以下、本発明の実施形態に係る電気錠を用いた電気錠システムについて図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施形態1,2に限定されない。したがって、これらの実施形態1,2以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
以下の説明では特に断りがない限り、扉10に取り付けられたハンドル3を正面から見たときの上、下、左、右を、上、下、左、右として各方向を規定する。また、扉10に直交する方向を前後方向(図9の手前が後方)として説明する。つまり、図1〜図5、図7A〜図7C及び図10〜図14において、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の矢印で示す通りに、上、下、左、右、前、後の各方向を規定する。ただし、これらの方向は電気錠11の使用方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
(実施形態1)
本実施形態の電気錠システム100は、図8に示すように、電気錠装置1と、応答器2(いわゆるタグキー)とを備えている。なお、本実施形態では、応答器2がタグキーである場合を例示するが、応答器2はタグキーに限らず、例えばスマートフォンであってもよい。電気錠装置1は、複数(図示では2つ)の電気錠11A,11Bと、錠制御装置15と、開閉センサ16と、ラッチボルト17(図9参照)とを備えている。なお、以下では、複数の電気錠11A,11Bをとくに区別しない場合には、複数の電気錠11A,11Bの各々を「電気錠11」ともいう。
この電気錠システム100は、図9に示すように、建物(例えば、戸建ての住宅や集合住宅の住戸など)の扉10を電動で施錠又は解錠するためのシステムである。扉10は、例えば玄関扉であり、一対のヒンジ部30を介して扉枠20に開閉自在に取り付けられている。本実施形態では、扉10が外開きの扉である場合について説明するが、扉10は内開きの扉でもよい。
扉10には、図9に示すように、扉10を開閉する際に操作されるハンドル3(操作部)が取り付けられている。このハンドル3は、扉10に対して前後方向(扉10と直交する方向)に移動可能である。そして、扉10に近づく向き(前向き)にハンドル3が押されると、ハンドル3が操作されたことを検知部153(後述する)が検知する。また、扉10から離れる向き(後向き)にハンドル3が引かれると、扉10に設けられたラッチボルト17(図9参照)のラッチ状態が解除され、さらにハンドル3が引かれることで扉10が開けられる。
近年、建物の防犯性能を向上させるために、扉10に複数の錠を取り付けるのが一般的である。本実施形態では、扉10の戸先に2個の電気錠11A,11Bが取り付けられている。なお、電気錠の個数は2個に限らず、1個でもよいし、3個以上でもよい。
まず、電気錠11A,11Bの構成について図1〜図8を参照して説明する。電気錠11A,11Bは、図8に示すように、それぞれ、錠12と、駆動装置13と、位置検出部14と、ケース40(図1参照)とを備えている。つまり、電気錠11A,11Bは同様の構成を有している。
錠12は、図1〜図3に示すように、デッドボルト121と、回転部材122と、弾性部材128とを備えている。
デッドボルト121は、例えばステンレス鋼などの金属材料により左右方向に長い直方体状に形成されている。デッドボルト121の上面における右寄りの位置には、後述のレバー125の引掛部1253が引っ掛けられる矩形の引掛溝1211が設けられている。引掛溝1211の左右方向における開口端縁には、引掛部1253を誘い込むための一対のテーパ面1212が設けられている。このデッドボルト121は、回転部材122の回転に伴って、施錠状態となる位置(図1に示す位置)と解錠状態となる位置(図3に示す位置)との間で移動するように構成されている。施錠状態とは、ケース40の左側面に設けられた開口部401(後述する)を通して、デッドボルト121の一部がケース40から突出した状態である。解錠状態とは、デッドボルト121がケース40内に収められた状態である。
回転部材122は、図4に示すように、ダルマ123と、ギア124と、レバー125と、一対のフランジ126,127と、復帰ばね130とを備えている。
ダルマ123は、金属材料又は樹脂材料により円筒状に形成された筒状部1231を有している。筒状部1231の中央には、前後方向に貫通する貫通孔1232が設けられている。また、筒状部1231の前端縁には、外向き(径方向)に突出する鍔部1233が全周に亘って形成されている。さらに、筒状部1231の外周面には、外向き(径方向)に突出する一対の突部1234,1234が、前後方向から見たときの筒状部1231の中心点に対して点対称な位置に設けられている。ダルマ123の貫通孔1232には、前方からサムターンが差し込まれ、かつ後方からシリンダー4(図9参照)が差し込まれる。そして、扉10の内側からサムターンを回したり、扉10の外側からシリンダー4に鍵を差してシリンダー4を回転させたりすることにより、デッドボルト121を施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させることができる。
ギア124は、金属材料又は樹脂材料により半円環状に形成されたギア本体1241を有している。ギア本体1241の外周面には、複数の第3歯1242が周方向に沿って形成されている。また、ギア本体1241の外周面における複数の第3歯1242の両側には、外向き(径方向)に突出する一対のストッパ1243,1244が設けられている。さらに、ギア本体1241の後面には、後方に突出する複数(図示では5つ)の突起1245が周方向に沿って等間隔に設けられている。また、ギア本体1241の前面には、前方に突出する複数の突起1246(図6A参照)が周方向に沿って等間隔に設けられている。
レバー125は、金属材料又は樹脂材料により円環状に形成された環状部1251を有している。環状部1251の中央には、前後方向に貫通する円形の貫通孔1252が設けられている。また、環状部1251の外周面には、外向き(径方向)に突出する棒状の引掛部1253が設けられている。この引掛部1253は、回転部材122が回転する際にデッドボルト121の引掛溝1211に引っ掛けられることで、デッドボルト121を施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させる。
フランジ126は、金属材料又は樹脂材料により円板状に形成されたフランジ本体1261を有している。フランジ本体1261の中央には、前後方向に貫通する円形の貫通孔1262が設けられている。また、貫通孔1262の開口端縁には、フランジ126の回転方向に沿った一対の溝1267が、貫通孔1262の中心に対して点対称な位置に設けられている。さらに、フランジ本体1261には、前後方向に貫通し、かつフランジ126の回転方向に沿った溝1263が設けられている。これらの貫通孔1262及び溝1263はつながっている。また、フランジ本体1261における貫通孔1262の周りには、複数(図示では5つ)の開口部1264が周方向に沿って等間隔に設けられている。上述のギア124に設けられた複数の突起1245が複数の開口部1264にそれぞれ嵌め込まれることにより、フランジ126がギア124に取り付けられる。また、フランジ本体1261には、弾性部材128のピン1283(後述する)が挿通される挿通孔1265が設けられている。
フランジ127は、フランジ126と同様に、金属材料又は樹脂材料により円板状に形成されたフランジ本体1271を有している。フランジ本体1271の中央には、前後方向に貫通する円形の貫通孔1272が設けられている。また、貫通孔1272の開口端縁には、フランジ127の回転方向に沿った一対の溝1277が、貫通孔1272の中心に対して点対称な位置に設けられている。さらに、フランジ本体1271には、前後方向に貫通し、かつフランジ127の回転方向に沿った溝1273が設けられている。これらの貫通孔1272及び溝1273はつながっている。また、フランジ本体1271における貫通孔1272の周りには、複数(図示では5つ)の開口部1274が周方向に沿って等間隔に設けられている。上述のギア124に設けられた複数の突起1246(図6A参照)が複数の開口部1274にそれぞれ嵌め込まれることにより、フランジ127がギア124に取り付けられる。また、フランジ本体1271には、弾性部材128のピン1283が挿通される挿通孔1275が設けられている。
復帰ばね130は、金属線1301を螺旋状に巻くことによりコイル状に形成されている。この復帰ばね130は、フランジ126に対して時計回り(右回り)の弾性力を作用させるように構成されている。
弾性部材128は、図4に示すように、支持体1281と、コイルばね1282と、ピン1283,1284とを備えている。
支持体1281は、例えば金属材料により棒状に形成されている。コイルばね1282は、金属線を螺旋状に巻くことによりコイル状に形成されている。このコイルばね1282は、その中心孔に上述の支持体1281が通された状態で支持体1281に保持される。
