JP7176843B2 - 表示装置製造用の位相シフトマスクブランク、表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法、並びに表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1に具体的に記載されている位相シフト膜は、互いに異なる組成を持つクロム炭化酸化窒化物(CrCON)の層を3層、5層又は6層積層した構造のクロム系位相シフト膜である。
特許文献2では、位相反転膜は、複合波長の露光光に対して1%~40%の透過率を有し、望ましくは5%~20%の透過率を有し、10%以下の透過率偏差を有することが望ましいことが記載されている。また、位相反転膜は、複合波長の露光光に対して30%以下、望ましくは15%以下の反射率を有し、10%以下の反射率偏差を有することが望ましいことが記載されている。(ここで、偏差はi線、h線、g線の露光光による各透過率、反射率の値のうち、最大値と最小値の差をいう。)
しかし、特許文献2では、これらの光学特性を満たすための具体的な位相反転膜および金属膜(エッチングマスク膜)の材料を特定した例は記載されていない。
例えば、表示装置製造用の位相シフトマスクの場合、マスクパターンを転写する工程に使用される露光機として、例えば、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)にそれぞれピーク強度をもつ複合光を出力する光源(超高圧UVランプ)を備えたものが知られている。例えば、近年の表示装置の大型化に伴ってサイズが拡大しつつあるマザーガラス基板の主表面上に位相シフトマスクのマスクパターンを転写する場合の露光光として、その複合光を用いると、光量を稼ぐことができ、タクトタイムの短縮化を図ることが可能となる。
そこで、上記課題1に対し、透過率波長依存性に優れる新たな位相シフト膜の提供が望まれる。
上述の特許文献2においては、位相反転膜が、複合波長の露光光に対して30%以下、望ましくは15%以下の反射率を有することは記載されているが、それを実現するための膜構成や膜材料についての具体例は報告されていない。
なお、レーザー描画光の波長における表面反射率は、理想的には、10%以下、さらには5%以下であるが、各種光学特性等を満たした上で表面反射率10%以下を実現することは実際には非常に難しいという事情がある。
詳しくは、遮光膜の場合は、遮光性(光学濃度)を満たせば良いので反射防止層を設け表面反射率の特性を付加することは比較的容易である。これに対し、位相シフト膜の場合は、反射防止層を設けることで位相差および透過率も変動してしまうので、位相差および透過率を満たした上で表面反射率の特性を兼備させる膜設計を行うことは容易でない。したがって、位相差、透過率に加え、透過率波長依存性を満たした上で表面反射率の特性を兼備させることはさらに容易ではない(課題3)。
なお、特許文献2では、具体的に位相反転膜および金属膜(エッチングマスク膜)の材料を特定した具体例について、実際に透過率、反射率を測定した値は記載されていない。さらには、特許文献2に記載された反射率のレベル(例えば「15%以下」)を超えることが要望される。具体的には、例えば、波長365nm以上436nm以下の範囲における反射率が10%以下や、波長350nm以上436nm以下の範囲における反射率が15%以下である具体例は報告されていない。
このため、裏面反射率が相対的に低い場合、それに応じて膜による露光光の熱吸収による熱膨張によるパターン位置ずれを生じるおそれがある。
したがって、位相シフト膜に、位相差、透過率に加え、所定の透過率波長依存性を満たした上で裏面反射率の特性を兼備させることは容易ではない(課題4)。
本発明は、上述した課題1に対し、透過率波長依存性に優れると共に他の特性についても優れる新たな位相シフト膜の提供を第2の目的とする。
本発明は、上述した課題2に対し、透過率波長依存性に格別に優れる新たな位相シフト膜の提供を第3の目的とする。
本発明は、上述した課題3に対し、透過率波長依存性に優れると共に表面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜の提供を第4の目的とする。
本発明は、上述した課題4に対し、透過率波長依存性に優れると共に裏面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜の提供を第5の目的とする。
本発明は、上記本発明に係る位相シフト膜を備えた、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク、この位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法、並びにこの位相シフトマスクを用いた表示装置の製造方法の提供を目的とする。
位相シフト膜では、「波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性」(適宜、「所定の透過率波長依存性」という)は、ZrSi系材料(例えばZrSiON、ZrSiN、ZrSiO)に比べ、MoSi系材料(例えばMoSiN、MoSiON、MoSiOCN)の方が、透過率波長依存性が良いと考えられていた。
さらに、本発明者は、検討の過程で、ZrSi系材料(例えばZrSiON、ZrSiN、ZrSiO)は、組成を調整して(例えば高酸化にして)高透過率(例えば波長365nmで16%、20%、30%、40%の透過率)にするに従い、所定の透過率波長依存性がどんどん大きくなる傾向があること(例えば所定の透過率波長依存性は、11.0%、18.1%、20.5%、25.4%程度になる)ことを知見した。この傾向のため、所定の透過率波長依存性を低減することが非常に難しいことを知見した。
(構成1)
表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにおいて、
透明基板と、該透明基板上に形成された位相シフト膜とを備え、
前記位相シフト膜は、2層以上の積層膜からなり、
前記位相シフト膜は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する位相シフト層と、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性を調整する機能を有するメタル層とを有し、
前記位相シフト膜は、露光光に対する前記位相シフト膜の透過率と位相差とが所定の光学特性を有し、
前記位相シフト層は、金属とケイ素と、窒素および酸素のうちの少なくとも一種を含む材料からなり、
前記メタル層は、金属で構成される材料、または、金属と、炭素、フッ素、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成され、前記金属の含有率が55原子%以上100原子%未満の金属化合物からなる材料からなり、
前記位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性が、5.5%以内である
ことを特徴とする位相シフトマスクブランク。
(構成2)
表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにおいて、
透明基板と、該透明基板上に形成された位相シフト膜とを備え、
前記位相シフト膜は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する位相シフト層と、該位相シフト層の上側に配置され、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する反射率を低減させる機能を有する反射率低減層と、前記位相シフト層と前記反射率低減層との間に配置され、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性を調整する機能を有するメタル層を有し、
前記位相シフト層、前記メタル層および前記反射率低減層の積層構造により、露光光に対する前記位相シフト膜の透過率と位相差とが所定の光学特性を有し、
前記位相シフト層は、金属とケイ素と、窒素および酸素のうちの少なくとも一種を含む材料からなり、
前記メタル層は、金属で構成される材料、または、金属と、炭素、フッ素、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成され、前記金属の含有率が55原子%以上100原子%未満の金属化合物からなる材料からなり、
前記位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性が、5.5%以内であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。
(構成3)
前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の表面反射率が、365nm~436nmの波長域において10%以下であることを特徴とする構成1または2に記載の位相シフトマスクブランク。
(構成4)
前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の表面反射率が、350nm~436nmの波長域において15%以下であることを特徴とする構成2または3に記載の位相シフトマスクブランク。
(構成5)
前記透明基板の裏面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の裏面反射率が、365nm~436nmの波長域において20%以上であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成6)
