以下、本発明の一実施形態に係る電気錠装置を用いた電気錠システムについて図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する構成は本発明の一例に過ぎない。本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
図1は電気錠装置を用いた電気錠システムのブロック図である。図2は電気錠装置が適用された扉を屋内から見た図、図3は電気錠装置が適用された扉を屋外から見た図である。
電気錠システムは、電気錠装置10と、応答器300(いわゆるタグキー)とを備える。電気錠装置10は、錠制御装置100と、電気錠210,220と、開閉センサ500とを備える。
この電気錠システムは、建物(例えば戸建ての住宅や集合住宅の住戸など)の扉1を電動で施錠又は解錠するためのシステムである。扉1は例えば玄関扉であり、ヒンジ部3を介して扉枠2に開閉自在に取り付けられている。なお扉1は外開きの扉である。
近年、建物の防犯性能を向上させるために、扉1に複数の錠を取り付けるのが一般的であり、本実施形態では、扉1の戸先側に2つの電気錠210,220が取り付けられている。なお、電気錠の個数は2個に限定されず、3個以上でもよい。
扉1の屋内側(室内側)と屋外側(室外側)とには、扉1を開閉するためのハンドル4が取り付けられている。ハンドル4は金属又は合成樹脂などの材料で形成されている。ここで、扉1の屋内側の面に設けられたハンドル4を第1ハンドル41といい、扉1の屋外側の面に設けられたハンドル4を第2ハンドル42という。ハンドル4が操作されていない状態では、ラッチボルト215は扉1の戸先から突出した状態でロックされている(図4参照)。このラッチボルト215が、扉枠2に設けられたラッチボルト用のストライク(図示せず)に挿入されることで、扉1が仮締めされ、風などで開かないようになっている。屋内側の第1ハンドル41が押されるか、又は屋外側の第2ハンドル42が手前に引っ張られるかすると、ラッチボルト215は、ロック状態が解除され、図4に示す位置から図中の右回りに回転可能な状態となる。この状態からさらに、屋内側の第1ハンドル41を押すか、又は屋外側の第2ハンドル42を手前に引くかすると、ラッチボルト215が扉枠2に押されて回転することによって扉1の内側に引き込まれた状態となり、扉1は開けられた状態となる。
第1ハンドル41と第2ハンドル42とは同様の構成を有しているので、図2〜図6を参照して第2ハンドル42の構成を説明し、第1ハンドル41の説明は省略する。図4〜図6は、屋外側の第2ハンドル42の構成を模式的に示した要部の断面図である。図4は第2ハンドル42が操作されていない状態を示している。図5は、扉1を屋外側(図5の上側)に開く前に、第2ハンドル42を扉1側に押した状態を示している。図6は、第2ハンドル42を扉1側に押した後に扉1を開くために、第2ハンドル42を屋外側に引いた状態を示している。
第2ハンドル42は、把持部420と、2つの連結部421と、2つの基部422とを備えている。把持部420は棒状に形成されており、人の手で把持される。2つの基部422は、扉1の屋外側の面に固定されている。2つの基部422は、上下方向において間隔を開けて並ぶように配置されている。2つの連結部421の各々は、対応する基部422と把持部420との間を連結する。連結部421は、基部422に設けられた軸部(図示せず)を中心として所定の角度範囲で回転可能なように、基部422に取り付けられている。また、第2ハンドル42は、扉1の内部に突出する棒状の突起部423を備えている。この突起部423は、連結部421の回転に連動して動作する。把持部420を人が操作することによって連結部421が軸部を中心として回転すると、連結部421の回転に応じて突起部423も回転し、突起部423の先端が扉1の内部で左右に移動する。
扉1の内部には、把持部420が扉1側に押されることによって突起部423の先端が扉1の内部を図5中の左側に移動した場合に、突起部423の先端で操作ボタンが押される位置にスイッチ216が配置されている。スイッチ216の操作ボタンが押されると、スイッチ216の接点状態がオンからオフ(又はオフからオン)に切り替わる。