ピン1283は、支持体1281を一対のフランジ126,127に連結するための連結用のピンである。また、ピン1284は、支持体1281が挿通される挿通孔1285を有し、挿通孔1285に支持体1281が挿通された状態でケース40に固定される。つまり、本実施形態では、一対のフランジ126,127の回転に伴ってピン1283が回転することにより、ピン1284の挿通孔1285内を支持体1281が移動するように構成されている。ここで、コイルばね1282は、図1に示すように、ピン1283,1284間に配置された状態で支持体1281に保持されており、支持体1281の移動に伴って伸縮するように構成されている。
駆動装置13は、図1〜図3に示すように、駆動部131と、第1歯車132と、第2歯車133と、第3歯車134と、ケース150とを備えている。第1歯車132、第2歯車133及び第3歯車134は、金属材料又は樹脂材料により形成されている。ケース150は、金属材料又は樹脂材料により矩形箱状に形成されている。
駆動部131は、駆動モータ1311と、駆動モータ1311の出力軸1313に取り付けられたウォームギア(ねじ歯車)1312とを含む。駆動部131は、駆動回路155,156(後述する)からの駆動信号に従って正回転又は逆回転し、回転による駆動力を第1歯車132に伝達する。
第1歯車132は、ウォームギア1312と噛み合うはす歯歯車である。第1歯車132の外周面には、ウォームギア1312と噛み合う複数の第1歯1321が全周に亘って形成されている。第1歯車132の後面には、第1歯車132よりも径の小さい第4歯車135が一体に形成されている。第4歯車135は、例えば平歯車である。第4歯車135の外周面には、複数の歯1351が全周に亘って形成されている。これらの第1歯車132及び第4歯車135は、第1支持軸137を介してケース150に回転自在に取り付けられる。
第2歯車133は、例えば平歯車である。第2歯車133の外周面には、ギア124に設けられた複数の第3歯1242と噛み合う複数の第2歯1331が形成されている。また、第2歯車133の前面側には、図5に示すように、第2歯1331が形成されていない欠歯部1332が設けられている。この欠歯部1332は、第2歯車133の周方向に沿って一定の範囲に設けられている。そして、例えば図1及び図3に示すように、複数の第3歯1242と欠歯部1332とが対向する状態では、第2歯車133とギア124とが離間している。言い換えれば、第2歯車133の第2歯1331とギア124の第3歯1242とが噛み合っていない。そのため、ダルマ123に取り付けられたサムターン又はシリンダー4を回転させることにより、デッドボルト121を手動で施錠状態となる位置又は解錠状態となる位置に移動させることができる。また、第2歯車133の外周面における欠歯部1332の両側には、外向き(径方向)に突出する一対のストッパ1333,1334が設けられている。これらのストッパ1333,1334は、上述のギア124に設けられたストッパ1243,1244のいずれかが接触することにより、ギア124の回転を規制するように構成されている。この第2歯車133は、第2支持軸138を介してケース150に回転自在に取り付けられる。なお、第2歯1331の歯数は、ギア124に設けられた複数の第3歯1242と噛み合って、回転部材122を施錠位置又は解錠位置に回転させることができる歯数に設定されている。ここに、本実施形態では、第2歯車133に設けられた欠歯部1332によって駆動部131と回転部材122とを切り離すことができ、第2歯車133がクラッチ機構として機能する。
第3歯車134は、第2歯車133と同じ平歯車である。第3歯車134の外周面には、第4歯車135に設けられた複数の歯1351と噛み合う複数の歯1341が全周に亘って形成されている。また、第3歯車134の前面には、図5に示すように、第3歯車134よりも径の小さい第5歯車136が一体に形成されている。第5歯車136の外周面には、第2歯車133の第2歯1331と噛み合う複数の歯1361が全周に亘って形成されている。また、第5歯車136には、第1歯車132と第2歯車133と第3歯車134とを組み合わせた状態で第1歯車132が配置される溝1362が全周に亘って形成されている(図5参照)。これらの第3歯車134及び第5歯車136は、第3支持軸139を介してケース150に回転自在に取り付けられる。ここに、本実施形態では、第1歯車132、第2歯車133、第3歯車134、第4歯車135及び第5歯車136により複数の歯車が構成されている。
位置検出部14は、マグネット141(図1参照)と、磁気センサ142(図8参照)とを備えている。位置検出部14は、磁気センサ142による磁気の検出結果に基づいて回転部材122の位置を検出し、その検出結果を演算処理部151(後述する)に出力する。マグネット141は、図1〜図3に示すように、マグネットホルダ129に取り付けられている。マグネットホルダ129は、例えば樹脂材料により円環状に形成されたホルダ本体1291を有している。ホルダ本体1291の中央には、前後方向に貫通する円形の貫通孔1292が設けられている。また、ホルダ本体1291の外周面には、外向き(径方向)に突出する板状の腕部1293が一体に設けられている。そして、上述のマグネット141は、図1〜図3に示すように、腕部1293の先端寄りの位置に取り付けられる。マグネットホルダ129は、上述のレバー125に取り付けられ、レバー125とともに回転する。本実施形態では、図1に示す位置において磁気センサ142がマグネット141の磁気を検出するように構成されている。そのため、位置検出部14は、磁気センサ142の検出結果に基づいて、回転部材122が施錠位置(図1に示す位置)にあることを検出する。これにより、演算処理部151は、デッドボルト121の位置、言い換えれば、デッドボルト121が施錠状態にあるのか、解錠状態にあるのかを間接的に検知することができる。
ケース40は、金属材料により上下方向に長い矩形箱状に形成されている。ケース40の左側面で、かつ下側の位置には、矩形の開口部401が設けられている。そして、上述のデッドボルト121が、開口部401を通してケース40から突出する位置と、開口部401を通してケース40内に収められる位置との間で移動する。言い換えれば、デッドボルト121は、施錠状態となる位置と解錠状態となる位置との間で移動する。
次に、錠制御装置15の構成について図8を参照して説明する。錠制御装置15は、演算処理部151と、通信部152と、検知部153と、表示部154と、駆動回路155,156と、電源部157とを備えている。
演算処理部151は、例えばマイクロコンピュータを主構成として備えている。マイクロコンピュータは、そのメモリに記憶されているプログラムをCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサで実行することにより、演算処理部151としての機能を実現する。本実施形態では、演算処理部151は、応答器2の認証を行う認証部1511として機能し、かつ電気錠11A,11Bの施錠、解錠を制御する制御部1512として機能する。プログラムは、予めマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。
また、演算処理部151は、格納部1513を備えている。格納部1513は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)のような電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである。格納部1513には、解錠又は施錠を許可する応答器2の識別情報が格納される。なお、格納部1513に識別情報が格納されている応答器2は、電気錠11A,11Bを解錠又は施錠する操作を許可された応答器であり、このような応答器2を「正規の応答器」という。
通信部152は、通信回路1521と、アンテナ1522とを備えている。アンテナ1522は、コイル形のアンテナであり、扉10の屋外側に取り付けられている。通信回路1521は、アンテナ1522を介して無線信号を送受信する。なお、本実施形態の通信部152は、応答器2との間で無線信号を送受信するが、通信部152と応答器2との間の通信仕様は適宜変更が可能である。
検知部153は、ハンドル3に設けられた押しスイッチを備え、押しスイッチの接点状態に基づいてハンドル3の位置を検知する。言い換えれば、検知部153は、操作部としてのハンドル3が操作されたか否かを検知する。
表示部154は、例えばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイなどで構成されている。表示部154は、扉10の屋外側に設けられており、電気錠装置1の動作状態(例えば、電気錠11A,11Bの施解錠状態や応答器2の認証結果など)を表示する。
駆動回路155は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11Aを施錠又は解錠させる駆動信号を電気錠11Aに出力する。
