JP6400157B1 - 密閉型イヤホン - Google Patents
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Abstract
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図2(a)に示すように、日常生活での人の外耳道1は、この奥の鼓膜2で閉じられた「閉管」と近似できる。そして、外耳道1の長さから、約3kHzで共鳴する特性を持っている。図2(b)には、外耳道1の入口が密閉型イヤホンの放音用導音部3によって塞がれた状態が示されている。
(i) 外耳道閉塞により生じる特定周波数(例えば、6kHz)のピークを低減するための構成が複雑であり、構成部品の調整が難しい。
(ii) 密閉型イヤホンは、その特性上、音の空間が狭く聞こえてしまい、その改善が望まれている。
図3は、ヘルムホルツの共鳴を説明するための模式図である。
図3の構造物10は、容積vを有するボール状の容器11と、断面積o及び長さlを有する円筒状の筒部12と、を合わせた構造になっている。この構造物10は、音速をcとしたとき、次式(1)の共振周波数ω0で共鳴することが知られている(ヘルムホルツの共鳴)。
ω0=c√(s/(vl)) (1)
図3の構造物10は、電気的等価回路で図4のように描くことができる。この電気的等価回路は、直列共振回路10Aであり、構造物10全体の音響的抵抗Rと、筒部12を表すインダクタLと、容器11を表す容量Cと、の直列回路により構成されている。
共振周波数ω0=1/√(LC) (2)
この原理を応用した製品としては、有孔ボード(吸音壁材)等がある。
図1は本発明の実施例1における密閉型イヤホンの構成を示す概略の断面図、図5は図1の全体の分解斜視図、更に、図6は図1中のヘルムホルツイコライザ40の拡大断面図である。
図1、図5及び図6に示す密閉型イヤホン20の動作を説明する。
コード24から音声信号が送られてくると、フロントハウジング21内のドライバユニット30において、ボイスコイル32にローレンツ力が発生し、そのボイスコイル32に取り付けられた振動板33が振動し、音波が出力される。出力された音波の一部は、ヘルムホルツイコライザ40内の吸収孔43を通して中空部42内へ供給される。すると、中空部42においてヘルムホルツ共鳴が生じ、音波中の特定周波数(例えば、1kHz付近、6kHz付近、あるいは10kHz付近等のいずれか1つの周波数)の音が吸収される。特定周波数の音が吸収された音波は、前面抵抗材25によって所定の周波数の音が減衰され、音導管23a及びイヤピース23bを通してイヤホン装着者の外耳道へ注入される。これにより、外耳道奥の鼓膜が振動し、音波が再生される。
図7は、図1の密閉型イヤホン20の電気的等価回路を示す図である。
リアハウジング22のインピーダンスZrには、音声信号源S、ドライバユニット30の第1インピーダンスZd、及びドライバユニット30の前面側の前面容量Cfが直列に接続されている。ドライバユニット30のインピーダンスZdは、インダクタLd、容量Cd、及び抵抗Rdの直列回路で表わすことができる。前面容量Cfに対して、前面抵抗材25の前面抵抗Rfと第1ヘルムホルツイコライザ40の第2インピーダンスZhとが並列に接続されている。第1ヘルムホルツイコライザ40の第2インピーダンスZhは、抵抗Rh、インダクタLh及び容量Chの直列共振回路で表わすことができる。第2インピーダンスZhの両電極間には、導音管23aに相当するインダクタApの第3インピーダンスと耳側の第4インピーダンスZeとが直列に接続されている。
図8の電気的等価回路では、図7の電気的等価回路を以下のように簡略化している。
ドライバユニット30のインピーダンスZd;
インダクタLd=0.6mH
容量Cd=40μF
抵抗Rd=10Ω
前面容量Cf=0.5μF
前面抵抗Rf=0.2kΩ
ヘルムホルツイコライザ40のインピーダンスZh;
抵抗Rh=5Ω
インダクタLh=3.5mH
容量Ch=0.2μF
耳側の容量Ce=0.7μF
出力周波数の6kHz付近の出力音圧outが大幅に低下している。
ドライバユニット30のインピーダンスZdは、周波数が約1kHz以下で弾性制御(容量性)、周波数が約1kHz以上では質量制御(誘導性)になっている。
図8の等価回路を単純化すると、図13に示すように、ドライバユニット30のインピーダンスZdと、ヘルムホルツイコライザ40を含む負荷側全体のインピーダンスZf1/Zf2と、の電圧分割回路になる。
図14の上段は図10の波形であり、図14の下段は図12の波形である。
