本実施形態の電気錠11は、図1〜図5Bに示すように、回転部材122と、第2歯車(歯車)133と、第1弾性部材135と、第2弾性部材123と、を備えている。回転部材122は、施錠位置(図1に示す位置)と解錠位置(図4に示す位置)との間で回転する。施錠位置は、建物の扉10(図7参照)に設けられたデッドボルト121の少なくとも一部を扉10から突出させる位置である。解錠位置は、デッドボルト121を扉10内に収める位置である。第2歯車133は、駆動部131からの駆動力を受けて第1位置と第2位置との間で回転することにより回転部材122を回転させる。第1弾性部材135は、第2歯車133に連結され、第2歯車133に対して第1回転力を作用させる。第2弾性部材123は、回転部材122に連結され、回転部材122に対して第2回転力を作用させる。この電気錠11では、第2歯車133が第1位置から第2位置に移動するときに回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する。また、電気錠11では、第2歯車133が第1位置にある状態で第2歯車133を第1位置に保持する向きの第1回転力が第2歯車133に作用し、第2歯車133が第1位置から第2位置に移動する途中で第2歯車133に対する第1回転力の向きが反転する。さらに、電気錠11では、回転部材122が施錠位置にある状態で回転部材122を施錠位置に保持する向きの第2回転力が回転部材122に作用し、回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する途中で回転部材122に対する第2回転力の向きが反転する。
本実施形態の電気錠システム100は、図6に示すように、電気錠11(11A,11B)と、認証部1511と、ハンドル3(図7参照)と、検知部153と、を備えている。認証部1511は、建物の扉10を開閉する人物の認証を行う。ハンドル(操作部)3は、扉10を開閉する際に操作される。検知部153は、ハンドル3の操作を検知する。この電気錠システム100では、検知部153がハンドル3の操作を検知すると、認証部1511による認証を開始する、又は電気錠11を施錠もしくは解錠する。
以下、本発明の一実施形態に係る電気錠11を用いた電気錠システム100について図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施形態に限定されない。したがって、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
以下の説明では特に断りがない限り、扉10に取り付けられたハンドル3を正面から見たときの上、下、左、右を、上、下、左、右として各方向を規定する(図7参照)。また、扉10に直交する方向を前後方向(図7の手前が後方)として説明する。つまり、図1〜図5Bにおいて、「上」、「下」、「左」、「右」の矢印で示す通りに、上、下、左、右の各方向を規定する。ただし、これらの方向は電気錠11の使用方向を規定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
本実施形態の電気錠システム100は、図6に示すように、電気錠装置1と、応答器2(いわゆるタグキー)とを備えている。なお、応答器2はタグキーに限らず、スマートフォンであってもよい。電気錠装置1は、複数(図示では2つ)の電気錠11A,11Bと、錠制御装置15と、開閉センサ16と、ラッチボルト17(図7参照)とを備えている。なお、以下では、複数の電気錠11A,11Bをとくに区別しない場合には、複数の電気錠11A,11Bの各々を「電気錠11」ともいう。
この電気錠システム100は、図7に示すように、建物(例えば、戸建ての住宅や集合住宅の住戸など)の扉10を電動で施錠又は解錠するためのシステムである。扉10は、例えば玄関扉であり、一対のヒンジ部30を介して扉枠20に開閉自在に取り付けられている。本実施形態では、扉10が外開きの扉である場合について説明するが、扉10は内開きの扉でもよい。
扉10には、扉10を開閉する際に操作されるハンドル(操作部)3が取り付けられている。このハンドル3は、扉10に対して前後方向(扉10と直交する方向)に移動可能である。そして、扉10に近づく向きにハンドル3が押されると、ハンドル3が操作されたことを検知部153(後述する)が検知する。また、扉10から離れる向きにハンドル3が引かれると、扉10に設けられたラッチボルト17(図7参照)のラッチ状態が解除され、さらにハンドル3が引かれることで扉10が開けられる。
近年、建物の防犯性能を向上させるために、扉10に複数の錠を取り付けるのが一般的である。本実施形態では、扉10の戸先に2個の電気錠11A,11Bが取り付けられている。なお、電気錠の個数は2個に限らず、1個でもよいし、3個以上でもよい。
