JP6396118B2 - 位相シフトマスクブランク及びその製造方法、並びに位相シフトマスクの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、透明基板と、透明基板上に形成された遮光層と、遮光層の周囲に形成され、300nm以上500nm以下の波長領域のいずれかの光に対して180度の位相差をもたせることが可能な酸化窒化クロム系材料からなる位相シフト層とを備えたハーフトーン型位相シフトマスクが記載されている。この位相シフトマスクは、透明基板上の遮光層をパターニングし、遮光層を被覆するように位相シフト層を透明基板上に形成し、位相シフト層上にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層を露光および現像することでレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして位相シフト層をパターニングすることにより製造される。
透明基板上に金属と、ケイ素と、酸素及び/又は窒素とを含有する位相シフト膜が形成された位相シフトマスクブランクであって、前記位相シフト膜は、同一材料からなる主層と、最表面層と、を有し、前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率は、前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さいことを特徴とする位相シフトマスクブランク。
前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.01以下であることを特徴とする構成1記載の位相シフトマスクブランク。
前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.10以下であることを特徴とする構成1記載の位相シフトマスクブランク。
前記主層上部の波長365nmにおける屈折率が2.50以上であることを特徴とする構成1乃至構成3の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランク。
前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜が形成されていることを特徴とする構成1乃至構成4の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランク。
前記エッチングマスク膜は遮光機能を有する遮光膜を有することを特徴とする構成5記載の位相シフトマスクブランク。
前記エッチングマスク膜はクロムを含む材料であることを特徴とする構成5又は構成6に記載の位相シフトマスクブランク。
前記位相シフトマスクブランクはウェットエッチングにより位相シフトマスクを作製するための原版であることを特徴とする構成1乃至構成7の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランク。
透明基板上に金属と、ケイ素と、酸素及び/又は窒素とを含有する位相シフト膜をインライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により形成する位相シフトマスクブランクの製造方法であって、前記透明基板上に、同一材料からなる主層と最表面層とを有する前記位相シフト膜を成膜する成膜工程を有し、前記成膜工程は、金属とケイ素を含む金属シリサイドスパッタターゲットを使用し、活性ガスを、前記位相シフト膜の成膜後半において成膜前半より前記活性ガスが多く含まれる雰囲気となるように供給して、不活性ガスと前記活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにより行うことを特徴とする位相シフトマスクブランクの製造方法。
前記位相シフト膜を酸化及び/又は窒化させる活性ガスを、前記スパッタターゲットの近傍における前記透明基板の搬送方向の、当該スパッタターゲットに対して川下側より供給することにより、成膜後半において成膜前半より活性ガスが多く含まれる雰囲気とすることを特徴とする構成9記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率は、前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さくなるように活性ガスの流量を調整することを特徴とする構成9記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.01以下となるように活性ガスの流量を調整することを特徴とする構成9乃至構成11の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.10以下となるように活性ガスの流量を調整することを特徴とする構成9乃至構成11の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
前記位相シフト膜を成膜する成膜工程の後、前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜を成膜する成膜工程を有することを特徴とする構成9乃至構成13の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
構成1乃至8の何れかに記載の位相シフトマスクブランク、又は構成9乃至14の何れかに記載の製造方法により作製された位相シフトマスクブランクを用い、前記位相シフト膜をウェットエッチングでパターニングして位相シフトマスクを作製する位相シフトマスクの製造方法。
実施形態1では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク及びその製造方法について説明する。
図1は本発明の実施形態1による位相シフトマスクブランクの構成を示す断面図であり、図2は位相シフトマスクブランクの成膜に使用可能なインライン型スパッタリング装置を示す模式図である。
以下、各工程を詳細に説明する。
先ず、透明基板2を準備する。
透明基板2の材料は、使用する露光光に対して透光性を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラスが挙げられる。
次に、図1に示すように、透明基板2の上に、インライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により、金属シリサイド系材料から構成される位相シフト膜3を形成する。