また、扉1の内部には、把持部420が屋外側に引っ張られることによって突起部423の先端が扉1の内部を図6中の右側に移動した場合に、突起部423の先端で押される位置にラッチ駆動部2151が配置されている。ラッチ駆動部2151が突起部423の先端で押されていない状態では、ラッチボルト215は扉1の戸先から扉枠2側に突出した状態でロックされ、このラッチボルト215が扉枠2のストライクに挿入されることで、扉1が仮締めされる。一方、ラッチ駆動部2151が突起部423の先端で押された場合、ラッチ駆動部2151は、ラッチボルト215のロックを解除して回転自在な状態とする。この状態から把持部420がさらに外側に引っ張られると、ラッチボルト215が扉枠2に押されて回転することによって扉1の内側に引き込まれた状態となり、扉1が屋外側に開かれる。
なお第1ハンドル41は、第2ハンドル42と同様に、把持部410と、2つの連結部411と、2つの基部412と、突起部(図示せず)とを備えている。第1ハンドル41の把持部410、連結部411、基部412、突起部は、第2ハンドル42の把持部420、連結部421、基部422、突起部423と同様の機能を備えているので、その説明は省略する。なお、第1ハンドル41が屋外側に押された場合、第1ハンドル41の突起部がラッチ駆動部2151を押すことによって、ラッチ駆動部2151がラッチボルト215を回転自在な状態としている。
なお本実施形態では、屋内側の第1ハンドル41と屋外側の第2ハンドル42とが同じ形状に形成されているが、第1ハンドル41と第2ハンドル42とは異なる形状に形成されてもよい。また、扉1を開閉するために扉1に設けられた取手はハンドル4に限定されず、レバーやノブでもよい。
次に、錠制御装置100の構成について図1〜図3を参照して説明する。
まず、電気錠210,220の構成を説明する。電気錠210は、錠211と駆動装置212と施解錠センサ213とを備える。電気錠220は、錠221と駆動装置222と施解錠センサ223とを備える。電気錠210,220は同様の構成を有しているので、電気錠210について説明し、電気錠220については説明を省略する。
錠211は、扉枠2に設けられたストライク(図示せず)にそれぞれ挿入されるデッドボルト214およびラッチボルト215を備える(図2及び図3参照)。扉1の屋外側の面には、錠211に対応する位置にシリンダー6が設けられている(図3参照)。利用者がシリンダー6に正規の鍵(図示せず)を差し込み、この鍵を回転させると、シリンダー6が回転させられて、錠211が施錠又は解錠される。また扉1の屋内側の面には、錠211に対応する位置にサムターン5が取り付けられている(図2参照)。利用者がサムターン5を回転させると、サムターン5の回転に応じて錠211が施錠又は解錠される。
駆動装置212は、デッドボルト214を前進又は後退させるモータ(図示せず)などを備えている。駆動装置212は、錠制御装置100から入力される駆動信号に応じてモータを回転させ、デッドボルト214を前進又は後退させる。デッドボルト214が前進して、扉枠2に設けられたデッドボルト用のストライクにデッドボルト214が挿入されると、扉1が施錠される。デッドボルト214が後退し、扉枠2のストライクから外に出ると、扉1が解錠される。
施解錠センサ213は、錠211が施錠しているのか、解錠しているのかを検知する。なお電気錠210,220は、電動モータでデッドボルト(又はストライク)を駆動するようなモータ錠で構成されてもよいし、サムターンを電動モータで回転させる電動サムターンと機械式の錠装置とを組み合わせた構成でもよい。
錠制御装置100は、演算処理部110と、第1通信部121と、第2通信部122と、第1表示部131と、第2表示部132と、第1検知部140と、第2検知部150と、電気錠駆動回路161,162と、電源部170を備える。
