以下に、本発明にかかる止水装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態1〕
まず、実施形態1に係る止水装置について説明する。図1は、実施形態1に係る止水装置の概略構成例を示す正面図である。図2は、実施形態1に係る止水装置の一部平面図である。図3は、実施形態1に係る止水装置の一部背面図である。図4は、実施形態1に係る止水装置(立位状態)の断面図である。図5は、実施形態1に係る止水装置の断面図である。図6は、実施形態1に係る止水装置(傾斜状態)の動作説明図である。なお、図4は図1のA−A断面図であり、図5は図1のB−B断面図である。ここで、各図における「屋内外方向」とは開口部を挟んで屋外側と屋内側とを結ぶ方向であり、「幅方向」とは屋内外方向と直交し、一対の枠部材が離間して設置される方向であり、「上下方向」とは屋内外方向および幅方向と直交する方向である。
本実施形態に係る止水装置1Aは、図1に示すように、開口部100を止水するものであり、止水板2と、第1止水部材3R,3Lと、第2止水部材4と、一対の押圧機構5R,5Lと、一対の固定機構6R,6Lと、保持機構7R,7Lとを備え、さらに、一対の位置決め機構8R,8Lとを備える。ここで、開口部100は、構造物の屋内側と屋外側とを連通するものであり、例えば、高い意匠性が要求される店舗の入り口などを構成する。また、構造物は、開口部100を有していればよく、所定の敷地を囲む屋根のない塀なども含まれる。この場合は、屋内側とは囲いの内側となり、屋外側とは囲いの外側となる。開口部100は、少なくとも一対の枠部材200R,200Lと、床部300とにより形成されている。一対の枠部材200R,200Lは、幅方向において離間して設置されるものであり、床部300から立設されている。本実施形態における開口部100は、開閉体が設けられていない場合について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、扉、自動扉や、シャッターなどの開閉体が存在していてもよい。また、本実施形態における枠部材200R,200Lは、例えば、金属製の方立である。
止水板2は、開口部100の屋外側に配置されることで、屋外側から屋内側に浸入する水を図2に示す形状の止水板2においては屋外側の側面2aで受け止め、堰き止めるものである。止水板2は、矩形状に形成されており、幅方向における長さが開口部100の幅方向における長さよりも長く設定されている。つまり、止水板2は、幅方向における両端部が一対の枠部材200R,200Lと、屋内外方向においてそれぞれ対向する。止水板2は、平面を有するパネル形状に構成されており、ユーザーが単独で持ち運びできる程度の重量であることが好ましく、例えば、アルミ製の枠材および枠材にはめ込まれるパネル材により構成されている。なお、枠材とパネル材との間は止水部材などが介在されている。さらに、止水板2の内部空間は、空洞のままでも、発泡材など外圧に対して止水板2が変形することを抑制する部材が挿入されていてもよい。また、止水板2は、立位状態における上下方向での高さがユーザーが十分に跨ぐことができる高さに設定されている。高さとしては、例えば、30CMから60CM程度である。従って、止水装置1Aが設置状態であっても、開口部100を使用して、外部と構造物の内部との間を行き来することができる。
一対の第1止水部材3R,3Lは、枠部材200R,200Lと止水板2との間をそれぞれ止水するものである。第1止水部材3R,3Lは、止水板2の屋内側の側面2bの幅方向における両端部にそれぞれ設けられている。本実施形態における第1止水部材3R,3Lは、同一形状であり、止水板2の上下方向における両端部までの長さを有する帯状に形成されている。第1止水部材3R,3Lは、弾性変形が大きい軟質ゴム、あるいは発泡ゴムなどである。ここで、第1止水部材3R,3Lは、第1止水部材3Rを枠部材200Rと屋内外方向において対向させた際に、第1止水部材3Lが枠部材200Lと幅方向において対向するように、止水板2に対する幅方向の間隔が設定されている。本実施形態における第1止水部材3R,3Lは、枠部材200R、200Lの幅方向における幅よりも狭い幅で形成されている。また、第1止水部材3R,3Lは、第1止水部材3Rの幅方向における開口部100側の端部を枠部材200Rの幅方向における開口部100側の端部と一致させた場合に、第1止水部材3Lの幅方向における開口部100側と反対側の端部が枠部材200Lの幅方向における開口部100側と反対側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側に位置するように、止水板2に対して設けられている。なお、第1止水部材3R,3Lは、止水板2の上下方向における下方側の端部から上方に向かって形成されていればよく、この場合は止水装置1Aが想定する止水すべき床部300からの高さよりも高い位置まで形成されていればよい。