前記反射率低減層は、金属と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む材料、あるいは、金属とケイ素と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む材料、からなることを特徴とする構成2から5のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成7)
前記メタル層を構成する金属は、Cr、Zr、Mo、Ti、TaおよびWのうちのいずれか一つであることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成8)
前記位相シフト層を構成する金属は、Zr、Mo、Ti、TaおよびWのうちのいずれか一つであることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成9)
前記反射率低減層を構成する金属は、Cr、Zr、Mo、Ti、TaおよびWのうちのいずれか一つであることを特徴とする構成2から8のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成10)
前記位相シフト膜上に形成された遮光膜を備えることを特徴とする構成1から9のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。
(構成11)
前記遮光膜は、前記遮光膜の表面側より入射される光に対する前記遮光膜の膜面反射率が、350nm~436nmの波長域において15%以下であることを特徴とする構成10記載の位相シフトマスクブランク。
表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法において、
構成1から9のいずれかに記載の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、レジスト膜を形成し、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いた描画処理、および現像処理により、レジスト膜パターンを形成する工程と、
前記レジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をエッチングして位相シフト膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
(構成13)
表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法において、
構成10または11に記載の位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、レジスト膜を形成し、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いた描画処理、および現像処理により、レジスト膜パターンを形成する工程と、
前記レジスト膜パターンをマスクにして前記遮光膜をエッチングして遮光膜パターンを形成する工程と、
前記遮光膜パターンをマスクにして位相シフト膜をエッチングして位相シフト膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
(構成14)
表示装置の製造方法において、
基板上にレジスト膜が形成されたレジスト膜付き基板に対して構成12または13記載の位相シフトマスクの製造方法によって得られた位相シフトマスクを、前記レジスト膜に対向して配置する位相シフトマスク配置工程と、
i線、h線及びg線を含む複合露光光を前記位相シフトマスクに照射して、前記位相シフト膜パターンを転写するパターン転写工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
本発明によれば、透過率波長依存性に優れると共に他の特性についても優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に格別に優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に優れると共に表面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、透過率波長依存性に優れると共に裏面反射率特性についても優れる新たな位相シフト膜を提供できる。
本発明によれば、上記本発明に係る位相シフト膜を備えた、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク、この位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法、並びにこの位相シフトマスクを用いた表示装置の製造方法を提供できる。
実施の形態1では、位相シフトマスクブランクについて説明する。
位相シフトマスクブランク10は、露光光に対して透明な(透光性を有する)透明基板20と、透明基板20上に配置された位相シフト膜30とを備える。図1においては、位相シフト膜30は、透明基板20側から順に配置された、位相シフト層31とメタル層33と反射率低減層32とを有する積層構造であるが、位相シフト膜30は、透明基板20側から順に配置された、位相シフト層31とメタル層33とを有する積層構造であっても良い。
位相シフト層31は、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)および酸素(O)のうちの少なくとも一種を含む材料で形成される。また、位相シフト層31は、金属(M)とケイ素(Si)と、窒素(N)および酸素(O)のうちの少なくとも一種とを含み、さらに、炭素(C)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含む材料で形成されてもよい。例えば、位相シフト層31を形成する材料として、金属シリサイド酸化窒化物(MSiON)、金属シリサイド窒化物(MSiN)、金属シリサイド酸化物(MSiO)、金属シリサイド酸化炭化窒化物(MSiOCN)、金属シリサイド炭化窒化物(MSiCN)、金属シリサイド酸化炭化物(MSiOC)、金属シリサイド酸化窒化フッ化物(MSiONF)、金属シリサイド窒化フッ化物(MSiNF)、金属シリサイド酸化フッ化物(MSiOF)、金属シリサイド酸化炭化窒化フッ化物(MSiOCNF)、金属シリサイド炭化窒化フッ化物(MSiCNF)、金属シリサイド酸化炭化フッ化物(MSiOCF)などが挙げられる。
位相シフト層31を構成する金属(M)は、代表的にはジルコニウム(Zr)であり、次いでモリブデン(Mo)である。位相シフト層31を構成する他の金属(M)としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの遷移金属が挙げられる。
例えば、位相シフト層31を形成する材料としては、ZrSiON、ZrSiN、ZrSiO、ZrSiOCN、ZrSiCN、ZrSiCO、ZrSiONF、ZrSiNF、ZrSiOF、ZrSiOCNF、ZrSiCNF、ZrSiCOFが挙げられる。
例えば、位相シフト層31を形成する材料としては、MoSiON、MoSiN、MoSiO、MoSiOCN、MoSiCN、MoSiCO、MoSiONF、MoSiNF、MoSiOF、MoSiOCNF、MoSiCNF、MoSiCOFが挙げられる。
例えば、位相シフト層31を形成する材料としては、TiSiON、TiSiN、TiSiO、TiSiOCN、TiSiCN、TiSiCO、TiSiONF、TiSiNF、TiSiOF、TiSiOCNF、TiSiCNF、TiSiCOFが挙げられる。
位相シフト層31には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記に挙げた以外の元素が含まれてもよい。また、位相シフト層31の金属シリサイド(MSi)の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、本発明の位相シフト膜30の光学特性を得るために、M:Si=1:1以上1:9以下が好ましい。位相シフト膜30を、ウェットエッチングによりパターニングする場合には、パターン断面を良好にする視点から、位相シフト層31の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、M:Si=1:1以上1:8以下、さらに好ましくは、M:Si=1:1以上1:4以下が望ましい。
また、位相シフト層31を構成する金属(M)は、上述に挙げた金属を1種以上含む合金であっても構わない。
位相シフト層31は、スパッタリング法により形成することができる。
反射率低減層32は、金属と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む材料、あるいは、金属とケイ素と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む材料、で形成できる。
例えば、反射率低減層32を形成する材料として、金属酸化物(MO)、金属酸化窒化物(MON)、金属酸化炭化窒化物(MOCN)、金属酸化炭化物(MOC)、金属酸化フッ化物(MOF)、金属酸化窒化フッ化物(MONF)、金属酸化炭化窒化フッ化物(MOCNF)、金属酸化炭化フッ化物(MOCF)、金属窒化物(MN)、金属炭化物(MC)、金属炭化窒化物(MCN)、金属フッ化物(MF)、金属窒化フッ化物(MNF)、金属炭化窒化フッ化物(MCNF)、金属炭化フッ化物(MCF)などが挙げられる。