詳細には、金属とケイ素とを含むスパッタターゲットを使用して、スパッタパワーを印加し、不活性ガスと、位相シフト膜を酸化及び/又は窒化させる活性ガスを、スパッタターゲットの近傍における透明基板2の搬送方向の、そのスパッタターゲットに対して川下側より供給して、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにより、金属とケイ素と、酸素及び/又は窒素とを含有する位相シフト膜3を成膜する成膜工程を行う。
ここで、スパッタターゲットに対して川下側より供給される不活性ガスと活性ガスは、供給前に混合されているか否かを問わない。例えば、所定の流量で、不活性ガスと活性ガスを予め混合した上で、その混合ガスを一つのガス導入口から供給してもよく、又は、所定の流量の不活性ガスと活性ガスをそれぞれ専用のガス導入口から供給してもよい。
その後、位相シフト膜3を大気に曝すことなく成膜工程後に連続して、位相シフト膜3のウェットエッチング速度を遅くする成分を含むガス雰囲気に位相シフト膜3を曝す曝露工程を行ってもよい。
位相シフト膜3を構成する材料が、金属、ケイ素、窒素である場合、その組成は、露光光に対する所望の位相差(180度±20度)、透過率(1%以上20%以下)、ウェットエッチング特性(位相シフト膜3パターンの断面形状やCDばらつき)、耐薬性の観点から調整する。金属とケイ素の比率は、金属:ケイ素=1:1以上1:9以下が好ましい。窒素の含有量は、25原子%以上55原子%以下、さらに好ましくは、30原子%以上50原子%以下が好ましい。
位相シフト膜3は単層膜及び積層膜のいずれであってもよい。位相シフト膜3を積層膜で構成する場合、各層の界面間で組成及び組成比を一致させた上で、例えばウェットエッチング時のエッチング速度を一定にすることで、被エッチング断面における、いわゆる喰われ現象の発生を防止することが好ましい。また、積層膜の場合、位相シフト膜3の成膜工程は同一の成膜条件で複数回行われることが好ましい。複数回の成膜工程は、同一のインライン型スパッタリング装置において連続的に行われることが好ましい。複数回の成膜工程を連続的に行う場合、例えば、後述のようなインライン型スパッタリング装置を用いる。尚、成膜工程が複数回行われる場合、位相シフト膜3の成膜時にスパッタターゲットに印加するスパッタパワーを小さくすることができる。
尚、最表面層3bの膜厚は、例えば、0.1nm以上10nm以下であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
また、主層上部の波長365nmにおける屈折率は2.50以上であることが望ましい。さらに、主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)は、−0.01以下であることが好ましく、−0.10以下であるとより好ましい。波長365nmにおける屈折率の差(Δn)が−0.01を超える場合には、ウェットエッチングによる位相シフト膜3のパターニングで位相効果を発揮できる程度の断面形状とすることが困難となる可能性がある(−0.10以下であると、ほぼ垂直に近い断面形状を得ることが可能となる。)。
尚、上述した位相シフト膜形成工程により、波長365nmに限らず、例えば、波長190nm〜波長1000nmの範囲でも、その測定波長における、主層上部の屈折率を主層下部の屈折率よりも小さくすることができる(後述の図6、図11及び図13参照)。
尚、位相シフト膜3の主層3aにおける膜深さ方向の各元素の組成比の略均一は、膜厚さ方向の段階的又は連続的な組成変化を与えることを目的として、成膜工程中に、スパッタ原料やスパッタガスの供給方法や供給量を変化させる操作を行わずに、位相シフト膜3を成膜することでも達成される。
搬入チャンバーLL、バッファーチャンバーBU、及び搬出チャンバーULLは、排気を行う排気装置(図示せず)に接続されている。
ここで、第1スパッタターゲット13と川下側の第2ガス導入口GA12との間隔は、第1スパッタターゲット13と川上側の第1ガス導入口GA11との間隔よりも広く設定されている。これは、後に説明するように、スパッタターゲットと川下側ガス導入口との間に距離を設けることで、スパッタガス雰囲気に変化をつけるためである。これと同様に、第2スパッタターゲット14と川下側の第4ガス導入口GA22との間隔は、第2スパッタターゲット14と川上側の第3ガス導入口GA21との間隔よりも広く設定されている。
尚、第1スパッタチャンバーSP1において、スパッタターゲットと川下側のガス導入口との間隔は、例えば、15cm以上50cm以下に設定され、スパッタターゲットと川上側のガス導入口との間隔は、例えば、1cm以上5cm以下に設定されることが好ましい。
ここで、第1スパッタチャンバーSP1と同様に、第3スパッタターゲット15と川下側の第6ガス導入口GA32との間隔は、第3スパッタターゲット15と川上側の第5ガス導入口GA31との間隔よりも広く設定されている。これと同様に、第4スパッタターゲット16と川下側の第8ガス導入口GA42との間隔は、第4スパッタターゲット16と川上側の第7ガス導入口GA41との間隔よりも広く設定されている。
尚、第2スパッタチャンバーSP2においても、第1スパッタチャンバーSP1と同様に、スパッタターゲットと川下側のガス導入口との間隔は、例えば、15cm以上50cm以下に設定され、スパッタターゲットと川上側のガス導入口との間隔は、例えば、1cm以上5cm以下に設定されることが好ましい。
図2では、第1スパッタターゲット13、第2スパッタターゲット14、第3スパッタターゲット15、及び第4スパッタターゲット16に、ハッチングを付して示している。
先ず、スパッタリング装置11の搬入チャンバーLLに、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を搬入する。
次に、スパッタリング装置11の内部を所定の真空度にした後、例えば、第1スパッタターゲット13の川下側の第2ガス導入口GA12から所定の流量のスパッタガスを、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスとして、第1スパッタチャンバーSP1に導入し、第1スパッタターゲット13に所定のスパッタパワーを印加する。スパッタパワーの印加、スパッタガスの導入は、透明基板2が搬出チャンバーULLに搬送されるまで継続する。
このようなスパッタガスの川下側からの供給によって、チャンバーの川上側(第2ガス導入口GA12から遠い箇所)では、飛翔距離が相対的に長い不活性ガスの存在率が高くなり、従って当該不活性ガスの含有量が所定の含有量よりも多い不活性ガス・リッチのスパッタガス雰囲気になると考えられる。また、川上側から川下側に移動するにかけて、不活性ガスの含有量が所定の含有量まで徐々に低下する(飛翔距離の相違の影響が徐々になくなる)傾向を有するスパッタガス雰囲気となり、第2ガス導入口GA12に近い位置では、所定の含有量の不活性ガスと活性ガスを含むスパッタガス雰囲気となると考えられる。即ち、位相シフト膜の成膜において、成膜前半よりも成膜後半において活性ガスがリッチとなる雰囲気にするものである。