第2止水部材4は、床部300と止水板2との間を止水するものである。第2止水部材4は、止水板2の底面2d、すなわち上下方向における下方側の面に設けられている。本実施形態における第2止水部材4は、止水板2の幅方向における両端部までの長さを有する帯状に形成されている。第2止水部材4は、幅方向における両端部が第1止水部材3R,3Lとそれぞれ連結されている。例えば、第2止水部材4の幅方向における両端部が止水板2の屋内側の側面2bに延在しており、側面2bにおいて第1止水部材3R,3Lと第2止水部材4とが屋内外方向において重なっている。第2止水部材4は、弾性変形が大きい軟質ゴム、あるいは発泡ゴムなどであり、第1止水部材3R,3Lと共通の断面形状としてもよいが、止水板2の自重および押圧機構5R,5Lによる押圧力により変形することを考慮して、外力が作用していない状態で、第1止水部材3R,3Lよりも厚く形成するようにしてもよい。
一対の押圧機構5R,5Lは、止水板2が傾斜状態から立位状態となることで、止水板2を床部300に押圧するものである。押圧機構5R,5Lは、枠部材200R,200Lに固定された固定機構6R,6Lと、止水板2との間で幅方向周りに回転自在に支持されるものである。押圧機構5R,5Lは、枠部材200R、200Lにそれぞれ対応して設けられ、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。押圧機構5R,5Lは、支持部材51と、押圧部材52と、回転軸53とを備える。
支持部材51は、押圧部材52を幅方向周りに回転自在に支持するものである。支持部材51は、止水板2の屋内側の側面2bに取り付けられている。
押圧部材52は、後述するノブ65を介して固定機構6R,6Lを幅方向周りに回転自在にそれぞれ支持するものである。本実施形態における押圧部材52は、屋内外方向から見た場合に、上下方向に延在する板状部材であり、上下方向における下方側の端部に支持穴52aが形成され、上方側の端部にねじ穴52bが形成されている。支持穴52aは、幅方向に形成された貫通穴であり、回転軸53が幅方向周りに回転自在に挿入されるものである。ねじ穴52bは、幅方向に形成された貫通穴であり、ノブ65の軸部65aが螺合する雌ねじが形成されている。ここで、押圧部材52の上下方向の長さは、止水板2が立位状態において、固定機構6R,6Lの後述する接触部材61が止水板2の上面2cと非接触となるように設定されている。また、押圧部材52は、上下方向から見た場合に、幅方向において枠部材200R,200Lに固定された固定機構6R,6Lの後述する支持部材64との間に間隙が形成可能に配置されている。
回転軸53は、支持部材51に幅方向に平行に固定され、押圧部材52を回転軸53周り、すなわち幅方向周りに支持するものである。つまり、押圧機構5R,5Lは、止水板2の屋内側の側面2bに対して、幅方向周りに回転自在に支持されることとなる。
一対の固定機構6R,6Lは、枠部材200R,200Lに着脱自在にそれぞれ固定されるものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における固定機構6R,6Lは、止水板2に対する幅方向における位置を変化させることで、枠部材200R,200Lの幅方向において対向する対向面201にそれぞれ接触するとともに、幅方向外側にそれぞれ押圧することで、枠部材200R,200Lにそれぞれ固定される。固定機構6R,6Lは、接触部材61と、第1緩衝部材62と、第2緩衝部材63と、支持部材64と、ノブ65とを備える。
接触部材61は、枠部材200R,200Lに接触するものである。本実施形態における接触部材61は、対向面201と接触するものであり、屋内外方向における屋外側の端部が幅方向における開口部100側と反対側に延在しており、枠部材200R,200Lの屋外側の屋外側面202とも接触する。接触部材61は、幅方向において枠部材200R,200Lをそれぞれ押圧することが可能な強度を有する、例えば、金属製である。
第1緩衝部材62は、接触部材61の対向面201と対向する部分に設けられ、接触部材61と対向面201との間に介在するものである。また、第2緩衝部材63は、接触部材61の屋外側面202と対向する部分に設けられ、接触部材61と屋外側面202との間に介在するものである。第1緩衝部材62および第2緩衝部材63は、接触部材61が枠部材200R,200Lと直接接触することで、枠部材200R,200Lが損傷することを抑制するものである。第1緩衝部材62および第2緩衝部材63は、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。