反射率低減層32を構成する金属(M)は、代表的にはクロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)である。反射率低減層32を構成する他の金属(M)としては、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの遷移金属が挙げられる。
例えば、反射率低減層32は、クロム酸化物(CrO)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)、クロム酸化炭化物(CrCO)、クロム酸化フッ化物(CrOF)、クロム酸化窒化フッ化物(CrONF)、クロム酸化炭化窒化フッ化物(CrOCNF)、クロム酸化炭化フッ化物(CrOCF)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム炭化窒化物(CrCN)、クロムフッ化物(CrF)、クロム窒化フッ化物(CrNF)、クロム炭化窒化フッ化物(CrCNF)、クロム炭化フッ化物(CrCF)などのクロム系材料で形成できる。
また、例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、金属とケイ素と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む金属シリサイド系材料で形成でき、ZrSiON、ZrSiN、ZrSiO、ZrSiOCN、ZrSiCN、ZrSiCO、ZrSiONF、ZrSiNF、ZrSiOF、ZrSiOCNF、ZrSiCNF、ZrSiCOFが使用することができる。
また、例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、MoSiON、MoSiN、MoSiO、MoSiOCN、MoSiCN、MoSiCO、MoSiONF、MoSiNF、MoSiOF、MoSiOCNF、MoSiCNF、MoSiCOFが挙げられる。
例えば、反射率低減層32を形成する材料としては、TiSiON、TiSiN、TiSiO、TiSiOCN、TiSiCN、TiSiCO、TiSiONF、TiSiNF、TiSiOF、TiSiOCNF、TiSiCNF、TiSiCOFが挙げられる。
反射率低減層32には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記に挙げた以外の元素が含まれてもよい。
また、反射率低減層32の材料が、金属シリサイド(MSi)系材料の場合、金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、本発明の位相シフト膜30の光学特性を得るために、M:Si=1:1以上1:9以下が好ましい。位相シフト膜30を、ウェットエッチングによりパターニングする場合には、パターン断面を良好にする視点から、反射率低減層32の金属(M)とケイ素(Si)の比率(原子比)は、M:Si=1:2以上1:8以下、さらに好ましくは、M:Si=1:2以上1:4以下が望ましい。
また、位相シフト層31を構成する金属(M)は、上述に挙げた金属を1種以上含む合金であっても構わない。
反射率低減層32は、スパッタリング法により形成することができる。
メタル層33は、金属(M)で構成される材料、または、金属(M)と、炭素(C)、フッ素(F)、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成され、前記金属(M)の含有率が55原子%以上の金属化合物の材料からなる。
例えば、メタル層33を形成する材料として、金属(M)、金属炭化物(MC)、金属フッ化物(MF)、金属窒化物(MN)、金属酸化物(MO)、金属炭化フッ化物(MCF)、金属酸化炭化物(MOC)、金属酸化窒化物(MON)、金属酸化フッ化物(MOF)、金属炭化窒化物(MCN)、金属窒化フッ化物(MNF)、金属酸化炭化窒化物(MOCN)、金属酸化窒化フッ化物(MONF)、金属酸化炭化フッ化物(MOCF)、金属炭化窒化フッ化物(MCNF)、金属酸化炭化窒化フッ化物(MOCNF)が挙げられる。
メタル層33における金属元素(M)含有率は、好ましくは、60~100原子%であり、より好ましくは、65~95原子%である。
メタル層33を構成する金属(M)は、代表的にはクロム(Cr)である。メタル層33を構成する他の金属(M)としては、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの遷移金属が挙げられる。
例えば、メタル層33を形成する材料として、クロム(Cr)や、クロム炭化物(CrC)、クロムフッ化物(CrF)、クロム窒化物(CrN)、クロム酸化物(CrO)、クロム炭化フッ化物(CrCF)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化フッ化物(CrOF)、クロム炭化窒化物(CrCN)、クロム窒化フッ化物(CrNF)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)、クロム酸化窒化フッ化物(CrONF)、クロム酸化炭化フッ化物(CrOCF)、クロム炭化窒化フッ化物(CrCNF)、クロム酸化炭化窒化フッ化物(CrOCNF)などが挙げられる。
メタル層33を備えることにより、位相シフト膜のシート抵抗が下がるため、位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクのチャージアップを防止することができる。メタル層33を備えていない場合、チャージアップによって、異物の付着や、静電気破壊が起こりやすい。
メタル層33には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記に挙げた以外の元素が含まれてもよい。
また、メタル層33を構成する金属(M)は、上述に挙げた金属を1種以上含む合金であっても構わない。
メタル層33は、スパッタリング法により形成することができる。
メタル層33の金属元素(M)含有率と反射率低減層32の金属元素(M)含有率との差は、好ましくは、30~90原子%であり、より好ましくは、50~80原子%である。金属元素(M)含有率の差が、60~80原子%であると、メタル層33と反射率低減層32との界面の上記波長域(365nmの波長、または、365nm~436nmの波長域)における反射率を高めることができるので、より反射率低減効果が発揮されるので好ましい。
なお、メタル層33のエッチング速度は、金属(M)に、炭素(C)、フッ素(F)、窒素(N)、酸素(O)を含有させることにより調整することができる。例えば、金属(M)がクロム(Cr)の場合、クロム(Cr)に炭素(C)やフッ素(F)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を遅くすることができる。クロム(Cr)に窒素(N)や酸素(O)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を速くすることができる。また、メタル層33の上下に形成されている位相シフト層31および反射率低減層32のエッチング速度は、金属(M)とケイ素(Si)の金属シリサイド系材料の場合には、炭素(C)やフッ素(F)や窒素(N)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を遅くすることができ、金属(M)とケイ素(Si)の金属シリサイド系材料に酸素(O)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を速くすることができる。また、反射率低減層32の材料が金属と、窒素、酸素および炭素のうち少なくとも一種を含む材料の場合、金属がクロム(Cr)の場合、クロム(Cr)に炭素(C)やフッ素(F)を含有させることによりウェットエッチング速度を遅くすることができる。クロム(Cr)に窒素(N)や酸素(O)を含有させることにより、ウェットエッチング速度を速くすることができる。これらのことにより、位相シフト膜30を構成している各層のエッチング速度を制御して、エッチング後の位相シフト膜30の断面形状を良好にすることができる。
なお、メタル層33は、位相シフト層31の金属元素(M)含有率よりも高い金属元素(M)含有率を有している。
メタル層33の金属元素(M)含有率と位相シフト層31の金属元素(M)含有率との差は、好ましくは、30~90原子%であり、より好ましくは、50~80原子%である。メタル層33と位相シフト層31の金属元素(M)含有率の差が、60~80原子%であると、メタル層33と位相シフト層31との界面の上記波長域(365nmの波長、または、365nm~436nmの波長域)における裏面反射率を高めることができるので、より裏面反射率を高めることができるので好ましい。
金属元素(M)含有率は、X線光電子分光装置(XPS、ESCA)などを用いて測定することができる。
位相シフト膜3におけるメタル層33の厚さは、位相シフト層の厚さよりも、薄いことが好ましい。位相シフト膜3におけるメタル層33の厚さは、反射率低減層の厚さよりも、薄いことが好ましい。位相シフト膜3におけるメタル層33の厚さは、金属(M)の種類により異なるので一概に言えないが、例えば、2.5nm以上50nm以下、さらには2.5nm以上40nm以下の範囲であることが好ましいが、これに限定されるものではない。金属(M)層を2.5nm未満の厚さで基板面内にわたって均一に成膜することが実質的に困難である。また、50nmを超える厚さで金属(M)層を成膜すると、透過率が低下し、例えば、波長365nmにおける位相シフト膜3の透過率が1%を下回る可能性がある。表面反射率を高くする観点からは、メタル層33の厚さは、厚い方が良い。裏面反射率を高くする観点からは、メタル層33の厚さは、25nm以上である。上述の観点から、メタル層33の膜厚は、好ましくは25nm以上50nm以下、さらに好ましくは25nm以上40nm以下が望ましい。