駆動回路156は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11Bを施錠又は解錠させる駆動信号を電気錠11Bに出力する。
電源部157は、例えば電池を電源として電気錠装置1の各部に動作電力を供給する。なお、電源部157は、扉枠20に設けられた送電部から非接触給電方式で電力供給を受ける受電部を備え、外部から供給される電力で動作するように構成されていてもよい。
開閉センサ16は、例えば扉枠20に取り付けられたマグネットと、扉10が閉じられた状態でマグネットと対向するように扉10に配置された磁気センサとを備えている。開閉センサ16は、磁気センサによる磁気の検出結果に基づいて、扉10の開閉状態を検知し、その検知結果を演算処理部151に出力する。
さらに、応答器2について図8を参照して説明する。
応答器2は、制御部21と、通信回路22と、アンテナ23と、表示部24と、操作部25と、電源部26とを備えている。
制御部21は、例えばマイクロコンピュータを主構成として備えている。マイクロコンピュータは、そのメモリに記憶されているプログラムをCPUなどのプロセッサで実行することにより、制御部21としての機能を実現する。プログラムは、予めマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。
また、メモリには、応答器2に割り当てられた識別情報が保持されている。通信回路22が錠制御装置15から送信された質問信号を受信すると、制御部21は、メモリに格納された識別情報を含む応答信号を作成し、この応答信号を通信回路22から送信させる。
通信回路22は、コイル型のアンテナ23を用い、錠制御装置15との間で無線信号を送受信する。
アンテナ23は、例えば3つの独立したコイルを直交に配置した3軸構成である。したがって、応答器2の向きがどのような向きであっても、錠制御装置15との間で安定した通信を行うことができる。
表示部24は、例えばLEDや液晶ディスプレイなどを含み、応答器2の動作状態などを光や文字で表示する。
操作部25は、例えば応答器2の電源をオン/オフする操作などを行う。
電源部26は、例えばコイン形のリチウム電池を備え、各部を駆動するための電力を供給する。
次に、電気錠11の動作について図1〜図3を参照して説明する。まず、電気錠11を電動で解錠する場合について説明する。ただし、電気錠11A,11Bの動作は同様であるため、以下では電気錠11Aについてのみ説明する。
図1は、デッドボルト121により扉10が施錠されている状態を示す断面図である。このとき、駆動モータ1311は停止しているため、ウォームギア1312を介して駆動モータ1311に連結された第1歯車132、第2歯車133、第3歯車134、第4歯車135及び第5歯車136も停止している。また、回転部材122(厳密には一対のフランジ126,127)に連結されたピン1283の中心点P3は、回転部材122の中心点P1とピン1284の中心点P2とを通る直線L1に対して左側にある。そのため、時計回りの回転力M1が弾性部材128から回転部材122に作用している。また、図1に示す状態では、第2歯車133の欠歯部1332と回転部材122とが対向しているため、第2歯車133とギア124とは噛み合っておらず(図6A参照)、回転部材122は、弾性部材128からの回転力M1によって時計回りに回転しようとする。しかしながら、ギア124のストッパ1244と第2歯車133のストッパ1334とが接触しているため、回転部材122の時計回りの回転は規制されている。ここに、本実施形態では、図1に示す回転部材122の位置が施錠位置である。そして、この状態では、回転部材122を施錠位置に保持する向きの回転力M1が回転部材122に作用している。
演算処理部151の認証部1511による認証が成立すると、駆動回路155は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11Aを解錠させる駆動信号を電気錠11Aに出力する。電気錠11Aでは、駆動回路155からの駆動信号が入力されると、駆動信号に従って駆動モータ1311が第1向き(左側から見て時計回り)に回転する。駆動モータ1311が第1向きに回転すると、駆動モータ1311に取り付けられたウォームギア1312を介して第1歯車132及び第4歯車135が時計回り(右回り)に回転する。第1歯車132及び第4歯車135が時計回りに回転すると、第4歯車135と噛み合う第3歯車134は反時計回り(左回り)に回転する。このとき、第3歯車134に一体に形成された第5歯車136も反時計回りに回転する。第3歯車134及び第5歯車136が反時計回りに回転すると、第5歯車136と噛み合う第2歯車133は時計回りに回転する。
第2歯車133が時計回りに回転すると、第2歯車133と噛み合うギア124が反時計回りに回転する。このとき、ギア124に取り付けられたフランジ126の溝1263の第1端縁とレバー125の引掛部1253との間には回転方向において遊び1266が設けられている。そのため、レバー125は回転せず、ギア124及びフランジ126,127だけが反時計回りに回転する。これにより、引掛部1253は、回転方向に沿って形成された溝1263内を相対的に移動することになる。またこのとき、回転部材122に作用する回転力M1の向きは時計回りであるため、回転部材122は、この回転力M1に抗って反時計回りに回転する。
ギア124及びフランジ126,127が反時計回りに回転して引掛部1253が溝1263の第1端縁に接触すると、ギア124、レバー125及びフランジ126,127が一体となって反時計回りに回転する(図2参照)。回転部材122が図2に示す位置まで回転すると、弾性部材128のピン1283の中心点P3が、直線L1を越えて直線L1の右側に移動する。この状態では、回転部材122に作用する弾性部材128からの回転力M1の向きが反時計回りとなる。つまり、本実施形態の電気錠11では、ピン1283の中心点P3が直線L1上となる位置が回転力M1の向きが反転する反転位置である(図7B参照)。つまり、反転位置は、回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する途中の位置である。
図2に示す位置では、駆動モータ1311からの駆動力だけでなく、上記駆動力と同じ向きの回転力M1も回転部材122に作用しており、回転部材122は反時計回りに高速で回転する。図2に示す状態から図3に示す状態になるとき、レバー125の引掛部1253がデッドボルト121の引掛溝1211に引っ掛かっており、レバー125の回転に伴ってデッドボルト121がケース40内に収められる(図3参照)。ここに、本実施形態では、図3に示す回転部材122の位置が解錠位置である。
回転部材122が解錠位置にある状態では、反時計回りの回転力M1が回転部材122に作用しているが、ギア124のストッパ1243と第2歯車133のストッパ1334とが接触することにより、回転部材122の反時計回りの回転は規制される。また、回転部材122が解錠位置に到達すると、フランジ126は、復帰ばね130からの弾性力によって、溝1263の反対側の第2端縁が引掛部1253に接触する位置まで時計回りに回転する。すなわち、本実施形態の電気錠11では、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置にあっても、復帰ばね130からの弾性力によって、引掛部1253の左側に遊び1266が形成される。
続けて、電気錠11を電動で施錠する場合について説明する。
図3に示す解錠状態において、駆動モータ1311が第1向きと反対の第2向きに回転すると、駆動モータ1311に取り付けられたウォームギア1312を介して第1歯車132及び第4歯車135が反時計回り(左回り)に回転する。第1歯車132及び第4歯車135が反時計回りに回転すると、第4歯車135と噛み合う第3歯車134は時計回り(右回り)に回転する。このとき、第3歯車134に一体に形成された第5歯車136も時計回りに回転する。第3歯車134及び第5歯車136が時計回りに回転すると、第5歯車136と噛み合う第2歯車133は反時計回りに回転する。
第2歯車133が反時計回りに回転すると、第2歯車133と噛み合うギア124が時計回りに回転する。このとき、レバー125の引掛部1253とフランジ126の溝1263の第2端縁との間には回転方向において遊びがないため、ギア124、レバー125及びフランジ126,127が一体となって時計回りに回転する。またこのとき、回転部材122に作用する弾性部材128からの回転力M1の向きは反時計回りであるため、回転部材122は、この回転力M1に抗って時計回りに回転する。