支持部材64は、接触部材61の幅方向において対向面201側と反対側に取り付けられている。支持部材64は、屋内外方向から見た場合に、幅方向において接触部材61側と反対側に向かって突出する凸形状に形成されており、接触部材61との間で空間部64aが形成されている。支持部材64は、幅方向において接触部材61側と反対側に、空間部64aと連通する挿入穴64bが形成されている。
ノブ65は、接触部材61を幅方向周りに回転自在に支持するものである。ノブ65は、軸部65aと、把持部65bとを備える。軸部65aは、棒状であり、外周面に雄ねじが形成されている。軸部65aの幅方向における両端部のうち、一方の端部、すなわち先端部が支持部材64に挿入され、他方の端部が把持部65bに固定されている。軸部65aは、押圧部材52のねじ穴52bに、先端部が幅方向における外側、すなわち枠部材200R,200Lと対向するように螺合されている。つまり、ノブ65は、幅方向周りに回転しなければ、押圧部材52に対する幅方向における位置は変化しない。軸部65aは、支持部材64の空間部64aに位置している先端部に抜け止め部材65cが取り付けられている。つまり、ノブ65は、接触部材61を幅方向周りに回転自在に支持された状態で、接触部材61から先端部が抜けることが規制されている。これにより、固定機構6R,6Lは、押圧機構5R,5Lに対して、幅方向周りに回転自在に支持され、枠部材200R,200Lに着脱自在にそれぞれ固定される。把持部65bは、軸部65aを幅方向周りに回転させるものであり、ユーザーが把持するものである。把持部65bは、軸部65aよりも大きな外径で形成されている。なお、把持部65bは、ユーザーによる把持を容易とするために、外周面に凹凸が形成されていてもよい。
保持機構7R,7Lは、止水板2の立位状態を保持することで、枠部材200R,200Lに対する止水板2の位置関係を保持するものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における保持機構7R,7Lは、押圧機構5R,5Lにそれぞれ対応して一対設けられており、上下方向から見た場合に、止水板2と押圧機構5R,5Lとの間の屋内外方向における距離が広がることを規制するものである。保持機構7R,7Lは、支持部材71と、フック72と、回転軸73とを備える。
支持部材71は、フック72を幅方向周りに回転自在に支持するものである。支持部材71は、止水板2の上面2cに取り付けられている。支持部材71は、上面2cのうち、押圧部材52の幅方向における両端部のうち枠部材200R,200L側の端部よりも枠部材200R,200L側と屋内外方向において対向する位置に取り付けられている。
フック72は、押圧機構5R、5Lおよび固定機構6R,6Lの少なくとも一方を係止するものである。本実施形態におけるフック72は、ノブ65の軸部65aを係止するものである。フック72は、上下方向から見た場合に、屋内外方向に延在する略矩形状部材であり、屋内外方向における一方の端部に支持穴72aが形成され、他方の端部、すなわち先端部に係止溝72bが形成されている。支持穴72aは、幅方向に形成された貫通穴であり、回転軸73が幅方向周りに回転自在に挿入されるものである。係止溝72bは、軸部65aの一部が挿入されるものであり、止水板2が枠部材200R、200Lに対して屋内外方向のうち屋外側に相対移動すること規制するものである。
回転軸73は、支持部材71に幅方向に平行に固定され、フック72を回転軸73周り、すなわち幅方向周りに支持するものである。つまり、フック72は、止水板2の上面2cに対して、幅方向周りに回転自在に支持されることとなる。
一対の位置決め機構8R,8Lは、図5に示すように、止水板2の屋内側の側面2bに設けられ、枠部材200R,200Lに対する止水板2の幅方向における位置を決めるものである。位置決め機構8R,8Lは、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称であり、本体部材81と、位置決め部材82と、移動・保持部材83,84とを備える。
本体部材81は、位置決め部材82を支持するものである。本体部材81は、止水板2の屋内側の側面2bに取り付けられている。本実施形態における本体部材81は、側面2bのうち、支持部材51よりも上下方向における下方側に取り付けられている。本体部材81は、上下方向から見た場合に、屋内外方向において止水板2と対向する部分と、幅方向において枠部材200R,200Lと対向する部分とを有し、L字状に形成されている。本体部材81は、幅方向において枠部材200R,200Lと対向する部分に図示しない挿入穴が形成されている。