位相シフト膜3における反射率低減層32の厚さは、例えば、15nm以上40nm以下、さらには20nm以上35nm以下の範囲であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
屈折率は、n&kアナライザーやエリプソメータなどを用いて測定することができる。
露光光に対する位相シフト膜30の透過率は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(以下、代表波長という)に対して、好ましくは、1%以上50%以下である。すなわち、露光光がj線(波長:313nm)、i線(波長:365nm)、h線(波長:405nm)、g線(波長:436nm)を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。また、例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した透過率を有する。
露光光に対する位相シフト膜30の位相差は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の位相差は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、好ましくは、160°~200°であり、より好ましくは、170°~190°である。これにより、露光光に含まれる代表波長の光の位相を160°~200°に変えることができる。このため、位相シフト膜30を透過した代表波長の光と透明基板20のみを透過した代表波長の光との間に160~200°の位相差が生じる。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位相差を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した位相差を有する。
位相シフト膜30は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性が、5.5%以内である。
位相シフト膜30の透過率、透過率波長依存性および位相差は、位相シフト膜30を構成する位相シフト層31およびメタル層33、もしくは、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さを調整することにより制御することができる。このため、この実施の形態では、位相シフト膜30の透過率、透過率波長依存性および位相差が上述した所定の光学特性を有するように、位相シフト層31およびメタル層33、もしくは、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さが調整されている。なお、位相シフト膜30の透過率および透過率波長依存性は、主に、位相シフト層31およびメタル層33の材料、組成および厚さに影響される。位相シフト膜30の屈折率および位相差(位相シフト量)は、主に、位相シフト層31の材料、組成および厚さに影響される。
透過率および位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
位相シフト膜30の表面反射率の変動幅は、好ましくは、365nm~436nmの波長域において10%以下、さらに好ましくは、8%以下、さらに好ましくは、5%以下、さらに好ましくは3%以下である。また、位相シフト膜30の表面反射率の変動幅は、好ましくは、350nm~436nmの波長域において、12%以下、さらに好ましくは、10%以下、さらに好ましくは、8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
位相シフト膜30の、透明基板20の裏面側より入射される光に対する裏面反射率は、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)のうちの1つ、好ましくは2つ以上の波長において、さらに好ましくは365nm~436nmの波長域において、15%以上、より好ましくは18%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。これにより、位相シフト膜30が露光光を熱吸収し熱膨張によって生じるパターン位置ずれを低減できる。また、位相シフト膜30の裏面反射率の変動幅は、365nm~436nmの波長域において20%以下、さらに好ましくは、15%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下とするのが好ましい。
位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅は、位相シフト膜30を構成する位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の屈折率、消衰係数および厚さを調整することにより制御することができる。消衰係数および屈折率は、組成を調整することにより制御することができるため、この実施の形態では、位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅が上述した所定の物性を有するように、位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さが調整されている。位相シフト膜30の裏面反射率についても同様である。なお、位相シフト膜30の表面反射率およびその変動幅は、主に、メタル層33および反射率低減層32の各々の材料、組成および厚さに影響される。また、位相シフト膜30の裏面反射率およびその変動幅は、主に、メタル層33および位相シフト層31の各々の材料、組成および厚さに影響される。
表面反射率および裏面反射率は、分光光度計などを用いて測定することができる。表面反射率の変動幅は、350nm~436nmの波長域、もしくは、365nm~436nmの波長域における最大の反射率と最小の反射率との差から求められる。また、裏面反射率の変動幅は、365nm~436nmの波長域における最大の反射率と最小の反射率との差から求められる。
遮光性膜パターン40を形成する材料は、露光光の透過を遮る機能を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、クロム系材料、前述した金属(M)(M:Zr、Mo、Ti、Ta、およびWのうちのいずれか一つ)を含む材料、前述した金属(M)とケイ素(Si)を含む材料などが挙げられる。クロム系材料として、クロム(Cr)、または、クロム(Cr)と、炭素(C)および窒素(N)のうちの少なくとも一種とを含むクロム化合物が挙げられる。その他、クロム(Cr)と、酸素(O)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種とを含むクロム化合物、または、クロム(Cr)と、炭素(C)および窒素(N)のうちの少なくとも一種とを含み、さらに、酸素(O)およびフッ素(F)のうちの少なくとも一種を含むクロム化合物が挙げられる。例えば、遮光性膜パターン40を形成する材料として、Cr、CrC、CrN、CrO、CrCN、CrON、CrCO、CrCONが挙げられる。
遮光性膜パターン40は、スパッタリング法により成膜した遮光性膜を、エッチングによりパターニングすることにより形成することができる。
光学濃度は、分光光度計もしくはODメーターなどを用いて測定することができる。
本発明の位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、この透明基板20上に形成された位相シフト膜30とを備え、さらに位相シフト膜30上に遮光膜45を形成した構成であってもよい。また、遮光膜45上にレジスト膜(図示省略)を形成した構成であってもよい。
この場合、遮光膜45としては、遮光性膜パターン40で説明した内容と同様の内容を適用できる。例えば、遮光膜45の材料としては、遮光性膜パターン40を形成する材料と同様の材料を使用できる。必要に応じて、遮光膜45の表面側に入射される光に対する遮光膜45の膜面反射率を低減するための表面反射率低減層47を形成した反射防止機能を有する遮光膜45としても構わない。この場合、遮光膜45は、位相シフト膜30側から露光光の透過を遮る機能を有する遮光層46と、表面反射率低減層47とを備えた構成となる。なお、遮光膜45が、表面反射率低減層47を備える場合、表面反射率低減層47の表面側より入射される光に対する遮光膜45の膜面反射率が365nm~436nmの波長域において10%以下、及び/又は、表面反射率低減層47の表面側より入射される光に対する遮光膜45の膜面反射率が350nm~436nmの波長域において15%以下となる特性を有することが好ましい。また、必要に応じて、図2に示した位相シフト膜30と遮光性膜パターン40との間、図3に示した位相シフト膜30と遮光膜45との間や、遮光膜45上に、他の機能膜を形成することもできる。前記機能膜としては、エッチング阻止膜やエッチングマスク膜などが挙げられる。
以下、各工程を詳細に説明する。
