JP6401005B2 - 紙幣処理装置 - Google Patents

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Description

この発明は、紙幣の入金処理及び出金処理の処理中に紙幣を一時的に収納可能な一時保留部を備える紙幣処理装置に関し、特に、偽券と識別された紙幣を専用の保管部に保管する機能を有する紙幣処理装置に関する。
従来、銀行等の金融機関では紙幣の入金処理及び出金処理を実行可能な紙幣処理装置が利用されている。例えば、顧客から口座への入金を依頼された際に、紙幣処理装置を利用して入金処理を実行し、顧客から受け取った紙幣の真偽を識別して合計金額を算出すると共に、この紙幣を内部の紙幣収納部に収納する。また、例えば、顧客から口座からの出金を依頼された際に、紙幣処理装置を利用して出金処理を実行し、顧客が指定した金額分の紙幣を紙幣収納部から出金する。ATM(Automated Teller Machine)や、金融機関の窓口でテラーが利用するTCR(Teller Cash Recycler)等の紙幣処理装置では、入金処理時に市場で再利用可能と判定された紙幣は、紙幣収納部に収納された後、出金処理時に出金紙幣として再利用される。
金融機関で顧客から受け取った紙幣の中に偽の紙幣(偽券)が含まれていた場合に、これを顧客に返却せず金融機関で保管する場合がある。これに対応するため、例えば、特許文献1に記載された紙幣処理装置は、偽券を収納する専用の収納庫を装置内に備えており、入金処理時に偽券と識別された紙幣は、この専用の収納庫へ収納されるようになっている。
特開2005−92422号公報
しかしながら、金融機関での通常業務において偽券が発生することは希であるにも拘わらず、上記従来技術では紙幣処理装置内に偽券専用の収納部を設ける必要があり装置の小型化の観点から好ましくないという問題があった。
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたもので、偽券が発生した場合にのみ偽券専用の収納部を設けることができる紙幣処理装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、紙幣処理装置であって、入金する紙幣を受けるための入金口と、前記入金口から装置内に繰り出された紙幣を1枚ずつ搬送する搬送路と、前記搬送路を搬送される紙幣を識別する識別部と、入金された紙幣を収納するための紙幣収納部と、出金する紙幣を前記紙幣収納部から繰り出して排出するための出金口と、紙幣処理中に紙幣を一時的に収納するために利用する一時保留部と、前記一時保留部を通常の一時保留部として利用するか偽券保管部として利用するかを切り替える制御部とを備え、前記制御部は、前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、前記一時保留部を偽券保管部としての利用に切り替えて、偽券と識別された紙幣を前記一時保留部に収納して保管することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、入金処理中に前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、該紙幣を前記一時保留部に収納すると共に、前記一時保留部を偽券保管部としての利用に切り替えて、前記入金処理の完了後も継続して偽券を保管することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、偽券保管部として利用されている前記一時保留部から全ての偽券が排出された場合に、前記一時保留部を一時保留部としての利用に切り替えることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記一時保留部が偽券保管部として利用されている間は、前記一時保留部を利用して行う紙幣処理を、前記一時保留部を利用することなく実行することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記一時保留部を偽券保管部としての利用に切り替えた際に、これを報知する情報を出力することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、偽券保管部として利用されている前記一時保留部から前記出金口に排出された全ての偽券が前記出金口から取り出されない限り、次の処理を開始しないことを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、入金処理中に前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、該紙幣の金額を前記入金処理の入金金額から除外することを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、入金処理中に前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、該紙幣の金額を前記入金処理の入金金額に含めることを特徴とする。
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、認証処理により認証された場合にのみ、偽券保管部として利用されている前記一時保留部からの偽券の排出処理を実行することを特徴とする。
本発明によれば、入金処理、出金処理等の紙幣処理を実行している間に紙幣を一時的に収納するために利用する一時保留部を、一時保留部として利用するか偽券を保管する専用の偽券保管部として利用するかを制御部が自動的に制御するので、初期状態では偽券保管部を有さない紙幣処理装置を、必要に応じて、偽券保管部を有する紙幣処理装置として利用することができる。一時保留部を偽券保管部として利用することができるので、一時保留部から独立した偽券保管部を設ける場合に比べて紙幣処理装置を小型化することができる。
また、本発明によれば、紙幣処理装置の操作者が特別な操作を行わずとも、例えば入金処理中に偽券と識別された紙幣が発生した場合に、制御部が、自動的に偽券を一時保留部に保管して一時保留部の利用を偽券保管部としての利用に切り替えるので、一時保留部を備える紙幣処理装置を、偽券保管部を有する紙幣処理装置として容易に利用することができる。
また、本発明によれば、偽券保管部として利用中の一時保留部に収納されている全ての偽券が一時保留部外へ排出されると、制御部が、自動的に一時保留部の利用を偽券保管部としての利用から一時保留部としての利用に切り替えるので、再び、紙幣処理装置で一時保留部を利用した入金処理及び出金処理を実行することが可能となる。