演算処理部110は、例えばROM(Read Only Memory)などのメモリに格納された制御プログラムを実行することによって所定の機能を実現するマイクロコンピュータからなる。演算処理部110が制御プログラムを実行することによって、演算処理部110には、応答器300の認証を行う認証部111の機能や、電気錠210,220の施錠、解錠を制御する制御部112の機能が実現されている。また演算処理部110は格納部113を備えている。格納部113は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)のような電気的に書き換え可能な不揮発性メモリからなる内蔵メモリである。格納部113には、解錠又は施錠を許可する応答器300の識別情報が格納される。なお、格納部113に識別情報が格納されている応答器300は、電気錠210,220を解錠又は施錠する操作を許可された応答器であり、このような応答器300を正規の応答器という。
第1通信部121は第1LF通信回路1211と第1LFアンテナ1212とを備える。第1LFアンテナ1212はコイル形のアンテナであり、扉1の屋内側に取り付けられている(図2参照)。第1LF通信回路1211は、第1LFアンテナ1222を介してLF(Low Frequency)帯の電波信号を送受信する。
第2通信部122は第2LF通信回路1221と第2LFアンテナ1222とを備える。第2LFアンテナ1222はコイル形のアンテナであり、扉1の屋外側に取り付けられている(図3参照)。第2LF通信回路1221は、第2LFアンテナ1222を介してLF帯の電波信号を送受信する。
なお、本実施形態の第1通信部121および第2通信部122は応答器300との間でLF帯の電波信号を送受信するが、第1通信部121および第2通信部122と応答器300との間の通信仕様は適宜変更が可能である。
第1表示部131は、例えばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイなどからなる。第1表示部131は、扉1の屋内側に設けられて、電気錠装置10の動作状態(例えば電気錠210,220の施解錠動作や応答器300の認証結果など)を表示する。
第2表示部132は、例えばLEDや液晶ディスプレイなどからなり、扉1の屋外側に設けられて、電気錠装置10の動作状態(例えば電気錠210,220の施解錠動作や応答器300の認証結果など)を表示する。
第1検知部140は、複数(本実施形態では2つ)のサムターン5の各々について、操作の有無を検知する。第1検知部140は、何れかのサムターン5で解錠操作が行われると、解錠操作を示す検知信号を演算処理部110に出力する。また第1検知部140は、何れかのサムターン5で施錠操作が行われると、施錠操作を示す検知信号を演算処理部110に出力する。
第2検知部150は、屋外側に設けられた第2ハンドル42の操作を検知する。第2検知部150は、第2ハンドル42に設けられたスイッチ216の接点状態をもとに第2ハンドル42の操作を検知する。
電気錠駆動回路161は、演算処理部110から入力される制御信号に応じて、電気錠210を施錠又は解錠させる駆動信号を電気錠210に出力する。
電気錠駆動回路162は、演算処理部110から入力される制御信号に応じて、電気錠220を施錠又は解錠させる駆動信号を電気錠220に出力する。
電源部170は、例えば電池を電源として電気錠装置10の各部に動作電力を供給する。なお電源部170は、扉枠2に設けられた送電部から非接触給電方式で電力供給を受ける受電部を備え、外部から供給される電力で動作するものでもよい。
開閉センサ500は、例えば扉枠2に取り付けられたマグネット(図示せず)と、扉1が閉じられた状態でマグネットと対向するように扉1に配置された磁気センサ(図示せず)とを備える。開閉センサ500は、磁気センサによる磁気の検出結果をもとに、扉1が開いているか閉じているかを検知し、その検知結果を演算処理部110に出力する。
次に応答器300について図1を参照して説明する。
応答器300は、制御部310と、LF通信回路320と、LFアンテナ330と、表示部340と、操作部350と、電源部360とを備える。
制御部310は、例えばROMなどのメモリに格納された制御プログラムを実行することによって所定の機能を実現するマイクロコンピュータを備える。制御部310は例えばEEPROMなどの内蔵メモリを備え、この内蔵メモリには当該応答器300に割り当てられた識別情報が保持されている。LF通信回路320が錠制御装置100から送信された質問信号を受信すると、制御部310は、内蔵メモリに格納された識別情報を含む応答信号を作成し、この応答信号をLF通信回路320から送信させる。