準備工程では、先ず、透明基板20を準備する。透明基板20の材料は、使用する露光光に対して透光性を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラスが挙げられる。透明基板20は、例えば、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有する。
遮光性膜パターン40を備える位相シフトマスクブランク10を製造する場合にあっては、透明基板20上に、スパッタリングにより、例えば、クロム系材料からなる遮光性膜を形成する。その後、遮光性膜上にレジスト膜パターンを形成し、レジスト膜パターンをマスクにして遮光性膜をエッチングして、遮光性膜パターン40を形成する。その後、レジスト膜パターンを剥離する。これらの工程は、遮光性膜パターン40の無い位相シフトマスクブランク10を製造する場合にあっては、省略する。
位相シフト膜形成工程では、透明基板20上に、スパッタリングにより、位相シフト膜30を形成する。ここで、透明基板20上に遮光性膜パターン40が形成されている場合、遮光性膜パターン40を覆うように、位相シフト膜30を形成する。
メタル層33の成膜は、金属(M)または金属(M)化合物を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガス雰囲気で行われる。メタル層33が炭素を含む場合は、メタル層33の成膜は、上記不活性ガスと上記炭化水素系ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。メタル層33が窒素、酸素、フッ素を含む場合は、メタル層33の成膜は、上記位相シフト層31および反射率低減層32の成膜と同様に行われる。
メタル層33の成膜および反射率低減層32の成膜についても同様である。成膜プロセスを複数回行う場合、スパッタターゲットに印加するスパッタパワーを小さくすることができる。
位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32は、インライン型スパッタリング装置やクラスター型スパッタリング装置を用いて、基板を大気に曝すことなく、連続して成膜することができる。
(遮光膜形成工程)
遮光膜形成工程では、位相シフト膜30上に、スパッタリングにより、遮光膜45を形成する。
遮光膜45は、位相シフト膜30上に遮光層46、必要に応じて遮光層46上に表面反射率低減層47を成膜することにより形成される。遮光層46および表面反射率低減層47の成膜は、金属(M)、金属(M)化合物、金属シリサイド(MSi)または金属シリサイド(MSi)化合物を含む1つまたは2つ以上のスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスおよびキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガス、フッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気、あるいは前記不活性ガスの少なくとも一種を含むスパッタガス雰囲気で行われる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガス等が挙げられる。
遮光層46および表面反射率低減層47を成膜する際、遮光層46、表面反射率低減層47の各々の材料、組成および厚さは、位相シフト膜30と遮光膜45とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度や、膜面反射率が上述した所定の光学特性を有するように調整される。遮光層46、表面反射率低減層47各々の組成は、スパッタガスの組成および流量などにより制御することができる。遮光層46、表面反射率低減層47の各々の厚さは、スパッタパワー、スパッタリング時間などにより成語することができる。また、スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、基板の搬送速度によっても、遮光層46および表面反射率低減層47の各々の厚さを制御することができる。
遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変えずに1回だけ行う。遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成および流量を変えて複数回行う。遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変化させながら1回だけ行う。遮光層46および表面反射率低減層47の各層が、組成の異なる複数の膜からなると共にその複数の膜はそれぞれ厚さ方向に組成が連続的に変化する膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成および流量を変化させながら複数回行う。
遮光層46および表面反射率低減層47は、インライン型スパッタリング装置やクラスター型スパッタリング装置を用いて、基板を大気に曝すことなく、連続して成膜することができる。
なお、レジスト膜を備える位相シフトマスクブランク10を製造する場合、次に、遮光膜上にレジスト膜を形成する。
実施の形態2では、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10を使用した位相シフトマスクの製造方法について説明する。実施の形態2は実施の形態2-1と実施の形態2-2を含む。実施の形態2-1は、透明基板20上に位相シフト膜30とレジスト膜が形成された位相シフトマスクブランク10を使用した位相シフトマスクの製造方法である。実施の形態2-2は、透明基板20上に位相シフト膜30と遮光膜45とレジスト膜が形成された位相シフトマスクブランク10を使用した位相シフトマスクの製造方法である。実施の形態2-1の位相シフトマスクの製造方法は、以下のレジスト膜パターン形成工程と位相シフト膜パターン形成工程とを行うことによって位相シフトマスクが製造される。また、実施の形態2-2の位相シフトマスクの製造方法は、以下のレジスト膜パターン形成工程と遮光膜パターン形成工程と位相シフト膜パターン形成工程とを行うことによって位相シフトマスクが製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
レジスト膜パターン形成工程では、先ず、図1又は図2で説明した実施の形態1の位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。レジスト膜材料は、例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものが使用されるか、又は365nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものが使用される。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光、もしくは、365nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜30上にレジスト膜パターンを形成する。
なお、位相シフトマスクブランク10が、既に、位相シフト膜30上にレジスト膜を備えるものである場合は、上記した位相シフト膜30上にレジスト膜を形成する工程は省略する。
実施の形態2-2の位相シフトマスクの製造方法における遮光膜パターン形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜45(図3)をエッチングして遮光膜パターンを形成する。
遮光膜45をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、遮光膜45を構成する遮光層46、表面反射率低減層47の各々を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、金属シリサイド系材料をウェットエッチングするエッチング液として、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、及びフッ化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、及び硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液や、過酸化水素とフッ化アンモニウムと、リン酸、硫酸、硝酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。金属シリサイド系材料層をドライエッチングするエッチングガスとして、フッ素系ガス、塩素系ガスが挙げられる。フッ素系ガスとしては、例えば、CF4ガス、CHF3ガス、SF6ガスや、これらのガスにO2ガスを混合したものが挙げられる。
また、例えば、クロム系材料をウェットエッチングするエッチング液として、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング溶液や、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスからなるエッチングガスが挙げられる。
(位相シフト膜パターン形成工程)
位相シフト膜パターン形成工程では、実施の形態2-1の位相シフトマスクの製造方法においては、先ず、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成する。一方、実施の形態2-2の位相シフトマスクの製造方法においては、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜45をエッチングして、遮光膜パターンを形成した後、遮光膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成する。