位置決め部材82は、枠部材200R,200Lの間に配置、すなわち対向面201と幅方向において対向するように配置される。位置決め部材82は、本体部82aと、軸部82bとを備える。本体部82aは、枠部材200R,200Lと接触する場合があるものであり、円板状に形成されている。本体部82aは、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。軸部82bは、棒状であり、外周面に雄ねじが形成されている。軸部82bの幅方向における両端部のうち、一方の端部、すなわち先端部が上記挿入穴に挿入され、他方の端部が本体部82aに固定されている。なお、位置決め部材82は、開口部100に対して止水板2を傾斜状態で配置した際に、幅方向において枠部材200R,200Lと対向するように、本体部材81に対して支持されている。
移動・保持部材83,84は、幅方向に図示しない貫通穴が形成されており、図示しない内周面に位置決め部材82の軸部82bが螺合する雌ねじが形成されている。移動・保持部材83,84は、本体部材81の挿入穴を挟んで幅方向に配置され、螺合する軸部82bを介して位置決め部材82を止水板2に対して幅方向において移動自在とし、かつ止水板2に対して幅方向における位置を保持する。
ここで、位置決め機構8R,8Lは、位置決め部材82の本体部材81に対する幅方向における位置を変更することで、第1止水部材3R,3Lを枠部材200R,200Lと屋内外方向において確実に対向させるものである。具体的には、枠部材200Rに対応する位置決め部材82については、枠部材200Rに接触した際に、第1止水部材3Rの幅方向における開口部100側と反対側の端部を枠部材200Rの開口部100側と反対側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側に位置させるとともに、第1止水部材3Lの幅方向における開口部100側の端部を枠部材200Lの開口部100側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側と反対側に位置させるように、本体部材81に対する幅方向における位置を調整する。一方、枠部材200Lに対応する位置決め部材82については、枠部材200Lに接触した際に、第1止水部材3Lの幅方向における開口部100側と反対側の端部を枠部材200Lの開口部100側と反対側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側に位置させるとともに、第1止水部材3Rの幅方向における開口部100側の端部を枠部材200Rの開口部100側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側と反対側に位置させるように、本体部材81に対する幅方向における位置を調整する。これにより、止水板2を開口部100に対して傾斜状態で配置する際に、上下方向から見た場合に、位置決め部材82を枠部材200R,200Lとの間に挿入すれば、位置決め部材82を枠部材200R,200Lに接触させても、枠部材200R,200Lに対する止水板2の幅方向における位置を、第1止水部材3R,3Lが幅方向において枠部材200R,200Lからはみ出ることのない位置に位置決めすることができる。従って、第1止水部材3R,3Lを枠部材200R,200Lに確実に密接させることができ、ユーザーに正しい止水装置1Aの設置を促すことができるので、止水装置1Aの止水性能を維持することができる。
次に、本実施形態に係る止水装置1Aの設置方法について説明する。ここで、位置決め機構8R,8Lは、止水装置1Aを設置する前に予め、位置決め部材82の本体部材81に対する幅方向における位置が調整されている。また、固定機構6R,6Lは、止水装置1Aを設置する前に予め、接触部材61の対向面201と接触する部分どうしの幅方向における距離が開口部100の幅よりも狭くなるように、ノブ65により調整されている。
ユーザーは、豪雨、津波、河川の氾濫などの水害時に、外部である屋外からの氾濫水などの水が建造物の屋内に開口部100から浸入すると予想される場合に、開口部100とは異なる場所で保管されている止水装置1Aを開口部100の屋外側まで運搬する。次に、ユーザーは、止水板2の向きを第1止水部材3R,3Lが屋内外方向において開口部100と対向する向きとする。
次に、ユーザーは、図6に示すように、止水板2を傾斜状態に配置する。ここで、傾斜状態とは、止水板2が床部300に接地、すなわち第2止水部材4が床部300に接地し、かつ、枠部材200R、200Lに対して屋外側に傾斜した状態である。なお、止水板2を傾斜状態に配置するときは、第1止水部材3R,3Lの両方の下端部が枠部材200R,200Lに密接するように、止水板2の下端部を枠部材200R,200Lに押し当てながら床部300に置くようにする。このとき、上述のように、位置決め機構8R,8Lにより、枠部材200R,200Lに対する止水板2の幅方向における位置は、第1止水部材3R,3Lが幅方向において枠部材200R,200Lからはみ出ることのない位置に位置決めされる。