図15(b)に示すように、図15(a)の回路から、出力音圧outの遮断周波数以下は、オクターブ(Oct)当り約6dBの割合で減衰し、遮断周波数以上は、フラットになる。
図16(b)に示すように、図16(a)の回路から、出力音圧outの周波数特性はフラットになる。
図17(b)に示すように、図17(a)の回路では、遮断周波数付近に出力音圧outのピークができ、それ以上の周波数ではオクターブ(Oct)当り約12dBの割合で出力音圧outが減衰する。
ドライバユニット30のインピーダンスZd;
インダクタLd=0.6mH
容量Cd=40μF
抵抗Rd=10Ω
前面容量Cf=0.5μF
前面抵抗Rf=0.2kΩ
ヘルムホルツイコライザ40のインピーダンスZh;
抵抗Rh=500Ω
インダクタLh=3.5mH
容量Ch=0.2μF
耳側の容量Ce=0.7μF
図18を図9と比較すると、6kHz付近の周波数の吸収以外に、特性の変化が殆ど無いことが分かる。そのため、ヘルムホルツイコライザ40は、他の音響回路に影響を与えないと推定できる。
図19において、実線の波形Take4は図1の密閉型イヤホン20の周波数特性である。更に、破線の波形Take6は図6のヘルムホルツイコライザ40における吸入孔43を粘土等で塞いでヘルムホルツ共振の効果を無くした構成の周波数特性である。
目標の特定周波数(例えば、6kHz付近)だけが減衰し、他の周波数帯域に影響していない。図6のヘルムホルツイコライザ40が非常に効果的に作用していることが分かる。
本実施例1の密閉型イヤホン20によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
図21は、本発明の実施例2における密閉型イヤホン20Aの構成を示す概略の断面図、図22は図21の全体の分解斜視図、更に、図23は図21中のヘルムホルツイコライザ40Aの拡大斜視図である。図21〜図23において、実施例1を示す図1、図5及び図6中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
図21〜図23に示す密閉型イヤホン20Aの動作を説明する。
コード24から音声信号が送られてくると、フロントハウジング21A及びリアハウジング22A内のドライバユニット30において、ボイスコイル32にローレンツ力が発生し、そのボイスコイル32に取り付けられた振動板33が振動し、音波が出力される。出力された音波の一部は、ヘルムホルツイコライザ40Aの筒部45を通して容器44内へ供給される。すると、容器44においてヘルムホルツ共鳴が生じ、音波の一部における特定周波数(例えば、1kHz付近、6kHz付近、あるいは10kHz付近等のいずれか1つの周波数)の音が吸収される。特定周波数の音が吸収された音波は、前面抵抗材25によって所定の周波数の音が減衰され、音導管23a及びイヤピース23bを通してイヤホン装着者の外耳道へ注入される。これにより、外耳道奥の鼓膜が振動し、音波が再生される。
本実施例2の密閉型イヤホン20Aの電気的等価回路は、実施例1の図7と同様である。そのため、本実施例2の密閉型イヤホン20Aは、実施例1と同様の出力特性を有している。
図24において、実線の波形Take13は図21の密閉型イヤホン20Aの周波数特性である。更に、破線の波形Take14は図23のヘルムホルツイコライザ40Aにおける筒部45を粘土等で塞いでヘルムホルツ共振の効果を無くした構成の周波数特性である。
実施例1と略同様に、目標の特定周波数(例えば、6kHz付近)だけが減衰し、他の周波数帯域に影響していない。図23のヘルムホルツイコライザ40Aが非常に効果的に作用していることが分かる。
実施例2は、実施例1と略同様の効果がある。
図26は、本発明の実施例3における密閉型イヤホン20Bの構成を示す概略の断面図である。図26において、実施例1及び実施例2を示す図1及び図21中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例3の密封型イヤホン20Bは、実施例2の密閉型イヤホン20Aにおいて、実施例1のヘルムホルツイコライザ40を付加した構成になっている。
図26に示す密閉型イヤホン20Bの動作を説明する。
コード24から音声信号が送られてくると、フロントハウジング21B及びリアハウジング22A内のドライバユニット30において、ボイスコイル32にローレンツ力が発生し、そのボイスコイル32に取り付けられた振動板33が振動し、音波が出力される。出力された音波の一部は、第2ヘルムホルツイコライザ40Aの筒部45を通して容器44内へ供給される。すると、容器44においてヘルムホルツ共鳴が生じ、音波の一部における第2の特定周波数(例えば、1kHz付近、6kHz付近、あるいは10kHz付近等のいずれか1つの周波数)の音が吸収される。第2の特定周波数の音が吸収された音波は、前面抵抗材25によって所定の周波数の音が減衰される。