また、本発明によれば、一時保留部を偽券保管部として利用している間に、一時保留部を利用する紙幣処理の実行が指示された場合に、指示された処理内容が一時保留部を利用することなく実行可能なものであれば、制御部が、自動的に、指示された処理を一時保留部を利用することなく実行するので、一時保留部を偽券保管部として利用している間も、紙幣処理装置の利用を停止させることなく、指示された紙幣処理の多くを支障なく実行することができる。
また、本発明によれば、一時保留部の利用を偽券保管部としての利用に切り替えた際に、これが表示部への情報表示等によって報知されるので、紙幣処理装置の操作者は、報知された情報に基づいて一時保留部の利用態様の切り替えを認識することができる。
また、本発明によれば、偽券保管部として利用する一時保留部から出金口に偽券を排出する処理が行われた場合に、出金口から偽券が取り出されない限り、次の処理が開始されないので、他の紙幣と区別して偽券を厳正に取り扱うことができる。
また、本発明によれば、入金処理中に偽券が発生した場合に、この偽券の金種に相当する金額分を入金金額から除外するようにすることもできるし、入金金額に含めるようにすることもできるので、紙幣処理装置を利用する金融機関の運用に応じて入金処理を行うことができる。
また、本発明によれば、認証処理によって認証されなければ偽券保管部として利用する一時保留部から装置外へ偽券を排出させることができないので、偽券を厳正に管理することができる。
図1は、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成概略を示す模式図である。 図2は、紙幣処理装置の機能構成概略を示すブロック図である。 図3は、一時保留部を利用せずに紙幣を入金するダイレクト入金の動作を示す模式図である。 図4は、入金処理時の紙幣の搬送ルートを示す模式図である。 図5は、一時保留部に収納されている偽券を出金口へ排出する際の紙幣の搬送ルートを示す模式図である。 図6は、一時保留部を利用して紙幣を入金する一保入金に関する動作を示す模式図である。 図7は、複数金種の紙幣が混合状態で収納されている紙幣収納部から紙幣を出金する出金処理の動作を示す模式図である。 図8は、出金処理時の紙幣の搬送ルートを示す模式図である。 図9は、紙幣が金種別に収納されている紙幣収納部から紙幣を出金する出金処理の動作を示す模式図である。 図10は、入金処理及び出金処理の処理の流れを示すフローチャートである。 図11は、紙幣処理装置による偽券の保管処理及び排出処理の他の態様を示す模式図である。
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る紙幣処理装置について説明する。まず、本実施形態に係る紙幣処理装置の概要を説明すると、紙幣処理装置は所定の紙幣処理を実行している間に紙幣を一時的に収納するために利用する一時保留部を備え、紙幣処理を実行してる間に偽券と識別された紙幣が発生した場合には、この一時保留部を偽券専用の収納部である偽券保管部として利用できるようになっている。すなわち、紙幣の収納及び繰り出しを行うことができる一時保留部を、偽券の保管が必要となった場合にのみ、偽券保管部として利用することができる点に1つの特徴を有している。
具体的には、通常は一時保留部を入金処理及び出金処理の少なくともいずれか一方の処理に利用しながら、偽券が発生した場合には、この偽券を一時保留部に収納すると共に、一時保留部の利用を偽券保管部としての利用に切り替える。そして、偽券が発生した処理の完了後も、偽券排出の処理が指示されるまでの間、一時保留部での偽券の保管を継続する。また、一時保留部を偽券保管部として利用している間は、一時保留部としての利用ができないため、通常は一時保留部を利用して行う紙幣処理についても一時保留部を利用することなく実行する。偽券排出の処理が実行されて、偽券保管部として利用中の一時保留部から全ての偽券が排出されると、一時保留部の利用が偽券保管部としての利用から一時保留部としての利用に切り替えられて、再び入金処理及び出金処理に一時保留部を利用できるようになる。偽券が発生した際に一時保留部の利用を偽券保管部としての利用に切り替える処理、偽券が排出された際に再び一時保留部としての利用に切り替える処理は、いずれも自動的に行われるが、切り替えの処理が実行されたこと及び一時保留部の現在の利用態様は、表示部への情報表示等によって確認できるようになっている。偽券が発生するまでは利用されることがない偽券専用の収納庫を独立した構成部として設ける必要がないので、紙幣処理装置を小型化することができる。
図1は、本実施形態に係る紙幣処理装置1の構成概略を示す模式図である。紙幣処理装置1は、装置内に入金する紙幣を受けるための入金口10と、装置内から出金する紙幣を排出するための出金口20と、紙幣の金種、真偽、正損等を識別するための識別部30と、入金処理及び出金処理等の紙幣処理時に紙幣を一時的に収納するために利用する一時保留部40と、識別部30による識別結果に基づいて紙幣を分類収納するための複数の紙幣収納部60a〜60hと、紙幣収納部60a〜60hへの紙幣の補充や紙幣収納部60a〜60hからの紙幣の回収、紙幣収納部60a〜60hに割り当てられていない金種の紙幣の収納等に利用するための着脱式の回収カセット70と、これら各部の間で紙幣を搬送するための紙幣搬送路50とを備える。一時保留部40は、偽券を保管する必要が生じた際には、偽券保管部として機能するが詳細については後述する。なお、以下では、各紙幣収納部60a〜60hを区別することなく示す場合には紙幣収納部60と記載する。
一時保留部40、紙幣収納部60及び回収カセット70では、紙幣搬送路50によって搬送される紙幣の収納と、収納されている紙幣の紙幣搬送路50への繰り出しとを行うことが可能となっている。一時保留部40及び紙幣収納部60は、2枚のテープの間に紙幣を1枚ずつ挟んだ状態で、これらのテープを回転ドラムの外周面に巻き取りながら紙幣を収納すると共に、回転ドラムを収納時とは反対方向に回転させることで2枚のテープの間に収納されていた紙幣を繰り出すテープ式の紙幣収納部となっている。テープ式の紙幣収納部を利用することにより紙幣を1枚ずつ確実に収納したり繰り出したりすることが可能となっている。また、回収カセット70は、紙幣を積層しながら収納する積層式の紙幣収納部となっている。ただし、一時保留部40、紙幣収納部60及び回収カセット70に紙幣を収納する方法については特に限定されず、紙幣の収納及び繰り出しを行うことができればテープ式及び積層式のいずれの態様であっても構わない。また、テープ式の紙幣収納部の構造についても、2枚のテープの間に紙幣を収納する構造に限定されるものではなく、例えば、ガイド部材と1枚のテープとの間に紙幣を挟んで収納する構造等であってもよい。
それぞれの紙幣収納部60a〜60hには、金種別に紙幣を収納することもできるし、複数金種の紙幣を混合状態で収納することもできる。紙幣処理装置1では、それぞれの紙幣収納部60a〜60hに収納する紙幣の金種や正損等の紙幣の種類を設定できるようになっている。