まず、電気錠11A,11Bの構成について図1〜図6を参照して説明する。電気錠11A,11Bは、図6に示すように、それぞれ、錠12と、駆動装置13と、位置検出部14と、ケース40(図1参照)とを備えている。つまり、電気錠11A,11Bは同様の構成を有している。
錠12は、図1に示すように、デッドボルト121と、回転部材122と、第2弾性部材123とを備えている。
デッドボルト121は、例えばステンレス鋼などの金属材料により左右方向に長い直方体状に形成されている。デッドボルト121の上面における右寄りの位置には、回転部材122の引掛部1222(後述する)が引っ掛けられる矩形の引掛溝1211が設けられている。引掛溝1211の開口端縁には、引掛部1222を誘い込むための一対のテーパ面1212が左右両側に設けられている。このデッドボルト121は、施錠状態となる位置(図1に示す位置)と解錠状態となる位置(図4に示す位置)との間で移動するように構成されている。施錠状態とは、デッドボルト121がケース40の左側面に設けられた開口部401(後述する)を通してケース40から突出した状態である。解錠状態とは、デッドボルト121がケース40内に収まった状態である。
回転部材122は、例えばステンレス鋼などの金属材料により前後方向に扁平な円板状に形成されている。回転部材122の外周面には、径方向に突出する棒状の引掛部1222が一体に設けられている。この引掛部1222は、回転部材122が回転する際にデッドボルト121に設けられた引掛溝1211に引っ掛かることで、デッドボルト121を施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させる。また、回転部材122の外周面には、複数の歯1224が全周(引掛部1222を除く)に亘って形成されている。回転部材122の中央には、前後方向に貫通する貫通孔1223が設けられている。この貫通孔1223には、前方からサムターンが差し込まれ、かつ後方からシリンダー4(図7参照)が差し込まれる。そして、扉10の内側からサムターンを回したり、扉10の外側からシリンダー4に鍵を差してシリンダー4を回転させたりすることにより、回転部材122を回転させてデッドボルト121を施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させることができる。つまり、回転部材122は、デッドボルト121が施錠状態となる施錠位置と、デッドボルト121が解錠状態となる解錠位置との間で回転可能である。
第2弾性部材123は、支持体1231と、コイルばね1232と、ピン1233,1234とを備えている。
支持体1231は、例えばステンレス鋼などの金属材料により帯板状に形成されている。コイルばね1232は、例えばステンレス鋼からなる金属線を螺旋状に巻くことにより形成されている。このコイルばね1232は、その中心孔に上述の支持体1231が通された状態で支持体1231に保持される。
ピン1233は、支持体1231を回転部材122に連結するための連結用のピンである。また、ピン1234は、支持体1231が挿通される挿通孔を有し、挿通孔に支持体1231が挿通された状態でケース40に固定される。つまり、本実施形態では、回転部材122の回転に伴ってピン1233が回転することにより、ピン1234の挿通孔内を支持体1231が移動するように構成されている。ここで、コイルばね1232は、図1に示すように、ピン1233,1234間に配置された状態で支持体1231に保持されており、支持体1231の移動に伴って伸縮するように構成されている。
駆動装置13は、図1に示すように、駆動部131と、第1歯車132と、第2歯車(歯車)133と、第3歯車134と、第1弾性部材135とを備えている。
駆動部131は、駆動モータ1311と、駆動モータ1311の出力軸に取り付けられたウォームギア(ねじ歯車)1312とを含む。駆動部131は、駆動回路155,156(後述する)からの駆動信号に従って正回転又は逆回転し、回転による駆動力を第1歯車132に伝達する。
第1歯車132は平歯車である。第1歯車132の外周面には、ウォームギア1312と噛み合う複数の歯1321が全周に亘って形成されている。この第1歯車132は、第1支持軸136を介してケース40に回転自在に取り付けられる。
第2歯車133は、第1歯車132と同じ平歯車である。第2歯車133の外周面における一部には、回転部材122に形成された複数の歯1224と噛み合う複数の歯1331が形成されている。つまり、第2歯車133の外周面には、歯1331が形成されていない部分がある。また、第2歯車133には、前後方向(厚み方向)に貫通する弧状の溝1332が設けられている。溝1332には、第3歯車134の突起1342(後述する)が挿通される。そして、第2歯車133と第3歯車134とが相対的に回転することにより、突起1342が溝1332内を移動する。本実施形態では、第2歯車133と第3歯車134とが相対的に回転することにより、第2歯車133が第3歯車134に対して約180°回転するように構成されている。この第2歯車133は、第2支持軸137を介して第3歯車134とともにケース40に回転自在に取り付けられる。ここに、歯1331の歯数は、回転部材122に形成された複数の歯1224と噛み合って、回転部材122を施錠位置又は解錠位置へ回転させることができる歯数に設定されている。