さらに、上記の第1スパッタターゲット13に代えて、第2スパッタターゲット14を用いて単層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行ってもよい。この場合、第2スパッタターゲット14の川下側の第4ガス導入口GA22から所定の流量のスパッタガスを第1スパッタチャンバーSP1に導入し、第2スパッタターゲット14に所定のスパッタパワーを印加する。また、第1スパッタチャンバーSP1の第1スパッタターゲット13又は第2スパッタターゲット14に代えて、第2スパッタチャンバーSP2の第3スパッタターゲット15や第4スパッタターゲット16を用いて単層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行ってもよい。この場合、第3スパッタターゲット15(or第4スパッタターゲット16)の川下側の第6ガス導入口GA32(or第8ガス導入口GA42)から所定の流量のスパッタガスを第2スパッタチャンバーSP2に導入し、第3スパッタターゲット15(or第4スパッタターゲット16)に所定のスパッタパワーを印加する。
この場合、透明基板2の矢印Sの方向の搬送と矢印Sと逆の方向の搬送とを繰り返し、矢印Sの方向の搬送中ごとに、位相シフト膜3の一部を構成する金属シリサイド系単層膜を順次積層することで、位相シフト膜3を成膜する第1の成膜方法と、透明基板2の矢印Sの方向への1回の搬送中に、第1スパッタターゲット13〜第4スパッタターゲット16のうち、少なくとも2つを用いて、位相シフト膜3の一部を構成する金属シリサイド系単層膜を順次積層して位相シフト膜3を成膜する第2の成膜方法と、第1の成膜方法と第2の成膜方法を組み合わせた第3の成膜方法がある。これらの成膜方法は、位相シフト膜3の層数に応じて、適宜選択される。
尚、これらの成膜方法では、単層膜からなる位相シフト膜3の成膜と同様に、透明基板2を矢印Sの方向に搬送する際には、所定の流量のスパッタガスを、成膜に使用されるスパッタターゲットの川下側より供給して、位相シフト膜3の成膜を行う。
上述のように成膜された単層膜を、位相シフト膜3の一部を構成する金属シリサイド系単層膜の1層目とし、その後に、透明基板2を、矢印Sと逆の方向に、搬出チャンバーULLから搬入チャンバーLLまで、順番に戻し、再度、上述の1層目の金属シリサイド系単層膜の成膜と同様に、位相シフト膜3の一部を構成する金属シリサイド系単層膜の2層目の成膜を行う。
位相シフト膜3の一部を構成する金属シリサイド系単層膜の3層目以降の成膜を行う場合も、同様に行う。
このような第1の成膜方法を用いた成膜工程により、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の、同一の金属シリサイド系材料から構成される、2層又は3層以上の積層構造の積層膜からなる位相シフト膜3が成膜される。
先ず、スパッタリング装置11の搬入チャンバーLLに、透明基板2を搬入する。
次に、スパッタリング装置11の内部を所定の真空度にした後、第1スパッタターゲット13の川下側の第2ガス導入口GA12から所定の流量のスパッタガスを第1スパッタチャンバーSP1に導入し、第3スパッタターゲット15の川下側の第6ガス導入口GA32から、第1スパッタチャンバーSP1に導入されたスパッタガスと同一成分のスパッタガスを所定の流量で第2スパッタチャンバーSP2に導入し、第1スパッタターゲット13及び第3スパッタターゲット15にそれぞれ所定のスパッタパワーを印加する。スパッタパワーの印加、スパッタガスの導入は、透明基板2が搬出チャンバーULLに搬送されるまで継続する。
その後、透明基板2を、所定の搬送速度で、矢印Sの方向に、搬入チャンバーLLから搬出チャンバーULLまで、順番に搬送する。透明基板2が第1スパッタチャンバーSP1の第1スパッタターゲット13付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の金属シリサイド系単層膜の1層目が成膜される。
その後、透明基板2が第2スパッタチャンバーSP2の第3スパッタターゲット15付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、1層目の金属シリサイド系単層膜上に、所定の膜厚の金属シリサイド系単層膜の2層目が成膜される。
3層構造の積層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行う場合、上記のスパッタターゲットに加えて、第1スパッタチャンバーSP1の第2スパッタターゲット14をさらに用い、その第2スパッタターゲット14の川下側の第4ガス導入口GA22から所定の流量でスパッタガスを供給し、第2スパッタターゲット14に所定のスパッタパワーを印加する。この場合、第2スパッタターゲット14付近の通過の際に成膜される金属シリサイド系単層膜は位相シフト膜3の2層目となり、第3スパッタターゲット15付近の通過の際に成膜される金属シリサイド系単層膜は位相シフト膜3の3層目となる。
このような第2の成膜方法を用いた成膜工程により、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の、同一の金属シリサイド系材料から構成される、2層又は3層以上の積層構造の積層膜からなる位相シフト膜3が成膜される。
例えば、先に第2の成膜方法を行って、1回の透明基板2の搬送中に多層の金属シリサイド系単層膜を積層し、その後に、第1の成膜方法を行って、さらに必要な層数の金属シリサイド系単層膜を積層することで、積層予定数の層数を有する積層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行うことができる。
このような第3の成膜方法を用いた成膜工程により、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の、同一の金属シリサイド系材料から構成される、3層以上の多数の層を有する積層膜からなる位相シフト膜3が成膜される。
実施形態2では、実施形態1とは別の、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク及びその製造方法について説明する。
図3は本発明の実施形態2による位相シフトマスクブランク10の構成を示す断面図である。なお、実施形態1と同様の構成については同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