例えば、処理量が少ない金種の紙幣を1つの紙幣収納部60に混合状態で収納するように設定することもできるし、処理量が多い金種の紙幣を複数の紙幣収納部60に収納するように設定することも可能である。複数の紙幣収納部60に同一金種の紙幣を収納するように設定した場合に、いずれか1つの紙幣収納部60のみで頻繁に紙幣の収納及び繰り出しが行われて、この紙幣収納部60のみで部品の摩耗が進むことがないように、紙幣処理装置1では、紙幣の収納先及び繰出元が制御されるようになっている。
具体的には、例えば、入金処理では、入金紙幣の収納先となる紙幣収納部60が複数ある場合に、内部に収納されている紙幣の枚数が最も少ない紙幣収納部60に入金紙幣が収納されるよう制御される。また、出金処理では、出金紙幣を繰り出し可能な紙幣収納部60が複数ある場合に、内部に収納されている紙幣の枚数が最も多い紙幣収納部60から出金紙幣が繰り出されるよう制御される。
複数の紙幣収納部60の使用頻度が均等になるように制御する方法については、入金処理及び出金処理の処理毎に紙幣収納部60を選択する方法の他、各紙幣収納部60に収納されている紙幣の枚数に基づいて、使用する紙幣収納部60を選択する方法であっても構わない。例えば、同一金種の紙幣を収納する複数の紙幣収納部60で、収納されている紙幣の収納枚数が略同じになるように、紙幣1枚単位で、入金紙幣の収納先及び出金紙幣の繰出元を変更するように制御される態様であってもよい。また、所定枚数単位で入金紙幣の収納先及び出金紙幣の繰出元を変更してもよい。具体的には、例えば、入金処理では、ある紙幣収納部60に100枚の入金紙幣を収納したら次の100枚の入金紙幣は別の紙幣収納部60に収納するように制御して、出金処理では、ある紙幣収納部60から100枚の出金紙幣を繰り出したら次の100枚の出金紙幣は別の紙幣収納部60から繰り出すように制御する態様であっても構わない。
紙幣処理装置1は、入金口10、出金口20、識別部30及び一時保留部40が含まれる上部と、紙幣収納部60及び回収カセット70が含まれる下部とに分かれている。下部は、鍵付きの扉を備えた金庫となっており、この金庫内に紙幣収納部60及び回収カセット70が収められている。紙幣収納部60及び回収カセット70は金庫内から装置外へ引き出し可能なフレーム上に設けられており、金庫の扉を開いて引き出したフレームに対して回収カセット70を着脱できるようになっている。また、フレームを引き出した状態で紙幣収納部60の点検や修理を行うことが可能となっている。
紙幣処理装置1の上部と下部との間を仕切る隔壁、すなわち下部金庫の上面には、貫通孔が設けられており、この貫通孔を通る紙幣搬送路50によって上部と下部との間で紙幣を搬送できるようになっている。下部金庫内には、半導体メモリやハードディスク等の記憶装置から成る記憶部80(図2参照)が、専用のドライバーを利用しなければ取り外せない特殊ネジで固定して取り付けられている。記憶部80には、紙幣収納部60及び回収カセット70に収納されている紙幣の金種や枚数等の情報が記録されている。紙幣処理装置1では、紙幣に関する情報が保存されている記憶部80を金庫内に固定することで、記憶部80の持ち去りや記憶部80内のデータの改ざん等が行われないようにセキュリティを確保している。
図2は、紙幣処理装置1の機能構成概略を示すブロック図である。偽券保管部としても利用することができる一時保留部40等、図1に示した構成に加えて、紙幣処理装置1は、各部の動作を制御する制御部90と、各部の制御に必要な情報を保存するための記憶部80とを備えている。また、紙幣処理装置1は、操作部及び表示部を備えるコンピュータ装置から成る操作端末2に接続されており、操作端末2を操作することにより、入金処理及び出金処理等、紙幣処理装置1における各種の処理を実行できるようになっている。ただし、紙幣処理装置1の利用形態が、紙幣処理装置1に接続された遠隔型の操作端末2によって操作される態様に限定されるものではなく、例えば、紙幣処理装置1と操作端末2とが一体化された構造であっても構わない。
制御部90は、操作端末2を利用して行われる設定操作や指示操作を受けて各部10〜80の動作を制御する機能を有する。制御部90による制御により以下に記載する紙幣処理装置1の各機能及び動作が実現されている。
記憶部80は、半導体メモリやハードディスク等から成る記憶装置で、内部には、一時保留部40の利用方法を設定した一時保留部設定データ80aが保存されている。一時保留部設定データ80aには、一時保留部40の利用方法に関する設定情報が保存されており、制御部90は、この一時保留部設定データ80aを参照して一時保留部40の利用方法を決定する。また、記憶部80には、従来の紙幣処理装置と同様に、識別部30による紙幣の識別処理に利用するテンプレートデータ、紙幣収納部60に収納する金種等の設定情報、紙幣収納部60に収納されている紙幣の金種及び枚数に関する情報、制御部90の動作に必要なデータ等、各種のデータが保存される。記憶部80は、紙幣処理装置1の下部の金庫内に固定されており、保存されているデータに係るセキュリティを確保できるようになっている。
入金口10に受けた紙幣を紙幣搬送路50によって搬送して、識別部30により識別した結果に応じて、対応する紙幣収納部60に収納する入金処理、操作端末2を操作して指定された出金紙幣を紙幣収納部60から繰り出して紙幣搬送路50によって搬送して、識別部30を経て出金口20へ排出する出金処理については、従来行われている処理である。このため、入金処理及び出金処理に係る各部の動作についての詳細な説明は省略して、以下では主として本実施形態の説明に必要な動作について説明する。
図3は、紙幣処理装置1で、一時保留部40を利用せずに紙幣を入金するダイレクト入金の動作を説明するための模式図である。図3(A)は真券(偽券ではない真の紙幣)のみが処理される場合の動作を示し、同図(B)は入金処理中に偽券が発生した場合の動作を示している。
なお、図3では、ダイレクト入金に関係する機能部を示すと共に、各機能部の間での紙幣の流れを実線矢印及び破線矢印で示している。また、図6、図7、図9及び図11でも同様に処理に関する機能部を示すと共に紙幣の流れを矢印で示している。
図3(A)に示すように、ダイレクト入金では、入金口10に受けた紙幣を1枚ずつ識別部30へ搬送して識別した後、真券と識別された紙幣は、一時保留部40には収納されず、識別結果に基づいて対応する紙幣収納部60に直接収納される(図中ステップA11)。
また、図3(B)に示すように、ダイレクト入金では、識別部30によって真券であると識別された紙幣が実線矢印で示したように紙幣収納部60に収納される一方で(ステップA21)、偽券であると識別された紙幣が発生した場合には、破線矢印で示したように一時保留部40へ収納される(ステップA22)。