第3歯車134は、第1歯車132及び第2歯車133と同じ平歯車である。第3歯車134の外周面には、第1歯車132に設けられた複数の歯1321と噛み合う複数の歯1341が全周に亘って形成されている。また、第3歯車134の後面(図1の手前の面)には、後方に突出する突起1342が一体に設けられている。
第1弾性部材135は、支持体1351と、コイルばね1352と、ピン1353,1354とを備えている。
支持体1351は、例えばステンレス鋼などの金属材料により帯板状に形成されている。コイルばね1352は、例えばステンレス鋼からなる金属線を螺旋状に巻くことにより形成されている。このコイルばね1352は、その中心孔に上述の支持体1351が通された状態で支持体1351に保持される。
ピン1353は、支持体1351を第2歯車133に連結するための連結用のピンである。また、ピン1354は、支持体1351が挿通される挿通孔を有し、挿通孔に支持体1351が挿通された状態でケース40に固定される。つまり、本実施形態では、第2歯車133の回転に伴ってピン1353が回転することにより、ピン1354の挿通孔内を支持体1351が移動するように構成されている。ここで、コイルばね1352は、図1に示すように、ピン1353,1354間に配置された状態で支持体1351に保持されており、支持体1351の移動に伴って伸縮するように構成されている。
位置検出部14は、例えば第1マグネットと第1磁気センサとを備えている。第1マグネットは、回転部材122に取り付けられており、回転部材122とともに回転するように構成されている。第1磁気センサは、デッドボルト121が施錠状態にあるときに第1マグネットと対向するように配置されている。つまり、本実施形態の位置検出部14は、回転部材122の位置を検出することにより、デッドボルト121の位置を間接的に検出するように構成されている。もちろん、位置検出部14によってデッドボルト121の位置を直接検出するように構成されていてもよい。
ケース40は、例えばステンレス鋼などの金属材料により上下方向に長い矩形箱状に形成されている。ケース40の左側面で、かつ下側の位置には、矩形の開口部401が設けられている。そして、上述のデッドボルト121が、開口部401を通してケース40から突出する位置と、開口部401を通してケース40内に収まる位置との間で移動する。
次に、錠制御装置15の構成について図6を参照して説明する。錠制御装置15は、演算処理部151と、通信部152と、検知部153と、表示部154と、駆動回路155,156と、電源部157とを備えている。
演算処理部151は、例えばマイクロコンピュータを主構成として備えている。マイクロコンピュータは、そのメモリに記憶されているプログラムをCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサで実行することにより、演算処理部151としての機能を実現する。本実施形態では、演算処理部151は、応答器2の認証を行う認証部1511として機能し、かつ電気錠11A,11Bの施錠、解錠を制御する制御部1512として機能する。プログラムは、予めマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。
また、演算処理部151は、格納部1513を備えている。格納部1513は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)のような電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。格納部1513には、解錠又は施錠を許可する応答器2の識別情報が格納される。なお、格納部1513に識別情報が格納されている応答器2は、電気錠11A,11Bを解錠又は施錠する操作を許可された応答器であり、このような応答器2を「正規の応答器」という。
通信部152は、通信回路1521と、アンテナ1522とを備えている。アンテナ1522は、コイル形のアンテナであり、扉10の屋外側に取り付けられている。通信回路1521は、アンテナ1522を介して無線信号を送受信する。なお、本実施形態の通信部152は、応答器2との間で無線信号を送受信するが、通信部152と応答器2との間の通信仕様は適宜変更が可能である。
検知部153は、ハンドル3に設けられた押しスイッチを備え、押しスイッチの接点状態に基づいてハンドル3の位置を検知する。言い換えれば、検知部153は、操作部としてのハンドル3が操作されたか否かを検知する。