LF通信回路320は、コイル型のLFアンテナ330を用い、所定の周波数帯(例えばLF帯)の電波で通信を行う。
LFアンテナ330は、例えば3つの独立したコイルを直交に配置した3軸構成である。したがって、応答器300の向きがどのような向きであっても、錠制御装置100との間で安定した通信が行える。
表示部340は、例えばLEDランプや液晶ディスプレイなどで構成され、応答器300の動作状態などを光や文字で表示する。
操作部350は、応答器300の電源をオン/オフする操作などを行うためのものである。
電源部360は、例えばコイン形のリチウム電池を備え、各部を駆動するための電力を供給する。
本実施形態の電気錠装置10を用いた電気錠システムは上記のような構成を有しており、屋内から扉1を開けて屋外に出る場合の動作について説明する。
扉1の屋内側にある2つのサムターン5のうちの何れかを利用者が解錠操作すると、第1検知部140がサムターン5の解錠操作を検知して、解錠操作を示す検知信号を演算処理部110に出力する。制御部112は、解錠操作を示す検知信号が第1検知部140から入力されると、電気錠駆動回路161,162に解錠命令を出力して、電気錠210,220を解錠させる。例えば、サムターン5を用いて電気錠210を解錠させる操作を第1検知部140が検知した場合、制御部112は電気錠駆動回路161,162に解錠命令を出力し、電気錠220を、サムターン5で解錠された電気錠210と同じ状態(解錠状態)に制御する。
また、扉1の屋内側にある2つのサムターン5のうちの何れかを利用者が施錠操作すると、第1検知部140がサムターン5の施錠操作を検知して、施錠操作を示す検知信号を演算処理部110に出力する。制御部112は、施錠操作を示す検知信号が第1検知部140から入力されると、電気錠駆動回路161,162に施錠命令を出力して、電気錠210,220を施錠させる。例えば、サムターン5を用いて電気錠210を施錠する操作を第1検知部140が検知した場合、制御部112は電気錠駆動回路161,162に施錠命令を出力し、電気錠220を、サムターン5で解錠された電気錠210と同じ状態(施錠状態)に制御する。
このように、複数ある電気錠210,220のうちの1つをサムターン5で解錠又は施錠すれば、制御部112によって全ての電気錠210,220が同じ状態に制御されるから、操作の手間を省くことができる。しかも、電気錠210,220が必ず備えているサムターン5の操作を第1検知部140が検知して、電気錠210,220を施錠又は解錠させているから、電気錠210,220を施錠又は解錠させるための操作ボタンを別途備える必要が無い。したがって、電気錠装置10の部品数を削減でき、また扉1の屋内側の面に解錠操作のための操作ボタンを配置する必要が無いから、扉1の意匠性が向上する。
ところで、本実施形態において、複数ある電気錠210,220のうちの1つをサムターン5で解錠又は施錠すると、この操作をトリガとして認証部111が、サムターン5を操作した人物の認証を行ってもよい。そして、認証部111による認証が成立した場合のみ、制御部112は、サムターン5で操作された電気錠と同じ状態となるように、他の電気錠を解錠又は施錠させてもよい。
この場合の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。
利用者が屋内から扉1を開ける場合、利用者は複数あるサムターン5のうちの何れかを手動で解錠操作し、この解錠操作によって対応する電気錠(例えば電気錠210)が手動で解錠される(図7のステップS1)。
サムターン5を用いて電気錠210の解錠操作が行われると、第1検知部140がサムターン5の解錠操作を検知して、解錠操作を示す検知信号を演算処理部110に出力する。演算処理部110の認証部111は、第1検知部140から解錠操作の検知信号が入力されると、検知信号の入力をトリガとして、応答器300の認証処理を開始する(ステップS2)。
認証部111は、応答器300に識別情報の送信を要求する質問信号を、第1通信部121及び第2通信部122に送信させる。利用者が携帯する応答器300は扉1の屋内側にあり、第1通信部121から送信された質問信号を受信すると、この質問信号に対する応答信号を送信する。第1通信部121が応答器300から送信された応答信号を受信すると、第1通信部121は受信した応答信号を演算処理部110に出力する。