エッチングマスク膜4は、遮光性を有する場合および光半透過性を有する場合のいずれであってもよい。エッチングマスク膜4を構成するクロム系材料は、クロム(Cr)を含むものであれば、特に制限されない。エッチングマスク膜を構成するクロム系材料として、例えば、クロム、クロムの酸化物、クロムの窒化物、クロムの炭化物、クロムのフッ化物、それらを少なくとも一つ含む材料が挙げられる。
このエッチングマスク膜形成工程は、クロムまたはクロム化合物を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、酸化窒素系ガス、炭化水素系ガスおよびフッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。
位相シフト膜3を形成した後、スパッタリング装置11の外部に透明基板2を取り出さずに連続してエッチングマスク膜4を形成する場合には、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を、矢印Sと逆の方向に、搬出チャンバーULL、第2スパッタチャンバーSP2、バッファーチャンバーBU、第1スパッタチャンバーSP1、および搬入チャンバーLLの順番に戻す。一方、位相シフト膜3の形成後、一旦スパッタリング装置11の外部に透明基板2を取り出した後、エッチングマスク膜4を形成する場合には、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を搬入チャンバーLLに搬入した後、上述したように、スパッタリング装置11の内部を所定の真空度にする。
このような構成は、透明基板2を準備する準備工程と、透明基板2の主表面上に、スパッタリングにより、遮光膜4を成膜する成膜工程と、遮光膜4をパターニングして遮光膜パターン4´を形成する遮光膜パターン形成工程と、遮光膜パターン4´上に、金属とケイ素と、酸素及び/又は窒素とを含有する位相シフト膜3を成膜する位相シフト膜形成工程によって、形成することができる。
実施形態3では、表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法(実施形態1の位相シフトマスクブランクに基づく位相シフトマスクの製造方法)について説明する。
図4(a)〜図4(e)は本発明の実施形態3による位相シフトマスクの製造方法の各工程を示す断面図であり、図1と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
詳細には、このレジスト膜パターン形成工程では、先ず、図4(a)に示すように、透明基板2上に金属シリサイド系材料からなる位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を準備する。その後、図4(b)に示すように、位相シフト膜3上にレジスト膜5を形成する。この時、位相シフト膜3とレジスト膜5との密着性が十分でない場合は、位相シフト膜3とレジスト膜5との密着性を向上するための表面処理(例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理)を行ってもよい。その後、図4(c)に示すように、レジスト膜5に対して所定のサイズのパターンを描画した後、レジスト膜5を所定の現像液で現像して、レジスト膜パターン5´を形成する。
レジスト膜5に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
位相シフト膜3をウェットエッチングするエッチング液は、金属シリサイド系材料から構成された位相シフト膜3を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、弗化水素酸、珪弗化水素酸、および弗化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つの弗素化合物と、過酸化水素、硝酸、および硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。
ここで、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面角度(θ)(後述の図12参照)は、位相シフト効果を十分に発揮させる上で、できる限り、90度又はこの90度に近い角度であることが望ましい。
但し、断面角度(θ)が90度又はこの90度に近い角度でなくても、位相シフト効果を十分に発揮させることが可能である。例えば、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面のうち、透明基板2に近いエッジ部分の被エッチング断面部分に若干、裾部分があったとしても、レジスト膜パターン5´に近い位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の多くの部分が90度又はこの90度に近い角度であれば、位相シフト効果を十分に発揮させることが可能である。
実施形態4では、実施形態2の位相シフトマスクブランクに基づく位相シフトマスクの製造方法について説明する。
図5(a)〜図5(h)は本発明の実施形態4による位相シフトマスクの製造方法の各工程を示す断面図であり、図3と同一の構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
詳細には、このレジストパターン形成工程では、先ず、エッチングマスク膜4上にレジスト膜5を形成する(図5(b))。その後、レジスト膜5に対して所定のサイズのパターンを描画する。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、レジストパターン5´を形成する(図5(c))。
レジスト膜5に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
エッチングマスク膜4をウェットエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜4を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
位相シフト膜3をウェットエッチングするエッチング液は、位相シフト膜3を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、弗化水素酸、珪弗化水素酸、および弗化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つの弗素化合物と、過酸化水素、硝酸、および硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。具体的には、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合溶液を純水で希釈したエッチング液が挙げられる。