表示部154は、例えばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイなどで構成されている。表示部154は、扉10の屋外側に設けられており、電気錠装置1の動作状態(例えば、電気錠11A,11Bの施解錠状態や応答器2の認証結果など)を表示する。
駆動回路155は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11Aを施錠又は解錠させる駆動信号を電気錠11Aに出力する。
駆動回路156は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11Bを施錠又は解錠させる駆動信号を電気錠11Bに出力する。
電源部157は、例えば電池を電源として電気錠装置1の各部に動作電力を供給する。なお、電源部157は、扉枠20に設けられた送電部から非接触給電方式で電力供給を受ける受電部を備え、外部から供給される電力で動作するように構成されていてもよい。
開閉センサ16は、例えば扉枠20に取り付けられた第2マグネットと、扉10が閉じられた状態で第2マグネットと対向するように扉10に配置された第2磁気センサとを備えている。開閉センサ16は、第2磁気センサによる磁気の検出結果に基づいて、扉10の開閉状態を検知し、その検知結果を演算処理部151に出力する。
さらに、応答器2について図6を参照して説明する。
応答器2は、制御部21と、通信回路22と、アンテナ23と、表示部24と、操作部25と、電源部26とを備えている。
制御部21は、例えばマイクロコンピュータを主構成として備えている。マイクロコンピュータは、そのメモリに記憶されているプログラムをCPUなどのプロセッサで実行することにより、制御部21としての機能を実現する。プログラムは、予めマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。
また、メモリには、応答器2に割り当てられた識別情報が保持されている。通信回路22が錠制御装置15から送信された質問信号を受信すると、制御部21は、メモリに格納された識別情報を含む応答信号を作成し、この応答信号を通信回路22から送信させる。
通信回路22は、コイル型のアンテナ23を用い、錠制御装置15との間で無線信号を送受信する。
アンテナ23は、例えば3つの独立したコイルを直交に配置した3軸構成である。したがって、応答器2の向きがどのような向きであっても、錠制御装置15との間で安定した通信を行うことができる。
表示部24は、例えばLEDや液晶ディスプレイなどを含み、応答器2の動作状態などを光や文字で表示する。
操作部25は、例えば応答器2の電源をオン/オフする操作などを行う。
電源部26は、例えばコイン形のリチウム電池を備え、各部を駆動するための電力を供給する。
次に、電気錠11の動作について図1〜図5Bを参照して説明する。まず、電気錠11を電動で解錠する場合について図1〜図4を参照して説明する。ただし、電気錠11A,11Bの動作は同様であるため、以下では電気錠11Aについてのみ説明する。
図1は、デッドボルト121により施錠されている状態を示す断面図である。このとき、駆動モータ1311は停止しているため、ウォームギア1312を介して駆動モータ1311に連結された第1歯車132、第2歯車133及び第3歯車134も停止している。また、第2歯車133に連結されたピン1353の中心点は、第2支持軸137の中心点とピン1354の中心点とを通る直線L1に対して右側にあり、反時計回りの第1回転力M1が第2歯車133に作用している。さらに、回転部材122に連結されたピン1233の中心点は、回転部材122の中心点P1とピン1234の中心点とを通る直線L2に対して下側にあり、時計回りの第2回転力M2が回転部材122に作用している。ここに、本実施形態では、図1に示す回転部材122の位置が施錠位置であり、図1に示す第2歯車133の位置が第1位置である。
演算処理部151の認証部1511による認証が成立すると、駆動回路155は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11Aを解錠させる駆動信号を電気錠11Aに出力する。電気錠11Aでは、駆動回路155からの駆動信号が入力されると、駆動信号に従って駆動モータ1311が第1向き(左側から見て反時計回り)に回転する。駆動モータ1311が第1向きに回転すると、駆動モータ1311に取り付けられたウォームギア1312を介して第1歯車132が反時計回り(左回り)に回転する。第1歯車132が反時計回りに回転すると、第1歯車132と噛み合う第3歯車134は時計回り(右回り)に回転する。このとき、図1に示すように、第3歯車134の突起1342が第2歯車133の溝1332の第1端縁に接触しており、第3歯車134の回転に伴って第2歯車133も時計回りに回転する。またこのとき、第2歯車133及び第3歯車134は、第1弾性部材135による反時計回りの第1回転力M1に抗って時計回りに回転する。