次に、ユーザーは、止水板2の傾斜状態を維持したまま、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lに固定する。ここでは、ユーザーは、接触部材61を対向面201に幅方向において対向させた状態で、ノブ65を一方向に回転させ、押圧部材52に対して軸部65aの先端部を対向面201側に移動させ先端部が接触する接触部材61を対向面201に向けて移動させる。ユーザーは、さらにノブ65を同一方向に回転させ、接触部材61を第1緩衝部材62を介して対向面201と接触させるとともに、第2緩衝部材63を介して屋外側面202と接触させる。ユーザーは、さらに、ノブ65を同一方向に回転させ、対向面201に接触した接触部材61により枠部材200R,201Lを幅方向においてそれぞれ押圧することで、接触部材61を枠部材200R,200Lに対して突っ張らせることで、接触部材61を枠部材200R,200Lに対して固定する。固定機構6R,6Lが枠部材200R,200Lに固定されると、止水板2はユーザーにより支持しなくても、傾斜状態を維持する。このとき、止水装置1Aを幅方向から見た場合に、軸部65aと、回転軸53と、止水板2および床部300の接地点を結ぶ線がくの字状となる。
次に、ユーザーは、止水板2を傾斜状態から立位状態とする。ここで、立位状態とは、幅方向から見た場合に、止水板2が枠部材200R,200Lに沿った状態をいう。ユーザーは、止水板2を屋内側に向けて押す。これにより、止水板2の上下方向における上方部分は、固定機構6R,6Lの中心、すなわち軸部65aを中心に矢印C方向に回転する。止水板2の上下方向における上方部分の回転中心は、枠部材200R,200Lに対する相対移動を行えない軸部65aであるため、回転軸53の軌跡により、枠部材200R,200Lに近づきながら、上下方向のうち下方に移動する。従って、第2止水部材4には、下方の押圧力Pが作用し、弾性変形する。つまり、第2止水部材4は、止水板2が傾斜状態から立位状態となることで、止水板2により床部300に押圧され、図4に示すように、床部300と密接する。また、第1止水部材3R,3Lは、止水板2が傾斜状態から立位状態となることで、枠部材200R,200Lとそれぞれ密接する。
次に、ユーザーは、止水板2が立位状態で、保持機構7R,7Lのフック72を回転軸73周りに一方向に回転させ、係止溝72bにノブ65の軸部65aをそれぞれ挿入させる。ここで、止水板2が立位状態において、幅方向から見た場合に、軸部65aよりも回転軸53が屋外側に位置している。従って、止水板2は、外力が作用しない場合、立位状態を維持することができず、傾斜状態になろうとする。しかしながら、保持機構7R,7Lにより、止水板2の立位状態を保持することで、一対の枠部材200R,200Lに対する止水板2の位置関係を保持するので、第1止水部材3R,3Lが枠部材200R,200Lと密接、および第2止水部材4が床部300と密接した状態を維持することができる。これにより、第1止水部材3R,3Lにより枠部材200R,200Lと止水板2との間を止水し、第2止水部材4により床部300と止水板2との間を止水する。この状態で、屋外側から開口部100を介して屋内側に水が浸入しようとすると、止水板2により開口部100から屋内側への水の浸入が防止される。止水板2の屋外側の水位が上昇すると、水圧を止水板2の側面2aが受けることになり、水圧が止水板2に対して屋内外方向における屋内側に作用する。これにより、第1止水部材3R,3Lに枠部材200R,200Lに対する押圧力が増加し、第1止水部材3R,3Lと枠部材200R,200Lとの密接が高まり、枠部材200R,200Lと止水板2との間の止水をより確実に行うことができる。
なお、止水装置1Aを取り外す場合は、保持機構7R,7Lのフック72を回転軸73周りに他方向に回転させ、係止溝72bからノブ65の軸部65aをそれぞれ離間させる。次に、ユーザーは、ノブ65を他方向に回転させ、押圧部材52に対して軸部65aの先端部を開口部100側に移動させ先端部を接触部材61から離間させる。これにより、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lから取り外すことができ、止水装置1Aを枠部材200R,200Lから取り外すことができる。
以上のように、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lに固定した状態で、止水板2を傾斜状態で配置し、止水板2を傾斜状態から立位状態とすることで、一対の押圧機構5R,5Lにより止水板2が床部300に押圧され、第2止水部材4が床部300を確実に密接させることができる。つまり、枠部材200R,200Lに対して、止水板2を屋外側から接触させる動作で、第2止水部材4が床部300を確実に密接させることができる。従って、第2止水部材4を床部300に密接させるための機構が簡単であり、止水板2と床部300との止水を確実に行うことができる。