図4は、入金処理時の紙幣の搬送ルートを示す模式図である。図3のステップA11、A21に対応する搬送ルート、すなわち入金口10から識別部30を経て紙幣処理装置1の下部にある紙幣収納部60に真券を収納する搬送ルートを、図4では実線矢印で示している。また、図3(B)に破線矢印で示したステップA22に対応する搬送ルート、すなわち偽券が発生した際に、この偽券を紙幣処理装置1の下部には搬送せず、上部の一時保留部40に収納する搬送ルートを、図4では破線矢印で示している。なお、図4では、紙幣が紙幣収納部60dに搬送される例を示しているが、実際には、各紙幣は、金種等の識別結果に応じて、対応する紙幣収納部60a〜60hのいずれかへ収納される。また、図3及び図4には示していないが、識別部30で金種を識別できなかった紙幣等は、従来通り、入金リジェクト紙幣として、識別部30から出金口20に搬送され、出金口20から返却されるようになっている。
図5は、一時保留部40に収納されている偽券を出金口20へ排出する際の紙幣の搬送ルートを示す模式図である。偽券保管部として利用中の一時保留部40内に保管された偽券は、所定のタイミングで操作端末2を操作して装置外へ取り出される。このとき、図5に示すように、一時保留部40から繰り出された紙幣は、最短ルートを経て出金口20へ搬送される。偽券排出時の搬送ルートを最短距離とすることで偽券によるジャムの発生を抑制することができる。また、出金口20には出金口20からの紙幣の抜き取りを検知するための検知センサが設けられており、紙幣処理装置1では、出金口20に偽券を排出した後、出金口20から全ての偽券が抜き取られるまでの間は、次の紙幣処理を行えないようになっている。これにより、出金口20内に偽券と他の出金紙幣とが混合状態で集積されることがなく、偽券と他の紙幣とを区別して、偽券を厳正に取り扱うことができる。
なお、偽券は、犯罪に関わる可能性があるため厳正に取り扱う必要がある。このため、紙幣処理装置1では、装置外へ偽券を排出させる処理を実行する際に認証処理が行われるようになっている。操作端末2を操作して偽券の排出処理を開始すると、操作端末2上で認証処理が開始され、操作者を識別するための操作者ID及びパスワードの入力が求められる。記憶部80の一時保留部設定データ80aの中には、紙幣処理装置1から偽券を排出させることができる操作者の操作者ID及びパスワードが予め登録されている。操作端末2を操作して入力した操作者ID及びパスワードが記憶部80に登録された情報と一致した場合にのみ、一時保留部40から偽券が繰り出されて装置外へ排出されるようになっている。
紙幣処理装置1の制御部90は、偽券を一時保留部40へ収納した後、一時保留部40の利用を一時保留部としての利用から偽券保管部としての利用に切り替えて、一時保留部40を偽券保管部として利用中であることを示すステータス情報を、記憶部80の一時保留部設定データ80aに保存する。また、制御部90は、一時保留部40から偽券を排出する処理を実行して一時保留部40が空の状態になった後、一時保留部40の利用を偽券保管部としての利用から一時保留部としての利用に切り替えて、ステータス情報を、一時保留部40を一時保留部として利用中であることを示す情報に更新する。すなわち、一時保留部40内に偽券が保管されている間だけ一時保留部40を偽券保管部として利用するために、制御部90は、一時保留部40を一時保留部及び偽券保管部のいずれとして利用中であるかを示すステータス情報を利用する。
一時保留部40を利用する入金処理及び出金処理の実行時には、まず、制御部90が、一時保留部設定データ80aに含まれるステータス情報を参照する。そして、一時保留部40を通常通り一時保留部として利用できる場合には、通常通りに入金処理及び出金処理を実行する一方で、一時保留部40が偽券保管部として利用されている場合には、一時保留部40を利用する入金処理及び出金処理であっても、これらの処理を一時保留部40を利用することなく実行するが、これについての詳細は後述する。
紙幣処理装置1の操作者は、操作端末2の表示部に表示された情報により、一時保留部40の利用態様を認識できるようになっている。具体的には、一時保留部40の利用が、一時保留部としての利用から偽券保管部としての利用に切り替えられた際には、偽券保管部として利用が開始されたことを示す情報が操作端末2の表示部に表示される。また、一時保留部40の利用が、偽券保管部としての利用から一時保留部としての利用に切り替えられた際にも、これを示す情報が操作端末2の表示部に表示される。なお、操作者への報知の方法については特に限定されず、音や光を利用して報知する態様であってもよいし、紙幣処理装置1に設けられた表示部に情報を表示したりLED等の発光素子を点灯したりすることにより報知する態様であってもよい。
次に、一時保留部40を利用して紙幣を入金する一保入金の動作について説明する。図6は、一時保留部を利用して紙幣を入金する一保入金に関する動作を説明するための模式図である。図6(A)は真券のみが処理される場合の動作を示し、同図(B)は入金処理中に偽券が発生した場合の動作を示している。また、図6(C)は同図(B)で偽券が発生した後に続けて行われる一保入金の動作を示し、同図(D)は偽券を装置外へ排出する際の動作を示している。
一保入金では、図6(A)に示すように、入金口10に受けた紙幣を1枚ずつ識別部30へ搬送して識別した後、この紙幣を一時保留部40に収納する(ステップB11)。そして、入金口10に受けた全ての紙幣(図中「真券P11〜P13」)を一時保留部40に収納した状態で、識別計数結果を、操作端末2の表示部上に表示する。そして、操作端末2で識別計数結果を承認する操作がなされると、一時保留部40に収納されていた全ての紙幣(真券P11〜P13)を繰り出して、対応する紙幣収納部60へ収納する(ステップB12)。この結果、図6(B)に示すように、紙幣収納部60に全ての紙幣(真券P11〜P13)が収納された状態となる。
続いて、次の一保入金の処理を開始する。この処理を行っている間に、識別部30によって偽券であると識別された紙幣(偽券P22)が発生した場合も、図6(B)に示すように、入金口10に受けた全ての紙幣(真券P21、P23及び偽券P22)が一時保留部40に収納される(ステップB21)。そして、識別計数結果を操作端末2上に表示して承認操作が行われる。
通常は、識別計数結果が承認されると、一時保留部40に収納された全ての紙幣を繰り出して、対応する紙幣収納部60に収納するが、一時保留部40内の紙幣の中に偽券(P22)が含まれている場合には、一時保留部40内の紙幣(真券P21、P23及び偽券P22)は繰り出されず、一保入金の処理完了後も継続して一時保留部40内に保管される。すなわち、識別計数結果が承認されて入金処理を完了した後も、図6(B)に示す状態が維持される。
制御部90は、一時保留部40に偽券及び真券が収納された状態で承認操作がなされると、一時保留部40の利用を、一時保留部としての利用から偽券保管部としての利用に切り替えて、これを示すステータス情報を記憶部80の一時保留部設定データ80aに保存する。