位相シフト膜30をエッチングするエッチング媒質(エッチング溶液、エッチングガス)は、位相シフト膜30を構成する位相シフト層31、メタル層33および反射率低減層32の各々を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、金属シリサイド系材料をウェットエッチングするエッチング液として、フッ化水素酸、珪フッ化水素酸、及びフッ化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つのフッ素化合物と、過酸化水素、硝酸、及び硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液や、過酸化水素とフッ化アンモニウムと、リン酸、硫酸、硝酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。さらに具体的には、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合溶液を純水で希釈したエッチング液が挙げられる。金属シリサイド系材料層をドライエッチングするエッチングガスとして、フッ素系ガス、塩素系ガスが挙げられる。フッ素系ガスとしては、例えば、CF4ガス、CHF3ガス、SF6ガスや、これらのガスにO2ガスを混合したものが挙げられる。
また、例えば、クロム系材料をウェットエッチングするエッチング液として、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング溶液や、塩素ガスと酸素ガスの混合ガスからなるエッチングガスが挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、または、アッシングによって、レジスト膜パターンを剥離する。
実施形態2-2の位相シフトマスクの製造方法においては、遮光膜45をエッチングするエッチング媒質によって、遮光膜パターンを除去してもよいし、位相シフト膜パターン上に該位相シフト膜パターンサイズと異なるパターンサイズを有する遮光膜パターンを形成する場合においては、再度、遮光膜パターン上にレジスト膜パターンを形成した後、レジスト膜パターンをマスクにして遮光膜パターン形成工程を行う。
実施の形態3では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、以下のマスク載置工程とパターン転写工程とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
載置工程(配置工程)では、実施の形態2で製造された位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置(配置)する。ここで、位相シフトマスクは、そのパターン形成面側が、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
パターン転写工程では、位相シフトマスクに露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する。露光光は、365nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光、313nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、313nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線を含む複合光や、j線、i線、h線およびg線を含む混合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
なお、図3に示すように、実施例1で得られた透過率スペクトルは、i-g線よりも短波長の領域で折れ曲がる(傾斜が極めて急峻になる)特徴がある。この特徴から、i-g線よりも短波長の領域の波長の光をカットするバンドカットフィルターの作用が得られる利点がある。
実施の形態4では、位相シフトマスクブランクの具体的な態様例について説明する。
これらを基本として、各層の材料を、各層において選択できる材料として上記で列記した材料で置換した態様が本発明に含まれる。
(位相シフトマスクブランク)
実施例1では、QZ(透明基板)/ZrSiON/CrC/CrOの構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(ZrSiON、膜厚90nm)とメタル層(CrC、膜厚20nm)と反射率低減層(CrO、膜厚35nm)とから構成される。
透明基板として、大きさが800mm×920mmであり、厚さが10mmである合成石英ガラス基板(QZ)を用いた。透明基板の両主表面は鏡面研磨されている。以下の実施例、比較例において使用した透明基板の両主表面も同様に鏡面研磨されている。
なお、位相シフト層の屈折率および消衰係数は、n&k Technology社製のn&k Analyzer 1280(商品名)を用いて測定した。
メタル層(CrC)のCr含有率は95原子%、C含有率は5原子%であった。
反射率低減層(CrO)各元素の含有率は、Cr含有率は70原子%、O含有率は30原子%であった。
なお、上記各元素の含有率は、X線光電子分光法(XPS)により測定した。以下の実施例、比較例において、元素の含有率の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
なお、透過率および位相差は、レーザーテック社製のMPM-100(商品名)を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、透過率や位相差の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。尚、実施例、比較例における透過率の値は、いずれもAir基準の値である。
なお、表面反射率は、島津製作所社製のSo1idSpec-3700(商品名)を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、表面反射率の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
なお、裏面反射率は、島津製作所社製のSo1idSpec-3700(商品名)を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、裏面反射率の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
実施例1の位相シフトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透明基板である合成石英ガラス基板を準備した。
その後、透明基板をスパッタリング装置のスパッタ室に搬入した。
その後、スパッタ室に配置されたZrSiターゲット(Zr:Si=1:2)(原子(%)比)に5.0kWのスパンタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、透明基板の主表面上にZrSiONからなる膜厚90nmの位相シフト層を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが50sccm、O2が5sccm、N2が50sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、Crターゲットに2.0kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとCH4ガスとの混合ガス(Arガス中に2.5%の濃度でCH4ガスが含まれている混合ガス)をスパッタ室内に導入しながら、位相シフト層上にCrCからなる膜厚20nmのメタル層を成膜した。ここで、ArガスとCH4ガスとの混合ガスが150sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、Crターゲットに6.0kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、メタル層上にCrOからなる膜厚35nmの反射率低減層を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが60sccm、O2が50sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、位相シフト層(ZrSiON、膜厚90nm)とメタル層(Cr、膜厚20nm)と反射率低減層(CrO、膜厚35nm)とから構成される位相シフト膜が形成された透明基板をスパッタリング装置から取り出し、洗浄を行った。
上述した位相シフトマスクブランクを用いて、以下の方法により位相シフトマスクを製造した。
先ず、上述した位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、ノボラック系のポジ型のフォトレジストからなるレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画機により、波長413nmのレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターン(1.8μmのラインアンドスペースパターン)を描画した。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜上にレジスト膜パターンを形成した。このとき、定在波の影響が原因と思われる、レジスト膜パターン断面のエッジ部分のラフネスの悪化は確認されなかった。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜をエッチングして、位相シフト膜パターンを形成した。