なお、上記実施形態1では、フック72が軸部65aに係止することで、フック72により押圧機構5R,5Lと止水板2との相対移動を規制したが、これに限定されるものではない。図7は、実施形態1に係る止水装置の変形例を示す図である。図7に示すように、止水装置1Bの保持機構9R,9Lのフック94が押圧部材5R,5Lを係止することで、押圧機構5R,5Lと止水板2との相対移動を規制してもよい。なお、変形例に係る止水装置1Bの基本的構成および動作は、実施形態1に係る止水装置1Aの基本的構成および動作と同一あるいは略同一であるので、同一符号で示される要素については説明を省略あるいは簡略化する(後述の、実施形態2も同様)。
一対の固定機構6R,6Lは、接触部材66と、第1緩衝部材62と、第2緩衝部材67と、支持部材64と、ノブ65とを備える。接触部材66は、枠部材200R,200Lに接触するものである。本実施形態における接触部材66は、対向面201と接触するものであり、屋内外方向における屋内側の端部が幅方向における開口部100側と反対側に延在しており、枠部材200R,200Lの屋内側の屋内側面とも接触する。つまり、接触部材66は、固定機構6R,6Lが枠部材200R,200Lに対して固定された際に、屋内外方向における屋外側に移動することが規制される。保持機構9R,9Lにより止水板2が立位状態に保持されていると、枠部材200R.200Lと接触する止水板2により押圧機構5R,5Lが屋内外方向のうち、屋外側に引っ張られる。しかしながら、上述のように、接触部材66が屋内外方向における屋外側に移動することを規制されているので、止水装置1Bの設置状態を確実に維持することができる。
保持機構9R,9Lは、止水板2の立位状態を保持することで、枠部材200R,200Lに対する止水板2の位置関係を保持するものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における保持機構9R,9Lは、支持部材91と、係止受け部材92と、係止操作部材93と、フック94とを備える。保持機構9R,9Lの構造は、いわゆるパッチン錠、スナップ錠と称される留め金と同一あるいは準じた構造である。
支持部材91は、係止操作部材93を介してフック94を幅方向周りに回転自在に支持するものである。支持部材91は、止水板2の上面2cに取り付けられている。支持部材91は、上面2cのうち、屋内外方向において押圧部材52と対向する位置に取り付けられている。
係止受け部材92は、フック94に係止される部材であり、係止受け部92aと、本体部92bとが形成されている。係止受け部92aはフック94の先端部が挿入されるものであり、本体部92bの屋内外方向のうち屋外側の端部に形成されている。係止受け部92aは、幅方向から見た場合に、C字状に形成されており、開口部が屋内外方向のうち屋内側に形成されている。本体部92bは、押圧部材52の上面5aに取り付けられている。
係止操作部材93は、フック94を係止受け部材92に係止させるとともに、係止状態を保持するものである。係止操作部材93は、支持部材91とフック94との間に配置され、支持部材91およびフック94に対して幅方向周りに回転自在に支持されている。なお、フック94の係止操作部材93に対する回転中心93bは、支持部材91の係止操作部材93に対する回転中心93aよりも屋内外方向のうち屋外側に形成されている。
フック94は、係止受け部材92を係止する部材であり、棒状部材を折り曲げることで形成されている。棒状部材の両端部が係止操作部材93に回転自在に挿入されることで、フック94が係止操作部材93に対して軸方向周りに回転自在に支持されている。
次に、本変形例に係る止水装置1Bの設置方法について説明する。ユーザーは、止水板2の傾斜状態を維持したまま、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lに固定する。次に、ユーザーは、止水板2を傾斜状態から立位状態とする。次に、ユーザーは、保持機構9R,9Lにより止水板2の立位状態を保持する。具体的には、止水板2が立位状態で、係止操作部材93を支持部材91に対して一方向に回転させ、フック74の先端部を係止受け部92aに挿入する。フック94の先端部が係止受け部92aに挿入された状態で、係止操作部材93を支持部材91に対して一方向に回転させる。これにより、フック94の先端部は、屋内外方向のうち屋外側に移動し、係止受け部材92に対して屋外側に引っ張る力を作用させる。ここで、支持部材91に対して一方向に回転した係止操作部材93は、支持部材91と係止され、他方向に回転することが規制される。