図6(B)に示すように一時保留部40が偽券保管部として利用されている状態で、次の一保入金処理の開始操作がなされると、制御部90は、記憶部80の一時保留部設定データ80aに含まれるステータス情報を参照して、一時保留部40が偽券保管部として利用されており、一時保留部として利用できないことを認識する。そして、制御部90は、一保入金開始の指示を認識しながら、一時保留部40を利用することなく入金処理を開始する。なお、このとき、操作端末2の表示部上には、一時保留部40が偽券保管部として利用中であることを示す情報と、指示された入金処理を一時保留部40を利用することなくダイレクト入金として実行することを示す情報とが表示される。
具体的には、制御部90は、図6(C)に示すように、 入金口10に受けた紙幣を1枚ずつ識別部30へ搬送して識別し、真券P31は、対応する紙幣収納部60へ収納して(ステップB31)、偽券P32は、偽券保管部として利用中の一時保留部40へ収納する(ステップB32)。
図6(C)に示す収納状態で、操作端末2を操作して偽券を装置外へ排出する処理が開始されると、一時保留部40に収納されている全ての紙幣(真券P21、P23及び偽券P22、P32)が繰り出される。そして、一時保留部40から繰り出された真券P21、P23は、識別結果に基づいて、図6(D)に示すように対応する紙幣収納部60へ収納される(ステップB41)。一方、一時保留部40から繰り出された偽券P22、P32は、図5に示す搬送ルートを搬送されて、図6(D)に示すように出金口20へ排出される(ステップB42)。
こうして、一時保留部40から偽券を排出する処理が実行されて全ての偽券が出金口20へ排出されると、制御部90は、一時保留部40の利用を偽券保管部としての利用から一時保留部としての利用に切り替える。また、制御部90は、記憶部80の一時保留部設定データ80aに保存されているステータス情報を、一時保留部40を一時保留部として利用中であることを示す情報に更新する。この結果、次に一保入金処理の開始操作がなされると、通常通り一時保留部40を入金紙幣の一時収納に利用しながら一保入金の処理が実行される。
なお、図6には示していないが、識別部30で金種を識別できなかった紙幣等は、従来通り入金リジェクト紙幣として、識別部30から出金口20に搬送され、出金口20から返却されるようになっている。また、図6(B)に示すように、入金口10に受けた全ての紙幣P21〜P23を一時保留部40に収納した状態で(ステップB21)、識別計数結果を操作端末2上に表示して承認待ちになった後、承認されずに入金処理がキャンセルされた場合には、一時保留部40に収納されていた全ての紙幣P21〜P23が返却される。具体的には、一時保留部40から繰り出した全ての紙幣P21〜P23を、図5に示すように搬送して、出金口20から排出することにより返却する。このとき、出金口20に返却する紙幣P21〜P23の中に偽券と識別された紙幣が含まれている場合には、操作端末2の表示部上に偽券に関する情報が表示される。具体的には、例えば、入金処理時に識別部30によって偽券P22の記番号を読み取っておいて、返却時には、偽券P22の記番号、この偽券P22が出金口20に排出された複数紙幣P21〜P23の上から2枚目にあることを示す情報等を操作端末2の表示部上に表示する。入金処理がキャンセルされた場合でも、返却される紙幣の中に偽券が含まれていた場合には、これを操作者に報知することにより、操作者は、返却紙幣の中に含まれる偽券を特定して所定の方法で取り扱うことが可能となる。
次に、紙幣処理装置1で行われる出金処理の一例について説明する。まず、複数金種の紙幣が混合状態で収納されている紙幣収納部60から紙幣を出金する場合について説明する。図7は、複数金種の紙幣が混合状態で収納されている紙幣収納部60から紙幣を出金する出金処理の動作を示す模式図である。図7(A)は一時保留部40を一時保留部として利用可能な状態で行われる通常の出金処理の動作を示し、同図(B)は一時保留部40を偽券保管部として利用している状態で行われる出金処理の動作を示している。
操作端末2を操作して、所定金額分の紙幣を出金する出金処理が開始されると、制御部90は、記憶部80の一時保留部設定データ80aのステータス情報を参照して、一時保留部40を一時保留部として利用可能であるか否かを確認する。
そして、一時保留部40を一時保留部として利用可能である場合には、図7(A)に示すように、制御部90は、複数金種の紙幣が混合状態で収納された紙幣収納部60から順に紙幣を繰り出して識別部30へ搬送する。そして、紙幣収納部60から繰り出された紙幣が、出金紙幣として利用可能な紙幣である場合には、この紙幣を出金口20へ排出する(ステップC11)。一方、紙幣収納部60から繰り出された紙幣が、出金紙幣として利用できない紙幣である場合には、この紙幣を一時保留部40へ退避させる(ステップC12)。また、紙幣収納部60から繰り出された紙幣が、斜行や重送等の搬送異常によりリジェクトすべきと判定された場合には、出金リジェクト紙幣として、回収カセット70に収納される(ステップC13)。
なお、全ての出金紙幣を出金口20に排出した後、一時保留部40に退避収納されていた紙幣は、一時保留部40から繰り出されて元の紙幣収納部60へ戻される。回収カセット70に収納されていた出金リジェクト紙幣については、回収カセット70から繰り出して元の紙幣収納部60へ戻してもよいし、回収カセット70に収納したままにしてもよく、いずれにするかは設定により変更できるようになっている。
このように、紙幣収納部60に複数の金種の紙幣が混合状態で収納されている場合でも、出金紙幣以外の紙幣を一時保留部40へ退避させながら、出金紙幣を出金口20に排出することにより所定金額分の紙幣を出金することができる。
一方、出金処理時に、一時保留部40を偽券保管部として利用中である場合には、一時保留部40を紙幣の退避場所として利用することができない。このため、制御部90は、一時保留部40に退避させる紙幣が発生しないように、出金紙幣の繰出元とする紙幣収納部60を決定する。そして、図7(B)に示すように、決定した紙幣収納部60から繰り出した出金紙幣を、識別部30を経て、出金口20へ排出する(ステップC21)。また、出金リジェクト紙幣は、回収カセット70へ収納される(ステップC22)。
図7(A)及び(B)に示す動作を、図8を参照しながら具体的に説明する。図8は、出金処理時の紙幣の搬送ルートを示す模式図である。図8(A)は、図7(A)に示すように一時保留部40を退避紙幣の収納に利用できる場合、すなわち一時保留部40を一時保留部として利用できる場合の動作を示している。また、図8(B)は、図7(B)に示すように一時保留部40を退避紙幣の収納に利用できない場合、すなわち一時保留部40が偽券保管部として利用されている場合の動作を示している。