図2に示すように、第2歯車133の回転に伴って、ピン1353の中心点が直線L1に対して右側から左側に移動すると、第1回転力M1の向きが反転する。言い換えれば、第1回転力M1の向きが反時計回りから時計回りになる。つまり、本実施形態では、ピン1353の中心点が直線L1に対して右側から左側に変わるときの第2歯車133の位置、言い換えればピン1353の中心点が直線L1上となるときの第2歯車133の位置が第1反転位置である。
図2に示す状態では、第2歯車133の歯1331と回転部材122の歯1224とが噛み合っており、第2歯車133に作用する第1回転力M1によって回転部材122に第3回転力M3が作用する。この第3回転力M3は、回転部材122に対して反時計回りに作用し、第2弾性部材123によって回転部材122に作用する時計回りの第2回転力M2とは反対向きである。本実施形態では、第3回転力M3が第2回転力M2よりも大きくなるようにコイルばね1232,1352のばね定数が設定されており、第2回転力M2に抗って回転部材122を反時計回りに回転させることができる。つまり、図2に示す状態になると、回転部材122に作用する第3回転力M3のみで回転部材122を回転させることができるので、駆動部131(厳密には駆動モータ1311)を停止することができ、駆動部131の負荷を低減することができる。
第3回転力M3によって回転部材122が図3に示す位置まで回転すると、回転部材122に連結されたピン1233の中心点が直線L1上となる。すなわち、図3に示す回転部材122の位置が第2反転位置であり、第2弾性部材123により回転部材122に作用する第2回転力M2の向きが反転する。言い換えれば、第2回転力M2の向きが時計回りから反時計回りになる。この場合、第3回転力M3の向きと第2回転力M2の向きとが同じ向きになり、第2回転力M2により回転部材122の反時計回りの回転がアシスト(補助)される。
また、図2に示す位置から図3に示す位置に回転部材122が回転する際、デッドボルト121に設けられた引掛溝1211の内側面に引掛部1222が引っ掛かることで、デッドボルト121がケース40内へと移動する。さらに、図2に示す位置から図3に示す位置に回転部材122が回転する際、第1弾性部材135による第1回転力M1によって第3歯車134に対して第2歯車133が相対的に回転することになる。したがって、この場合には、第3歯車134に設けられた突起1342が第2歯車133に設けられた溝1332内を移動することになる(図3参照)。このように、第2歯車133と第3歯車134とを相対的に回転可能とすることにより、回転部材122と駆動部131とを切り離すことができる。ここに、本実施形態では、突起1342と溝1332とでクラッチ機構が構成されている。
図3に示す位置から図4に示す位置に回転部材122が回転すると、デッドボルト121は、引掛部1222に引っ張られてケース40内に収まる。このとき、ピン1233の中心点が直線L2に対して上側に位置しており、第2弾性部材123は、回転部材122に対して反時計回りの第2回転力M2を作用させている。またこのとき、第2歯車133と回転部材122とが噛み合っておらず、第3回転力M3は回転部材122に作用していない。そして、第2歯車133は、時計回りの第1回転力M1によって、突起1342が溝1332の第2端縁に接触する位置まで回転する(図4参照)。
ここに、本実施形態では、図4に示す回転部材122の位置が解錠位置であり、図4に示す第2歯車133の位置が第2位置である。したがって、本実施形態では、第2歯車133に作用する第1回転力M1の向きが反転する第1反転位置は、第1位置と第2位置との中間位置よりも第1位置に近い位置である。また、本実施形態では、回転部材122に作用する第2回転力M2の向きが反転する第2反転位置は、施錠位置と解錠位置との中間位置である。ここに、上述の中間位置とは、施錠位置及び解錠位置から等距離にある位置のことをいう。
続けて、電気錠11を電動で施錠する場合について図1〜図5Bを参照して説明する。
図4に示す解錠状態から、第2向き(第1向きと反対向き)に駆動モータ1311を回転させると、第1歯車132が時計回り(右回り)に回転する。第1歯車132が時計回りに回転すると、第1歯車132と噛み合う第3歯車134は反時計回り(左回り)に回転する。第2歯車133は、突起1342が溝1332の第2端縁に接触していることから、第3歯車134の回転に伴って反時計回りに回転する。このとき、第2歯車133には、時計回りの第1回転力M1が作用しているため、第2歯車133及び第3歯車134は、第1回転力M1に抗って反時計回りに回転することになる。