レバー125が時計回りに回転すると、引掛部1253がデッドボルト121の引掛溝1211に引っ掛かり、レバー125の回転に伴ってデッドボルト121がケース40外に押し出される(図1及び図2参照)。このとき、回転部材122が反転位置(図7Bに示す位置)を越えるまでは反時計回りの回転力M1が回転部材122に作用しているが、回転部材122が反転位置を越えると回転力M1の向きが時計回りになる。したがって、回転部材122が反転位置を越えた後は、駆動モータ1311からの駆動力に加えて、弾性部材128からの回転力M1も作用し、回転部材122は時計回りに高速で回転する。回転部材122が施錠位置に到達した状態では、時計回りの回転力M1が回転部材122に作用しているが、ギア124のストッパ1244と第2歯車133のストッパ1334とが接触することにより、回転部材122の時計回りの回転は規制される。
ここに、本実施形態では、レバー125が第1部材であり、フランジ126が第2部材である。また、本実施形態では、レバー125の引掛部1253が接触部である。さらに、本実施形態では、図1に示す第2歯車133の位置が第1位置であり、図3に示す第2歯車133の位置が第2位置である。
ところで、本実施形態の電気錠11では、図1及び図3に示すように、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置にあっても、第2歯車133の欠歯部1332と回転部材122とが対向するように構成されている。つまり、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置にあっても、第2歯車133の欠歯部1332が回転部材122側を向くように構成されている。そして、回転部材122が施錠位置又は解錠位置にある状態では、第2歯車133の第2歯1331とギア124の第3歯1242とが噛み合っておらず、第2歯車133と回転部材122とが離間している(図6A参照)。したがって、回転部材122が施錠位置又は解錠位置にある状態では、利用者がサムターン又はシリンダー4を回転させることにより、回転部材122を施錠位置と解錠位置との間で回転させることができる。言い換えれば、利用者による手動操作によって、施錠状態となる位置と解錠状態となる位置との間でデッドボルト121を移動させることができる。なお、回転部材122が施錠位置と解錠位置との間の途中位置にある状態では、図6Bに示すように、第2歯車133の第2歯1331とギア124の第3歯1242とが噛み合っている。
さらに、回転部材122が施錠位置にある状態では、ギア124に形成された複数の第3歯1242のうちギア124の周方向における一端の第3歯1242と欠歯部1332とが対向している(図1参照)。また、回転部材122が解錠位置にある状態では、ギア124に形成された複数の第3歯1242のうちギア124の周方向における他端の第3歯1242と欠歯部1332とが対向している(図3参照)。すなわち、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置にあっても、第3歯1242が欠歯部1332と対向している。そして、回転部材122を回転させて施錠位置と解錠位置との間の途中位置に回転部材122がある状態では、図6Bに示すように、第2歯車133の第2歯1331とギア124の第3歯1242とが噛み合っている。したがって、サムターン又はシリンダー4により手動で施解錠する際には駆動部131と回転部材122とを切り離しながらも、駆動部131により電動で施解錠する際には第2歯車133と回転部材122とを噛み合わせることができる。
しかも、第2歯車133に欠歯部1332を設けるだけでクラッチ機構を実現することができ、従来の電気錠のようにクラッチ手段は不要である。すなわち、本実施形態の電気錠11によれば、手動操作時における回転部材122の駆動力が駆動部131に伝達されないようにしながらも構造を簡素化することができる。
また、本実施形態の電気錠11では、図1〜図3に示すように、施錠位置及び解錠位置の一方から他方に回転部材122を回転させるときの第2歯車133の回転角は360度である。そのため、第2歯車133の回転角が360度を超える場合に比べて、第2歯1331の接触回数を減らすことができ、これにより第2歯車133の寿命を延ばすことができる。
さらに、本実施形態の電気錠11では、図7A〜図7Cに示すように、施錠位置から反転位置までの回転部材122の回転角θ1は、反転位置から解錠位置までの回転部材122の回転角θ2よりも小さい。つまり、本実施形態の電気錠11では、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置に反転位置がある。ここで、反転位置が施錠位置と解錠位置との中間位置である場合、中間位置に達するまでは駆動モータ1311からの駆動力により回転部材122が回転し、中間位置を越えると弾性部材128からの回転力M1によって回転部材122が高速回転する。これに対して、本実施形態の電気錠11では、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置が反転位置となっており、反転位置が中間位置である場合よりも早いタイミングで回転部材122が高速回転を開始する。したがって、本実施形態の電気錠11によれば、反転位置が中間位置である場合に比べて解錠速度を速くすることができる。しかも、駆動モータ1311の駆動力のみで回転部材122を回転させる時間を短くすることができるので、駆動モータ1311の負荷を軽減することもできる。さらに、弾性部材128からの回転力M1の向きが反転した後に回転部材122と第2歯車133とを切り離すクラッチ機構を設けた場合には、弾性部材128からの回転力M1の向きが反転する位置まで駆動モータ1311を駆動させればよい。これにより、駆動モータ1311の負荷をさらに軽減することができる。ここに、上述の中間位置とは、施錠位置及び解錠位置から等距離にある位置のことをいう。
また、図7Aに示すように、フランジ126の溝1263の第1端縁とレバー125の引掛部1253との間の遊び1266の角度α1は、施錠位置から反転位置までの回転部材122の回転角θ1以上であることが好ましい。この場合、引掛部1253が溝1263の第1端縁に接触するまでは駆動モータ1311の駆動力のみで回転部材122を回転させることになるが、ギア124及びフランジ126,127のみを回転させるだけでよい。そのため、本構成によれば、駆動モータ1311の負荷を軽減することができる。しかも、引掛部1253が溝1263の第1端縁に接触した後では、ギア124、レバー125及びフランジ126,127が一体となって回転するが、回転部材122の回転方向と同じ向きの回転力M1が回転部材122に作用している。そのため、本構成によれば、ギア124、レバー125及びフランジ126,127が一体に回転する状態であっても、弾性部材128からの回転力M1によって駆動モータ1311の負荷を軽減することができる。
ここで、本実施形態の電気錠11では、施錠位置から解錠位置までの回転部材122の回転角(θ1+θ2)は90度である。したがって、施錠位置から反転位置までの回転角θ1は0度〜45度の範囲で設定される。そして、本実施形態の電気錠11のように、錠12を高速で解錠させる場合には、上記回転角θ1が5度〜40度の範囲で設定されることが好ましい。また、錠12の解錠速度をさらに高速化するためには、上記回転角θ1が30度以下であることがより好ましい。ただし、上記回転角θ1が小さくなりすぎると、ピッキング等によって簡単に解錠できてしまうため、防犯上好ましくない。したがって、防犯性を考慮すると、上記回転角θ1は10度以上であることがより好ましい。そして、解錠速度の高速化を図りながらも防犯性を向上させるためには、上記回転角θ1が22.5度であることが最も好ましい。つまり、回転部材122の施錠位置から反転位置までの回転角θ1を22.5度に設定することによって、錠12の解錠速度の高速化を図りながらもピッキング等に対する防犯性も向上させることができる。
また、本実施形態の電気錠システム100のように、2つの電気錠11A,11Bを用いている場合、解錠時間を短縮するためには2つの電気錠11A,11Bを同時に駆動させることが好ましい。しかしながら、2つの電気錠11A,11Bを同時に駆動させた場合、駆動モータ1311に流れる負荷電流がほぼ同じタイミングで発生することになり、これらの負荷電流に耐え得る容量の電源部157が必要になる。そこで、本実施形態では、電源部157の容量を小さくしながらも解錠時間を短縮できるように、2つの電気錠11A,11Bの駆動タイミングをずらしている。具体的には、一方の電気錠11Aを駆動部131により駆動させてから所定の遅延時間が経過した後、他方の電気錠11Bを駆動部131により駆動させている。その結果、2つの駆動モータ1311に流れる負荷電流をずらすことができ、容量の小さい電源部157を用いることができる。
ここで、弾性部材128による回転力M1の向きが反転する反転位置を、施錠位置と解錠位置との中間位置(施錠位置から45度の位置)とした場合、駆動モータ1311の駆動力によって回転部材122を反転位置まで回転させる必要がある。この場合、2つの電気錠11A,11Bの遅延時間は0.2秒程度必要になる。これに対して、本実施形態の電気錠11では、施錠位置から反転位置までの回転角を45度よりも小さい角度(例えば、22.5度)に設定している。そのため、駆動モータ1311の駆動時間を短くすることができ、これにより電気錠11Aに対する電気錠11Bの遅延時間(例えば、0.05秒)を短くすることができる。その結果、電源部157の容量を小さくしながらも2つの電気錠11A,11Bを解錠するまでのトータルの解錠時間を短くすることができる。