具体的には、レジスト膜パターン5´を剥離した後、エッチングマスク膜パターン4´を覆うようにフォトレジスト膜55を形成し、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜55を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜パターン4´上にレジスト膜パターン55´を形成する(図5(f))。
その後、レジスト膜パターン55´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液によりエッチングマスク膜4´をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン3´の幅よりも狭いエッチングマスク膜パターン4´´を形成する(図5(g))。
その後、レジスト膜パターン55´を剥離する(図5(h))。
この場合、位相シフト膜パターン3´は露光光の位相を変える性質を有し、エッチングマスク膜パターン4´´は遮光性を有する。
なお、位相シフト膜パターン上に、遮光膜パターンを有しないタイプの位相シフトマスクを製造する場合には、位相シフト膜パターン3´形成後、エッチングマスク膜パターン4´を剥離する。この場合、位相シフト膜パターン3´は露光光の位相を変える性質を有する。
位相シフト膜パターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
実施例1及び比較例1では、透明基板2上に位相シフト膜(材料:MoSiN)とエッチングマスク膜を有する位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクについて説明する。
尚、実施例1の位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットの川下側に配置されたガス導入口から反応性のガス(スパッタガス)を導入し、反応性スパッタリングにより成膜して(このとき、バッファーチャンバーBUのメインバルブ(図示せず)の開度を調整し、第2スパッタチャンバーSP2にはN2ガスを導入した。)製造されるのに対し、比較例1の位相シフトマスクブランクは、その位相シフト膜をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットの川上側に配置されたガス導入口から反応性のガス(スパッタガス)を導入し、反応性スパッタリングにより成膜して(このとき、バッファーチャンバーBUのメインバルブ(図示せず)の開度を調整し、第2スパッタチャンバーSP2にはArガスを導入した。)製造される点で、両者は異なる。
上述した構成の実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランク1を製造するため、先ず、透明基板2として、8092サイズ(800mm×920mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
位相シフト膜3は、第1スパッタチャンバーSP1内に、モリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなる第1スパッタターゲット13の川下側に配置された第2ガス導入口GA12から、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスを含む混合ガス(Ar:50sccm、N2:100sccm)を導入し、スパッタパワーを10kWとし、透明基板2の搬送速度を350mm/分として、反応性スパッタリングにより、透明基板2上に成膜した。1回成膜にて、位相シフト膜3(膜厚110nm)を形成した。
尚、実施例1の位相シフト膜3の成膜は、バッファーチャンバーBUに接続された排気装置(図示せず)のメインバルブ(図示せず)の開度を調整し、第2スパッタチャンバーSP2内に第5ガス導入口GA31から、窒素(N2)ガスを導入した条件下で行った。
その結果、実施例1、比較例1ともに位相シフト膜の最表面層には、膜表面側に向かって酸素の含有量が多くなっている膜厚約5nmの表面酸化層(最表面層3b)が形成されており、合成石英ガラス基板(透明基板2)との界面付近を除き、深さ約5nm〜約105nmは、各元素(Mo,Si,N,O)の含有量に殆ど変化がない主層3aが形成されていた。
実施例1および比較例1のいずれにおいても、主層3aでは、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)、窒素(N)、酸素(O)の各元素の含有量の変動幅が小さく、略均一である。位相シフト膜3の主層3aにおける各元素の含有量は、Moが15原子%、Siが38原子%、Nが45原子%、Oが2原子%以下であり、それぞれの含有量の変動が、5原子%以下(各元素の含有量の中心値(平均含有量)に対して±2.5原子%以内)であった。
主層:傾斜膜(Gradedlayer)
最表面層:酸化膜(Cauchy)
一方、図7に示すように、当該波長範囲において、比較例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜の主層上部の屈折率(n−Top)は、主層下部の屈折率(n−Bottom)よりも大きいことが分かった。特に、i線(波長365nm)において、主層上部の屈折率は2.69であり、主層下部の屈折率は2.65で、主層上部に対する主層下部の屈折率の差(Δn=主層上部屈折率−主層下部屈折率)は、+0.04であった。
これらの結果から明らかなように、スパッタガスの川下供給条件を採用して位相シフト膜3を成膜した実施例1は、スパッタガスの川上供給条件を採用して位相シフト膜を成膜した比較例1と比べて、位相シフト膜の深さ方向の屈折率の変化傾向が正反対となることが分かった。
位相シフト膜3の透過率及び位相差の測定には、同一の基板ホルダー(図示せず)にセットされた6025サイズ(152mm×152mm)の透明基板2の主表面上に、位相シフト膜3(膜厚110nm)が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いた。
その結果、実施例1、比較例1の波長365nmにおける透過率は5.2%、波長365nmにおける位相差は180度であった。
この結果から、位相シフト膜をスパッタガスの川下供給条件で成膜しても、所望の透過率、位相差を得られることが分かった。
その結果、波長200nm〜800nmにおける実施例1の反射率スペクトルは、比較例1の反射率スペクトルと略同様であった。この結果から、位相シフト膜をスパッタガスの川下供給条件で成膜しても、所望の反射率スペクトルを得られることが分かった。