第1通信部121から演算処理部110に応答信号が入力されると、認証部111は、応答信号に含まれる識別情報と、格納部113に格納された識別情報とを照合することによって、応答器300の認証を行う(ステップS3)。
ステップS3の認証処理において、認証が不成立だった場合(ステップS3のno)、認証部111は、サムターン5を操作した人物が正規の応答器300を携帯していないと判断する。認証部111は、制御部112に電気錠220を解錠させず、電気錠220は施錠状態を維持する(ステップS7)。このとき、演算処理部110は第1表示部131を制御してランプを点滅させたり、ブザー(図示せず)を鳴動させたりして、認証が不成立だったことを報知する。
一方、ステップS3の認証処理において、応答信号に含まれる識別情報が、格納部113に格納された識別情報と一致すると(ステップS3のyes)、認証部111は正規の応答器300と判断する(認証成立)。認証部111が正規の応答器300と判断すると、制御部112は電気錠駆動回路161,162に解錠命令を出力する。このとき、電気錠駆動回路162によって電気錠220が解錠され、全ての電気錠210,220が解錠された状態となる(ステップS4)。
電気錠210,220が解錠された後に、把持部410が屋外側に押されると、第1ハンドル41の突起部によってラッチ駆動部2151が押されて、ラッチボルト215は回転自在な状態となる。把持部410がこの状態からさらに屋外側に押されると(ステップS5)、ラッチボルト215が扉枠2に押されて回転することによって扉1の内側に引き込まれた状態となり、扉1が開けられる(ステップS6)。扉1が開けられると、開閉センサ500は、扉1の開状態を検知して、検知信号を演算処理部110に出力する。
扉1が開けられた状態で応答器300を携帯した利用者が屋外に出て、扉1が閉じられると、開閉センサ500は、扉1の閉状態を検知して、検知信号を演算処理部110に出力する。制御部112は、電気錠210,220を解錠させた後に、開閉センサ500からの検知信号に基づいて扉1が開けられてから閉じられたと判断すると、一定時間後に電気錠駆動回路161,162に施錠命令を出力する。電気錠駆動回路161,162に施錠命令が入力されると、電気錠駆動回路161によって電気錠210が施錠され、電気錠駆動回路162によって電気錠220が施錠される。
このように、複数ある電気錠210,220のうちの1つをサムターン5で解錠又は施錠すれば、サムターン5の操作をトリガとして、認証部111が認証を開始する。そして、認証部111による認証が成立した場合は、制御部112によって全ての電気錠210,220が同じ状態に制御されるから、操作の手間を省くことができる。しかも、電気錠210,220が必ず備えているサムターン5の操作を第1検知部140が検知して、認証部111が認証を開始しているから、認証部111による認証を開始させるための操作ボタンを別途設ける必要が無い。したがって、電気錠装置10の部品数を削減でき、また扉1の屋内側の面に操作ボタンを配置する必要が無いから、扉1の意匠性が向上する。
なお、図8のフローチャートでは、サムターン5による解錠操作をトリガとして認証部111が認証処理を開始する場合について説明したが、サムターン5による施錠操作をトリガとして認証部111が認証処理を開始してもよい。この場合も、認証部111による認証が成立すれば、制御部112が全ての電気錠210,220を施錠させており、1つのサムターン5を施錠操作するだけで、全ての電気錠210,220を施錠することができる。
また上述の実施形態において、第1検知部140は、サムターン5の操作を検知した場合に、どの電気錠が操作されたのかを検知し、その検知結果を含めた検知信号を演算処理部110に出力してもよい。この場合、制御部112は、サムターン5で操作されていない電気錠に対応した電気錠駆動回路のみに制御命令を出力し、サムターン5で操作されていない電気錠を、サムターン5で操作された電気錠と同じ状態に制御してもよい。
また、屋外から扉1を開けて屋内に入る場合の動作を図8のフローチャートに基づいて説明する。