ところで、本実施形態の電気錠11では、図10に示すように、ダルマ123に設けられた一対の突起1234がフランジ127に設けられた一対の溝1277内にそれぞれ配置されている。そして、回転部材122が施錠位置にある状態では、溝1277の端縁と突起1234との間に、復帰ばね130からの弾性力により遊び1278が形成されている。この電気錠11において、サムターン又はシリンダー4によって手動で解錠させる場合、突起1234が溝1277の端縁に接触するまではダルマ123のみが回転することになる。そして、突起1234が溝1277の端縁に接触した後は、ダルマ123とフランジ127とが一体となって回転し、反転位置を越えたところで弾性部材128からの回転力M1の向きが反転する。その後、ダルマ123及びフランジ127を含む回転部材122は、回転力M1によって解錠位置まで高速で回転する。例えば、突起1234が溝1277の端縁に接触するまでのダルマ123の回転角が22.5度に設定され、施錠位置から反転位置までの回転部材122の回転角が22.5度に設定されていると仮定する。このとき、手動で解錠するためには、サムターン又はシリンダー4を45度回転させることになる。これに対して、遊び1278が設けられていない場合には、サムターン又はシリンダー4を22.5度回転させるだけで解錠されるため、本実施形態の電気錠11によれば、防犯性を向上させることができる。言い換えれば、電動で解錠させる際には解錠時間を短縮しながらも、手動で解錠させる際には回転角度を大きくすることができて防犯性を向上させることができる。なお、本実施形態では、ダルマ123とフランジ127との関係について説明したが、ダルマ123とフランジ126との関係についても同様である。したがって、ダルマ123とフランジ126との関係については説明を省略する。
次に、屋外から扉10を開けて室内に入るときの電気錠システム100の動作について説明する。
正規の応答器2を携帯した利用者が屋外から扉10を開ける場合、利用者は、ハンドル3を持って、ハンドル3を前方(扉10に近づく向き)に押す。
ハンドル3が前方に押されると、上述の押しスイッチの接点状態が、例えばオフからオンに反転する。押しスイッチの接点信号は検知部153に入力される。検知部153は、押しスイッチの接点状態がオフからオンに反転したことから、ハンドル3が操作されたことを検知し、検知信号を演算処理部151に出力する。検知部153から演算処理部151に検知信号が入力されると、認証部1511は、この検知信号をトリガとして、応答器2の認証を開始する。
認証部1511は、応答器2に識別情報の送信を要求する質問信号を、通信部152に送信させる。利用者が携帯する応答器2は、通信部152から送信された質問信号を受信すると、この質問信号に対する応答信号を送信する。通信部152は、応答器2から送信された応答信号を受信すると、受信した応答信号を演算処理部151に出力する。
通信部152から演算処理部151に応答信号が入力されると、認証部1511は、応答信号に含まれる識別情報と、格納部1513に格納された識別情報とを照合することによって、応答器2の認証を行う。
応答信号に含まれる識別情報と格納部1513に格納された識別情報とが一致しない場合、つまり応答器2の認証が不成立だった場合、認証部1511は、ハンドル3を操作した人物が正規の応答器2を携帯していないと判断する。そして、認証部1511は、制御部1512に電気錠11A,11Bを解錠させず、電気錠11A,11Bは施錠状態を維持する。このとき、演算処理部151は、表示部154を制御してランプを点滅させたり、ブザーを鳴動させたりして、認証が不成立だったことを報知する。
一方、応答信号に含まれる識別情報と格納部1513に格納された識別情報とが一致する場合、つまり応答器2の認証が成立した場合、認証部1511は、正規の応答器2と判断する。認証部1511が正規の応答器2と判断すると、制御部1512は、駆動回路155,156に解錠命令を出力する。駆動回路155,156に解錠命令が入力されると、駆動回路155によって電気錠11Aが解錠され、駆動回路156によって電気錠11Bが解錠される。電気錠11Aが錠12を解錠させると、位置検出部14が解錠状態(厳密には回転部材122の解錠位置)を検出し、その検出結果が演算処理部151に出力される。同様に、電気錠11Bが錠12を解錠させると、位置検出部14が解錠状態(厳密には回転部材122の解錠位置)を検出し、その検出結果が演算処理部151に出力される。
電気錠11A,11Bが解錠された後に、ハンドル3が後方(屋外側)に引っ張られると、ハンドル3の引き操作に伴ってラッチボルト17が解除状態(前後方向に回転可能な状態)となる。ハンドル3がこの状態からさらに後方に引っ張られると、扉10が開けられる。扉10が開けられると、開閉センサ16は、扉10の開状態を検知して、検知信号を演算処理部151に出力する。
扉10が開けられた状態で応答器2を携帯した利用者が屋内に入り、扉10が閉じられると、開閉センサ16は、扉10の閉状態を検知して、検知信号を演算処理部151に出力する。制御部1512は、電気錠11A,11Bを解錠させた後に、開閉センサ16からの検知信号に基づいて扉10が開けられてから閉じられたと判断すると、一定時間後に駆動回路155,156に施錠命令を出力する。駆動回路155,156に施錠命令が入力されると、駆動回路155によって電気錠11Aが施錠され、駆動回路156によって電気錠11Bが施錠される。
上述のように、本実施形態の電気錠11によれば、回転部材122が施錠位置にある状態では、回転部材122を施錠位置に保持する向きの回転力M1が回転部材122に作用している。そして、回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する途中で回転力M1の向きが反転するように構成されている。回転力M1の向きが反転する反転位置は、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置である。このように、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置が反転位置となっているので、反転位置が上記中間位置である場合に比べて早いタイミングで回転力M1の向きを反転させることができ、これにより解錠速度を速くすることができる。言い換えると、本実施形態の電気錠11によれば、従来の電気錠よりも解錠速度を速くすることができる。
また、レバー125の引掛部1253がフランジ126の溝1263の端縁に接触するまでは、フランジ126のみを回転させるだけの駆動力を駆動部131から与えればよく、駆動部131の負荷を軽減することができる。
さらに、本実施形態の電気錠システム100のように、反転位置が上記中間位置よりも施錠位置に近い電気錠11を用いることで、従来の電気錠よりも解錠速度を速くすることができる電気錠システム11を提供することができる。
以下、実施形態1の変形例について説明する。
上述の実施形態1では、歯車の個数が5つ(第1歯車132、第2歯車133、第3歯車134、第4歯車135及び第5歯車136)の場合を例示したが、歯車の個数は、2つ、3つ又は4つであってもよいし、6つ以上であってもよい。
また、上述の実施形態1では、ダルマ123、ギア124、レバー125及びフランジ126,127の4部品で回転部材122が構成されている。これに対して、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置であっても、第2歯車133と回転部材122とが切り離されるようになっていれば、1部品、2部品又は3部品で回転部材122が構成されていてもよい。同様に、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置であっても、第2歯車133と回転部材122とが切り離されるようになっていれば、5部品以上で回転部材122が構成されていてもよい。そして、回転部材122が1部品、2部品又は3部品で構成されている場合には、本実施形態の電気錠11に比べて部品点数を削減することもできる。
さらに、上述の実施形態1では、位置検出部14により回転部材122の位置を検出するように構成されているが、例えばデッドボルト121の位置を検出することで回転部材122の位置を間接的に検出するように構成されていてもよい。
また、上述の実施形態1では、第2歯車133の複数の第2歯1331と噛み合う複数の第3歯1242が回転部材122(厳密にはギア124)の一部に設けられているが、回転部材122の全周に亘って第3歯1242が設けられていてもよい。