その結果、位相シフト膜3上に、膜厚25nmのクロム窒化膜(CrN)と膜厚70nmのクロム炭化膜(CrC)の積層膜からなる遮光層と、膜厚20nmのクロム酸化窒化膜(CrON)からなる反射防止層との積層膜が成膜された。
このようにして、位相シフト膜3上に、CrNとCrCの積層膜からなる遮光層、CrONからなる反射防止層が順番に形成された積層構造のエッチングマスク膜4を形成した。
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3とエッチングマスク膜4とが形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
上述のようにして製造された実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクを用いて、実施例1及び比較例1の位相シフトマスクを製造するため、先ず、実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクのエッチングマスク膜4上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜5を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚1000nmのフォトレジスト膜5を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜5を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜4上に、ラインパターンの幅が2.0μm及びスペースパターンの幅が2.0μmのラインアンドスペースパターンのレジスト膜パターン5´を形成した。
次に、エッチングマスク膜パターン4´をマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜3をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン3´を形成した。
その後、レジスト塗布装置を用いて、エッチングマスク膜パターン4´を覆うように、フォトレジスト膜55を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚1000nmのフォトレジスト膜55を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜55を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜パターン4´上に、ラインパターンの幅が1.0μmのレジスト膜パターン55´を形成した。
その後、レジスト膜パターン55´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液によりエッチングマスク膜4´をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン3´の幅よりも狭いエッチングマスク膜パターン4´´を形成した。
その後、レジスト膜パターン55´を剥離した。
CDばらつきは0.090μmと非常に良好であった。
また、比較例1の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、(0.180μm)となり、実施例1よりも大きいことが分かった。
実施例1の光強度分布曲線は、比較例1と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示していた。したがって、実施例1の位相シフトマスクでは、比較例1と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度が高いことが分かった。
実施例2では、実施例1において、位相シフト膜3上にエッチングマスク膜4が形成されていない位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクについて説明する。
上述の実施例1と同様にして、透明基板2上に位相シフト膜3を成膜して実施例2の位相シフトマスクブランク1を得た。
上述の実施例2の位相シフトマスクブランク1を用いて、実施例2の位相シフトマスクを製造するため、先ず、実施例2の位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3表面をHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理をした後、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜5を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚1000nmのフォトレジスト膜5を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜5を描画し、現像・リンス工程を経て、位相シフト膜3上に、ラインパターンの幅が2.0μm及びスペースパターンの幅が2.0μmのラインアンドスペースパターンのレジスト膜パターン5´を形成した。
その後、レジスト膜パターン5´を剥離した。
このようにして、透明基板2の上に、位相シフト膜3をパターニングした位相シフト膜パターン3´が形成された実施例2の位相シフトマスク30を得た。
その結果、実施例2の位相シフト膜パターン3´の断面は、実施例1の位相シフト膜パターン3´の断面と比べて若干、直線的なテーパー形状となったが、上辺と側辺との接点と上面から膜厚の3分の2下がった高さの位置での側辺の位置とを結んだ直線と、上辺とのなす角度θは、120度と良好であった。
また、実施例1と同様に実施例2の位相シフトマスクの位相シフト膜パターン3´のCDばらつきは、0.105μmとなり、良好であった。
実施例3の位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクは、位相シフト膜を成膜する際に、バッファーチャンバーBUに接続された排気装置(図示せず)のメインバルブ(図示せず)を開け、第2スパッタチャンバーSP2内に第5ガス導入口GA31から、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスを含む混合ガス(Ar:50sccm、N2:100sccm)を導入した以外は、実施例1と同様にして位相シフトマスクブランク、および位相シフトマスクを作製した。
実施例1と同様に、実施例3の位相シフト膜の屈折率(n)、消衰係数(k)の値を分光エリプソメーターで測定した。その結果(位相シフト膜の主層上部と主層下部における波長190nm〜1000nmに対する屈折率を示すグラフ)を図11に示す。