例えば、ユーロ紙幣を処理対象紙幣として、紙幣収納部60a〜60c、60e〜60hには50ユーロ以下の低額金種の紙幣を金種別に収納されて、紙幣収納部60dには100ユーロ以上の高額金種の紙幣を混合状態で収納されるものとする。具体的には、紙幣収納部60a〜60c、60e〜60hには、5ユーロ紙幣、10ユーロ紙幣、20ユーロ紙幣及び50ユーロ紙幣のいずれかの紙幣が金種別に収納されており、紙幣収納部60hには50ユーロ紙幣が収納されているものとする。また、紙幣収納部60dには、100ユーロ紙幣、200ユーロ紙幣及び500ユーロ紙幣の高額金種のユーロ紙幣が混合状態で収納されており、紙幣収納部60dから紙幣の繰り出しを開始した際には、200ユーロ紙幣、500ユーロ紙幣、100ユーロ紙幣の順で紙幣が繰り出される状態にあるものとする。そして、このような収納状態で、100ユーロ分の紙幣を出金する出金処理が指示されたものとする。なお、出金リジェクト紙幣はないものとして説明する。
100ユーロ分の紙幣の出金処理が指示された際に、記憶部80の一時保留部設定データ80aを参照して、一時保留部40に偽券が収納されておらず一時保留部40を一時保留部として利用可能であることを認識した制御部90は、紙幣収納部60dに100ユーロ紙幣が収納されていることを認識して、紙幣収納部60dから100ユーロ紙幣を出金する処理を開始する。
紙幣収納部60dから最初に繰り出された200ユーロ紙幣は、図8(A)に実線矢印で示すように紙幣収納部60dから識別部30へ搬送された後、破線矢印で示すように退避紙幣として一時保留部40に収納される。次に紙幣収納部60dから繰り出された500ユーロ紙幣も、同様に識別部30を経て一時保留部40へ退避収納される。そして、次に紙幣収納部60dから繰り出された100ユーロ紙幣は、出金紙幣として利用される紙幣であるため、図8(A)に実線矢印で示すように、識別部30を経て出金口20へ排出される。こうして、出金処理の指示通りに、100ユーロ分の紙幣として1枚の100ユーロ紙幣を出金口20に出金することができる。
一方、100ユーロ分の紙幣の出金処理が指示された際に、記憶部80の一時保留部設定データ80aを参照して、一時保留部40に偽券が収納されており一時保留部40が偽券保管部として利用されていることを認識した制御部90は、紙幣収納部60dに100ユーロ紙幣が収納されていることを認識すると共に、紙幣収納部60dから最初に繰り出される200ユーロ紙幣を一時保留部40に退避させることができないことを認識する。このため、制御部90は、100ユーロ分の出金紙幣を、100ユーロ紙幣ではなく他の金種の紙幣で出金する代替出金を実行することとし、他の紙幣収納部60a〜60c、60e〜60hに収納されている紙幣の情報を参照する。
例えば、制御部90は、100ユーロ分をなるべく少ない枚数の紙幣で出金するため、紙幣収納部60hに収納されている2枚の50ユーロ紙幣により代替出金を行うことを決定して、この代替出金の処理を開始する。この結果、図8(B)に実線矢印で示すように、紙幣収納部60hから2枚の50ユーロ紙幣が繰り出されて、識別部30を経て出金口20へ排出される。
このように、紙幣処理装置1では、複数金種の紙幣が混合状態で収納された紙幣収納部60を利用して出金処理を行う場合に、通常は一時保留部40を紙幣の退避場所に利用しながら紙幣収納部60dから紙幣を出金する一方で、一時保留部40が偽券保管部として利用されているためにこれを紙幣の退避場所として利用できなければ他金種による代替出金が行われるようになっている。これにより、一時保留部40を偽券保管部として利用しているために、一時保留部40を利用する出金処理が行えない場合でも、紙幣処理装置1の利用を停止させることなく、代替出金による出金処理を行うことができる。
なお、一時保留部40を偽券保管部として利用中であるために一時保留部40に紙幣を退避させる出金処理を実行できない場合には、操作端末2の表示部に、これを示す情報と、代替出金として出金される紙幣の金種及び枚数の内訳等の情報とが表示されるようになっている。
紙幣処理装置1では、一時保留部40を紙幣の退避先として利用できるか否かの判定、代替出金による出金内容の決定、代替出金の実行の全てが、制御部90によって自動的に実行されるが、代替出金の実行を操作者による承認操作後に開始するように設定することも可能となっている。代替出金の承認操作を行うように設定した場合には、代替出金の処理内容を決定した後、代替出金によって出金される紙幣の金種及び枚数の内訳等の情報を操作端末2に表示した状態で操作者の承認操作を待つ待機状態となる。そして、代替出金の内容を確認した操作者が承認操作を行うと代替出金が開始され、キャンセルする操作を行うと代替出金がキャンセルされる。
次に、紙幣処理装置1で行われる出金処理の他の例として、紙幣が金種別に収納されている紙幣収納部60から紙幣を出金する場合について説明する。図9は、紙幣が金種別に収納されている紙幣収納部60から紙幣を出金する出金処理の動作を示す模式図である。図9(A)は一時保留部40を一時保留部として利用可能な状態で行われる通常の出金処理の動作を示し、同図(B)は一時保留部40を偽券保管部として利用している状態で行われる出金処理の動作を示している。紙幣が金種別に収納されている場合には、必要な金種の紙幣が必要な枚数だけ各紙幣収納部60から出金されるので、複数の金種の紙幣が混合状態で収納されている場合のように一時保留部40を退避紙幣の収納に利用する必要はない。
操作端末2を操作して、所定金額分の紙幣を出金する出金処理が開始されると、制御部90は、記憶部80の一時保留部設定データ80aのステータス情報を参照して、一時保留部40を一時保留部として利用可能であるか否かを確認する。
そして、一時保留部40を一時保留部として利用可能である場合には、図9(A)に示すように、制御部90は、紙幣が金種別に収納された紙幣収納部60から順に紙幣を繰り出して識別部30へ搬送する。そして、紙幣収納部60から繰り出された紙幣が、出金紙幣として利用可能な紙幣である場合には、この紙幣を出金口20へ排出する(ステップD11)。一方、出金リジェクト紙幣が発生した場合には、これを一時保留部40へ収納する(ステップD12)。なお、全ての出金紙幣を出金口20に排出した後、出金リジェクト紙幣は、一時保留部40から繰り出されて元の紙幣収納部60へ戻される。ただし、出金リジェクト紙幣については、一時保留部40から繰り出した後、回収カセット70へ収納することも可能であり、いずれにするかは設定により変更できるようになっている。
一方、出金処理時に、一時保留部40を偽券保管部として利用中である場合には、一時保留部40を出金リジェクト紙幣の一時収納に利用することができない。このため、制御部90は、紙幣収納部60から繰り出した出金紙幣を、識別部30を経て、出金口20へ排出しながら(ステップD21)、出金リジェクト紙幣を回収カセット70へ収納する(ステップD22)。