位相シフト膜を構成するメタル層および反射率低減層のエッチング溶液として、クロムのエッチング溶液(硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング溶液)を用いた。
位相シフト膜を構成する位相シフト層のエッチング溶液として、過酸化水素とフッ化アンモニウムとリン酸との混合溶液を純水で希釈したジルコニウムシリサイドのエッチング溶液を用いた。
なお、上記エッチングが終わった段階で、位相シフト層(ZrSiON)の方が上層のメタル層(CrC)と反射率低減層(CrO)よりも多くサイドエッチされ、段差できてしまう。そこで、レジスト膜パターンを残した状態で、メタル層(Cr)と反射率低減層(CrO)もう1回、クロムのエッチング溶液にて、メタル層(CrC)と反射率低減層(CrO)をサイドエッチングする2段エッチングを実施し両者の段差を解消した。
その後、レジスト剥離液を用いて、レジスト膜パターンを剥離した。
なお、位相シフトマスクの位相シフト膜パターン断面は、電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJSM7401F(商品名))を用いて観察した。以下の実施例、比較例において、位相シフト膜パターン断面の観測には、それぞれ同じ装置を用いた。
なお、位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、セイコーインスツルメンツナノテクノロジー社製SIR8000を用いて測定した。以下の実施例、比較例において、位相シフト膜パターンのCDばらつきの測定には、それぞれ同じ装置を用いた。
(位相シフトマスクブランク)
実施例2では、QZ/MoSiON/CrC/CrOの構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例2では、実施例1の位相シフトマスクブランクとは位相シフト層の材料、膜厚と、メタル層の膜厚が異なる。
実施例2の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(MoSiON、膜厚135nm)とメタル層(CrC、膜厚10nm)と反射率低減層(CrO、膜厚35nm)とから構成される。
メタル層(CrC)のCr含有率およびC含有率の値は実施例1と同じである。
反射率低減層(CrO)のCr含有率およびO含有率の値は実施例1と同じである。
実施例1に比べ透過率が低くなる(365nmの波長において3.1%)が、透過率波長依存性も小さいので、解像性が良い。
図5は、実施例2の位相シフトマスククランクの位相シフト膜の透過率スペクトルを示す。
実施例2では、位相シフト層の成膜時に、MoSiターゲット(Mo:Si=1:4)(原子(%)比)に5.0kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとO2ガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、透明基板の主表面上にMoSiONからなる膜厚135nmの位相シフト層を成膜した。ここで、Arガスが60sccm、O2が40sccm、N2が50sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その他の点は実施例1と同様の方法により、実施例2の位相シフトマスクブランクを製造した。
実施例2では、位相シフト層のエッチング時、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング溶液を用いた。
その他の点は実施例1と同様の方法により、実施例2の位相シフトマスクを製造した。
(位相シフトマスクブランク)
実施例3では、QZ/MoSiN/CrC/CrOの構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例3では、実施例2の位相シフトマスクブランクとは位相シフト層の材料、膜厚と、メタル層の膜厚が異なる。
実施例3の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(MoSiN、膜厚85nm)とメタル層(CrC、膜厚5nm)と反射率低減層(CrO、膜厚35nm)とから構成される。
メタル層(Cr)のCr含有率の値は実施例2と同じである。
反射率低減層(CrO)のCr含有率およびO含有率の値は実施例2と同じである。
実施例2に比べ透過率が低くなる(365nmの波長において2.7%)が、透過率波長依存性も小さいので、解像性が良い。
図6は、実施例3の位相シフトマスククランクの位相シフト膜の透過率スペクトルを示す。
実施例3では、位相シフト層の成膜時に、MoSiターゲット(Mo:Si=1:4)(原子(%)比)に5.6kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとN2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入しながら、透明基板の主表面上にMoSiNからなる膜厚85nmの位相シフト層を成膜した。ここで、Arガスが40sccm、N2が60sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その他の点は実施例2と同様の方法により、実施例3の位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクを製造した。
実施例4では、QZ上にZrSiON/Crの位相シフト膜、MoSi系遮光膜の膜構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
実施例4では、実施例1の位相シフトマスクブランクとは反射率低減層を形成しない位相シフト膜とし、位相シフト膜上に反射防止機能を有するMoSi系材料からなる遮光膜を形成した点が異なる。
実施例4の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、透明基板側から順に配置された、位相シフト層(ZrSiON、膜厚130nm)とメタル層(Cr、膜厚10nm)とから構成される。また、位相シフト膜上に形成されたMoSi系遮光膜は、MoSiN(膜厚25nm)/MoSi(膜厚65nm)/MoSiON(膜厚25nm)からなる反射防止機能を有する遮光膜とした。
また、実施例4の位相シフトマスクブランクは、遮光膜の膜面反射率は、レーザー描画光の波長413nmにおいて10%以下を有しており、位相シフト膜の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域において、20%以上であった。
比較例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、位相シフト層(CrOCN、膜厚122nm)のみから構成される。比較例1の位相シフトマスクブランクは、位相シフト膜がメタル層と反射率低減層とを備えていない点で上述の実施例の位相シフトマスクブランクと異なる。
比較例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜は、以下の成膜条件により成膜した。
位相シフト膜(CrOCN)の各元素の含有率は、Crは44原子%、Cは8原子%、Oは30原子%、Nは18原子%であった。
位相シフト膜は、透過率は、365nmの波長において4.6%であり、405nmの波長において8.0%であり、436nmの波長において11.0%であった。また、この位相シフト膜は、透過率の変動幅(透過率波長依存性)が、365nm~436nmの波長域において、6.4%であった。
位相シフト膜は、上述した1層構造により、位相差は、365nmの波長において179.6°であり、405nmの波長において164.7°であり、413nm波長において161.7°であり、436nmの波長において153.1°であった。また、この位相シフト膜は、位相差の変動幅が、365nm~436nmの波長域において、26.5°であった。
また、位相シフト膜は、表面反射率が、365nmの波長において24.0%であり、405nmの波長において25.1%であり、413nm波長において25.3%であり、436nmの波長において26.0%であった。また、位相シフト膜は、表面反射率の変動幅が、365nm~436nmの波長域において、2.0%であった。
また、位相シフト膜は、裏面反射率が、365nmの波長において17.9%であり、405nmの波長において19.9%であり、436nmの波長において20.3%であった。また、位相シフト膜は、裏面反射率の変動幅が、365nm~436nmの波長域において、2.4%であった。
比較例1の位相シフトマスクブランクは、以下の方法により製造した。
先ず、透明基板である合成石英ガラス基板を準備した。
その後、透明基板をスパッタリング装置のスパッタ室に搬入した。
その後、スパッタ室に配置されたクロムターゲットに3.5kWのスパッタパワーを印加し、ArガスとN2ガスとCO2ガスとの混合ガスをスパッタ室内に導入してCrOCNからなる膜厚122nmの位相シフト膜を成膜した。ここで、混合ガスは、Arが46sccm、N2が32sccm、CO2が18.5sccmの流量となるようにスパッタ室内に導入した。