なお、止水装置1Bを取り外す場合は、保持機構9R,9Lのフック94を他方向に回転させ、フック94の先端部を係止受け部92aから離間させる。次に、ユーザーは、ノブ65を他方向に回転させ、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lから取り外し、止水装置1Bを枠部材200R,200Lから取り外す。
また、傾斜状態から立位状態までの止水板2の上下方向における上方部分の移動量が係止操作部材93の操作におけるフック94の先端部の可動範囲内であれば、係止受け部92aは、フック94の先端部を挿入した状態で、回転自在でありつつ、フック94が離脱できないように構成してもよい。
なお、上記実施形態1および変形例では、固定機構6R,6Lの接触部材61,66は、断面L字状として、屋内外方向における端部を延在させて、枠部材200R,200Lの屋内外方向における側面にも接触するようにしたが、接触部材61,66を対向面201のみに接触させるようにし、第2緩衝部材63,67を省略してもよい。
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る止水装置について説明する。図8は、実施形態2に係る止水装置の概略構成例を示す図である。図9は、実施形態2に係る止水装置の要部断面図である。実施形態2に係る止水装置1Cが実施形態1に係る止水装置1Aと異なる点は、保持機構10R(図示省略),10L、一対の押圧機構11R(図示省略),11Lおよび一対の固定機構12R(図示省略),12Lの機構が異なる点である。なお、実施形態2に係る止水装置1Cの基本的構成および動作は、実施形態1に係る止水装置1Aの基本的構成および動作と同一あるいはほぼ同一であるので、同一符号で示される要素については説明を省略あるいは簡略化する。
本実施形態に係る止水装置1Cは、図8、図9に示すように、開口部100を止水するものであり、止水板2と、第1止水部材3L,3Rと、第2止水部材4と、保持機構10R,10Lと、一対の押圧機構11R,11Lと、一対の固定機構12R,12Lとを備え、さらに、図示は省略するが一対の位置決め機構8R,8Lとを備える。
保持機構10R,10Lは、止水板2の立位状態を保持することで、枠部材200R,200Lに対する止水板2の位置関係を保持するものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における保持機構10R,10Lは、押圧機構11R,11Lにそれぞれ対応して一対設けられており、上下方向から見た場合に、止水板2と押圧機構11R,11Lとの間の屋内外方向における距離が広がることを規制するものである。保持機構10R,10Lは、本体部101と、回転受け部102と、係止受け部103と備える。
本体部101は、止水板2の側面2bに取り付けられている。本体部101は、幅方向から見た場合に、上下方向のうち上方側の端部104が屋内側に突出して形成されている。
回転受け部102は、押圧機構11R,11Lの回転軸部112を幅方向に回転自在に支持するものである。回転受け部102は、幅方向から見た場合に、本体部101の上下方向のうち下方側の端部に幅方向に沿って形成されている。回転受け部102は、幅方向から見た場合に、屋内側に開口を有するC字状に形成されている。
係止受け部103は、押圧機構11R,11Lが幅方向周りに回転することを規制するものであり、止水板2の立位状態を保持するものである。係止受け部103は、本体部101の屋内側に突出した上方側の端部に形成されている。本実施形態における係止受け部103は、上下方向のうち下方側に突出し、かつ軸方向に延在する突出部である。
一対の押圧機構11R,11Lは、止水板2が傾斜状態から立位状態となることで、止水板2を床部300に押圧するものである。押圧機構11R,11Lは、枠部材200R,200Lに固定された固定機構12R,12Lと、止水板2との間で幅方向周りに回転自在に支持されるものである。押圧機構11R,11Lは、枠部材200R、200Lにそれぞれ対応して設けられ、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。押圧機構11R,11Lは、本体部111と、回転軸部112と、係止部113と、固定機構受け部114とを備える。
本体部111は、固定機構12R,12Lを幅方向周りに回転自在に支持するものである。本体部111には、固定機構受け部114が形成されている。
回転軸部112は、回転受け部102に対して幅方向周りに回転自在に支持されるものである。回転軸部112は、幅方向から見た場合に、本体部111の上下方向のうち下方側の端部に幅方向に沿って形成されている。回転軸部112は、幅方向から見た場合に、円状に形成されている。
係止部113は、係止受け部103に係止されることで、回転軸部112を回転中心とする押圧機構11R,11Lが幅方向周りに回転することを規制するものである。係止部113は、本体部111の幅方向から見た場合に、上下方向のうち上方側の端部が屋内側に突出して形成される突出部である。