さらに、上述の実施形態1では、第2歯車133に設けられた欠歯部1332が1つの場合を例示したが、欠歯部は2つ以上設けられていてもよい。例えば、第2歯車133の回転方向が1方向の場合には、複数の欠歯部により隔てられた複数組の第2歯を順番に使用することになり、第2歯車133の回転方向が両方向(2方向)の場合に比べて、第2歯車133の寿命を延ばすことができる。
また、上述の実施形態1では、1つの磁気センサ142によって回転部材122が施錠位置にあることを検出するように構成されているが、1つの磁気センサ142によって回転部材122が解錠位置にあることを検出するように構成されていてもよい。さらに、上述の実施形態1では、磁気センサが1つの場合を例示したが、例えば2つの磁気センサにより回転部材122の位置を検出するように構成されていてもよい。この場合、2つの磁気センサのうち一方の磁気センサによって回転部材122が施錠位置にあることを検出し、他方の磁気センサによって回転部材122が解錠位置にあることを検出すればよい。これにより、デッドボルト121の施錠状態と解錠状態との両方を検出することができる。
また、上述の実施形態1では、コイルばね1282を用いて弾性部材128を構成しているが、コイルばねの代わりに板ばね等の他のばねを用いて弾性部材128を構成してもよい。
さらに、上述の実施形態1では、電池式の電気錠装置1の場合を例示したが、電気錠装置1は、例えばAC電源から給電される構成であってもよい。この場合、電池式の電気錠装置1のように電池容量の問題がないため、認証部1511を常時認証可能とし、利用者が扉10に近づくことで認証を開始させる。そして、認証部1511による認証が成立していれば、検知部153からの検知信号を電気錠11A,11Bに解錠動作を開始させるトリガとし、この検知信号が演算処理部151に入力された時点でデッドボルト121を解錠状態となる位置に移動させる。
すなわち、検知部153がハンドル3(操作部)の操作を検知すると、電気錠11を施錠又は解錠するように構成されている。そのため、ハンドル3を操作してから電気錠11を施錠又は解錠するまでのタイムラグを短くすることができ、ハンドル3の操作時にデッドボルト121がストライクに引っ掛かりにくくなるという利点がある。
(実施形態2)
実施形態2の電気錠11について、図11〜15Bを参照して説明する。本実施形態では、第2歯車133(歯車)が第1円盤133Aと第2円盤133Bとを有している点で実施形態1と異なっている。なお、それ以外の構成については実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。つまり、第2歯車133以外の構成については実施形態1と同様であるから、ここでは第2歯車133以外の構成についての詳細な説明を省略する。
本実施形態の電気錠11は、図11に示すように、錠12と、駆動装置13と、位置検出部14(図8参照)と、ケース40とを備えている。錠12は、デッドボルト121と、回転部材122と、弾性部材128とを備えている。駆動装置13は、駆動部131と、第1歯車132と、第2歯車133(歯車)と、第3歯車134と、基板140と、ケース150とを備えている。第1歯車132、第2歯車133及び第3歯車134は、金属材料又は樹脂材料により形成されている。ケース150は、金属材料又は樹脂材料により矩形箱状に形成されている。
ここで、本実施形態の電気錠11では、ウォームギア1312の溝の進み角が大きくなっており、かつウォームギア1312と噛み合う第1歯車132の溝の進み角も大きくなっている。そのため、この電気錠11では、駆動モータ1311が停止している状態において、回転部材122を回転させることによって、第1歯車132、第2歯車133及び第3歯車134を介してウォームギア1312を回転させることができる。すなわち、本実施形態の電気錠11は、セルフロックがかからないように構成されている。
基板140には、実施形態1で説明した演算処理部151、通信部152、駆動回路155,156、磁気センサ142などが実装されている。本実施形態では、回転部材122が施錠位置にある状態と解錠位置にある状態とを検出できるように、2個の磁気センサ142が基板140に実装されている。一方、磁気センサ142によって磁気が検出されるマグネット141は、後述の第2円盤133Bに取り付けられている(図15A参照)。また、本実施形態では、後述の第1円盤133Aを原点復帰させるための位置検出用の磁気センサ142も基板140に実装されている。一方、この磁気センサ142によって磁気が検出されるマグネット141は、第1円盤133Aに取り付けられている(図15B参照)。ここに、「原点復帰」とは、回転部材122が施錠位置または解錠位置に位置している状態において、次の施解錠動作時にタイムラグが小さくなるように、また次の施解錠動作を手動で行う場合に、施解錠時に第2円盤133Bの回転力を第1円盤133A〜駆動モータ1311と切り離し、不要な手動トルクが発生しないように、第1円盤133Aを元の位置(図12及び図14に示す位置)に復帰させることをいう。
第2歯車133は、図11〜図15Bに示すように、第1円盤133Aと、第2円盤133Bとを備えている。
第1円盤133Aは、例えば平歯車である。第1円盤133Aの外周面には、第5歯車136に設けられた複数の歯1361と噛み合う複数の第2歯1331が形成されている。本実施形態では、複数の第2歯1331は、第1円盤133Aの全周ではなく、第1円盤133Aの周方向の一部に形成されている。言い換えると、第1円盤133Aの外周面には、第2歯1331が設けられていない部位があり、当該部位には原点復帰用のマグネット141が取り付けられている。また、第1円盤133Aの後面(第2円盤133Bとの対向面)には、図15Bに示すように、後方(第2円盤133B側)に突出する円柱状の突出部1335が一体に設けられている。さらに、第1円盤133Aの後面には、第1円盤133Aの周方向に沿って形成された円弧状の溝1336が設けられている。
第2円盤133Bは、第1円盤133Aと同様に平歯車である。第2円盤133Bの外周面には、回転部材122のギア124に設けられた複数の第3歯1242と噛み合う複数の歯1337が形成されている。本実施形態では、複数の歯1337は、第2円盤133Bの全周ではなく、第2円盤133Bの周方向の一部に形成されている。また、第2円盤133Bの前面(第1円盤133Aとの対向面)には、図15Aに示すように、回転部材122の位置を検出するためのマグネット141が取り付けられている。さらに、第2円盤133Bには、前後方向(第2円盤133Bの厚み方向)に貫通し、かつ第2円盤133Bの周方向に沿って形成された円弧状の長孔1339が設けられている。
第2歯車133は、第1円盤133Aと第2円盤133Bとを組み付けることにより構成される。第1円盤133Aと第2円盤133Bとを組み付けた状態では、第1円盤133Aの突出部1335が第2円盤133Bの長孔1339に挿通され、かつ第2円盤133Bに取り付けられたマグネット141が第1円盤133Aの溝1336内に収容される。したがって、本実施形態の第2歯車133では、第1円盤133Aの突出部1335が第2円盤133Bの長孔1339内を移動することによって、第1円盤133Aに対して第2円盤133Bが回転可能に構成されている。ここで、第1円盤133Aに対して第2円盤133Bが回転する際にマグネット141が溝1336の端縁に接触しないように、溝1336の周方向に沿った寸法が長孔1339の周方向に沿った寸法よりも長く設定されていることが好ましい。
次に、電気錠11の動作について図12〜図14を参照して説明する。まず、電気錠11を電動で解錠する場合について説明する。
図12は、デッドボルト121により扉10が施錠されている状態での要部を後方から見た平面図である。このとき、駆動モータ1311は停止しているため、ウォームギア1312を介して駆動モータ1311に連結された第1歯車132、第2歯車133(厳密には第1円盤133A)、第3歯車134、第4歯車135及び第5歯車136も停止している。また、回転部材122(厳密には一対のフランジ126,127)に連結されたピン1283の中心点P3は、回転部材122の中心点P1とピン1284の中心点P2とを通る直線L1に対して左側にある。そのため、後方から見て反時計回りの回転力M1が弾性部材128から回転部材122に作用している。ここに、本実施形態では、図12に示す回転部材122の位置が施錠位置である。そして、この状態では、回転部材122を施錠位置に保持する向き(後方から見て反時計回り)の回転力M1が回転部材122に作用している。
演算処理部151の認証部1511による認証が成立すると、駆動回路155(または駆動回路156)は、演算処理部151から入力される制御信号に応じて、電気錠11を解錠させる駆動信号を電気錠11に出力する。電気錠11では、駆動回路155(または駆動回路156)からの駆動信号が入力されると、駆動信号に従って駆動モータ1311が第1向き(下側から見て反時計回り)に回転する。駆動モータ1311が第1向きに回転すると、駆動モータ1311に取り付けられたウォームギア1312を介して第1歯車132及び第4歯車135が後方から見て反時計回り(左回り)に回転する。第1歯車132及び第4歯車135が後方から見て反時計回りに回転すると、第4歯車135と噛み合う第3歯車134は後方から見て時計回り(右回り)に回転する。このとき、第3歯車134に一体に形成された第5歯車136も後方から見て時計回りに回転する。第3歯車134及び第5歯車136が後方から見て時計回りに回転すると、第5歯車136と噛み合う第2歯車133の第1円盤133Aは後方から見て反時計回りに回転する。