図27は、図26の密閉型イヤホン20Bの電気的等価回路を示す図である。図27では、実施例1の電気的等価回路を示す図7中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例3の電気的等価回路では、第2ヘルムホルツイコライザ40Aの第5インピーダンスZh1と並列に、第1ヘルムホルツイコライザ40の第2インピーダンスZh2が接続されている。そのため、第2及び第1の特定周波数だけが減衰した音圧の音波が出力される。
本実施例3によれば、2つの第2、第1ヘルムホルツイコライザ40A,40を設けたので、1kHz付近、6kHz付近、あるいは10kHz付近等の任意の2つの周波数の音波を減衰できる。そのため、聞こえる音の空間を広く感じさせることができる。
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
21,21A,21B フロントハウジング
22,22A リアハウジング
23,23B 導音部
24 コード
30 ドライバユニット(電気音響変換器)
40,40A ヘルムホルツイコライザ(ヘルムホルツ吸収部)
41 環状部材
42 中空部
43 吸収孔
44 容器
45 筒部
Claims (7)
- 電気信号を音波に変換して出力する電気音響変換器と、
外耳道の入口に挿入され、前記電気音響変換器から出力される前記音波を前記外耳道へ導く導音部と、
前記電気音響変換器から出力される前記音波のヘルムホルツ共鳴により生じる第1の特定周波数の音を吸収する第1ヘルムホルツ吸収部と、
を備え、
前記第1ヘルムホルツ吸収部は、
中空の環状部材と、前記環状部材の内周面により形成されて前記電気音響変換器から出力される前記音波を通過させる貫通孔と、前記内周面に形成されて前記貫通孔を通過する前記音波の一部を吸収する吸収孔と、を有し、
前記電気音響変換器、前記第1ヘルムホルツ吸収部、前記導音部、及び前記外耳道は、
前記電気音響変換器の第1インピーダンスと、前記第1インピーダンスに対して並列に接続された前記第1ヘルムホルツ吸収部の第2インピーダンスと、前記第1インピーダンスに対して直列に接続された前記導音部の第3インピーダンスと、前記第3インピーダンスに対して直列に接続された前記外耳道の第4インピーダンスと、を有する音響等価回路により構成されている、
ことを特徴とする密閉型イヤホン。 - 前記電気音響変換器の出力側と前記音導部とは、同一軸上に配置され、
前記第1ヘルムホルツ吸収部は、前記電気音響変換器の出力側と前記音導部との間であって、前記同一軸に対して直交する方向に配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の密閉型イヤホン。 - 前記電気音響変換器の出力側は、前記導音部の中心軸に対して所定角度で折曲する方向に配置され、
前記第1ヘルムホルツ吸収部は、前記電気音響変換器の出力側と前記音導部との間であって、前記導音部の中心軸に対して直交する方向に配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の密閉型イヤホン。 - 前記所定角度は、90°〜145°内の任意の角度である、
ことを特徴とする請求項3記載の密閉型イヤホン。 - 前記電気音響変換器の出力側と前記第1ヘルムホルツ吸収部との間であって、前記電気音響変換器の出力側と対向する位置に、前記電気音響変換器から出力される前記音波のヘルムホルツ共鳴により生じる第2の特定周波数の音を吸収する第2ヘルムホルツ吸収部が設けられ、
前記第2ヘルムホルツ吸収部の第5インピーダンスは、前記第1ヘルムホルツ吸収部の第2インピーダンスに対して並列に接続されている、
ことを特徴とする請求項3又は4記載の密閉型イヤホン。 - 前記第2ヘルムホルツ吸収部と前記電気音響変換器の出力側とは、同一軸上又は傾斜して対向している、
ことを特徴とする請求項5記載の密閉型イヤホン。 - 前記第2ヘルムホルツ吸収部は、
前記電気音響変換器から出力される前記音波の一部を吸収する筒部と、前記筒部の端部に設けられた容器と、
を有することを特徴とする請求項5又は6記載の密閉型イヤホン。
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