正規の応答器300を携帯した利用者が、屋外から扉1を開ける場合、まず第2ハンドル42の把持部420を持って、扉1を開ける方向と反対向き(つまり扉1に近づく向き)に把持部420を押す(図8のステップS11)。
図5に示すように把持部420が扉1に近づく向きに押されると、第2ハンドル42の突起部423によってスイッチ216の操作ボタンが押され、スイッチ216の接点状態が例えばオンからオフに反転する。スイッチ216の接点信号は第2検知部150に入力されている。第2検知部150は、スイッチ216の接点状態がオンからオフに反転したことから、第2ハンドル42が操作されたことを検知し、検知信号を演算処理部110に出力する。第2検知部150から演算処理部110に検知信号が入力されると、認証部111は、第2ハンドル42が操作されたことをトリガとして、応答器300の認証処理を開始する(ステップS12)。
認証部111は、応答器300に識別情報の送信を要求する質問信号を、第1通信部121及び第2通信部122に送信させる。利用者が携帯する応答器300は扉1の屋外側にあり、第2通信部122から送信された質問信号を受信すると、この質問信号に対する応答信号を送信する。第2通信部122が応答器300から送信された応答信号を受信すると、第2通信部122は受信した応答信号を演算処理部110に出力する。
第2通信部122から演算処理部110に応答信号が入力されると、認証部111は、応答信号に含まれる識別情報と、格納部113に格納された識別情報とを照合することによって、応答器300の認証を行う(ステップS13)。
ステップS13の認証処理において、認証が不成立だった場合(ステップS13のno)、認証部111は、第2ハンドル42を操作した人物が正規の応答器300を携帯していないと判断する。認証部111は、制御部112に電気錠210,220を解錠させず、電気錠210,220は施錠状態を維持する(ステップS17)。このとき、演算処理部110は第2表示部132を制御してランプを点滅させたり、ブザー(図示せず)を鳴動させたりして、認証が不成立だったことを報知する。
一方、ステップS13の認証処理において、応答信号に含まれる識別情報が、格納部113に格納された識別情報と一致すると(ステップS13のyes)、認証部111は正規の応答器300と判断する(認証成立)。認証部111が正規の応答器300と判断すると、制御部112は電気錠駆動回路161,162に解錠命令を出力する。電気錠駆動回路161,162に解錠命令が入力されると、電気錠駆動回路161によって電気錠210が解錠され、電気錠駆動回路162によって電気錠220が解錠される(ステップS14)。電気錠210が錠211を解錠させると、施解錠センサ213が解錠状態を検知し、その検知結果が演算処理部110に出力される。同様に、電気錠220が錠221を解錠させると、施解錠センサ223が解錠状態を検知し、その検知結果が演算処理部110に出力される。
電気錠210,220が解錠された後に、把持部420が屋外側に引っ張られると、第2ハンドル42の突起部423によってラッチ駆動部2151が押されて、ラッチボルト215は回転自在な状態となる。把持部420がこの状態からさらに屋外側に引っ張られると(ステップS15)、ラッチボルト215が扉枠2に押されて回転することによって扉1の内側に引き込まれた状態となり、扉1が開けられる(ステップS16)。扉1が開けられると、開閉センサ500は、扉1の開状態を検知して、検知信号を演算処理部110に出力する。
扉1が開けられた状態で応答器300を携帯した利用者が屋内に入り、扉1が閉じられると、開閉センサ500は、扉1の閉状態を検知して、検知信号を演算処理部110に出力する。制御部112は、電気錠210,220を解錠させた後に、開閉センサ500からの検知信号に基づいて扉1が開けられてから閉じられたと判断すると、一定時間後に電気錠駆動回路161,162に施錠命令を出力する。電気錠駆動回路161,162に施錠命令が入力されると、電気錠駆動回路161によって電気錠210が施錠され、電気錠駆動回路162によって電気錠220が施錠される。