その後、位相シフト膜が形成された透明基板をスパッタリング装置から取り出し、洗浄を行った。
上述した位相シフトマスクブランクを用いて、以下の方法により位相シフトマスクを製造した。
先ず、上述した位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、ノボラック系のポジ型のフォトレジストからなるレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画機により、波長413nmのレーザー光を用いて、レジスト膜に所定のパターン(1.8μmのラインアンドスペースパターン)を描画した。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、位相シフト膜上にレジスト膜パターンを形成した。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜を硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸を含むクロムエッチング溶液にてエッチングして、位相シフト膜パターンを形成し、その後、レジスト剥離液を用いて、レジスト膜パターンを剥離した。
上述した位相シフトマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、90nmであり、高解像度、高精細の表示装置の製造に用いられる位相シフトマスクに求められるレベルを達していなかった。
上述した比較例1による位相シフトマスクは、CDばらつきが大きく、また、露光光に対する位相シフト膜パターンの膜面反射率が高いため、上述した位相シフトマスクを用いて、高解像度、高精細の表示装置を製造することができなかった。
Claims (16)
- 表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにおいて、
透明基板と、該透明基板上に形成された位相シフト膜とを備え、
前記位相シフト膜は、2層以上の積層膜からなり、
前記位相シフト膜は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する位
相シフト層と、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依存性を調
整する機能を有するメタル層とを有し、
前記位相シフト膜は、露光光に対する前記位相シフト膜の透過率と位相差とが所定の光
学特性を有し、
前記位相シフト層は、金属とケイ素と、酸素、または、窒素および酸素を含む材料から
なり、
前記メタル層は、金属と、炭素、フッ素、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成され、前記金属の含有率が55原子%以上100原子%未満の金属化合物からなる材料からなり、
前記位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依
存性が、5.5%以内である
ことを特徴とする位相シフトマスクブランク。 - 表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにおいて、
透明基板と、該透明基板上に形成された位相シフト膜とを備え、
前記位相シフト膜は、主に露光光に対する透過率と位相差とを調整する機能を有する位
相シフト層と、該位相シフト層の上側に配置され、前記位相シフト膜の表面側より入射さ
れる光に対する反射率を低減させる機能を有する反射率低減層と、前記位相シフト層と前
記反射率低減層との間に配置され、波長365nm以上436nm以下の範囲における透
過率波長依存性を調整する機能を有するメタル層を有し、
前記位相シフト層、前記メタル層および前記反射率低減層の積層構造により、露光光に
対する前記位相シフト膜の透過率と位相差とが所定の光学特性を有し、
前記位相シフト層は、金属とケイ素と、酸素、または、窒素および酸素を含む材料から
なり、
前記メタル層は、金属と、炭素、フッ素、窒素、酸素のうちの少なくとも一種とで構成され、前記金属の含有率が55原子%以上100原子%未満の金属化合物からなる材料からなり、
前記位相シフト膜は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率波長依
存性が、5.5%以内であることを特徴とする位相シフトマスクブランク。 - 前記メタル層は、金属と、炭素、フッ素、酸素、または、窒素および酸素を含む材料で
構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の位相シフトマスクブランク。 - 前記反射率低減層は、金属と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む材
料、あるいは、金属とケイ素と、窒素、酸素および炭素のうちの少なくとも一種を含む材
料、からなることを特徴とする請求項2に記載の位相シフトマスクブランク。 - 前記反射率低減層を構成する金属は、Cr、Zr、Mo、Ti、TaおよびWのうちの
いずれか一つであることを特徴とする請求項2または4に記載の位相シフトマスクブラン
ク。 - 前記メタル層を構成する金属は、Cr、Zr、Mo、Ti、TaおよびWのうちのいず
れか一つであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の位相シフトマスクブ
ランク。 - 前記位相シフト層を構成する金属は、Zr、Mo、Ti、TaおよびWのうちのいずれ
か一つであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の位相シフトマスクブラ
ンク。 - 前記メタル層の金属の含有率と位相シフト層の金属の含有率との差は、60~80原子
%であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク
。 - 前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜の表面側より入射される光に対する前記位相シ
フト膜の表面反射率が、365nm~436nmの波長域において10%以下であること
を特徴とする請求項2、4、5のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。 - 前記位相シフト膜は、前記位相シフト膜側より入射される光に対する前記位相シフト膜
の表面反射率が、350nm~436nmの波長域において15%以下であることを特徴
とする請求項2、4、5のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。 - 前記透明基板の裏面側より入射される光に対する前記位相シフト膜の裏面反射率が、3
65nm~436nmの波長域において20%以上であることを特徴とする請求項1から
10のいずれかに記載の位相シフトマスクブランク。 - 前記位相シフト膜上に形成された遮光膜を備えることを特徴とする請求項1から11の
いずれかに記載の位相シフトマスクブランク。 - 前記遮光膜は、前記遮光膜の表面側より入射される光に対する前記遮光膜の膜面反射率
が、350nm~436nmの波長域において15%以下であることを特徴とする請求項
12記載の位相シフトマスクブランク。 - 表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法において、
請求項1から11のいずれかに記載の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上に、
レジスト膜を形成し、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を
有するレーザー光を用いた描画処理、および現像処理により、レジスト膜パターンを形成
する工程と、
前記レジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をエッチングして位相シフト
膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。 - 表示装置製造用の位相シフトマスクの製造方法において、
請求項12または13に記載の位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、レジスト膜を
形成し、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザ
ー光を用いた描画処理、および現像処理により、レジスト膜パターンを形成する工程と、
前記レジスト膜パターンをマスクにして前記遮光膜をエッチングして遮光膜パターンを
形成する工程と、
前記遮光膜パターンをマスクにして位相シフト膜をエッチングして位相シフト膜パター
ンを形成する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。 - 表示装置の製造方法において、
基板上にレジスト膜が形成されたレジスト膜付き基板に対して、請求項14または15
記載の位相シフトマスクの製造方法によって得られた位相シフトマスクを、前記レジスト
膜に対向して配置する位相シフトマスク配置工程と、
i線、h線及びg線を含む複合露光光を前記位相シフトマスクに照射して、前記位相シ
フト膜パターンを転写するパターン転写工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
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