第2歯車133の歯1331と回転部材122の歯1224とが噛み合うと、回転部材122は、第2歯車133から伝達される回転力により時計回りに回転する。このとき、時計回りの第1回転力M1が第2歯車133に作用し、反時計回りの第2回転力M2が回転部材122に作用しており、駆動モータ1311は、これらの回転力M1,M2に抗う大きさの駆動力を発生させる必要がある。したがって、施錠時には、駆動モータ1311の負荷が大きくなり、回転部材122の回転速度は遅くなる。
図4に示す位置から図3に示す位置に回転部材122が回転する際、デッドボルト121に設けられた引掛溝1211の内側面に引掛部1222が引っ掛かることで、デッドボルト121が左向きに押されてケース40から突出する。
図3に示す回転部材122の位置は第2反転位置であり、第2回転力M2の向きが反時計回りから時計回りに反転する。第2回転力M2の向きが時計回りになることで、第2回転力M2により駆動モータ1311がアシストされ、駆動モータ1311の負荷が軽減される。ここで、回転部材122の歯1224と第2歯車133の歯1331とが噛み合っていることから、回転部材122は、駆動モータ1311の回転速度で回転する。
第2歯車133は、第1歯車132及び第3歯車134を介して伝達される駆動モータ1311からの駆動力により、図2に示す位置を経由して図5Aに示す位置まで反時計回りに回転する。図5Aに示す位置は第1回転力M1の向きが反転する位置であり、第1回転力M1の向きが時計回りから反時計回りになる。回転部材122が上述の反転位置を越えると、第1回転力M1によって第3歯車134に対して第2歯車133が反時計回りに回転する。これにより、第3歯車134の突起1342が溝1332内を相対的に移動することになる(図5B参照)。その後、第2歯車133は、駆動モータ1311からの駆動力によって図1に示す位置まで時計回りに回転する。デッドボルト121は、引掛溝1211内に入り込んだ回転部材122の引掛部1222により左向きに押され、施錠状態になる。
ここで、第2歯車133に作用する第1回転力M1は、第1反転位置で時計回りから反時計回りに反転する。したがって、図1に示す施錠状態では、第1回転力M1の向きは反時計回りであり、第2回転力M2の向きは時計回りである。
また、図1に示す施錠状態及び図4に示す解錠状態では、第2歯車133の歯1331と回転部材122の歯1224とが噛み合っていない。そのため、サムターン又はシリンダー4を回転させることにより、回転部材122を手動で回転させることができる。つまり、デッドボルト121が施錠状態又は解錠状態にあるときは、回転部材122に作用する回転力が駆動部131に伝達されないように構成されている。したがって、デッドボルト121を電動で施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させた後、サムターン又はシリンダー4を回転させることにより、デッドボルト121を手動で施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させることができる。つまり、サムターン又はシリンダー4により手動操作が可能である。
次に、屋外から扉10を開けて室内に入るときの電気錠システム100の動作について説明する。
正規の応答器2を携帯した利用者が屋外から扉10を開ける場合、利用者は、ハンドル3を持って、ハンドル3を前方(扉10に近づく向き)に押す。
ハンドル3が前方に押されると、上述の押しスイッチの接点状態が、例えばオフからオンに反転する。押しスイッチの接点信号は検知部153に入力される。検知部153は、押しスイッチの接点状態がオフからオンに反転したことから、ハンドル3が操作されたことを検知し、検知信号を演算処理部151に出力する。検知部153から演算処理部151に検知信号が入力されると、認証部1511は、この検知信号をトリガとして、応答器2の認証を開始する。
認証部1511は、応答器2に識別情報の送信を要求する質問信号を、通信部152に送信させる。利用者が携帯する応答器2は、通信部152から送信された質問信号を受信すると、この質問信号に対する応答信号を送信する。通信部152は、応答器2から送信された応答信号を受信すると、受信した応答信号を演算処理部151に出力する。
通信部152から演算処理部151に応答信号が入力されると、認証部1511は、応答信号に含まれる識別情報と、格納部1513に格納された識別情報とを照合することによって、応答器2の認証を行う。
応答信号に含まれる識別情報と格納部1513に格納された識別情報とが一致しない場合、つまり応答器2の認証が不成立だった場合、認証部1511は、ハンドル3を操作した人物が正規の応答器2を携帯していないと判断する。そして、認証部1511は、制御部1512に電気錠11A,11Bを解錠させず、電気錠11A,11Bは施錠状態を維持する。このとき、演算処理部151は、表示部154を制御してランプを点滅させたり、ブザーを鳴動させたりして、認証が不成立だったことを報知する。