このように、本実施形態では屋外から扉1を開けるために操作する第2ハンドル42の操作で認証処理が開始されるから、認証処理を開始させるための操作スイッチを別に設ける必要が無くなる。しかも、第2ハンドル42が押されることで認証処理が開始された後、第2ハンドル42が引っ張られることで扉1が開けられるから、一つの第2ハンドル42で認証処理を開始させる操作と扉1を開けるという操作を行うことができ、操作性が向上する。
また、応答器300が加速度センサなどの動き検知部を備えてもよい。動き検知部は、加速度センサによって検出された加速度と閾値との高低を比較し、検出された加速度が閾値以上であれば、応答器300が動いていると検知する。応答器300は、応答信号に動き検知部の検知結果を含めて送信する。そして、錠制御装置100は、認証処理を行って応答器300から応答信号を受信した場合、応答信号に含まれる動き検知部の検知結果をもとに、認証が成立し、かつ、応答器300に動きがあれば、電気錠210,220を解錠させてもよい。これにより、応答器300が扉1の近くに置き忘れられている場合に、応答器300を持たない人物の操作で扉1が解錠される事象が起こりにくくなる。
また、錠制御装置100は、定期的に質問信号を送信して応答器300から応答信号を受信しても良い。そして、錠制御装置100は、ハンドル4が操作され、応答器300の認証が成立した場合に、ハンドル4が操作される前の一定時間内に動き検知部が動きを検知していれば、電気錠210,220を解錠させてもよい。これにより、応答器300が扉1の近くに置き忘れられている場合に、応答器300を持たない人物の操作で扉1が解錠される事象が起こりにくくなる。
以上説明したように、本実施形態の電気錠装置10は、複数の電気錠(本実施形態では2つの電気錠210,220)と、複数のサムターン5と、検知部(第1検知部140)と、制御部112とを備えたことを特徴とする。複数の電気錠の各々は建物の扉1を電動で施錠又は解錠する。複数のサムターン5は、扉1の室内側から対応する電気錠をそれぞれ手動操作で施錠又は解錠させる。検知部は複数のサムターン5の各々について操作の有無を検知する。検知部がサムターン5の操作を検知した場合、制御部112は、サムターン5で操作された電気錠以外の電気錠を、サムターン5で操作された電気錠と同じ状態に施錠又は解錠させるように制御する。
このように、複数ある電気錠のうちの1つをサムターン5で解錠又は施錠すれば、制御部112によって全ての電気錠210,220が同じ状態に制御されるから、操作の手間を省くことができる。しかも、電気錠が必ず備えているサムターン5の操作を検知部が検知して、電気錠を施錠又は解錠させているから、電気錠を施錠又は解錠させるための操作ボタンを別途設ける必要が無い。したがって、電気錠装置10の部品数を削減でき、また扉1の屋内側の面に操作ボタンを配置する必要が無いから、扉1の意匠性が向上する。
本実施形態の電気錠装置10において、検知部(第1検知部140)がサムターン5の操作を検知した場合に扉1を開閉する人物の認証を行う認証部111を備えてもよい。そして、制御部112は、認証部111による認証が成立した場合のみ、サムターン5で操作された電気錠以外の電気錠を、サムターン5で操作された電気錠と同じ状態に施錠又は解錠させるように制御してもよい。
このように、複数ある電気錠のうちの1つをサムターン5で解錠又は施錠すれば、サムターン5の操作をトリガとして、認証部111が認証を開始する。そして、認証部111による認証が成立した場合は、制御部112によって全ての電気錠が同じ状態に制御されるから、操作の手間を省くことができる。認証部111による認証が不成立であれば、サムターン5で操作された電気錠以外の電気錠は、そのままの状態を維持するので、セキュリティ性が向上する。さらに、電気錠が必ず備えているサムターン5の操作を検知部が検知して、認証部111が認証を開始しているから、認証部111による認証を開始させるための操作ボタンを別途設ける必要が無い。したがって、電気錠装置10の部品数を削減でき、また扉1の屋内側の面に操作ボタンを配置する必要が無いから、扉1の意匠性が向上する。
なお本実施形態の認証部111は、利用者に持たせた応答器300の認証を行うことによって、扉1を開閉する人物の認証を行っているが、認証の方法は、指紋や網膜などのバイオメトリクス情報を用いた認証方法でもよい。