一対の固定機構12R,12Lは、枠部材200R,200Lに着脱自在にそれぞれ固定されるものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における固定機構12R,12Lは、止水板2に対する幅方向における位置を変化させることで、枠部材200R,200Lの幅方向において対向する対向面201にそれぞれ挿入されることで、枠部材200R,200Lにそれぞれ固定される。固定機構12R,12Lは、本体部121と、挿入部122と、調整部123とを備える。なお、枠部材200R,200Lには、対向面201に挿入部122が挿入される挿入穴203aが形成された穴受け部材203が取り付けられている。
本体部121は、幅方向に延在する中空の棒状に形成されており、固定機構受け部114において軸方向周りに回転自在に支持されている。本実施形態における本体部121の幅方向における両端部は、図示は省略するが調整部123が螺号する雄ねじが形成されている。
挿入部122は、枠部材200R,200Lの挿入穴203aに挿入されるものである。挿入部122は、幅方向に延在する棒状に形成されており、本体部121に対して幅方向において進退自在に支持されている。挿入部122は、外径が本体部121の内径よりも小さく形成されており、本体部121の内部を幅方向に移動自在である。
調整部123は、挿入部122の本体部121に対する幅方向における相対移動を規制するものである。調整部123は、内周面に雌ねじが形成されており、例えば、本体部121に対して一方向に回転させると、本体部121の両端部の外径を縮径させるように形成されている。従って、調整部123を本体部121に対して一方向に回転させると、本体部121の両端部が挿入部122を半径方向内側に押圧し、挿入部122の本体部121に対する幅方向における相対移動を規制する。
次に、本実施形態に係る止水装置1Cの設置方法について説明する。ユーザーは、止水板2の傾斜状態を維持したまま、固定機構12R,12Lを枠部材200R,200Lに固定する。具体的には、調整部123を本体部121に対して他方向に回転させ、挿入部122を本体部121に対して幅方向に相対移動可能な状態で、挿入部122を挿入穴203aに挿入する。挿入部122を挿入後、調整部123により挿入部122の本体部121に対する相対移動を規制する。
次に、ユーザーは、止水板2を傾斜状態から立位状態とする。ユーザーは、止水板2を屋内側に向けて押す。これにより、止水板2は、固定機構12R,12Lの中心、すなわち本体部121を中心に回転する。止水板2の回転中心は、枠部材200R,200Lに対する相対移動を行えない本体部121であるため、回転軸部112の軌跡により、枠部材200R,200Lに近づきながら、上下方向のうち下方に移動する。このとき、係止受け部103は、係止部113を屋内側から屋外側に向かって乗り越え、係止部113と屋内外方向において対向する。これにより、係止受け部103は、屋外側から屋内側に移動することが規制されるので、固定機構12R,12Lに対する押圧機構11R,11Lの幅方向周りの回転、および押圧機構11R,11Lに対する止水板2の幅方向周りの回転が規制される。従って、保持機構10R,10Lにより止水板2の立位状態を保持する。
なお、止水装置1Cを取り外す場合は、保持機構10R,10Lの係止受け部103の係止部113に対する係止を解除することで、係止受け部103を係止部113から離間させる。次に、ユーザーは、調整部123により挿入部122の本体部121に対する相対移動の規制を解除し、挿入部122を挿入穴203aから離脱させることで、固定機構12R,12Lを枠部材200R,200Lから取り外し、止水装置1Cを枠部材200R,200Lから取り外す。
以上のように、本実施形態における止水装置1Cでは、上記止水装置1Aと同様の効果を奏するとともに、ユーザーが止水板2を傾斜状態から立位状態とすることで、保持機構10R,10Lによる止水板2の立位状態を保持することができる。従って、ユーザーが止水装置1Cを設置する際の作業工数を削減することができ、ユーザーの熟練度に拘わらず、容易に止水装置1Cを設置することができる。
なお、上記実施形態1,2および変形例における枠部材は、開口部100の縦縁部が壁部材の縁で構成されている場合における壁部材の縁のことである。また、床部300において開口部100の下縁部がこの下縁部よりも屋外側に対して、上下方向において上方に位置する、すなわち開口部100において床部300に段差がある場合に、第1止水部材3R,3Lは、止水板2の立位状態において枠部材200R,200Lと密接するとともに、段差における上下方向の延在する段差部(垂直部)とも密接してもよい。