第1円盤133Aが後方から見て反時計回りに回転すると、第1円盤133Aの突出部1335から長孔1339の第1端縁に加えられる反時計回りの力によって、第2円盤133Bが後方から見て反時計回りに回転する。第2円盤133Bが後方から見て反時計回りに回転すると、第2円盤133Bの歯1337と噛み合う第3歯1242を有するギア124が後方から見て時計回りに回転する。このとき、ギア124に取り付けられたフランジ126,127の溝1263,1273の第1端縁とレバー125の引掛部1253との間には回転方向において遊びが設けられている。そのため、フランジ126,127の溝1263,1273の第1端縁がレバー125の引掛部1253に接触するまではレバー125は回転せず、ギア124及びフランジ126,127だけが後方から見て時計回りに回転する。これにより、引掛部1253は、回転方向に沿って形成された溝1263,1273内を相対的に移動することになる。またこのとき、回転部材122に作用する回転力M1の向きは後方から見て反時計回りであるため、回転部材122は、この回転力M1に抗って後方から見て時計回りに回転する。
ギア124及びフランジ126,127が後方から見て時計回りに回転して引掛部1253が溝1263,1273の第1端縁に接触すると、ギア124、レバー125及びフランジ126,127が一体となって後方から見て時計回りに回転する(図13参照)。回転部材122が図13に示す位置まで回転した状態では、弾性部材128のピン1283の中心点P3が直線L1上に位置している。そして、図13に示す状態から図14に示す状態への移行時には、ピン1283の中心点P3が直線L1を越えて直線L1の右側に移動し、これにより回転部材122に作用する弾性部材128からの回転力M1の向きが後方から見て時計回りになる。つまり、本実施形態では、図13に示す位置が回転部材122の反転位置である。
回転部材122が上記反転位置を越えると、回転部材122は、弾性部材128からの時計回りの回転力M1によって後方から見て時計回りに高速で回転する。このとき、第2歯車133の第2円盤133Bと回転部材122のギア124とが噛み合っているため、第2円盤133Bは、回転部材122の回転に伴って後方から見て反時計回りに高速で回転する。またこのとき、第2歯車133の第1円盤133Aは、駆動モータ1311からの駆動力によって、第2円盤133Bよりも遅い速度で後方から見て反時計回りに回転している。これにより、第1円盤133Aの突出部1335が第2円盤133Bの長孔1339内を相対的に移動する。さらにこのとき、第2円盤133Bに取り付けられたマグネット141も、第1円盤133Aの溝1336内を相対的に移動する。
図13に示す状態から図14に示す状態になるとき、レバー125の引掛部1253がデッドボルト121の引掛溝1211に引っ掛かっており、レバー125の回転に伴ってデッドボルト121がケース40内に収められる。ここに、本実施形態では、図14に示す回転部材122の位置が解錠位置である。
回転部材122が解錠位置に到達すると、駆動モータ1311は停止し、これに伴って第1歯車132、第2歯車133(厳密には第1円盤133A)及び第3歯車134も停止する。その後、演算処理部151は、第1円盤133Aを原点復帰させるために、駆動回路155(または駆動回路156)に対して駆動モータ1311を第1向きと反対の第2向き(下側から見て時計回り)に回転させる制御信号を出力する。駆動モータ1311は、駆動回路155(または駆動回路156)からの駆動信号に従って第2向きに回転し、これにより第1円盤133Aが原点復帰する(図14参照)。このとき、演算処理部151は、基板140に実装された磁気センサ142が第1円盤133Aに取り付けられたマグネット141の磁気を検出することにより、第1円盤133Aが原点復帰したと判断し、駆動モータ1311を停止させる。また、回転部材122が解錠位置に到達すると、フランジ126は、復帰ばね130(図4参照)からの弾性力によって、溝1263の反対側の第2端縁が引掛部1253に接触する位置まで後方から見て反時計回りに回転する。すなわち、本実施形態の電気錠11では、回転部材122が施錠位置及び解錠位置のいずれの位置にあっても、復帰ばね130からの弾性力によって、引掛部1253の左側に遊びが形成される。
続けて、電気錠11を電動で施錠する場合について説明する。
図14に示す解錠状態において、駆動モータ1311が第2向きに回転すると、駆動モータ1311に取り付けられたウォームギア1312を介して第1歯車132及び第4歯車135が後方から見て時計回り(右回り)に回転する。第1歯車132及び第4歯車135が後方から見て時計回りに回転すると、第4歯車135と噛み合う第3歯車134は後方から見て反時計回り(左回り)に回転する。このとき、第3歯車134に一体に形成された第5歯車136も後方から見て反時計回りに回転する。第3歯車134及び第5歯車136が後方から見て反時計回りに回転すると、第5歯車136と噛み合う第2歯車133の第1円盤133Aは後方から見て時計回りに回転する。
第1円盤133Aが後方から見て時計回りに回転すると、第1円盤133Aの突出部1335から長孔1339の第2端縁に加えられる時計回りの力によって、第2円盤133Bが後方から見て時計回りに回転する。第2円盤133Bが後方から見て時計回りに回転すると、第2円盤133Bの歯1337と噛み合う第3歯1242を有するギア124が後方から見て反時計回りに回転する。このとき、レバー125の引掛部1253とフランジ126,127の溝1263,1273の第2端縁との間に回転方向において遊びがないため、ギア124、レバー125及びフランジ126,127が一体となって反時計回りに回転する。またこのとき、回転部材122に作用する弾性部材128からの回転力M1の向きは後方から見て時計回りであるため、回転部材122は、この回転力M1に抗って反時計回りに回転する。
レバー125が後方から見て反時計回りに回転すると、引掛部1253がデッドボルト121の引掛溝1211に引っ掛かり、レバー125の回転に伴ってデッドボルト121がケース40外に押し出される。このとき、回転部材122が反転位置(図13に示す位置)を越えるまでは後方から見て時計回りの回転力M1が回転部材122に作用しているが、回転部材122が反転位置を越えると回転力M1の向きが後方から見て反時計回りになる。したがって、回転部材122が反転位置を越えた後は、回転部材122は、弾性部材128からの回転力M1によって後方から見て反時計回りに高速で回転する。このとき、第2歯車133の第2円盤133Bと回転部材122のギア124とが噛み合っており、第2円盤133Bは、回転部材122の回転に伴って後方から見て時計回りに高速で回転する。またこのとき、第1円盤133Aは、駆動モータ1311からの駆動力によって、第2円盤133Bよりも遅い速度で後方から見て時計回りに回転している。そのため、第1円盤133Aの突出部1335は、第2円盤133Bの長孔1339内を相対的に移動する。
回転部材122が施錠位置に到達すると、駆動モータ1311は停止し、これに伴って第1歯車132、第2歯車133(厳密には第1円盤133A)及び第3歯車134も停止する。その後、演算処理部151は、第1円盤133Aを原点復帰させるために、駆動回路155(または駆動回路156)に対して駆動モータ1311を第1向きに回転させる制御信号を出力する。駆動モータ1311は、駆動回路155(または駆動回路156)からの駆動信号に従って第1向きに回転し、これにより第1円盤133Aが原点復帰する(図12参照)。また、回転部材122が施錠位置に到達すると、フランジ126は、復帰ばね130(図4参照)からの弾性力によって、溝1263の反対側の第2端縁が引掛部1253に接触する位置まで後方から見て反時計回りに回転する。
ところで、第2円盤133Bの長孔1339は、第1円盤133Aに対する第2円盤133Bの回転角度α1が、施錠位置から解錠位置に到達するまでの回転部材122の回転角度以上となるように形成されていることが好ましい。本実施形態では、回転部材122の回転角度(θ1+θ2)は90度であるため、第1円盤133Aに対する第2円盤133Bの回転角度α1が90度以上であればよい。このように、第1円盤133Aに対する第2円盤133Bの回転角度α1が回転部材122の回転角度以上であれば、解錠動作中に突出部1335が長孔1339の端縁に接触することで回転部材122の回転動作が妨げられる状況を起こりにくくすることができる。