このように、紙幣処理装置1では、紙幣が金種別に収納された紙幣収納部60を利用して出金処理を行う場合に、通常は一時保留部40を出金リジェクト紙幣の一時収納に利用しながら紙幣収納部60から紙幣を出金する一方で、一時保留部40が偽券保管部として利用されているために出金リジェクト紙幣の一時収納に利用できなければ回収カセット70を利用して出金処理が行われるようになっている。これにより、一時保留部40を偽券保管部として利用しているために、一時保留部40を出金リジェクト紙幣の一時収納に利用できない場合でも、紙幣処理装置1の利用を停止させることなく出金処理を行うことができる。
なお、紙幣処理装置1では、一時保留部40を偽券保管部として利用している間に出金処理が行われる場合に、出金リジェクト紙幣の発生を抑えるために、紙幣をリジェクトするか否かの判定値を変更することも可能となっている。具体的には、例えば、紙幣をリジェクトするか否かの判定に利用する金種、真偽、正損等の識別用閾値、紙幣搬送路50を搬送される紙幣をリジェクトするか否かの判定に利用する斜行量等の判定用閾値を、緩和した値に変更する。これにより、一時保留部40を出金リジェクト紙幣の収納に利用することができない間のみ、通常の出金処理時に比べて、出金リジェクト紙幣が発生する確率を低くすることができる。一時保留部40の利用態様によって閾値を変更するか否か、いずれの閾値を緩和するかについては、設定により変更できるようになっている。
次に、紙幣処理装置1で行われる紙幣処理の流れについて説明する。図10は、紙幣処理装置1で行われる入金処理及び出金処理の処理の流れを示すフローチャートである。入金処理又は出金処理(以下「入出金処理」と記載する)が開始されると、まず、制御部90が、一時保留部40を偽券保管部として利用中であるか否かを判定する(ステップS10)。そして、一時保留部40を偽券保管部として利用中であり入出金処理に一時保留部40を利用できない場合には(ステップS10;Yes)、一時保留部40を利用することなく、ダイレクト入金や代替出金等の入出金処理を実行して(ステップS11)、処理を完了する。
一方、一時保留部40が偽券保管部として利用されておらず通常通りに一時保留部として利用できる場合には(ステップS10;No)、必要に応じて一時保留部40を利用しながら通常通りに入出金処理を開始する(ステップS21)。そして、識別部30によって偽券と識別された紙幣がないかを監視しながら(ステップS22;No)、入出金処理を継続する(ステップS23;No)。
入出金処理中に偽券が発生した場合には(ステップS22;Yes)、制御部90は、残りの入出金処理を実行した後、一時保留部40の利用を偽券保管部としての利用に切り替えて(ステップS24)、処理を完了する。このとき、制御部90によって、記憶部80の一時保留部設定データ80aに含まれるステータス情報が、一時保留部40を偽券保管部として利用中であることを示す情報に書き換えられる。
一時保留部40を利用して入出金処理を開始した後(ステップS21)、偽券が発生することなく(ステップS22;No)、入出金処理を完了した場合には(ステップS23;Yes)、そのまま処理を完了する。
なお、本実施形態では一時保留部40に偽券のみを収納して、この偽券を紙幣処理装置1に備えられた1つの出金口20に排出する例を示したが、本実施形態がこれに限定されるものではない。図11は、紙幣処理装置1による偽券の保管処理及び排出処理の他の態様を示す模式図である。
例えば、紙幣処理装置1が第1出金口20及び第2出金口21の2つの出金口を備える場合には、一時保留部40から偽券を排出する際に、図11(A)に示すように、偽券の種類に応じて、第1出金口20及び第2出金口21に偽券を分類して排出する態様であってもよい。偽券の中には同じ記番号を有するものが存在する。このため、偽券の記番号を偽券データベースに登録しておけば、識別部30によって紙幣の記番号を読み取って、読み取った記番号が偽券データベースに登録された記番号と一致する場合に、この紙幣を偽券と判定することができる。例えば、既に偽券データベースに登録されている記番号を有する偽券を第1出金口20に排出して(ステップD11)、新たに発見された偽券を第2出金口21に排出すれば(ステップD12)、第2出金口21に排出された偽券を抜き取って確認し、偽券であることが確定した場合にこの偽券の記番号を偽券データベースに登録する一連の作業を容易に行うことができる。
紙幣処理装置1では、出金口20が1つのみである場合でも、偽券を種類別に分けて排出することができる。例えば、出金口20に偽券を排出して、次に排出される偽券の種類が変わる所で偽券の排出を停止して、排出済みの偽券が出金口20から抜き取られたことを検知してから次の偽券の排出を再開することで、偽券を種類別に排出することができる。また、出金口20に加えて入金口10を偽券の排出に利用して、入金口10及び出金口20に偽券を種類別に分類して排出することも可能である。
また、一時保留部40を偽券保管部として利用する場合に、偽券に加えて、偽券の可能性がある紙幣(サスペクト紙幣)、損券等を一時保留部40に収納する態様であっても構わない。例えば、紙幣処理装置1が第1出金口20及び第2出金口21の2つの出金口を備える場合には、図11(B)に示すように、一時保留部40を偽券及び損券の収納に利用して、偽券を第1出金口20に排出して(ステップD21)、損券を第2出金口21に排出することにより(ステップD22)、損券と偽券を分類することができる。なお、紙幣処理装置1では、偽券保管部として利用中の一時保留部40から紙幣を排出する際には、どこへどのような種類の紙幣を排出するかを示す情報が操作端末2の表示部上に表示されるようになっている。これにより、紙幣処理装置1の操作者は、入金口10、第1出金口20、第2出金口21等に排出された紙幣の種類を認識して、各紙幣に応じた作業を行えるようになっている。
また、本実施形態では、偽券が発生した場合に、一時保留部40の利用が一時保留部としての利用から偽券保管部としての利用に自動的に切り替えられ、一時保留部40から全ての偽券が排出された場合に、一時保留部40の利用が偽券保管部としての利用から一時保留部としての利用に自動的に切り替えられる態様を示したが、紙幣処理装置1では一時保留部40の利用方法を固定することも可能となっている。具体的には、一時保留部40の利用を一時保留部としての利用に固定したい場合や偽券保管部としての利用に固定したい場合には、記憶部80の一時保留部設定データ80aに保存された設定情報を予め設定しておくことにより、これを実現できるようになっている。