一方、応答信号に含まれる識別情報と格納部1513に格納された識別情報とが一致する場合、つまり応答器2の認証が成立した場合、認証部1511は、正規の応答器2と判断する。認証部1511が正規の応答器2と判断すると、制御部1512は、駆動回路155,156に解錠命令を出力する。駆動回路155,156に解錠命令が入力されると、駆動回路155によって電気錠11Aが解錠され、駆動回路156によって電気錠11Bが解錠される。電気錠11Aが錠12を解錠させると、位置検出部14が解錠状態(厳密には回転部材122の位置)を検出し、その検出結果が演算処理部151に出力される。同様に、電気錠11Bが錠12を解錠させると、位置検出部14が解錠状態(厳密には回転部材122の位置)を検出し、その検出結果が演算処理部151に出力される。
電気錠11A,11Bが解錠された後に、ハンドル3が後方(屋外側)に引っ張られると、ハンドル3の引き操作に伴ってラッチボルト17が解除状態(前後方向に回転可能な状態)となる。ハンドル3がこの状態からさらに後方に引っ張られると、扉10が開けられる。扉10が開けられると、開閉センサ16は、扉10の開状態を検知して、検知信号を演算処理部151に出力する。
扉10が開けられた状態で応答器2を携帯した利用者が屋内に入り、扉10が閉じられると、開閉センサ16は、扉10の閉状態を検知して、検知信号を演算処理部151に出力する。制御部1512は、電気錠11A,11Bを解錠させた後に、開閉センサ16からの検知信号に基づいて扉10が開けられてから閉じられたと判断すると、一定時間後に駆動回路155,156に施錠命令を出力する。駆動回路155,156に施錠命令が入力されると、駆動回路155によって電気錠11Aが施錠され、駆動回路156によって電気錠11Bが施錠される。
ところで、本実施形態の電気錠システム100は、上述のように、2つの電気錠11A,11Bを備えている。これらの電気錠11A,11Bを同時に駆動させた場合には、駆動モータ1311に流れる負荷電流がほぼ同じタイミングで発生するため、これらの負荷電流に耐え得る容量の電源部157が必要になる。そこで、本実施形態の電気錠システム100では、容量の小さい電源部157を用いることができるように、電気錠11A,11Bの駆動タイミングをずらしている。具体的には、一方の電気錠11Aを駆動部131により駆動させてから所定の遅延時間が経過した後に、他方の電気錠11Bを駆動部131により駆動させている。これにより、2つの駆動モータ1311に流れる負荷電流をずらすことができて、容量の小さい電源部157を用いることができる。
また、本実施形態の電気錠11のように、第1回転力M1の向きが反転する第1反転位置が、第1位置と第2位置との中間位置よりも第1位置に近い場合には、駆動モータ1311に流れる負荷電流のピーク時間が短くなる。そのため、一方の電気錠11Aを駆動させてから他方の電気錠11Bを駆動させるまでの遅延時間を短くすることができ、2つの電気錠11A,11Bを解錠するまでのトータルの解錠時間を短くすることができる。さらに、第2歯車133が第1反転位置を越えると、第1回転力M1によって回転部材122を高速で回転させることができるので、2つの電気錠11A,11Bを解錠するまでのトータルの解錠時間をさらに短くすることができる。
ここで、電気錠11A,11Bの解錠時間をできるだけ短くするためには、第2歯車133の第1反転位置を初期位置(図1に示す位置)にできるだけ近づけるのがよい。ただし、第1反転位置と初期位置とを一致させた場合には、解錠時間を最も短くすることはできるが、振動等によって意図せずに解錠される可能性がある。そこで、初期位置から第1反転位置までの回転角度は、例えば5°〜10°の範囲で設定することが好ましい。
以上説明したように、本実施形態の電気錠11(11A,11B)では、第2歯車(歯車)133に第1回転力M1を作用させる第1弾性部材135と、回転部材122に第2回転力M2を作用させる第2弾性部材123とが別々に設けられている。そのため、従来の電気錠のように、ダルマ(回転部材122)に対して回転力を作用させる付勢手段しか設けられていない場合に比べて、電気錠全体としてのばね設計の自由度を向上させることができる。また、第1回転力M1の向きが反転する第1反転位置を超えた後に第2歯車133の駆動力が回転部材122に伝達されるように構成した場合には、駆動部131の負荷を軽減することができる。
また、本実施形態の電気錠11のように、第1回転力M1の向きが反転する第1反転位置は、第1位置と第2位置との中間位置よりも第1位置に近い位置であることが好ましい。この構成によれば、第2歯車133が第1反転位置を超えた後は、第1回転力M1によって回転部材122を回転させることが可能である。そのため、第2歯車133が第1反転位置を超えるまで駆動部131を駆動させればよく、駆動部131の駆動時間を短くすることができる。ただし、この構成は電気錠11の必須の構成ではなく、例えば第1反転位置は、第1位置と第2位置との中間位置であってもよい。
