後に排水(煮汁の排出)する。その排水は上記前炊き作用工程での渋切りと同じく、煮釜(4)を後傾限度位置まで傾動させることにより、自づと確実に便利良く行えるが、これを約60リットルの排水量として、そのうちの約15リットルを引き続く煮練り作用工程において再利用することが好ましい。小豆の風味や旨味を残すことができるからである。
上記小豆の本炊き作用工程を終えたならば、その煮釜(4)内での炊き上がっている小豆を、引き続き調味料である砂糖との混練状態に加熱撹拌(煮練り)作用する。
即ち、上記煮釜(4)の開口縁部から渋切り板(17)を取りはずして、その煮釜(4)の内部へ上記排水(煮汁)の約15リットルと、所要量(例えば約42kg)の砂糖とを投入する。他方、これと相前後して、上記煮釜(4)からの抜き出し退避状態に待機している撹拌機(F)を、その撹拌機用の昇降機構(B)と旋回機構(C)により、煮釜(4)の内部へ上方から差し込み垂下させ、その撹拌羽根(85)を正規の使用できる定位置に保持する。
そして、先の膨軟状態にある小豆と調味料の砂糖を加熱しながら、その撹拌機(F)の回転作用する撹拌羽根(85)によって撹拌する。その場合、小豆の上記煮炊き作用と異なり、煮練り作用中の焦げ付きを防ぐ必要があるため、その煮練り作用工程では上記煮釜(4)の上段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P1)にある電磁弁(26)を閉じて、その上段蒸気ジャケット(6)に対する蒸気の供給を止める一方、同じく下段蒸気ジャケット用蒸気供給路(P2)の就中蒸気供給分岐管(31)(32)に介在する電磁弁(33)(34)の任意な1個又は複数個を組合せとして開閉制御することにより、その蒸気供給量を多く又は少なく(加熱力を強く又は弱く)自動調整する。
上記煮練り(加熱撹拌)を約10分行った後、更に一定量(例えば約30kg)の砂糖を煮釜(4)へ追加投入して、所要時間(例えば約2時間)の煮練り作用を続行し、糖度(BRIX)48に到達したならば、その加熱と撹拌を止めるのであり、そうすれば目標とする一定量(例えば約200kg)の粒餡を得られる。
そのため、最後に上記撹拌機(F)の旋回機構(C)と昇降機構(B)によって、その撹拌機(F)を煮釜(4)から上方へ抜き出し旋回して退避させると共に、煮釜(4)をその前傾限度位置まで一定角度(α)(先に例示した約100度)だけ傾動させて、その煮釜(4)から前下方へ粒餡を取り出せば良い。
先には、本発明に係る粒餡製造装置(M)の1台を使用して、その粒餡の製造方法を説明したが、その原料である小豆の煮炊き作用から、その砂糖との煮練り作用に至る一連の製造工程には、その処理すべき単位量に応じた相当の長時間を要する。
この点、粒餡を短時間での効率良く量産する方法としては、上記構成を備えた粒餡製造装置(M)のほかに、その撹拌機(F)がないオプションとなる別個な煮炊き装置(m)も用意して、その両者を図25〜27のように並列する2連式として使用することが望ましい。
上記粒餡製造装置(M)の煮練り(加熱撹拌)作用に使われる撹拌機(F)の昇降機構(B)と旋回機構(C)は、煮釜(4)を枢支している一方(図例では正面から見て左側)の軸受ボックス(1L)内に、まとめて組み込み設置されているため、これらの撹拌機(F)とその昇降機構(B)並びに旋回機構(C)の設置だけが省略され、その他の構成は上記粒餡製造装置(M)と実質的に同じとして、煮炊き作用は支障なく行える別個な煮炊き装置(m)を、所謂オプションとして作成準備する。
但し、その煮炊き装置(m)の上記軸受ボックス(1L)がその撹拌機(F)の昇降機構(B)と旋回機構(C)を内蔵していない分だけ、言わば小型扁平になっているとしても、上記粒餡製造装置(M)と同じく、煮釜(4)を前後方向へチルト作動(傾動)させる水平なチルト作動支点軸(10)(10)は、左右一対の軸受ボックス(1L)(1R)へ回動自在に軸受けされており、また煮釜(4)の上段蒸気ジャケット(6)と下段蒸気ジャケット(7)に対する蒸気の給排作用が、その両チルト作動支点軸(10)(10)の中空内部を通じて行われることに変りはない。
そして、上記粒餡製造装置(M)が具備している撹拌機(F)を図25の鎖線で示す如く、煮釜(4)から上方へ抜き出し、その駆動ケース(76)における脚柱(89)の垂直軸線廻りに一定角度(β)(例えば約180度)だけ旋回させて、隣接する煮炊き装置(m)の煮釜(4)内へ、上方から差し込みことができ、また逆に煮炊き装置(m)の煮釜(4)から撹拌機(F)を上方へ抜き出し、その駆動ケース(76)における脚柱(89)の垂直軸線廻りに同じ一定角度(β)だけ旋回させて、上記粒餡製造装置(M)の煮釜(4)内へ上方から差し込むことができる関係状態に並列設置する。
つまり、撹拌機(F)を具備することによって、煮練り(加熱撹拌)作用までも行える粒餡製造装置(M)と、その撹拌機(F)だけがなく、その他の構成は上記粒餡製造装置(M)と実質的に同じとして、煮炊き(加熱)は行える別個な煮炊き装置(m)とを、その粒餡製造装置(M)側の軸受ボックス(1L)に対して撹拌機(F)の駆動ケース(76)を軸支する脚柱(89)が垂直中心線(対称軸線)となる左右対称に並列設置して、上記撹拌機(F)をその粒餡製造装置(M)側の煮釜(4)と煮炊き装置(m)側の煮釜(4)へ、上方から言わば交互に差し替え使用できるように関係設定するわけである。
このような粒餡製造装置(M)と煮炊き装置(m)とを並列設置した2連式の使用方法によれば、その粒餡製造装置(M)の撹拌機(F)によって煮練り作用を行っている間に、次の原料である小豆を煮炊き装置(m)側の煮釜(4)へ投入して、その煮炊き作用を同時進行的に行え、その煮炊き作用し終えた煮炊き装置(m)側の煮釜(4)へ、上記粒餡製造装置(M)側の煮練り作用し終えた撹拌機(F)を差し替え使用して、その煮炊き装置(m)側での煮練り作用を行う一方、粒餡製造装置(M)側の煮釜(4)へ更に次の原料である小豆を投入して、その煮炊き作用を同時進行的に行うことができ、上記撹拌機(F)を粒餡製造装置(M)側と煮炊き装置(m)側との交互に差し替え使用することにより、短時間での効率良く粒餡を大量生産し得る利点がある。