また、実施例3の波長365nmにおける透過率は5.2%、波長365nmにおける位相差は180度で、実施例1と同様に所望の透過率、位相差を得られた。また、実施例3の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、実施例1と同様に位相シフト膜の反射率を測定した。その結果、波長200nm〜800nmにおける実施例3の反射率スペクトルは、実施例1の反射率スペクトルと略同様であった。
図12は実施例3の位相シフトマスクの位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の断面写真である。
図12に示すように、実施例3の位相シフト膜パターン3´の断面は、透明基板2と接する部分の裾は非常に少なくほぼ垂直、エッチングマスク膜パターン4´と接する部分でもほぼ垂直である形状であった。上辺と側辺との接点と上面から膜厚3分の2下がった高さの位置での側辺の位置とを結んだ直線と、上辺とのなす角度θが、97度であった。
また、実施例3の位相シフト膜の位相シフト膜パターンのCDばらつきは、0.098μmと非常に良好であった。
実施例4は、実施例1における位相シフト膜3を積層(4層構造)とした以外は実施例1と同様にして位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて位相シフトマスクを作製した。
透明基板2として、実施例1と同じサイズの合成石英ガラス基板を準備した。
実施例4では、位相シフト膜形成工程において、図2に示すスパッタリング装置11の、モリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなる第1スパッタターゲット13の川上側に配置された第1ガス導入口GA11から、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスを含む混合ガス(Ar:30sccm、N2:30sccm)を導入し、スパッタパワーを4kWとし、透明基板2の搬送速度を400mm/分として、反応性スパッタリングにより、膜厚27.5nmのモリブデンシリサイド窒化膜(MoSiN)を透明基板2上に成膜した。
尚、モリブデンシリサイド窒化膜の成膜の際、バッファーチャンバーBUに接続された排気装置(図示せず)のメインバルブ(図示せず)の開度を絞り、第2スパッタチャンバーSP2内の第5ガス導入口GA31から、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N2)ガスを含む混合ガス(Ar:30sccm、N2:30sccm)が、第1スパッタチャンバーの雰囲気に影響を与える状況(第2スパッタチャンバーに導入された混合ガスが、第1スパッタターゲット13の川下側に供給される状態)とした。
その後、1層目のモリブデンシリサイド窒化膜と同じ方法により、2層目、3層目、4層目のモリブデンシリサイド窒化膜を形成し、透明基板2上に、4層のモリブデンシリサイド窒化膜からなる合計膜厚110nmの位相シフト膜を形成した。
図13に示すように、当該波長範囲において、実施例4の位相シフトマスクブランク10における位相シフト膜3の主層上部の屈折率(n−top)は、主層下部の屈折率(n−Bottom)よりも小さいことが分かった。特に、表示装置を製造する際に使用する露光光源(超高圧水銀ランプ:i線、h線、g線の混合光)の波長の一つであるi線(波長365nm)において、主層上部の屈折率は、主層下部の屈折率よりも小さく、主層上部の屈折率は2.66であり、主層下部の屈折率は2.68で、主層上部に対する主層下部の屈折率の差(Δn=主層上部屈折率−主層下部屈折率)は、−0.02であった。
図14は実施例4の位相シフトマスクの位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の断面写真である。
図14に示すように、実施例4の位相シフト膜パターン3´の断面は、透明基板2と接する部分では裾を引き、エッチングマスク膜パターンと接していた部分ではほぼ垂直となる形状であった。上辺と側辺との接点と上面から膜厚3分の2下がった高さの位置での側辺の位置とを結んだ直線と、上辺とのなす角度θが、105度であった。
また、実施例4の位相シフト膜の位相シフト膜パターンのCDばらつきは、0.096μmと良好であった。
上述の実施例1、3、4、比較例における位相シフト膜3の主層上部における波長365nmにおける屈折率に対する主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)と、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランクを用いて作製された位相シフトマスクの位相シフト膜パターン断面の断面角度との関係を図15に示す。
図15に示すようにΔnが負、すなわち、位相シフト膜3における主層上部の波長365nmにおける屈折率が、主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さい場合において、位相シフト膜パターンの断面形状(断面角度)は、85度以上120度以下となり、従って、位相シフトマスクのCDばらつきも良好となる。好ましくは、Δn(n-TOP−n-Bottom)が−0.20以上−0.01以下、さらに好ましくは、−0.15以上−0.02以下とするのが望ましい。
位相シフトマスクが良好なCD特性を得るためには、断面がテーパー形状(断面角度>90度)となることを抑止するのと同様に、逆テーパー形状(断面角度<90度)となることも抑止する必要がある。 Δn(即ち、主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する主層下部の波長365nmにおける屈折率との差)が負に大きくなると、位相シフト膜パターンの断面形状が逆テーパー形状となる傾向となり、これが過ぎると断面テーパー形状と同じように良好なCD特性を得られなくなる。 従って、逆テーパー形状となることを抑止するために、Δn(n-TOP−n-Bottom)が−0.20以上であることが好ましく、−0.15以上であることがさらに好ましいものである。
また、上述の実施例では、位相シフト膜に表面酸化された最表面層について説明したが、これに限られず、位相シフト膜の主層に対して膜密度、膜組成、結晶構造、表面形態、表面粗さなどが異なる最表面層としてもかまわない。