また、本実施形態の電気錠11のように、電池から供給される電力によって駆動モータ1311を駆動させる場合には、解錠動作中または施錠動作中に駆動モータ1311が停止する可能性がある。言い換えると、回転部材122が解錠位置または施錠位置に到達していない状態で駆動モータ1311が停止する可能性があり、この状態では解錠または施錠することができない。この場合、扉10の内側からサムターンを回したり、扉10の外側からシリンダー4に鍵を差し込んでシリンダー4を回転させることにより、デッドボルト121を施錠状態となる位置または解錠状態となる位置に移動させて解錠または施錠を行うことになる。本実施形態では、上述のように、ウォームギア1312と第1歯車132とがセルフロックしない構造であるため、サムターンまたはシリンダー4を回転させることで、デッドボルト121を施錠状態となる位置または解錠状態となる位置に移動させることができる。ただし、この場合には、駆動モータ1311を回転させる負荷も加わるため、サムターンまたはシリンダー4を回転させる際に大きな力を加える必要がある。また、上述のように、回転部材122が解錠位置または施錠位置に到達するまでサムターンまたはシリンダー4を回転させることにより、途中位置で停止した第1円盤133Aを原点復帰させることもできる。
ところで、回転部材122を施錠位置または解錠位置に回転させた後では、サムターンまたはシリンダー4を回転させると、第1円盤133Aの突出部1335が第2円盤133Bの長孔1339内を相対的に移動する。これにより、第1円盤133Aに対して第2円盤133Bのみが回転することになる。つまり、第1円盤133Aと第2円盤133Bとを切り離すことができる。その結果、サムターンまたはシリンダー4を回転させる際に駆動モータ1311を回転させる負荷が加わらないため、途中位置で停止した状態からサムターンまたはシリンダー4を回転させる場合に比べて、小さい力で施錠または解錠することができる。
以下、実施形態2の変形例について説明する。
上述の実施形態2では、駆動モータ1311側の第5歯車136と噛み合う第1円盤133Aに突出部1335が設けられ、回転部材122の一部を構成するギア124と噛み合う第2円盤133Bに長孔1339が設けられている場合について説明した。これに対して、第2円盤133Bに突出部が設けられ、第1円盤133Aに長孔が設けられていてもよい。言い換えると、第2円盤133Bが突出部を有する第1円盤であり、第1円盤133Aが長孔を有する第2円盤であってもよい。
また、上述の実施形態2において、実施形態1の変形例の構成を適用することも可能である。
以上述べた実施形態から明らかなように、第1の態様の電気錠11は、回転部材122と、第2歯車133(歯車)と、弾性部材128と、を備えている。回転部材122は、施錠位置と解錠位置との間で回転する。施錠位置は、建物の扉10に設けられたデッドボルト121の少なくとも一部を扉10から突出させる位置である。解錠位置は、デッドボルト121を扉10内に収める位置である。第2歯車133は、駆動部131からの駆動力を受けて第1位置と第2位置との間で回転することにより回転部材122を回転させる。弾性部材128は、回転部材122に連結され、回転部材122に対して回転力を作用させる。この電気錠11では、第2歯車133が第1位置から第2位置に移動するときに回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動するように構成されている。また、この電気錠11では、回転部材122が施錠位置にある状態で回転部材122を施錠位置に保持する向きの回転力M1が回転部材122に作用し、回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する途中で回転力M1の向きが反転するように構成されている。回転力M1の向きが反転する反転位置は、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置である。
第1の態様によれば、回転部材122が施錠位置にある状態では、回転部材122を施錠位置に保持する向きの回転力M1が回転部材122に作用している。そして、回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する途中で回転力M1の向きが反転するように構成されている。回転力M1の向きが反転する反転位置は、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置である。このように、施錠位置と解錠位置との中間位置よりも施錠位置に近い位置が反転位置となっていることから、反転位置が上記中間位置である場合に比べて早いタイミングで回転力M1の向きを反転させることができ、これにより解錠速度を速くすることができる。
第2の態様の電気錠11では、第1の態様において、回転部材122は、レバー125(第1部材)とフランジ126(第2部材)とを備えている。レバー125は、施錠位置から解錠位置に移動する際にデッドボルト121に接触する引掛部1253(接触部)を有し、引掛部1253を介して施錠状態にあるデッドボルト121を解錠状態となる位置に移動させる。フランジ126は、回転方向に沿った溝1263を有し、弾性部材128が連結される。フランジ126は、第2歯車133の回転に伴って回転するように構成されている。施錠状態では、デッドボルト121の少なくとも一部が扉10から突出している。解錠状態では、デッドボルト121が扉10内に収められている。回転部材122が施錠位置から解錠位置に回転する際には、フランジ126がレバー125に対して回転することにより引掛部1253が溝1263内を相対的に移動するように構成されている。また、引掛部1253が溝1263の端縁に接触した後は、レバー125とフランジ126とが一体となって回転するように構成されている。
第2の態様によれば、レバー125の引掛部1253がフランジ126の溝1263の端縁に接触するまでは、フランジ126のみを回転させるだけの駆動力を駆動部131から与えればよく、駆動部131の負荷を軽減することができる。ただし、この構成は電気錠11の必須の構成ではなく、例えば回転部材122が1部品で構成されていてもよい。
第3の態様の電気錠11では、第1または第2の態様において、第2歯車133(歯車)は、第1円盤133Aと第2円盤133Bとを備えている。第1円盤133Aは、第2円盤133Bとの対向面において第2円盤133B側に突出する突出部1335を有している。第2円盤133Bは、第2円盤133Bの周方向に沿って形成され、突出部1335が移動可能に挿通される長孔1339を有している。長孔1339は、回転角度α1が回転角度(θ1+θ2)以上となるように形成されている。回転角度α1は、突出部1335が第2円盤133Bの周方向における長孔1339の一端から他端に移動する際の第2円盤133Bに対する第1円盤133Aの回転角度である。回転角度(θ1+θ2)は、回転部材122が施錠位置から解錠位置に移動する際の回転角度である。
第3の態様によれば、第2歯車133の一部を構成する第1円盤133Aに突出部1335を設け、かつ第2円盤133Bに長孔1339を設けるだけで、解錠速度を速くすることができる。言い換えると、簡単な構成により解錠速度を速くすることができる。また、回転角度α1を回転角度(θ1+θ2)以上とすることにより、解錠動作中に突出部1335が長孔1339の端縁に接触することで回転部材122の回転動作が妨げられる状況を起こりにくくすることができる。
第4の態様の電気錠システム100は、第1〜第3の態様のうちいずれかの態様の電気錠11と、認証部1511と、ハンドル3(操作部)と、検知部153と、を備えている。認証部1511は、建物の扉10を開閉する人物の認証を行う。ハンドル3は、扉10を開閉する際に操作される。検知部153は、ハンドル3の操作を検知する。この電気錠システム100では、検知部153がハンドル3の操作を検知すると、認証部1511による認証を開始する、又は電気錠11を施錠もしくは解錠するように構成されている。
第4の態様によれば、第1〜第3の態様のうちいずれかの態様の電気錠11を用いることによって、従来の電気錠よりも解錠速度を速くすることができる電気錠システム100を提供することができる。
第5の態様の電気錠システム100は、第4の態様において、2つの電気錠11A,11Bを備えている。この電気錠システム100は、2つの電気錠11A,11Bの一方を駆動部131により駆動させてから遅延時間が経過した後に2つの電気錠11A,11Bの他方を駆動部131により駆動させるように構成されている。
第5の態様によれば、2つの電気錠11A,11Bを同時に駆動させる場合に比べて、容量の小さい電源部157を用いることができる。さらに、上述の電気錠11A,11Bを用いることで、2つの駆動部131の負荷電流のピーク時間を短くすることができ、これにより2つの電気錠11A,11Bを解錠するまでのトータルの解錠時間を短くすることができる。ただし、この構成は電気錠システム100の必須の構成ではなく、例えば電源部の容量に余裕がある場合には、2つの電気錠11A,11Bを同時に駆動させてもよい。