また、本実施形態では、一時保留部40を偽券保管部として利用する場合でも、一時保留部40を利用することなく入金処理や出金処理を行う態様を示したが、一時保留部40を利用しなければ実行できない処理も存在する。例えば、最初に識別された紙幣と同一金種の紙幣を一時保留部40に収納しながら計数して、他金種の紙幣を出金口20に排出する整理計数処理は、一時保留部40を利用しなければ処理を実行することができない。紙幣処理装置1で、一時保留部40を偽券保管部として利用している間に、整理計数処理等、一時保留部40を利用しなければ実行できない紙幣処理を実行するよう指示された場合には、操作端末2の表示部に、一時保留部40が偽券保管部として利用中であるために指示された紙幣処理を実行できないことを示す情報と、一時保留部40から偽券を排出することにより指示された紙幣処理を実行できることを示す情報とが表示される。紙幣処理装置1の操作者は、操作端末2の表示部に表示された情報を確認して、指示した紙幣処理をキャンセルしたり、一時保留部40から偽券を排出する処理を実行してから指示した紙幣処理を実行させたりすることができる。一時保留部40を利用しなければ実行できない紙幣処理としては、整理計数処理の他、残置回収処理及び精査処理がある。残置回収処理とは、紙幣収納部60に残したい紙幣を一時保留部40に収納しながら、他の紙幣を全て回収カセット70に回収した後、一時保留部40に収納した紙幣を紙幣収納部60へ戻す処理である。また、精査処理とは、紙幣収納部60に収納されている紙幣の金種及び枚数を確定するために、紙幣収納部60に収納されている全ての紙幣を一旦一時保留部40へ収納した後、一時保留部40から紙幣を繰り出して識別部30により識別して紙幣収納部60へと戻す処理である。
また、本実施形態では、偽券が発生して一時保留部40の利用態様が切り替えられたときに、操作端末2を利用して紙幣処理装置1の操作者にこれを報知する態様を示したが、紙幣処理装置1では、報知を実行するか否かを設定できるようになっている。具体的には、一時保留部40の利用態様が切り替えられた際に報知を行わないように、記憶部80の一時保留部設定データ80aに保存された設定情報を予め設定しておくことにより、操作端末2による報知処理は実行されなくなる。
また、紙幣処理装置1では、入金処理中に偽券が発生した場合に、これを入金金額としてカウントするか否かを設定できるようになっている。偽券と識別された紙幣が発生した場合に入金処理を行う方法として、偽券と識別された紙幣の金額分を入金金額に含めておいて、後に偽券であることが確定されてからこの紙幣の金額分を顧客の口座から差し引く方法と、偽券と識別された紙幣の金額分を入金金額から除いておいて、後にこの紙幣が真券であることが確定されてからこの紙幣の金額分を顧客の口座に振り込む方法とが考えられる。紙幣処理装置1では、記憶部80の一時保留部設定データ80aに保存された設定情報を予め設定しておくことにより、偽券と識別された紙幣の金額分を入金金額に含めることも入金金額から除外することも可能であるため、紙幣処理装置1を利用する金融機関の運用に応じて対応する処理を実行できるようになっている。
上述したように、本実施形態によれば、偽券を保管するための専用の収納庫を設ける必要がないため、専用の収納庫を設ける場合に比べて紙幣処理装置1を小型化することができる。そして、偽券が発生した場合には、一時保留部40を偽券保管部として利用することにより、偽券専用の収納庫を有する装置と同様に偽券を他の紙幣と区別して保管することができる。
以上のように、本発明に係る紙幣処理装置は、小型化を実現しながら、偽券が発生した場合にのみ偽券専用の収納部を設けるために有用な技術である。
1 紙幣処理装置
2 操作端末
10 入金口
20、21 出金口
30 識別部
40 一時保留部(偽券保管部)
50 紙幣搬送路
60、60a〜60h 紙幣収納部
70 回収カセット
80 記憶部
90 制御部

Claims (9)

  1. 入金する紙幣を受けるための入金口と、
    前記入金口から装置内に繰り出された紙幣を1枚ずつ搬送する搬送路と、
    前記搬送路を搬送される紙幣を識別する識別部と、
    入金された紙幣を収納するための紙幣収納部と、
    出金する紙幣を前記紙幣収納部から繰り出して排出するための出金口と、
    紙幣処理中に紙幣を一時的に収納するために利用する一時保留部と、
    前記一時保留部を通常の一時保留部として利用するか偽券保管部として利用するかを切り替える制御部と
    を備え
    前記制御部は、前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、前記一時保留部を偽券保管部としての利用に切り替えて、偽券と識別された紙幣を前記一時保留部に収納して保管する
    ことを特徴とする紙幣処理装置。
  2. 前記制御部は、入金処理中に前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、該紙幣を前記一時保留部に収納すると共に、前記一時保留部を偽券保管部としての利用に切り替えて、前記入金処理の完了後も継続して偽券を保管することを特徴とする請求項に記載の紙幣処理装置。
  3. 前記制御部は、偽券保管部として利用されている前記一時保留部から全ての偽券が排出された場合に、前記一時保留部を一時保留部としての利用に切り替えることを特徴とする請求項又はに記載の紙幣処理装置。
  4. 前記制御部は、偽券保管部として利用されている前記一時保留部から前記出金口に排出された全ての偽券が前記出金口から取り出されない限り、次の処理を開始しないことを特徴とする請求項3に記載の紙幣処理装置
  5. 前記制御部は、前記一時保留部が偽券保管部として利用されている間は、前記一時保留部を利用して行う紙幣処理を、前記一時保留部を利用することなく実行することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
  6. 前記制御部は、前記一時保留部を偽券保管部としての利用に切り替えた際に、これを報知する情報を出力することを特徴とする請求項〜5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
  7. 前記制御部は、入金処理中に前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、該紙幣の金額を前記入金処理の入金金額から除外することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
  8. 前記制御部は、入金処理中に前記識別部によって偽券と識別された紙幣が発生した場合に、該紙幣の金額を前記入金処理の入金金額に含めることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
  9. 前記制御部は、認証処理により認証された場合にのみ、偽券保管部として利用されている前記一時保留部からの偽券の排出処理を実行することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
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