また、上述の実施例では、位相シフト膜を分光エリプソにて屈折率を測定するにあたって、酸化層と傾斜膜(GradedLayer)というシミュレーション条件で行った例を説明したが、これに限られず、例えば、分光エリプソで測定が可能な薄膜のエッチングマスク膜が位相シフト膜上に形成している場合においては、エッチングマスク膜を考慮したシミュレーション条件で行うことができる。
2...透明基板
3...位相シフト膜
3a...主層
3b...最表面層
3´...位相シフト膜パターン、
4...エッチングマスク膜(遮光膜)
4´...エッチングマスク膜パターン、
5...レジスト膜
5´...レジスト膜パターン
11...スパッタリング装置
LL...搬入チャンバー
SP1...第1スパッタチャンバー
13...第1スパッタターゲット
GA11...第1ガス導入口
GA12...第2ガス導入口
14...第2スパッタターゲット
GA21...第3ガス導入口
GA22...第4ガス導入口
BU...バッファーチャンバー
SP2...第2スパッタチャンバー
15...第3スパッタターゲット
GA31...第5ガス導入口
GA32...第6ガス導入口
16...第4スパッタターゲット
GA41...第7ガス導入口
GA42...第8ガス導入口
ULL...搬出チャンバー
30、50...位相シフトマスク
Claims (15)
- 透明基板上にモリブデンと、ケイ素と、窒素とを含有する位相シフト膜が形成された位相シフトマスクブランクであって、
前記位相シフト膜は、膜深さ方向の各元素の組成比が、前記各元素のそれぞれ中心的な含有量に対して±2.5原子%以内である主層と、当該主層の表面酸化層である最表面層と、を有し、
前記位相シフト膜は、モリブデンとケイ素を含む金属シリサイドスパッタターゲットを使用し、不活性ガスと窒素を含む活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングによって、分光エリプソメーターによる前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率が、前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さくなるように成膜されたものであることを特徴とする位相シフトマスクブランク。 - 前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.01以下であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.10以下であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記主層上部の波長365nmにおける屈折率が2.50以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記エッチングマスク膜は遮光機能を有する遮光膜を有することを特徴とする請求項5記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記エッチングマスク膜はクロムを含む材料であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の位相シフトマスクブランク。
- 前記位相シフトマスクブランクはウェットエッチングにより位相シフトマスクを作製するための原版であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランク。
- 透明基板上にモリブデンと、ケイ素と、窒素とを含有する位相シフト膜をインライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により形成する位相シフトマスクブランクの製造方法であって、
前記位相シフト膜は、膜深さ方向の各元素の組成比が、前記各元素のそれぞれ中心的な含有量に対して±2.5原子%以内である主層と、表面酸化の最表面層と、を有し、
前記位相シフト膜の成膜は、モリブデンとケイ素を含む金属シリサイドスパッタターゲットを使用し、不活性ガスと窒素を含む活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにおいて、窒素を含む活性ガスが、前記位相シフト膜の成膜後半において成膜前半より多く含まれる雰囲気により行うことを特徴とする位相シフトマスクブランクの製造方法。 - 前記位相シフト膜の成膜は、窒素を含む活性ガスを、前記スパッタターゲットの近傍における前記透明基板の搬送方向の、当該スパッタターゲットに対して川下側より供給することにより、成膜後半において成膜前半より窒素を含む活性ガスが多く含まれる雰囲気により行うことを特徴とする請求項9記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
- 前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率が、前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さくなるように窒素を含む活性ガスの流量を調整することを特徴とする請求項9記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
- 前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.01以下となるように窒素を含む活性ガスの流量を調整することを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
- 前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率に対する前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差(Δn)が、−0.10以下となるように窒素を含む活性ガスの流量を調整することを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
- 前記位相シフト膜の成膜の後、前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜を成膜することを特徴とする請求項9乃至請求項13の何れか1つに記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
- 請求項1乃至8の何れかに記載の位相シフトマスクブランク、又は請求項9乃至14の何れかに記載の製造方法により作製された位相シフトマスクブランクを用い、前記位相シフト膜をウェットエッチングでパターニングして位相シフトマスクを作製する位相シフトマスクの製造方法。
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