また、本実施形態の電気錠11のように、第2回転力M2の向きが反転する第2反転位置は、施錠位置と解錠位置との中間位置であることが好ましい。この構成によれば、回転部材122が第2反転位置を超えた後は第2弾性部材123による第2回転力M2によって回転部材122の回転をアシストすることができ、これにより解錠速度を速くすることができる。ただし、この構成は電気錠11の必須の構成ではなく、第2反転位置は、施錠位置と解錠位置との中間位置でなくてもよい。
また、本実施形態の電気錠11のように、第2歯車133に作用する第1回転力M1によって回転部材122に作用する第3回転力M3は、第2歯車133が第1反転位置と第2位置との間にあるときに第2回転力M2よりも大きいことが好ましい。なお、第3回転力M3の向きは、第2回転力M2の向きと反対向きである。この構成によれば、駆動部131の駆動力を第2歯車133に与えることなく、第2弾性部材123の弾性力に抗って回転部材122を施錠位置から解錠位置へ移動させることができる。ただし、この構成は電気錠11の必須の構成ではなく、例えば第3回転力M3の大きさは第2回転力M2以下であってもよい。
また、本実施形態の電気錠11のように、回転部材122と駆動部131とを切り離すクラッチ機構(突起1342及び溝1332)をさらに備えていることが好ましい。この構成によれば、第1弾性部材135による第1回転力M1によって回転部材122に第3回転力M3が作用する位置まで第2歯車133を移動させるだけでよく、駆動部131の駆動時間を短くすることができる。ただし、この構成は電気錠11の必須の構成ではなく、クラッチ機構は省略されていてもよい。
また、本実施形態の電気錠システム100のように、2つの電気錠11A,11Bを備えていることが好ましい。そして、2つの電気錠11A,11Bの一方を駆動部131により駆動させてから遅延時間が経過した後に2つの電気錠11A,11Bの他方を駆動部131により駆動させるように構成されていることが好ましい。この構成によれば、2つの電気錠11A,11Bを同時に駆動させる場合に比べて、容量の小さい電源部157を用いることができる。さらに、上述の電気錠11A,11Bを用いることで、2つの駆動部131の負荷電流のピーク時間を短くすることができ、これにより2つの電気錠11A,11Bを解錠するまでのトータルの解錠時間を短くすることができる。ただし、この構成は電気錠システム100の必須の構成ではなく、例えば2つの電気錠11A,11Bを同時に駆動させてもよい。
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上述の実施形態では、回転部材122の全周(引掛部1222を除く)に亘って複数の歯1224が形成されている。これに対して、第2歯車133の複数の歯1331と噛み合うことで回転部材122が施錠位置と解錠位置との間で回転できるようになっていれば、回転部材122の全周に亘って複数の歯1224が設けられていなくてもよい。
また、上述の実施形態では、複数の歯1331が第2歯車133の外周面の一部に設けられているが、複数の歯1331は、第2歯車133の外周面の全周に亘って設けられていてもよい。ただし、この場合には、手動操作時において回転部材122の回転力が駆動部131に伝達されないように、回転部材122と駆動部131とを切り離す切り離し機構を設ける必要がある。
さらに、第1弾性部材135及び第2弾性部材123の一部を構成するばねはコイルばねに限らず、板ばね等であってもよい。また、上述の実施形態では、突起1342と溝1332とでクラッチ機構を構成しているが、駆動部131と回転部材122とを切り離すことができれば他の構成であってもよい。
さらに、上述の実施形態では、電池式の電気錠装置1について説明したが、電気錠装置1は、例えばAC電源から給電される構成であってもよい。この場合、電池式の電気錠装置1のように電池容量の問題がないため、認証部1511を常時認証可能とし、利用者が扉10に近づくことで認証を開始させる。そして、認証部1511による認証が成立していれば、検知部153からの検知信号を電気錠11A,11Bに解錠動作を開始させるトリガとし、この検知信号が演算処理部151に入力された時点でデッドボルト121を解錠位置に移動させる。
すなわち、検知部153がハンドル(操作部)3の操作を検知すると、電気錠11を施錠又は解錠するように構成されている。そのため、ハンドル3を操作してから電気錠11を施錠又は解錠するまでのタイムラグを短くすることができ、ハンドル3の操作時にデッドボルト121がストライクに引っ掛かりにくくなるという利点がある。